説明

感光体劣化加速試験装置及び感光体劣化加速試験方法

【課題】
劣化試験時の帯電手段への印加電圧と放電生成物の濃度とを独立して任意に制御することが可能な電子写真用感光体の劣化加速試験装置及び劣化加速試験方法を提供する。
【解決手段】
劣化加速試験時には、劣化加速試験用の第1の帯電手段13から発生する放電生成物を吹き飛ばす目的で、エアー供給手段によって電子写真用感光体1と劣化加速試験用の第1の帯電手段13との隙間にエアーを吹きつける。放電生成物供給手段25であるスコロトロン帯電器では、放電電流が全てグリッド電極へと流れ込み、電子写真用感光体1へは流れ込まず、実質的に放電生成物のみが供給されるように、スコロトロン帯電器25のワイヤ電極25a及びグリッド電極25bへの印加電圧が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザプリンタ、複写機等の画像形成装置に用いられる電子写真感光体の劣化を加速させる感光体劣化加速試験装置及びこの感光体疲劣化加速試験装置を使用して電子写真感光体の劣化を加速させる感光体劣化加速試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスで使用される感光体は繰り返し使用されるため、繰り返し使用による感光体の寿命を予測するための試験・評価方法は極めて重要な技術である。この寿命試験方法としては、電子写真プロセスを実行する複写機、あるいはプリンタを使って繰り返し紙に印字させ、出力された画像の品質で感光体の寿命を判断したり、繰り返し印字テスト中の、帯電電位、露光後電位を計測し、これら電位の変動で寿命を予測することが行われる(方法1)。この方法は、感光体が搭載される実機で行われることが普通であるので,確実な寿命予測ができる。一方、実機が完成するまで寿命試験を行うことができず、また、試験に多大な時間が必要となる。例えば、A4サイズのプリントアウト能力が10枚/分とすると、80,000枚プリントアウトするのに8,000分を要し、1日10時間試験すると13.3日かかる計算となる。
【0003】
このため、別の方法として、感光体を高速で回転させた状態(1,000〜2,000rpm)で感光体の周囲に配置された帯電手段、露光手段で帯電、露光を繰り返し、寿命を予測する方法がある(方法2)。この方法は、さらに2つに分かれる。その一つは、帯電手段の出力と露光手段の光量を予め決めた条件で固定し、決められた時間だけ試験を行い、その後、感光体の特性を評価する測定を行い、劣化状態を判定するものである(方法2−1)。もう1つは、試験中の感光体露光後電位Vと感光体を通して流れる通過電流Iを計測し、この二つが常に決められたレベルにあるように、帯電手段の出力と露光手段の光量を調整しながら行う方法である(方法2−2)。
【0004】
前記方法2−1と方法2−2の2つの方法で重要な点は、試験中に感光体に流れた通過電流を計測し、これを電荷量(単位面積当りの値)Qに変換し、一方、A4サイズ1枚を実施機でプリントアウトする時、感光体のサイズは、A4サイズ1枚が感光体上を重なることなく印字されるサイズであるとすると、感光体を流れる通過電流が、感光体の静電容量をC(単位面積当りの値)、帯電電位Vとして、「C・V」で求まることから、「Q/C・V」とすることで寿命試験時間を実施機のプリント枚数に対応させることができる点である。
【0005】
もう一つ重要な点は、この試験が加速寿命試験になっていることである。具体的に示すと、φ30(直径30mm)の感光体に「35(μA)/(帯電面積:3π×15)(cm)」の試料通過電流を流し、20時間試験すると(1日10時間の試験とすると2日間に相当)、35×10-6/(3π×15)×20×60×60≒0.01783(C/cm)の電荷が感光体を通過したことになる。そして、A4用紙縦送りで印字する場合を想定すると、感光体の静電容量100(pF/cm)、帯電電位−700(V)、除電後も含めた露光後電位を0(V)とすると、「100×10-12×700×(29.7/3π)=0.02206×10-5(C/cm)」が、A4サイズ1枚をプリントアウトする時に感光体を通過する電荷であるので、「0.01783/0.02206×10-5≒80,000(枚)」をプリントアウトしたことになり、寿命試験を大幅に加速することになる。このため、前記2つの試験方法で寿命試験が行われることが多い。
【0006】
しかしながら、前述の具体的な計算で分かるように、試験中に感光体を通過する電流が一定であれば、プリントアウト何枚相当の試験を行ったのか、計算がしやすい。そのため、試験は通過電流を一定にして実施する方法(方法2−2)が一般的に採られる。(その本質は通過電荷量を知ることにある。)また、感光体によっては、帯電電位がどのレベルにあるかによって寿命試験の結果が異なることがあり、帯電電位も一定にして試験を行うことが要求される。そこで、帯電電位および通過電流を一定にするために、高圧電源から帯電手段への印加電圧調整、および露光手段の光量調整を行うシステムが必要となり、従来の寿命試験装置が構築された。この種の装置として関連するものには、例えば、特許文献1や特許文献2がある。
【0007】
