説明

感光性組成物

【目的】 ■高感度のネガ型感光性組成物を提供する。■硬化皮膜の機械的強度に優れ、それにより感光性平版印刷版に適用したとき高い耐刷力が得られるネガ型感光性組成物を提供する。■耐薬品性に優れ、それにより感光性平版印刷版に適用したとき高い耐刷力が得られ、フォトレジストに適用したとき耐エッチング性が優れるネガ型感光性組成物を提供する。
【構成】 (1)ジアゾで化学修飾された感光性マイクロゲル(例えば、4級窒素原子を有するラテックス重合体とアニオン性基を有するジアゾ化合物の水溶液を混合して得られる)を含有する感光性組成物。
(2)アニオン性マイクロゲル(例えば、スルホ基を有するアクリル系ラテックス重合体)のカウンターカチオンがオニウム塩又は鉄・アレーン錯体である感光性マイクロゲルを含有する感光性組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、感光性組成物に関し、更に詳しくは、ネガ型感光性平版印刷版の感光層の感光性成分として適する感光性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ネガ型の感光性平版印刷版の感光層には感光性成分として感光性ジアゾ化合物を含有する感光性組成物が使用されている。この種の感光性組成物又はその感光性成分として、特公平2-47738号公報には、4級窒素原子を有するカチオン性ラテックス重合体(マイクロゲル)と感光性ジアゾ樹脂化合物を混合した感光性組成物、特開平4-172353号及び特公昭57-43890号公報には、カウンターアニオンが低分子の有機化合物又は無機化合物であるジアゾニウム塩を含有する感光性組成物、米国特許3,050,502号明細書及び西独特許1,114,704号明細書には、溶剤溶解性のジアゾポリマー、Am.Rev.Mater.Sci.,1983,13,178にはカウンターアニオンが無機化合物のオニウム塩、また、ヨーロッパ出願公開94915(1984)には、カウンターアニオンが無機化合物の鉄・アレーン錯体が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、これら公知の感光性組成物には、感度、硬化皮膜の機械的強度及び耐薬品性において十分とはいえない問題がある。
【0004】そこで、本発明の目的は、第1に、高感度のネガ型感光性組成物を提供することである。第2に、硬化皮膜の機械的強度に優れ、それにより感光性平版印刷版に適用したとき高い耐刷力が得られるネガ型感光性組成物を提供することである。第3に、耐薬品性に優れ、それにより感光性平版印刷版に適用したとき高い耐刷力が得られ、フォトレジストに適用したとき耐エッチング性が優れるネガ型感光性組成物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記本発明の目的は、下記(1)又は(2)によって達成される。
【0006】(1)ジアゾで化学修飾された感光性マイクロゲルを含有することを特徴とする感光性組成物。
【0007】(2)アニオン性マイクロゲルのカウンターカチオンがオニウム塩及び鉄・アレーン錯体から選ばれる少なくとも1つである感光性マイクロゲルを含有することを特徴とする感光性組成物。
【0008】以下、本発明について詳述する。
【0009】本発明に係るジアゾで化学修飾された感光性マイクロゲルは、ジアゾ基を有する化合物(以下「ジアゾ化合物」という)とマイクロゲルがイオン結合又は共有結合で結合した化合物である。
【0010】(1)ジアゾ化合物とマイクロゲルがイオン結合で結合した化合物カチオン性マイクロゲルのカウンターアニオンがアニオン性基を有するジアゾ化合物である化合物、及びジアゾニウム塩のカウンターアニオンがアニオン性マイクロゲルが挙げられる。
【0011】(1−1)カチオン性マイクロゲルのカウンターアニオンがアニオン性基を有するジアゾ化合物であるマイクロゲルカチオン性マイクロゲルとしては、4級窒素原子を有するラテックス重合体、即ち、水ないし極性溶剤に分散された粒状重合体が用いられる。上記カチオン性ラテックス重合体としては、ラテックス重合体の側鎖に4級窒素原子を含むものが好ましい。かかるラテックス重合体を形成するモノマー単位の代表例としては、下記一般式〔1〕〜一般式〔5〕で示されるものがある。
【0012】
【化1】


