説明

感光性材料のための耐水性層支持体、およびその製造法

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、ポリオレフイン樹脂からなる耐水性被覆を有する写真用層支持体に関する。
〔従来の技術〕
耐水性写真用層支持体は、有利には両面上に設けられた合成樹脂被覆を有するプラスチツクフイルムまたは原紙からなり、これらの合成樹脂被覆は重合体、たとえばポリエチレンからなりかつ押出被覆を用いて設けられるか、または浸漬−または噴霧法を用いて紙上にもたらされかつ熱または高エネルギー放射線を用いて乾燥されかつ硬化される有機ラツカー混合物からなる。
この場合、合成樹脂層の一方の層上には、1つまたは多数のハロゲン化銀含有感光層が設けられる。感光層は、黒/白写真層であつても、カラー写真層であつてもよい。
1つないしは複数の感光層の下に配置された合成樹脂層(前面被覆)は普通、光反射性白色顔料ならびに場合により着色顔料、螢光増白剤および/または他の添加剤、たとえば帯電防止剤、白色顔料用の分散助剤、酸化防止剤、離型剤等を含有する。
感光層と反対側の紙面上に配置された合成樹脂層(裏面被覆)は、顔料で着色されているか、または未着色であつてもよく、かつ/または、積層品を写真支持体としてそれぞれ使用することから判明しかつ原則的に表面被覆の添加剤に一致してもよい他の添加剤を含有することができる。
前面被覆は、なお付加的な機能層を保持することができ、この層により、たとえば感光層の付着は改善される。
また、裏面被覆も、なおたとえば筆記適性、帯電防止性、滑り特性、平面度またはこれらの特性の数種を改善する他の機能層を備えることができる。
両面にポリエチレンで被覆された写真用紙支持体が、写真層を片面に設けた後に、望ましくない湾曲を有しないことを達成するためには、普通、前面のポリエチレン層が実質的にLDPEからなり、裏面のポリエチレン層が主としてHDPEからなるように処理される(西ドイツ国特許出願公開第2028600号明細書)。
写真原紙またはフイルム材料をポリオレフイン被覆でスロツトダイによる押出しを用いて被覆することは、自体公知の方法である。全く同様に、ポリエチレン(PE)を押出す場合に、写真処理により感度が高い際に明らかな障害またはそれどころか支持体材料の使用不能をまねくある程度の困難が生じることは、公知である。
エチレンを高圧法により重合させることによつて製造された低密度ポリエチレン(LDPE)を使用することは、写真用紙支持体にこのポリエチレンの不十分な剛性および硬度の欠点を付与し、このことは、最終製品の不十分な全剛性に認められ、殊に光沢表面の場合には、高められた粘着傾向によつて巻付ロールに認められる。
しかし、またエチレンを低圧法により重合させることによつて製造された高密度ポリエチレン(HPDE)を使用することも、写真用紙支持体に欠点を付与し、この欠点は、HDPEの高い溶融粘度および結晶度によつて生じるか、またはこのポリエチレンが前面被覆のために使用される場合には、このポリエチレンに安定化の目的で必然的に添加される助剤によつて前記欠点を生じる。これらの欠点は、とりわけ紙支持体上での弱いかまたは不十分な付着力および被覆された紙の不満足な平面度である。また、HD−ポリエチレンの僅かな引出し性も、殊に薄い被膜が所望されている場合には、不利となりうる。
したがつて、個々のタイプのポリエチレンによつてもたらされる欠点を制限するためには、通常、LDPEとHDPEとからなる最適化された混合物が使用される。
2つのタイプのポリエチレンおよびそれらの混合物には、制限されてのみ顔料を充填することができるにすぎないことが共通している。西ドイツ国特許出願公開第3411681号明細書には、如何なる程度写真結像の鮮鋭度が白色顔料に衝突する光の反射に依存するのかが記載されている。したがつて、衝突する光のこの反射を改善することは、全ての感光性支持体材料の重要な目的である。このことは、最高の屈折率を有する白色顔料が使用され(二酸化チタン)、かつポリオレフイン樹脂中の白色顔料含量は極めて良好な分散の場合にできるだけ高いので、表面に緻密な顔料充填層(Piqmentpackung)が生じることによつて行なわれる。この場合に、ポリオレフイン樹脂中の顔料凝集体は、阻止しなければならない。それというのも、これらの凝集体は、一方では全ての光の反射を減少させ、他方では押出被覆の際に溶融フイルムを引出す場合および層支持体に感光性乳剤を注ぐ場合に、障害をまねくからである。
