説明

感圧式接着剤組成物及び該感圧式接着剤組成物を積層してなる積層体

【課題】本発明は、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性、再剥離性等を有する接着剤層を形成し得るポリウレタンを含む感圧式接着剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸系成分を50〜70モル%含むCOOH系成分と、一般式(1)に示される水酸基間の炭素数が4以上の直鎖脂肪族ジオールを25〜55モル%、一般式(2)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール及び/又は一般式(3)に示される側鎖にアルキル基を有するジオールを合計で20〜50モル%、及び側鎖にアルキル基を有する他のジオール、を含むOH成分とを水酸基過剰の条件下で反応させてなる末端水酸基のポリエステルプレポリマーと、
3個以上のイソシアネート基を有する化合物と、を反応させてなるポリウレタンを含む感圧式接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種被着体との接着性、耐熱性、耐湿熱性及び透明性に優れたポリウレタンを含む感圧式接着剤組成物に関し、更に詳しくは、特に光学部材の積層に好適な前記ポリウレタンを含む感圧式接着剤組成物及びそれを用いてなる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエレクトロニクスの飛躍的な進歩により、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、リアプロジェクションディスプレイ(RPJ)、ELディスプレイ、発光ダイオ−ドディスプレイなどの様々なフラットパネルディスプレイ(FPD)が、様々な分野で表示装置として使用されようになってきた。例えば、これらFPDは、パーソナルコンピューターのディスプレイや液晶テレビをはじめ屋内で使用されるばかりでなく、カーナビゲーション用ディスプレイ等のように車両に搭載して使用されたりする。
【0003】
LCDを構成する液晶セル用部材には、偏光フィルムや位相差フィルムが積層されている。又、これらの表示装置には、外部光源からの反射を防ぐための反射防止フィルムや、表示装置の表面の傷付き防止のための保護フィルム(プロテクトフィルム)などが使用されている。更にFPDを表示装置として利用するだけではなく、それらの表面にタッチパネルの機能を設けて、入力装置としても利用されることがある。このタッチパネルにも、保護フィルム、反射防止フィルムやITO蒸着樹脂フィルムなどが使用されている。
【0004】
前記表示装置に使用される種々のフィルムは、感圧式接着剤により被着体に貼着され、使用されている。表示装置に用いられるものであるから、感圧式接着剤は、まず透明性に優れることが要求されるので、アクリル系樹脂を主剤とする感圧式接着剤が一般に使用されている。
【0005】
ところで、前記した種々のフィルムのうち偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系偏光子の両面をトリアセチルセルロース系やシクロオレフィン系の保護フィルムで挟んだ3層構造を呈する。各層を構成する材料の特性故に、そもそも熱や湿度によって、偏光フィルムは伸縮による顕著な寸法変化を生ずる。
【0006】
又、近年では、光学部材の接着処理おいて、光を有効利用するという観点から、光学部材と被着体との間における屈折率差に基づく界面反射の抑制が求められ、光学部材の屈折率と被着体の屈折率との中間の屈折率を有する感圧式接着剤層の使用が有利であることが知られている。ちなみに界面での屈折率差が大きいと全反射を生じる入射角が小さくなり、光の有効利用度を低下させる。
【0007】
しかしながら従来のアクリル系樹脂を用いた接着剤層の屈折率は、1.46前後であるのに対して、光学部材を形成する材料の屈折率は、例えばガラスで1.52前後、メタクリル系樹脂で1.51前後、ポリカーボネート系樹脂で1.54前後、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂で1.60前後であるため、両者の屈折率の差が大きく、又、例えばガラスからなる光学部材とメタクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂、あるいはPET樹脂からなる光学部材とを接着する際に、前記した中間の屈折率を得ることもできない。
【0008】
従って、偏光フィルムを液晶セル用のガラス部材に貼着するためのアクリル系感圧式接着剤は、偏光フィルム自体の寸法変化を抑えることや、接着剤層の屈折率をより高めることが求められる。このために、接着剤層自体を硬くしたり、接着強さを大きくしたりすることによって、比較的小さい寸法の変化、あるいは比較的短期間の寸法の変化を抑制することはできる。又、芳香環含有の単量体を使用したり、芳香族化合物や硫黄原子を含む化合物、あるいは無機化合物を使用したりすることである程度の屈折率向上は可能である。
【0009】
しかし、近年の液晶パネルの大画面化に伴い、偏光フィルムのサイズも大型化し、偏光フィルムの熱変形量が増大するようになった。従来の感圧式接着剤を使用した場合、接着剤層に残る貼着時の応力の緩和が充分ではないので、偏光フィルムのひずみに接着剤層が充分には追随できず、その結果、大型液晶パネルを高温に曝したり、高湿度に曝したりすると、偏光フィルムの変色や透明性の低下を引き起こしたり、偏光フィルムが大型液晶セルのガラス基板から剥がれたり、偏光フィルムに応力集中が生じ、大型液晶パネルに光漏れが生じたり、あるいは揮発性ガスを発生するという問題もある。
【0010】
又、液晶パネルを長期にわたって使用する間にも偏光フィルムは寸法変化し、その応力が接着剤層に蓄積されることとなる。応力が接着剤層に蓄積され続けると、偏光フィルムと液晶セル用ガラス部材間の接着力の分布が不均一となる。そして、長期間の使用中に特に偏光フィルムの周縁部に応力が集中し、その結果液晶素子の周縁部が中央より明るかったり、あるいは暗くなったりするなどの液晶素子表面に色むら・白ヌケが発生する。
【0011】
上記したように、液晶セル用のガラス部材に偏光フィルムを積層するために使用する感圧式接着剤には、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性が求められる。そして、位相差フィルムや各種ディスプレイのカバーフィルムを積層するための感圧式接着剤にも同様の性能が求められる。
【0012】
これら種々の要求に対して、従来、様々な感圧式接着剤が提案されてきた。例えば、アクリル系樹脂を主剤とする種々の感圧式接着剤が知られている(特許文献1〜5参照)。
【0013】
しかし、アクリル系樹脂を感圧式接着剤として用いることにより、接着剤層の発泡や偏光板の液晶セルからの浮き剥がれは抑制できるが、偏光板の寸法変化による応力を吸収・緩和することができず、偏光板の周縁部に応力が集中するため、液晶表示装置の周縁部と中央部の明るさが異なり、液晶表示装置表面に色むら・白ヌケが発生する問題があった。このように、感圧式接着シートの用いられる分野も多岐にわたり、要求レベルが上がったり、新たな要求が追加されたり、従来のアクリル系感圧式接着剤では種々の要求に充分応えられなくなりつつある。
【特許文献1】特開平01−066283号公報
【特許文献2】特開平10−279907号公報
【特許文献3】特開2002−121521号公報
【特許文献4】特開2003−013029号公報
【特許文献5】特開2002−014225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、液晶セル用のガラス基板に偏光フィルムを積層するために使用する感圧式接着剤組成物に関し、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性、再剥離性等を有する接着剤層を形成し得るポリウレタンを含む感圧式接着剤組成物を提供することを目的とする。更に、該感圧式接着剤組成物と光学部材からなる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、芳香族ジカルボン酸系成分(a1)を50〜70モル%含むCOOH系成分(A)中のカルボキシル基と、
下記一般式(1)に示される水酸基間の炭素数が4以上の直鎖脂肪族ジオール(b1) を25〜55モル%、
