説明

情報提供システム

【課題】提供すべき情報が複数ある場合に、例えばユーザが車両を運転中である場合に、その運転状況に応じ、安全性を損なうことなく情報を提供する技術を実現すること。
【解決手段】本発明においては、各情報に複数の評価因子に関する評価値を付与する。例えばユーザがドライバである場合、運転状況に応じて変化する評価因子の優先順位を決定する。そして、各情報の評価因子の評価値と評価因子の優先度から各情報の全体としての重要度を決定する。さらに、各情報には、時間的・空間的な有効範囲があり、その有効範囲内で最大限多くの情報を提供するか或いは提供する情報の優先度の和が最大になるようにするかの何れかで情報提供タイミングをスケジューリングする。情報を提供することが許される運転状況において、優先度が高いものから情報を提供するように制御する。なお、上記の評価因子の優先度は、過去の履歴から適応的に調整するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供システムに関し、特に、車両を運転中のドライバに対して、運転状況に基づいて選択された情報を、安全性を損なわないタイミングで提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車を運転中のユーザに対して、種々の情報を提供する装置が提案されている。例えば、特許文献1(特開2008−213609号公報)には、表示画面の表示処理速度を向上させ、車両の搭乗者へ迅速に適切なタイミングで情報の伝達を行うことが可能な画像表示制御装置が開示されている。この画像表示制御装置では、複数の車載装置から入力される画像データを画像メモリに展開した後に、画像の優先順位に基づいて表示装置に表示する画像が決定される。特に、この画像表示制御装置では、車両の運行にかかる危険を報知する危険報知画像の画像データを予め画像メモリに展開しておくことにより、危険報知画像の表示が迅速かつ優先的に表示される。
【0003】
また、特許文献2(特開2010−179783号公報)には、運転者に対して同時に複数の情報が提示されたときに、運転者に混乱を与えず、且つ、そのときの運転者にとってより有益な情報を提供する手法が開示されており、この手法では、予め決められた情報の報知優先度に従って各種の報知態様で運転者に対する情報の報知がなされる。
【0004】
さらに、特許文献3(特開2009−186407号公報)には、優先順位のみに基づいて情報を表示させた場合には、表示が頻繁に切り替ってしまうために運転者が煩わしさを感じてしまうといった問題を解決すべく、予測ルート上で提供する情報を予め決定し、予め決められた優先順位に基づいて、表示の切り替え回数ができるだけ少なくなるようにスケジューリングする手法が提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1には、表示する画像の画像データに音声情報が付随している場合にはこの音声情報も提供することに言及されてはいるものの、音声情報が画像に付随しない場合に、音声情報をどのようにして搭乗者に迅速かつ適切なタイミングで伝達を行うのか、具体的には、提供されるべき音声情報の優先度を如何なる評価要素で決定するのかという点については何ら言及されていない。
【0006】
また、特許文献1に開示の方法は、予め情報ごとに緊急度を定義するルール・テーブルを準備しておく必要があるため、走行状況や運転状況に応じて緊急度を状況に適応させて変化させることができないという問題がある。加えて、情報の優先度を決定するための評価基準が複数ある場合には、当該手法は適用困難であるという問題もある。さらに、緊急度を定義するルール・テーブルが固定されているために、新たな車載情報サービスが追加される場合には情報の緊急度を定義するルール・テーブルを更新する必要が生じるが、その場合にはルール・テーブルは巨大なものとならざるを得ないから、事実上、車載情報サービスが後で追加される場合には情報の優先順位を決めることができないという問題もある。
【0007】
特許文献2や特許文献3に開示の手法では、提供される情報の優先順位は予め決められているため、状況の変化に対応することができないという難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−213609号公報
【特許文献2】特開2010−179783号公報
【特許文献3】特開2009−186407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在では、車両自体に通信機能を有する機器が設置されていたり、携帯端末を媒介として外部のネットワークへ接続することができるようになってきており、外部から、情報サービスのアップデートや新規の情報サービスをインストールできるようになってきている。
【0010】
このような環境下では、情報ごとの重要度を決定するための評価基準を予めすべての情報サービスに徹底することは事実上不可能であり、未知の要素が加わることを想定する必要がある。そして、このような、ユーザに提供可能な情報が常時更新されるような環境下においてユーザに対して適切な情報提供を実現するためには、情報の全体としての重要度が評価できるような方法が必要とされる。
【0011】
情報の全体としての重要度を評価するためには、ひとつの評価基準のみで対応することは事実上不可能であり、複数の評価基準を使った評価が必要となる。しかも、ユーザの置かれる環境は時間的・空間的に頻繁に変化するものであるから、単に複数の評価基準を使って評価を行うことでは不十分であり、全体としての情報の重要度を、ユーザの環境変化に応じて動的に決定することが求められる。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ユーザに提供可能な情報が複数ある場合に、ユーザが置かれている環境の変化に応じて、それらの情報の優先順位を動的に決定し、且つ、ユーザが車両を運転中であっても運転の安全性を損なうことなく情報を提供すべく、情報の選択と提供のタイミングを制御する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を解決するために、本発明の情報提供システムは、ユーザを取り巻く状況に関する環境情報を取得する環境情報センシング部と、前記環境情報に基づいて前記ユーザへの提供情報を生成する情報提供サービス部と、前記提供情報が複数ある場合に、前記ユーザを取り巻く状況に応じて前記複数の提供情報の優先順位を決定する提供情報統合部とを備え、前記情報提供サービス部は、前記提供情報のそれぞれにつき、複数の評価因子と該評価因子に関する評価値を付して前記提供情報統合部へと送信し、前記提供情報統合部は、評価因子重要度管理部と情報重要度評価部とを備え、前記評価因子重要度管理部は、前記ユーザを取り巻く状況が変化した場合に、前記複数の評価因子のそれぞれの重要度を変更し、前記情報重要度評価部は、前記変更後の評価因子重要度に基づいて前記複数の提供情報の重要度を変更し、該変更後の提供情報重要度の順に前記提供情報の優先順位を決定することを特徴とする。