【0013】
【化2】


【0014】一般式〔1〕〜〔5〕において、X-はアニオンを表す。すなわちハロゲンイオン、硫酸イオン、リン酸イオン、スルホン酸イオン、酢酸イオン等である。N+に結合するRは同一であっても異種のものでもよく、各Rは水素原子又は1〜10個の炭素原子を有するアルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、デシルの各基)、アルケニル基(例えばプロペニル、ブチニルの各基)、又は6〜20個の炭素原子を有するアリール基(例えばフェニル、ナフチルの各基)、アルアルキル基(例えばベンジル、フェネチル、ナフチルメチルの各基)、もしくはアルカリール基(例えばトリル、キシリルの各基)を表す。Zは不飽和複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピペリジン、ピロール又はモルホリン環である。nは整数を表す。
【0015】カチオン性ラテックス重合体を形成する上記カチオン性モノマーは、水溶性の調節のために非カチオン性モノマーと共重合体を形成することが好ましい。そのような非カチオン性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸のエステル、スチレン、アルキレン、エーテル、酢酸ビニル、アクリロニトリル等があげられる。また、本発明において、カチオン性ラテックス重合体は、好ましくはジビニルベンゼンやジメタクリレート等の2個以上の官能基を持つモノマーにより架橋され、乳化重合により製造されるのが望ましい。
【0016】前記共重合体を形成する場合に、カチオン性ラテックス重合体中、カチオン性モノマーは5〜95重合%含まれるのが好ましく、更に好ましくは25〜65重量%の範囲で含まれる。また非カチオン性モノマーは、カチオン性ラテックス重合体中に5〜95重量%を含有することが好ましく、そのうち、架橋性モノマーは0.1〜8重量%含まれることが好ましい。
【0017】カチオン性ラテックス重合体の合成例としては、特開昭51-73440号公報の実施例に記載されているごとく、ビニルベンジルクロリドを他のモノマーと乳化重合し、その後、第3アミンで4級化する技術が知られている。
【0018】特に、好ましいカチオン性ラテックス重合体は、乳化重合によって得られた第3アミンを有するラテックス重合体を4級化剤で4級化することにより製造されたラテックス重合体である。この合成例としては特開昭55-22766号公報に記載の技術がある。
【0019】また、別の特に好ましい4級窒素原子を有するカチオン性ラテックス重合体は、4級窒素含有モノマーを親油性モノマーと乳化重合することにより製造されたラテックス重合体である。その合成方法は、知られている種々の方法の中から選んで用いられる。その1例としては、特開昭56-17352号公報に記載されているものがある。
【0020】本発明に係る感光性樹脂組成物を塗設して成る感光層は、露光部ではジアゾ樹脂とカチオンの反応により硬化し、親水性を失い、撥水性となる。
【0021】しかし、ラテックス粒子内部にカチオンが多く存在すると、露光後も粒子内にカチオンが残留して、親水性が保持され、水系現像液の浸透を防ぎきれず、また、現像時に膨潤がおこりやすくなり、皮膜強度を低下させる原因になる。
【0022】このようなことから、本発明に係る感光性樹脂組成物におけるカチオン性ラテックス重合体は、ラテックス粒子表面にカチオンをより多く配向するような合成法により製造されたものが特に望ましい。製造方法としては、先に第3アミンを有するラテックス重合体を乳化重合によって合成し、その後に4級化剤より4級化する方法が最も適している。
【0023】また、別の有用なカチオン性ラテックス重合体の合成法は、4級窒素原子含有モノマーを適当な親油性モノマーと乳化重合することにより製造する方法である。この合成法は、カチオン性ラテックス重合体中、カチオン性モノマー単位が少ない比率(好ましくは5〜30重量%)で含まれる場合に適している。
【0024】本発明に係る感光性樹脂組成物から得られる感光層の光硬化反応においては、カチオン性ラテックス重合体中のカチオン基が重要な働きをしている。この反応機構については明らかでないが、有用なカチオン基を有するカチオン性ラテックス重合体は、上述の如く4級窒素原子を有するものの中から選ばれる。
【0025】カチオン性ラテックス重合体の具体例としては、下記に示す化合物があげられる。(カッコ内はモル比の具体例を示す。)。
【0026】
【化3】


