説明

感光性記録媒体用カートリッジ

【課題】 遮光及び防塵効果の高い感光性記録媒体用カートリッジを提供する。
【解決手段】 カートリッジ2は、下側シェル30及び上側シェル31と、シャッタ10、ロック機構11から構成されている。ホログラム記録ディスク4は、下側シェル30と上側シェル31とを重ね合わせて接合したカートリッジ本体25内のディスク収容部3に回転自在に収容される。下側シェル30と上側シェル31との接合される両内面には、第1凹部34及び第2凹部35と、第1凸部42及び第2凸部43とが設けられており、接合時にこれらが嵌合され、ラビリンス状の遮光構造を形成する。これにより、光や塵芥が下側シェル30及び上側シェル31の隙間から進入するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性記録媒体を収容する感光性記録媒体用カートリッジに関し、更に詳しくは、感光性記録媒体としてホログラム記録媒体を収容する感光性記録媒体用カートリッジの遮光性能及び防塵性能の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
データをホログラムによって記録するホログラム記録媒体が発明されている(例えば、特許文献1参照)。このホログラム記録媒体は、円板形状の支持体上に感光性材料からなるホログラム記録層が層設された感光性記録媒体であり、データをレーザ光の干渉縞として多層記録することにより、従来普及している記録媒体であるDVDよりも大きなデータ記録容量を得ることができる。このホログラム記録媒体は、ホログラム記録層が曝光され、または塵芥が付着することによりその性能に悪影響が及ぶため、遮光機能及び防塵機能を有するカートリッジに収容されて取り扱われている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1記載の発明では、DVD−RAMのカートリッジに類似したカートリッジにホログラム記録媒体を収容している。このカートリッジは、ホログラム記録層に影響を与える波長域の光線の透過率が小さい材質で形成されている。また、特許文献2記載の発明では、ホログラム記録層の感応色を遮光する材質でカートリッジを形成し、ホログラム記録媒体を外部に露呈させる可動部分の合せ目には、スポンジ状の遮光材を貼付している。
【特許文献1】特開2004−029476号公報
【特許文献2】特開2003−317422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のカートリッジは、光線透過率の小さな材料を使用しているものの、カートリッジ自体の遮光及び防塵構造に関する記載がない。特許文献1記載のカートリッジが、ディスク状の記録媒体を収容するカートリッジとして一般的な構造を有しているとすれば、記録媒体を回転自在な状態で挟み込むようにして収容する上側シェル及び下側シェルと、これら上側シェル及び下側シェルに記録媒体の一部を外部に露呈させるように形成される開口と、この開口を開閉するシャッタとを備えているものを考えられる。しかし、ホログラム記録媒体を収容するカートリッジは、上側シェルと下側シェルとの間の合せ目が適切に遮光及び防塵されていなければ、この合せ目から光や塵芥がカートリッジ内に進入し、ホログラム記録媒体のホログラム記録層に悪影響を与えてしまう。
【0005】
また、特許文献2記載のカートリッジは、上側シェルと下側シェルとの間の合せ目に何ら遮光、防塵構造が施されていない。そのため、やはりこの合せ目からカートリッジ内部に光や塵芥が進入してしまう。
【0006】
本発明は、ホログラム記録媒体等の感光性記録媒体の遮光及び防塵効果の高いカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の感光性記録媒体用カートリッジは、略板状に形成された第1シェルの内面に、感光性記録媒体の外周を取り囲む第1の遮光壁を設け、この第1シェルに接合される第2シェルの内面に第1の遮光壁の内側または外側に近接して配置される第2の遮光壁を設けたものである。これによれば、第1シェルと第2シェルとの端縁の合せ目から光や塵芥が進入しても、第1の遮光壁と第2の遮光壁とからなる遮光構造によって感光性記録媒体まで達することはないため、感光性記録媒体を感光させず、かつ清浄な状態で収容することができる。
【0008】
また、上記第1の遮光壁及び第2の遮光壁に代えて、第1シェルの内面に、感光性記録媒体の外周を取り囲む第1の凹部を設け、第2シェルの内面に第1の凹部内に挿入される第1の凸部を設けてもよい。この凹部と凸部との組み合わせによれば、遮光構造がより重層的になるため、遮光及び防塵効果をより向上させることができる。
【0009】
また、第1シェルの内面外周に第2の凹部を設け、第2シェルの内面外周に第2の凹部内に挿入され、かつ先端が第1シェルの内面に当接される第2の凸部を設けてもよい。更に、第1シェルと第2シェルとを熱可塑性プラスチックで形成し、かつ第2の凸部の先端を第1シェルの内面に溶着させてもよい。これによれば、第1シェルと第2シェルとの端縁での遮光構造もより重層的になり、かつ第1シェルと第2シェルとの接合が強固に行なわれるため、より遮光及び防塵機能を向上させることができる。
【0010】
本発明のカートリッジには、各種機器内にセットされた時に使用される位置決め部や、シャッタの開閉動作をロックするロック機構等が組み込まれる。これらは、第1の遮光壁からなる遮光構造、または第1の凹部と第1の凸部とからなる遮光構造の外側に設けるとよい。これにより、第1の遮光構造及び第2の遮光構造の遮光及び防塵機能が低下することはない。
【0011】
また、第1シェル及び第2シェルの内面と、シャッタに対面する外面とに対し、表面粗さRa:5〜20μmのマット加工、またはシボ加工を施すとよい。これによれば、カートリッジ内部や、シェルとシャッタとの間に光が進入した場合でも、光を拡散、減衰させることができるため、感光性記録層に対する影響を軽減させることができる。
【0012】
また、上述したように、第1シェルと第2シェルとを溶着によって固着する場合には、第1シェルと第2シェルとの材質を同一または類似の熱可塑性プラスチックで形成し、かつシャッタを含むその他の部品を該第1シェル及び第2シェルと異なる材質で形成するとよい。これによれば、第1シェルと第2シェルとの溶着時に第1シェル及び第2シェルとその他の部品とが溶着してしまうのを防止することができる。
【0013】