【0014】
また、前記提供情報統合部は、所定の情報の提供可能条件を満たす範囲内で、所定の条件を満たす情報の個数あるいはそれらの重要度の和が最大となるように、情報提供のタイミングをスケジューリングする提供情報スケジューリング部を備えている態様としてもよい。前記所定の情報の提供可能条件を満たす範囲は、例えば、所定の時間的範囲内および空間的範囲である。また、前記所定の条件を満たす情報の個数あるいはそれらの重要度の和は、例えば、ユーザに提供可能な情報の個数または提供する複数の情報の重要度の和である。
【0015】
さらに、前記評価因子重要度管理部は、前記評価因子重要度を、前記ユーザを取り巻く環境に適応的に調整する評価因子重要度学習部を備えており、該評価因子重要度学習部は、前記評価因子重要度を、前記所定の時間的範囲内および空間的範囲内で提供された情報の個数または提供された複数の情報の重要度の総和を報酬として、該報酬の将来に渡る全報酬値の期待値が最大化するように評価因子の重要度を変化させることで学習する態様としてもよい。
【0016】
また、前記評価因子重要度管理部は、前記評価因子重要度を、前記ユーザを取り巻く環境に適応的に調整する評価因子重要度学習部を備えており、該評価因子重要度学習部は、複数の評価因子セット(ポリシー)を管理し、ユーザを取り巻く環境において最も適した評価因子セットを選択するポリシー学習を行う態様とすることとしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ユーザの移動に関わる情報提供サービスが複数存在しており、しかも、例えば、後で車載情報サービスが変更・追加された場合にも、車載情報サービスからドライバへの情報提示要求を、車両の運転状況の危険度やドライバの運転に関わる負荷の程度を考慮し、安全かつ情報をできるだけ多く適切なタイミングに提供することが可能になる。
【0018】
また、車載情報サービス側では、提供する情報の全体としての重要度を定義する必要はなく、そのサービス単独での重要度の値(重要度スコア)を決定するのみで良い。したがって、各車載情報サービスにおける重要度スコアの決定ロジックは、お互い依存することなく、独立に開発することが可能になる。よって、後からのサービスの追加や変更が容易になる。
【0019】
本発明は、情報提供以外にも、使用するリソース(使用メモリ、ネットワーク帯域、CPU時間など)の重要度を決定することに利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の情報提供システムの構成例を説明するためのブロック図である。
【図2】本発明の情報提供システムが備える提供情報統合部の構成例を説明するためのブロック図である。
【図3】本発明の情報提供システムで行われる処理内容を説明するためのフロー図である。
【図4】情報をそのレベルに応じて所定の階層に分類したテーブルである。
【図5】情報Iiに設定されているデータの内容を例示により説明するための図である。
【図6A】情報集合[Ii]に対してノードを割り当てた様子を示す図である。
【図6B】全体の重要度を求めるためにダミー情報のノードI0を設定した場合の様子を示す図である。
【図7】グラフカットベクトルを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明の情報提供システムおよび情報提供方法の実施の態様について説明する。なお、以降の説明では、本発明のユーザは、自動車を運転するドライバであるものとする。
【0022】
図1は、本発明の情報提供システムの構成例を説明するためのブロック図である。この情報提供システム100は、環境情報センシング部101、環境状態管理部102、運転状態管理部103、情報提供サービス部104、提供情報統合部105、および、情報出力部106を備えている。
【0023】
環境情報センシング部101は、車載LAN経由により、時間、位置、車速、加速度、ヨーレート(Yaw Rate)などの車両運動情報、舵角、アクセル開度などの車両操作情報、ドライバの画像や音声あるいは脈派などのドライバ情報等を環境情報として取得する。
【0024】
環境状態管理部102は、環境情報センシング部101が取得した環境情報に基づいて、現在の車両位置周辺の状態を推定する機能を有する。環境状態管理部102は、例えば、日照量、外気温、降雨状態、路面状態の推定などを行う機能を備えている。
【0025】
運転状態管理部103は、環境情報センシング部101が取得した情報に基づいて、現在の運転状態を推定する機能を有する。ここで、運転状態には、停止、進行、右折、左折などの状態が含まれる。
【0026】
情報提供サービス部104は、ユーザに提供する情報を生成し、これを提供情報統合部104に設けられている提供情報管理部201に出力するための手段である。なお、図1に示した情報提供サービス部104は、それぞれが異なるカテゴリの情報を取り扱うM個の情報提供サービス部104−1〜104−Mから構成されている。
【0027】
情報提供サービス部104−1〜104−Mは、それぞれが独立性をもって動作可能であるが、相互に依存関係をもたせて動作させるようにすることもできる。
【0028】
情報提供サービス部104−1は、例えば、前方車両の接近や歩行者検出などの警告を行う情報提供サービスを行う。情報提供サービス部104−2は、例えば、経路案内を行う情報提供サービス(ナビゲーションサービス)を行う。情報提供サービス部104−3は、例えば、立ち寄り場所を推薦する情報提供サービスを行う。情報提供サービス部104−Mは、例えば、エコ運転アドバイスなどの情報提供サービスを行う。
【0029】
これらの情報提供サービス部104−1〜104−Mは、環境情報センシング部101から必要な環境情報を取得し、ユーザに提供する情報を生成し、提供情報統合部104に設けられている提供情報管理部201に出力する。なお、提供情報統合部104の出力状況をフィードバックとして取得し、これを、次にユーザへの提供情報を生成する際に利用するようにしてもよい。
【0030】
提供情報統合部105は、情報提供サービス部104−1〜104−Mから受け取った各情報を、運転状況に合わせて優先順位付けする。そして、この優先順位付けした複数の情報を、所定の時間・空間内でより多くの情報を、あるいは、提供する情報の重要度の総和がより大きくなるように、適切なタイミングで、ユーザに提供することができるように制御するための手段である。
【0031】