【0027】
【化4】


【0028】
【化5】


【0029】
【化6】


【0030】
【化7】


【0031】アニオン性基を有するジアゾ化合物としては、特公平2-47738号公報、特開平4-172353号公報及び特公昭57-43890号公報に記載のジアゾ化合物にさらにアニオン性基が導入された化合物を使用することができる。具体例としては、例えば4-ジアゾスチルベン-2-スルホン酸ナトリウム、4-ジアゾ-1-フェニルアミノ-2-スルホン酸ナトリウム、4,4′-ジジアゾスチルベン-2-スルホン酸ナトリウム、4-ジアゾベンゾフェノン-4′-カルボン酸ナトリウム、1-ジアゾピレン-6-スルホン酸ナトリウム、4,4′-ジジアゾフェニルアゾナフタレン-5-スルホン酸ナトリウム、ジアゾナフタレン-4-スルホン酸ナトリウム、ジアゾベンゼン-m-カルボン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0032】カチオン性マイクロゲルのカウンターアニオンがアニオン性基を有するジアゾ化合物であるマイクロゲルを合成するには、上記アニオン性基を有するジアゾ化合物の水溶液を上記カチオン性マイクロゲルの水分散液とを混合して得られた析出物を吸引濾過で回収し、水洗して目的物を得ることができる。
【0033】(1−2)ジアゾニウム塩のカウンターアニオンがアニオン性マイクロゲルであるマイクロゲルジアゾニウム塩としては、ネガ型感光性平版印刷版(PS版)の感光性層に感光性成分として普通に用いられる感光性ジアゾ化合物が用いられる。一般的に、かかるジアゾ化合物はジアゾ−芳香族化合物であり、更に詳細には、芳香族核上又はアミノ−窒素上に置換され得るジアゾ−アリールアミン、好ましくはp-ジアゾ-ジフェニルアミン及びその誘導体、例えばアルデヒド及びアセタールのような反応性カルボニル基を含んでいる有機縮合剤を用いたその縮合生成物、特に、ホルムアルデヒド塩化亜鉛及びパラホルムアルデヒドのような化合物と縮合物である。かかる著しく適した縮合生成物の製造はアメリカ特許明細書第2,922,715号及び第2,946,683号に記載されている。
【0034】アニオン性マイクロゲルとしては、ラテックス重合体のモノマー単位として、アクリル基又はメタクリル基を有し、かつカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基を有するものが用いられ、このようなモノマー単位の具体例としては、下記に示す化合物があげられる。
【0035】
【化8】


