説明

情報推薦処理装置とそのプログラム

【課題】情報利用者が任意の情報を選択した場合でも当該選択された情報と類似する情報を推薦可能とする。
【解決手段】クライアント端末MS1〜MSnから利用者による情報の選択結果を表す情報が送られた場合に、情報推薦処理装置SVaにおいて、概念特定部214が上記受信された選択情報をもとに情報蓄積装置SDの情報データベース32から当該選択情報に対しリンクを持つ概念を読込む。そして、この読込まれた概念についてインスタンス重要度計算部215が着目クラスを設定し、当該着目クラスの強度情報と着目率とからクラス強度を計算して、このクラス強度と上記選択情報のコンテンツリンク強度情報とからインスタンス重要度を算出する。そして、この算出されたインスタンス重要度をもとに上記着目クラスの中から推薦対象の情報を選択しクライアント端末MS1〜MSnに表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報利用者に対しその嗜好モデルに応じた推薦情報を提供する情報推薦処理装置とそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータネットワーク上において、情報提供者が情報利用者に対して情報を提供する場合に、情報利用者の嗜好モデルに応じた類似情報を推薦する類似情報推薦サービスが種々提案されている。
例えば、非特許文献1には協調フィルタリングと呼ばれる技術が記載されている。協調フィルタリングは、情報利用者の履歴を蓄積し、当該情報利用者と履歴が類似した他の情報利用者の履歴を用いて情報利用者に情報を推薦するものである。また非特許文献2にはコンテンツベースフィルタリングと呼ばれる技術が記載されている。コンテンツベースフィルタリングは、情報利用者がある情報に高い評価を与えた場合に、当該情報と類似した特徴を持つ他の情報を推薦する方法である。情報利用者が評価を与える際には、任意の情報に対して「気に入った/気に入らない」のように明示的に評価を与える場合と、「商品を購入したらその商品を気に入ったとみなす」の様に履歴などを用いて暗黙的な評価を与える場合がある。
【0003】
一方、上記情報推薦サービスを実現する別の方法として、本発明者等は有向非巡回グラフ、つまりリンクが方向を持ちリンクを辿って元のノードに戻ることはないという特徴を持つグラフからなる概念構造を利用する技術を提案している。この技術は、概念構造において概念間の関係を示す各リンク或いは各概念(ノード又はクラスとも呼ぶ)に対し、情報利用者ごとにその嗜好の強度を表す強度情報を設定することにより、当該情報利用者の嗜好モデルを構築する。そして、情報利用者の操作履歴等をもとに、予め定めた強度更新ルールに従い嗜好モデルの強度情報を更新し、この強度情報が更新された嗜好モデルをもとに情報利用者に適する情報(インスタンスとも呼ぶ)を選択するか、或いは順番を並び替えて提示するものである(例えば、特許文献1、非特許文献3又は非特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−149340号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】P.Resnick, N.Iacovou, M.Suchak, P.Bergstrom, and J.Riedl. "GroupLens: Open Architecture for Collaborative Filtering of Netnews" In Conference on Computer Supported Cooperative Work, pp. 175-186 (1994)
【非特許文献2】K. Lang. Newsweeder: Learning to filter netnews. Proc. 12th Int ’l Conf. Machine Learning, 1995.
【非特許文献3】信学技報、伊藤浩二ほか、「行動支援サービスのための情報利用者理解モデルの検討」、vol. 109, no. 272, LOIS2009-58, pp. 121-128, 2009年11月
【非特許文献4】信学技報、伊藤浩二ほか、「ユーザ理解モデルを用いた嗜好把握方法の提案と飲食店推薦サービスへの適用」、Vol.110, No.207,208, LOIS2010-25, pp. 43-48, 2010年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記各先行技術文献に記載された技術には以下のような解決すべき課題があった。
非特許文献1に記載された方法では、大量の履歴を必要とするため、少量の履歴しか得られない場合には適用できない。また、他の情報利用者の履歴を参考に情報を推薦するため、新たに追加されたコンテンツには履歴が無く推薦されない。さらに、人気の情報や長く存在している情報は相対的に履歴が多いため、推薦されやすいという課題がある。また、非特許文献2に記載された方法では、情報の特徴のみを用いて類似情報を推薦するため、情報利用者の嗜好は考慮されないという課題がある。
【0007】
一方、特許文献1、非特許文献3又は非特許文献4に記載された手法では、情報利用者の嗜好を考慮して情報利用者毎に適する情報が選択され、或いは情報利用者に適する順番に並び替えて情報が表示される。このため、情報利用者が任意の情報を選択した際に、選択された情報と類似の情報を推薦することができないという課題がある。
【0008】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、情報利用者が任意の情報を選択した場合でも当該選択された情報と類似する情報を推薦可能とした情報推薦処理装置、方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためにこの発明の一観点は、階層化された複数の概念間をリンクにより関連付けると共に上記概念に推薦候補情報を関連付けた有向非巡回グラフからなる概念構造を利用し、上記各概念又は当該概念に至るリンクに利用者の嗜好に応じた強度情報を設定した嗜好モデル情報を記憶しておく。そして、利用者が入力した任意の情報を当該利用者の識別情報と共に受付けた場合に、この受付けた情報と関連を持つ第1の概念群を上記記憶された嗜好モデル情報をもとに特定し、この特定された第1の概念群を着目クラスとして用いて当該着目クラスと関連する推薦候補情報を上記嗜好モデル情報から選択し、この選択された推薦候補情報を上記利用者に提示するために出力するようにしたものである。
