説明

感材処理装置

【課題】感材を搬送する搬送機構と、搬送機構によって搬送中の感材に処理液を施す液浸部とを備え、液浸部には、処理液を施された感材の面を摩擦する摩擦手段が設けられている感材処理装置において、摩擦手段の搬送方向に沿った長さが比較的小さくても、摩擦手段による境界膜の破壊作用が十分に得られる感材処理装置を提供する。
【解決手段】搬送機構が、感材Pを液浸部90bに感材Pの一方の面が摩擦支持手段90bに押し付けられる傾斜姿勢で送り込む傾斜供給手段53,54を有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感材を搬送する搬送機構と、前記搬送機構によって搬送中の感材に処理液を施す液浸部とを備え、前記液浸部には、処理液を施された感材の面を摩擦する摩擦手段が設けられている感材処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の感材処理装置としては、本発明に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記された感材処理装置では、処理液を貯留した処理槽内(液浸部)の処理液中を搬送機構によって搬送される感材の乳剤面が、柔軟性起毛状部材(摩擦手段)によって摺擦される構成となっている。したがって、乳剤面に形成される境界膜が柔軟性起毛状部材によって破壊され、短時間でも感材を良好に処理できる。
【0003】
【特許文献1】特開平6−51481号公報(段落番号0033、0045、図4(a)、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記された感材処理装置では、感材は搬送機構によって摩擦手段の先端が形成する面に対して平行に送り込む構成となっているので、摩擦手段を搬送方向に沿って十分に長い範囲で配置しなければ、摩擦手段による境界膜の破壊作用が不十分となるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術による感材処理装置の持つ前述した欠点に鑑み、摩擦手段の搬送方向に沿った長さが比較的小さくても、摩擦手段による境界膜の破壊作用が十分に得られる感材処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、感材を搬送する搬送機構と、前記搬送機構によって搬送中の感材に処理液を施す液浸部とを備え、前記液浸部には、処理液を施された感材の面を摩擦する摩擦手段が設けられている感材処理装置であって、
前記搬送機構は、感材を前記液浸部に感材の一方の面が前記摩擦支持手段に押し付けられる傾斜姿勢で送り込む傾斜供給手段を有する点にある。
【0007】
したがって、本発明の第1の特徴構成による感材処理装置では、感材はその被処理面が傾斜供給手段によって摩擦支持手段に対して斜めに押し付けられながら液浸部に送り込まれるので、摩擦支持手段による境界膜の破壊作用がより確実となり、感材の処理効果が高められる。
【0008】
本発明の他の特徴構成は、前記搬送機構は感材を表裏両面から挟持して搬送する搬送ローラ対を有し、前記傾斜供給手段は、搬送ローラ対の間に形成される接線が前記液浸部における感材搬送面に対して傾斜配置された前記搬送ローラ対からなる点にある。
【0009】
本構成であれば、感材搬送面に対して傾斜配置された搬送ローラ対という簡単な構成で傾斜供給手段を実現できる。
【0010】
本発明のさらに他の特徴構成は、前記傾斜供給手段を構成する搬送ローラ対は、搬送ローラ対の間に形成される接線の感材搬送面に対する角度を調整可能に設けられている点にある。
【0011】
本構成であれば、感材搬送面に対して送り込まれる際の傾斜姿勢を、処理対象となる感材の特性に応じて変更することが可能となる。
【0012】
本発明の他の特徴構成は、前記搬送機構は感材を表裏両面から挟持して搬送する搬送ローラ対を有し、前記傾斜供給手段は、搬送ローラ対の間に形成される接線が前記液浸部における感材搬送面に対して感材の厚さ方向に変位配置された前記搬送ローラ対からなる点にある。
【0013】
本構成であれば、間に形成される接線が前記液浸部における感材搬送面に対して感材の厚さ方向に変位配置された搬送ローラ対という簡単な構成で傾斜供給手段を実現できる。