【0036】
【化9】


【0037】上記のようなモノマーからなる成分は本発明の光重合性組成物中に0.5〜50重量%、特に2〜30重量%含有されることが好ましい。
【0038】本発明のラテックス重合体は、上記モノマーと非アニオン性モノマーを共重合させて合成することもできるが、用いられる非アニオン性モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸のエステル、スチレン、アルキレン、エーテル、酢酸ビニル、アクリロニトリル等が挙げられ、これらは、好ましくはジビニルベンゼン、ジメタクリルレート等の2個以上の官能基を有するモノマーにより架橋される。このような非アニオン性モノマーは本発明の光重合性組成物中に5〜95重量%含有され、またジビニルベンゼンジメタクリルレート等のモノマーは組成物中に好ましくは0.1〜10重量%含有される。
【0039】上記本発明のラテックス重合体は、例えば特開昭51-73440号、特開昭55-22766号等に記載の乳化重合法に準じて合成することができる。
【0040】ジアゾニウム塩のカウンターアニオンがアニオン性マイクロゲルであるマイクロゲルの合成方法としては、上記のジアゾニウム塩の水溶液と上記アニオン性マイクロゲルの水分散液とを混合して得られた析出物を吸引濾過で回収し、水洗して目的物を得ることができる。
【0041】(2)ジアゾ化合物とマイクロゲルが共有結合で結合した化合物粒子表面にアミノ基を有するマイクロゲルのアミノ基を酸性下亜硝酸ナトリウムでジアゾ化する。
【0042】アミノ基を有するマイクロゲルは、アミノ基を有するモノマーを用い乳化重合によって通常製造される。一般的にマイクロゲルは、ポリマー成分99〜99.5重量%と架橋化剤10〜0.5重量%とから形成される。ポリマー成分は、内側と外側とで組成の異なる芯部及び外殻部マイクロゲルを作るために重合の過程において成分を変えることができる。重合体結合剤が用いられる場合、マイクロゲル対結合剤の重量比は1:20から1:1の範囲で広く変更できる。
【0043】マイクロゲルは種々の出発材料から作ることができる。普通、1個のエチレン性不飽和結合をもつモノマーが大部分のマイクロゲルを構成するのに用いられるが、架橋化剤は少なくとも2個の二重結合を有している。
【0044】アミノ基を有するモノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、2-アミノエチルビニルエーテル、p-アミノスチレン等が挙げられる。
【0045】またこれらと共重合される好ましいモノマーは、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、メタアクリル酸、ブチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、グリシジルメタアクリレート、スチレン及びアリルメタアクリレートであり、その他の有用なモノマーにはアクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸および2-メチル-ヘキシルアクリレートなどが含まれる。
【0046】好ましい架橋化剤は、ブタンジオールジアクリレートであるが、その他のものとしてはエチレングリコールジメタアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラエチレングリコールジメタアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタアクリルアミド、ジビニルベンゼン、ビニルメタアクリレート、ビニルクロトネート、ビニルアクリレート、ビニルアセチレン、トリビニルベンゼン、グリセリントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルアセチレン、ジビニルエタン、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン、ヘキサトリエン、トリエチレングリコールジメタアクリレート、ジアリルシアナミド、グリコールジアクリレート、エチレングリコールジビニルエーテル、ジアリルフタレート、ジビニルジメチルシラン、グリセロールトリビニルエーテルおよび類似のものなどが含まれる。
【0047】普通マイクロゲルの製造に際しては、1種または数種のモノマーと架橋化剤とが適当な乳化剤および開始剤とともに水の中に分散される。通常アニオン性、カチオン性または非イオン性乳化剤と水溶性の開始剤とが用いられる。乳化剤の例はラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルピリジンクロライド、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、コロイド状シリカ、陰イオン性有機リン酸塩、マグネシウムモンモリロナイト、オクチルフェノール1モルと酸化エチレン12〜13モルとの反応生成物、第二アルキル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物などである。開始剤の例は過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、t-ブチルヒドロ過酸化物、過酸化水素、アゾビス(イソブチロニトリル)、アゾビス(イソブチロイミジン塩酸)、過酸化水素−硫酸第一鉄および周知の過硫酸−重亜硫酸の組合せのような各種レドックス(酸化−還元)系などである。通常共重合されるモノマーの重量を基準として0.05〜5重量%の開始剤が使用される。
【0048】さらに粒子表面への水酸基、アミノ基の別の導入法としては例えば「高分子の化学反応(上)(下)」(大河原信著、化学同人、l972)「高分子ファインケミカル」(小田良平著、講談社、1976)、「反応性高分子」(栗田恵輔、岩倉義男、講談社、l977)等に記載の高分子反応による方法も使用でき、例えば反応性基を有するマイクロゲルを合成した後、アミノ基を有する化合物で反応性基に化学修飾したり、アミノ基を有する重合性モノマーで反応性基を起点にグラフト重合させる方法が用いられる。
【0049】ジアゾ化合物とマイクロゲルが共有結合で結合した化合物を合成するには、上記アミノ基を有するマイクロゲルの水分散液を硫酸、塩酸等で酸性にし、0℃付近に冷却し、撹拌下で亜硝酸ナトリウムの濃厚水溶液を滴下し、加え終わったら溶液が酸性であることを確認した後、30分間そのまま撹拌しジアゾ化を完全に行わせる。この溶液に所望のカウンターアニオンの塩(例えば、塩化亜鉛、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム)を加えてよく振とうし放置すれば、ジアゾ基を有するマイクロゲルが沈澱する。
【0050】次に、アニオン性マイクロゲルのカウンターカチオンがオニウム塩及び鉄・アレーン錯体から選ばれる少なくとも1つである感光性マイクロゲルを含有する感光性組成物について説明する。
【0051】上記オニウム塩としては、下記一般式〔6〕又は〔7〕で示される化合物が用いられる。
【0052】
【化10】