したがって、利用者により選択された情報を特徴づける概念が特定され、当該概念を特徴とする他の情報が推薦されるため、利用者は自身が選択した情報と類似の情報を取得することができる。
【0010】
また、この発明の一観点は以下のような態様を備えることを特徴とする。
第1の態様は、上記特定された第1の概念群と関連する第2の概念群を上記記憶された嗜好モデル情報からさらに特定し、上記特定された第1の概念群を第1の着目率を有する着目クラスとして用いて当該着目クラスと関連する推薦候補情報を上記嗜好モデル情報から選択すると共に、上記特定された第2の概念群を上記第1の着目率より低い第2の着目率を有する着目クラスとして用いて当該着目クラスと関連する推薦候補情報を上記嗜好モデル情報から選択し、この選択された推薦候補情報を上記利用者に提示するために出力するようにしたものである。
このようにすると、情報利用者が任意の情報を選択した場合に、この選択された情報と直接関連する概念にとどまらず、この概念と関連を持つ関連概念がさらに特定され、上記直接関連する概念及び上記関連概念と関連する情報が類似情報として利用者に提示される。したがって、情報利用者の嗜好をさらに広く考慮して多くの情報を推薦することが可能となる。また、着目クラスの着目率が概念構造における関連が弱くなるに従い減少するように設定されることで、推薦する情報に優劣を付けることができる。
【0011】
第2の態様は、推薦候補情報を選択する際に、先ず着目クラスとして用いる概念群について当該着目クラスの着目率と当該概念群に設定された強度情報とをもとに着目クラス強度を計算し、次にこの計算された着目クラス強度と、上記着目クラスと当該着目クラスと関連する推薦候補情報との間に予め設定されたコンテンツ強度とをもとに、上記推薦候補情報のインスタンス重要度を計算する。そして、この計算されたインスタンス重要度をもとに利用者に提示すべき推薦候補情報の表示データを生成し出力するようにしたものである。
【0012】
第3の態様は、上記表示データを出力する際に、上記計算されたインスタンス重要度が予め設定された閾値以上の推薦候補情報を選択してこの選択された推薦候補情報の表示データを生成するか、或いは上記計算されたインスタンス重要度の順に上記推薦候補情報を並べ替え、この並べ替えられた推薦候補情報の表示データを生成するようにしたものである。
【0013】
第2及び第3の態様によれば、選択された情報を特徴づける概念が複数存在する場合であっても、いずれの概念が情報利用者によって重視されるかが考慮されるため、情報利用者の嗜好をさらに考慮した類似情報の推薦が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
すなわちこの発明によれば、情報利用者が任意の情報を選択した場合でも当該選択された情報と類似する情報を推薦可能とした情報推薦処理装置、方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の第1の実施形態に係わる情報推薦サービスを実施するシステムの概略構成図。
【図2】図1に示したシステムで使用されるクライアント端末の機能構成を示すブロック図。
【図3】図1に示したシステムで使用される情報推薦処理装置及び情報蓄積装置の機能構成を示すブロック図。
【図4】図2及び図3に示したクライアント端末、情報推薦処理装置及び情報蓄積装置による情報推薦処理の手順と内容の前半部分を示すフローチャート。
【図5】図2及び図3に示したクライアント端末、情報推薦処理装置及び情報蓄積装置による情報推薦処理の手順と内容の後半部分を示すフローチャート。
【図6】図3に示した情報蓄積装置の強度データベースに記憶される情報の一例を示す図。
【図7】図3に示した情報蓄積装置の情報データベースに記憶される情報の一例を示す図。
【図8】図3に示した情報推薦処理装置がインスタンス重要度を計算するために用いる着目率の設定例を示す図。
【図9】嗜好モデルの概念構造の一例を示す図。
【図10】リンクに強度情報を持たせた場合の、嗜好モデルを用いた情報推薦処理の一例を示す図。
【図11】ノードに強度情報を持たせた場合の、嗜好モデルを用いた情報推薦処理の一例を示す図。
【図12】情報利用者の嗜好を考慮した類似情報推定処理の一例を示す図。
【図13】この発明の第2の実施形態に係わる情報推薦処理装置及び情報蓄積装置の機能構成を示すブロック図。
【図14】図13に示した情報推薦処理装置及び情報蓄積装置による情報推薦処理の手順と処理内容を示すフローチャート。
【図15】図13に示した情報推薦処理装置が利用する着目率の設定例を示す図。
【図16】概念構造を用いて着目クラスを拡張する場合における、情報利用者の嗜好を考慮した疑似情報推定処理の一例を示す図。
【図17】関連概念の決定処理の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
[構成]
図1は、この発明の第1の実施形態に係わる情報推薦サービスを実施するシステムの概略構成図である。
このシステムは、情報推薦処理装置SVaと、情報蓄積装置SDと、利用者が使用するクライアント端末MS1〜MSnとを備えている。そして、上記情報推薦処理装置SVaとクライアント端末MS1〜MSnとの間で、通信ネットワークNWを介して情報推薦サービスを受けるための通信を可能としている。
【0017】
通信ネットワークNWは、IP(Internet Protocol)網と、このIP網にアクセスするためのアクセス網とから構成される。アクセス網としては、公衆有線電話網、携帯電話網、LAN(Local Area Network)、無線LAN、CATV(Cable Television)網等が用いられる。
【0018】
(1)クライアント端末
クライアント端末MS1〜MSnは、パーソナル・コンピュータ、携帯電話機、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、電子書籍端末等からなり、例えば図2に示すように制御ユニット11と、入出力インタフェース部12と、通信インタフェース部13を備えている。