下記一般式(2)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール(b2)及び/又は下記一般式(3)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール(b3)を合計で20〜50モル%、
及び側鎖にアルキル基を有する他のジオール(b4)、
を含むOH成分(B)中の水酸基と、を水酸基過剰の条件下で反応させてなる末端水酸 基のポリエステルプレポリマー(C)中の水酸基と、
3個以上のイソシアネート基を有する化合物(D1)中のイソシアネート基と、を反応させてなるポリウレタン(E)を含む感圧式接着剤組成物に関する。
【0016】
一般式(1)
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、aは4以上の整数を表す。)
一般式(2)
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、R1は炭素数4以上のアルキル基を表し、R2はアルキル基を表す。又、b、dはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。)
一般式(3)
【0021】
【化3】

【0022】
(式中、R3、R4は少なくとも一方が炭素数3以上のアルキル基を表し、他方がアルキル基を表す。又、b、dはそれぞれ独立に1以上の整数を表し、cは0以上の整数を表す。)
【0023】
更に本発明は、OH成分(B)が、3個以上の水酸基を有する化合物(b5)を0.1〜5モル%含むことを特徴とする上記感圧式接着剤組成物に関する。
【0024】
更に本発明は、ポリエステルプレポリマー(C)中の水酸基に対して、3個以上のイソシアネート基を有する化合物(D1)中のイソシアネート基を5〜50モル%反応してなる上記感圧式接着剤組成物に関する。
【0025】
更に本発明は、ポリウレタン(E)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、2.0〜6.0である上記感圧式接着剤組成物に関する。
【0026】
更に本発明は、ポリウレタン(E)のガラス転移温度(Tg)が、−80〜−0℃である上記感圧式接着剤組成物に関する。
【0027】
更に本発明は、ポリウレタン(E)の水酸基価が、0.1〜50mgKOH/gである上記感圧式接着剤組成物に関する。
【0028】
更に本発明は、ポリウレタン(E)の重量平均分子量(Mw)が、30000〜300000である上記感圧式接着剤組成物に関する。
【0029】
更に本発明は、ポリウレタン(E)と、ポリウレタン(E)中の水酸基と反応しうる官能基を有する化合物(F)と、を含む上記感圧式接着剤組成物に関する。
【0030】
更に本発明は、化合物(F)が、多官能イソシアネート化合物(D)である上記感圧式接着剤組成物に関する。
【0031】
更に本発明は、シランカップリング剤を含むことを特徴とする上記感圧式接着剤組成物に関する。
【0032】
更に本発明は、上記感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層上に光学部材が積層されてなる積層体に関する。
【0033】
更に本発明は、液晶セル用ガラス部材、上記感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層、及び光学部材が、順次積層されてなる液晶セル用部材に関する。
【発明の効果】
【0034】
本発明の感圧式接着剤組成物は、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性に優れた接着剤層を提供できる。更に、本発明の感圧式接着剤組成物を用いることにより、特に耐熱性や耐湿熱性を必要とされる光学部材用途においては、従来よりも過酷な熱あるいは湿熱条件下でも発泡や剥がれ等が発生せず、又、液晶セル用のガラス基板面に偏光フィルムを貼り付けて積層体とした後に、ガラス基板面から偏光フィルム等を剥がして、もう一度新しい偏光フィルム等を貼り直す場合に、偏光フィルム等を剥ぎ取り難くかったり、剥がした後に糊残りが生じたりしない、再剥離性の良好な感圧式接着剤組成物と光学部材からなる積層体を提供できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
まず、本発明の感圧式接着剤組成物に含まれるポリウレタン(E)について説明する。本発明のポリウレタン(E)は、芳香族ジカルボン酸系成分(a1)を50〜70モル%含むCOOH系成分(A)中のカルボキシル基と、
下記一般式(1)に示される水酸基間の炭素数が4以上の直鎖脂肪族ジオール(b1)を25〜55モル%、下記一般式(2)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール(b2)及び/又は下記一般式(3)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール(b3)を合計で20〜50モル%、及び側鎖にアルキル基を有する他のジオール(b4)、を含むOH成分(B)中の水酸基と、を水酸基過剰の条件下で反応させてなる末端水酸基のポリエステルプレポリマー(C)中の水酸基と、
3個以上のイソシアネート基を有する化合物(D1)中のイソシアネート基と、を反応させてなる。
【0036】
一般式(1)
【0037】
【化4】

【0038】
(式中、aは4以上の整数を表す。)
一般式(2)
【0039】
【化5】

【0040】
(式中、R1は炭素数4以上のアルキル基を表し、R2はアルキル基を表す。又、b、dはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。)
一般式(3)
【0041】
【化6】

【0042】
(式中、R3、R4は少なくとも一方が炭素数3以上のアルキル基を表し、他方がアルキル基を表す。又、b、dはそれぞれ独立に1以上の整数を表し、cは0以上の整数を表す。)
【0043】
ポリエステルプレポリマー(C)を3個以上のイソシアネート基を有する化合物(D1)で鎖延長することによりウレタン結合に起因する凝集力が得られ、過酷な熱あるいは湿熱条件下でも発泡や剥がれ等が発生せず、又、液晶セル用のガラス基板面に偏光フィルムを貼り付けて積層体とした後に、ガラス基板面から偏光フィルム等を剥がして、もう一度新しい偏光フィルム等を貼り直す場合に、偏光フィルム等を剥ぎ取り難くかったり、剥がした後に糊残りが生じたりしない、再剥離性の良好な感圧式接着剤組成物を得ることができる。
【0044】
本発明のポリウレタン(E)の材料となるポリエステルプレポリマー(C)は、COOH系成分(A)として、芳香族ジカルボン酸系成分(a1)を50〜70モル%含むことを特徴としている。芳香族ジカルボン酸系成分(a1)の使用量が50モル%未満であると耐熱性、耐湿熱性が劣り、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生する。又、芳香族ジカルボン酸系成分(a1)の使用量が50モル%未満であると、屈折率が低くなり、光の有効利用度を低下させる。一方、70モル%を超えて使用すると接着性が低下し充分な接着力を得ることができない。
【0045】
本発明の芳香族ジカルボン酸系成分(a1)としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロルフタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;
無水フタル酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物等の芳香族ジカルボン酸無水物類が挙げられる。
【0046】
又、上記のような芳香族ジカルボン酸系成分や芳香族ジカルボン酸無水物類を低級アルコール、例えば炭素数1〜4のアルキルアルコールのエステル化物を用いることもできる。芳香族ジカルボン酸系成分や芳香族ジカルボン酸無水物類の低級アルコールのエステル化物を用いる場合には、OH成分(B)と脱水縮合ではなく、脱アルコールによるエステル交換反応によって、エステル結合を生成する。
【0047】
更に、芳香族トリカルボン酸無水物や芳香族テトラカルボン酸無水物をモノアルコールでハーフエステル化した化合物を芳香族ジカルボン酸として使用することができる。
【0048】