一方、感光体を劣化させる要因としては、感光体への帯電工程と露光工程の繰り返しサイクル回数の他に、感光体への帯電工程において発生する放電生成物による感光体の劣化もある。しかしながら、前記方法2−2では、帯電電位および通過電流を所望の値にするため、高圧電源から帯電手段であるコロトロン帯電器のワイヤ電極への印加電圧を変化させた場合、印加電圧の変化に応じて、放電時に帯電手段から発生する放電生成物の濃度も変化する。印加電圧を下げ、帯電電位および通荷電流を減少させた場合は、帯電手段から発生する放電生成物の濃度も減少し、逆に、印加電圧を上げ、帯電電位および通荷電流を増大させた場合は、帯電手段から発生する放電生成物の濃度も増大する。このため、帯電手段への印加電圧と放電生成物の濃度とを独立制御することができなかった。また、前記方法2−1では、帯電手段のワイヤ電極への印加電圧をある1つの所望の値に制御するため、放電生成物の濃度もある1つの値に決まる事となり、こちらも帯電手段への印加電圧と放電生成物の濃度とを独立制御することができず、放電生成物を考慮した感光体の劣化の加速試験を行うことが困難となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記事情に鑑みてなされたものであって、劣化試験時の帯電手段への印加電圧と放電生成物の濃度とを独立して任意に制御することが可能な電子写真用感光体の劣化加速試験装置及び劣化加速試験方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電子写真感光体を回転させ、帯電手段による当該電子写真感光体の静電気帯電工程と、露光手段による当該電子写真感光体の光放電工程とを含むサイクルを、繰り返し実行して、当該電子写真感光体の劣化を加速させる感光体劣化加速試験装置において、前記帯電手段の静電気帯電工程時に発生する放電生成物が前記電子写真感光体へと到達する前にエアーを吹き付けて除去するエアー供給手段と、所定濃度の放電生成物を前記電子写真感光体に供給する放電生成物供給手段とを有し、前記サイクル中において、前記エアー供給手段によるエアーの吹き付けと、前記放電生成物供給手段による前記電子写真感光体への所定濃度の放電生成物の供給を実行しながら、当該電子写真感光体の劣化を加速させることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1記載の感光体劣化加速試験装置において、
前記放電生成物供給手段は、スコロトロン帯電手段によって構成され、当該スコロトロン帯電手段からは前記放電生成物のみが実質的に前記電子写真用感光体に供給されるように、前記スコロトロン帯電手段のワイヤ電極及びグリッド電極への印加電圧が設定されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項2記載の感光体劣化加速試験装置において、
前記グリッド電極への印加電圧が0.2kV以上であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の感光体劣化加速試験装置において、前記放電生成物供給手段から供給される放電生成物の1つであるオゾンの濃度が1ppm以上であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の感光体劣化加速試験装置において、前記エアー供給手段から供給されるエアーの風速が9.3m/s以上であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の感光体劣化加速試験装置において、前記電子写真感光体を静電気帯電させる第2の帯電手段と、当該電子写真感光体を露光して光放電させる第2の露光手段と、当該電子写真感光体を除電する除電手段を備え、前記第2の帯電手段、第2の露光手段及び除電手段によって、前記電子写真感光体の特性を、前記劣化加速試験の所定サイクル毎に測定することを特徴とする。
【0015】
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項記載の感光体劣化加速試験装置を使用して電子写真感光体の劣化を加速させることを特徴とする感光体劣化加速試験方法としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、帯電手段の静電気帯電工程時に発生する放電生成物が前記電子写真感光体へと到達する前にエアーを吹き付けて除去するエアー供給手段と、所定濃度の放電生成物を電子写真感光体に供給する放電生成物供給手段とを有し、サイクル中において、前記エアー供給手段によるエアーの吹き付けと、前記放電生成物供給手段による前記電子写真感光体への所定濃度の放電生成物の供給を実行しながら、当該電子写真感光体の劣化試験を実施することによって、劣化試験時の帯電手段への印加電圧と放電生成物の濃度とを独立して任意に制御することが可能な電子写真用感光体の劣化加速試験装置及び劣化加速試験方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による一実施形態に係る電子写真用感光体の劣化加速試験装置の概略構成を示す正面の概略図である。
【図2】図1に示す電子写真用感光体の劣化加速試験装置の側面の概略図である。
【図3】劣化加速試験用の第1の帯電手段のワイヤ電極への印加電圧とこの第1の帯電手段で帯電処理時に発生するオゾン濃度の関係を表すグラフである。
【図4】放電生成物供給手段のグリッド電極への印加電圧と電子写真用感光体の通過電流の関係を表すグラフである。
【図5】放電生成物供給手段のワイヤ電極への印加電圧と放電生成物供給手段から供給されるオゾン濃度の関係を表すグラフである。
【図6】エアー供給手段から供給されるエアーの劣化加速試験用の第1の帯電手段下流側の風速と劣化加速試験用の第1の帯電手段下流側のオゾン濃度の関係を表すグラフである。
【図7】電子写真用感光体の通過電荷量Qと帯電電位Vの関係の一例を表すグラフである。
【図8】劣化加速試験時間と電子写真用感光体の静電容量Cの関係を表すグラフである。
【図9】劣化加速試験時間と劣化加速試験開始前の電子写真用感光体の静電容量C0に対する劣化加速試験中の電子写真用感光体の静電容量Ctの変化(Ct−C0)/C0の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による一実施形態に係る電子写真用感光体の劣化加速試験装置について、図面を参照しながら以下に詳しく説明する。図1は、本発明による一実施形態に係る電子写真用感光体の劣化加速試験装置の概略構成を示す正面の概略図であり、図2は、図1に示す電子写真用感光体の劣化加速試験装置の側面の概略図である。なお、これらの概略図は一例であってこれに限定されるものではない。
【0019】