情報出力部106は、提供情報統合部105に設けられている情報出力制御部207から出力される情報提供コマンドに従い、ユーザに対して情報を出力する手段である。この図に示した例では、情報出力部106にはN個の情報出力デバイスが設けられている。このような情報出力デバイスには、提供情報のタイプに応じて、例えば、映像表示デバイス、音声出力デバイス、インジケーター、バイブレーションなどのアクチュエーターデバイスなどがあり、これらが複合されたデバイスであってもよい。
【0032】
図2は、本発明の情報提供システム100が備える提供情報統合部105の構成例を説明するためのブロック図である。この提供情報統合部105は、提供情報管理部201、評価因子重要度管理部202、情報重要度評価部203、情報提供スケジューリング部204、経路予測部205、ワークロード予測部206、および、情報出力制御部207を備えている。
【0033】
提供情報管理部201は、情報提供サービス部104−1〜104−Mによって生成された情報を入力バッファ内に記憶し蓄積する。提供情報管理部201は、また、入力バッファ内に蓄積されている情報の中から、後述する情報提供スケジュールに従ってユーザに提供すべき情報を出力バッファに呼び込んで、これらの情報を一時的・暫定的に記憶・蓄積する。さらに、提供情報管理部201は、報提供スケジューリング部204に対し、情報提供スケジュールの作成を指示したり、ユーザを取り巻く状態が変化した場合に、情報提供スケジュールの変更に必要な処理を各構成部に対して指示し、自らも、無効情報を入力バッファ及び出力バッファから削除する。
【0034】
評価因子重要度管理部202は、評価因子管理部202−1と評価因子重要度学習部202−2を備えている。
【0035】
各情報提供サービス部104−1〜104−Mが生成する情報には、それぞれ、複数の評価因子および評価因子ごとの評価値が付与される。但し、情報提供サービス部104−1〜104−Mはそれぞれが独立に動作するため、評価因子の構成は必ずしも一致しない。
【0036】
評価因子重要度管理部202は、提供情報管理部201に情報提供サービス部104−1〜104−Mから入力された情報に付与されている評価因子および評価因子ごとの評価値を記録し、且つ、評価因子相互の重要度を評価して管理する。この評価因子重要度は、情報提供サービス部104−1〜104−Mによって生成された情報の、ユーザへの提供情報としての重要度を評価する際に使用される。
【0037】
評価因子の重要度の値の組は、運転状態ごとに決められている。評価因子管理部202−1は、運転状態管理部103で推定された現在の運転状態が変化した場合に、運転状態に応じて決まる評価因子重要度を切り替える。
【0038】
この運転状態に応じて決まる評価因子重要度は、評価因子重要度学習部202−2によって、環境に適応的に調整される。
【0039】
情報重要度評価部203は、グラフカットベクトル生成部203−1と数理計画問題処理部203−2を備えており、現在の運転状態に応じて、提供情報管理部201に蓄積されている情報の重要度を評価する。この情報重要度評価は、すべての評価因子を勘案して総合的に行われる。特に、本実施の態様においては、階層分析法を拡張した手法により、仮に情報間で評価因子に不整合があっても適用可能な手法が採用される。
【0040】
情報提供スケジューリング部204は、所定の情報の提供可能条件を満たす範囲内で、所定の条件を満たす情報の個数あるいはそれらの重要度の和が最大となるように、情報提供のタイミングをスケジューリングする手段である。
【0041】
ここで、上述の所定の情報の提供可能条件を満たす範囲は、例えば、所定の時間的範囲内および空間的範囲である。また、上述の所定の条件を満たす情報の個数あるいはそれらの重要度の和は、例えば、ユーザに提供可能な情報の個数または提供する複数の情報の重要度の和である。
【0042】
図示した構成例では、情報提供スケジューリング部204は、提供情報数最適化部204−Aを備えており、すべての評価因子を勘案して総合的に下された情報重要度がそれぞれに付与された複数の情報を、所定の時間・空間内でできるだけ多くユーザに提供すべく、情報の割り振り処理を行う。この割り振り処理は、情報重要度スコアの高いものから優先的に行われる。各情報には、その提供を可能な運転状態と提供時間を指示するデータが付与されている。これらのデータに基づいて、当該情報を提供するタイミング(順番)を最適化することで、より多くの情報を提供可能とする。
【0043】
このような、すべての評価因子を勘案した総合的な情報重要度に基づく情報の割り振り処理と情報提供のタイミングの最適化処理により、ユーザに対して提供する情報のスケジューリングが行われる。以下では、その結果を、情報提供スケジュールと呼ぶ。
【0044】
経路予測部205は、ナビゲーションシステムに設定された目的地がある場合には、現在地から目的地までの経路を管理する。また、経路予測部205は、過去の経路予測と現在の環境情報とを比較し、その結果に基づき、経路予測の必要性を評価し、経路予測が必要であると判断した場合には、当該経路を予測する機能を備えている。
【0045】
経路予測部205は、さらに、環境情報センシング部101で取得された環境情報が上記予測経路と矛盾するものであるか否かを判断する機能を備えている。この判断の結果が矛盾有りの場合には、現在地が当初の予測経路から所定の距離以上離れている等の事情が考えられる。そこで、経路予測部205は、上記判断の結果が矛盾有りの場合には、予測経路を更新(リルート)し、提供情報管理部201に対して予測経路の更新を通知する。
【0046】
なお、この経路予測部205には、目的地が設定されていない場合に、過去の学習結果に基づいて、現在位置、曜日、時刻などの諸条件から自動的に経路を予測する機能をもたせてもよい。
【0047】
ワークロード予測部206は、環境状態管理部102で推定した現在の車両位置周辺の状態(日照量、外気温、降雨状態、路面状態など)に基づいて、ドライバの運転に関わる精神的あるいは認知的な負荷を評価する。このワークロード予測部206は、交差点や急なカーブなどの運転負荷が高くなるエリアに関する情報を管理しており、現在の交通状況から将来の運転負荷を予測する機能も備えている。
【0048】
情報出力制御部207は、情報出力部106に対する出力の制御を行う。上述したように、情報出力部106には情報出力デバイスが設けられている。情報出力制御部207は、ユーザに提供する情報ごとに、情報出力部106に対して発する情報提供コマンドを制御する。なお、ユーザに対して提供される情報の中には、現在出力中の情報に関し、特定の情報提供デバイスからの出力を一時停止させたり取り止めにするといったような特殊な情報もある。例えば、AV情報を提供する場合には、通常は映像情報と音声情報が同時にユーザに提供されるが、映像情報の提供のみを取止めにする必要がある場合には、音声出力デバイスからの情報出力は継続させる一方、映像表示デバイスからの情報出力を取り止めとする。