芳香族トリカルボン酸無水物としては、例えば、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,4,5−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,2,8−ナフタレントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、2,3,2’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルメタントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルスルホントリカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0049】
芳香族テトラカルボン酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−1−ナフタレンコハク酸無水物等が挙げられる。
モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、n−アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソオクタノール、ノナノール、デカノール、イソウンデカノール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の直鎖又は分岐脂肪族アルコール類;
ベンジルアルコール、α−メチルベンジルアルコール、フェネチルアルコール等の芳香脂肪族モノアルコール類;
シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、トリシクロデカンメタノール等の脂環族モノアルコール類が挙げられる。
【0050】
これら芳香族ジカルボン酸系成分(a1)は、単独で又は2種以上で用いることができる。これらの中でも、耐熱性、耐湿熱性の点から、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0051】
芳香族ジカルボン酸成分(a1)以外のCOOH系成分(A)としては、例えば、シトラコン酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−カルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族、脂環族ジカルボン酸類;
無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、ブチルコハク酸無水物、ヘキシルコハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、ブチルマレイン酸無水物、ペンチルマレイン酸無水物、ヘキシルマレイン酸無水物、オクチルマレイン酸無水物、デシルマレイン酸無水物、ドデシルマレイン酸無水物、ブチルグルタミン酸無水物、ヘキシルグルタミン酸無水物、ヘプチルグルタミン酸無水物、オクチルグルタミン酸無水物、デシルグルタミン酸無水物、ドデシルグルタミン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルペンタヒドロ無水フタル酸、メチルトリヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸等の脂肪族、脂環族ジカルボン酸無水物が挙げられる。
【0052】
場合によっては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸等の3官能以上のカルボン酸化合物やその無水物を併用することができる。
【0053】
本発明では、OH成分(B)として、上記一般式(1)に示される水酸基間の炭素数が4以上の直鎖脂肪族ジオール(b1)を25〜55モル%、上記一般式(2)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール(b2)及び/又は上記一般式(3)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール(b3)を合計で20〜50モル%、及び側鎖にアルキル基を有する他のジオール(b4)、を含むことを特徴としている。
【0054】
上記一般式(1)に示されるジオール(b1)としては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。本発明は、上記一般式(1)中のaが4以上であり、その使用量がOH成分(B)中に25〜55モル%であることを特徴とする。aが4未満であると、充分な初期粘着力を得ることができない。aが10以上であると凝集力が低下する傾向があるため、aが4〜9であるジオールが好ましい。又、ジオール(b1)の使用量が25モル%未満であると充分なタックを得ることができず、55モル%を超えると凝集力が低下する傾向にある。
【0055】
上記一般式(2)に示されるジオール(b2)としては、例えば、2−ブチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、2−ペンチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ヘキシル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ヘキシル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,4−ブタンジオール、2−ブチル−2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。本発明は、特に、上記一般式(2)中のR1が炭素数4以上のアルキル基であることを特徴とするが、R1が炭素数4未満であると、耐熱性、耐湿熱性が劣り、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生する。耐熱性、耐湿熱性、初期粘着力のバランスを考えると上記一般式(2)中のb及びdが1〜4、R1が炭素数4〜9のアルキル基、R2が1〜9のアルキル基であるジオールが好ましい。
【0056】
上記一般式(3)に示されるジオール(b3)としては、例えば、2−ヘキシル−3−メチル−1,4−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,4−ブタンジオール、2−ブチル−4−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−プロピル−4−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−ブチル−5−メチル−1,6−ヘキサンジオール、2−ヘキシル−5−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,5−ジブチル−1,6−ヘキサンジオール、等が挙げられる。本発明は、特に、上記一般式(3)中のR3、R4の少なくとも一方が炭素数3以上のアルキル基であることを特徴とするが、炭素数3未満であると、耐熱性、耐湿熱性が劣り、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生する。耐熱性、耐湿熱性、初期粘着力のバランスを考えると上記一般式(3)中のb及びdが1〜3、R3、R4の少なくとも一方が炭素数3〜9のアルキル基であるジオールが好ましい。
【0057】
上記ジオール(b2)と上記ジオール(b3)との使用量の合計は、OH成分(B)中に20〜50モル%であることを特徴とする。20モル%未満であると耐熱性、耐湿熱性が劣り、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生する。又、50モル%を超えるとタックが下がる傾向にあり、重合時間も長くなり生産性に問題を生じる。
【0058】
側鎖にアルキル基を有する他のジオール(b4)としては、例えば、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,3,5−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−メチル−1, 6−ヘキサンジオール等が挙げられる。他のジオール(b4)は、上述の(b1)〜(b3)及び後述する(b5)の量と要求性能、価格等を考慮して、必要に応じて使用することができるOH成分(B)である。ジオール(b4)は、OH成分(B)に対して、0〜54.9モル%の範囲で使用することができ、10〜40モル%の範囲で使用することが好ましい。
