説明

情報表示装置

【課題】複数の表示電極に対向する領域にて黒系色と白系色のいずれか一方を表示することにより白系色を背景色として黒系色で情報を表示する情報表示装置において、表示電極に接続された配線が表示電極に近接する領域に配置されている場合においても、印刷による位置ずれを生じさせることなく視認性の低下を回避する。
【解決手段】透明導電膜基板20に積層されたマスクフィルム41上において、表示電極11a〜11iに対向しない領域の全面に隠蔽層42が形成されており、この隠蔽層42の透過率が0〜5%であり、また、その表示色が、情報表示層30にて背景色となる白系色となり、かつ、その反射率が、情報表示層30にて背景色が表示される領域における反射率と略等しくなるように混合されたインキを用いて隠蔽層42が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向配置された2つの電極層間に挟み込まれた情報表示層において電極層に印加される電圧に基づいて黒系色と白系色のいずれか一方を表示することにより白系色を背景色として黒系色で情報を表示する情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、情報を表示する表示装置として、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等が用いられており、これらは、テレビ受像機に用いられることによりテレビ局から送信されたテレビ映像を表示したり、パソコンのディスプレイとして用いられることにより、パソコンに保存された情報やインターネットを介して配信された情報を表示したりすることができる。これらの表示装置は、それぞれ一長一短を有しており、例えば、CRTディスプレイは、視野角が広いものの奥行きサイズが厚く、また、液晶ディスプレイは、奥行きサイズが薄いものの視野角が狭く、また、プラズマディスプレイは、視野角が広く奥行きサイズが薄いものの消費電力が多い。
【0003】
近年、上述したような表示装置に加えて、デジタル情報を紙のように薄い表示媒体に表示する薄型の情報表示装置が普及しはじめている。このような薄型の情報表示装置としては、例えば、対向配置された2つの電極層間に、帯電性粒子が液体内に分散した情報表示層を挟み込み、2つの電極層に電圧が印加された場合に帯電性粒子が液体内を移動することにより、情報を表示する電気泳動ディスプレイがある。このような薄型の情報表示装置は、紙のように薄いために携帯がしやすいとともに、消費電力が少なく、また視野角が広く、さらには、電極に印加する電圧によって表示される情報を書き換えることができるとともに、電源を切断した場合でも表示内容を保持できることから、今後のさらなる普及が予想される。
【0004】
図4は、一般的な電気泳動ディスプレイの積層構造を示す図であり、(a)は全体の積層構造を示す図、(b)は(a)に示したA部拡大図である。
【0005】
一般的な電気泳動ディスプレイは図4(a)に示すように、ガラスや透明フィルム等からなる透明基板122の一方の面に透明電極(例えば、ITO:Indium Tin Oxide)121が形成されてなる透明導電膜基板120と、ベース基材113上に積層された絶縁層115との間に情報表示層130が挟み込まれて構成されている。
【0006】
絶縁層115の情報表示層130に対向する面には、情報表示層130を用いて情報を表示するための複数の表示電極111が形成されており、また、絶縁層115の情報表示層130とは反対側の面には、表示電極111に電圧を印加するための配線112が形成されており、複数の表示電極111は、絶縁層115に形成された導通部114を介して配線112に接続されている。
【0007】
情報表示層130は、図4(b)に示すように、隔壁131とシール層134とで囲まれた領域に、帯電性粒子133が分散した隔壁内液体132が収容されて構成されている。隔壁131は、底部と、情報表示層130の外周部となる側部と、側部で囲まれた領域を複数の領域に区画するための壁部とからなり、底部とは反対側の面が開口した形状となっている。そして、底部側が透明導電膜基板120に対向するように積層されており、開口した側にシール層134が積層されている。
【0008】
