説明

情報読取装置

【課題】原稿の情報を読み取る際に原稿の斜行を防止して原稿の情報を安定して読み取ることができる情報読取装置を提供する。
【解決手段】情報読取装置の一例である磁気インク文字読取装置10は、記録媒体である原稿70を幅方向及び厚さ方向と直交する方向に搬送する搬送機構と、搬送される原稿70において中心線から一方の幅方向端側へずれた位置に保持された磁気インク文字を読み取る接触式の磁気ヘッド24と、原稿70を磁気ヘッド24に押圧する対向ローラ26aと、磁気ヘッド24と対向ローラ26aが原稿70に与える摩擦抵抗に起因する回転モーメントを打ち消す摩擦抵抗を、搬送される原稿70の中心線から他方の幅方向端側へずれた位置において原稿70に与える摩擦抵抗付与ユニットを備え、摩擦抵抗付与ユニットは、摩擦抵抗付与部材50と、摩擦抵抗付与部材50に原稿70を押圧する対向ローラ26bを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパーソナルチェックから磁気インク文字(MICR:Magnetic Ink Character Recognition)を読み取る装置等のように、シート状の記録媒体に印刷された情報を読み取る情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行等の金融機関に持ち込まれた手形・小切手等(以下「原稿」と記す)は、画像読取装置による原稿の両面の画像読取と、原稿に印刷されたMICR文字を読み取る装置による自動分別集計とが行われた後に手形交換所に持ち込まれている。これにより、原稿の紛失防止が図られている。
【0003】
ここで、手形交換所への原稿の持ち込み前の作業効率を向上させるために、原稿の両面の画像読取と原稿に印刷されたMICR文字からの磁気情報の読み取りとの両方の処理を行うことができる読取装置が実用化されている。
【0004】
この読取装置では、原稿を搬送しながら、CCDやCIS(Contact Image Sensors)で原稿の両面の画像を読み取り、読み取られた画像データをデジタル処理して、コンピュータで管理・運用できるようになっている。原稿におけるMICR文字の印刷位置は予め定められているため、この読取装置における原稿の搬送路の所定の位置には、MICR文字を読み取る磁気ヘッドが設けられると共に、磁気ヘッドによるMICR文字の読み取り前にMICR文字の磁化方向を整列させるための永久磁石が磁気ヘッドの近傍に設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、読取装置に組み込まれる原稿搬送装置には、ピックアップローラ、給送ローラ、搬送ローラ等が、搬送される原稿の中心線に対して左右均等に配置される構成(以下「幅方向に対称な搬送機構」という)が採用されることも多い。これは、原稿の左右の送り量の差による斜行や、原稿サイズによる送り量の差による読取画像のゆがみ等を軽減することができ、精度の高い原稿搬送を実現することができるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−43503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、MICR文字は原稿の中心線上に印刷されておらず、原稿の幅方向の端部から所定の距離だけ離れた位置(つまり、原稿を紙幅方向に二等分する中心線からずれている位置)に印刷されている。よって、読取装置では、MICR文字を読み取る磁気ヘッドを、搬送される原稿の中心線上の位置に配置することができない。
【0008】
原稿に印刷されたMICR文字を読み取るためには、磁気ヘッドを原稿に接触させなければならない。そのため、原稿を幅方向に対称な搬送機構で搬送した場合でも、搬送中に磁気ヘッドから受ける摩擦抵抗の分だけ、原稿の中心線より左側の部分と右側の部分のうち磁気ヘッドが配置されている側において、摩擦抵抗は大きくなる。そして、このような摩擦抵抗の差によって、原稿に回転モーメントが生じ、原稿が斜行してしまうという問題が生じる。原稿に斜行が発生すると、MICR文字が磁気ヘッドの読取可能領域から逸脱することや、出力波形の劣化が発生してしまい、正確な磁気情報が読み取れなくなる虞がある。
【0009】