【0059】
更に本発明では、OH成分(B)中に、3個以上の水酸基を有する化合物(b5)を使用することが好ましい。3個以上の水酸基を有する化合物(b5)としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられる。化合物(b5)使用量は、OH成分(B)中に0.1〜5モル%であることが好ましい。光学部材への使用を考慮すると0.5〜3モル%がより好ましい。0.1モル%未満であると凝集力が低下し、更に耐熱性、耐湿熱性が劣り、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生する場合がある。又、5モル%を超えると合成時に高粘度となり生産性に問題を生じ、場合によってはゲル化を起こす場合がある。
【0060】
本発明のポリウレタン(E)は、ポリエステルプレポリマー(C)を構成部位として含むため、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性に優れており、本発明の感圧式接着剤組成物にこれらの機能を付与することができる。即ち、ポリエステルプレポリマー(C)を構成する芳香族ジカルボン酸系成分は、ポリエステルに耐熱性、耐湿熱性、高屈折率を付与し、水酸基間の炭素数が4以上の直鎖脂肪族ジオール(b1)は良好な応力緩和性と優れた接着性を付与し、側鎖にアルキル基を有するジオール(b2)及び/又は(b3)は、耐熱性、耐湿熱性、適度な応力緩和性を付与する。更に、好ましく使用される3個以上の水酸基を有する化合物(b5)は、ポリエステルプレポリマー(C)中に官能基である水酸基の数を増加させて、ポリエステルプレポリマー(C)と3個以上のイソシアネート基を有する化合物(D1)との反応点を増加させることができる。この反応の促進により、感圧式接着剤組成物の凝集力が向上し、更に耐熱性、耐湿熱性を向上させるが、一方で応力緩和性を低下させる。
【0061】
本発明のポリエステルプレポリマー(C)は、上記COOH系成分(A)とOH成分(B)を触媒存在下、公知の方法により重縮合反応させることにより得られる。通常、150℃〜260℃の温度で脱水及び/又は脱アルコール反応によりエステル化を行う。分子量の調整はCOOH系成分(A)とOH成分(B)との仕込み比により行う。通常はCOOH系成分(A)中のCOOH官能基1モル(酸無水物基1個のCOOH官能基は2モル)に対してOH成分(B)中のOH官能基を過剰に仕込む。OH/COOH=1/1〜2/1の比率で仕込むことが好ましく、1.05/1〜1.50/1の比率で仕込むことがより好ましい。1/1に近い程高分子量となり、2/1に近い程低分子量となる。更に高分子量とするためには、5mmHg以下の減圧下で脱ジオール反応を行う場合もある。
【0062】
脱ジオール反応には触媒を用いるのが好ましい。例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系、三酸化アンチモン等のアンチモン系、酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム系などの触媒や酢酸亜鉛、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイドなどをあげることができ、これらの1種あるいは2種以上が用いられる。これらのなかでも、触媒の活性が高い点から、三酸化アンチモン、テトラブチルチタネートが好ましい。
【0063】
次に、前記ポリエステルプレポリマー(C)を鎖延長するために使用する3個以上のイソシアネート基を有する化合物(D1)について説明する。前記ポリエステルプレポリマー(C)に3個以上のイソシアネート基を有する化合物(D1)を用いて鎖延長することで、ウレタン結合を導入でき、さらに樹脂の高分子量化された分岐のポリウレタン(E)を得ることができる。
3個以上のイソシアネート基を有する化合物(D1)としては、分子中に3個以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されることなく、例えば、芳香族ポリイソシアネ−ト、脂肪族ポリイソシアネ−ト、芳香脂肪族ポリイソシアネ−ト、脂環族ポリイソシアネ−ト等が挙げられる。3個以上のイソシアネート基を有する化合物(D1)は、下記に示すジイソシアネート化合物(D2)のトリメチロ−ルプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレ−ト環を有する3量体であることが好ましい。
ジイソシアネート化合物(D2)としては、芳香族ジイソシアネ−ト、脂肪族ジイソシアネ−ト、芳香脂肪族ジイソシアネ−ト、脂環族ジイソシアネ−ト等を挙げることができる。
【0064】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0065】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0066】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0067】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0068】
更には、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(PAPI)、ナフチレンジイソシアネート、及びこれらのポリイソシアネート変性物等を使用し得る。尚、ポリイソシアネート変性物としては、カルボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、水と反応したビュレット基、イソシアヌレート基のうちのいずれかの基、又はこれらの基の2種以上を有する変性物を使用できる。又、ポリオールとジイソシアネート化合物の反応物もポリイソシアネートとして使用することができる。
【0069】
これらジイソシアネート化合物(D2)の内、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)、キシリレンジイソシネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(別名:水添MDI)等の無黄変型又は難黄変型のジイシソアネート化合物(D2)からなる3個以上のイソシアネート基を有する化合物(D1)を用いると耐候性、耐熱性あるいは耐湿熱性の点から、特に好ましい。又、本発明では、3個以上のイソシアネート基を有する化合物(D1)とともに、上記で例示したジイソシアネート化合物(D2)を併用することができる。
【0070】
3個以上のイソシアネート基を有する化合物(D1)を使用する場合、反応促進のため、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。例えば三級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられ、単独でもあるいは複数を使用することもできる。
【0071】
ポリエステルプレポリマー(C)と3個以上のイソシアネート基を有する化合物(D1)との反応は、必要があれば触媒存在下、公知の方法により反応させることができる。通常、40℃〜120℃の温度で行う。分子量の調整はポリエステルプレポリマー(C)と3個以上のイソシアネート基を有する化合物(D1)との仕込み比により行う。通常はポリエステルプレポリマー(C)中の水酸基に対して3個以上のイソシアネート基を有する化合物(D1)中のイソシアネート基を5〜50モル%反応させるのが好ましく、10〜40モル%反応させるのがより好ましい。5モル%未満であるとウレタン結合の導入効果が低く、充分な凝集力が得られない場合がある。又、50モル%を超えると分子量が高くなりすぎハンドリングに問題を生じる場合がある。
【0072】
本発明のポリウレタン(E)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、2.0〜6.0が好ましく、3.0〜5.0がより好ましい。Mw/Mnが2.0未満であると耐熱性、耐湿熱性が劣り、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生する場合がある。又、6.0を超えると高粘度化してハンドリングに問題を生じる場合がある。