【0049】
次に、上述の各構成部が行う処理内容について説明する。
【0050】
図3は、本発明の情報提供システムで行われる処理内容を説明するためのフロー図である。なお、各構成部は並列的に動作するが、情報提供サービス部104から出力される情報が処理される流れに沿って説明する。
【0051】
先ず、環境情報センシング部101により、ユーザを取り巻く様々な環境情報(時間、位置、車速、加速度、ヨーレート(Yaw Rate)などの車両運動情報、舵角、アクセル開度などの車両操作情報、ドライバの画像や音声あるいは脈派などのドライバ情報等)が取得される(S101)。環境情報センシング部101は、複数の種々のセンサーから構成されている。各センサーは、一定周期で或いはセンシングしている環境状態に変化が生じたときに、その環境状態を計測する。環境情報センシング部101は、これらのセンサーで取得された環境情報を、所定のタイミングで、情報提供サービス部104および提供情報管理部201へと送信する。
【0052】
情報提供サービス部104は、環境情報センシング部101から送信された環境情報に基づきユーザに提供すべき情報を生成する(S102)。上述の例では、提供すべき情報が前方車両の接近や歩行者検出などの警告等に関するものである場合には、当該情報の生成は情報提供サービス部104−1が行う。また、提供すべき情報が経路案内等に関するものである場合には、当該情報の生成は情報提供サービス部104−2が行う。また、提供すべき情報が立ち寄り場所の推薦等に関するものである場合には、当該情報の生成は情報提供サービス部104−3が行う。さらに、提供すべき情報がエコ運転アドバイス等に関するものである場合には、当該情報の生成は情報提供サービス部104−Mが行う、といった具合である。
【0053】
情報提供サービス部104は、このようにして生成した情報を、所定のタイミングで、提供情報管理部201へ送信する(S103)。
【0054】
提供情報管理部201は、この情報を、情報提供サービス部104が生成し提供情報管理部201に送信した情報を一時的・暫定的に記憶・蓄積しておく手段である入力バッファに格納する(S104)。
【0055】
提供情報管理部201は、情報提供スケジューリング部204に対し、情報提供スケジュールの作成を指示し、情報提供スケジューリング部204が情報提供スケジュールを作成する(S105)。提供情報管理部201は、また、入力バッファ内に蓄積されている情報の中から、当該情報提供スケジュールに従ってユーザに提供すべき情報を呼び込んで、これらの情報を一時的・暫定的に記憶・蓄積しておく手段である出力バッファに格納する(S106)。
【0056】
[情報スケジュールの変更の手順]
情報提供スケジュールは、ユーザを取り巻く環境の変化に伴って、以下の手順により変更される。提供情報管理部201は、所定の周期でのタイマー割り込み、或いは、環境状態管理部102、運転状態管理部103、経路予測部205などからの状態変化の通知を受けた場合には、一般には、情報提供スケジュールの変更が必要となるため(S107:Yes)、当該変更に必要な処理を各構成部に対して指示する(S111)。なお、情報提供スケジュールの変更が不要な場合には(S107:No)、後述するステップS108に進む。
【0057】
この情報提供スケジュールの変更処理(S112)は、(i)提供情報管理部201による、「無効情報」の入力バッファ及び出力バッファからの削除処理、(ii)重要度評価部203による、入力バッファ及び出力バッファに格納されている情報の重要度を評価する処理、および、(iii)提供情報スケジューリング部204による、予測経路上における情報提供のスケジューリングの処理、の3つのサブ処理により実行される。なお、ステップS105における情報提供スケジューリング部204による情報提供スケジュールも、処理内容は同様である。
【0058】
ここで、上述の「無効情報」とは、ユーザを取り巻く環境の変化によって最早ユーザに対して提供することに意味がなくなった情報や提供すべきではない情報等を意味し、ユーザに対する提供が無効となったり無効とすべき情報である。
【0059】
また、上記(ii)の、入力バッファ及び出力バッファに格納されている情報の重要度を評価する処理は、(a)後述する「評価因子ハイパースコア」に基づいて評価因子の優先順位を決定する処理、(b)各評価因子に関する情報の優先度を決定する処理、および、(c)評価因子の優先度と各評価因子における各情報の優先度から総合的な優先度を決定する処理、の3つのサブ処理からなる。
【0060】
上述の、提供情報管理部201による、無効情報の入力バッファ及び出力バッファからの削除処理は、具体的には下記のように行われる。提供情報管理部201は、所定の周期でのタイマー割り込み、或いは、環境状態管理部102、運転状態管理部103、経路予測部205などからの状態変化の通知を受けると、無効となった情報を、上述の入力バッファ又は出力バッファ乃至これら両バッファから削除することで、バッファ内の格納情報を更新する。例えば、バッファに格納されている情報が、現在時刻ではすでに期限切れとなっている場合(有効時間を経過している場合)、あるいは、現在位置及び予測経路に照らして有効エリア外の情報であるような場合、提供情報管理部201は、これらの無効情報を、入力バッファあるいは出力バッファから破棄する。
【0061】
また、上述の、重要度評価部203による、入力バッファ及び出力バッファに格納されている情報の重要度を評価する処理は、入力バッファと出力バッファのいずれかに情報が残っている場合に、情報に付与された評価因子の値(評価因子スコア)の重要度の大小関係を評価することにより、実行される。
【0062】
さらに、上述の、提供情報スケジューリング部204による、予測経路上における情報提供のスケジューリングの処理は、後述する手順により得られた情報Iiの総合重要度に基づいて行われる。
【0063】
以下に、重要度評価部203による、入力バッファ及び出力バッファに格納されている情報の重要度を評価する処理の詳細について説明する。
【0064】
[評価因子情報]
情報提供サービス部104に備えられている各情報提供サービス部104−1〜104−Mが生成し出力する情報には、情報の重要性を評価するための評価因子の値が付与されている。なお、この評価因子の値は、負ではない実数値とする。この評価因子の値を、便宜上、「評価因子スコア」と呼ぶ。
【0065】