本発明による一実施形態に係る電子写真用感光体の劣化加速試験装置は、図1に示すように、劣化加速試験時に、矢印方向に回転するドラム状の電子写真用感光体1を帯電する劣化加速試験用の第1の帯電手段13であるコロトロン帯電器、コロトロン帯電器のワイヤ電極13aへ電圧を供給する為の高圧電源7、高圧電源7の電源スイッチ15を備えている。また、この劣化加速試験装置は、劣化加速試験時に電子写真用感光体1を露光する劣化加速試験用の第1の露光手段14、劣化加速試験用の第1の露光手段14へ電圧を供給する為のLED電源11、LED電源11の電源スイッチ33を備えている。さらに、この劣化加速試験装置は、劣化加速試験時に劣化加速試験用の第1の帯電手段13から発生する放電生成物を電子写真感光体1へと到達する前に吹き飛ばすエアー供給手段24、劣化加速試験時に劣化加速試験用の第1の帯電手段13から発生する放電生成物とは別に電子写真用感光体1に同種の放電生成物を供給する放電生成物供給手段25であるスコロトロン帯電器、スコトロン帯電器のワイヤ電極25a及びグリッド電極25bへ電圧を供給する為の高圧電源27及び電源28、高圧電源27及び電源28の電源スイッチ29を備えている。
【0020】
また、本発明による一実施形態に係る電子写真用感光体の前記劣化加速試験装置は、図1に示すように、劣化加速試験用の第1の帯電手段13や放電生成物供給手段25から発生する放電生成物の濃度を検出する放電生成物濃度検出手段30であるオゾン濃度計を備えている。また、この劣化加速試験装置は、電子写真用感光体1の特性評価時に電子写真用感光体1を帯電する特性評価用の第2の帯電手段6であるコロトロン帯電器、コロトロン帯電器のワイヤ電極6aへ電圧を供給する為の高圧電源12、高圧電源12の電源スイッチ26、特性評価時に電子写真用感光体1を露光する特性評価用の第2の露光手段2、電子写真用感光体1の劣化加速試験時の帯電電位と特性評価時の帯電電位及び露光後電位を測定する表面電位検出手段である表面電位計プローブ3、電子写真用感光体ドラム1を除電する除電手段8である除電用光源を有している。
【0021】
前記劣化加速試験用の第1の帯電手段13、劣化加速試験用の第1の露光手段14、エアー供給手段24、放電生成物供給手段25、特性評価用の第2の帯電手段6、特性評価用の第2の露光手段2、表面電位計プローブ3、前記除電手段8は、ドラム状の電子写真用感光体1の径方向及び軸方向に進退可能な構造となっており、径方向に関してはそれぞれを個別に移動することができ、個別の位置に配置できる。ただし、軸方向に関しては、これらの全てが同時に移動し、同一軸方向位置に配置されるようになっている。
【0022】
この電子写真用感光体劣化加速試験装置において、図2に示すように、ドラム状の電子写真用感光体1は、両端にドラムチャック治具20で前記電子写真用感光体劣化加速試験装置内に保持され、主軸18がチャック治具20の中心を通っている。前記電子写真用感光体劣化加速試験装置の手前側(電子写真用感光体1の一端側)の面板21と、奥側(電子写真用感光体1の他端側)の面板22とが主軸18の軸受け機構となっており、主軸18はモータ16に繋がった無端状のベルト19によって図1の矢印の方向に任意の回転速度、例えば1000rpmで、回転する機構となっている。
【0023】
また、図1に示すように、電子写真用感光体1の電位は、表面電位計プローブ3からモニタ部である表面電位計4に送られてモニタされ、信号処理回路9に送られる。その後A/D変換器10によってA/D変換され、コントローラ17へと送られ、演算処理される。電子写真用感光体1中の通過電流は、信号処理回路5、A/D変換器10を通じて、コントローラ17へと送られ、通過電流を把握することが可能となっている。コントローラ17は、劣化加速試験中の帯電電位および通過電流の計測結果に基づき、劣化加速試験中の通過電流および帯電電位を一定に保つように劣化加速試験用の第1の帯電手段13への印加電圧と劣化加速試験用の第1の露光手段14の光量を制御している。
【0024】
また、コントローラ17は電子写真用感光体1を回転させるモータ16内の図示しないモータドライバに接続されている。モータドライバでは、回転数を出力する機能、回転数をリモート制御可能な機能も付加されているため、回転数制御と回転数の認識も可能となっている。
【0025】
この実施形態に係る電子写真用感光体の劣化加速試験装置においては、エアー供給手段24と放電生成物供給手段25が、電子写真用感光体1の回転方向に対して第1の帯電手段13の下流側で、この第1の帯電手段13と第1の露光手段14との間に配設されている。従って、電子写真用感光体1が矢印方向に回転されると、第1の帯電手段13によって発生する放電生成物がエアー供給手段24によって吹き飛ばされてこの放電生成物による電子写真用感光体1の劣化の影響を排除することが可能となる。一方、所定濃度の放電生成物を電子写真用感光体1の表面に供給する放電生成物供給手段25が、エアー供給手段24の前記回転方向に対して下流側に配設されるので、第1の帯電手段13による放電生成物が電子写真用感光体1の表面から除去された状態で放電生成物供給手段25から所定濃度の放電生成物を供給して、所定濃度の放電生成物による劣化加速試験を行うことが可能となる。
【0026】
劣化加速試験時には、電子写真用感光体1の周りの4つのユニット(劣化加速試験用の第1の帯電手段13、劣化加速試験用の第1の露光手段14、エアー供給手段24、放電生成物供給手段25)が、デジタルリレー出力23によってON/OFF制御されている。劣化加速試験用の第1の帯電手段13によって帯電された電子写真用感光体の劣化加速試験時の帯電電位は、表面電位計プローブ3及び表面電位計4によって、劣化加速試験時の電子写真用感光体の通過電流(劣化加速試験用の第1の帯電手段13から電子写真用感光体1への放電電流)とともに測定される。また、帯電電位と通過電流の測定値はコントローラ17へと送られ所望の帯電電位および通過電流となるように、コントローラ17は高圧電源7およびLED電源11へと信号を送り、劣化加速試験用の第1の帯電手段13のワイヤ電極13a及び劣化加速試験用の第1の露光手段14への光量を変化させながら、電子写真用感光体1の帯電と露光を繰り返す。