【0073】
本発明のポリウレタン(E)は、ガラス転移温度が−80〜0℃であることを特徴とする。ガラス転移温度が−80℃未満の場合、該ポリウレタン(E)を用いて得られる感圧式接着剤層の凝集力が低下し、浮き剥がれが生じる。一方、ガラス転移温度が0℃を超えると、感圧式接着剤層が充分なタックを発現しない。尚、ガラス転移温度は、DSC(示差熱熱重量測定装置)を用いて測定した。
【0074】
本発明のポリウレタン(E)の水酸基価は、0.1〜50mgKOH/gであることが好ましく、3〜20mgKOH/gであることがより好ましい。0.1mgKOH/g未満であると、凝集力が低下する場合があり、50mgKOH/gを超えると粘着量や耐湿熱性が低下する場合がある。
【0075】
本発明のポリウレタン(E)の重量平均分子量(Mw)は、30000〜300000の範囲にあることが接着性の点で好ましく、50000〜200000の範囲にあることがより好ましい。Mwが30000未満であると凝集力を発現できずに、耐熱性や耐湿熱性が低下する場合がある。一方、Mwが300000を超えると、樹脂の流動性が不良となって、樹脂積層体を作製することが困難となる場合がある。
【0076】
本発明の感圧式接着剤組成物は、前記ポリウレタン(E)と、架橋剤として前記ポリウレタン(E)中の水酸基と反応しうる官能基を有する化合物(F)とを含有することを特徴とする。化合物(F)中の水酸基と反応しうる官能基としては、イソシアネート基、エポキシ基、アルコキシシリル基、メチロール基、酸無水物基等が挙げられる。化合物(F)としては、例えば、多官能イソシアネート化合物(D)、多官能シラン化合物、N−メチロール基含有化合物などが挙げられるが、これらの中でも、架橋剤として作用するために、ポリウレタン(E)中の水酸基と反応し得る官能基を分子内に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。特に多官能イソシアネート化合物(D)や多官能シラン化合物は、架橋反応後の樹脂組成物の接着性や被覆層への密着性に優れていることから好ましく用いられる。
【0077】
多官能イソシアネート化合物(D)としては、上記で例示した3個以上のイソシアネート基を有する化合物(D1)やジイソシアネート化合物(D2)を使用することができる。又、上記で例示した触媒を併用して使用することができる。
【0078】
多官能シラン化合物としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどのメタクリロキシ基とアルキル基とアルコキシ基を2つ有するシラン化合物;
γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどのアクリロキシ基とアルキル基とアルコキシ基を2つ有するシラン化合物;
γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシメチルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロキシアルキル基とアルコキシ基を3つ有するシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン;
5−ヘキセニルトリメトキシシラン、9−デセニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシランなどのアルキル基を有するアルコキシシラン;
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのアミノアルキル基とアルコキシ基とを有するシラン;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヘキサメチルシラザン、ジフェニルジメトキシシラン、1, 3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビニルトリス( 2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0079】
本発明の感圧式接着剤組成物は、ポリウレタン(E)100重量部に対して、化合物(F)を0.001〜20重量部含有することが好ましく、0.01〜10重量部含有することがより好ましい。化合物(F)の使用量が、20重量部を越えると感圧式接着剤組成物から形成されると感圧式接着剤層の架橋構造が密になり、感圧式接着剤層のタックが低下傾向となり、被着体に対する接着性が低下したり、応力緩和性が低下したりして、熱ムラを生ずる傾向にある。又、0.001重量部未満では、充分な架橋構造が得られないため、凝集力が低下し、耐熱性、耐湿熱性が低下する傾向にあるため、好ましくない。ポリウレタン(E)中の水酸基と化合物(F)中の水酸基と反応しうる官能基との反応により、樹脂組成物が三次元架橋し、各種基材や被着体との密着性を確保するだけでなく、従来よりも過酷な条件下における耐熱性及び耐湿熱性をも向上することができるため、光学部材用として好ましく使用することができる。
【0080】
本発明の感圧式接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で有れば、各種樹脂、カップリング剤、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、タッキファイヤ、可塑剤、充填剤及び老化防止剤等を配合しても良い。
【0081】
本発明の感圧式接着剤組成物を使用して、感圧式接着層とシート状基材とからなる積層製品(以下、「接着シート」という。)を得ることができる。例えば、種々のシート状基材に本発明の感圧式接着剤組成物を塗工、乾燥・硬化することによって感圧式接着シートを得ることができる。感圧式接着シートを構成する感圧式接着層は、「感圧式」であるから室温程度でタックを有する。感圧式接着剤組成物を塗工するに際し、適当な液状媒体、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、その他の炭化水素系溶媒等の有機溶媒や、水をさらに添加して、粘度を調整することもできるし、感圧式接着剤組成物を加熱して粘度を低下させることもできる。ただし、水やアルコール等は多量に添加するとポリウレタン(E)と化合物(F)との反応阻害を引き起こす可能性があるため、注意が必要である。
【0082】
シート状基材としては、セロハン、各種プラスチックシート、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス板、金属板、木材等の平坦な形状のものが挙げられる。又、各種基材は単独でも用いることもできるし、複数のものを積層してなる多層状態にあるものも用いることができる。更に表面を剥離処理したものを用いることもできる。
【0083】
各種プラスチックシートとしては、各種プラスチックフィルムともいわれ、ポリビニルアルコールフィルムやトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂のフィルム、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂のフィルム、ポリカーボネート系樹脂のフィルム、ポリノルボルネン系樹脂のフィルム、ポリアリレート系樹脂のフィルム、アクリル系樹脂のフィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂のフィルム、ポリスチレン樹脂のフィルム、ビニル系樹脂のフィルム、ポリアミド系樹脂のフィルム、ポリイミド系樹脂のフィルム、エポキシ系樹脂のフィルム等が挙げられる。
【0084】
常法にしたがって適当な方法で上記シート状基材に感圧式接着剤組成物を塗工した後、感圧式接着剤組成物が有機溶媒や水等の液状媒体を含有する場合には、液状媒体を除去したり、感圧式接着剤組成物が揮発すべき液状媒体を含有しない場合は、溶融状態にある接着剤層を冷却して固化したりして、シート状基材の上に接着剤層を形成することができる。感圧式接着剤層の厚さは、0.1μm〜200μmであることが好ましく、1μm〜100μmであることがより好ましい。0.1μm未満では充分な接着力が得られないことがあり、200μmを超えても接着力等の特性はそれ以上向上しない場合が多い。
【0085】