また、第1シェル及び第2シェルとシャッタとの成形に用いられるプラスチックに、遮光性物質を0.01〜5.00重量%添加するとよい。遮光性物質としてカーボンブラックを使用する場合には、0.01〜2.00重量%を添加するとよい。これにより、カートリッジ本体とシャッタとの光透過率を小さくすることができ、カートリッジの遮光性能を向上させることができる。
【0014】
また、第1シェル及び第2シェルとシャッタとの成形に用いられるプラスチックに、シリコーン系滑剤を0.1〜5.0重量%添加するとよい。これによれば、シャッタの動作が滑らかになるため、シャッタと第1シェル及び第2シェルとの間の摩擦により削り屑等が発生するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカートリッジによれば、第1シェル及び第2シェルの合せ目から光や塵芥が進入するのを効果的に防止することができ、ホログラム記録媒体等の感光性記録媒体を光密及び清浄に収容することができる。また、その作用効果は、第1シェル及び第2シェルに遮光性能及び防塵性能を高める構造を設けることによって得ることができるので、遮光のための部品点数の増加等がなく、比較的低コストに採用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を用いたホログラム記録媒体用カートリッジ(以下、カートリッジと省略する)の第1の実施形態について説明する。図1〜図3は、第1実施形態のカートリッジの外観形状を示す斜視図であり、図4及び図5は、カートリッジの装填方向A、及びこの装填方向Aに直交する方向の要部断面図である。
【0017】
カートリッジ2は、内部に設けられたディスク収容部3に、円板形状のホログラム記録媒体(以下、記録ディスクと称する)4を回転自在に収容している。記録ディスク4は、カートリッジ2に収容された状態で取り扱われる。
【0018】
記録ディスク4は、中心部に穴をあけてディスク状にしたものであり、両面に感光性材料からなるホログラム記録層が設けられた感光性記録媒体である。このホログラム記録層には、例えば、緑色532nm〜青色405nmの波長域のレーザ光により、データがレーザ光の干渉縞として多層記録される。なお、記録ディスク4の穴部に補強材を付加してもよい。
【0019】
カートリッジ2の上面及び下面には、ディスク収容部3に収容した記録ディスク4を外部に露呈させる開口7,8が形成されている。これらの開口7,8は、常態ではカートリッジ2の外側に移動自在に設けられたシャッタ10によって閉じられており、シャッタ10が矢印B方向の開き位置に向けて移動されることにより開放される。シャッタ10は、バネによって閉じ位置である矢印C方向に付勢されており、独立して動作するようにカートリッジ2の両面にそれぞれ設けられたロック機構11,12によって閉じ位置でロックされている。そのため、カートリッジ2に対する振動や衝撃等によってシャッタ10が移動し、開口7,8が不用意に開放されることはない。
【0020】
カートリッジ2は、記録ディスク4にデータを記録する記録装置や、記録ディスク4からデータを読み出す再生装置に設けられたカートリッジスロットに対し、装填方向Aから挿入される。記録装置または再生装置に装填されたカートリッジ2は、両面に設けられた位置決め穴15によって位置決めされ、シャッタ10が開き位置に移動されて開口7,8が開放される。例えば、図1に示す状態でカートリッジ2が装置に装填された場合には、下面の開口8から装置のピックアップ部がカートリッジ2内に挿入され、記録ディスク4の下面のホログラム記録層に対しデータが記録または再生される。また、図2に示すように、カートリッジ2を裏返して装置に装填した場合には、下面に配置される開口7からピックアップ部が挿入され、図1における記録ディスク4の上面のホログラム記録層にデータが記録または再生される。
【0021】
記録装置及び再生装置内には、カートリッジ2のロック機構11,12を解除するロック解除機構と、シャッタ10を閉じ位置と開き位置との間で移動させるシャッタ開閉機構とが組み込まれている。図3に示すように、ロック解除機構は、装置内で解除治具18,19を軸方向に移動させ、カートリッジ2の両面にそれぞれ設けられたロック機構11,12の解除用係合部20,21に該治具18,19をそれぞれ係合させる。解除用係合部20,21は、例えば三叉形状となっており、解除治具18,19はこの解除用係合部20,21に対して容易に係合可能なように、3本の係合ピン23を有している。
【0022】
解除治具18,19が解除用係合部20,21に係合し、それぞれ反時計方向に回転されると各ロック機構11,12が解除される。次いで、シャッタ開閉機構がシャッタ10の側面に形成された穴10aに駆動用のピンを挿入し、かつ開き方向Bに移動させる。これにより、シャッタ10がスライド移動され、図5(B)に示すように、カートリッジ2の両面の開口7,8が開放される。
【0023】
図6は、カートリッジ2の構成を示す分解斜視図である。カートリッジ2は、記録ディスク4を回転自在に収容するカートリッジ本体25と、このカートリッジ本体25の両面の開口7,8を外側から開閉するシャッタ10と、カートリッジ本体25に組み込まれるロック機構11,12とからなる。なお、ロック機構12は、ロック機構11と面対称で同じ構成及び構造であるため、図示及び詳しい説明は省略する。
【0024】
図7に示すように、カートリッジ本体25は、略板状の下側シェル30と、この下側シェル30の上面に接合される上側シェル31とから構成されている。下側シェル30と上側シェル31は、遮光性物質と滑剤とが添加された同一または類似の熱可塑性プラスチックによって形成されている。なお、本実施形態では、第1シェルとして下側シェル30を、第2シェルとして上側シェル31をそれぞれ対応させているが、逆にしてもよい。
【0025】
上記遮光性物質として様々な物質を添加することができるが、使用する遮光性物質に応じて、例えば、0.01〜5.00重量%を添加することが好ましい。また、上記遮光性物質として、例えば、カーボンブラックを用いることができる。このカーボンブラックの添加により遮光性を確保し、物理強度を向上させることができる。カーボンブラックの添加量としては、0.01〜2.00重量%が好ましい。添加量が0.01重量%を超えると、遮光性及び物理強度の向上という効果が表れるが、2.00重量%を超えると物理強度が低下するためである。
【0026】
上記滑剤として、例えば、シリコーン系滑剤を用いることができる。このシリコーン系滑剤の添加により摩擦抵抗が低減するため、シャッタ10の移動による削り屑の発生を少なくすることができる。また、輸送時の衝撃で記録ディスク4とカートリッジ2の内壁とが接触した場合の削り屑の発生も低減することができる。更に、機器への挿入性等の取り扱い性が向上する。また、流動性が向上するため、成形時の混練性、射出成形性等の加工性等も向上する。