図4は、情報をそのレベルに応じて所定の階層に分類したテーブルである。この図に示した例では、4つの階層、すなわち、「警報情報」、「安全情報」、「ナビゲーション情報」、および「メディア情報」に分類されている。「警報情報」は「安全情報」よりも、また「安全情報」は「ナビゲーション情報」よりも、さらに「ナビゲーション情報」は「メディア情報」よりも重要度は高いと考えられる。このため、この順で、高い評価因子スコア(情報階層スコア)が与えられている。
【0066】
この情報階層は、特別な評価因子のひとつであり、各情報提供サービス部104−1〜104−Mにおいて、必須かつ共通に定義されているものとする。なお、各情報提供サービス部104−1〜104−Mは、このような必須かつ共通に定義された評価因子以外にも、固有の評価因子を定義することが許可されるものとする。
【0067】
評価因子自体に関する情報は、評価因子管理部202−1内に蓄積され管理される。また、評価因子管理部202−1では、どの評価因子をより重要視するかを決める評価因子に対する重要度スコア(評価因子ハイパースコア)を設定することも行う。
【0068】
上述した情報階層などの必須の共通評価因子には、それぞれの環境状態と運転状態に対して、予め所定の評価因子ハイパースコアが決められているものとする。つまり、必須の共通評価因子のハイパースコアは、環境状態や運転状態によっては変化しないものとする。
【0069】
それ以外の評価因子も、上述した必須の共通評価因子と同様に、それぞれの環境状態と運転状態に対して予め所定の評価因子ハイパースコアが決められているが、これらの評価因子については、上述した必須の共通評価因子とは異なり、初期値を設定した後に動的に変化させていく。つまり、必須の共通評価因子以外の評価因子のハイパースコアは、環境状態と運転状態の変化に伴って動的に変化することになる。この評価因子のハイパースコアの動的変化の手順については後述する。
【0070】
必須の共通評価因子は、すべての情報提供サービス部104−1〜104−Mと提供情報統合部105において予め決められた既知のものである。一方、情報提供サービス部104−1〜104−Mごとに定義付けされ決定される評価因子は、他の情報提供サービス部や提供情報統合部105とは無関係に存在していてもよい。
【0071】
提供情報管理部201は、情報提供サービス部104から入力された各情報に付与された評価因子を、評価因子管理部202−1へと送信する。評価因子管理部202−1は、それら評価因子が登録済みのものか否かを判断し、未登録の評価因子である場合には、新規の評価因子として登録するとともに、その評価因子ハイパースコアの初期値を設定する。
【0072】
情報階層が異なる情報間の重要度の大小関係は、評価因子のひとつである情報階層に予め付与された所定のスコアの大小関係から定められる。一方、同一の情報階層に属する情報については、情報階層のみから重要度の大小関係を決めることができない。そこで、これらの情報に関しては、情報階層以外の評価因子のスコアの大小関係から、重要度の大小関係を決定する。
【0073】
但し、これらの評価因子は、すべての情報が共通してもっているとは限らない。しかし、このような評価因子に欠損がある場合でも、本発明においては、後述するように全評価因子を統合して重要度の大小関係を決定する。
【0074】
[情報重要度計算]
以下では、入力バッファ及び出力バッファに残っている情報の内、ある情報階層に属するものがN個あると仮定して、これらの情報の重要度の大小関係の決定手順について説明する。ここで、上記N個の情報をそれぞれ、Ii(I = 1, 2,..., N)とする。なお、以下で説明する処理は、情報階層ごとに行われる。
【0075】
図5は、情報Iiに設定されているデータの内容を例示により説明するための図である。評価因子の値は、このようなデータの一部を構成している情報Iiに付与された評価因子がAi個あるとし、このうちの特定の評価因子a(a = 1, 2, ..., Ai)の評価因子データをf[ia]と表記すると、情報Iiに付与されたAi個の評価因子データの集合は[f[ia]](a = 1, 2, ..., Ai)で表記することができる。
【0076】
ここで、情報Iiの、特定の評価因子aのデータf[ia]は、当該評価因子aの識別IDデータであるfid[ia]と、当該評価因子aのスコアデータであるfv[ia]の組から構成されている。つまり、情報Iiの、特定の評価因子aのデータf[ia]は、f[ia] = (fid[ia], fv[ia])と表記される。
【0077】
今、ある識別IDデータで特定される評価因子fidを考える。便宜上、これを評価因子aとする。この評価因子aは、情報Iiの集合{Ii}に含まれるいずれかの情報に付与されているものである。
【0078】
まず、図6Aに示すように、情報集合[Ii]に対してノードを割り当てる。そこに、評価因子aを有する情報Iiと情報Ijとの間を、IiからIjに向かう矢印で結ぶ。このような矢印を単に、エッジと呼ぶことにする。ここではi<jとしている。仮に、i>jである場合には、エッジの向きは、IjからIiとなる。このようにして評価因子の関係を表現するグラフ(評価ネットワーク)が得られる。
【0079】
このような評価ネットワークでは、共通の評価因子をもたない情報の間には、エッジが存在しないことになる。このようにして得られる評価ネットワークは、一般に、複数の連結成分に分割(グルーピング)される。図6Aに示した例では、4つの連結成分に分割されている。
【0080】
評価ネットワークが複数の連結成分からなる場合、異なる連結成分に属する情報同士の重要度を比較することができない。そこで、全体の重要度を求めるために、図6Bのように、ダミー情報のノードI0を設定する。ここで、ダミー情報のノードI0に付与される評価因子スコアは、[Ii|fid∈[f[ia]]]に設定された評価因子スコアの最小値よりも大きくないものとする。また、[Ii|[fid]∩[f[ia]]=φ]であるものについては、後述する一対比較重み値は、同等であるものとする。
【0081】
なお、上記の例では、ダミー情報ノードを追加したが、このようなダミーを追加しないでも、以下に説明する処理をまず各連結成分に対して行った後に、連結成分間の重要度を評価して、各連結成分における重要度スコアと連結成分の重要度スコアとの積を情報の全体としての重要度スコアとすることで提供情報の重要度の大小関係を決定することは可能である。連結成分間の重要度は、たとえば、連結成分内のノード数を全ノード数で割った数とすることができる。この場合、大きな連結成分がより重要視されることとなる。
【0082】
情報Iiには、ある評価因子に関して、他の提供情報との関係全体から定まる重要度wiが定義されると考える。この重要度は、以下のようにして定められるものとする。
【0083】
重要度wiと評価因子のスコアとの間には、下式(1)のような関数関係があるものとする。
【0084】
【数1】