本発明の感圧式接着剤組成物をシート状基材に塗工する方法としては、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等種々の塗工方法が挙げられる。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件としては接着剤組成物の硬化形態、膜厚や選択した溶剤にもよるが、通常60〜180℃程度の熱風加熱でよい。
【0086】
本発明の積層体は、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム等の種々の光学特性を持つ、いわゆるシート(前述の通りフィルムともいう)状の光学部材に、上記本発明の感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層が積層された状態のものである。感圧式接着剤層の他の面には、剥離処理されたシート状基材を積層することができる。
【0087】
本発明の積層体は、
(ア)剥離処理されたシート状基材の剥離処理面に感圧式接着剤組成物を塗工、乾燥し、シート状の光学部材を感圧式接着剤層の表面に積層したり、
(イ)シート状の光学部材に感圧式接着剤組成物を塗工、乾燥し、感圧式接着剤層の表面に剥離処理されたシート状基材の剥離処理面を積層したりすることによって得ることができる。
【0088】
このようにして得た積層体から感圧式接着剤層の表面を覆っていた剥離処理されたシート状基材を剥がし、例えば、感圧式接着剤層を液晶セル用ガラス基板に貼着することによって、「シート状の光学部材/感圧式接着剤層/液晶セル用ガラス基板」という構成の液晶セル部材を得ることができる。
【0089】
本発明の感圧式接着剤は、ポリエステルで構成されているため、基材への密着性を向上させており、耐可塑剤性や低温接着性に優れ、発泡体の様な基材に対する密着性が必要とされる用途にも、好適に使用される。特に主鎖骨格に芳香環を含有することができるため、該感圧式接着剤組成物の乾燥及び/又は硬化後の屈折率は、1.45以上を維持することが可能である。光学部材用フィルムやガラス等の光学用部材に使用される材料の屈折率は、先に述べたように、1.50〜1.58程度のものであり、感圧式接着剤組成物を乾燥及び/又は硬化させた後の屈折率が1.45未満であると光学フィルムや光学用部材との屈折率差が大きくなる。そのため、例えば、該感圧式接着剤組成物から得られる接着剤層が光学フィルムの一種であるフィルム導光板上に設けられた場合、浅い角度で全反射が起こり、光の有効的な利用性が低下する場合がある。又、光学フィルムや光学用部材との屈折率差を低減するために、本発明の感圧式接着剤組成物の乾燥及び/又は硬化後の屈折率が1.49〜1.60の範囲で制御できることも重要である。特に1.50〜1.55の範囲で制御が可能である。
【実施例】
【0090】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」及び「%」は、特にことわらない限り「重量部」及び「重量%」を表す。
【0091】
[ポリエステルプレポリマー(C)の合成]
(合成例1)
攪拌機、温度計、水分離装置、還流冷却器、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽に、COOH系成分(A)と、OH成分(B)とを、それぞれ下記の比率で仕込んだ。
【0092】
[重合槽]
イソフタル酸 215.70部
セバシン酸 232.76部
1,4−ブタンジオール 53.40部
1,6−ヘキサンジオール 70.65部
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 96.22部
2−メチル−1,3−プロパンジオール 77.67部
トリメチロールプロパン 3.61部
【0093】
重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、160℃に昇温した。160℃で脱水を確認してから30分毎に10℃ずつ昇温し、250℃まで温度を上げて脱水反応を行った。250℃で更に反応を続け、酸価が15mgKOH/g以下になったら、150℃まで温度を下げた。150℃でテトラブチルチタネート0.1部を加えて、温度を240℃まで昇温し、240℃になったら徐々に減圧を開始し、5mmHg以下で5時間脱ジオール反応を行った。所定の分子量になったことを確認して反応を終了した。このポリエステルをメチルエチルケトン/酢酸エチル混合溶液(重量比=1/1)に溶解し、固形分60%に調整してポリエステルプレポリマー溶液(C−1)を得た。得られた樹脂溶液の特性値を表−1に示した。
【0094】
尚、表1には上記仕込み重量部を各成分の分子量で徐したモル%を示した。
【0095】
(合成例2、3、5、6、7)
合成例1と同様の方法で、表1の仕込みモル%に従って合成を行い、固形分60%のポリエステルプレポリマー溶液(C−2)、(C−3)、(C−5)、(C−6)、(C−7)を得た。夫々の樹脂溶液の特性値を表−1に示した。
【0096】
(合成例4)
攪拌機、温度計、水分離装置、還流冷却器、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽に、COOH系成分(A)と、OH成分(B)とを、それぞれ下記の比率で仕込んだ。
【0097】
[重合槽]
ジメチルテレフタル酸 130.56部
1,4−ブタンジオール 28.87部
1,6−ヘキサンジオール 37.85部
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 189.52部
ネオペンチルグリコール 62.88部
トリメチロールプロパン 3.31部
酢酸亜鉛(触媒) 0.035部
【0098】
重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、160℃に昇温した。160℃で脱メタノールを確認してから30分毎に10℃ずつ昇温し、210℃まで温度を上げて脱メタノール反応を行い、メタノールの留出が止まるまで反応を続けた。脱メタノール反応が終了したら150℃まで温度を下げた。150℃でイソフタル酸93.10部を加えて昇温し、250℃まで温度を上げて脱水反応を行った。酸価が15mgKOH/g以下になったら反応を終了し、150℃まで温度を下げた。次いで、テトラブチルチタネート0.1部を加えて、温度を240℃まで昇温し、240℃になったら徐々に減圧を開始し、5mmHg以下で5時間脱ジオール反応を行った。所定の分子量になったことを確認して反応を終了した。このポリエステルをメチルエチルケトン/酢酸エチル混合溶液(重量比=1/1)に溶解して固形分60%に調整し、ポリエステルプレポリマー溶液(C−4)を得た。得られた樹脂溶液の特性値を表−1に示した。
【0099】
【表1】

【0100】
[ポリウレタン(E)の合成]
(合成例8)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに合成例1で合成したポリエステルプレポリマー(C−1)溶液500g、ヘキサメチレンジイソシアネートの3官能イソシアヌレート体3.0g、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.15gを仕込み、100℃まで徐々に昇温し3時間反応を行った。滴定でイソシアネート基残量を確認した後、40℃まで冷却し、トルエンで固形分50%に調整し、ポリウレタン溶液(E−1)を得た。得られた樹脂溶液の特性値を表−2に示した。
【0101】
(合成例9〜14)
合成例8と同様の方法で、表−2の仕込み組成と仕込み重量に従って合成を行い、固形分50%のポリウレタン溶液(E−2)〜(E−7)を得た。夫々の樹脂溶液の特性値を表−2に示した。
【0102】
【表2】

【0103】
(比較合成例1)
温度計、攪拌機、蒸留管、冷却器、滴下ロートを具備した4つ口セパラブルフラスコに2−エチルヘキシルアクリレート49g、フェノキシエチルアクリレート50g、アクリル酸1g及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2gをトルエン100gと共に入れて室温で窒素還流を1時間行った後、その窒素気流下、温度を60℃に昇温して4時間反応させ、ついで80℃に昇温して2時間熟成させてアクリル系共重合体の溶液を得た。得られたアクリル樹脂(G−1)の重量平均分子量は599000、分散度は4.1、ガラス転移温度は−35℃、固形分は50%であった。