上記のように構成された電気泳動ディスプレイにおいては、表示電極111に選択的に電圧が印加されると、表示電極111と透明電極121との間に生じた電位差によって隔壁内液体132内にて帯電性粒子133がクーロン力で移動し、表示電極111と透明電極121のいずれか一方の側に引き寄せられる。そして、隔壁内液体132が染料または顔料で着色されており、帯電性粒子133が高屈折率の光散乱成分を含むため、透明導電膜基板120側から見た場合、表示電極111側に帯電性粒子133が引き寄せられた領域が黒系色に見え、また、透明電極121側に帯電性粒子133が引き寄せられた領域が白系色に見え、これら見える色の違いによって所望の情報が表現されることになる。
【0009】
ここで、上述したような電気泳動ディスプレイにおいては、表示電極111と配線112とを接続するために絶縁層115に導通部114を形成する必要があるが、表示電極111に電圧を印加するための配線112を複数の表示電極111間に配置することにより、絶縁層115に導通部114を形成する必要がなくなり、そのための工程が不要となり、さらには、絶縁層115自体も不要となり、コストダウンを図ることができる。
【0010】
ところが、複数の表示電極111間に配線112を配置した場合、表示電極111に配線112を介して選択的に電圧が印加されると、情報表示部130の配線112に対向する領域においても、上記同様に、配線112と透明電極121との間に生じた電位差によって隔壁内液体132内にて帯電性粒子133がクーロン力で移動し、透明導電膜基板120側から見た場合、配線112側に帯電性粒子133が引き寄せられた領域が黒系色に見え、また、透明電極121側に帯電性粒子133が引き寄せられた領域が白系色に見え、それにより、表示電極111によって表示される情報の視認性が低下してしまう場合がある。
【0011】
ここで、情報表示層130のうち、表示電極111間に配置された配線112に対向する領域に隠蔽部を形成し、それにより、表示電極111によって表示される情報の視認性の低下を回避する技術が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。ところが、このように情報表示層130に隠蔽部を形成したものにおいては、表示したい情報、すなわち、表示電極111及び配線112の配置に応じて情報表示層130の形態が一義的に決まってしまうため、情報表示層130の汎用性がなくなってしまう。
【0012】
そこで、透明導電膜基板120の表面、あるいは透明導電膜基板120上に積層されたマスクフィルムの表面において配線112に対向する領域に印刷によって隠蔽部を設けることが考えられる。このように印刷によって隠蔽部を設ければ、表示する情報に応じて情報表示層130自体に特別な加工をする必要がなくなり、情報表示層130の汎用性がなくなることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3099048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したような隠蔽部は、配線に対向する領域、すなわち、表示電極に対向する領域の周囲に設けられることになるが、隠蔽効果がある隠蔽インキの色が、表示電極に対向する領域にて表示される黒系色や白系色とは異なる色であるため、情報が表示される領域においては、黒系色と白系色と隠蔽部の色との3色が表示されることとなり、表示される情報の視認性が大きく低下してしまうことになる。特に、白系色を背景色として黒系色で情報を表示する場合、背景の中に隠蔽部の色が目立つこととなってしまい好ましくない。
【0015】
そこで、透明導電膜基板の表面や、透明導電膜基板上に積層されたマスクフィルムの表面に、隠蔽インキによる層を積層してその上に白色系のインクによる層を積層することによって2層構造の隠蔽部を形成し、それにより、視認性を低下させることなく配線による情報表示層の表示色を隠蔽することが考えられる。
【0016】
ところが、透明導電膜基板の表面や、透明導電膜基板上に積層されたマスクフィルムの表面に2層構造の隠蔽部を形成する場合、隠蔽インキによる層と白色系のインクによる層との間にて位置ずれが生じる虞れがあり、位置ずれが生じた場合、位置ずれが生じた領域においてそのずれによる色の違いが生じてしまい、情報の視認性がさらに低下してしまうという問題点がある。なお、この隠蔽インキ及び白色系のインクの積層をインクジェット印刷によって行えば、隠蔽インキによる層と白色系のインクによる層との間にて位置ずれは生じにくいが、製造コストが高くなってしまう。