【0085】
ここで、上記関数F(x)は、下式(2)のような性質を持つものとする。
【0086】
【数2】

【0087】
上記関数F(x)として、例えば、下式(3)のような関数を選択することができる。
【0088】
【数3】

【0089】
ここで、
【0090】
【数4】

【0091】
とすると、
【0092】
【数5】

【0093】
となる。
【0094】
上記の式(1)の対数を取り、
【0095】
【数6】

【0096】
と置く。但し、ここで、
【0097】
【数7】

【0098】
である。但し、ダミー情報ノードとのエッジに関しては、
【0099】
【数8】

【0100】
とする。
【0101】
ここで、図6Bに例示した評価ネットワークにおける隣接行列を、下式(9)で定義する。
【0102】
【数9】

【0103】
その結果、上式(6)の関係は、次のように纏められる。
【0104】
【数10】

【0105】
ここで、
【0106】
【数11】

【0107】
また、
【0108】
【数12】

【0109】
である。
【0110】
上式(12)のベクトルは、グラフカットベクトルと呼ばれる。
【0111】
図7は、グラフカットベクトルを説明するための図で、このグラフカットベクトルは、情報に設定されている評価因子スコアから定まる量である。
【0112】
一般に、上式(10)で与えられる連立線形方程式は、変数の数よりも方程式の数の方が多く、代数的な解が存在しない。そこで、
【0113】
【数13】