【0019】
入出力インタフェース部12は、液晶表示器等を用いた表示デバイスと、キーボード又はタブレット型の入力デバイスを有する。通信インタフェース部13は、制御ユニット11の制御の下で、通信ネットワークNWで規定される通信プロトコルに従い情報推薦処理装置SVaとの間で情報の送受信を行う。
【0020】
制御ユニット11は中央処理ユニット(CPU)を有し、この発明に係る制御機能として、情報一覧要求部111と、情報一覧表示制御部112と、情報選択部113と、類似情報受付部114と、類似情報表示制御部115を備えている。これらの制御機能はいずれも図示しないプログラム・メモリに格納されたアプリケーション・プログラムを上記CPUに実行させることにより実現される。
【0021】
情報一覧要求部111は、利用者が入出力インタフェース部12において情報一覧要求のための入力操作を行った場合に、情報一覧要求信号を生成してこの要求信号を通信インタフェース部13から情報推薦処理装置SVaへ向け送信する処理を行う。
【0022】
情報一覧表示制御部112は、上記情報一覧要求信号の送信に対し情報推薦処理装置SVaから送信された情報一覧データを通信インタフェース部13により受信し、この受信された情報一覧データを入出力インタフェース部12の表示デバイスに表示させる処理を行う。
【0023】
情報選択部113は、上記情報一覧が表示された状態で、利用者が入出力インタフェース部12において上記情報一覧の中から所望の情報を選択する操作を行った場合に、この選択された情報を特定するための選択情報と、利用者を識別するための利用者情報を生成して、この生成された選択情報及び利用者情報を通信インタフェース部13から情報推薦処理装置SVaへ向け送信する処理を行う。
【0024】
類似情報受付部114は、上記選択情報の送信に対し、情報推薦処理装置SVa類似情報の一覧データが返送された場合に、当該データを通信インタフェース部13により受信する処理を行う。
類似情報表示制御部115は、上記受信された類似情報の一覧データを入出力インタフェース部12の表示デバイスに表示させる処理を行う。
【0025】
(2)情報蓄積装置
情報蓄積装置SDは、例えばパーソナル・コンピュータ又はワークステーションを用いたデータベースサーバからなり、図3に示すように強度データベース31と、情報データベース32と、通信インタフェース部33を備えている。通信インタフェース部33は、情報推薦処理装置SVaとの間で通信ネットワークNWを介して情報の送受信を行う。
【0026】
強度データベース31には、各情報利用者の識別情報(ユーザID)に関連付けて、概念(ノード)の識別情報(概念ID)と、当該概念に対し現在設定されている情報利用者の嗜好の強度を表す情報がそれぞれ記憶されている。概念は、後述する情報推薦処理装置SVaの概念構造情報記憶部22に記憶されている共通の概念構造において定義されたものである。図6にその一例を示す。
【0027】
情報データベース32には、インスタンスとしての店舗名を識別する情報(情報ID)に関連付けて、当該店舗名とリンクにより関連付けられている概念のIDと、当該リンクに対し設定されているコンテンツリンク強度を表す情報がそれぞれ記憶されている。図7にその一例を示す。
【0028】
(3)情報推薦処理装置
情報推薦処理装置SVaは例えばパーソナル・コンピュータ又はワークステーションを用いたWebサーバからなり、以下のように構成される。図3はその機能構成を示すブロック図である。
【0029】
すなわち、情報推薦処理装置SVaは、制御ユニット21aと、概念構造情報記憶部22と、通信インタフェース部23,24を備える。通信インタフェース部23,24はそれぞれ、制御ユニット21aの制御の下、通信ネットワークNWで規定される通信プロトコルに従いクライアント端末MS1〜MSn及び情報蓄積装置SDとの間で情報の送受信を行う。概念構造情報記憶部22には、予め各情報利用者に対し共通に作成された概念構造を表す情報が予め記憶されている。なお、この概念構造は観点ごとにそれぞれ作成される。
【0030】
制御ユニット21aは、中央処理ユニット(CPU)及びメモリを備えたもので、この発明を実現するために必要な制御機能として、情報一覧要求受付部211と、情報一覧送信制御部212と、選択情報受付部213と、概念特定部214と、インスタンス重要度計算部215と、情報選択/並び替え部216と、類似情報返却部217と、概念構造情報読込部218を備えている。なお、これらの制御機能はいずれも、図示しないプログラム・メモリに格納されたアプリケーション・プログラムを上記CPUに実行させることにより実現される。
【0031】
概念構造情報読込部218は、システム起動時に概念構造情報記憶部22から概念構造を表すデータD0を読み込む処理を行う。
【0032】
情報一覧要求受付部211は、上記クライアント端末MS1〜MSnから送信された情報一覧要求信号を通信インタフェース部23により受信した場合に、情報蓄積装置SDに対しアクセスして情報データベース32から情報一覧データD1を読込む処理を行う。
【0033】
情報一覧送信制御部212は、上記情報データベース32から読込まれた情報一覧データD1を、通信インタフェース部23から要求元のクライアント端末MS1〜MSnへ送信する処理を行う。
【0034】
選択情報受付部213は、上記情報一覧データの送信に対しクライアント端末MS1〜MSnから選択情報及び利用者情報が送信された場合に、この選択情報D2及び利用者情報D3を通信インタフェース部23により受信し、この受信した選択情報D2及び利用者情報D3を概念特定部214に渡す処理を行う。
【0035】
概念特定部214は、上記受信された選択情報D2をもとに情報蓄積装置SDの情報データベース32を検索し、これにより上記選択情報に対しリンクを持つ概念の一覧を表すデータ(概念ID)D4を読込む。そして、この読込んだ概念の一覧を表すデータD4を、選択元の利用者の利用者情報と共にインスタンス重要度計算部215に渡す処理を行う。
【0036】