【0027】
また、劣化加速試験時には、劣化加速試験用の第1の帯電手段13から発生する放電生成物を電子写真感光体1へと付着する前に吹き飛ばす目的で、エアー供給手段によって電子写真用感光体1と劣化加速試験用の第1の帯電手段13との隙間にエアーを吹きつける。放電生成物供給手段25であるスコロトロン帯電器では、放電電流が全てグリッド電極へと流れ込むように、グリッド電極25bへの印加電圧を設定し、電子写真用感光体1へは放電電流が流れ込まず、実質的に放電生成物のみが供給されるようにしている。放電生成物濃度検出手段30では、チューブ31から吸入された放電生成物供給手段25下流側側面のオゾン濃度を、チューブ32から吸入された劣化加速試験用の第1の帯電手段13下流側側面のオゾン濃度を検出する。このようにして、本装置では劣化加速試験用の第1の帯電手段13、エアー供給手段24、放電生成物供給手段25を使用する事により、劣化加速試験用の第1の帯電手段13への印加電圧および第1の露光手段14の光量と、放電生成物の濃度とを独立で制御しながら劣化加速試験を行うようにしている。この場合、エアー供給手段24と、放電生成物供給手段25は、劣化加速試験中に、第1の帯電手段13と第1の露光手段14による電子写真用感光体1への静電気帯電工程と光放電工程が繰り返して行われるサイクル中に、連続して作動される。
【0028】
本発明による一実施形態に係る電子写真用感光体の劣化加速試験装置においては、劣化加速試験時の電子写真用感光体1の劣化状態を確認するために、劣化加速試験を所定サイクルで行ったときに、電子写真用感光体1の特性評価を行うようにしている。そして、この特性評価時には、電子写真用感光体1周りの3つのユニット(特性評価用の第2の帯電手段6、特性評価用の第2の露光手段2、除電手段8)が、デジタルリレー出力23によってON/OFF制御されている。また、特性評価用の第2の露光手段2を用いて、電子写真用感光体1の露光が行われ、電子写真用感光体1の露光後電位は、表面電位計プローブ3及び表面電位計4を使用することによって、特性評価用の第2の帯電手段6によって帯電された後の帯電電位と同様にして測定できる。また、電子写真用感光体1の露光後電位を取り除く場合は、除電手段8を使用して取り除くことが可能であり、このようにして電子写真用感光体1の帯電特性、光減衰特性などの評価が可能となっている。なお、特性評価用の第2の帯電手段6、特性評価用の第2の露光手段2、除電手段8は、特性評価試験のときのみ作動し、上記劣化加速試験のときには、作動しないように制御されている。一方、劣化加速試験用の第1の帯電手段13、劣化加速試験用の第1の露光手段14、エアー供給手段24、放電生成物供給手段25は、上記劣化加速試験時のみ作動し、上記特性評価時には、作動しないように制御されている。また、上記実施形態においては、特性評価用の第2の帯電手段6と第2の露光手段2とを劣化加速試験用の第1の帯電手段13及び第1の露光手段14と別個に配設しているが、新たに特性評価用の第2の帯電手段6と第2の露光手段2を配設することなく、劣化加速試験用の第1の帯電手段13及び第1の露光手段14を特性評価用の第2の帯電手段と第2の露光手段として使用することもできる。
【0029】
前記電子写真用感光体劣化加速試験装置は、光を透過しない暗箱あるいは暗幕などで覆われていることが好ましい。暗箱又は暗幕で覆われていないと、劣化加速試験時に風、光、温度などの外部環境の影響を受け、正確な特性評価が困難となる。ただし、コントローラ及び信号処理回路など、前記電子写真用感光体ドラム1の評価に影響のないものに関しては、暗箱あるいは暗幕で覆う必要はない。また、前記電子写真用感光体劣化加速試験装置では、装置内の放電生成物の濃度が上がり、装置内が酸化劣化するのを防止するため、吸気ファンと排気ファンを設けている。
【0030】
従来の劣化試験装置では、方法2−2のような劣化時の帯電電位および通過電流を所望の値とする場合には、帯電手段への印加電圧が変動するため、劣化中の放電生成物の濃度も変動してしまい、方法2−1のような帯電手段への印加電圧が所望の値で一定の場合には、放電生成物の濃度はある1つの値に決まるが、濃度値を自由に選択できなかった。しかし、この実施形態に係る劣化加速試験装置では、放電生成物の濃度を所望の値に制御しながら劣化加速試験を行えるため、放電生成物の影響による電子写真用感光体の劣化について評価をすることができる。
【0031】
これまで、帯電手段への印加電圧に縛られていた放電生成物の濃度を任意に選択できるため、放電生成物供給手段から供給される放電生成物の濃度を上げて、電子写真用感光体1の酸化劣化による加速劣化を実施することが出来る。また、同装置内に、電子写真用感光体の劣化加速試験機能と特性評価機能を有することにより、装置のコンパクト化および作業時間の効率化が図れる。
【0032】
以上のように、本発明の電子写真用感光体劣化加速試験装置は、少なくとも帯電手段、露光手段、エアー供給手段、放電生成物供給手段、放電生成物濃度検出手段、表面電位検出手段を有し、必要に応じて更にその他の構成を有してなる。これらの構成要素について、以下に詳述する。
【0033】
<帯電手段>
前記帯電手段は、劣化加速試験時および特性評価時に、前記電子写真用感光体の表面を帯電する手段である。前記帯電手段は、前記電子写真用感光体を帯電することができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記帯電手段としては、例えば、コロトロン帯電方式、スコロトロン帯電方式等のコロナ帯電方式を利用した非接触帯電手段、ローラ帯電方式、ブラシ帯電方式等を利用した接触帯電手段などが挙げられる。これらの中でも、非接触帯電手段が、前記電子写真用感光体を傷つける恐れがなく、非破壊で劣化加速試験を行えるため好ましい。また、劣化加速試験用と特性評価用の帯電手段には、1つの帯電手段を兼用しても構わないし、上記実施形態のように、それぞれ別の帯電手段を利用しても構わない。