原稿の斜行を防止する方法としては、原稿搬送路に原稿の搬送方向に沿って原稿を誘導するためのガイドを設ける方法も考えられるが、装置構成が複雑になるという問題があり、また種々のサイズの原稿に対する汎用性が必要な読取装置では採用は難しい。また、原稿が軟らかい場合には原稿の斜行をガイドによって防止することは困難であり、逆に、斜行した原稿がガイドに衝突することで原稿が変形し、原稿が破損したり、読取装置にジャムが発生する虞がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、原稿搬送路に原稿搬送用のガイドを設けることなく、原稿の情報を読み取る際に原稿の斜行を防止して原稿の情報を安定して読み取ることができる情報読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る情報読取装置は、シート状の記録媒体をその幅方向及びその厚さ方向と直交する方向に搬送する搬送機構と、前記搬送機構によって搬送される前記記録媒体においてその中心線から一方の幅方向端側へずれた位置に保持された情報を読み取る接触式の情報読取部材と、前記記録媒体の厚さ方向において前記記録媒体を前記情報読取部材に押圧する押圧部材と、を備える情報読取装置であって、前記情報読取部材と前記押圧部材が前記記録媒体に与える第1の摩擦抵抗に起因する回転モーメントを低減する第2の摩擦抵抗を、前記搬送機構によって搬送される前記記録媒体の中心線から他方の幅方向端側へずれた位置で前記記録媒体に付与する摩擦抵抗付与ユニットを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、原稿搬送路に原稿搬送用のガイドを設けないことで汎用性を確保しつつ、原稿の中心線より左の部分と右の部分との両方に対して働く摩擦抵抗のバランスを保ちながら搬送することにより原稿の斜行が防止されるため、安定して情報を読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る磁気インク文字読取装置の概略構造を示す側断面図である。
【図2】図1の磁気インク文字読取装置における磁気ヘッド周りの概略構造を示す斜視図である。
【図3】図1に示される磁気インク文字読取装置が備える対向ローラの詳細な構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、情報読取装置として、小切手等の原稿に印刷された磁気情報の1つである磁気インク文字(MICR文字)を読み取る磁気インク文字読取装置を取り上げることとする。
【0015】
《磁気インク文字読取装置の概略構造》
図1は、本発明の実施形態に係る磁気インク文字読取装置の概略構造を示す断面図である。後に説明する図2との対比を容易とするために、図1に三次元直交座標(X軸/Y軸/Z軸)を設定する。Y軸は図1が描画されている紙面に垂直な軸である。
【0016】
磁気インク文字読取装置10は、MICR文字が印刷された記録媒体である小切手等の原稿70を載置する昇降トレイ12と、昇降トレイ12を上昇/下降させる昇降装置14とを備えている。昇降トレイ12に積載された原稿70は、ピックアップローラ16によりピックアップされる。また、磁気インク文字読取装置10は、ピックアップローラ16によりピックアップされた原稿70を磁気インク文字読取装置10内に供給するための給送ローラ18と、ピックアップされた原稿70を1枚ずつ分離する分離ローラ20とを備えている。給送ローラ18と分離ローラ20の下流側にはレジストローラ対21が備えられている。
【0017】
以下、磁気インク文字読取装置10の構成要素について、原稿70の搬送される搬送路90に沿って説明する。ピックアップローラ16、給送ローラ18、分離ローラ20及びレジストローラ対21を含め、搬送路90に沿って配設された後述の各種ローラが磁気インク文字読取装置10における搬送機構を構成する。
【0018】
給送ローラ18と分離ローラ20の下流側には、原稿70に印刷されたMICR文字の磁化方向を整列させるための2個の永久磁石22が、搬送路90を挟むようにして配設されている。
【0019】
MICR文字から磁気情報を読み取る情報読取部材としての磁気ヘッド24が一方(給送ローラ18側)の永久磁石22の下流側に配設されている。そして、他方(分離ローラ20側)の永久磁石22の下流側には、搬送路90を挟んで磁気ヘッド24と対向するように、対向ローラ26aが第1の押圧部材として配置されている。対向ローラ26aは、搬送されている原稿70を磁気ヘッド24に押圧して密着させる役割を果たす。
【0020】
なお、磁気ヘッド24周りの構造については、後に図2を参照して詳細に説明することとし、また、対向ローラ26aの詳細な構造については、後に図3を参照して詳細に説明することとする。
【0021】