インスタンス重要度計算部215は、システム起動時に初期設定された各関連概念に対する着目率をもとに、上記利用者により選択された情報に関連を持つ概念を着目クラスに設定する。そして、情報蓄積装置SDの強度データベース31から当該着目クラスの強度情報D5を読込み、この読込んだ着目クラスの強度情報D5と上記着目率とからクラス強度を計算する。また、利用者により選択された情報と対応するコンテンツリンク強度情報D6を情報データベース32から読込み、この読込んだコンテンツリンク強度情報D6と上記クラス強度情報とを用いてインスタンス重要度を算出する処理を行う。
【0037】
情報選択/並び替え部216は、上記算出されたインスタンス重要度をもとに、上記着目クラスの中からインスタンス重要度が予め設定された閾値に満たないクラスを削除する。そして、この削除後に残ったクラスを上記インスタンス重要度に従い並べ替え、この並べ替えたクラスの一覧を示す情報を類似情報一覧データD7として類似情報返却部217に渡す。
【0038】
類似情報返却部217は、上記情報選択/並び替え部216により生成された類似情報一覧データD7を、選択元のクライアント端末に向け通信インタフェース部23から送信する処理を行う。
【0039】
[概念構造とこの概念構造を利用した情報推薦の基本動作]
先ず、本実施形態による情報推薦処理方法の理解を助けるため、嗜好モデル情報を表す概念構造と、この概念構造を使用した情報推薦方法について説明する。
情報利用者の嗜好モデル情報は概念構造をベースとする。概念構造は、多重継承を許容する有向非巡回グラフからなり、例えば図9に示すように階層化された複数の概念(ノード又はクラス)をリンクにより関連付けると共に、具体的な概念に推薦候補となる情報をインスタンスとして関連付けたものからなる。そして、上記概念間のリンク又は各概念には、情報利用者ごとにその嗜好の強度を表す情報が設定され、これが当該情報利用者の嗜好モデルを表す情報となる。
【0040】
図10は、概念構造に含まれる任意のリンクに対し情報利用者ごとに強度情報を設定した場合の嗜好モデルの一例を示すものである。同図において、概念構造に含まれるリンクには、利用者の操作履歴等を用いて強度情報を更新することを定めたルールが関連付けられる。そして、これらのルールに従い、嗜好モデルは利用者の嗜好に適合するように更新され、この更新された嗜好モデルを用いて情報利用者に適する情報が選択されて利用者に提示される。
【0041】
例えば、概念構造に含まれる任意のリンクに対し、「リンク先の概念がある情報に対するリンクを持ちかつ情報利用者が当該情報を利用した場合に、当該リンク及び当該リンクの下位リンクに設定された強度情報を1増加させる」というルールが関連付けられていたとする。この場合には、情報利用者が当該情報を利用するごとに、このルールに従い当該リンク及び当該リンクの下位リンクに設定された強度情報が1増加され、情報利用者の嗜好モデルが利用者の嗜好に適合するように更新される。
【0042】
より具体的には、図10において、「麺類」と「スパゲティミートソース」との間のリンク、「肉料理」と「スパゲティミートソース」との間のリンク、及び「肉料理」と「ステーキ」との間のリンクに対して上記ルールが設定されている場合には、情報利用者が「店4」を利用すると、「麺類」と「スパゲティミートソース」との間のリンク、「肉料理」と「スパゲティミートソース」との間のリンク、及び「肉料理」と「ステーキ」との間のリンクにそれぞれ設定された強度情報が1ずつ増加され、情報利用者の嗜好モデルが更新される。
【0043】
そして、嗜好モデルを用いて情報利用者ごとに適する情報のみを表示する場合、或いは情報を利用者ごとに適する順番に並び替えて表示する場合には、全ての概念について当該概念に至る全てのリンクの強度情報と着目率を用いて当該概念をどの程度重視するかを表す値(クラス重要度)が計算される。また、概念とコンテンツがどの程度関連しているかを表す値(コンテンツリンク強度情報)も考慮し、情報が情報利用者にどの程度適しているかを表す値(インスタンス重要度)が計算される。そして、このインスタンス重要度の計算値が閾値を超えた情報のみが選択されて表示されるか、或いはインスタンス重要度の高い情報から順に並べられて表示される。以上述べた、リンクに強度情報を設定する方法は、特許文献1又は非特許文献3に詳しく述べられている。
【0044】
一方、図11は概念構造に含まれる各ノード(クラス)に強度情報を保持する場合の嗜好モデルの一例を示すものである。この場合も、基本的に前述したリンクに強度情報を設定した場合と同様に、情報利用者の嗜好モデルの更新処理と、情報利用者に適する情報の表示処理が行われる。このノード(クラス)に強度情報を保持させる方法は、非特許文献4に詳しく述べられている。
【0045】
[第1の実施形態の動作]
次に、この発明の第1の実施形態に係るシステムを構成する情報推薦処理装置SVaによる情報推薦処理動作を、クライアント端末MS1〜MSn及び情報蓄積装置SDの動作と関連付けて説明する。図4及び図5はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
ここでは、情報利用者が任意に選択した情報に対しリンクを持つクラスを、図8に示すように着目率1.0の着目クラスとして扱うことにより、選択された情報と類似の情報を推薦する場合を例にとって説明する。
【0046】
情報推薦処理装置SVaでは、システム起動時に、概念構造情報読込部218により概念構造情報記憶部22から概念構造情報D0が読込まれ、制御ユニット21a内のメモリに保存される(ステップS11)。またそれと共に、インスタンス重要度の閾値及び着目率も、図示しないシステム設定ファイルやデータベースから制御ユニット21a内に読込まれて保存される(ステップS12)。
【0047】
いま例えば、情報利用者がクライアント端末MS1において、情報の閲覧を要求するための操作を行ったとする。そうすると、クライアント端末MS1では、情報一覧要求部111がステップS13により上記操作を検出し、ステップS14により情報一覧要求信号R1を生成してこの要求信号R1を情報推薦処理装置SVaに向け送信する。
【0048】
これに対し情報推薦処理装置SVaでは、上記クライアント端末MS1から送信された情報一覧要求信号R1がステップS15により受信されると、情報一覧要求受付部211がステップS16により情報蓄積装置SDに対しアクセスし、情報データベース32から情報一覧データD1を読込む。そして、情報一覧送信制御部212が、上記情報データベース32から読込まれた情報一覧データD1を、ステップS17により通信インタフェース部23から要求元のクライアント端末MS1に向け送信する。
