説明

情報記憶媒体装備支援システム

【課題】有料道路自動料金収受システムを有効に機能させるために、情報記憶媒体の存否に起因する事故を防止できる情報記憶媒体装備支援システムを提供する。
【解決手段】本発明にかかる情報記憶媒体装備支援システムは、有料道路の料金所に設置された路側アンテナとの間で無線通信を行う車載器(1)を搭載した車両(10)において、該車載器(1)に装備される情報記憶媒体(2)が該車載器に正常に装備されていることをエンジン(3)の始動の条件としている。該車両は、専用鍵(4)により作動するエンジン始動部(5)と、該情報記憶媒体が正常に装備されていることを検知するための検知部(6)とを備えていてもよく、或いは、該情報記憶媒体を介して作動するエンジン始動部(7)を備えていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有料道路自動料金収受システムを有効に機能させるための情報記憶媒体装備支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、渋滞緩和等を目的とした有料道路自動料金収受システムが普及している。この有料道路自動料金収受システムとは、有料道路を利用する車両に搭載した車載器に情報記憶媒体であるICカードを挿入し、有料道路の料金所に設置された路側アンテナとの間の無線通信により、車両を停止することなく通行料金の収受を行うものである(非特許文献1参照)。
【0003】
一方、この有料道路自動料金収受システムに関し、様々な料金収受方法が提案されており、例えば特開2002−123846号公報にはプリペイドカードを使用するシステムが、また特開2003−187280号公報にはクレジットカード等の決済手段を併用して通行料金の前納を可能としたシステムが公開されている。
【非特許文献1】ETC便覧平成15年版 財団法人道路システム高度化推進機構発行
【特許文献1】特開2002−123846号公報
【特許文献2】特開2003−187280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現在普及しているシステムや、上記料金収受方法として提案されている各システムでは、料金所を通過するためには、車載に挿入されたICカードの存在が認識される必要がある。そして、車載器に情報記憶媒体であるICカードが挿入されていない場合や、挿入されていても接触不良によりICカードが認識されていない場合には、車載器と路側アンテナとの間の無線通信が可能であっても、料金の支払いを行った車両のみの通行を許可する開閉ゲートが開くことはない。そのため、車両の運転者がICカードを挿入したものと思いこんでいる場合や、接触不良が生じている場合は、運転者の意に反して通行許可ゲートが閉じた状態となり、ゲートへの衝突事故や急ブレーキによる追突事故が引き起こされるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、有料道路自動料金収受システムを有効に機能させるために、情報記憶媒体の存否に起因する事故を防止できる情報記憶媒体装備支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる情報記憶媒体装備支援システムは、有料道路の料金所に設置された路側アンテナとの間で無線通信を行う車載器を搭載した車両において、該車載器に装備される情報記憶媒体が該車載器に正常に装備されていることをエンジンの始動の条件としていることを特徴とする。
【0007】
該車両は、専用鍵により作動するエンジン始動部と、該情報記憶媒体が正常に装備されていることを検知するための検知部とを備えていてもよい。
【0008】
該車両は、該情報記憶媒体を介して作動するエンジン始動部を備えていてもよい。
【0009】
該エンジン始動部は、該情報記憶媒体に記憶されたID番号が正当利用者のものであることを条件に該エンジンを始動させてもよい。
【0010】
該車載器は、該エンジンの作動中に該車両の停止状態を条件に該情報記憶媒体の取り外しを許容し、該車両は、該エンジンの作動中に該情報記憶媒体の取り外されたことを確認し該車両の発進を制限する制限手段を備えていてもよい。
【0011】
該エンジンは、該情報記憶媒体が取り外された状態であることを停止の条件とするものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる情報記憶媒体装備支援システムでは、車載器を搭載した車両において、情報記憶媒体が車載器に正常に装備されていることをエンジンの始動のさせるため、車載器に情報記憶媒体が挿入されていない場合や、挿入されていても接触不良により認識されていない場合には、車両自体が動かず、有料道路を走行することも当然ありえない。従って、有料道路自動料金収受システムにおける情報記憶媒体の存否に起因する事故を、未然に防止できる。
【0013】
車載器を搭載した車両が通常の普及車、すなわち、専用鍵により作動するエンジン始動部を備えたものの場合、情報記憶媒体が正常に装備されていることを検知するための検知部を備えることにより、普及車に大幅な改変を加えることなくこのシステムを適用することができる。
【0014】
一方、車両のエンジン始動部を、情報記憶媒体を介して作動するものとすれば、情報記憶媒体をエンジン始動用の鍵として兼用し、従来の専用鍵を不要にできる。
【0015】