【0053】一般式〔6〕及び〔7〕において、Ar1及びAr2は同一でも相異していてもよく、置換又は無置換のアリール基を示す。好ましい置換基は、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、ヒドロキシ、メルカプトの各基及びハロゲン原子であり、更に好ましくは炭素数1〜8個のアルキル基、炭素数1〜8個のアルコキシ基、ニトロ基及び塩素原子である。
【0054】R4、R5及びR6は同一でも相異していてもよく、それぞれ置換若しくは無置換のアルキル基又はアリール基を示す。好ましくは炭素数6〜14個のアリール基及び炭素数1〜8個のアルキル基並びにそれらの置換誘導体である。
【0055】好ましい置換基としては、アリール基に対しては炭素数1〜8個のアルコキシ、炭素数1〜8個のアルキル、ニトロ、カルボキシ、ヒドロキシ基及びハロゲン原子であり、アルキル基に対しては炭素数1〜8個のアルコキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル基である。
【0056】またR4、R5及びR6のうちの2つ並びにAr1及びAr2はそれぞれ単結合又は置換基を介して結合してもよい。
【0057】X-はアニオン(対イオン)を示す。具体例としては、ハロゲン原子アニオン、BF4-、BCl4-、ZrCl5-、SbCl6-、FeCl4-、GaCl4-、GaBr4-、AlI4-、AlCl4-、SbF6-、CF3SO3-、PF6-、BPh4-、ナフタレン-1-スルホン酸、アントラセン-1-スルホン酸等の縮合多核芳香族スルホン酸アニオン、アントラキノンスルホン酸アニオン、アントラセンスルホン酸アニオン、スルホン酸基含有染料などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0058】一般式〔6〕で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0059】
【化11】


【0060】
【化12】


【0061】
【化13】


【0062】
【化14】


【0063】また本発明に用いられる一般式〔7〕で示される化合物の具体例を次に示す。
【0064】
【化15】


【0065】
【化16】


【0066】本発明において、オニウム化合物の使用量は、光重合可能なエチレン性不飽和化合物100部に対し、重量比で0.01〜50部、特に好ましくは0.1〜20部の範囲である。
【0067】一般式〔6〕、〔7〕で示される上記化合物は、例えば、J.W.Knapczykら著,J.Am.Chem.Soc., 第91巻,第145頁(1969年)、A.L.Myacockら著,J.Org.Chem., 第35巻,第2532頁(1970年)、E.Goethalsら著,Bull.Soc.Chem.Belg., 第73巻,第546頁(1964年)、H.M.Leicester著,J.Am.Chem.Soc., 第51巻,第3587頁(1929年)、J.V.Crivelloら著,J.Polym.Soc.Polym.Chem.Ed., 第18巻,第2677頁(1980年)、米国特許2,807,648号及び4,247,473号明細書、F.M.Beringerら著,J.Am.Chem.Soc., 第75巻,第2705頁(1953年)、特開昭53-101331号公報などに示された手順により製造することができる。
【0068】上記アニオン性マイクロゲルとしては、前記(1−2)に記載したアニオン性マイクロゲルを用いることができる。
【0069】オニウム塩とアニオン性マイクロゲルからアニオン性マイクロゲルのカウンターカチオンがオニウム塩である感光性マイクロゲルを合成するには、上記のオニウム塩の水溶液及び/又は極性溶剤溶液と上記アニオン性マイクロゲルの水分散液とを混合して得られた析出物を吸引濾過で回収し、水洗して目的物を得ることができる。
【0070】アニオン性マイクロゲルのカウンターカチオンが鉄・アレーン錯体である感光性マイクロゲルは、鉄・アレーン錯体の水溶液及び/又は極性溶剤溶液とアニオン性マイクロゲルの水分散液とを混合して得られた析出物を吸引濾過で回収し、水洗して目的物を得ることができる。アニオン性マイクロゲルとしては、前記のものを用いることができる。
【0071】本発明に用いられる鉄・アレーン錯体は、下記一般式〔8〕で表される。
【0072】
【化17】