【0034】
<露光手段>
前記露光手段は、劣化加速試験時および特性評価時に、前記電子写真用感光体を露光する手段である。前記露光手段は、前記電子写真用感光体を露光することができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記露光手段の光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般などが挙げられる。また、前記露光手段は、所望の波長域の光のみを前記電子写真用感光体ドラムに照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもでき、照度を下げるために、ニュートラルデンシティフィルターを用いることもできる。また、劣化加速試験用と特性評価用の露光手段には、1つの露光手段を兼用しても構わないし、上記実施形態のように、それぞれ別の露光手段を利用しても構わない。
【0035】
<エアー供給手段>
前記エアー供給手段は、劣化加速試験時に前記帯電手段を放電させた際に生成されるオゾンやNOx等の放電生成物が前記電子写真用感光体の表面に到達する前に、前記放電生成物を供給エアーにより吹き飛ばす手段である。前記エアー供給手段としては、前記帯電手段と前記電子写真用感光体の間にエアーを供給することができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、エアーナイフが挙げられる。
【0036】
<放電生成物供給手段>
前記放電生成物供給手段は、劣化加速試験時に前記電子写真用感光体表面に帯電手段によって発生される放電生成物と同様な放電生成物を供給する手段である。前記放電生成物供給手段としては、前記帯電手段で生成される放電生成物とは別に、前記電子写真用感光体に任意の濃度の放電生成物を供給することができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。放電生成物の生成方法としては、例えば、コロナ放電方式、無声放電方式、光化学反応方式が挙げられる。
【0037】
<放電生成物濃度検出手段>
前記放電生成物濃度検出手段は、劣化加速試験時に前記放電生成物供給手段から生成される放電生成物の濃度を検出する手段である。前記放電生成物濃度検出手段としては、放電生成物の濃度を検出できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、オゾン濃度計、NOx濃度計が挙げられる。
【0038】
<表面電位検出手段>
前記表面電位検出手段は、前記電子写真用感光体の劣化加速試験時の帯電電位、特性評価時の帯電電位、露光後電位を検出する手段である。前記表面電位検出手段としては、前記電子写真用感光体の表面電位を検出することができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記表面電位検出手段には、接触型と非接触型があるが、接触型のものであると電子写真用感光体を傷つける恐れがあるため、非接触型のものが好ましい。前記電子写真用感光体の表面電位をモニタする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記電子写真用感光体を、前記帯電手段により帯電した後、前記電子写真用感光体の帯電電位を前記表面電位計プローブで測定し、前記表面電位計に信号を送ることにより前記電子写真用感光体の劣化加速試験時の帯電電位をモニタする方法などが挙げられる。また、劣化加速試験用と特性評価用の表面電位検出手段には、1つの表面電位検出手段を兼用しても構わないし、それぞれ別の表面電位検出手段を利用しても構わない。
【0039】
<除電手段>
前記除電手段は、前記電子写真用感光体の表面電位を除電する手段である。前記除電手段としては、前記電子写真用感光体を除電することができれば、特に制限はなく、公知の除電手段の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプなどが挙げられる。
【0040】
<その他の構成>
前記その他の構成としては、例えば、前記帯電手段に電圧を供給するワイヤ電極、前記ワイヤ電極に電圧を印加する高圧電源、前記高圧電源の電源スイッチなどが挙げられる。(高圧電源、電源、及び電源スイッチ)
前記高圧電源、電源、及び電源スイッチとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記高圧電源、電源、及び電源スイッチの制御手段としては、特に制限はなく、従来公知のものをそのまま用いることができる。
(電子写真用感光体)
前記電子写真用感光体としては、その材質、形状、大きさ、構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、ドラム状、シート状、エンドレスベルト状などが挙げられる。前記材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン、CdS、ZnO等の無機感光体;ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体(OPC)、などが挙げられる。前記大きさとしては、前記電子写真用感光体劣化加速試験装置の大きさ、仕様などに応じて適宜選択することができる。 前記有機感光体(OPC)は、(1)光吸収波長域の広さ、光吸収量の大きさ等の光学特性、(2)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(3)材料の選択範囲の広さ、(4)製造の容易さ、(5)低コスト、(6)無毒性、などの理由から一般に広く応用されている。このような有機感光体の層構成としては、単層構造と、積層構造とに大別される。前記単層構造の感光体は、支持体と、該支持体上に単層型感光層を設けてなり、更に必要に応じて、保護層、中間層、その他の層を有してなる。前記積層構造の感光体は、支持体と、該支持体上に電荷発生層、及び電荷輸送層を少なくともこの順に有する積層型感光層を設けてなり、更に必要に応じて、保護層、中間層の他の層を有してなる。