【0049】
クライアント端末MS1では、上記情報一覧要求信号R1の送信に対し情報推薦処理装置SVaから送信された情報一覧データD1がステップS18により受信されると、情報一覧表示制御部112がステップS19により上記受信された情報一覧データD1を入出力インタフェース部12の表示デバイスへ出力する。この結果、クライアント端末MS1の表示デバイスには情報の一覧が表示される。
【0050】
この状態で、クライアント端末MS1の情報利用者が上記一覧表示された情報の中から所望の情報を選択したとする。そうすると、情報選択部113がステップS20により上記選択操作を検出し、ステップS21において、この選択された情報を特定するための選択情報D2と、情報利用者を識別するための利用者情報D3を生成して、この生成された選択情報D2及び利用者情報D3を通信インタフェース部13から情報推薦処理装置SVaに向け送信する。例えば、いま利用者Aが一覧表示された複数の店舗情報の中から「店2」を選択したとすると、選択情報D2として上記「店2」を表す情報が、また利用者情報D3として利用者Aを識別するための情報が、情報推薦処理装置SVaへ送信される。
【0051】
情報推薦処理装置SVaでは、上記クライアント端末MS1から送信された選択情報D2及び利用者情報D3が選択情報受付部213により受信されると(ステップS22)、概念特定部214がステップS23において、上記受信された選択情報D2をもとに情報蓄積装置SDの情報データベース32を検索して概念一覧D4を読込む。そして、ステップS24により、上記読込んだ概念一覧D4をもとに、上記選択情報D2に対しリンクを持つ概念を特定する。
例えば、いま情報利用者に対応する概念構造が図12に示すように構成されているものとし、情報利用者が先に述べたように「店2」を選択したとすると、この選択された「店2」に対しリンクを持つ概念として「そば」、「うどん」が特定される。
【0052】
上記選択情報にリンクされた概念が特定されると、インスタンス重要度計算部215が先ずステップS25により、システム起動時に初期設定された各概念に対する着目率1.0をもとに、上記情報利用者により選択された情報に関連を持つ概念を着目クラスに設定する。例えば図12では、情報利用者により「店2」が選択されたため、「そば」と「うどん」を着目率1.0の着目クラスとして設定する。図12ではこの着目クラスを二重丸で示し、その他のクラスを一重丸で示している。
【0053】
なお、具体的には、概念構造情報には概念の親子関係が記述されており、本関係を用いることにより、着目クラスの子クラスもまた着目クラスに含める処理を同じ着目率を継承し再帰的に繰り返す。ただし、図12に示す例では着目クラスが子クラスを持たないため、着目クラスを追加する処理は行われない。
【0054】
上記したように着目クラスが特定されると、インスタンス重要度計算部215は続いて情報蓄積装置SDの強度データベース31から当該着目クラスの強度情報D5を読込み、この読込んだ着目クラスの強度情報D5に上記着目率を乗じてクラス強度を計算する。また、情報利用者により選択された情報と対応するコンテンツリンク強度情報D6を情報データベース32から読込む。そしてステップS26において、読込んだコンテンツリンク強度情報D6と上記クラス強度情報とを用いてインスタンス重要度を算出する。
【0055】
図12の例では、クライアント端末MS1の情報利用者に関する「そば」及び「うどん」の強度はそれぞれ“3.0”、“4.0”であるため、上記着目率“1.0”とこの強度情報を用いてクラス強度を算出すると、
「そば」のクラス強度=1.0×3.0=3.0
「うどん」のクラス強度=1.0×4.0=4.0
となる。
【0056】
また、「店1」(「そば」とのコンテンツリンク強度=0.5)、「店3」(「うどん」とのコンテンツリンク強度=1.0)が情報データベース32から読込まれる。そして、上記クラス強度とコンテンツリンク強度とをもとに、「店1」及び「店3」のインスタンス重要度はそれぞれ
「店1」のインスタンス重要度=3.0×0.5=1.5
「店3」のインスタンス重要度=4.0×1.0=4.0
となる。
【0057】
上記インスタンス重要度が算出されると、次に情報選択/並び替え部217がステップS27において、上記算出されたインスタンス重要度をもとに、上記着目クラスの中からインスタンス重要度が予め設定された閾値に満たないクラスを削除する。そして、この削除後に残ったクラスを上記インスタンス重要度が高い順に並べ替え、この並べ替えたクラスの一覧を示す情報を類似情報一覧データD7として類似情報返却部217に渡す。
【0058】
例えば図12では、「店2」に対してリンクを持つ概念「そば」、「うどん」からのリンクがある「店1」、「店3」が先ず選択され、そのインスタンス重要度が例えば閾値=1.0以上であるか否かが判定される。この判定の結果、いま「店1」、「店3」のインスタンス重要度はいずれも閾値=1.0以上であるので、これらの「店1」、「店3」が類似店として選定される。そして、これらの「店1」、「店3」はインスタンス重要度が高い順に「店3」、「店1」の順に並べ替えられ、この並び替え後の情報が類似情報一覧データD7となる。
上記類似情報の一覧データD7が生成されると、最後に類似情報返却部217がステップS28により、上記類似情報一覧データD7を前記選択情報送信元のクライアント端末MS1に向けて送信する。
【0059】
これに対しクライアント端末MS1では、類似情報受付部114がステップS29により上記類似情報一覧データD7を受信する。そして、類似情報表示制御部115がステップS30により、上記受信された類似情報一覧データD7を入出力インタフェース部12へ出力する。したがって、入出力インタフェース部12の表示器には類似情報の一覧が表示され、情報利用者はこの表示された類似情報一覧から、推薦された「店3」及び「店1」をその重要度が高い順に知ることができる。
【0060】