【0014】
本発明の他の特徴構成は、前記搬送機構と前記液浸部とは、感材を処理液内で上下方向に搬送可能な処理槽の外で処理する槽外処理ユニットを構成している点にある。
【0015】
本構成であれば、大きな処理槽に大量の処理液を貯留する必要がないので、処理槽内の処理液中を搬送機構によって搬送される上述した特許文献の構成に比して、少ない量の処理液で感材を処理できる。
【0016】
本発明の他の特徴構成は、前記液浸部は、前記搬送機構によって搬送される感材を面状に支持する面状摩擦手段を一面に備え、前記面状摩擦手段に処理液を供給する給液通路を有する処理モジュールからなり、一対の前記処理モジュールが、感材を挟んで対向配置されている点にある。
【0017】
本構成であれば、感材の表裏両面に対して処理液と面状摩擦手段とによる処理作用を同時に施すことが可能となって、感材の処理効率が高められる。
【0018】
本発明の他の特徴構成は、前記一対の前記処理モジュールは、互いに同一形状で互換可能であり、且つ、着脱自在である点にある。
【0019】
本構成であれば、同一形状の処理モジュールを、感材の表面用の処理モジュール、及び、感材の裏面用の処理モジュールに兼用できるので、個々に異なる形状の処理モジュールを用意する構成に比して感材処理装置の製作コストが安くなり、感材処理装置のメンテナンス作業も容易となる。
【0020】
本発明の他の特徴構成は、前記面状摩擦手段は、多数の毛状体が感材に向けて立設されたブラシ体からなり、前記ブラシ体は前記処理モジュールに対して着脱自在に、且つ、感材の搬送方向に沿った前後の向きを変更可能に支持されている点にある。
【0021】
本構成であれば、ブラシ体の毛状体が感材との継続的な摩擦作用によって、その先端が下流側に変位した湾曲状に永久変形しても、変形が少ない段階で前後逆向きになるように付け替えることによって、引き続き使用可能となるので、ブラシ体をより長期間にわたって使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明による最良の実施形態について図面を参照しながら説明する。
〔全体構成〕
図1に示す写真プリント装置は、一般にデジタルミニラボと称せられ、現像済みの写真フィルムFのコマ画像のデジタル信号化を行い、デジタル信号化された画像データの処理を行い、システム全体の基本的な制御を行うオペレートブロックA、及び、感光材料としての銀塩式の印画紙Pに対して露光処理と現像処理とを行い、乾燥処理を行った後に送り出すプリントブロックBを備えている。
【0023】
〔オペレートブロック〕
オペレートブロックAは、コンソール1に対し写真フィルムFのコマ画像を光電変換によりデジタル信号化して画像データとして取り込むフィルムスキャナ2と、各種情報を表示するディスプレイ3と、画像処理とプリントに必要な各種処理とを行う汎用コンピュータで成る画像処理装置4とを備えている。コンソール1の上面には画像処理装置4に対して情報を入力するためキーボード5と、ポインティングデバイスとして機能するマウス6とが備えられている。
【0024】
画像処理装置4は、CDやMO等のディスク型のメディアからの画像データを取得する、あるいは、半導体型のメディア(図示せず)からの画像データを取得するように夫々のメディアの構造に対応したメディアドライブ7を備えている。この画像処理装置4は、ディスプレイ3に表示に従ってキーボード5やマウス6を操作することにより、色補正やコントラスト補正等の画像処理ばかりでなく、プリントに関連する処理を実現するインタフェースを具備している。
【0025】
フィルムスキャナ2は、写真フィルムFのサイズに適合したフィルムキャリア2Aを光源部の上面に装着してスキャニングを開始することにより、写真フィルムFが長手方向に搬送され、この搬送と同期して写真フィルムFのコマ画像がズームレンズから上部に光電変換部に導かれ、この光電変換部においてR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に色分解したデジタル信号となる画像データとして取得するように構成され、取得された画像データは画像処理装置4に転送され保存される。
【0026】
〔プリントブロック〕