【実施例】
【0041】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下に示す比較例及び実施例では、図1及び図2で示す電子写真用感光体の劣化加速試験機能及び特性評価機能を有する劣化加速試験装置を用いて電子写真用感光体1の劣化加速試験および特性評価を行った。前記電子写真用感光体の劣化加速試験機能及び特性評価機能を有する劣化加速試験装置において、劣化加速試験用の第1の帯電手段13としては内製したコロトロン帯電器を、劣化加速試験用の第1の帯電手段13のワイヤ電極13aに印加する高圧電源7はTREK社製を、劣化加速試験用の第1の露光手段14としては林時計工業社製LED(波長:660nm)の加工品を、劣化加速試験用の露光手段14の電源として林時計工業社製LED電源11を使用した。また、エアー供給手段24としてはスプレーイングシステムジャパン社製のエアーナイフを、放電生成物供給手段25としては内製したスコロトロン帯電器を、スコロトロン帯電器のワイヤ電極25aに印加する高圧電源は27はTREK社製を、グリッド電極25bに印加する電源28には松定プレシジョン社製を使用した。
【0042】
特性評価用の第2の帯電手段6としては内製したコロトロン帯電器を、特性評価用の帯電手段6のワイヤ電極6aに電圧を印加する高圧電源12はマクセレック社製をそれぞれ用いた。特性評価用の第2の露光手段2としては富士電球工業社製の露光ランプを使用した内製露光装置を使用した。除電手段8としての除電用光源は林時計工業社製LED(波長:660nm)の加工品である。劣化加速試験用兼特性評価用の表面電位検出手段である表面電位プローブ3と表面電位計4はTREK社製である。前記表面電位検出手段により、電子写真用感光体の劣化加速試験時の帯電電位、特性計測時の帯電電位および露光後電位を計測することができる。放電生成物濃度検出手段30では、チューブ31から放電生成物供給手段25下流側側面のオゾン濃度を、チューブ32から劣化加速試験用の第1の帯電手段13下流側側面のオゾン濃度を検出した。モータ16はオリエンタルモーター株式会社製、コントローラ17は株式会社キーエンス製のシーケンサ及びDELL社製のPC、A/D変換器10はナショナルインスツルメンツ社製A/D変換器、デジタルリレー出力23はキーエンス社製である。それ以外の信号処理回路などは、全て内製したものを使用した。図1、2には記載していないが、エアー供給手段24から供給されるエアーの風速の計測には、テストー社製の風速計を使用した。また、使用した電子写真用感光体1(ドラム直径100、ドラム全長380mm)は、株式会社リコー製のProC900に搭載された感光体と同一処方である。
【0043】
<試験例1>
高圧電源7から劣化加速試験用の第1の帯電手段13への印加電圧(Vcc)とオゾン濃度の関係を図3に示す。オゾン濃度は劣化加速試験用の第1の帯電手段13の下流側側面でチューブ32を通じて放電生成物濃度検出手段30によって測定した。図3において、▲プロットが、エアー供給手段24をOFFした場合、■プロットが、でエアー供給手段24をONした場合(風速17.8m/s)を示している。図3の結果から、エアー供給手段24をOFFした場合では、印加電圧の増大に伴い、オゾン濃度も増大していることがわかる。これに対し、エアー供給手段をONした場合は、印加電圧を変化させても、オゾン濃度は0ppm付近である。従って、エアー供給手段24をON作動させることによって、第1の帯電手段13の帯電動作に伴って発生する放電生成物の影響を除去することが可能となる。
【0044】
<試験例2>
電源28から放電生成物供給手段25のグリッド電極25bへの印加電圧(Vsg)と電子写真用感光体の通過電流の関係を図4に示す。放電生成物供給手段25のワイヤ電極25aへの印加電圧(Vsc)が−5kVの場合を◆プロット、−6kVの場合を■プロット、−7kVの場合を▲プロットで表している。図4の結果から、ワイヤ電極25aへの印加電圧に関わらず、グリッド電極25bへの印加電圧が上昇するに従い、電子写真用感光体1への通過電流は減少し、0.2kV以上では、通過電流は0μAとなることがわかる。また、グリッド印加電圧0.2kVで、エアー供給手段24をONし、放電生成物供給手段25の下流側側面でチューブ31を通じて放電生成物濃度検出手段30によってオゾン濃度を計測した結果が図5である。図5の結果から、放電生成物の1つであるオゾンが電子写真用感光体1へと供給され、放電生成物供給手段25のワイヤ電極25aへの印加電圧の増加と共に、放電生成物供給手段25からのオゾン濃度が比例的に増加していることが確認できる。従って、これらの結果から、グリッド電極への印加電圧を0.2kV以上とすることで、放電生成物供給手段から電子写真用感光体へは、放電電流は供給されず、放電生成物のみが供給されることがわかる。また、放電生成物供給手段25のワイヤ電極25aへの印加電圧を設定することによって、所望の濃度のオゾンを電子写真用感光体1に供給することが可能となる。
【0045】
<試験例3>
エアー供給手段24の風速と劣化加速試験用の第1の帯電手段13下流側側面のオゾン濃度の関係を図6に示す。図6において、劣化加速試験用の第1の帯電手段13への印加電圧(Vcc)が−5kVの場合を◆プロット、−6kVの場合を■プロット、−7kVの場合を▲プロットで表している。図6の結果から、印加電圧(Vcc)に関わらず、風速の上昇に伴い、オゾン濃度が減少し、風速9.3m/s以上でオゾン濃度はほぼ0ppmとなり、第1の帯電手段13による放電生成物の影響を除去できることが明らかである。
【0046】
<比較例1>
