説明

意匠性布帛を有するカーペット

【課題】高い意匠性と機能性を持った意匠性布帛をカーペットに装着したり外したりして交換できるカーペットを提供することを目的とする。
【解決手段】カーペットの表皮側から裏面側まで貫通する貫通孔を設け、機能性微粒子を含む樹脂が坦持された意匠性布帛を、貫通孔に装着する深度を多段階に選択できるとともに交換できるようにすることによって高い意匠性と機能性を持った意匠性布帛をカーペットに装着したり外したりして交換できるカーペットが得られることを見出し本発明に到達した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、意匠性布帛を有するカーペットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーペットには、ラグカーペット、タイルカーペット、電気カーペットをはじめいくつもの種類があり、用途に応じて選択され用いられている。カーペットは、各種施設の室内、家庭のリビングルームや子供部屋等に敷かれ、さらに中敷きや部分敷きとしても用いられる。室内空間の壁紙、カーテン等とともにインテリアのひとつとしてカーペットをコーディネートして楽しみ、子供部屋では子供の健やかな成長に配慮して、子供の遊び心など子供の視点を考えてカーペットを選ぶ家庭も多い。インテリアとしてのカーペットの楽しみ方も、自分らしさを表現し家族や友人とともに楽しさを共有するスタイルや子供の情操面で健やかな成長発達に資するよう配慮されたものへと広がりをみせている。
【0003】
さらに、清潔、衛生観念の高まりとともに、各種の消臭性を備えた商品が求められるようになってきており、カーペットにも消臭性を備えたものが求められている。カーペットを構成する材料として消臭性を備えた特殊な糸、消臭剤を含有するバッキング樹脂層等を使用したもの、パイル糸に消臭加工を施したものは公知である。
【0004】
しかしながら、デザインセンスに訴える意匠性を備えたカーペット及び各種機能を付与したカーペットは多数存在するものの、本発明のように、遊び心や子供心の視点で楽しむ意匠性を備えたカーペットで、高い意匠性と機能性を持った意匠性布帛をカーペットに装着したり外したりして交換できるカーペットについては未だ開示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、高い意匠性と機能性を持った意匠性布帛をカーペットに装着したり外したりして交換できるカーペットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、カーペットの表皮側から裏面側まで貫通する貫通孔を設け、機能性微粒子を含む樹脂が坦持された意匠性布帛を、貫通孔に装着する深度を多段階に選択できるとともに交換できるようにすることによって高い意匠性と機能性を持った意匠性布帛をカーペットに装着したり外したりできるカーペットが得られることを見出し本発明に到達した。前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0007】
[1]カーペットにおいて、表皮側から裏面側まで貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔に意匠性布帛を装着することを特徴とするカーペット。
【0008】
[2]前記意匠性布帛は、前記貫通孔に装着する深度を多段階に選択できるとともに交換できることを特徴とする前項1に記載のカーペット。
【0009】
[3]前記意匠性布帛は、機能性微粒子を含む樹脂が坦持されていることを特徴とする前項1または2に記載のカーペット。
【発明の効果】
【0010】
[1]の発明では、カーペットにおいて、表皮側から裏面側まで貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔に意匠性布帛を装着するので、立体的なコーディネートを楽しむことができるとともに、自分らしさを表現しそこに集う人々とともに楽しさを共有することができる高い意匠性を持ったカーペットを得ることができる。
【0011】
[2]の発明では、前記意匠性布帛は、前記貫通孔に装着する深度を多段階に選択できるので、さらに立体的なコーディネートを楽しむことができ、併せて、意匠性布帛を交換することができるので意匠表現の幅が広がり、高い意匠性を持ったカーペットを得ることができる。
【0012】