【0017】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、複数の表示電極に対向する領域にて黒系色と白系色のいずれか一方を表示することにより白系色を背景色として黒系色で情報を表示する情報表示装置において、表示電極に接続された配線が表示電極に近接する領域に配置されている場合においても、印刷による位置ずれを生じさせることなく視認性の低下を回避することができる情報表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明は、
ベース基材上に形成された複数の表示電極からなる第1の電極層と、前記第1の電極層の前記ベース基材とは反対側に対向配置された第2の電極層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に挟み込まれた情報表示層と、前記ベース基材の前記第1の電極層が形成された面に前記複数の表示電極に接続されて形成された配線と、前記情報表示層を用いて可変情報を表示する可変表示部とを有し、前記複数の表示電極と前記第2の電極層との間の電位差が前記複数の表示電極毎に第1及び第2の電位差のいずれか一方とされることにより、前記可変表示部を前記第2の電極層側から見た場合に、前記情報表示層の前記第1の電位差とされた領域にて黒系色を表示するとともに、前記情報表示層の前記第2の電位差とされた領域にて白系色を表示することにより、前記可変表示部にて前記白系色を背景色として前記黒系色で情報を表示する情報表示装置において、
前記第2の電極層の前記情報表示層とは反対側において、前記可変表示部のうち前記複数の表示電極に対向しない領域の全面に形成された隠蔽層を有し、
前記隠蔽層は、該隠蔽層の透過率が0〜5%であり、その表示色が、前記情報表示層の前記第2の電位差とされた領域にて表示される白系色となり、かつ、その反射率が、前記情報表示層の前記第2の電位差とされた領域における前記第2の電極層側の反射率と略等しくなるように混合されたインキを用いて形成されている。
【0019】
上記のように構成された本発明においては、ベース基材上に形成され、第1の電極層を構成する複数の表示電極と第2の電極層との間の電位差が複数の表示電極毎に第1及び第2の電位差のいずれか一方とされることにより、可変表示部を第2の電極層側から見た場合に、情報表示層の第1の電位差とされた領域にて黒系色が表示されるとともに、情報表示層の第2の電位差とされた領域にて白系色が表示されることにより、可変表示部にて白系色を背景色として黒系色で情報が表示されることになるが、ベース基材の第1の電極層が形成された面には、複数の表示電極に接続された配線が形成されているため、配線と第2の電極層との間の電位差もこの配線に接続された表示電極と第2の電極層との電位差となり、それにより、配線に対向する領域においても、黒系色と白系色とのいずれか一方が表示されることになる。ところが、可変表示部においては、第2の電極層の情報表示層とは反対側において、複数の表示電極に対向しない領域の全面に隠蔽層が形成されており、この隠蔽層の透過率が0〜5%であり、また、その表示色が、情報表示層の第2の電位差とされた領域にて表示される白系色となり、かつ、その反射率が、情報表示層の第2の電位差とされた領域における第2の電極層側の反射率と略等しくなるように混合されたインキを用いて隠蔽層が形成されているので、隠蔽層が1層構造で構成されながらも隠蔽機能が発揮され、視認性の低下が回避されることとなる。
【0020】
また、隠蔽層の第2の電極層とは反対側の面の一部に、白色インキがベタ印刷されてなるコントラスト強調層を設けることにより、表面に任意の情報を印刷した場合に、その情報の視認性が向上する。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明においては、第2の電極層の情報表示層とは反対側において可変表示部のうち複数の表示電極に対向しない領域の全面に隠蔽層が形成されており、この隠蔽層の構成が、隠蔽層の透過率が0〜5%であり、その表示色が、情報表示層にて背景色となる白系色となり、かつ、その反射率が、情報表示層にて背景色が表示される領域における第2の電極層側の反射率と略等しくなるように混合されたインキを用いて形成されているものとしたため、隠蔽層が1層構造で構成されながらも隠蔽機能が発揮され、表示電極に接続された配線が表示電極に近接する領域に配置されている場合においても、印刷による位置ずれを生じさせることなく配線による視認性の低下を回避することができる。
【0022】