プリントブロックBは、図1及び図2に示すように、露光部Exと、現像部De(本発明の感材処理装置の一例)と、乾燥部Drとを暗箱構造の筐体10に収容した形でなる。また、乾燥処理の後に筐体10の上部の排出部11から送り出される印画紙Pを搬送ベルト12で水平方向に送り、その印画紙Pをソータ13のトレー13Aにオーダー単位で仕分けて集積するように構成されている。
【0027】
〔露光部〕
図2に示すように、露光部Exは、下部に配置された2つの印画紙マガジンM、Mと、この2つの印画紙マガジンMの一方からの印画紙Pを引き出すアドバンスローラ20と、プリントサイズの印画紙Pに切断するカッター21と、挟持搬送ユニット22によって供給された印画紙Pを副走査方向に搬送しながら露光ヘッドHで主走査方向に露光処理する露光搬送ユニット23と、この露光搬送ユニット23で露光された印画紙Pを送り出す後搬送ユニット24と、後搬送ユニット24から送り出される印画紙Pを主走査方向と副走査方向に変位可能なチャッカーCを用いて2列の振り分け経路に振り分ける振り分けユニット25と、振り分けられた印画紙Pを現像部Deに送り込む中継搬送ユニット26とを備えている。
【0028】
露光搬送ユニット23は印画紙Pを圧着する圧着状態と解除状態とに切り換え自在な複数の搬送ローラを備え、この複数の搬送ローラを圧着状態と解除状態とに切り換える形態で円滑な搬送を実現している。尚、ここで用いられている露光ヘッドHは、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色のレーザ光源からの光線を、縦軸芯周りで回転するポリゴンミラーで反射させ、主走査方向に走査する形態での露光を実現するものである。
乾燥ブロックDrは、現像ブロックDeから送り出される印画紙Pを排出部11に搬送するために複数の圧着型の搬送ローラ15と、この搬送ローラ15で搬送される印画紙Pにヒータで加熱された乾燥空気を供給するブロワー16とを備えている。
【0029】
〔現像部〕
現像部Deは、印画紙Pの搬送方向で上流側から下流側に向けて、発色現像処理液(CD)を貯留する1つの発色現像処理槽31、漂白定着処理液(BF)を貯留する1つの漂白定着処理槽32、及び、安定処理液(STB)を貯留する4つの安定処理槽33A、33B、33C、33Dを、この順序で形成した現像処理槽30を備えている。尚、処理液内で印画紙Pを上下方向に搬送可能な4つの安定処理槽33A、33B、33C、33Dを総称して安定処理槽33と称する。
【0030】
発色現像処理槽31、漂白定着処理槽32、4つの安定処理槽33A、33B、33C、33D夫々の側部には、図4に示すように、夫々の処理液が循環するサブタンク30Sを備えており、このサブタンク30Sの処理液をポンプ35からチューブ状の循環路36を介して夫々の処理槽に供給するように構成されている。現像処理槽30とサブタンク30Sとは処理液が自由に流通できるように連通しており、夫々の処理液の液面レベルLは等しい。
【0031】
処理液の液面レベルLの管理、処理液の補給、処理液の温度制御はこのサブタンク30Sで行われる。また、4つの安定処理槽33A、33B、33C、33Dについては、印画紙Pの搬送方向での最下流位置の安定処理槽33Dの液面が最も高く、上流側の安定処理槽ほど液面レベルLを低く設定したカスケード接続とすることによって、印画紙Pの搬送方向で最下流位置の安定処理槽33Dのサブタンク30Sに供給した安定処理液を、夫々のサブタンクにおいて印画紙Pの搬送方向の上流側のサブタンクに順次オーバーフローで供給する形態で、処理液の補給を行うように構成されている。
【0032】
また、4つの安定処理槽33A、33B、33C、33Dを、印画紙Pの搬送方向で上流のものから第1安定処理槽33A、第2安定処理槽33B、第3安定処理槽33C、第4安定処理槽33Dと称する。そして、図3に示すように発色現像処理槽31と、漂白定着処理槽32と、安定処理槽33との各々に印画紙Pを搬送する搬送機構を備えている。
【0033】
〔搬送機構〕