【0027】
なお、シリコーン系滑剤の添加量としては、0.1〜3.0重量%が好ましい。0.1重量%以下では効果が少なく、3.0重量%以上では、流動性がよくなりすぎて混練、成形時にスクリューと樹脂とに滑りが生じて加工性が悪化し、製品表面にブリードアウトして記録ディスク4や使用者の手などに付着し、取り扱い性、外観性で不具合を生じることがあるためである。なお、共重合シリコーンを使用する場合には、上記不具合は生じにくくなるため、5.0重量%まで添加することが可能である。
【0028】
下側シェル30の内面には、記録ディスク4が収容される略円形のディスク収容部3と、このディスク収容部3の周囲を取り囲むように突条状に設けられた第1の凹部34と、端縁全周に設けられた第2の凹部35と、位置決め穴15の周囲を取り囲む遮光壁36と、シャッタ10のバネを収納するスペースとなる切欠部37とが設けられている。切欠部37内には、シャッタ10のバネの一端が掛けられるバネ掛け片38が一体に設けられている。
【0029】
また、上側シェル31の内面には、下側シェル30のディスク収容部3の上面を構成する上面部41と、下側シェル30の第1の凹部34内に挿入される第1の凸部42と、第2の凹部35内に挿入される第2の凸部43と、位置決め穴15の周囲を取り囲むように設けられ、遮光壁36内に挿入される遮光壁44とが設けられている。
【0030】
ディスク収容部3に記録ディスク4を乗せ、上側シェル31を下側シェル30の上面に重ね合わせると、第1の凸部42が第1の凹部34内に嵌合される。図4のD矢視部の拡大図である図8に示すように、第1の凹部34内に嵌合された第1の凸部42の先端42aが下側シェル30の内面30aに対面し、ラビリンス状の遮光構造が形成される。また、第2の凸部43は第2の凹部35内に嵌合し、その先端43aが下側シェル30の内面30aに当接することにより、嵌合構造が形成される。
【0031】
ディスク収容部3の外周は、ラビリンス状の遮光構造によって取り囲まれるため、下側シェル30及び上側シェル31の合せ目から光や塵芥がディスク収容部3内に進入することはない。また、図9の断面図に示すように、位置決め穴15の外周も、二つの遮光壁36,44の嵌合によりラビリンス状の遮光構造が形成されるため、位置決め穴15から光や塵芥が進入することはない。更に、位置決め穴15は、第1の凹部34及び第1の凸部42からなる遮光構造の外側に配置されているため、ディスク収容部3の遮光性及び防塵性に影響はない。
【0032】
上側シェル31の第2の凸部43は、超音波溶着によって下側シェル30の内面30aに固着される。これにより、下側シェル30と上側シェル31とが強固に接合されるため、両者の合せ目に隙間が開くようなことはない。また、超音波溶着を行なうと、プラスチック粉が周囲に飛散する場合があるが、第2の凹部35内で行なうことにより飛散を最小限にし、記録ディスク4の汚損を防止することができる。
【0033】
カートリッジ本体25にシャッタ10やロック機構11等を組み込んだ後で、下側シェル30と上側シェル31とを超音波溶着すると、シャッタ10等の他の部品も一緒に溶着されることがある。これを防止するために、シャッタ10等の他の部品の材質には、下側シェル30及び上側シェル31とは異なる種類のプラスチックを用いるとよい。
【0034】
下側シェル30と上側シェル31との超音波溶着による接合をより確実に行なうには、図10に示すように、第2の凸部43の先端43aに突起状のエネルギーダイレクタ47を設けるとよい。エネルギーダイレクタ47を設けて超音波溶着を行なうと、超音波のエネルギーがエネルギーダイレクタ47に集中するため、第2の凸部43と下側シェル30とをより強固に溶着することができる。なお、下側シェル30と上側シェル31との間の超音波溶着は、第2の凸部43の全周で行なってもよいし、一定間隔でスポット的に行なってもよい。
【0035】
シャッタ10は、下側シェル30及び上側シェル31とは種類の異なるプラスチックにより形成されている。このプラスチックには、下側シェル30及び上側シェル31の成形に用いたプラスチックと同様に、遮光性物質と滑剤とを添加してもよい。図11に示すように、シャッタ10は、カートリッジ本体25の装填方向A側の端面に配置されるベース部50と、カートリッジ本体25の上下面を挟み込むようにベース部50に一体に形成される下側シャッタ板51及び上側シャッタ板52とからなる。ベース部50の内面には、シャッタバネ54の一端が掛けられるバネ掛け片56が一体に設けられている。シャッタバネ54の他端は、下側シェル30のバネ掛け片38に掛けられて切欠部37に収納され、シャッタ10を閉じ位置に向けて付勢する。
【0036】
下側シェル30及び上側シェル31の各外面には、各シャッタ板51,52の閉じ方向Cの側端縁51a,52aを収納するスリット60,61と、装填方向Aの後端縁51b,52bを収納するスリット62,63(図1及び図2参照)とがそれぞれ形成されている。また、各シャッタ板51,52の開き方向Bの側端縁には略コ字形状の屈曲部51c,52cが形成されている。下側シェル30及び上側シェル31の外面には、シャッタ10が閉じ位置にあるときに該屈曲部51c,52c内に挿入される突条65,66がそれぞれ形成されている。
【0037】
シャッタ10が閉じ位置にあるとき、各シャッタ板51,52の端縁51a,51b及び52a,52bが各シェル30,31のスリット60,62及び61,63に挿入され、各シェル30,31に設けられた突条65,66が各シャッタ板51,52の屈曲部51c,52c内に入り込む。これにより、カートリッジ本体25とシャッタ10との間もラビリンス状の遮光構造によって取り囲まれるため、カートリッジ本体25とシャッタ10との隙間から光や塵芥が進入するのを効果的に防止することができる。
【0038】
シャッタ10の各シャッタ板51,52の内面には、ガイド突起51d,52dが形成されており、各シェル30,31の外面には、ガイド突起51d,52dが挿入されるガイド溝70,71(図4参照)が形成されている。シャッタ10がカートリッジ本体25の外面上で移動する際に、これらガイド突起51d,52dがガイド溝70,71内で移動する。これにより、シャッタ10はカートリッジ本体25から外れることなく、スムースに移動することができるようになる。なお、下側シェル30及び上側シェル31とシャッタ10は、原材料のプラスチックに滑剤が添加されているため、シャッタ10の移動時の摩擦によって削り屑等が発生することはない。