【0104】
(比較合成例2)
2−エチルヘキシルアクリレートの使用量を39部とし、フェノキシエチルアクリレートの使用量を60部としたほかは比較合成例1と同様の方法でアクリル樹脂の溶液を得た。得られたアクリル樹脂(G−2)の重量平均分子量は959000、分散度は5.0、ガラス転移温度は−31℃、固形分は50%であった。
【0105】
(比較合成例3)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート60.0g、2−エチルヘキシルアクリレート39.0g部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1.0g、アセトン150.0g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.08g部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下中で、この反応溶液を60℃に昇温させ、5時間反応させた。次いで、反応終了後、トルエンを190gとアクリル酸0.84g及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.50gを添加して、70℃に昇温し、6時間反応させた。反応後、トルエン55部を添加して室温まで冷却しアクリル系ポリマーの溶液を得た。得られたアクリル樹脂(G−3)の重量平均分子量は1580000、分散度は5.8、ガラス転移温度は−46℃、固形分は25%であった。
【0106】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ロボットDSC(示差走査熱量計)「RDC220」(セイコーインスツルメンツ社製)に「SSC5200ディスクステーション」(セイコーインスツルメンツ社製)を接続して測定した。アルミニウムパンに試料約10mgを秤量してDSC装置にセットし(リファレンス:試料を入れていない同タイプのアルミニウムパンとした。)、300℃の温度で5分間加熱した後、液体窒素を用いて−120℃まで急冷処理した。その後10℃/分で昇温し、得られたDSCチャートからガラス転移温度(Tg)を算出した。
【0107】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
Mwの測定は東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0108】
<分散度(Mw/Mn)>
上記分子量の測定結果より、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)により求めた。
【0109】
<水酸基価の測定>
容量200mlの共栓付三角フラスコ中に溶解前のポリエステル約2gを精秤し、アセチル化試薬(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)5mlをホールピペットで正確に添加した。これにピリジン10gを添加し、100℃で1.5時間反応させた。放冷後、トルエン/エタノール=2/1(容量比)混合液40mlを加えて溶解した。この試料溶液を、フェノールフタレイン溶液を指示薬として、N/2水酸化カリウムのエタノール溶液を用いて、試料溶液が淡紅色を呈するまで滴定した。
【0110】
水酸基価は次式により求めた。
【0111】
水酸基価(mgKOH/g)=[(b−a)×f×28.05/S]+D
S:試料の採取量(g)
a:N/2水酸化カリウムエタノール溶液の滴定量(ml)
b:空実験のN/2水酸化カリウムエタノール溶液の滴定量(ml)
f:N/2水酸化カリウムエタノール溶液の力価
D:ポリエステルの酸価(mgKOH/g)
【0112】
(実施例1)
合成例8で得られたポリウレタン溶液(E−1)100部(固形分50%)に対して、トルエンを約25部加え、固形分が40%となるように調整した。次いで、硬化剤である化合物(F)として、TDI/TMP(トルレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)2.5部と、シランカップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.5部加えてよく撹拌して、本発明の感圧式接着剤組成物を得た。
【0113】
これを剥離処理されたポリエステルフィルム(以下、「剥離フィルム」という。)上に乾燥後の厚みが25μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させ、感圧式接着剤層を形成した。乾燥後、感圧式接着剤層に、ポリビニルアルコール(PVA)系偏光子の両面をトリアセチルセルロース系保護フィルム(以下、「TACフィルム」という)で挟んだ三層構造の偏光フィルムの片面を貼り合せ、「剥離フィルム/感圧式接着剤層/TACフィルム/PVA/TACフィルム」なる構成の積層体を得た。次いで、得られた積層体を温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成(暗反応)させて、接着剤層の反応を進行させ、接着加工した偏光板(積層体)を作製した。
【0114】
(実施例2〜7)
合成例8で得られたポリウレタン溶液(E−1)の代わりに、合成例9〜14で得られたポリウレタン溶液(E−2)〜(E−7)をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして、接着加工した偏光板(積層体)を作製した。
【0115】
(実施例8)
合成例8で得られたポリウレタン溶液(E−1)を用いて、化合物(F)を1.0部とした以外は、実施例1と同様の方法で接着加工した偏光板(積層体)を作製した。
【0116】
(実施例9)
合成例8で得られたポリウレタン溶液(E−1)を用いて、化合物(F)を6.0部とした以外は、実施例1と同様の方法で接着加工した偏光板(積層体)を作製した。
【0117】
(実施例10)
合成例8で得られたポリウレタン溶液(E−1)を用いて、シランカップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを加えなかった以外は、実施例1と同様の方法で接着加工した偏光板(積層体)を作製した。
【0118】
(比較例1〜3)
合成例8で得られたポリウレタン溶液(E−1)の代わりに、比較合成例1〜3で得られたアクリル樹脂溶液(G−1)〜(G−3)をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして、接着加工した偏光板(積層体)を作製した。
【0119】
実施例及び比較例で得られた接着加工した偏光板(積層体)について、塗膜の屈折率、耐熱性、耐湿熱性、熱ムラ、及び再剥離性を以下の方法で評価した。結果を表−3及び表−4に示す。
【0120】
<塗膜の屈折率の評価>
実施例、比較例で得られた感圧式接着剤組成物を剥離フィルム上に塗工し、120℃のオーブンにて乾燥して、厚さ25μmの感圧式接着剤層を設けた後、ポリエステルフィルムに貼り合わせて積層させ、感圧式接着シートを作製した。その後、アッベ屈折率計「DR−M2」[ATAGO社製]にて、25℃雰囲気下、ナトリウムD線を照射して、接着シート上の接着剤層の屈折率を測定した。
【0121】
<耐熱性、耐湿熱性の評価方法>
接着加工した偏光板(積層体)を150mm×80mmの大きさに裁断して剥離フィルムを剥がし、厚さ1.1mmのフロートガラス板の両面に、それぞれの偏光板の吸収軸が直交するようにラミネーターを用いて貼着した。続いて、この偏光板が貼り付けられたガラス板を50℃−5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて、偏光板をガラス板に強固に密着させ、偏光板とガラス板との積層物を得た。
【0122】
耐熱性の評価として、上記積層物を80℃のオーブン中で500時間放置した後の偏光板の浮きやハガレ、ガラス板面とのズレを目視で観察した。又、耐湿熱性の評価として、上記積層物を60℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽で500時間放置した後の偏光板の浮きやハガレ、ガラス板面とのズレを目視で観察した。耐熱性、耐湿熱性について、下記の3段階の評価基準に基づいて評価をおこなった。
【0123】
○:「浮き、ハガレ、ズレが全く認められず、実用上全く問題なし。」