図2に例示するように、この搬送機構は、露光部Exの中継搬送ユニット26からの印画紙Pを受け入れる複数の圧着ローラ40を備えた導入ラック41と、この導入ラック41からの印画紙Pを発色現像処理槽31の発色現像処理液(CD)の液面上から液面中に送り込み、浸漬状態で処理の後に液面上に引き上げるように複数の圧着ローラ42によってUターン経路を形成する液中ラック43と、この液中ラック43からの印画紙Pを漂白定着処理槽32の液中ラック43に送り込むように複数の圧着ローラ44を備えたクロスオーバラック45とを備えている。
【0034】
また、図3に例示するように、この搬送機構は、安定処理槽33においては、漂白定着処理槽32の液中ラック43から液面上に送り出された印画紙Pを、第1、第2安定処理槽33A、33Bの上方位置の処理槽外において水平に送りながら安定処理液(STB)を供給することによって安定化処理を行う槽外処理ラック50(槽外処理ユニットの一例)を備えている。
【0035】
更に、同搬送機構は、この槽外処理ラック50からの印画紙Pを第3安定処理槽33Cの処理液中での浸漬状態で上下に搬送処理する液中ラック43と、この液中ラック43からの印画紙Pを送り出すクロスオーバラック45と、このクロスオーバラック45からの印画紙Pを第4安定処理槽33Dに送り込む液中ラック43と、この液中ラック43からの印画紙Pを、その印画紙Pに付着した安定処理液(STB)をスクイズすることにより除去しながら乾燥部Drに送り出すように複数の圧着ローラ46を備えたスクイズラック47とを備えている。
【0036】
漂白定着処理槽32の液中ラック43と、第3、第4安定処理槽33C、33Dの液中ラック43とは、発色現像処理槽31の液中ラック43と同じ構造と機能を有しており、印画紙Pを処理液の液面上から液面中に送り込み、浸漬状態で処理を行った後に液面上に引き上げる搬送によって処理を行う。
また、第3安定処理槽33Cと第4安定処理槽33Dとの中間位置に配置されたクロスオーバラック45は、発色現像処理槽31と漂白定着処理槽32との中間に配置されたクロスオーバラック45と同じ構造と機能を有する。
【0037】
〔槽外処理ラック〕
槽外処理ラック50は、漂白定着処理槽32と第3安定処理槽33Cとに架け渡す形態で配置されるケース51を備えると共に、このケース51の内部に、印画紙Pを下方の第1、第2安定処理槽33A,33Bの外で搬送する槽外搬送機構TEが設けられている。槽外搬送機構TEは、漂白定着処理槽32の液中ラック43から送り出された印画紙Pを受け入れる圧着型の導入ローラ対52と、この導入ローラ対52からの印画紙Pを第1安定処理槽33Aの直上に配置された第1槽外処理部T1に送り込む圧着型の前搬送ローラ対53と、第1槽外処理部T1から送り出された印画紙Pを次の、第2安定処理槽33Bの直上に配置された第2槽外処理部T2に送り込む圧着型の中間ローラ対54と、第2槽外処理部T2からの印画紙Pを送り出す後搬送ローラ対55と、この後搬送ローラ対55からの印画紙Pを下流側の第3安定処理槽33Cの液中ラック43に送り込む排出ローラ対56とを備えている。
【0038】
槽外処理ラック50の第1槽外処理部T1と第2槽外処理部T2には、上部ブロック57と下部ブロック58とが、印画紙Pの搬送経路(水平経路)を上下から挟むように配置されており、上部ブロック57の下面側と下部ブロック58の上面側には、印画紙Pに接触するブラシ90(摩擦支持手段の一例)が備えられている。
図5及び図6に示すように、ブラシ90は、概して矩形板状のブラシ本体90aと、ブラシ本体90aの片面に植え込まれた多数の束で構成された毛状体90bとからなる。上部ブロック57と下部ブロック58とは全く同一形状の部材であり、互いに互換使用可能な処理モジュールを構成している。上部ブロック57と下部ブロック58とは、ブラシ本体90aをネジなどで着脱可能に収容する凹状空間を有する。この凹状空間は、下部ブロック58において、ブラシ本体90aを取り付け後の状態でもブラシ本体90aの毛状体90bの植え込み面の上に、未だ安定処理液(STB)を貯留するための浅いトレー状の凹状空間V(液溜め手段の一例)が残るように、十分な深さを備えている。
【0039】