磁気ヘッド24と対向ローラ26aのそれぞれの下流側には、原稿70を搬送するための読取前ローラ対28が配置されている。読取前ローラ対28の下流側には、原稿70の表面画像を読み取る第1画像読取部30と、原稿70の裏面画像を読み取る第2画像読取部32とが、搬送路90を挟んで対向するように配置されている。第1画像読取部30は、原稿70の表面画像をコンタクトガラス82を介して読み取るラインイメージセンサ72を備えており、第2画像読取部32は、原稿70の裏面画像をコンタクトガラス84を介して読み取るラインイメージセンサ74を備えている。
【0022】
第1画像読取部30と第2画像読取部32の下流側には、搬送路90において原稿70を保持しつつ搬送する搬送ローラ対34,36,38が、この順序で配置されている。搬送ローラ対38の下流側には、その上流側での処理が終了した原稿70に日付や原稿70が持込まれた金融機関名等を裏書き印刷するためのエンドーサ40と、原稿70を装置外へと排出するための排紙ローラ対42とが、この順序で配置されている。排紙ローラ対42により装置外に排出された原稿70は排紙トレイ44に載積されるようになっている。
【0023】
《磁気ヘッド周りの構造》
次に、磁気ヘッド24周りの構造について詳細に説明する。図2は、磁気ヘッド24周りの概略構造を示す斜視図であり、図2に示されているX軸/Y軸/Z軸は、図1に示されているX軸/Y軸/Z軸と対応している。図1に示した断面図は、図2に示される矢視A−A断面(Y軸に垂直な断面(Z−X断面))に相当する。
【0024】
磁気インク文字読取装置10の本体部において、搬送される原稿70の幅方向であるY軸方向に当該原稿を二等分する原稿の中心線と一致する位置には、条溝46が形成されている。但し、条溝46は、磁気インク文字読取装置10に必ずしも必要な構成要素ではない。
【0025】
ピックアップローラ16は条溝46より右側の部分と左側の部分が略等しくなるよう配置されており、これによって原稿70のピックアップ時に原稿70が斜行することを防止している。原稿70は、その中心線が条溝46と一致するように、不図示のガイドによって位置決めされた状態で昇降トレイ12に載置されるが、搬送路90には搬送中の原稿70のY軸方向の位置を規制するガイドは設けられていない。
【0026】
条溝46を基準として略線対称の位置関係となるように、2個の給送ローラ18が配置されている。よって、図2には図示していないが、磁気インク文字読取装置10は、2個の給送ローラ18にそれぞれ対応する2個の分離ローラ20を備えている。同様に、条溝46を基準として略線対称の位置関係となるように、2組の読取前ローラ対28が配置されている。
【0027】
ところで、磁気ヘッド24と対向ローラ26aから原稿が受ける摩擦抵抗(第1の摩擦抵抗)としては静止摩擦力、動摩擦力、転がり摩擦力がある。転がり摩擦力は比較的に小さく影響は少ないと考えてもよい。静止摩擦力は磁気ヘッド24等とシート先端が接触したときに短時間働くものであるが、斜行の発生に影響があると考えられる。動摩擦力は磁気ヘッド24等とシートが接触して搬送されている間中は働いており、最も斜行に影響があると考えられる。
【0028】
条溝46を基準として磁気ヘッド24の位置と線対称となる位置には、摩擦抵抗付与部材として、その前面部分の形状が磁気ヘッド24の前面部分の形状と略同等のダミーの磁気ヘッドである、摩擦抵抗付与部材50が配置されている。この摩擦抵抗付与部材50は、原稿70に印刷されたMICR文字等の情報を読み取る機能を備えていない。また、搬送されている原稿70を摩擦抵抗付与部材50に密着させるために、対向ローラ26aと実質的に同一である対向ローラ26bが第2の押圧部材として配置されている。このため、対向ローラ26aの磁気ヘッド24への押圧力と、対向ローラ26bの摩擦抵抗付与部材50への押圧力とは実質的に同一となる。
【0029】
磁気インク文字読取装置10では、摩擦抵抗付与部材50と対向ローラ26bとが、原稿70の搬送時に原稿70に摩擦抵抗(第2の摩擦抵抗)を付与することによってX軸方向の力を及ぼし、磁気ヘッド24等から生じる後述のようなモーメントを低減する摩擦抵抗付与ユニットとして機能する。
【0030】
すなわち、小切手等のMICR文字の印字位置に合わせるため、条溝46からY軸方向に一定距離だけ離れた所定の位置に磁気ヘッド24を配設する必要があり、その位置において原稿70は対向ローラ26aによって磁気ヘッド24に押圧されることになる。そのため、原稿70に磁気ヘッド24と対向ローラ26aからの摩擦抵抗によりX軸方向の力が働く。このとき、摩擦抵抗付与ユニットを設けていなければ、磁気ヘッド24の設置された側にあるレジストローラ対21からの搬送力は摩擦抵抗の分だけ弱められるので、磁気ヘッド24の設置されていない側にあるレジストローラ対21に挟持された原稿の位置を中心として、原稿に図2における反時計周りのモーメントが生じることになる。