【0039】
図6及び図12に示すように、上側シェル31に組み込まれたロック機構11は、上側シェル31の外面に形成されてスリット61につなげられたロック機構用凹部75と、この凹部75内に組み込まれるロックレバー76及びロックバネ77と、ロック機構用凹部75を塞ぐ板状のロックカバー78とからなる。このロック機構11は、シャッタ10の上側シャッタ板52に一体に形成された被係合爪52eにロックレバー76を係合させることにより、シャッタ10を閉じ位置でロックする。
【0040】
ロックレバー76には、被係合爪52eに係合する係合爪76aと、ロック機構用凹部75内に形成された穴75aに回転自在に挿入される軸部76bと、前述の三叉形状の解除用係合部20とが一体に設けられている。ロックバネ77は捩じりバネからなり、軸部76bに挿入されて一端がロックレバー76に掛けられ、他端がロック機構用凹部75の内壁面に当接されることによりロックレバー76を図中時計方向に向けて付勢する。解除用係合部20は、ロックカバー78に形成された穴78aにより外部に突出しないように露呈される。ロック機構用凹部75内の符号75bは、ロックバネ77によって付勢されたロックレバー76を受け止めて、被係合爪52eに係合する係合位置に保持する保持片である。
【0041】
下側シェル30に組み込まれたロック機構12は、下側シェル30の外面に形成されてスリット60につなげられたロック機構用凹部80と、この凹部80内に組み込まれるロックレバー81及びロックバネ82と、ロック機構用凹部80を塞ぐ板状のロックカバー83とからなる。このロック機構12は、シャッタ10の下側シャッタ板51に一体に形成された被係合爪51eにロックレバー81を係合させることにより、シャッタ10を閉じ位置でロックする。なお、ロックレバー12の各部品は、ロックレバー11と同様の構成からなるため、詳しい説明は省略する。
【0042】
図13(A)は、ロック機構11のロック状態を示す平面図である。なお、ロックレバー76の動作を表すために、ロックカバー78を取り外した状態で図示している。図1及び図5(A)に示すように、シャッタ10が閉じ位置にあるときには、ロックバネ77の付勢によって係合爪76aが被係合爪52eに係合している。これにより、シャッタ10の開き方向への移動が規制されるため、シャッタ10が不用意に開放されて記録ディスク4が曝光されることはない。
【0043】
また、図13(B)は、ロック機構11のロック解除状態を示している。図3に示すように、解除用係合部20が解除治具18によって反時計方向の解除方向に回転されると、ロックレバー76もロックバネ77の付勢に抗して反時計方向に回転される。これにより、係合爪76aと被係合爪52eとの係合が解除され、シャッタ10が移動可能となる。なお、シャッタ10は、シャッタバネ54によって閉じ位置に付勢されているため、ロック解除によりシャッタ10が開くことはない。図3及び図5(B)に示すように、シャッタ10が開き位置に移動されると開口7,8が開放され、記録ディスク4のホログラム記録層がカートリッジ2から露呈される。
【0044】
なお、詳しくは図示しないが、ロック機構12は、上記ロック機構11と同様に、かつロック機構11とは独立してロック及びロック解除が行なわれる。そのため、シャッタ10の閉じ位置でのロックを解除するには、上下両面のロック機構11,12を同時に解除しなければならない。これにより、カートリッジ2が単体で外部にあるときに誤ってシャッタ10が開放される危険性は非常に小さくなる。
【0045】
図5のE矢視部の拡大図である図14に示すように、上側シェル31の内面及びシャッタ10に対面する外面には、粗面85,86が形成されている。この粗面85,86は、カートリッジ2内やカートリッジ本体25とシャッタ10との間に進入した光を減衰させ、記録ディスク4のホログラム記録層への悪影響を最小限にするために設けられている。なお、詳しくは図示しないが、粗面85,86は下側シェル30にも設けられている。また、シャッタ10に対面する粗面86は、下側シェル30及び上側シェル31のスリット60,61,62,63内にも設けられている。更に、図15に示すように、下側シェル30の第1の凹部34の内面と、上側シェル31の第1の凸部42の外面とにも粗面88,89を設けてもよいし、シャッタ10の各シャッタ板51,52の内面に粗面を設けてもよい。
【0046】
次に、本発明を用いたホログラム記録媒体用カートリッジの第2の実施形態について説明する。図16及び図17は、第2の実施形態のホログラム記録媒体用カートリッジの外観形状を示す斜視図であり、図18及び図19は、ホログラム記録媒体用カートリッジ102の装填方向F、及びこの装填方向Fに直交する方向の要部断面図である。
【0047】
カートリッジ102は、内部に設けられたディスク収容部103に記録ディスク104を回転自在に収容している。記録ディスク104は、カートリッジ102に収容された状態で取り扱われる。
【0048】
記録ディスク104は、中心部に穴をあけてディスク状にしたものであり、両面にホログラム記録層が設けられている。このホログラム記録層には、データがレーザ光の干渉縞として多層記録される。この記録ディスク104へのデータ記録には、例えば、緑色532nm〜青色405nmの波長域のレーザ光が使用される。なお、記録ディスク104の穴部に補強材を付加してもよい。
【0049】
カートリッジ102の上面及び下面には、ディスク収容部103に収容した記録ディスク104のホログラム記録層を外部に露呈させる開口107,108が形成されている。これらの開口107,108は、カートリッジ102内に移動自在に組み込まれたシャッタ110の上側シャッタ板110a,下側シャッタ板110bによって閉じられており、シャッタ110が矢印GまたはH方向の開き位置に向けて移動されることにより開放される。シャッタ110は、内蔵する中立機構によって中央の閉じ位置に保持され、かつロック機構によって閉じ位置でロックされている。そのため、カートリッジ102に対する振動や衝撃等によってシャッタ110が移動し、開口107,108が不用意に開放されることはない。
【0050】