[3]の発明では、前記意匠性布帛は立体的に配置され、機能性微粒子を含む樹脂が坦持されているのでカーペット内部や表面に付着するよりも、消臭等機能性を効果的に発現させるカーペットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係わるカーペットの一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1における意匠性布帛を示す平面図である。
【図3】図1における貫通部に意匠性布帛を装着した部分を示す断面図である。
【図4】図1における貫通部に意匠性布帛を別の深度で装着した部分を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るカーペットの一実施形態を図1に示す。本実施形態のカーペットは、表皮層とバッキング樹脂層と裏打ち層からなるカーペットであって、表皮層が基布にパイルを植設したタフテッドカーペットの場合に基づいて説明する。
【0015】
図において、1は意匠性布帛を有するカーペット、2はカーペット、3は意匠性布帛、3−1は意匠性布帛のカーペットの貫通孔に装着する深度部位、3−2は意匠性布帛のカーペットの貫通孔に装着するもう一つの深度部位、4はカーペットに配置された別の意匠を示している。
【0016】
図1において、カーペット2の表面側から裏面側まで貫通する貫通孔(図示せず)が多数穿設されており、多数の意匠性布帛3が装着されている。意匠性布帛3は、カーペット2に配置された別の意匠4と調和して、意匠性布帛を有するカーペット1の全体の意匠を表現している。カーペット2に穿設する貫通孔の位置と数は、意匠性布帛を装着したり外したりして立体的なコーディネートを楽しむことができるとともに、自分らしさを表現しそこに集う人々とともに楽しさを共有できるように意匠性布帛を有するカーペット1全体の意匠から決められる。意匠性布帛3の意匠は、他の意匠性布帛3と同じであっても異なっていても良く、意匠性布帛を有するカーペット1全体の意匠を構成する一部として決められる。
【0017】
カーペット2は、特に限定されるものではなく、例えば、フックドラグ、タフテッド等の刺繍カーペット類、段通、ウィルトン、アキスミンスター等の織カーペット類、ニット、ラッセル等の編カーペット類、ニードルパンチ等の不織布カーペット類を採用することができる。
【0018】
カーペット2に配置された別の意匠4は、意匠性布帛を有するカーペット1の全体の意匠に応じて決めれば良く、カーペット2を製造する工程で、公知の方法によって付与される。例えば、綿染め、糸染め等の先染めパイル糸、原着糸をパイル糸に用いて意匠を付与する方法、プリントによって意匠を付与する方法、これらの組合せによる方法等を挙げることができる。
【0019】
貫通孔については、各種の方法で穿設できるが、ナイフ、はさみ等の刃物、ハトメ等を例示できる。なかでも、専用工具があり、手軽で作業性が良いハトメによる方法が好適に用いられる。
【0020】
図2は、カーペット2の表面側から裏面側まで貫通する貫通孔に装着する深度部位3−1、深度部位3−2を備えた意匠性布帛3の平面図である。
【0021】
意匠性布帛3については、特に限定するものではないが、例えば綿、羊毛、絹、麻等の天然繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維等の合成繊維、ビスコース繊維、又はこれらの混紡繊維からなるフェルト、又は織布、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布にフェルト加工を施したものを挙げることができる。なかでも、羊毛とアクリルの混紡繊維からなるフェルトが、ソフトな風合いでありシワになりにくいので好適に用いられる。意匠性布帛3の厚さについては、意匠性布帛3を平面的に使用、または立体形状を付与して使用するため3〜15mmが好ましい。
【0022】
図3は、カーペット2の表面側から裏面側まで貫通する貫通孔に、意匠性布帛3の深度部位3−1で装着した部分の断面図である。図4は、カーペット2の表面側から裏面側まで貫通する貫通孔に、意匠性布帛3の深度部位3−2で装着した部分の断面図である。
【0023】
深度部位3−1及び深度部位3−2については、意匠性布帛3の意匠作成と併せて例えば、引掛り形状部あるいはくびれ形状部を作成することによって、順に深度部位3−1、深度部位3−2とすることができ、カーペット2に装着した意匠布帛2のカーペット2に対する深度が、容易にずれないようにすることができる。複数の深度部位を意匠性布帛3に設けることで、カーペット2に装着した意匠布帛2のカーペット2に対する深度を選択することができる。