【0073】一般式〔8〕においてR1及びR2はC1〜C12のアルキル基、C2〜C12のアルケニル基、C2〜C12のアルキニル基、C1〜C8のアルコキシ基、シアノ基、アルキルチオ基、フェノキシ基、C2〜C6のモノカルボン酸及びエステル及びアミド基、フェニル基、C2〜C5のアルカノイル基、アンモニウム基、ピリジニウム基、ニトロ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルフォニル基及びスルファモイル基より選ばれる。
【0074】前記一般式〔8〕で表される鉄・アレーン錯体は、Chemiker-Zeitung, 108(II)345〜354(1984)に数多くの化合物が記載されている。
【0075】具体的には(η6-ベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)-ヘキサフルオロホスフェート、(η6-トルエン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、(η6-クメン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、(η6-ベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロアルセネート、(η6-ベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)テトラフルオロボレート、(η6-ナフタレン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、(η6-アントラセン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、(η6-ピレン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、(η6-ベンゼン)(η5-シアノシクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、(η6-トルエン)(η5-アセチルシクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、(η6-クメン)(η5-クロルシクロペンタジエニル)鉄(II)テトラフルオロボレート、(η6-ベンゼン)(η5-カルボエトキシシクロヘキサジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、(η6-ベンゼン)(η5-1,3-ジクロルシクロヘキサジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、(η6-シアノベンゼン)(η5-シクロヘキサジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、(η6-アセトフェノン)(η5-シクロヘキサジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、(η6-メチルベンゾエート)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、(η6-ベンゼンスルホンアミド)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)テトラフルオロボレート、(η6-ベンゼンスルホンアミド)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、(η6-シアノベンゼン)(η5-シアノシクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、(η6-クロルナフタレン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、(η6-アントラセン)(η5-シアノシクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェートなどがあげられる。これらの化合物は、Dokl. Akd. Nauk SSSR 149 615(1963)に記載された方法により合成できる。
【0076】本発明におけるマイクロゲル及び感光性マイクロゲルは、粒子径が0.005〜1μmで、粒子内部が橋かけ構造をとっており、溶剤に不溶で、水や有機溶剤に分散可能であり、フィルムを形成したときに目視で透明であっても、ミクロ的に不均一構造のゲルである。
【0077】次に、本発明の感光性マイクロゲルの合成例を示す。合成例1〜4はジアゾで化学修飾された感光性マイクロゲルの合成例、合成例5及び6はアニオン性マイクロゲルのカウンターカチオンがオニウム塩である感光性マイクロゲルの、合成例7は同じくカウンターカチオンが鉄・アレーン錯体である感光性マイクロゲルの合成例である。
【0078】合成例1特開昭55-22766号のカチオン性マイクロゲルの合成法に準じて、特公平2-47738号例示化合物(1)を合成した。このマイクロゲル66gを水に分散した液とジアゾナフタレン-4-スルホン酸ナトリウム26.8gを水に溶解させた溶液を混合して得られた析出物を吸引ろ過にて回収し、水洗後減圧にて乾燥して感光性マイクロゲル(1)を得た。
【0079】合成例2合成例1におけるジアゾナフタレン-4-スルホン酸ソーダに代えて、ジアゾベンゼン-m-カルボン酸ソーダを用いた以外は合成例1と同様に行い、感光性マイクロゲル(2)を得た。
【0080】合成例3乳化重合装置は5lの4つ首フラスコに撹拌スタラー、1lの添加ロート、温度計、窒素ガス注入管、水冷凝縮器をとり付け、そして加熱マントル中に入れて構成されている。このフラスコに脱イオン水3360gとラウリルスルホン酸ナトリウム30%水溶液20gを加え、この活性剤系を窒素雰囲気の下に80℃に加熱した。この温度でメチルメタクリレート420g、エチルアクリレート240g、スチレンスルホン酸165g、アリルメタアクリレート16g及び1,4-ブタンジオールジアクリレート16gを含むモノマー混合物の25%を1度に加えた。これに、過硫酸カリウムの5%水溶液10mlと、リン酸カリウムの7%水性溶液10mlとを直ちに添加した。反応混合物は乳濁し85℃に発熱した。温度を80〜88℃の間に保ちながら、モノマー混合物の残部を90分の期間にわたって添加した。添加が終了したら、反応混合物を80〜85℃でさらに2時間加熱した。青味を帯びた乳濁液を室温まで冷却し、メタノールを添加して凝固させた。得られたスラリーを濾過し、水で2回水洗し、吸引して乾かしそして得られた微細な粉末を100℃の炉の中で4時間乾燥させた。粉末粒子の球状の形が顕微鏡によって確認された。