【0031】
本実施形態では、条溝46を基準として磁気ヘッド24及び対向ローラ26aの位置と略線対称となる位置に、摩擦抵抗付与ユニットとして摩擦抵抗付与部材50及び対向ローラ26bを設けることによって、原稿70の中心線を境とした左右の部分に対してそれぞれ働くX軸方向の摩擦抵抗を、略同一にすることができる。これにより、原稿70の斜行を防止することができる。
【0032】
ダミーの磁気ヘッドとしての摩擦抵抗付与部材50と磁気ヘッド24とが略同一形状の場合、摩擦抵抗付与部材50において原稿70に接触する部分の材質は、原稿70に接触する磁気ヘッド24の部分の材質と同じか又は動摩擦係数が近似している材質とすることができる。これに限られず、磁気ヘッド24と摩擦抵抗付与部材50のそれぞれが原稿70に与える摩擦抵抗が同等であれば、摩擦抵抗付与部材50の形状や材質は、磁気ヘッド24の形状や材質と異なっていても構わない。また、磁気ヘッド24と摩擦抵抗付与部材50はそれぞれ、原稿70に与える摩擦抵抗の経時変化が近似する特性を備えていることが好ましい。
【0033】
なお、磁気ヘッド24は交換可能に配設されており、例えば、摩耗等によって機能低下が生じた際に交換される。摩擦抵抗付与部材50もまた、磁気ヘッド24と同様に交換可能となっていることが望ましいが、本発明は摩擦抵抗付与部材50が例えば搬送路の壁面部材と一体で交換できない場合も含む。磁気ヘッド24と摩擦抵抗付与部材50とを同時に交換できるようにした場合は、Y軸方向での摩擦抵抗が略同等となる状態を長く維持することができる。
【0034】
ところで、磁気インク文字読取装置10では、給送ローラ18と磁気ヘッド24との間に永久磁石22が配置されているが、条溝46を基準として永久磁石22の位置と線対称となる位置には、永久磁石22は設けられていない。これは、摩擦抵抗付与部材50はMICR文字の読み取りを行わないからであり、また、永久磁石22は搬送される原稿70に対して押圧されるものではないために、原稿70の搬送時に原稿70に摩擦抵抗を与えないからである。
【0035】
《対向ローラ26a,26bの構造》
対向ローラ26a,26bはそれぞれ同じ構造を有しているので、ここでは対向ローラ26aの構造について説明する。図3は、磁気インク文字読取装置10が備える対向ローラ26aの詳細な構成を示す分解斜視図である。
【0036】
対向ローラ26aは、磁気インク文字読取装置10の本体に固定されるホルダ52と、ホルダ52に収納されるバネ(トーションバネ)54と、バネ54によって磁気ヘッド24に押圧されるローラ56とで構成されている。
【0037】
ホルダ52には凸部62が形成されており、バネ54の捲回部(コイル部)64がこの凸部62に回転可能に嵌め込まれている。ホルダ52には穴部68が設けられており、ローラ56の両端に突出したボス66がこの穴部68に回転可能に挿入された状態で、バネ54がボス66に接触してローラ56を押上げることで、対向ローラ26aの磁気ヘッド24への押圧力を与えている。
【0038】
穴部68は角丸長方形状(長円形状)の平面形状に形成されており、ボス66が穴部68の長径方向において可動となっており、バネ54は常にボス66に接触するように動作してローラ56に押圧力を加えている。なお、バネ54のバネ定数は、通常使用される原稿70の厚さ範囲において適切な押圧力が得られるように設定される。
【0039】
このように対向ローラ26aでは、ローラ56が常にバネ54によって適切に押圧された状態で穴部68の長径方向において可動であるため、対向ローラ26aは、原稿70の厚さが変化しても、適切な押圧力を磁気ヘッド24に対して与えることができる。これと同様に、対向ローラ26bは、原稿70の厚さが変化しても、適切な押圧力を摩擦抵抗付与部材50に対して与えることができる。こうして、磁気ヘッド24と摩擦抵抗付与部材50が原稿70に与える摩擦抵抗を略同等にすることができる。
【0040】
《磁気インク文字読取装置10の動作》
磁気インク文字読取装置10が原稿70のMICR文字及び表裏両面の画像を読み取る際の動作について説明する。磁気インク文字読取装置10は、例えば、不図示のパーソナルコンピュータ(PC)に接続されており、PCからの指示によって動作させることができる。そこで、先ず、操作者は、原稿70を昇降トレイ12に積載し、PCから読取処理の開始を指示する。この指示を受けて、昇降装置14が原稿70の積載された昇降トレイ12を上昇させると、ピックアップローラ16と給送ローラ18が原稿70を磁気インク文字読取装置10の搬送路90に取り込む。このとき、分離ローラ20が原稿70を1枚ずつに分離する。