【0114】
とおき、上式(13)の左辺の誤差ベクトルの各成分の自乗和を最小とするように、上式(11)のベクトルを決定する。このような手順によれば、方程式の数に関わらず、上式(11)のベクトルを決定することができ、下式(14)が得られる。
【0115】
【数14】

【0116】
上式(14)で決定されるベクトルから、
【0117】
【数15】

【0118】
が得られる。
【0119】
上式(15)の左辺(wi)が、情報Iiの重要度となる。
【0120】
本発明では、上述の処理を、評価因子管理部202−1に登録されている評価因子すべてについて実行し、各情報につき、評価因子ごとの重要度を決定する。
【0121】
また、他の情報階層においても上記と同様の処理を行い、情報の重要度を決定する。
【0122】
さらに、評価因子fについても、上述した情報の重要度決定と同様の手順により、評価因子fの重要度(vf)を決定する。この評価因子の重要度決定に際しては、当該評価因子のハイパースコアが用いられる。
【0123】
このようにして求められた情報の重要度と評価因子の重要度に基づき、全評価因子を利用した総合的な情報の重要度(Si)を定義付ける。ここでは、総合的な情報の重要度(Si)を、下式(16)によって定義する。
【0124】
【数16】

【0125】
ここで、wifは、評価因子fに関する情報Iiの総合重要度である。
【0126】
[スケジューリング]
以下に、提供情報スケジューリング部204による、予測経路上における情報提供のスケジューリングの処理の詳細について説明する。この情報提供のスケジューリングは、上述の手順で得られた情報Iiの総合重要度に基づき行われる。
【0127】
情報提供のタイミングは、上述の総合重要度が高い情報から順番に決定していく。このとき、提供できる情報の上記重要度の和が最大になるように情報提供のタイミングが決定される。但し、当該タイミングの最適解を計算することにするとコストは非常に高いものとなる。そこで、本実施の態様では、許容できるコストの範囲内でなるべく最適解に近くなるような解(近似解)を求めることにする。この近似解は、下記の方法で求める。
【0128】
まず、情報に付与された提供時間内のもっとも初期時刻を仮設定する。その時刻における予測位置が提供エリア内であることを確認する。ここで、予測位置は、予測経路情報と直近の過去の一定時間内における平均時速を基に予測される。仮に、提供エリアが指定されていない場合には、そのまま次の処理へ遷移する。また、提供エリア外である場合には、提供時間を所定時間後の時刻へシフトし、提供エリア内に入る時刻を求める。もし、情報がユーザへの提供情報として有効とされている時間(有効時間)内に提供エリアへ入らない場合には、その情報は入力バッファへ戻し、次に重要度の高い情報の提供タイミング決定の処理へ遷移する。
【0129】
提供エリア内に提供時刻が決定できた場合、さらにその予測提供位置におけるワークロード予測を利用し、そのワークロード予測値が情報の属する情報階層において許されるワークロードの上限以下であることを確認する。もし、その時点での提供時刻から提供時間までの時間内に、他の重要度の高い情報の提供が行われている場合には、提供時間を所定時間後の時刻へシフトし、上記の提供時刻決定を繰り返す。
【0130】
もし、有効時間内に、設定できる提供時間が見つからない場合には、その情報は入力バッファへ戻し、次に重要度の高い情報の提供タイミング決定の処理へ遷移する。
【0131】
情報には、上記の処理によって決定された提供時刻に基づき、提供位置を記録する。この位置は、情報を実際に出力するトリガーとして利用する。また、情報を出力バッファへ、提供時刻順に格納する。
【0132】
以上の処理を、すべての情報について行う。
【0133】
上述の例では、情報の重要度そのものを利用したが、提供時間、提供エリアの大きさで割り算して、単位時間、単位面積あたりでの重要度(重要度密度)の大きいものから順番で、上記処理を行って、スケジューリングしても良い。
【0134】
[評価因子重要度学習]
上述したように、運転状態に応じて決まる評価因子重要度は、評価因子重要度学習部202−2によって、環境に適応的に調整される。
【0135】
評価因子重要度学習部202−2は、例えば、評価因子重要度を、所定の時間的範囲内および空間的範囲内で提供された情報の個数または提供された複数の情報の重要度の総和を報酬として、該報酬の将来に渡る全報酬値の期待値が最大化するように評価因子の重要度を変化させることで学習する。
【0136】
また、評価因子重要度学習部202−2は、例えば、複数の評価因子セット(ポリシー)を管理し、ユーザを取り巻く環境において最も適した評価因子セットを選択するポリシー学習を行う。
【0137】
本実施の態様では、評価因子重要度は、所定の範囲で提供できた情報の重要度の総和あるいは提供情報の個数を報酬として、将来に渡る報酬値の総和の期待値(期待報酬と略す)が最大化するように評価因子のハイパースコアを変化させることで学習させることとしている。期待報酬は、走行状態と評価因子セットとの関数との関数である。期待報酬は、将来の報酬に関する割引率の関数にもなるが、ここでは、割引率は一定値とする。
【0138】
この学習を実行するために、期待報酬そのものの代わりに、各評価因子重要度に依存する擬似期待報酬値を、Bellmannの原理に基づき計算する。この擬似期待報酬を用いて、その勾配が正の方向へ評価因子ハイパースコアを設定していくことで、報酬が最大化する方向へ評価因子ハイパースコアを学習させる。
【0139】