【0024】
意匠性布帛3の形状については、各種の方法で形状を付与することができるが、例えば、意匠型紙に合わせてナイフ、はさみ等の刃物で裁断する方法、意匠に合わせた型刃による打抜き裁断による方法等を挙げることができる。さらに裁断した布帛を組合せて公知の方法で縫製し立体形状を付与することもできる。
【0025】
意匠性布帛3の大きさについては、カーペット2を含めた全体の意匠に基づいて決められるが、あまり大きくなると、実用性の面で好ましくなく、逆に小さいと、意匠として目立たなくなるが、意匠性布帛3の立体的なコーディネートを楽しむ目的に合わせて、適宜選定することができる。
【0026】
意匠性布帛3の色については、綿染め、後染め等公知の方法による染色で色を付与することができる。求める色、加工ロットの経済性等を考慮して適宜選定することができる。
【0027】
意匠性布帛3には、機能性微粒子を含む樹脂を坦持させることができる。坦持させる方法としては、公知の方法で坦持させることができ、例えば、コーティング法、スプレー法、浸漬法等で塗布して乾燥すれば良い。コーティング法では、意匠性布帛3に形状を付与する前の布帛に機能性微粒子を含む樹脂を塗布する。機能性微粒子として例えば、銀、亜鉛、鉛、銅等をセラミックスやゼオライト等に混ぜた消臭剤、有機系消臭剤等を含有することができる。
【実施例】
【0028】
次に、本発明のカーペットについて具体的な実施例について説明する。本発明のカーペットは、実施例のものに限定されるものではない。
【0029】
消臭除去性能試験(ホルムアルデヒド除去性能、アンモニア除去性能と酢酸除去性能)は、次の方法で測定したものである。
【0030】
(ホルムアルデヒド除去性能)
カーペットから切り出した試験片(10×10cm角)を、内容量10Lのアクリル製の箱に入れた後、アクリル製の箱における濃度が200ppmとなるようにホルムアルデヒドガスを注入した。注入してから48時間経過後にホルムアルデヒドガスの残存濃度をした。この測定値から試験片がホルムアルデヒドを吸着除去した総量を計算し、この値からホルムアルデヒドの除去率(%)を算出した。
【0031】
(アンモニア除去性能)
ホルムアルデヒドガスの代わりにアンモニアガスを用いてアクリル製の箱における濃度が200ppmとなるようにアンモニアガスを注入した以外は、ホルムアルデヒド除去性能と同様にしてアンモニアガス除去率(%)を算出した。
【0032】
(酢酸除去性能)
ホルムアルデヒドガスの代わりに酢酸ガスを用いてアクリル製の箱における濃度が200ppmとなるように酢酸ガスを注入した以外は、ホルムアルデヒド除去性能と同様にして酢酸ガス除去率(%)を算出した。
【0033】
<実施例>
ポリエステル繊維からなるスパンボンド不織布基布(目付110/m)にポリエステル繊維からなるパイル糸をタフティング機で基布に植え込み、パイル長7mm、パイル目付700/mのタフテッドカーペット表皮層を用意した。次にバッキング樹脂として、SBR(スチレン−ブタジエン共重合体)ラテックス100質量部に炭酸カルシウム250質量部を混入してバッキング樹脂を用意した。前記バッキング樹脂をタフテッドカーペットの表皮層の下側にロールコーティングで400g/m塗布し、さらにポリエステル繊維からなるニードルパンチ不織布(3.4デシテックス、厚さ3mm、目付100g/m)をセカンド基布として前記バッキング樹脂層に積層して、150℃で15分乾燥してカーペット2とした。
前記カーペット2に専用工具を用いて、内径8mm、外形12mmの大きさのアルミ製ハトメを取付けることによって意匠性布帛3を装着するための貫通孔を6箇所に設けた。
意匠性布帛3として、羊毛繊維100%または羊毛繊維80%以上のリバーシブルフェルトを用意した。意匠性布帛3に坦持させる機能性微粒子を含む樹脂として、水100質量部にセバシン酸ジヒドラジドとゼオライトを一対一の割合で混合した組成物を5質量部と、アクリル系バインダー樹脂10質量部を溶解して消臭組成物を得た。前記リバーシブルフェルトの表面と裏面に前記消臭性組成物を各々115g/mスプレー塗布し、120℃で10分間加熱乾燥することにより、消臭剤を5g/m坦持する意匠性布帛3のリバーシブルフェルトを得た。