また、隠蔽層の第2の電極層とは反対側の面の一部に、白色インキがベタ印刷されてなるコントラスト強調層を有するものにおいては、表面に任意の情報を印刷した場合に、その情報の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の情報表示装置の実施の一形態を示す図であり、(a)は表面図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は(b)に示したA部拡大図、(d)は可変表示部におけるベース基材上の構成を示す図、(e)は隠蔽層の形状を示す図である。
【図2】図1に示した情報表示装置の動作を説明するための図である。
【図3】図1に示した情報表示装置における情報の見え方を示す図であり、(a)は可変表示部の状態を示す図、(b)は全体の状態を示す図である。
【図4】一般的な電気泳動ディスプレイの積層構造を示す図であり、(a)は全体の積層構造を示す図、(b)は(a)に示したA部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明の情報表示装置の実施の一形態を示す図であり、(a)は表面図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は(b)に示したA部拡大図、(d)は可変表示部2におけるベース基材13上の構成を示す図、(e)は隠蔽層42の形状を示す図である。
【0026】
本形態は図1に示すように、一方の面に第1の電極層を構成する複数の表示電極11a〜11i及び配線12a〜12iが形成されたベース基材13と、ベース基材13の表示電極11a〜11i及び配線12a〜12iが形成された面に対向配置された透明導電膜基板20との間に、情報表示層30が挟み込まれて構成されている。さらに、透明導電膜基板20の情報表示層30とは反対側の面には、透明な材料からなるマスクフィルム41が積層され、このマスクフィルム41上の一部に隠蔽層42が形成され、隠蔽層42上の一部にコントラスト強調層43が形成され、コントラスト強調層43上に「イベントまであと」や「日」という任意の情報4が印字されてなる印字層44が形成されている。
【0027】
ベース基材13は、例えばPET等からなり、情報表示層30と対向する面に、例えば、銀ペーストやカーボンペースト等の導電ペーストや導電インキを用いたスクリーン印刷によって表示電極11a〜11i及び配線12a〜12iが形成されている。
【0028】
表示電極11a〜11iは、ベース基材13上に、表示される情報に応じたパターンで形成されている。本形態は、この表示電極11a〜11iを用いて数字を表示するものであって、表示電極11a〜11iによって9つのセグメントからなる表示部を構成し、この表示電極11a〜11iに対して選択的に電圧が印加され、“0”〜“9”の数字を表示することができる。配線12a〜12iは、ベース基材13の表示電極11a〜11iが形成された面において、その一端がそれぞれ表示電極11a〜11iに接続され、そこから9つのセグメントからなる表示部の外部に引き出され、他端が、表示電極11a〜11iに選択的に電圧を印加するための回路(不図示)に接続されて形成されている。そして、表示電極11a〜11iには、これら配線12a〜12iを介して選択的に電圧が印加されることになる。ここで、表示電極11a〜11d,11f〜11iに電圧を印加するための配線12a〜12d,12f〜12iは、表示電極11a〜11d,11f〜11iの外側に他の表示電極が存在しないことから、表示電極11a〜11d,11f〜11iに接続された一端からそのまま表示部の外部に引き出されているが、表示電極11eに電圧を印加するための配線12eは、表示電極11eが他の表示電極11a〜11d,11f〜11iに囲まれて配置されているため、表示電極11eに接続された一端から、互いに隣接する2つの表示電極11a,11d間を通って表示部の外部に引き出されている。
【0029】
透明導電膜基板20は、ガラスや透明フィルム等からなる透明基板22の一方の面に第2の電極層となる透明電極(例えば、ITO)21が形成されて構成されており、表示電極11a〜11iと透明電極21とが対向配置し、これら表示電極11a〜11iと透明電極21との間に情報表示層30が挟み込まれている。
【0030】