エンジン始動部でエンジンを始動させるにあたり、情報記憶媒体に記憶されたID番号が正当利用者のものであることを始動の条件とすれば、同様の情報記憶媒体を有する第三者により車両が不正に使用されたり、或いは盗まれたりすることを防止できる。また、正当利用者であれば、車両毎に情報記憶媒体を交換することなく単一の情報記憶媒体で複数の車両を利用することや、家族など複数の者がそれぞれ自分の情報記憶媒体を使用して一台の車両を供用することが可能となる。
【0016】
車載器は、エンジンの作動中に車両の停止状態を条件に情報記憶媒体の取り外しを許容すれば、路側アンテナを備えた車線が工事点検等で使用できず有人の料金徴収設備を利用しなければならない場合に、料金所に停車し情報記憶媒体を使用して人の手により料金収受を行うことができる。そして、車両が、エンジンの作動中に情報記憶媒体の取り外された状態であることを確認し車両の発進を制限する制限手段を備えていてば、情報記憶媒体が車載器に再装備されることなしに車両が再発進することを防止できる。
【0017】
また、エンジンは、情報記憶媒体が取り外された状態であることを停止の条件とするものであることが好ましく、この場合、情報記憶媒体の取り外し忘れを防止し、情報記憶媒体の盗難を未然に防ぐことができる。これは、情報記憶媒体の装備が車両を使用するための絶対条件としている本発明にかかる情報記憶媒体装備支援システムでは、車両を使用しないにも関わらず情報記憶媒体が装備された状態で放置され、その放置された情報記憶媒体が盗まれる可能性が高くなるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1を参照しながら、本発明にかかる情報記憶媒体装備支援システムの具体例を説明する。図1は、同システムの構成を示すブロック図である。
【0019】
このシステムは、有料道路の料金所に設置された路側アンテナとの間で無線通信を行う車載器1を搭載した車両10において、車載器1に装備される情報記憶媒体2が車載器1に正常に装備されることをエンジン3の始動の条件としている。
【0020】
このシステムでは、車載器1を搭載した車両10において、情報記憶媒体2が車載器1に正常に装備されていることをエンジン3の始動の条件としているため、車載器1に情報記憶媒体2が挿入されていない場合や、挿入されていても接触不良により認識されていない場合には、車両10自体が動かず、有料道路を走行することも当然ありえない。従って、有料道路自動料金収受システムにおける情報記憶媒体2の存否に起因する事故を、未然に防止できる。
【0021】
車両10は、通常の車両、すなわち、専用鍵4により作動するエンジン始動部5を備えたものに、情報記憶媒体2が正常に装備されていることを検知するための検知部6を備えたものとなっている。そして、エンジン3を始動させるにあたり、エンジン始動部5のキーシリンダー5aに専用鍵4を挿入し回動しても、検知部6が情報記憶媒体2の車載器1への挿入を検知しない限り、エンジン3は始動しないようになっている。
こうすると、検知部3を後から取り付けるのみで、普及車に大幅な改変を加えることなくこのシステムを適用することができる。
なお、このシステムが適用されている車両10は、真正の専用鍵4が使用されない場合にエンジン3の始動を制限し、車両の盗難防止を図るための制限手段8を搭載したものとなっている。そして、このような盗難防止機能を備える車両であれば、制御手段8におけるエンジン3を始動させる条件に、情報記憶媒体2が正常に装備されることを加えるのみで、極めて容易にこのシステムを適用させることができる。
【0022】
情報記憶媒体2として、ICカードが利用されている(以下、情報記憶媒体をICカードと称す)。そして、車載器1のカード挿入口1aに挿入することで、車載器1に簡単に装備できるようになっている。また、カード挿入口1aには、取り出しボタン1bが設けられ、車載器1に装備されたICカード2は、このボタン1bを押すことにより取り出せるようになっている。
【0023】
ボタン1bは、車両10の走行中には作動せず、走行中にICカード2が車載器1から取り出されないようになっている。ただし、エンジン3の作動中であっても、車両の停止状態であれば、それを条件としてボタン1bが作動しICカード2の取り外しが可能となっている。
こうすると、路側アンテナを備えた車線が工事点検等で使用できず有人の料金徴収設備を利用しなければならない場合に、料金所に停車しICカード2を使用して人手により料金収受を行うことができる。
一方、前記制限手段8は、エンジン3の作動中にICカード2の取り外された状態であることを確認した場合、エンジン3の回転数を制御しアイドリング状態に保つことで車両10の発進を制限する機能を備えている。
こうすると、ICカード2が車載器1に再装備されることなしに車両10が再発進することを防止できる。なお、制限手段8により車両10の発進を制限すること方法に制限はなく、その他の方法を用いても良い。
【0024】
車載器1には表示部1cが設けられ、運転者に対し必要な情報を表示できるようになっている。
こうすると、料金所に停車しICカード2を使用して人手により料金収受を行った後に、ICカード2が車載器1に再装備されていない旨を表示することにより、ICカード2が車載器1に再装備されていないことを気付かない運転者が、再発進できないことに対し慌てて、誤操作を行う等の問題の発生を防止できる。
なお、表示部1cは、その他の情報の表示に使用することも可能となっている。例えば、前納金が通行料金に満たない場合には、車両10が料金所に進入する前にその旨を音声案内や警告音と共に表示することにより、前納金が十分にあるものと思いこんだ運転者の意に反して通行許可ゲートが閉じた状態となって引き起こされる、ゲートへの衝突事故や急ブレーキによる追突事故を未然に防止できる。
【0025】