次に小鳥の図案と葉の図案とを用意し、各々に深度部位3−1及び深度部位3−2を設けて、小鳥の意匠性布帛3の大きさが外寸で18cm×6cm、葉の意匠性布帛3の大きさが外寸で23cm×6cmの型紙とした。次に型紙に合わせて意匠性布帛3のリバーシブルフェルトに裁断用の線を描いた後、裁断用の線に沿ってはさみで裁断して小鳥の意匠性布帛3を3枚と、葉の意匠性布帛3を3枚とを得た。
続いて、小鳥の意匠性布帛3の3枚のうちの2枚を深度部位3−1の位置まで、1枚を深度部位3−2の位置まで、そして、葉の意匠性布帛3の3枚のうち1枚を深度部位3−1の位置まで、2枚を深度部位3−2の位置までカーペット2の貫通孔に装着して意匠性布帛を有するカーペット1を得た。
こうして得られた意匠性布帛を有するカーペット1は、意匠性布帛3が、カーペット2に装着した貫通部を支点として、意匠性布帛3自身の重さで曲線を描きながら垂れてカーペット2の表面に接する形態となり立体的な意匠表現となり、立体的なコーディネートを楽しむことができるとともに、自分らしさを表現しそこに集う人々とともに楽しさを共有することができる高い意匠性を持ったカーペットとすることができた。併せて、意匠性布帛3を交換することができるので意匠表現の幅が広がり、高い意匠性を持ったカーペットとすることができた。消臭除去性能試験として、カーペットから葉の意匠性布帛3を装着した部分を含め切り出した試験片(10×10cm角)を用いて測定した結果は、ホルムアルデヒド除去率96%、アンモニア除去率95%、酢酸除去率91%となり、高い消臭性能を発揮した。
【0034】
<比較例>
バッキング樹脂として、SBR(スチレン−ブタジエン共重合体、SBR含有量50質量%)ラテックス100質量部に消臭組成物としてセバシン酸ジヒドラジドとゼオライトを一対一の割合で混合した組成物を5重量部混入し、さらに充填剤として炭酸カルシウム250質量部を混入してバッキング樹脂を用意した。
実施例と同様にしてタフテッドカーペット表皮層を用意し、前記タフテッドカーペット表皮層の上から実施例と同様の消臭性組成物を115g/mスプレー塗布し、さらに前記バッキング樹脂をタフテッドカーペットの表皮層の下側にロールコーティングで400g/m塗布してカーペットを得た。カーペットの表皮層とバッキング樹脂層には、消臭剤が11g/m塗布されていた。
こうして得られたカーペットは、平面的な意匠コーディネートを楽しめるものの、立体的な意匠表現によるコーディネートを楽しめるものではなかった。消臭除去性能試験として、カーペットから切り出した試験片(10×10cm角)を用いて測定した結果は、ホルムアルデヒド除去率89%、アンモニア除去率87%、酢酸除去率84%となり、消臭性能は実施例より劣る結果となった。
【0035】
意匠性布帛の消臭剤付着量が、カーペットに対する消臭剤付着量に比べて同量以下であっても、意匠性布帛に消臭機能を持たせたものの方が空気に接する機会が多いことから、消臭機能を向上させることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、ラグカーペット、タイルカーペット、電気カーペットをはじめ各種カーペットとして利用される。
【符号の説明】
【0037】
1・・・意匠性布帛を有するカーペット
2・・・カーペット
3・・・意匠性布帛
3−1・・・意匠性布帛のカーペットの貫通孔に装着する深度部位
3−2・・・意匠性布帛のカーペットの貫通孔に装着するもう一つの深度部位
4・・・カーペットに配置された別の意匠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーペットにおいて、表皮側から裏面側まで貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔に意匠性布帛を装着することを特徴とするカーペット。
【請求項2】
前記意匠性布帛は、前記貫通孔に装着する深度を多段階に選択できるとともに交換できることを特徴とする請求項1に記載のカーペット。
【請求項3】
前記意匠性布帛は、機能性微粒子を含む樹脂が坦持されていることを特徴とする請求項1または2に記載のカーペット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−101678(P2011−101678A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256872(P2009−256872)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】