情報表示層30は、隔壁31とシール層34とで囲まれた領域に、帯電性粒子33が分散した隔壁内液体32が収容されて構成されており、表示電極11a〜11iと透明電極21との間に生じた電位差によって帯電性粒子33が隔壁内液体32中を移動することによって情報を表示する。なお、隔壁31は、底部と、情報表示層30の外周部となる側部と、側部で囲まれた領域を、例えば130μm□で複数の領域に区画するための壁部とからなり、底部とは反対側の面が開口した形状となっている。そして、底部側が透明電極21に対向するように積層されており、開口した側にシール層34が積層されている。
【0031】
隠蔽層42は、透明基板22上に積層されたマスクフィルム41の表面のうち、表示電極11a〜11iに対向しない領域の全面に印刷によって形成されており、その材料は後述する。
【0032】
コントラスト強調層43は、隠蔽層42上の一部に白色インキがベタ印刷されることによって形成されており、印字層44によって情報4が表示される固定表示部3の背景部を構成している。
【0033】
以下に、上記のように構成された情報表示装置1の動作について説明する。
【0034】
図2は、図1に示した情報表示装置1の動作を説明するための図であり、表示電極11d,11e,11fが設けられた領域の断面を示す。
【0035】
上記のように構成された情報表示装置1においては、透明電極21に所定の電圧が印加されるとともに、表示電極11a〜11iに選択的に電圧が印加されると、表示電極11a〜11iと透明電極21との間に生じた電位差によって隔壁内液体32内にて帯電性粒子33がクーロン力で移動し、表示電極11a〜11iと透明電極21のいずれか一方の側に引き寄せられていく。そして、隔壁内液体32が染料または顔料で黒色に着色されており、帯電性粒子33が高屈折率の光散乱成分を含むため、透明導電膜基板20側から見た場合、表示電極11a〜11i側に帯電性粒子33が引き寄せられた領域が黒系色に見え、また、透明電極21側に帯電性粒子33が引き寄せられた領域が白系色に見え、これら見える色の違いによって所望の情報が表現されることになる。
【0036】
例えば、透明電極21が0Vとされた状態で、表示電極11dにプラスの電圧が印加されるとともに、表示電極11e,11fにマイナスの電圧が印加されると、情報表示層30の表示電極11dに対向する領域においては、表示電極11dに対して透明電極21側が第2の電位差となるマイナスとなる電位差が生じ、また、情報表示層30の表示電極11e,11fに対向する領域においては、表示電極11e,11fに対して透明電極21側が第1の電位差となるプラスとなる電位差が生じる。すると、隔壁31及びシール層34で囲まれた領域に収容された隔壁内液体32が誘電性物質からなり、帯電性粒子33がプラス電位に帯電しているものであることから、図2に示すように、情報表示層30の表示電極11dに対向する領域においては、帯電性粒子33が透明電極21側に引き寄せられていき、また、情報表示層30の表示電極11e,11fに対向する領域においては、帯電性粒子33が表示電極11e,11f側に引き寄せられていく。
【0037】
そして、隔壁内液体32が染料または顔料で着色されており、帯電性粒子33が高屈折率の光散乱成分を含むため、この情報表示装置1を透明導電膜基板20側から見た場合、可変表示部2において、表示電極11dに対向する領域にて白系色が表示され、また、表示電極11e,11fに対向する領域にて黒系色が表示されるようになる。
【0038】
このように、透明電極21に所定の電圧が印加されるとともに、表示電極11a〜11iに選択的に電圧が印加されることにより、可変表示部2にて白系色を背景色として黒系色で“0”〜“9”の数字が表示されることになる。
【0039】
ここで、隠蔽層42による作用について説明する。
【0040】
隠蔽層42は、隠蔽インキと、黒色インキと白色インキとを含む色調整用インキとが混合されたインキを用いた印刷によって1層構造で形成されている。隠蔽インキは、隠蔽機能を発揮するために、アルミ等の隠蔽機能を有する材料を含んで構成されている。そのため、隠蔽インキのみで隠蔽層42を構成した場合、情報表示層30にて表示される黒系色や白系色を隠蔽することができるものの、隠蔽層42の色が銀色に近い色となってしまい、可変表示部2にて3色が表示されてしまうことになる。
【0041】