△:「若干浮きやハガレ、ズレが認められるが、実用上問題がない。」
×:「全面的に浮き、ハガレ、ズレがあり、実用不可である。」
【0124】
<熱ムラの評価>
接着加工した偏光板(積層体)を150mm×80mmの大きさに裁断して剥離フィルムを剥がし、厚さ1.1mmのフロートガラス板の両面に、それぞれの偏光板の吸収軸が直交するようにラミネーターを用いて貼着した。続いて、この偏光板が貼り付けられたガラス板を50℃−5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて、偏光板をガラス板に強固に密着させ、偏光板とガラス板との積層物を得た。この積層物を80℃のオーブン中に24時間放置した後、この積層物の片面から光を当て、反対の面から偏光板の光漏れを目視評価した。
【0125】
〇:「偏光板の全面が暗黒色の色相で均一。」
△:「偏光板の四辺部で10mm以内に暗黒色が薄くなっているが実用上問題ない。」 ×:「偏光板の四辺部で10mm以上に暗黒色が薄くなっている。」
【0126】
<再剥離性(リワーク性)の評価>
接着加工した偏光板(積層体)を25mm×150mmの大きさに裁断し、剥離フィルムを剥がし、厚さ1.1mmのフロートガラス板にラミネーターを用いて貼り付け、50℃5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて、偏光板をガラス板に強固に密着させた。この試験片を23℃、相対湿度50%で1週間放置した後に、180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180度ピール試験を実施し、剥離後のガラス表面の曇りを目視で観察し、3段階で評価した。
【0127】
○:「曇りがなく、実用上全く問題がない。」
△:「若干曇りが認められるが、実用上問題ない。」
×:「全面的に接着剤層の転着が認められ、実用不可である。」
【0128】
【表3】

【0129】
【表4】

【0130】
以上のように、本発明の感圧式接着剤組成物は、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性、再剥離性に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の感圧式接着剤組成物は、ポリウレタン特有の凝集力を維持しつつ、主鎖骨格に芳香環を導入したポリマーを形成することができるため、アクリル系樹脂では得られなかった接着物性を発現させることができる。その例として、本発明の様な光学積層体での耐熱性、耐湿熱性、光学特性、再剥離性等が挙げられる。特に、光学積層体の用途では、光学特性である、光漏れのないことが重要視され、近年のディスプレイの大型化に伴い、屈折率の制御等、その要求性能はますます厳しくなってきている。そこで、本発明の感圧式接着剤組成物は、上述のようにこれまでは困難であった特性を発揮できるため、さらに有用になると考えられる。
【0132】
又、本発明の感圧式接着剤組成物は、光学部材用途として好適であるほか、一般ラベル・シールのほか、塗料、弾性壁材、塗膜防水材、床材、タッキファイヤ、接着剤、積層構造体用接着剤、シーリング剤、成形材料、表面改質用コーティング剤、バインダー(磁気記録媒体、インキバインダー、鋳物バインダー、焼成レンガバインダー、グラフト材、マイクロカプセル、グラスファイバーサイジング用等)、ウレタンフォーム(硬質、半硬質、軟質)、ウレタンRIM、UV・EB硬化樹脂、ハイソリッド塗料、熱硬化型エラストマー、マイクロセルラー、繊維加工剤、可塑剤、吸音材料、制振材料、界面活性剤、ゲルコート剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用耐衝撃性付与剤、インキ用樹脂、フィルム(ラミネート接着剤、保護フィルム等)、合わせガラス用樹脂、反応性希釈剤、各種成形材料、弾性繊維、人工皮革、合成皮革等の原料として、また、各種樹脂添加剤及びその原料等としても非常に有用に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸系成分(a1)を50〜70モル%含むCOOH系成分(A)中のカルボキシル基と、
下記一般式(1)に示される水酸基間の炭素数が4以上の直鎖脂肪族ジオール(b1) を25〜55モル%、
下記一般式(2)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール(b2)及び/又は下記一般式(3)に示される側鎖にアルキル基を有するジオール(b3)を合計で20〜50モル%、
及び側鎖にアルキル基を有する他のジオール(b4)、
を含むOH成分(B)中の水酸基と、を水酸基過剰の条件下で反応させてなる末端水酸 基のポリエステルプレポリマー(C)中の水酸基と、
3個以上のイソシアネート基を有する化合物(D1)中のイソシアネート基と、を反応させてなるポリウレタン(E)を含む感圧式接着剤組成物。
一般式(1)
【化1】



(式中、aは4以上の整数を表す。)
一般式(2)
【化2】



(式中、R1は炭素数4以上のアルキル基を表し、R2はアルキル基を表す。又、b、d はそれぞれ独立に1以上の整数を表す。)
一般式(3)
【化3】



(式中、R3、R4は少なくとも一方が炭素数3以上のアルキル基を表し、他方がアルキ ル基を表す。又、b、dはそれぞれ独立に1以上の整数を表し、cは0以上の整数を表 す。)
【請求項2】
OH成分(B)が、3個以上の水酸基を有する化合物(b5)を0.1〜5モル%含むことを特徴とする請求項1記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項3】
ポリエステルプレポリマー(C)中の水酸基に対して、3個以上のイソシアネート基を有する化合物(D1)中のイソシアネート基を5〜50モル%反応してなる請求項1又は2記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項4】
ポリウレタン(E)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、2.0〜6.0である請求項1〜3いずれか記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項5】
ポリウレタン(E)のガラス転移温度(Tg)が、−80〜−0℃である請求項1〜4いずれか記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項6】
ポリウレタン(E)の水酸基価が、0.1〜50mgKOH/gである請求項1〜5いずれか記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項7】
ポリウレタン(E)の重量平均分子量(Mw)が、30000〜300000である請求項1〜6いずれか記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項8】
ポリウレタン(E)と、ポリウレタン(E)中の水酸基と反応しうる官能基を有する化合物(F)と、を含む請求項1〜7いずれか記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項9】
化合物(F)が、多官能イソシアネート化合物(D)である請求項8記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項10】
更にシランカップリング剤を含むことを特徴とする請求項9記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか記載の感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層上に光学部材が積層されてなる積層体。
【請求項12】
液晶セル用ガラス部材、請求項1〜10いずれか記載の感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層、及び光学部材が、順次積層されてなる液晶セル用部材。

【公開番号】特開2009−24093(P2009−24093A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188939(P2007−188939)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】