エンジン3の停止は、エンジン始動部5のキーシリンダー5aに挿入された専用鍵4を、エンジン3の始動時と反対の方向に回動させることにより実行できる。ただし、この際、検知部6がICカード2の装備状態を検知した場合、エンジン3は停止することなく、動き続け、ICカード2が取り外されたときに停止するようになっている。
こうすると、ICカード2の取り外し忘れを防止し、ICカード2の盗難を未然に防ぐことができる。
【0026】
図2を参照しながら、本発明にかかる情報記憶媒体装備支援システムの他の具体例を説明する。図2は、同システムの構成を示すブロック図である。
【0027】
このシステムは、上記具体例のシステムにおける車両10のエンジン始動部5の構成を変えたものとなっている。すなわち、このシステムにおいて、車両10は、車載器1を包含し情報記憶媒体(ICカード)2により作動するエンジン始動部7を備えたものとなっている。なお、その他の点は上記具体例と実質的に同様であるため、同符号を付し、その説明は省略するものとする。
こうすると、情報記憶媒体(ICカード)2をエンジン3始動用の鍵として兼用し、従来の専用鍵を不要にできる。
【0028】
エンジン始動部7は、ICカード2をカード挿入口1aに挿入した後、表示部1cに表示される始動ボタン7aを押すことにより始動するものとなっている。ただし、始動の指示方法に制限はなく、例えばICカード2をカード挿入口1aに挿入すれば、所定の時間(10秒など)経過後に始動させるプログラム等を使用してもよい。
このエンジン3の始動に際しては、ICカード2に記憶されたID番号が正当利用者のものであるかどうかが確認され、正当利用者であると判断された場合にのみエンジン3が始動するようになっている。
こうすると、同様のICカードを有する第三者により車両10が不正に使用されたり、或いは盗まれたりすることを防止できる。また、正当利用者であれば、車両毎にICカードを交換することなく単一の情報記憶媒体で複数の車両を利用することや、家族など複数の者がそれぞれ自分のICカードを使用して一台の車両を供用することが可能となる。
【0029】
始動ボタン7aは、エンジン3の作動時には停止ボタンとして機能し、エンジン3の停止は、その作動時にボタン7aを押すことにより実行できる。ただし、この際、エンジン始動部7がICカード2の装備状態を検知した場合、エンジン3は停止することなく、動き続け、ICカード2が取り外されたときに停止するようになっている。
こうすると、ICカード2の取り外し忘れを防止し、ICカード2の盗難を未然に防ぐことができる。
なお、エンジン3を停止させるボタンは、始動ボタン7aとの兼用とせず、別に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にかかる情報記憶媒体装備支援システムの具体例の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明にかかる情報記憶媒体装備支援システムの他の具体例の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0031】
1 車載器
2 情報記憶媒体
3 エンジン
4 専用鍵
5、7 エンジン始動部
6 検知部
8 制限手段
10 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有料道路の料金所に設置された路側アンテナとの間で無線通信を行う車載器(1)を搭載した車両(10)において、該車載器(1)に装備される情報記憶媒体(2)が該車載器(1)に正常に装備されていることをエンジン(3)の始動の条件としていることを特徴とする情報記憶媒体装備支援システム。
【請求項2】
該車両(10)は、専用鍵(4)により作動するエンジン始動部(5)と、該情報記憶媒体(2)が正常に装備されていることを検知するための検知部(6)とを備えている請求項1に記載の情報記憶媒体装備支援システム。
【請求項3】
該車両(10)は、該情報記憶媒体(2)を介して作動するエンジン始動部(7)を備えている請求項1に記載の情報記憶媒体装備支援システム。
【請求項4】
該エンジン始動部(7)は、該情報記憶媒体(2)に記憶されたID番号が正当利用者のものであることを条件に該エンジン(3)を始動させる請求項3に記載の情報記憶媒体装備支援システム。
【請求項5】
該車載器(1)は、該エンジン(3)の作動中に該車両の停止状態を条件に該情報記憶媒体(2)の取り外しを許容し、該車両(10)は、該エンジン(3)の作動中に該情報記憶媒体(2)の取り外された状態であることを確認し該車両(10)の発進を制限する制限手段(8)を備えている請求項1〜4のいずれか一つの項に記載の情報記憶媒体装備支援システム。
【請求項6】
該エンジン(3)は、該情報記憶媒体(2)が取り外された状態であることを停止の条件とする請求項1〜5のいずれか一つの項に記載の情報記憶媒体装備支援システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−209221(P2006−209221A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17027(P2005−17027)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(505398941)東日本高速道路株式会社 (66)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【出願人】(505398963)西日本高速道路株式会社 (105)
【Fターム(参考)】