以上詳述したように第1の実施形態では、クライアント端末MS1〜MSnから利用者による情報の選択結果を表す情報D2が送られた場合に、情報推薦処理装置SVaにおいて、概念特定部214が上記受信された選択情報D2をもとに情報蓄積装置SDの情報データベース32から当該選択情報D2に対しリンクを持つ概念を読込む。そして、インスタンス重要度計算部215が、予め設定された各関連概念に対する着目率をもとに、上記読込んだ概念から着目クラスを特定し、さらに情報蓄積装置SDの強度データベース31から当該着目クラスの強度情報D5を読込んで、この読込んだ着目クラスの強度情報D5と上記着目率とからクラス強度を計算する。また、利用者により選択された情報と対応するコンテンツリンク強度情報D6を情報データベース32から読込み、この読込んだコンテンツリンク強度情報D6と上記クラス強度情報とを用いてインスタンス重要度を算出する。そして、情報選択/並び替え部216が、上記算出されたインスタンス重要度をもとに、上記着目クラスの中からインスタンス重要度が予め設定された閾値に満たないクラスを削除して、この削除後に残ったクラスを上記インスタンス重要度に従い並べ替え、この並べ替えたクラスの一覧を示す情報D7をクライアント端末MS1〜MSnへ返送して表示させるようにしている。
【0061】
したがって第1の実施形態によれば、利用者により選択された情報を特徴づける概念が特定され、当該概念を特徴とする他の情報が推薦されるため、利用者は自身が選択した情報と類似の情報を取得することができる。また、選択された情報を特徴づける概念が複数存在する場合であっても、いずれの概念が情報利用者によって重視されるか考慮されるため、情報利用者の嗜好を考慮した類似情報の推薦が可能となる。
【0062】
(第2の実施形態)
この発明の第2の実施形態は、概念構造を用いて着目クラスの関連概念を特定し、この関連概念についても着目率を減じた上で着目クラスとみなすことにより、推薦される類似情報を増やすようにしたものである。
図17に関連概念の特定方法を示す。ある概念に着目し、これを着目概念と呼ぶ場合、この着目概念の関連概念を以下の通り定める。「AならばBである」なる命題が成り立つとき、BをAの親概念、AをBの子概念と定義する。また、Aの子概念もまたBの子概念に含むものとし、以下再帰的に繰り返す。このとき、着目概念の親概念、着目概念を除く着目概念の親概念の子概念、及び着目概念の子概念を関連順位1の概念とする。ここで、関連順位は着目概念と任意の概念との関連の深さを表し、順位が低い程関連が深いものとする。また、着目概念の親概念の親概念、着目概念の親概念の親概念の子概念から関連順位1の概念、及び着目概念を除いたものを関連順位2の関連概念とし、以下同様に関連順位Nの概念を定める。関連順位αの関連概念と関連順位βの関連概念とが同一であり、α>βである時、当該概念は関連順位βの関連概念とみなす。
【0063】
図13は、この発明の第2の実施形態に係る情報推薦処理装置の機能構成を示すブロック図である。なお、同図において前記図3と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
第2の実施形態に係る情報推薦処理装置SVbは、同実施形態を実施するために必要な制御機能として、制御ユニット21bが関連概念特定部219をさらに備えている。この関連概念特定部219は、概念構造情報記憶部22から事前に読込まれた概念構造の情報を参照して、概念特定部214により特定された概念に対し関連する概念をさらに特定する処理を行う。
【0064】
次に、以上のように構成された情報推薦処理装置SVbによる情報推薦処理動作を説明する。図14はこの第2の実施形態における情報推薦処理動作の処理手順と処理内容の主要部を示すフローチャートである。なお、この図14についても、前記図5と同一の処理ステップには同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0065】
ここでは、図15に示すように、情報利用者が任意に選択した情報に対しリンクを持つクラスを着目率1.0の着目クラスとして扱い、さらに当該着目クラスに対し関連度1の関係を有する関連クラスを着目率0.5の着目クラスと扱うことにより、選択された情報と類似の情報を推薦する場合を例にとって説明する。
【0066】
情報推薦処理装置SVaでは、例えばクライアント端末MS2から送信された選択情報D2及び利用者情報D3が選択情報受付部213により受信されると(ステップS22)、概念特定部214がステップS23において、上記受信された選択情報D2をもとに情報蓄積装置SDの情報データベース32を検索して概念一覧D4を読込む。そして、ステップS24により、上記読込んだ概念一覧D4をもとに、上記選択情報D2に対しリンクを持つ概念を特定する。
例えば、いま情報利用者に対応する概念構造が図16に示すように構成されているものとし、情報利用者が第1の実施形態の場合と同様に例えば「店2」を選択したとすると、この選択された「店2」に対しリンクを持つ概念として「そば」、「うどん」が特定される。
【0067】
続いて、関連概念特定部219がステップS31において、概念構造の情報D0を参照して、上記概念特定部214により特定された概念と関連する概念をさらに特定する。例えば図16においては、情報利用者により選択された「店2」に関連を持つ概念「そば」、「うどん」に対し関連度1の関係にある関連概念として、「寿司」、「スパゲティミートソース」が特定される。
【0068】
そして、上記概念特定部214により特定された概念「そば」、「うどん」に、上記関連概念特定部219によりさらに特定された関連概念「寿司」、「スパゲティミートソース」が追加された概念一覧が、情報利用者情報と共にインスタンス重要度計算部215に渡される。
【0069】
インスタンス重要度計算部215では、ステップS25において、システム起動時に初期設定された各概念に対する着目率1.0と、各関連概念に対する着目率0.5をもとに、上記情報利用者により選択された情報に関連を持つ概念と、当該概念に対し関連度1の関係にある関連概念を着目クラスに設定する。例えば図16では、情報利用者により選択された「店2」に対しリンクを持つ「そば」、「うどん」と、その関連概念である「寿司」、「スパゲティミートソース」が着目クラスとして設定される。なお、図16では着目率1.0の着目クラスを二重丸で、また着目率0.5の着目クラスを破線の丸でそれぞれ示し、その他のクラスを一重丸で示している。
【0070】