勾配の正方向への評価因子ハイパースコアの修正には、まず評価因子のいずれか一つを選択し、その値を正の微少量だけ変化させた時の報酬を計算し、その報酬が、選択された評価因子のハイパースコアを変化させる前に計算した報酬と比較する。報酬値が大きくなった場合には、選択された評価因子のハイパースコアを変化後の値に修正する。また擬似期待報酬も、報酬の増分を追加して修正する。このような修正は、一度に一つの評価因子のみについて行っても良いし、すべての評価因子について繰り返しても良い。
【0140】
また、この方法により、各走行状況において、どの評価因子セットを利用すればよいかというポリシー選択も可能となる。つまり、各走行状況において、もっとも擬似期待報酬値が大きくなる評価因子セットを選択するようにすることで、その走行状況に適する評価因子セットを選択することができる。
【0141】
[出力バッファの情報追加と出力タイミングの処理]
所定の周期で、出力バッファの先頭にある情報の提供位置を確認し、ユーザの現在位置から処理の距離内にあるかを検索する(S108)。この処理は、換言すれば、出力バッファの先頭にある提供情報が、現在のユーザが置かれている環境下において、情報を提供するタイミングにあるか否かの評価である。なお、出力バッファの先頭にある情報の提供位置を確認する処理は、上記のスケジューリングとは非同期に動作するものとする。
【0142】
出力バッファの有効な先頭提供情報が見つかった場合には(S108:Yes)、情報出力部106に対し出力する情報を送信し(S109)、当該情報は情報出力部106から出力されてユーザに提供される(S110)。
【0143】
一方、上述の出力バッファの先頭にある情報の提供位置の確認の結果、出力バッファに情報が挿入されていない場合には(S108:No)、処理を終了する。
【0144】
以上説明したように、本発明によれば、提供すべき情報が複数ある場合に、例えばユーザがドライバである場合に、運転状況に応じ、安全性を損なうことなく情報を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0145】
上述のとおり、本発明によれば、ユーザに提供可能な情報が複数ある場合に、ユーザが置かれている環境の変化に応じて、それらの情報の優先順位を動的に決定し、且つ、ユーザが車両を運転中であっても運転の安全性を損なうことなく情報を提供すべく、情報の選択と提供のタイミングを制御する技術が提供される。
【符号の説明】
【0146】
100 情報提供システム
101 環境情報センシング部
102 環境状態管理部
103 運転状態管理部
104 情報提供サービス部
105 提供情報統合部
106 情報出力部
201 提供情報管理部
202 評価因子重要度管理部
203 情報重要度評価部
204 情報提供スケジューリング部
205 経路予測部
206 ワークロード予測部
207 情報出力制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザを取り巻く状況に関する環境情報を取得する環境情報センシング部と、
前記環境情報に基づいて前記ユーザへの提供情報を生成する情報提供サービス部と、
前記提供情報が複数ある場合に、前記ユーザを取り巻く状況に応じて前記複数の提供情報の優先順位を決定する提供情報統合部と、を備え、
前記情報提供サービス部は、前記提供情報のそれぞれにつき、複数の評価因子と該評価因子に関する評価値を付して前記提供情報統合部へと送信し、
前記提供情報統合部は、評価因子重要度管理部と情報重要度評価部とを備え、
前記評価因子重要度管理部は、前記ユーザを取り巻く状況が変化した場合に、前記複数の評価因子のそれぞれの重要度を変更し、
前記情報重要度評価部は、前記変更後の評価因子重要度に基づいて前記複数の提供情報の重要度を変更し、該変更後の提供情報重要度の順に前記提供情報の優先順位を決定する、ことを特徴とする情報提供システム。
【請求項2】
前記提供情報統合部は、所定の情報の提供可能条件を満たす範囲内で、所定の条件を満たす情報の個数あるいはそれらの重要度の和が最大となるように、情報提供のタイミングをスケジューリングする提供情報スケジューリング部を備えている、請求項1に記載の情報提供システム。
【請求項3】
前記所定の情報の提供可能条件を満たす範囲は、所定の時間的範囲内および空間的範囲である、請求項2に記載の情報提供システム。
【請求項4】
前記所定の条件を満たす情報の個数あるいはそれらの重要度の和は、ユーザに提供可能な情報の個数または提供する複数の情報の重要度の和である、請求項2又は3に記載の情報提供システム。
【請求項5】
前記評価因子重要度管理部は、前記評価因子重要度を、前記ユーザを取り巻く環境に適応的に調整する評価因子重要度学習部を備えており、
該評価因子重要度学習部は、前記評価因子重要度を、前記所定の時間的範囲内および空間的範囲内で提供された情報の個数または提供された複数の情報の重要度の総和を報酬として、該報酬の将来に渡る全報酬値の期待値が最大化するように評価因子の重要度を変化させることで学習する、請求項2乃至4の何れか1項に記載の情報提供システム。
【請求項6】
前記評価因子重要度管理部は、前記評価因子重要度を、前記ユーザを取り巻く環境に適応的に調整する評価因子重要度学習部を備えており、
該評価因子重要度学習部は、複数の評価因子セット(ポリシー)を管理し、ユーザを取り巻く環境において最も適した評価因子セットを選択するポリシー学習を行う、請求項2乃至4の何れか1項に記載の情報提供システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−203867(P2012−203867A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70913(P2011−70913)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(502324066)株式会社デンソーアイティーラボラトリ (332)
【Fターム(参考)】