説明

感圧接着製品、および感圧接着製品の製造方法

【課題】 インクジェットインキで印刷が施された感圧接着製品を巻き取った際に、感圧接着剤が塗布されていない面のインクジェットインキが、感圧接着剤側に転写することを防止することが可能な感圧接着製品、および感圧接着製品の製造方法を提供する。
【解決手段】 シート状の基材3の両面にインクジェットインキによる印刷層4、5が形成され、一方の印刷層5の表面に感圧接着剤層6を形成し、感圧接着剤層6と反対側の印刷層4の表面に、インクジェットインキの感圧接着剤層6への転写を防止するための透明ニスを塗布して透明ニス層7を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着後1度剥離すると接着不能となるように、圧力を加えて接着する感圧接着製品、および感圧接着製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配送の途中で他人に見られないように、内側の情報記載面を接着剤で接着した隠蔽葉書が利用されている。このような隠蔽葉書では、一度開いたら、通常の加圧では再度接着しない性質をもつ感圧接着剤が用いられている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−196086号公報
【特許文献2】特開2010−143083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記隠蔽葉書のような、感圧接着剤を用いた感圧接着製品において、絵柄をインクジェットインキで印刷する場合がある。この場合、感圧接着させる側では、インクジェットインキで印刷された絵柄の表面に感圧接着剤が塗布されるため、インクジェットインキによる絵柄が保護される。しかし、感圧接着剤と反対側の面については、保護されていないため、感圧接着製品を巻き取った際に、感圧接着剤と反対側のインクジェットインキが、感圧接着剤の粘着性により取られてしまい、感圧接着剤側にインキ転写してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、インクジェットインキで印刷が施された感圧接着製品を巻き取った際に、感圧接着剤が塗布されていない面のインクジェットインキが、感圧接着剤側に転写することを防止することが可能な感圧接着製品、および感圧接着製品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の感圧接着製品は、シート状の基材の一方の側に感圧接着剤が塗布され、前記基材の前記感圧接着剤が塗布されていない側にインクジェットインキが塗布されて印刷層が形成された感圧接着製品であって、前記インクジェットインキの外側にインキ転写防止用透明ニスを塗布したことを特徴とする。
【0007】
請求項1の感圧接着製品によれば、感圧接着剤が塗布されていない側に塗布されたインクジェットインキの外側にインキ転写防止用透明ニスを塗布したので、インクジェットインキで印刷が施された感圧接着製品を巻き取った際に、感圧接着剤が塗布されていない面のインクジェットインキが、感圧接着剤側に転写することを防止することが可能となる。
【0008】
また、請求項2の感圧接着製品は、請求項1の感圧接着製品において、前記基材の前記印刷層と反対側の面にもインクジェットインキが塗布されて第2の印刷層が形成され、当該第2の印刷層の表面に前記感圧接着剤が塗布されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2の感圧接着製品によれば、両面にインクジェットインキが塗布されているので、同じインクジェットインキで両面を効率的に印刷することが可能となる。
【0010】
また、請求項3の感圧接着製品の製造方法は、基材の一方の面にインクジェットインキで印刷を行う段階と、基材の前記インクジェットインキで印刷された面と反対側に感圧接着剤を塗布する段階と、前記感圧接着剤を乾燥させる段階と、フレキソ印刷機により前記印刷されたインクジェットインキの外側にインキ転写防止用透明ニスを塗布する段階と、前記透明ニスを乾燥させる段階と、各製品単位でシートカットする段階と、前記製品単位で折り加工を行い、感圧接着剤が塗布された側を圧着させる段階を有することを特徴とする。
【0011】
請求項3の感圧接着製品の製造方法によれば、インキジェットインキで印刷を行った後、その反対側の面に感圧接着剤を塗布し、インキジェットインキの外側にインキ転写防止用透明ニスを塗布するようにしたので、インクジェットインキが、感圧接着剤側に転写することを防止する感圧接着製品を効率的に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インクジェットインキで印刷が施された感圧接着製品を巻き取った際に、感圧接着剤が塗布されていない面のインクジェットインキが、感圧接着剤側に転写することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る感圧接着製品の平面図および断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る感圧接着製品の製造方法による製造の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る感圧接着製品を示す図である。図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)におけるA−Aに対応する断面図である。
【0015】
図1(a)は、感圧接着製品を感圧接着剤層6側から見た平面図であり、点線で表現した2は、折り線を示している。折り線2は、感圧接着剤層6同士を圧着する際に折るための線であり、ミシン目等により形成することができる。
【0016】
本実施形態の感圧接着製品は、図1(b)に示すように、基材3の両面に、インクジェットインキによる印刷層4、5が形成され、印刷層5の上層に感圧接着剤層6、印刷層4の下層に透明ニス層7が形成された構成となっている。また、折り線2は、基材3に形成される。
【0017】
基材3としては、製品の目的、特徴に応じて、例えば、上質紙、中質紙、下級紙、色上質紙等の非塗工紙、アート紙、コート紙、軽量コート紙等の塗工紙、エンボス紙、キャストコート紙、クラフト紙等から適宜選択して使用することができる。