放電生成物供給手段25をOFF、劣化加速試験用の第1の帯電手段13と劣化加速試験用の第1の露光手段14とエアー供給手段24をONして、劣化加速試験用の第1の帯電手段13から発生する放電生成物を吹き飛ばしながら、電子写真用感光体1の劣化加速試験を行った。劣化加速試験時の回転速度は、1000rpm、供給エアーの風速は17.8m/s、劣化加速試験時間は4時間に設定した。また、劣化加速試験時の第1の帯電手段13の帯電電位が−800V、通過電流が−108μAとなるよう、劣化加速試験用の帯電手段13への印加電圧と劣化加速試験用の露光手段14の光量を制御した。
【0047】
特性評価は、劣化加速試験の開始前、劣化加速試験開始から0.5、1、2、3、4時間後の6回行った。電子写真用感光体1の評価特性としては、帯電立ち遅れ、暗減衰、暗抵抗、感度など様々な特性があるが、今回は、電子写真用感光体の静電容量に着目し、特性評価を行った。静電容量Cは、図7に示すように、特性評価用の第2の帯電手段6から電子写真用感光体1へと供給される電荷量(通過電荷量)Qと帯電電位Vを計測し、プロットした直線の勾配1/Cを1/C=V/Qの関係から算出した。通過電荷量は、通過電流の時間積分で求めた。
【0048】
上記のようにして算出した電子写真用感光体1の静電容量Cと劣化加速試験時間との関係(電子写真用感光体1の静電容量に関する特性評価)の結果を図8の×プロットとして示している。この図8の×プロットの結果から、劣化加速試験時間の経過に伴い、静電容量が増大しており、電子写真用感光体1が劣化していることがわかる。そして、比較例1と後述の実施例1〜3それぞれで使用した感光体は同一処方であるが、膜厚公差など作製時の公差により、劣化加速試験開始前の静電容量に違いがある。そこで、劣化加速試験開始前の静電容量の値をC0、劣化加速試験開始からt分後の静電容量をCtとして、劣化加速試験開始前の静電容量に対する劣化加速試験中の静電容量の変化を(Ct−C0)/C0の式で算出し、劣化加速試験開始前の静電容量の違いを無視できるようにした。(Ct−C0)/C0の算出結果を図9の×プロットとして示している。
【0049】
<実施例1>
劣化加速試験用の第1の帯電手段13と劣化加速試験用の第1の露光手段14とエアー供給手段24と放電生成物供給手段25をONして、劣化加速試験用の第1の帯電手段13から発生する放電生成物を吹き飛ばしながら、電子写真用感光体1の劣化加速試験を行った。放電生成物供給手段25のグリッド電極25bへの印加電圧(Vsg)を0.2kV、放電生成物供給手段から発生するオゾンの濃度が1ppmとなるよう放電生成物供給手段25のワイヤ電極25aへの印加電圧(Vsc)を−4.5kVに設定した。劣化加速試験時の回転速度、帯電電位、通過電流、劣化加速試験時間、特性評価タイミング、供給エアーの風速は比較例1と同様である。また、比較例1と同様の方法で、劣化加速試験用の第1の帯電手段13への印加電圧と劣化加速試験用の第1の露光手段14の光量を制御した。
【0050】
電子写真用感光体1の静電容量に関する特性評価の結果を図8の▲プロットで、また、
(Ct−C0)/C0の算出結果を図9の▲プロットで示す。図9の結果から、 実施例1では、放電生成物供給手段25から放電生成物を供給しない比較例1に比べて、(Ct−C0)/C0の値が僅かに増大しており、電子写真用感光体1の静電容量の劣化の進行が早いことがわかる。
【0051】
<実施例2>
劣化加速試験用の第1の帯電手段13と劣化加速試験用の第1の露光手段14とエアー供給手段24と放電生成物供給手段25をONして、劣化加速試験用の第1の帯電手段13から発生する放電生成物を吹き飛ばしながら、電子写真用感光体1の劣化加速試験を行った。Vsgを0.2kV、放電生成物供給手段から発生するオゾンの濃度が4ppmとなるようVscを−6kVに設定した。劣化加速試験時の回転速度、帯電電位、通過電流、劣化加速試験時間、特性評価タイミング、供給エアーの風速は比較例1と同様である。また、比較例1と同様の方法で、劣化加速試験用の第1の帯電手段13への印加電圧と劣化加速試験用の第1の露光手段14の光量を制御した。電子写真用感光体1の静電容量に関する特性評価の結果を図8の●プロットで、また、(Ct−C0)/C0の算出結果を図9の●プロットで示している。図9の結果から、実施例2では、放電生成物供給手段25から供給する放電生成物濃度の低い実施例1に比べて、(Ct−C0)/C0の値がさらに増大しており、より静電容量の劣化の進行が早いことがわかる。
【0052】
<実施例3>
劣化加速試験用の第1の帯電手段13と劣化加速試験用の第1の露光手段14とエアー供給手段24と放電生成物供給手段25をONして、劣化加速試験用の第1の帯電手段13から発生する放電生成物を吹き飛ばしながら、電子写真用感光体1の劣化加速試験を行った。Vsgを0.2kV、放電生成物供給手段から発生するオゾンの濃度が7ppmとなるようVscを−7kVに設定した。劣化加速試験時の回転速度、帯電電位、通過電流、劣化加速試験時間、特性評価タイミング、供給エアーの風速は比較例1と同様である。また、比較例1と同様の方法で、劣化加速試験用の第1の帯電手段13への印加電圧と劣化加速試験用の第1の露光手段14の光量を制御した。
【0053】
電子写真用感光体1の静電容量に関する特性評価の結果を図8の■プロットで、また、
(Ct−C0)/C0の算出結果を図9の■プロットで示す。図9の結果から、 実施例3では、実施例2に比べて(Ct−C0)/C0の値がさらに増大しており、より静電容量の劣化の進行が早いことがわかる。比較例1、実施例1〜3の結果から、放電生成物供給手段25からのオゾン濃度を上昇させることで、静電容量の劣化を加速させることができることがわかった。
【0054】
以上のように、本発明では、放電生成物の濃度を所望の値に制御しながら劣化加速試験を行えるため、放電生成物の影響による電子写真用感光体の劣化について評価をすることができる。さらに、劣化加速試験用の帯電手段への印加電圧に縛られていた放電生成物の濃度を任意に選択できるため、放電生成物供給手段から供給される放電生成物の濃度を上げて、電子写真用感光体の酸化劣化による劣化加速試験を実施することが出来、寿命試験の短縮化につながる。