カートリッジ102は、記録ディスク104にデータを記録する記録装置や、記録ディスク104からデータを読み出す再生装置に設けられたカートリッジスロットに対し、装填方向Fから挿入される。記録装置または再生装置に装填されたカートリッジ102は、両面に設けられた位置決め穴115によって位置決めされ、シャッタ110が開き位置に移動されて開口107,108が開放される。例えば、図16に示す状態でカートリッジ102が装置に装填された場合には、下面の開口108から装置のピックアップ部がカートリッジ102内に挿入され、記録ディスク104の下面のホログラム記録層に対しデータが記録または再生される。また、カートリッジ102を裏返して装置に装填した場合には、下面に配置される開口7からピックアップ部が挿入され、図17における記録ディスク104の上面のホログラム記録層にデータが記録または再生される。
【0051】
記録装置及び再生装置内には、カートリッジ102のロック機構を解除するロック解除機構と、シャッタ110を閉じ位置と開き位置との間で移動させるシャッタ開閉機構とが組み込まれている。図17に示すように、ロック解除機構は、装置内で解除治具118を軸方向に移動させ、カートリッジ102の装填方向Fの先端面に設けられたロック機構の解除用係合部120に該治具118を係合させる。解除用係合部120は、例えば三叉形状となっており、解除治具118はこの解除用係合部120に対して容易に係合可能なように、3本の係合ピン121が立設された形態となっている。
【0052】
解除治具118が解除用係合部120に係合して反時計方向に回転されると、ロック機構が解除される。次いで、シャッタ開閉機構が装填方向Fの先端面に形成されたスリット123に駆動用のピンを挿入し、かつシャッタ110の係合穴111aに係合させ、開き方向GまたはHに移動させる。これにより、シャッタ110がスライド移動され、図19(B)に示すように、カートリッジ102の両面の開口107,108が開放される。
【0053】
図20は、カートリッジ102の構成を示す分解斜視図である。カートリッジ102は、記録ディスク104を回転自在に収容するカートリッジ本体125と、このカートリッジ本体125の両面の開口107,108を外側から開閉するシャッタ110と、カートリッジ本体125に組み込まれる中立機構126及びロック機構127と、カートリッジ本体125の装填方向F先端に嵌合され、カートリッジ本体125を塞ぐ先端嵌合部128とからなる。
【0054】
図21に示すように、カートリッジ本体125は、略板状の下側シェル130と、この下側シェル130の上面に接合される上側シェル131とから構成されている。下側シェル130と上側シェル131は、遮光性能を向上させ、かつ物理的強度を向上させる遮光性物質と、シャッタ110の滑りを向上させる滑剤とが添加された同一または類似の熱可塑性プラスチックによって形成されている。なお、遮光性物質及び滑剤としては、上記第1実施形態と同様のものが用いられるため、詳しい説明は省略する。また、本実施形態では、第1シェルとして下側シェル130を、第2シェルとして上側シェル131をそれぞれ対応させているが、逆にしてもよい。
【0055】
下側シェル130の内面には、記録ディスク104が収容される略円形のディスク収容部103と、このディスク収容部103の周囲を取り囲むように突条状に設けられた第1の凹部134と、端縁全周に設けられた第2の凹部135と、位置決め穴115の周囲を取り囲む遮光壁136と、シャッタ110の下側シャッタ板110bを収納するシャッタ収納部137とが設けられている。シャッタ収納部137は、下側シェル130の外面とディスク収容部103との間に設けられており、装填方向Fの先端側に下側シャッタ板110bの挿入口となる開口部137aが設けられている。
【0056】
また、上側シェル131の内面には、下側シェル130のディスク収容部103の上面を構成する上面部141と、下側シェル130の第1の凹部134内に挿入される第1の凸部142と、第2の凹部135内に挿入される第2の凸部143と、位置決め穴115の周囲を取り囲むように設けられ、遮光壁136内に挿入される遮光壁144と、シャッタ110の上側シャッタ板110aを収納するシャッタ収納部145とが設けられている。シャッタ収納部145は、下側シェル130のシャッタ収納部137と同様に、上側シェル131の外面と上面部141との間に設けられており、装填方向Fの先端側に下側シャッタ板110bの挿入口となる開口部145aが設けられている。
【0057】
下側シェル130と上側シェル131との装填方向Fの先端縁には、中立機構126を収納する溝状のスペースを形成する切欠部148,149がそれぞれ設けられている。切欠部148,149内には、中立機構126の一部を構成する4片のストッパ150が一体に設けられている。
【0058】
カートリッジ102の装填方向先端側の要部断面図である図22に示すように、本第2実施形態においても、ディスク収容部103の外周がラビリンス状の遮光構造によって取り囲まれるため、下側シェル130及び上側シェル131の合せ目から光や塵芥がディスク収容部103内に進入することはない。また、第2の凸部143を下側シェル130の内面130aに超音波溶着すれば、第1の実施形態と同様に、下側シェル130と上側シェル131とが強固に接合され、両者の合せ目に隙間が開くようなことはない。
【0059】
カートリッジ本体125にシャッタ110やロック機構127等を組み込んだ後で、下側シェル130と上側シェル131とを超音波溶着すると、シャッタ110等の他の部品も一緒に溶着されることがある。これを防止するために、シャッタ110等の他の部品の材質には、下側シェル130及び上側シェル131とは異なる種類のプラスチックを用いるとよい。
【0060】
下側シェル130と上側シェル131との超音波溶着による接合をより確実に行なうには、上記第1の実施形態と同様に、第2の凸部143の先端143aに突起状のエネルギーダイレクタを設けるとよい。なお、下側シェル130と上側シェル131との間の超音波溶着は、第2の凸部143の全周で行なってもよいし、一定間隔でスポット的に行なってもよい。
【0061】
シャッタ110は、下側シェル130及び上側シェル131とは種類の異なるプラスチックで形成されている。また、上記第1実施形態と同様に、遮光性物質と剤とを添加してもよい。シャッタ110は、カートリッジ本体125の装填方向F側の端面に配置されるベース部157と、上側シェル131及び下側シェル130のシャッタ収納部145及び137にそれぞれ挿入される上側シャッタ板110a及び下側シャッタ板110bとからなる。
【0062】
ベース部157の外面には、シャッタ110の開放時に使用される係合穴111a,111bと、ロック機構127によって係止される係止ピン160,161とが対称に設けられている。また、図23(A)に示すように、ベース部157の内面には、中立機構126に連係される一対の規制片162,163が両側端縁近傍に対称に設けられている。