【0018】
感圧接着剤層6は、感圧接着剤を塗布することにより形成される。感圧接着剤としては、圧力を加えることにより接着するものであれば、公知のものを適宜選択して使用することができる。
【0019】
透明ニス層7は、透明ニスを印刷層4の表面に塗布することにより形成される。透明ニスとしては、所定の処理を施すことにより透明な被膜を形成することが可能なものであれば、公知のものを適宜選択して使用することができる。
【0020】
次に、本発明の一実施形態に係る感圧接着製品の製造方法について説明する。図2は、本実施形態に係る感圧接着製品の製造方法による製造の様子を示す製品断面図である。まず、所定のインクジェットインキを用いて、基材3に絵柄などの印刷を施し、印刷層4、5を形成する。これにより、図2(a)に示すように、基材3の両面に印刷層4、5が形成される。印刷層5の形成後、印刷層5の上面に個人情報等、秘密にすべき情報の印字を行う。
【0021】
次に、印刷層4、5が形成された基材3に折り線加工を施す。本実施形態では、印刷層5側から折り線加工を行う。これにより、図2(b)に示すように、基材3の印刷層5側に折り線2が形成される。折り線2としては、折るための補助となる線であれば、どのような加工態様であっても良く、本実施形態ではミシン目加工としている。
【0022】
折り線加工が行われたら、次に、印刷層5の上層に、感圧接着剤を塗布し、乾燥させる。これにより、図2(c)に示すように、印刷層5上に感圧接着剤層6が形成される。
【0023】
感圧接着剤層6が形成されたら、次に、印刷層4の表面(図2においては下側)に、透明ニスを塗布し、乾燥させる。これにより、図2(d)に示すように、印刷層4の下層に透明ニス層7が形成される。
【0024】
本実施形態による製造方法では、図2(d)に示したように、透明ニス層7を印刷層4の表面に形成した後、連続シートを巻き取るので、巻き取り時に透明ニス層7が印刷層4を保護し、印刷層4が感圧接着剤層6に直接接することがない。このため、感圧接着剤が塗布されていない側である印刷層4のインクジェットインキが、感圧接着剤層6に転写することを防止することが可能となる。
【0025】
ロール状に巻き取られた後、ロール状となったシートは、搬送され、各製品単位にカットされ、分離される。その後、各製品について、折り線2から折加工を行い、感圧接着剤層6同士を重ね合わせ、さらに圧力を加えて、対向する感圧接着剤層6の感圧接着剤を接着させる。これにより、図2(e)に示すように、印刷層5を基材3の内側にして接着が行われる。この結果、感圧接着製品1においては、印刷層5は、基材3により隠蔽されることになり、印刷された情報を外部から知ることはできなくなる。
【0026】
<実施例>
基材3には、三菱製紙IJ−S−G用紙110kg/四六を使用した。印刷層4、5の形成のための絵柄及び個人情報の印刷は、大日本スクリーン製のインクジェットプリンタTruepressJet520にて行った。なお、インクジェットインキは、水性顔料タイプで、印刷後は、80℃の熱ローラーでインキを乾燥させた。
【0027】
感圧接着剤層6の形成は、フレキソ印刷機にて、UV硬化型の感圧接着剤を塗布した後、UV乾燥することにより行った。UV硬化型の感圧接着剤として、互応化学製プラスサイズOP−5250を使用した。
【0028】
透明ニス層7の形成は、感圧接着剤層6と同様、フレキソ印刷機にて、UV硬化型の透明ニスを塗布した後、UV乾燥することにより行った。UV硬化型の透明ニスとして、DICグラフィック製ダイキュアクリアーUV−1601EMを使用した。また、透明ニスの塗布厚は、1〜10μmとすることが望ましい。塗布厚が1μm未満であると、印刷層4のインクジェットインキが、感圧接着剤層6に転写することを完全に防ぐことはできず、塗布厚が10μmを超えると、透明ニスの量が多すぎて、UV乾燥が悪くなり、生乾きの状態になり、べたつき不良(ブロッキング)の原因となる。
【0029】
透明ニス層7の形成後、ロール状のシートをカットして各製品単位に分離し、折加工機により折り線2で感圧接着剤層6同士を重ね合わせ、圧着させることで開封可能でインキ転写汚れのない感圧接着製品が作成された。実施例の方法で製造した製品は、インクジェットインキの転写もなく、圧着後の開封も問題ない製品に仕上がった。
【0030】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、印刷層5の絵柄や文字もインクジェットインキを用いて印刷したが、印刷層5の絵柄や文字は、インクジェットインキを用いず、他の手法により印刷したものであっても良い。
【符号の説明】
【0031】
1・・・感圧接着製品
2・・・折り線
3・・・基材
4、5・・・印刷層
6・・・感圧接着剤層
7・・・透明ニス層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材の一方の側に感圧接着剤が塗布され、前記基材の前記感圧接着剤が塗布されていない側にインクジェットインキが塗布されて印刷層が形成された感圧接着製品であって、
前記インクジェットインキの外側にインキ転写防止用透明ニスを塗布したことを特徴とする感圧接着製品。
【請求項2】
前記基材の前記印刷層と反対側の面にもインクジェットインキが塗布されて第2の印刷層が形成され、当該第2の印刷層の表面に前記感圧接着剤が塗布されていることを特徴とする請求項1に記載の感圧接着製品。
【請求項3】
基材の一方の面にインクジェットインキで印刷を行う段階と、
基材の前記インクジェットインキで印刷された面と反対側に感圧接着剤を塗布する段階と、
前記感圧接着剤を乾燥させる段階と、
フレキソ印刷機により前記印刷されたインクジェットインキの外側にインキ転写防止用透明ニスを塗布する段階と、
前記透明ニスを乾燥させる段階と、
各製品単位でシートカットする段階と、
前記製品単位で折り加工を行い、感圧接着剤が塗布された側を圧着させる段階と、
を有することを特徴とする感圧接着製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−975(P2013−975A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134133(P2011−134133)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】