【0055】
なお、本発明による一実施形態に係る劣化加速試験装置においては、被試験物である電子写真用感光体1は、ドラム状の電子写真用感光体を使用し、この電子写真用感光体1の周囲に第1及び第2帯電手段13、6、第1及び第2露光手段14、2、エアー供給手段24、放電生成物供給手段25、除電手段8を配設し、電子写真用感光体1を主軸18上で高速で回転するようにしている。しかしながら、この実施形態に限らず、種々の形態を使用することが可能である。例えば、電子写真用感光体1を試験片として、特許文献2記載の劣化加速試験装置のように、回転ディスク上にこの試験片を取り付け、この試験片の周辺に配設した第1及び第2帯電手段13、6、第1及び第2露光手段14、2、エアー供給手段24、放電生成物供給手段25、除電手段8によって、試験片に帯電処理、露光処理、エアー供給処理、放電生成物供給処理、除電処理を施すようにしても良い。
【0056】
また、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、前記実施形態の中で示唆した以外にも、前記実施形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は前記実施形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 電子写真用感光体
2 特性評価用の第2の露光手段
3 表面電位計プローブ
4 表面電位計
5 信号処理回路
6 特性評価用の第2の帯電手段
6aワイヤ電極
7 高圧電源
8 除電手段
9 信号処理回路
10 AD変換器
11 LED電源
12 高圧電源
13 劣化加速試験用の第1の帯電手段
13aワイヤ電極
14 劣化加速試験用の第1の露光手段
15 電源スイッチ
16 モータ
17 コントローラ
18 主軸
19 ベルト
20 ドラムチャック治具
21 手前側(電子写真用感光体ドラム1の一端側)の面板
22 奥側(電子写真用感光体ドラム1の他端側)の面板
23 デジタル(リレー)出力
24 エアー供給手段
25 放電生成物供給手段
25aワイヤ電極
25bグリッド電極
26 電源スイッチ
27 高圧電源
28 電源
29 電源スイッチ
30 放電生成物濃度検出手段
31 チューブ
32 チューブ
33 電源スイッチ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【特許文献1】特開平5−1973号公報
【特許文献2】特許第3759400号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真感光体を回転させ、帯電手段による当該電子写真感光体の静電気帯電工程と、露光手段による当該電子写真感光体の光放電工程とを含むサイクルを、繰り返し実行して、当該電子写真感光体の劣化を加速させる感光体劣化加速試験装置において、
前記帯電手段の静電気帯電工程時に発生する放電生成物が前記電子写真感光体へと到達する前にエアーを吹き付けて除去するエアー供給手段と、所定濃度の放電生成物を前記電子写真感光体に供給する放電生成物供給手段とを有し、前記サイクル中において、前記エアー供給手段によるエアーの吹き付けと、前記放電生成物供給手段による前記電子写真感光体への所定濃度の放電生成物の供給を実行しながら、当該電子写真感光体の劣化を加速させることを特徴とする感光体劣化加速試験装置。
【請求項2】
請求項1記載の感光体劣化加速試験装置において、
前記放電生成物供給手段は、スコロトロン帯電手段によって構成され、当該スコロトロン帯電手段からは前記放電生成物のみが実質的に前記電子写真用感光体に供給されるように、前記スコロトロン帯電手段のワイヤ電極及びグリッド電極への印加電圧が設定されていることを特徴とする感光体劣化加速試験装置。
【請求項3】
請求項2記載の感光体劣化加速試験装置において、
前記グリッド電極への印加電圧が0.2kV以上であることを特徴とする感光体劣化加速試験装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の感光体劣化加速試験装置において、
前記放電生成物供給手段から供給される放電生成物の1つであるオゾンの濃度が1ppm以上であることを特徴とする感光体劣化加速試験装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の感光体劣化加速試験装置において、
前記エアー供給手段から供給されるエアーの風速が9.3m/s以上であることを特徴とする感光体劣化加速試験装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の感光体劣化加速試験装置において、
前記電子写真感光体を静電気帯電させる第2の帯電手段と、当該電子写真感光体表面を露光して光放電させる第2の露光手段と、当該第電子写真感光体を除電する除電手段を備え、前記第2の帯電手段、第2の露光手段及び除電手段によって、前記電子写真感光体の特性を、前記劣化加速試験の所定サイクル毎に測定することを特徴とする感光体劣化加速試験装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載の感光体劣化加速試験装置を使用して電子写真感光体の劣化を加速させることを特徴とする感光体劣化加速試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−2718(P2012−2718A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138996(P2010−138996)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】