【0041】
搬送路90での原稿70の搬送が開始されると、原稿70のMICR文字に対して永久磁石22による磁化方向の整列が行われ、磁化方向が整列されたMICR文字が磁気ヘッド24によって読み取られる。このとき、原稿70は、磁気ヘッド24と対向ローラ26aとの間に突入すると同時に、摩擦抵抗付与部材50と対向ローラ26bとの間に突入する。その際、対向ローラ26a,26bのそれぞれのローラ56が原稿70の厚み分だけホルダ52側へ移動するが、ローラ56はバネ54の押圧力を常に受けているので、原稿70を磁気ヘッド24及び摩擦抵抗付与部材50に密着させることが可能となる。
【0042】
磁気ヘッド24が原稿70のMICR文字を読み取っている間、原稿70は磁気ヘッド24と対向ローラ26aによって、その中心線から一定距離だけ一方の幅方向端側へずれた位置を挟持された状態となっている。同時に、原稿70は摩擦抵抗付与部材50と対向ローラ26bによって、同じ一定距離だけ中心線から他方の幅方向端側へずれた位置を挟持された状態となっている。
【0043】
これにより、磁気ヘッド24と対向ローラ26aが原稿70に与える摩擦抵抗に起因して生じる回転モーメントは、摩擦抵抗付与部材50と対向ローラ26bが原稿70に与える摩擦抵抗によって打ち消される。つまり、原稿70の中心線の左右で均等に摩擦抵抗が加わっているために、原稿70に回転モーメントが発生せず、原稿70の斜行が防止される。これにより、MICR文字を安定して読み取ることができる。
【0044】
ところで、原稿70の厚さが薄く、こしがない場合には、磁気ヘッド24と対向ローラ26aとによって挟まれた時に、原稿70が紙詰まりしてしまう虞があるため、この問題を予め回避する構造としておく必要がある。
【0045】
磁気インク文字読取装置10では、バネ54のバネ定数は、原稿70を磁気ヘッド24に密着させる力を備えると共に、厚さが薄く、こしのない原稿70であっても紙詰まりしないような適度な押圧力が得られる値に設定される。これにより、原稿の厚さやこしに関係なく、様々な原稿70を搬送することができる。また、磁気ヘッド24及び摩擦抵抗付与部材50と、それらに隣接する上流の各レジストローラ対21との距離を極力短くすることも、こしのない原稿のスムーズな搬送に効果的である。また、対向ローラ26a、26bの磁気ヘッド24、摩擦抵抗付与部材50への押圧を解除する不図示の機構を設けてもよく、原稿のスムーズな搬送に一層効果的である。
【0046】
原稿70のMICR文字の読み取りが行われた後、第1画像読取部30によって原稿70の表面画像が読み取られ、第2画像読取部32によって原稿70の裏面画像が読み取られる。その後、原稿70は搬送ローラ対34,36,38によって挟持搬送され、日付や金融機関名等の裏書き印刷がエンドーサ40によって原稿70に対して行われた後、排紙ローラ対42により排紙トレイ44へと排出される。
【0047】
なお、磁気インク文字読取装置10では、搬送路90に原稿70を案内するガイドを設けていないために、原稿70がガイドに衝突して折り曲げられるということを回避することができ、ジャムの発生も抑制される。また、搬送路90の構成が簡単となり、ガイドの位置を原稿70の形状に合わせて調整する必要もないため、磁気インク文字読取装置10の構造を簡単にすることができる。更に、磁気インク文字読取装置10は、磁気ヘッド24による磁気情報の読み取りの不要なさまざまなサイズの原稿70に対しても、表裏両面の画像データを取得する装置として対応できる汎用性を備えることができる。
【0048】
《その他の実施形態》
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、磁気インク文字読取装置10が備える原稿搬送機構は、その他の要素(部品)を備えていてもよい。
【0049】
例えば、第1実施形態に係る磁気インク文字読取装置10では、永久磁石22と磁気ヘッド24とを原稿の搬送方向に並べて配置し、永久磁石22の上流側にレジストローラ対21を配置した。しかし、これに限定されずに、永久磁石22と磁気ヘッド24との間にレジストローラ対21を設けた構造としてもよい。このような構成であっても、原稿70の搬送をスムーズに行うことができる。
【0050】