【0063】
シャッタ110は、シャッタ収納部145及び137内で上側シャッタ板110a及び下側シャッタ板110bを移動させ、開口107及び108を開閉する。上側シャッタ板110a及び下側シャッタ板110bは、開口107、108よりも十分に大きな面積を有し、シャッタ収納部145,137との間でラビリンス状の遮光構造を形成するため、光や塵芥が開口107,108から進入するのを効果的に防止することができる。なお、下側シェル130及び上側シェル131とシャッタ110は、原材料のプラスチックに滑剤が添加されているため、シャッタ110の移動時の摩擦によって削り屑等が発生することはない。
【0064】
中立機構126は、一対のスライド部材170,171と、これらのスライド部材170,171の間を連結するバネ172とからなる。図23(A)に示すように、一対のスライド部材170,171は、下側シェル130と上側シェル131とに設けられた切欠部148,149からなる溝175内のストッパ150の外側にスライド自在に挿入され、バネ172の付勢によって各ストッパ150に当接する。シャッタ110の規制片162,163は、各スライド部材170,171とストッパ150との間に挿入される。シャッタ110は、規制片162,163がバネ172の付勢によって停止されたスライド部材170,171に当接することにより、中央の閉じ位置に位置決めされる。
【0065】
例えば、図23(B)に示すように、シャッタ110が図中右方にスライドされると、右側の規制片162がスライド部材170をバネ172の付勢に抗して押圧し、溝175内でスライドさせる。他方のスライド部材171はストッパ150に当接しているため移動しない。この状態からシャッタ110のスライド動作を終了すると、バネ172の付勢によってスライド部材170が規制片162を押圧し、シャッタ110を中央の閉じ位置に移動させる。
【0066】
ロック機構127は、先端嵌合部128の内部に回転自在に組み込まれるロックレバー180と、ロックバネ181とからなる。ロックレバー180は、両端に設けられた係合爪182a,182bと、先端嵌合部128内に設けられた軸受部に回転自在に挿入される軸部183と、前述の解除用係合部120とからなる。この解除用係合部120は、先端嵌合部128に設けられた穴128aから外部に露呈される。
【0067】
ロックバネ181は、捩じりバネからなり、軸部183に挿入されて一端がロックレバー180に掛けられ、他端が先端嵌合部128内に当接することにより、ロックレバー180を図中時計方向に付勢する。
【0068】
図24(A)は、ロック機構127のロック状態を示す概略図である。図16及び図19(A)に示すように、シャッタ110が閉じ位置にあるときには、ロックバネ181の付勢によって係合爪182a,182bがシャッタ110の係止ピン160,161にそれぞれ係合している。これにより、シャッタ110の開き方向への移動が規制されるため、シャッタ110が不用意に開放されて記録ディスク104が曝光されることはない。
【0069】
また、図24(B)は、ロック機構127のロック解除状態を示している。図17に示すように、解除用係合部120が解除治具118によって反時計方向の解除方向に回転されると、ロックレバー180もロックバネ181の付勢に抗して反時計方向に回転される。これにより、係合爪182a,182bと係止ピン160,161との係合が解除され、シャッタ110が移動可能となる。なお、シャッタ110は、中立機構126によって閉じ位置に付勢されているため、ロック解除によりシャッタ110が開くことはない。図17及び図19(B)に示すように、シャッタ110が開き位置に移動されると開口107,108が開放され、記録ディスク104のホログラム記録層がカートリッジ102から露呈される。
【0070】
ロック機構127は、解除用係合部120がカートリッジ102の表裏面を反転させる際の中心軸上にあり、かつシャッタ110が中央の閉じ位置から左右どちらの方向へ移動させても開口107,108を開放させられるように構成されているため、カートリッジ102のどちらの面を上に向けて装置に装填しても共通のロック解除機構及びシャッタ開閉機構を使用することができる。これにより、カートリッジ102を使用する装置を簡素化し、ローコスト化を図ることができる。
【0071】
この第2の実施形態のカートリッジ2においても、ディスク収容部103の内面に粗面を形成するとよい。また、シャッタ収納部137,145内や、第1の凹部134の内面と、第1の凸部142の外面とにも粗面を設けてもよいし、シャッタ110の各シャッタ板110a,110bに粗面を設けてもよい。また、下側シェル130及び上側シェル131を1部品で構成したが、複数の部品を組みあわせて形成してもよい。例えば、シャッタ収納部を境にして2部品で構成すれば、金型の簡易化を図ることができる。
【実施例】
【0072】
次に、本発明の実施例について説明する。
上側シェル及び下側シェルの成形に用いる熱可塑性プラスチックには、PBT、ABS、POM、PS、PP、HDPE、PA、PET、PPS、SAN(スチレン−アクリロニトリル共重合)、PMMA、PC等を用いることができる。また、超音波溶着による誤溶着防止のために、上側シェル及び下側シェル以外の部品については、上記熱可塑性プラスチックの中から、上側シェル及び下側シェルに使用したものと異なるものを選択するとよい。
【0073】
上側シェル及び下側シェルには、厚み0.2mmにおいて可視光線透過率が1.0%以下の遮光性を有するプラスチックを使用し、必要な物理的強度を得るために、その肉厚を0.2〜1.6mmの範囲で形成するのが好ましい。上記遮光特性を有するプラスチックを得るには、遮光性物質を添加するとよい。遮光性物質としては、種々のものを用いることができ、使用する遮光性物質に応じて0.01〜5.00重量%を添加するのが好ましい。遮光性物質としては、以下のようなものが挙げられる。
【0074】
(1)無機化合物
A.酸化物・・・シリ力、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄(鉄黒)、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、酸化ベリリウム、軽石、軽石バルーン、アルミナ繊維等
B.水酸化物・・・水酸化アルミ二ウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム等