上部ブロック57と下部ブロック58には、安定処理液を毛状体90bの基端部位に供給するための複数の供給路57A、58A(給液手段)と、夫々の供給路57A、58Aに対して安定処理液(STB)を外部から供給するポート57B、58B(給液手段)とが形成されている。図4に示すように、ポート57B、58Bの下流側端部には、各ポート57B、58B内の1本の経路を複数の供給路57A、58Aに多岐化させるマニホールド部57M,58Mが形成されている。トレー状の凹状空間Vと毛状体90bとは協働して搬送中の印画紙Pに安定処理液を施す液浸部を構成している。また、上部ブロック57と下部ブロック58の搬送方向上流側の端部には、凹状空間V内の安定処理液を搬送方向上流側に排出させる開口部57E,58Eが形成されている。開口部57E,58Eから排出された安定処理液は直下の各安定処理槽33に自重で流下する形態で回収される。
【0040】
凹状空間Vに貯留される安定処理液は、毛状体90b(摩擦支持手段)の少なくとも基端部を安定処理液の液面下に沈潜させるので、毛状体90bの持つ毛管現象によって毛状体90bの先端側に盛り上がり、印画紙Pの面上に処理液が継続的に位置する処理液の絶対量を確保できる。さらに、凹状空間V内の処理液を連続的に交換する前記給液手段の作用と、印画紙Pの面を摩擦することで感材面近傍に形成される安定処理液の境界膜を連続的に掻き乱す毛状体90bの境界膜破壊作用とによって、印画紙Pの面上の安定処理液が頻繁に新鮮なものと入れ替えられるので、印画紙Pの面と処理液成分との処理反応が進み易くなる。
【0041】
図7に示すように、槽外搬送機構TEを構成する搬送ローラの中で、少なくとも第1槽外処理部T1の上流側に隣接する前搬送ローラ対53(傾斜供給手段)と、第2槽外処理部T2の上流側に隣接する中間ローラ対54(傾斜供給手段)とは、上下のローラの間に形成される接線が、下部ブロック58の毛状体90b(液浸部、摩擦支持手段)の先端の集合が形成する感材搬送面に対して下向きに3°〜10°の範囲で傾斜するように構成されている。したがって、これらのローラ対によって送り込まれる印画紙Pは、その乳剤面(下面)が毛状体90bの先端に押し付けられる傾斜姿勢で送り込まれる。その結果、毛状体90bによる境界膜の破壊作用がより確実となり、安定処理液による印画紙Pの乳剤面に対する処理効果が高められる。
因みに、ブラシ90を備えた上部ブロック57と下部ブロック58との位置関係について言及すると、前述のように傾斜配置された各搬送ローラ対53,54の位置ずれ状態に対応するように、印画紙Pの搬送方向に沿って、下部ブロック58は上部ブロック57よりも数mmだけ上流側に変位配置されている。
【0042】
槽外搬送機構によって概して水平に送られる印画紙Pの乳剤面(下面)は、下部ブロック58の各毛状体90bの先端によって摩擦および支持されながら、供給路58Aから搬送方向上流側に向かって送り出される安定処理液によって処理される。各毛状体90bは境界膜を破壊し続け、その結果、新たな新鮮な安定処理液を乳剤面付近に供給する役割を果たす。
他方、搬送機構によって概して水平に送られる印画紙Pの基材面(上面)は、上部ブロック57の各毛状体90bの先端によって摩擦および支持されながら、供給路57Aから搬送方向上流側に向かって送り出され、各毛状体90bの先端付近に供給される安定処理液によって処理される。供給路57Aから送り出される安定処理液は、自身の質量に基づいて印画紙Pの基材面上を搬送方向上流側に向かって流れ、各毛状体90bの先端付近に供給される。各毛状体90bは境界膜を破壊し続け、その結果、基材面付近に位置する安定処理液が常に新鮮な安定処理液と効率的に交換される。
【0043】
毛状体90bが片面に植え込まれたブラシ本体90aは、上部ブロック57と下部ブロック58から一旦取り外して、印画紙Pの搬送方向に沿った前後の向きを変更した状態で再び取り付け可能に支持されているので、毛状体90bが印画紙Pとの継続的な長期の摩擦作用によって、その先端が下流側に変位した湾曲状に永久変形しても、変形が少ない段階で前後逆向きになるように付け替えることによって、引き続き使用可能となるので、ブラシ90をより長期間にわたって使用することができる。
【0044】