【0081】このマイクロゲル57gを水に分散した液とp-ジアゾジフェニルアミン硫酸塩26.8gを水に溶解させた溶液を混合して得られた析出物を吸引ろ過にて回収し、水洗後減圧にて乾燥して感光性マイクロゲル(3)を得た。
【0082】合成例4合成例3におけるスチレンスルホン酸に代えて、メタクリル酸を用いた以外は合成例3と同様にして感光性マイクロゲル(4)を得た。
【0083】合成例5合成例3におけるスチレンスルホン酸に代えて、p-アミノスチレンを用いた以外は合成例1と同様にしてマイクロゲルを合成し、次にこのマイクロゲル25gを5%塩酸溶液に分散した後、0℃付近に冷却し、この溶液を撹拌しながら、亜硝酸ナトリウム6.9gを水に溶解した濃厚水溶液を少しずつ滴下する。この溶液に17.1gのヘキサフルオロリン酸アンモニウムの水溶液を加えると、ヘキサフルオロリン酸塩の感光性ジアゾマイクロゲルが得られる(感光性マイクロゲル(5))。
【0084】合成例6合成例3で合成されたマイクロゲル57gを水に分散した液とジフェニルヨードニウム塩28.9gを水/メタノールに溶解させた溶液を混合して得られた析出物を吸引ろ過にて回収し、水洗後減圧にて乾燥して感光性マイクロゲル(6)を得た。
【0085】合成例7合成例3で合成されたマイクロゲル57gを水に分散した液と(η6-ベンゼン)(η5-シアノシクロペンタジエニル)鉄(II)25.1gを水/メタノールに溶解させた溶液を混合して得られた析出物を吸引ろ過にて回収し、水洗後減圧にて乾燥して感光性マイクロゲル(7)を得た。
【0086】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。
【0087】実施例1砂目立てして陽極酸化処理したアルミニウム板上に、下記の感光性組成物を乾燥後の膜厚が2μmになるよう被覆して感光性平版印刷版を得た。
【0088】
感光性組成物 感光性マイクロゲル(1) 1.1g N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリル/ メチルメタクリレート/メタクリル酸(モル比:10/40/45/5)
共重合体(Mw=70000) 11.0g ビクトリアピュアーブルーBOH(保土ケ谷化学(株)製) 0.13g メチルセロソルブ 100gこのようにして得た感光性平版印刷版試料に、4kWメタルハライドランプ(岩崎電気(株)製、アイドルフィン2000)を光源として、写真のネガ原画及びステップタブレット(コニカ(株)製TPS−A)を密着して40秒間焼き付けた。次に、この試料をSDN−2(コニカ(株)製)現像液を水で6倍に希釈した現像液で27℃にて20秒間現像したところ未露光部分が除去され、感脂性の優れたネガレリーフ像が得られた。これに湿し水で保水性を与えてオフセット印刷機にかけると画像再現性良好な印刷物が得られた。このときの感度及び耐刷力を表1にまとめて示す。
【0089】実施例2実施例1の感光性組成物で感光性マイクロゲル(1)に代えて、感光性マイクロゲル(2)を用いた以外は実施例1と同様の実験を行ったところ表1の結果を得た。
【0090】実施例3実施例1の感光性組成物で感光性マイクロゲル(1)に代えて、感光性マイクロゲル(3)を用いた以外は実施例lと同様の実験を行ったところ表lの結果を得た。
【0091】実施例4実施例1の感光性組成物で感光性マイクロゲル(1)に代えて、感光性マイクロゲル(4)を用いた以外は実施例1と同様の実験を行ったところ表1の結果を得た。
【0092】実施例5実施例1の感光性組成物から共重合体を除き、さらに感光性マイクロゲル(1)に代えて、感光性マイクロゲル(5)を用いた以外は実施例1と同様の実験を行ったところ表1の結果を得た。
【0093】実施例6感光性組成物として下記の感光性組成物を用いた以外は実施例1と同様の実験を行った。結果を表1に示す。
【0094】
感光性組成物 感光性マイクロゲル(6) 1.1g p-ヒドロキシスチレン/2,3-エピチオプロピルメタアクリレート (モル比:30/70)共重合体(Mw=4000) 11.0g ビクトリアピュアーブルーBOH(保土ケ谷化学(株)製) 0.13g メチルセロソルブ 100g実施例7実施例6における感光性マイクロゲル(6)に代えて、感光性マイクロゲル(7)を用いた以外は実施例6と同様に行い、表1の結果を得た。
【0095】実施例8実施例3における感光性組成物からN-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリル/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体を除いた以外は実施例3と同様にして感光性平版印刷版試料を作成し試験したところ、露光部分が現像液により除去されたポジレリーフ像が得られた。結果を表1に示す。
【0096】比較例1下記の感光性組成物を用いる以外は実施例1と同様の実験を行った。結果を表1に示す。
【0097】
感光性組成物 感光性マイクロゲル(1) 4g ジアゾ樹脂(p-ジアゾジフェニルアミンとホルムアルデヒドの縮合物 とヘキサフルオロリン酸アンモニウムとの反応生成物) 2g 液状ポリブタジエン(日本曹達(株)製NISSO−PB1000)
10%メチルエチルケトン溶液 40g メチルセロソルブ 100g比較例2下記の感光性組成物を用いる以外は実施例1と同様の実験を行った。結果を表1に示す。
【0098】
感光性組成物 ジアゾ樹脂(p-ジアゾジフェニルアミンとホルムアルデヒドの縮合物 とヘキサフルオロリン酸アンモニウムとの反応生成物) 1.0g N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリル/ メチルメタクリレート/メタクリル酸(モル比:10/40/45/5)
共重合体(Mw=70000) 11.0g ビクトリアピュアーブルーBOH(保土ケ谷化学(株)製) 0.13g メチルセロソルブ 100g比較例3実施例5の感光性マイクロゲル(5)に代えて、下記の感光性ジアゾポリマーを用いた以外は実施例5と同様の実験を行ったところ、表1の結果を得た。
【0099】
【化18】