押出被覆を実際に実施する場合、ポリエチレン樹脂−被覆混合物中の顔料濃度は、これまで20重量%よりも少ない量に制限されており、通常10〜17重量%の間にある。このことは、純粋なLDPEにも、記載されたLDPEとHDPEとからなる混合物にも該当する。
ポリエチレで被覆される全ての写真用支持紙に付随する種々の問題は、常に意図的な改善を喚起した。このような改善は、たとえば西ドイツ国特許出願第P3627859,9号明細書に記載されている。この西ドイツ国特許出願明細書によれば、前記欠点全体のうち幾つかの点で明らかな改善が達成される。しかしながら、二酸化チタン濃度が約20%に制限されておりかつ顔料凝集体の数がわずかに減少したにすぎないことは、満足できるものではない。
〔発明が解決しようとする課題〕
したがつて本発明の課題は、前面被覆に二酸化チタン顔料を使用する場合に高い顔料充填量および僅かな数の顔料凝集体を有する、ポリオレフイン樹脂で被覆された写真用支持体材料を提供することである。さらに、上記の写真用支持体材料を製造することのできる被覆混合物を提供することも、本発明の課題である。
〔課題を解決するための手段〕
上記課題は、前面被覆がエチレンと少なくとも1種の他のα−オレフィンとからなる共重合体を含有することにより解決される。このような共重合体は、原則的に所謂LLDPEタイプとして公知であり、低圧法および高圧法により製造することができる。α−オレフィンの選択は、それぞれの方法により規定されている。
この所謂“線状LDPE"(LLDPE)は、コモノマーの種類および含量に応じて0.880〜0.960g/m3の密度を有する。側鎖の立体特異的配置を有するこの変性ポリエチレンを使用することにより、多くの改善が可能である。すなわち、たとえばLLDPEは、LDPEよりも高い剛性および結晶度を有し;このLLDPEは、分子構造の点でHDPEに近い。さらに、LDPEに比べて、耐破壊性および耐摩耗性は改善されている〔“プラストフエアアルバイター(Plastverarbeiter)33(1982年)”、第9巻、第1035〜1037頁、ならびに“クンストシユトツフエ(Kunststoffe)73(1983年)”、第5巻、第251〜254頁〕。
しかしながら意外にも、実質的にポリオレフイン樹脂と二酸化チタンとからなる被覆材料にLLDPEを添加することによつて、著しく高い顔料充填量が可能となりかつそれどころかこの充填量は顔料凝集体の僅かな含分しか有しなかつたことが判明した。さらに意外にも原紙上での本発明による被覆材料は、同じ条件下でLLDPEを有しない被覆材料を用いる場合よりも強固な付着を生じた。
殊に、二酸化チタンとLLDPEとをさしあたり混練機または造粒押出機を用いてプレミツクスに加工した場合には、顔料凝集体含量を減少させることができた。したがつて、二酸化チタン含量が70重量%までであつてよいこのようなプレミツクスは、本発明の1つの特別な構成を表わす。これらのプレミツクスは、他の成分と一緒になつて、相応する被覆材料を形成することができる。
さらに、高い充填剤含量(二酸化チタン15重量%よりも多く)を有する本発明によるポリオレフイン樹脂溶融液でさえも所定のスロツトダイで、LDPE、HDPEまたはこれら2つの混合物を単独で使用する場合よりも薄い層厚にすることができたことは、驚異的であつた。このことは、このようなポリエチレン混合物の高い顔料着色性と関連して有利である。その理由は、反射が劣悪化されることなしに、より薄いポリエチレン層を前面上に設けることが可能となるからである。より薄い前面被覆を用いれば、裏面被覆の厚さを減少させることもできる。しかし低い層厚により、被覆された紙のあらかじめ規定された全厚の場合には、紙心材のより高い厚さが可能となり、このことは最終製品の剛性が明らかに望ましく向上すること、ならびに製造費が減少することに認められる。
本発明を次の実施例により詳説する。
実施例例 1 175g/m2の単位面積あたりの重量を有する写真原紙を、コロナ(Corona)前処理後に裏面上に、次の混合物25g/m2で被覆した: HDPE1)70重量%、ρ=0.950g/cm3 LDPE2)30重量%、ρ=0.924g/cm31)HDPE=高密度ポリエチレン(high density PE)
2)LDPE=低密度ポリエチレン(low density PE)
引き続き直ちに、コロナ前処理後に表面の被覆を、次の混合物30g/m2を用いて行なつた:

プレミツクスを、造粒押出機を用い130℃で製造した。
被覆を、タンデム押出被覆装置を用い、溶融温度310℃および機械速度120m/分で、帯状物幅120cmに対して実施した。
例 2 例1からの写真原紙を裏面上に例1の場合と同様に被覆した。
引き続き、コロナ前処理後に前面の被覆を、次の混合物30g/m2を用いて行なつた:

プレミツクスによる被覆を、実験室用溶融押出機を用い、溶融温度300℃および機械速度20m/分で、帯状物幅25cmに対して実施した。
例 3 200g/m2の単位面積あたりの重量を有する写真原紙を、コロナ前処理後に裏面上に次の混合物15g/m2を用いて被覆した: LDPE60重量%、ρ=0.924g/cm3 オクテン1.0モル%を有するLLDPE40重量%、ρ=0.935g/cm3 引き続き直ちに、コロナ前処理後に表面の被覆を、次の表に相応して行なつた:

プレミツクスを、造粒押出機を用い、130℃で製造した。
全ての被覆を、タンデム押出被覆装置を用い、溶融温度310℃および機械速度150m/分で、帯状物幅120cmに対して実施した。
例 4 例1からの写真原紙を、裏面上に例1の場合と同様に被覆した。
引き続き、コロナ前処理後に表面の被覆を、次の混合物30g/m2を用いて行なつた:LDPE 例1〜3からの二酸化チタン(ルチル型)50重量%とρ=0.924g/cm3 次の種類のLLDPE50重量%とからなるプレミツクス



プレミツクスを、造粒押出機を用い、130℃で製造した。
被覆を、溶融押出機を用いて、溶融温度300℃および機械速度20m/分で、帯状物幅25cmに対して実施した。
試験法の説明篩通過テスト(Filtratest):二酸化チタン50重量%およびポリオレフイン樹脂50重量%を有するプレミツクス200gを、実験室用押出機中で溶融温度300℃で、25μmの目開きを有する前秤量された篩に通す。純粋なポリオレフイン樹脂で、全ての顔料含有物質が篩を通過するまでさらに押出す。篩を800℃で灼熱した後に、篩残分を重量測定しかつ二酸化チタン1kgあたりの残分mgに換算する。
斑点レベル:透過光線中で、被覆紙1m2につき、ルーペなしに暗点として照明テーブル上に認めることのできる顔料凝集体を数える。この数を斑点/m2として記載する。
フイルム付着:原紙の前面上のポリオレフイン樹脂被膜の付着を、被覆の縦方向に10mmの幅の細長片を剥離することにより評価する。1から5までの点数を付与し、その際、点数1は極めて良好な付着を表わし、点数5は付着なしを表わす。
試験結果