第1槽外処理部T1の上部ブロック57のポート57Bと、下部ブロック58のポート58Bには、第1安定処理槽33Bのサブタンク30Sに貯留された安定処理液(STB)がポンプ35から供給管37を介して供給される。また、第2槽外処理部T2の上部ブロック57のポート57Bと、下部ブロック58のポート58Bには、第2安定処理槽33Bのサブタンク30Sに貯留された安定処理液がポンプ35から供給管37を介して供給される。尚、ポンプ35は処理槽の底部に処理液を供給する構造であるため、供給管37は対応する処理槽の底部に連結される。尚、第1、第2安定処理槽33A、33Bには、そこに貯留する安定処理液の量を減らすための減液ブロック80が収納されており、各供給管37の一部はこの減液ブロック80の内部に貫通形成されている。
上記の実施形態では、摩擦支持手段としてブラシ90を用いていたが、これに代えてスポンジ類や不織布等を用いることが可能である。また、ポンプ35が安定処理液(STB)の循環に用いるものを使用していたが、専用のポンプを安定処理槽の槽内に備えるように構成しても良い。
【0045】
図3に示すように、導入ローラ52と前搬送ローラ53との中間位置には、印画紙Pの基材面側を案内するガイド板71と、印画紙Pの乳剤面側を介して印画紙Pをガイド板71に押付ける弾性ブレード72とを備える。ガイド板71は印画紙Pの基材面から漂白定着処理槽32の漂白定着処理液(BF)を掻き取り、弾性ブレード72は印画紙Pの乳剤面から漂白定着処理槽32の漂白定着処理液(BF)を掻き取る。掻き取られた漂白定着処理液(BF)は漂白定着処理槽32に流れ落ちる。同様に、後搬送ローラ55と、排出ローラ56との中間位置には、印画紙Pの基材面側を案内するガイド板73と、印画紙Pの乳剤面側を介して印画紙Pをガイド板73に押付ける弾性ブレード74とを備えている。ガイド板73は印画紙Pの基材面から比較的疲労度の大きい安定処理液(STB)を掻き取り、弾性ブレード74は印画紙Pの乳剤面から比較的疲労度の大きい安定処理液(STB)を掻き取る。掻き取られた安定処理液(STB)は第2安定処理槽33Bに流れ落ちる。
【0046】
図2と図3から理解されるように、この写真プリント装置の現像部Deの基本的な構造は一般的な公知の現像部と基本的に同じである。但し、4つの安定処理槽33A、33B、33C、33Dの何れか2つの処理槽には、一般的な液中ラック43とクロスオーバラック45を備えず、代わりに、処理槽の上部に槽外処理ラック50を設けている。槽外処理ラック50では、印画紙Pが水平に搬送され、安定処理液(STB)を循環させるポンプ35から送られる安定処理液を、槽外処理ラック50の槽外処理部T1、T2に供給するように供給管37を備える程度の変更が施されている。そして、槽外処理ラック50において印画紙Pを水平に直線的に送りながら、その印画紙Pをブラシ90で摩擦しながら、安定処理液STBを供給するという積極的な処理を行うことにより処理時間を短縮できるものにしている。このように、従来からのプリントブロックBの安定処理槽33A、33B、33C、33D自身には大きな変更を加えない簡単な改造を行うことにより処理時間の短縮を実現している。
【0047】
特に、槽外処理ラック50の導入ローラ52と前搬送ローラ53は、第1安定処理槽33Aに液中ラック43を備えた場合に使用されるウォームギヤ60Aからの駆動力が伝えられるので、構造を複雑化させることがない。これと同様に後搬送ローラ55と排出ローラ56は、第2安定処理槽33Bに液中ラック43を備えた場合に使用されるウォームギヤ60Aからの駆動力が伝えられるので、構造を複雑化させることがない。
【0048】
〔別実施形態〕
〈1〉傾斜供給手段を構成する前搬送ローラ対53と中間ローラ対54とを、搬送ローラ対間に形成される接線の感材搬送面に対する角度を調整可能な形態で設けても良い。このように構成すれば、印画紙の硬さなどの特性に応じて最も適切な押し付け作用を与えることができる。
【0049】
〈2〉傾斜供給手段を構成する搬送ローラ対を、上述の実施形態のように、搬送ローラ対の間に形成される接線が感材搬送面に対して傾斜した構成ではなく、図8に例示するように、搬送ローラ対53,54の間に形成される接線を傾斜させる代わりに、搬送ローラ対53,54の間に形成される接線が前記液浸部における感材搬送面に対して印画紙Pの厚さ方向に変位するように配置しても良い。この構成の場合も、印画紙Pはその乳剤面(下面)が毛状体90bの先端に押し付けられる傾斜姿勢で送り込まれる。その結果、毛状体90bによる境界膜の破壊作用がより確実となり、安定処理液による印画紙Pの乳剤面に対する処理効果が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】感材処理装置を備えた写真プリント装置の外観斜視図