C.炭酸塩・・・炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、ドーソナイト等
D.(亜)硫酸塩・・・硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム等
E.ケイ酸塩・・・夕ルク、クレー、マイ力、アスベスト、ガラス繊維、ガラスバルーン、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト等
F.炭素・・・カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素中空球等
G.その他・・・鉄粉、銅粉、鉛粉、アルミニウム粉、硫化モリブデン、ポロン繊維、炭化ケイ素繊維、黄銅繊維、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、アルミ二ウムペースト、夕
ルク等
(2)有機化合物
木粉(松、樫、ノコギリクズなど)、穀繊維(アーモンド、ピーナッツ、モミ穀など)、木綿、ジュート、紙細片、非木材繊維(ワラ、ケナフ、竹、エスパルト、パガス、モロヘイヤ、煙火など)セロハン片、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、・デンプン(変性デンプン、表面処理デンプンも含む)、芳香族ポリアミド繊維等
【0075】
これらの遮光性物質の中で、写真性に悪影響を及ぼすことが少なく、150℃以上でも熱に安定で不透明化する無機化合物が好ましく、特に、耐熱性、耐光性が優れ比較的不活性な物質である、光吸収性のカーボンブラックと窒化チタンとグラファイト及び鉄黒が好ましい。
【0076】
遮光性物質としてカーボンブラックを使用する場合には、その添加量を0.01〜2.00重量%とするのが好ましい。上述したように、遮光性及び物理強度のバランスがよいプラスチックを得るためである。
【0077】
カーボンブラックの原料による分類例をあげるとガスブラック、ファーネスプラック、チャンネルブラック、アントラセンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンカーボンプラック、サーマルブラック、ランプブラック、油煙、松煙、アニマルプラック、ベジタブルブラツク等がある。
【0078】
好ましいカーボンブラックの市販品の代表例としては、例えば三菱化成製のカーボンブラック#20(B),#30(B),#33(B),#40(B),#41(B),#44〔B),#45(B),#50,#55,#100,#600,#950,#1000,#2200〔B),#2400(B),MA8,MA11,MA100等が挙げられる。また、電気化学製のデンカブラック、東海カーボンのシースト、旭カーボンの旭#78、昭和キャボットのショウワブラック、新日鉄化学のニテロン、三菱化学のダイヤブラック等の各種グレードのものも用いることができる。
【0079】
海外の製品としては、例えばキャボット社のBlack Pearls 2,46,70,71,74,80,81,607等、Regal300,330,400,660,991,SRF−S等、Vulcan 3,6等、Sterling10,SO,V,S,FT−FF,MT−FF等が挙げられる。
【0080】
さらにアシュランドケミカル社のUnited R,BB,15,102,3001,3004,3006,3007,3008,3009,3011,3012,XC−3016,XC−3017,3020等が挙げることができるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0081】
また、上側シェル及び下側シェルと、シャッタとに添加する滑剤としては、シリコーン系滑剤、特に各種グレードのジメチルポリロキサンを使用することができ、東レ、ダウコーニング、シリコーン、GE東芝シリコーン、旭化成ワッカーシリコーン、信越化学等から市販されている各種グレードのものを使用することができる。なお、マスターバッチ、練り込み品のどちらでも使用可能である。なお、シリコーン系滑剤の添加量としては、0.1〜5.0重量%が好ましい。上述したように、摩擦抵抗と、製品品質、製造適正のバランスのよいプラスチックを得るためである。
【0082】
また、シェルに設ける粗面としては、表面粗さRa:5μm以下だと光拡散効果が薄く、20μm以上だと記録ディスクとの接触時に傷を発生させるおそれがある。そのため、表面粗さRa:5〜20μmのマット加工、またはシボ加工が好ましい。
【0083】
上記第1実施形態のカートリッジ2と、第2実施形態のカートリッジ102とを実際に制作し、特許文献2記載の従来のカートリッジ(比較例)とともに、遮光性及び防塵性に関する実験を行なった。遮光性実験及び防塵性実験の方法と評価基準、上下シェル及びシャッタ等の部品の材質は、次のとおりである。また、各カートリッジの材質、及び実験結果を以下の表1に記載する。
[遮光性実験]
10万Luxの検査光をカートリッジの各面に3分間ずつ照射し、フォトポリマーの記録性を検査
[遮光性実験の評価基準]
◎:フォトポリマーの記録性に問題なし
×:フォトポリマーの記録性に問題あり
[防塵性実験]
記録ディスクをカートリッジ内で100万回転(速度5000rpm)させた後、長さ0.1mm以上のゴミの付着数を検査
[防塵性実験の評価基準]
◎:0〜5個、○:6〜10個、△:11〜20個、×:21個以上
[材質]
ABS:デンカ汎用グレード GR−0500
POM:三菱エンジニアリングプラスチックス ユピタール 強化・充填グレードFG2025
【0084】
【表1】

【0085】
上記表1に記載した実験結果からも明らかなように、比較例のカートリッジは、遮光性実験及び防塵性実験ともに結果が悪く、収容した記録ディスクの遮光性及び防塵性を保てないことがわかる。
これに対し、本発明の第1及び第2実施形態のカートリッジは、遮光性実験及び防塵性実験ともに良好な結果が得られ、収容した記録ディスクを適切に保護することができる。
【0086】
なお、上記各実施形態では、シャッタ10,110をプラスチックで形成したが、アルミニウム合金やステンレス鋼等の金属で形成してもよい。また、凹部と凸部とを嵌合させることによって遮光構造を形成したが、位置決め穴の遮光構造のように、二つの遮光壁を近接させて嵌合させることで遮光構造を得てもよい。
【0087】
また、上側シェルと下側シェルとの固着に超音波溶着を用いたが、その他の溶着方法及び固着方法を用いてもよい。例えば、ネジなどで固着する場合には、ネジ穴の周囲にも遮光構造を形成するのが好ましい。
【0088】