そこで、本形態においては、隠蔽インキが含有された混合インキを用い、その含有率を10〜40%とし、さらに、白色インキと黒色インキ、その他、黄色等のインキからなる色調整用インキを混合して隠蔽層42の色を調整する。隠蔽インキは、10%含有されていれば隠蔽機能を発揮するため、最低10%でよい。また、隠蔽インキが含有されたものであっても、上述したような色調整用インキによって、情報表示層30のうち帯電性粒子33が透明電極21側に引き寄せられた領域にて表示される白系色と同一の色とすることができるのであれば、隠蔽インキは40%まで含有させることができる。このような配合とすることにより、隠蔽層42の透過率を0〜5%とすることができ、それにより、表示電極11a〜11i以外の領域における情報表示層30による表示色を隠蔽することができるようになる。なお、隠蔽層42の透過率は、0〜1%が好ましく、また、0〜0.3%がより好ましい。
【0042】
また、情報表示装置1を透明導電膜基板20側から見た場合に、可変表示部2において、隠蔽層42の色が、情報表示層30のうち帯電性粒子33が透明電極21側に引き寄せられた領域にて表示される白系色と同一の色に見えるようにするためには、上記のようにただ単に色を合わせただけでは不十分で、その反射率を合わせる必要がある。情報表示層30のうち帯電性粒子33が透明電極21側に引き寄せられた領域における情報表示層30表面における反射率aは、一般的に26〜43%である。そこで、隠蔽層42の反射率bが、20〜50%となるように、隠蔽インキと上述した色調整用インキとの混合の割合を調整する。なお、隠蔽層42が形成されたマスクフィルム41の反射率を測定する際、反射率測定時に用いる下地の反射濃度が0.07の白板のときの反射率をX、下地の反射濃度が1.52の黒板のときの反射率をYとした場合に、log10(1/Y)−log10(1/X)≦0.15を満たすようにすれば、マスクフィルム41上に形成された隠蔽層42によって、下地の影響を受けない程度に隠蔽効果が生ずることになって好ましい。なお、反射濃度は、log10(1/反射率)で算出される値である。
【0043】
上記のように隠蔽インキと色調整用インキとが混合されたインキを用いた印刷によって隠蔽層42を形成することにより、情報表示装置1を透明導電膜基板20側から見た場合に、可変表示部2において、隠蔽層42の色が、情報表示層30のうち帯電性粒子33が透明電極21側に引き寄せられた領域にて表示される白系色と同一の色に見えるようになる。
【0044】
図3は、図1に示した情報表示装置1における情報の見え方を示す図であり、(a)は可変表示部2の状態を示す図、(b)は全体の状態を示す図である。
【0045】
隠蔽層42を上記のように構成することにより、情報表示装置1を透明導電膜基板20側から見た場合に、隠蔽層42の色が、情報表示層30のうち帯電性粒子33が透明電極21側に引き寄せられた領域にて表示される白系色と同一の色に見えるようになるため、可変表示部2においては、図3(a)に示すように、表示電極11b,11c,11e,11f,11h,11iに対向する領域において帯電性粒子33を表示電極11b,11c,11e,11f,11h,11i側に引き寄せ、表示電極11a,11d,11gに対向する領域において帯電性粒子33を透明電極21側に引き寄せることによって、表示電極11b,11c,11e,11f,11h,11iに対向する領域にて黒系色による情報“3”を表示した場合、表示電極11a,11d,11gに対向する領域の白系色と、表示電極11a〜11iに対向しない領域における色とが同一色に見えることとなる。
【0046】
それにより、図3(b)に示すように、可変表示部2において、白系色を背景色として黒系色によって“3”が表示されることになる。また、表示電極11b,11c,11e,11f,11h,11iに接続された配線12b,12c,12e,12f,12h,12iに対向する領域においても、帯電性粒子33が配線12b,12c,12e,12f,12h,12i側に引き寄せられることによって情報表示層30においては黒系色が表示されるが、隠蔽層42によってその黒系色が隠蔽されることになる。
【0047】
このように本形態においては、透明導電膜基板20の情報表示層30とは反対側に積層されたマスクフィルム41上において、表示電極11a〜11iに対向しない領域の全面に隠蔽層42が形成されており、この隠蔽層42の透過率が0〜5%であり、また、その表示色が、情報表示層30にて背景色となる白系色となり、かつ、その反射率が、情報表示層30にて背景色が表示される領域における反射率と略等しくなるように混合されたインキを用いて隠蔽層42が形成されている構成としたため、印刷による位置ずれを生じさせることなく、表示電極11a〜11iに接続された配線12a〜12iによる視認性の低下を回避することができる。
【0048】