【0100】比較例4実施例6における感光性マイクロゲル(6)に代えて、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩を用いた以外は実施例6と同様の実験を行い、表1の結果を得た。
【0101】比較例5実施例7における感光性マイクロゲル(7)に代えて、(η6-ベンゼン)(η5-シアノシクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロリン酸塩を用いた以外は実施例7と同様の実験を行い、表1の結果を得た。
【0102】
【表1】


【0103】〈感度〉ステップタブレットに相当する感光性平版印刷版の硬化段数(ベタ段数)を3段にするのに必要な露光エネルギー(ただし、ポジレリーフ像の場合は、溶出段数(クリアー段数)を3段にするのに必要な露光エネルギー)。数値が小さい方がより少ない露光エネルギーで所定の感度を得られるので、高感度(感度が優れる)である。
【0104】〈耐刷力〉オフセット印刷機で印刷を行い、感光層の摩耗により印刷物の画像再現性が印刷スタート時に比べ明らかに悪化する印刷枚数。数値が大きい方が大量の印刷物を印刷することが可能なため、高耐刷力(機械的強度に優れ、耐薬品性に優れる)である。
【0105】
【発明の効果】本発明によれば、下記■〜■の効果が得られる。
【0106】■高感度のネガ型感光性組成物が得られる。
【0107】■硬化皮膜の機械的強度に優れ、それにより感光性平版印刷版に適用したとき高い耐刷力が得られるネガ型感光性組成物が得られる。
【0108】■耐薬品性に優れ、それにより感光性平版印刷版に適用したとき高い耐刷力が得られ、フォトレジストに適用したとき耐エッチング性が優れるネガ型感光性組成物が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ジアゾで化学修飾された感光性マイクロゲルを含有することを特徴とする感光性組成物。
【請求項2】 アニオン性マイクロゲルのカウンターカチオンがオニウム塩及び鉄・アレーン錯体から選ばれる少なくとも1つである感光性マイクロゲルを含有することを特徴とする感光性組成物。