更に、両面に記録が可能な記録ディスクを収容するカートリッジを例に説明したが、一方の面に記録される記録ディスクに対応させてもよい。この場合には、開口を一方の面にのみ形成し、シャッタでこの開口を開閉する。また、ホログラム記録媒体を収容するカートリッジを例に説明したが、その他の感光性を有する記録媒体を収容するカートリッジにも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】第1実施形態のカートリッジの外観形状を示す斜視図である。
【図2】カートリッジを裏面側の外観形状を示す斜視図である。
【図3】カートリッジのシャッタ開放状態を示す外観斜視図である。
【図4】カートリッジの装填方向の断面図である。
【図5】カートリッジの装填方向に直交する方向の断面図である。
【図6】カートリッジの構成を示す分解斜視図である。
【図7】カートリッジ本体の構成を示す分解斜視図である。
【図8】凸部及び凹部からなる遮光構造を示す断面図である。
【図9】位置決め穴の遮光構造を示す断面図である。
【図10】エネルギーダイレクタを設けた遮光構造の断面図である。
【図11】シャッタの構成を示す分解斜視図である。
【図12】ロック機構の構成を示す要部断面図である。
【図13】ロック機構の動作説明図である。
【図14】上側シェルに設けた粗面を示す断面図である。
【図15】凸部及び凹部内に設けた粗面を示す断面図である。
【図16】第2実施形態のカートリッジの外観形状を示す斜視図である。
【図17】カートリッジのシャッタ開放状態を示す外観斜視図である。
【図18】カートリッジの装填方向の断面図である。
【図19】カートリッジの装填方向に直交する方向の断面図である。
【図20】カートリッジの構成を示す分解斜視図である。
【図21】カートリッジ本体の構成を示す分解斜視図である。
【図22】カートリッジの装填方向先端側の構成を示す要部断面図である。
【図23】中立機構の動作説明図である。
【図24】ロック機構の動作説明図である。
【符号の説明】
【0090】
2,102 カートリッジ
3,103 ディスク収容部
4,104 記録ディスク
7,8,107,108 開口
10,110 シャッタ
11,12,127 ロック機構
30,130 下側シェル
31,131 下側シェル
34,134 第1凹部
35,135 第2凹部
42,142 第1凸部
43,142 第2凸部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
略板状に形成された第1シェルと、この第1シェルに重ね合わされるように接合される第2シェルと、これら第1シェルと第2シェルとのいずれか一方または両方に設けられた開口を開閉するシャッタとからなり、ディスク状の感光性記録媒体を挟み込むようにして回転自在に収容するカートリッジにおいて、
前記第1シェルは、その内面に感光性記録媒体の外周を取り囲む第1の遮光壁が設けられ、前記第2シェルは、その内面に第1の遮光壁の内側または外側に近接して配置される第2の遮光壁が設けられていることを特徴とする感光性記録媒体用カートリッジ。
【請求項2】
略板状に形成された第1シェルと、この第1シェルに重ね合わされるように接合される第2シェルと、これら第1シェルと第2シェルとのいずれか一方または両方に設けられた開口を開閉するシャッタとからなり、ディスク状の感光性記録媒体を挟み込むようにして回転自在に収容するカートリッジにおいて、
前記第1シェルは、その内面に感光性記録媒体の外周を取り囲む第1の凹部が設けられ、前記第2シェルは、その内面に前記第1の凹部内に挿入される第1の凸部が設けられていることを特徴とする感光性記録媒体用カートリッジ。
【請求項3】
前記第1シェルは、その内面外周に第2の凹部が設けられ、前記第2シェルは、その内面外周に前記第2の凹部内に挿入され、かつ先端が第1シェルの内面に当接される第2の凸部が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の感光性記録媒体用カートリッジ。
【請求項4】
前記第1シェルと第2シェルは熱可塑性プラスチックで形成され、かつ第2の凸部の先端が第1シェルの内面に溶着されることを特徴とする請求項3記載の感光性記録媒体用カートリッジ。
【請求項5】
前記第1の遮光壁からなる遮光構造、または第1の凹部と第1の凸部とからなる遮光構造の外側に、カートリッジの位置決め部、または前記シャッタのロック機構等が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の感光性記録媒体用カートリッジ。
【請求項6】
前記第1シェル及び第2シェルの内面と、前記シャッタに対する外面とに対し、表面粗さRa:5〜20μmのマット加工、またはシボ加工が施されていることを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の感光性記録媒体用カートリッジ。
【請求項7】
前記第1シェル及び第2シェルは、同一または類似の熱可塑性プラスチックで形成され、かつシャッタを含むその他の部品は、該第1シェル及び第2シェルと異なる材質で形成されていることを特徴とする請求項1ないし6いずれか記載の感光性記録媒体用カートリッジ。
【請求項8】
前記第1シェル及び第2シェルと、シャッタは、その成形に用いられるプラスチックに遮光性物質が0.01〜5.00重量%添加されていることを特徴とする請求項1ないし7いずれか記載の感光性記録媒体用カートリッジ。
【請求項9】
前記第1シェル及び第2シェルと、シャッタは、その成形に用いられるプラスチックにカーボンブラックが0.01〜2.00重量%添加されていることを特徴とする請求項1ないし7いずれか記載の感光性記録媒体用カートリッジ。
【請求項10】
前記第1シェル及び第2シェルと、シャッタは、その成形に用いられるプラスチックにシリコーン系滑剤が0.1〜5.0重量%添加されていることを特徴とする請求項1ないし9いずれか記載の感光性記録媒体用カートリッジ。
【請求項11】
前記感光性記録媒体は、ホログラム記録媒体であることを特徴とする請求項1ないし10いずれか記載の感光性記録媒体用カートリッジ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2006−176191(P2006−176191A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373872(P2004−373872)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】