なお、具体的には、概念構造情報D0には概念の親子関係が記述されており、本関係を用いることにより、着目クラスの子クラスもまた着目クラスに含める処理が同じ着目率を継承し再帰的に繰り返される。ただし、図16に示す概念構造では着目クラスが子クラスを持たないため、子クラスが着目クラスとして追加されることはない。
【0071】
上記したように着目クラスが特定されると、インスタンス重要度計算部215は続いて情報蓄積装置SDの強度データベース31から当該着目クラスの強度情報D5を読込み、この読込んだ着目クラスの強度情報D5に上記着目率を乗じてクラス強度を計算する。また、情報利用者により選択された情報と対応するコンテンツリンク強度情報D6を情報データベース32から読込む。そしてステップS26において、読込んだコンテンツリンク強度情報D6と上記クラス強度情報とを用いてインスタンス重要度を算出する。
【0072】
図16の例では、クライアント端末MS2の情報利用者に関する「そば」、「うどん」、「寿司」、「スパゲッティミートソース」の強度はそれぞれ“3.0”、“4.0”、“4.0”、“1.0”であるため、上記着目率“1.0”、“0.5”とこの強度情報を用いてクラス強度を算出すると、
「そば」のクラス強度=1.0×3.0=3.0
「うどん」のクラス強度=1.0×4.0=4.0
「寿司」のクラス強度=0.5×4.0=2.0
「スパゲッティミートソース」のクラス強度=0.5×1.0=0.5
となる。
【0073】
また、「店1」(「そば」とのコンテンツリンク強度=0.5、「寿司」とのコンテンツリンク強度=0.5)、「店3」(「うどん」とのコンテンツリンク強度=1.0)、店4(「スパゲッティミートソース」とのコンテンツリンク強度=0.8)が情報データベース32から読込まれる。そして、上記クラス強度とコンテンツリンク強度とをもとに、「店1」、「店3」、「店4」のインスタンス重要度はそれぞれ
「店1」のインスタンス重要度=2.0×0.5+3.0×0.5=2.5
「店3」のインスタンス重要度=4.0×1.0=4.0
「店4」のインスタンス重要度=0.5×0.8=0.4
となる。
【0074】
上記インスタンス重要度が算出されると、次に情報選択/並び替え部217がステップS27において、上記算出されたインスタンス重要度をもとに、上記着目クラスの中からインスタンス重要度が予め設定された閾値に満たないクラスを削除する。そして、この削除後に残ったクラスを上記インスタンス重要度が高い順に並べ替え、この並べ替えたクラスの一覧を示す情報を類似情報一覧データD7として類似情報返却部217に渡す。
【0075】
例えば図16では、「店2」に対してリンクを持つ概念「そば」、「うどん」からのリンクがある「店1」、「店3」、「店4」が選択され、そのインスタンス重要度が例えば閾値=0.3以上であるか否かが判定される。この判定の結果、いま「店1」、「店3」、「店4」のインスタンス重要度はいずれも閾値=0.3以上であるので、これらの「店1」、「店3」、「店4」が類似店として選定される。そして、これらの「店1」、「店3」、「店4」はインスタンス重要度が高い順に「店3」、「店1」、「店4」の順に並べ替えられ、この並び替え後の情報が類似情報一覧データD7となる。
上記類似情報の一覧データが生成されると、最後に類似情報返却部217がステップS28により、上記類似情報一覧データD7を前記選択情報の送信元となるクライアント端末MS2に向けて送信する。したがって、クライアント端末MS2では、表示器に上記「店3」、「店1」、「店4」が表示される。
【0076】
したがって第2の実施形態によれば、図16に例示するように情報利用者が選択した「店2」に対してリンクを持つ「そば」、「うどん」と、その関連概念である「寿司」、「スパゲティミートソース」からのリンクがある「店1」、「店3」、「店4」がそれぞれ類似店として選定され、この選定された類似店がそのインスタンス重要度が高い順に「店3」、「店1」、「店4」の順に推薦される。このため、利用者は自身が選択した店と類似するより多くの店を知ることが可能となる。
【0077】
(その他の実施形態)
前記第1及び第2の実施形態では、情報利用者の嗜好の強度を表す情報を各概念に設定した場合を例にとって説明したが、例えば図10に示したように概念間を関連付けるリンクに強度情報を設定する場合にも、この発明は実施可能である。この場合、着目概念と関連概念間を直接関連付けるリンクに設定された強度情報の増加幅を“W”に設定し、関連概念間を関連付けるリンクの強度情報を上記“W”より小さい増加幅に設定すればよい。要するに、着目概念からの距離が遠くなるに従い、つまり関連順位が下がるに従いリンクに設定された強度情報の増加幅が小さくなるように設定する。
【0078】
また、前記第1及び第2の実施形態では、情報推薦処理装置SVa,SVbと情報蓄積装置SDとを別々のサーバとして構成し、両装置間を通信ネットワークNWを介して接続した場合を例にとって説明したが、情報蓄積装置SD内の各データベースを情報推薦処理装置SVa,SVb内に収容するようにしてもよい。
【0079】
前記第1及び第2の実施形態では飲食店の嗜好モデルを例にとって説明したが、ほかにニュースや広告、ファッション等の嗜好モデル等にも同様に適用可能である。その他、情報推薦処理装置の構成や、情報推薦処理の処理手順と処理内容等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0080】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0081】
SVa、SVb…情報推薦処理装置、SD…情報蓄積装置、MS1〜MSn…クライアント端末、NW…通信ネットワーク、11…クライアント端末の制御ユニット、12…入出力ユニット、13…クライアント端末の通信インタフェース部、111…情報一覧要求部、112…情報一覧表示制御部、113…情報選択部、114…類似情報受付部、115…類似情報表示制御部、21a、21b…情報推薦処理装置の制御ユニット、22…概念構造情報記憶部、23,24,33…通信インタフェース部、211…情報一覧要求受付部、212…情報一覧送信制御部、213…選択情報受付部、214…概念特定部、215…インスタンス重要度計算部、216…情報選択/並び替え部、217…類似情報返却部、218…概念構造情報読込部、219…関連概念特定部、31…強度データベース、32…情報データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階層化された複数の概念間をリンクにより関連付けると共に前記概念に推薦候補情報を関連付けた有向非巡回グラフからなる概念構造を利用し、前記各概念又は当該概念に至るリンクに利用者の嗜好に応じた強度情報を設定した嗜好モデル情報を記憶する手段と、