プレミツクスの篩通過テストの結果および施された被覆の斑点レベルは、LLDPEを有する本発明による混合物が顔料凝集体を形成させる僅かな傾向しか有しないことを示す。
第2列目からの実施例は、LLDPE−プレミツクスを用いれば、LDPE−またはHDPE−プレミツクスを用いる従来の場合よりも高い顔料含量を有する層を施すことができることを示す。例2Fは、LLDPEが被覆材料に直接添加される場合、すなわち添加がプレミツクスを介さずに行なわれる場合でさえも、より僅かな斑点レベルを達成することができることを示す。
第3列目からの実施例は、溶融液がLLDPEを含有する場合、明らかにより薄い薄膜を溶融液から引出すことができることを示す。このことは、むしろ記載された比較的高い二酸化チタン含量を有するポリオレフイン樹脂の場合に言える。
第4列目からの実施例は、提示された利点が種々のタイプのLLDPEで達成することができることを示す。
例1、2および3から、最後に被覆材料中のLLDPEはむしろ紙上の前面被覆の付着をも改善することが明らかになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】心材と、その片面又は両面を被覆するポリオレフィン樹脂層からなる感光性材料用の耐水性層支持体において、前記の感光性材料を塗布すべき側のポリオレフィン樹脂が20重量%以上の光反射性白色顔料を含有し、ポリオレフィン樹脂が全部又は部分的にエチレンと他のα−オレフィンとからなる線状低密度ポリエチレン共重合体であることを特徴とする、斑点レベルの改善された感光性材料用の耐水性層支持体。
【請求項2】心材が紙材料又はフィルム材料である請求項1記載の層支持体。
【請求項3】光反射性白色顔料が二酸化チタンである請求項1記載の層支持体。
【請求項4】被覆材料が、艶消剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、染料、蛍光増白剤、離型剤の群からなる常用の添加剤の少なくとも1つを含有する請求項1記載の層支持体。
【請求項5】共重合体中のα−オレフィンが、C3〜C18−炭素鎖からなる請求項1記載の層支持体。
【請求項6】共重合体中のα−オレフィンが、C4〜C8−炭素鎖からなる請求項5記載の層支持体。
【請求項7】共重合体中のα−オレフィン含量が、0.1モル%〜20モル%の間にある請求項1記載の層支持体。
【請求項8】被覆材料中の二酸化チタン含量が、20〜40重量%の間にある請求項3記載の層支持体。
【請求項9】請求項1記載の耐水性層支持体を溶融押出を用いて製造する方法において、被覆材料として全部か又は部分的に、エチレンと他のα−オレフィンとからなる線状低密度ポリエチレン共重合体を使用することを特徴とする、感光性材料のための耐水性層支持体の製造法。
【請求項10】紙材料又はフィルム材料からなる心材を、被覆材料で被覆する請求項9記載の方法。
【請求項11】光反射性白色顔料が二酸化チタンである請求項9記載の方法。
【請求項12】被覆材料が、艶消剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、染料、蛍光増白剤、離型剤の群からなる常用の添加剤の少なくとも1つを含有する、請求項9記載の方法。
【請求項13】共重合体中のα−オレフィンが、C3〜C18−炭素鎖からなる請求項9記載の方法。
【請求項14】共重合体中のα−オレフィンが、C4〜C8−炭素鎖からなる請求項13記載の方法。
【請求項15】共重合体中のα−オレフィン含量が、0.1モル%〜20モル%の間にある請求項9記載の方法。
【請求項16】被覆材料中の二酸化チタン含量が、20重量%〜40重量%である請求項11記載の方法。
【請求項17】ポリオレフィン樹脂と光反射性白色顔料とからなる感光性材料のために、ポリオレフィン樹脂で被覆された請求項1記載の耐水性層支持体を製造するためのプレミックスにおいて、ポリオレフィン樹脂が全部か又は部分的に、エチレンと他のα−オレフィンとからなる線状低密度ポリエチレン共重合体であることを特徴とするプレミックス。
【請求項18】光反射性白色顔料が、二酸化チタンである請求項17記載のプレミックス。
【請求項19】染料、蛍光増白剤、艶消剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤及び酸化防止剤の群からなる常用の添加剤の少なくとも1つを含有する、請求項17記載のプレミックス。
【請求項20】α−オレフィン含量が、全ポリオレフィン樹脂の10重量%〜100重量%である、請求項17記載のプレミックス。
【請求項21】共重合体中のα−オレフィンが、C3〜C18−炭素鎖からなる請求項17記載のプレミックス。
【請求項22】共重合体中のα−オレフィンが、C4〜C8−炭素鎖からなる請求項17記載のプレミックス。
【請求項23】共重合体中のα−オレフィン含量が、0.1モル%〜20モル%の間にある請求項17記載のプレミックス。
【請求項24】共重合体中の二酸化チタン含量が、20重量%〜70重量%である、請求項18記載のプレミックス。

【特許番号】第2710628号
【登録日】平成9年(1997)10月24日
【発行日】平成10年(1998)2月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−114970
【出願日】昭和63年(1988)5月13日
【公開番号】特開昭63−301945
【公開日】昭和63年(1988)12月8日
【出願人】(999999999)フエリツクス・シエラー・ユニオール・ゲー・エム・ベー・ハー・ウント・コンパニー・コマンデイートゲゼルシヤフト
【参考文献】
【文献】特開 昭58−93049(JP,A)