また、磁気インク文字読取装置10では、磁気ヘッド24と摩擦抵抗付与部材50とを、条溝46を基準として線対称となる位置に配置することが好適である。しかし、これに限られず、磁気ヘッド24と摩擦抵抗付与部材50によって原稿70にX軸方向において加わる摩擦抵抗が略同等であれば、磁気ヘッド24と摩擦抵抗付与部材50との条溝46を基準として線対称の位置へ配置することは多少緩和してもよい。また、線対称の位置への配置を条件として摩擦抵抗の同等さの程度を多少緩和することもできる。つまり磁気ヘッドに起因する回転モーメントが全て打ち消される必要はなく、所定値以下に低減できればよいからである。なぜなら所定値以下の回転モーメントであれば、許容範囲内の斜行で原稿を搬送できるようになっているからである。
【0051】
更に、対向ローラ26aとして、バネ54がトーションバネであり、ローラ56を回転可能に保持する穴部68が貫通穴であるものを示したが、これに限定されず、例えば、バネ54として板バネが用いられ、穴部68の代わりに条溝を備えた構造であってもよい。
【0052】
摩擦抵抗付与部材の動摩擦係数が、磁気ヘッドのそれと大幅に異なる場合に、対向ローラの押圧力を摩擦抵抗付与部材に対するものと磁気ヘッドに対するものとで異なるようにしてもよい。
【0053】
更に、対向ローラ26aのローラ軸等に粘性摩擦を発生する機構を追加してもよい。
【0054】
上記実施形態では、情報読取装置として、小切手に印刷されたMICR文字を読み取る磁気インク文字読取装置を取り上げたが、これに限定されるものではない。本発明に係る情報読取装置は、シート状媒体であり、且つ、その中心線から幅方向に一定距離ずれた領域に接触式の情報読取部材(接触式センサ)によって読み取られる情報が保持されている原稿から、その情報を読み取る装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 磁気インク文字読取装置
22 永久磁石
24 磁気ヘッド
26a,26b 対向ローラ
50 摩擦抵抗付与部材
52 ホルダ
54 バネ
56 ローラ
62 凸部
64 捲回部
66 ボス
68 穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の記録媒体をその幅方向及びその厚さ方向と直交する方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送機構により搬送される前記記録媒体においてその中心線から一方の幅方向端側へずれた位置に保持された情報を読み取る接触式の情報読取部材と、
前記記録媒体の厚さ方向において前記記録媒体を前記情報読取部材に押圧する押圧部材と、を備える情報読取装置であって、
前記情報読取部材と前記押圧部材が前記記録媒体に与える第1の摩擦抵抗に起因する回転モーメントを低減する第2の摩擦抵抗を、前記搬送機構によって搬送される前記記録媒体の中心線から他方の幅方向端側へずれた位置で前記記録媒体に付与する摩擦抵抗付与ユニットを備えることを特徴とする情報読取装置。
【請求項2】
前記摩擦抵抗付与ユニットは、摩擦抵抗付与部材と、前記摩擦抵抗付与部材に前記記録媒体を押圧する他の押圧部材と、を備えることを特徴とする請求項1記載の情報読取装置。
【請求項3】
前記摩擦抵抗付与部材は、前記情報読取部材と略同形状であり、かつ、前記搬送機構により搬送される前記記録媒体の中心線を基準として前記情報読取部材が配設されている位置と略線対称となる位置に配設されていることを特徴とする請求項2記載の情報読取装置。
【請求項4】
前記摩擦抵抗付与部材において前記記録媒体と接触する部分の動摩擦係数が、前記情報読取部材において前記記録媒体と接触する部分の動摩擦係数と近似していることを特徴とする請求項2又は3記載の情報読取装置。
【請求項5】
前記摩擦抵抗付与部材において前記記録媒体と接触する部分の材質が、前記情報読取部材において前記記録媒体と接触する部分の材質と略同一であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の情報読取装置。
【請求項6】
前記情報読取部材が前記記録媒体に保持された磁気情報を読み取る磁気ヘッドであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−154452(P2011−154452A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14298(P2010−14298)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】