利用者が入力した任意の情報を当該利用者の識別情報と共に受付ける入力手段と、
前記受付けた情報と関連を持つ第1の概念群を、前記記憶された嗜好モデル情報をもとに特定する概念特定手段と、
前記特定された第1の概念群を着目クラスとして用いて、当該着目クラスと関連する推薦候補情報を前記嗜好モデル情報から選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された推薦候補情報を前記利用者に提示するために出力する出力手段と
を具備することを特徴とする情報推薦処理装置。
【請求項2】
前記概念特定手段により特定された第1の概念群と関連する第2の概念群を、前記記憶された嗜好モデル情報から特定する関連概念特定手段を、さらに具備し、
前記選択手段は、
前記概念特定手段により特定された第1の概念群を第1の着目率を有する着目クラスとして用いて、当該着目クラスと関連する推薦候補情報を前記嗜好モデル情報から選択する第1の手段と、
前記関連概念特定手段により特定された第2の概念群を前記第1の着目率より低い第2の着目率を有する着目クラスとして用いて、当該着目クラスと関連する推薦候補情報を前記嗜好モデル情報から選択する第2の手段と
を備え、
前記出力手段は、前記第1及び第2の手段により選択された推薦候補情報を前記利用者に提示するために出力することを特徴とする請求項1記載の情報推薦処理装置。
【請求項3】
前記選択手段は、
前記着目クラスとして用いる概念群について、当該着目クラスの着目率と当該概念群に設定された強度情報とをもとに着目クラス強度を計算する手段と、
前記計算された着目クラス強度と、前記着目クラスと当該着目クラスと関連する推薦候補情報との間に予め設定されたコンテンツ強度とをもとに、前記推薦候補情報のインスタンス重要度を計算する手段と
を備え、
前記出力手段は、前記計算されたインスタンス重要度をもとに前記利用者に提示すべき推薦候補情報の表示データを生成し、この生成された推薦候補情報の表示データを出力することを特徴とする請求項1又は2記載の情報推薦処理装置。
【請求項4】
前記出力手段は、
前記計算されたインスタンス重要度が予め設定された閾値以上の推薦候補情報を選択し、この選択された推薦候補情報の表示データを生成する手段と、
前記計算されたインスタンス重要度の順に前記推薦候補情報を並べ替え、この並べ替えられた推薦候補情報の表示データを生成する手段と
の、少なくとも一方を備えることを特徴とする請求項3記載の情報推薦処理装置。
【請求項5】
階層化された複数の概念間をリンクにより関連付けると共に前記概念に推薦候補情報を関連付けた有向非巡回グラフからなる概念構造を利用し、前記各概念又は当該概念に至るリンクに利用者の嗜好に応じた強度情報を設定した嗜好モデル情報を記憶する過程と、
利用者が入力した任意の情報を当該利用者の識別情報と共に受付ける入力過程と、
前記受付けた情報と関連を持つ第1の概念群を、前記記憶された嗜好モデル情報をもとに特定する概念特定過程と、
前記特定された第1の概念群を着目クラスとして用いて、当該着目クラスと関連する推薦候補情報を前記嗜好モデル情報から選択する選択過程と、
前記選択手段により選択された推薦候補情報を前記利用者に提示するために出力する出力過程と
を具備することを特徴とする情報推薦処理方法。
【請求項6】
前記概念特定過程により特定された第1の概念群と関連する第2の概念群を、前記記憶された嗜好モデル情報から特定する関連概念特定過程を、さらに具備し、
前記選択過程は、
前記概念特定手段により特定された第1の概念群を第1の着目率を有する着目クラスとして用いて、当該着目クラスと関連する推薦候補情報を前記嗜好モデル情報から選択する第1の過程と、
前記関連概念特定過程により特定された第2の概念群を前記第1の着目率より低い第2の着目率を有する着目クラスとして用いて、当該着目クラスと関連する推薦候補情報を前記嗜好モデル情報から選択する第2の過程と
を備え、
前記出力過程は、前記第1及び第2の手段により選択された推薦候補情報を前記利用者に提示するために出力することを特徴とする請求項5記載の情報推薦処理方法。
【請求項7】
前記選択過程は、
前記着目クラスとして用いる概念群について、当該着目クラスの着目率と当該概念群に設定された強度情報とをもとに着目クラス強度を計算する過程と、
前記計算された着目クラス強度と、前記着目クラスと当該着目クラスと関連する推薦候補情報との間に予め設定されたコンテンツ強度とをもとに、前記推薦候補情報のインスタンス重要度を計算する過程と
を備え、
前記出力過程は、前記計算されたインスタンス重要度をもとに前記利用者に提示すべき推薦候補情報の表示データを生成し、この生成された推薦候補情報の表示データを出力することを特徴とする請求項5又は6記載の情報推薦処理方法。
【請求項8】
前記出力過程は、
前記計算されたインスタンス重要度が予め設定された閾値以上の推薦候補情報を選択し、この選択された推薦候補情報の表示データを生成する過程と、
前記計算されたインスタンス重要度の順に前記推薦候補情報を並べ替え、この並べ替えられた推薦候補情報の表示データを生成する過程と
の、少なくとも一方を備えることを特徴とする請求項7記載の情報推薦処理方法。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれかに記載の情報推薦装置が具備する手段による処理を、情報処理装置が備えるコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−174136(P2012−174136A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37512(P2011−37512)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】