【図2】写真プリント装置に設けられたプリントブロックの概略正面図
【図3】プリントブロックの要部を示す破断正面図
【図4】プリントブロックの要部を示す破断側面図
【図5】槽外処理ラックの下部ブロックを示す破断正面図
【図6】下部ブロックの分解斜視図
【図7】槽外処理ラックの要部を示す破断正面図
【図8】槽外処理ラックの別実施形態を示す破断正面図
【符号の説明】
【0051】
4 画像処理装置
10 筐体
31 発色現像処理槽
32 漂白定着処理槽
33 安定処理槽
40 圧着ローラ
41 導入ラック
42 圧着ローラ
43 液中ラック(浸漬処理ユニット)
44 圧着ローラ
45 クロスオーバラック
50 槽外処理ラック(槽外処理ユニット)
51 ケース
52 導入ローラ対
53 前搬送ローラ対(傾斜供給手段)
54 中間ローラ対(傾斜供給手段)
55 後搬送ローラ対
56 排出ローラ対
57 上部ブロック(処理モジュール)
58 下部ブロック(処理モジュール)
71 ガイド板
72 弾性ブレード
73 ガイド板
74 弾性ブレード
90 ブラシ(摩擦支持手段)
90a ブラシ本体
90b 毛状体
A オペレートブロック
B プリントブロック
P 印画紙(感材)
Ex 露光部
De 現像部(感材処理装置)
Dr 乾燥部
H 露光ヘッド
TE 槽外搬送機構
T1 第1槽外処理部
T2 第2槽外処理部
V 凹状空間(液溜め手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感材を搬送する搬送機構と、前記搬送機構によって搬送中の感材に処理液を施す液浸部とを備え、前記液浸部には、処理液を施された感材の面を摩擦する摩擦手段が設けられている感材処理装置であって、
前記搬送機構は、感材を前記液浸部に感材の一方の面が前記摩擦支持手段に押し付けられる傾斜姿勢で送り込む傾斜供給手段を有する感材処理装置。
【請求項2】
前記搬送機構は感材を表裏両面から挟持して搬送する搬送ローラ対を有し、前記傾斜供給手段は、搬送ローラ対の間に形成される接線が前記液浸部における感材搬送面に対して傾斜配置された前記搬送ローラ対からなる請求項1に記載の感材処理装置。
【請求項3】
前記傾斜供給手段を構成する搬送ローラ対は、搬送ローラ対の間に形成される接線の感材搬送面に対する角度を調整可能に設けられている請求項2に記載の感材処理装置。
【請求項4】
前記搬送機構は感材を表裏両面から挟持して搬送する搬送ローラ対を有し、前記傾斜供給手段は、搬送ローラ対の間に形成される接線が前記液浸部における感材搬送面に対して感材の厚さ方向に変位配置された前記搬送ローラ対からなる請求項1から3のいずれか一項に記載の感材処理装置。
【請求項5】
前記搬送機構と前記液浸部とは、感材を処理液内で上下方向に搬送可能な処理槽の外で処理する槽外処理ユニットを構成している請求項1から4のいずれか一項に記載の感材処理装置。
【請求項6】
前記液浸部は、前記搬送機構によって搬送される感材を面状に支持する面状摩擦手段を一面に備え、前記面状摩擦手段に処理液を供給する給液通路を有する処理モジュールからなり、一対の前記処理モジュールが、感材を挟んで対向配置されている請求項5に記載の感材処理装置。
【請求項7】
前記一対の前記処理モジュールは、互いに同一形状で互換可能であり、且つ、着脱自在である請求項6に記載の感材処理装置。
【請求項8】
前記面状摩擦手段は、多数の毛状体が感材に向けて立設されたブラシ体からなり、前記ブラシ体は前記処理モジュールに対して着脱自在に、且つ、感材の搬送方向に沿った前後の向きを変更可能に支持されている請求項7に記載の感材処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−178614(P2007−178614A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375644(P2005−375644)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】