また、固定表示部3においては、任意の情報4が印字されているが、この情報4は、隠蔽層42上に印字されているのではなく、白色インキがベタ印刷されることによって形成されたコントラスト強調層43を背景部として印字されているため、その情報4の視認性を向上させることができる。
【0049】
なお、本形態においては、情報表示層30に積層されたマスクフィルム41の表面のうち、表示電極11a〜11iに対向しない領域の全面に隠蔽層42が形成されているが、マスクフィルム41の表面のうち、可変表示部2内にて表示電極11a〜11iに対向しない領域の全面に隠蔽層42を形成すればよい。
【0050】
また、本形態にて用いたマスクフィルム41の代わりに、透明基材上に水蒸気を通しにくい材料からなる透明バリア層が積層されたバリアフィルムを用いるとともに、ベース基材13として、その表面にアルミ層等、水蒸気バリア性を有する層が積層された構成とすることにより、情報表示装置1の表裏から内部への水蒸気の侵入を抑制することができる。さらには、上述したバリアフィルムとベース基材13とを、その周囲にてホットメルト等の水蒸気バリア性を有する接着手段によって接着すれば、表示電極11a〜11i、情報表示層30及び透明導電膜基板20を封止することができる。 また、本形態においては、情報表示層30として、隔壁内液体32に分散した帯電性粒子33が、表示電極11a〜11iと透明電極21との間の電位差によって表示電極11a〜11i側または透明電極21側に移動して表示が切り替わる垂直型電気泳動方式の薄型表示部材を例に挙げて説明したが、情報表示層30としては、電圧が印加されることにより情報を表示する情報表示層を有するものであれば、コレステリック液晶や電子粉粒タイプのもの等、適宜適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 情報表示装置
2 可変表示部
3 固定表示部
4 情報
11a〜11i 表示電極
12a〜12i 配線
13 ベース基材
20 透明導電膜基板
21 透明電極
22 透明基板
30 情報表示層
31 隔壁
32 隔壁内液体
33 帯電性粒子
34 シール層
41 マスクフィルム
42 隠蔽層
43 コントラスト強調層
44 印字層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基材上に形成された複数の表示電極からなる第1の電極層と、前記第1の電極層の前記ベース基材とは反対側に対向配置された第2の電極層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に挟み込まれた情報表示層と、前記ベース基材の前記第1の電極層が形成された面に前記複数の表示電極に接続されて形成された配線と、前記情報表示層を用いて可変情報を表示する可変表示部とを有し、前記複数の表示電極と前記第2の電極層との間の電位差が前記複数の表示電極毎に第1及び第2の電位差のいずれか一方とされることにより、前記可変表示部を前記第2の電極層側から見た場合に、前記情報表示層の前記第1の電位差とされた領域にて黒系色を表示するとともに、前記情報表示層の前記第2の電位差とされた領域にて白系色を表示することにより、前記可変表示部にて前記白系色を背景色として前記黒系色で情報を表示する情報表示装置において、
前記第2の電極層の前記情報表示層とは反対側において、前記可変表示部のうち前記複数の表示電極に対向しない領域の全面に形成された隠蔽層を有し、
前記隠蔽層は、該隠蔽層の透過率が0〜5%であり、その表示色が、前記情報表示層の前記第2の電位差とされた領域にて表示される白系色となり、かつ、その反射率が、前記情報表示層の前記第2の電位差とされた領域における前記第2の電極層側の反射率と略等しくなるように混合されたインキを用いて形成されている情報表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報表示装置において、
前記隠蔽層の前記第2の電極層とは反対側の面の一部に、白色インキがベタ印刷されてなるコントラスト強調層を有する情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−8318(P2012−8318A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143750(P2010−143750)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】