感染防止ブース
【課題】インフルエンザウイルスの失活に有効な相対湿度を保持し、適正な陰圧を保持し、患者を快適に収容することができる感染拡大防止ブースを提供する。
【解決手段】ベッドを覆うクリーンブースを室内に形成するための包囲体と、ブース内の空気を浄化して該ブース外に排出するための送風器と、ベッド上でのブース内の空気流のむらを解消すべく該ベッドに沿った空気循環流を生成するための補助ファンと、ブース内の湿度を調整するための加湿器とを含む感染防止ブース。包囲体により形成されるブース容量は6m3〜15m3であり、包囲体にはほぼ100cm2の空気取り入れ口が形成され、送風器は0.1m3/分〜1.28m3/分の送風能力を有し、補助ファンによる循環空気風量は、1m3/分〜2.5m3/分であり、加湿器による加湿水分量は0.4kg/hr以下であり、ブース内の相対湿度が45%RH〜65%RHに保持される。
【解決手段】ベッドを覆うクリーンブースを室内に形成するための包囲体と、ブース内の空気を浄化して該ブース外に排出するための送風器と、ベッド上でのブース内の空気流のむらを解消すべく該ベッドに沿った空気循環流を生成するための補助ファンと、ブース内の湿度を調整するための加湿器とを含む感染防止ブース。包囲体により形成されるブース容量は6m3〜15m3であり、包囲体にはほぼ100cm2の空気取り入れ口が形成され、送風器は0.1m3/分〜1.28m3/分の送風能力を有し、補助ファンによる循環空気風量は、1m3/分〜2.5m3/分であり、加湿器による加湿水分量は0.4kg/hr以下であり、ブース内の相対湿度が45%RH〜65%RHに保持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染防止ブースに関し、特に、インフルエンザに感染した患者を収容又は診察するのに適した感染防止ブースに関する。
【背景技術】
【0002】
患者を収容する簡易ブースの一つとして、陽圧型の簡易ブースが知られている(例えば、特許文献1参照)。この陽圧型の簡易ブースは無菌室として使用できる。また、他の簡易ブースとして陰圧型の簡易ブースがあり、この陰圧型の簡易ブースの例として、三機工業(株)から販売されている商品名「エアロガーディアン」と称されるユニット型陰圧隔離室がある。この隔離室によれば、その包囲体に開口部が設けられ、前記包囲体の前記開口部と反対側にはFFU(ファンフィルタユニット)が設けられている。FFUは、前記開口部を経て吸引した空気をHEPAフィルタで濾過した後、隔離室すなわち前記包囲体外に放出することにより、隔離室内を陰圧が保持する。したがって、この隔離室をインフルエンザに感染した患者を収容又は診察する感染防止ブースとして使用することができる。
【0003】
ところで、人が快適と感じる温度範囲は20℃〜26℃の温度範囲であり、またインフルエンザが失活し易い相対湿度範囲の研究結果に基づいて、建築物環境衛生管理基準では、40〜70%RHが最適相対湿度であると定められている。そこで、前記隔離室をインフルエンザ感染防止ブースとして使用する場合、隔離室内をインフルエンザが失活し易い適正な相対湿度に維持することが望ましい。
【0004】
しかしながら、従来の前記隔離室では、前記開口部を経て吸引される空気流量を考慮すると、前記隔離室内に適正な陰圧を保持するためには、FFUに3.3m3/分を超える大きな送風量が必要となる。そのため、この大送風量に対応して、適正な相対湿度の条件を満たすためには、極めて大容量の加湿器が必要となる。このような大容量の加湿器の適用は隔離室内に湿度のむらを生じ易い。また、この湿度むらを解消すべく、FFUの運転能力を増大すると、騒音問題や空気流の増大が隔離室に収容されるベッド上の患者の体感温度の低下を招くことから、患者に不快感を及ぼすおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−180724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、インフルエンザウイルスの失活に有効な相対湿度を保持しかつ適正な陰圧を保持することができ、患者を快適に収容することができる感染拡大防止ブースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る感染拡大防止ブースは、室内に配置されたベッドの全体を覆うクリーンブースを前記室内に形成するための包囲体と、前記クリーンブース内の空気を浄化し該クリーンブース外に排出するための送風器と、前記クリーンブース内に配置され、該クリーンブース内で空気循環流を生成するための補助ファンと、前記クリーンブース内の湿度を調整するための加湿器とを含む。前記包囲体により形成される前記クリーンブース容量は6m3以上かつ15m3以下であり、前記包囲体には実質的にほぼ100cm2の空気取り入れ口が形成され、前記送風器は0.1m3/分以上かつ1.28m3/分以下の送風能力で運転される。また、前記補助ファンによる循環空気風量は、1m3/分以上かつ2.5m3/分以下であり、前記加湿器による加湿水分量は0.4kg/hr以下であり、該加湿器により前記クリーンブース内の相対湿度が45%RH以上かつ65%RH以下に保持される。
【0008】
本発明に係る感染防止ブースでは、前記したように前記クリーンブース容量は6m3以上かつ15m3以下であり、前記包囲体には実質的にほぼ100cm2の空気取り入れ口が形成されることから、前記送風器を0.1m3/分以上かつ1.28m3/分以下の送風能力で運転することにより、前記ベッド上の患者に騒音や体感温度の低下を感じさせることなく、クリーンブース内を適正な陰圧に保持することができる。また、前記補助ファンによる循環空気風量を1m3/分以上かつ2.5m3/分以下に設定し、前記加湿器による加湿水分量を0.4kg/hr以下とすることにより、クリーンブース内に空気流のむらや湿度むらを生じさせることなく、加湿器により前記クリーンブース内の相対湿度を45%RH以上かつ65%RH以下に保持することができる。
【0009】
前記補助ファンによる前記循環空気流は、前記クリーンブース内の湿度のむらを解消する。これにより、前記加湿器からのより少ない加湿水分量で最適な相対湿度の実現が可能となる。
【0010】
前記加湿器にスチーム式加湿器を用いることにより、蒸気発生源となる水に含まれる種々の細菌を滅菌、消毒することができるので、これら細菌の放出を防止することができる。
【0011】
前記包囲体は前記ベッドの上方を覆う矩形の頂部と、該頂部の頂部から前記室内の床に垂れ下がる周壁部とを有し、該周壁部の下縁と前記床との間の間隙により前記空気取り入れ口を形成することができる。これに代えて、周壁部の下縁と前記床との間を密閉構造とし、前記周壁の一部に前記空気取入口を形成することができる。
【0012】
前記送風器に装着されるフィルタとして、準HEPA又はHEPAフィルタを装着することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記したように、前記ベッド上の患者に騒音や体感温度の低下を感じさせることなく、クリーンブース内に適正な陰圧を保持することができ、しかもインフルエンザウイルスの失活に有効な相対湿度を保持することができるので、患者を快適に収容することができ、インフルエンザの感染拡大を有効に阻止し得る感染拡大防止ブースが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る感染拡大防止ブースを概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明に係る感染拡大防止ブースの浮遊微粒子のリーク特性を実験結果に基づいて示すグラフである。
【図3】浮遊インフルエンザウイルスの感染価と相対湿度との関係を実験結果に基づいて示すグラフである。
【図4】測定値に基づく循環送風量と相対湿度との関係を示す表1である。
【図5】測定値に基づく循環送風量と相対湿度との関係を示す表2である。
【図6】測定値に基づく循環送風量と相対湿度との関係を示す表3である。
【図7】測定値に基づく循環送風量と相対湿度との関係を示す表4である。
【図8】測定値に基づく循環送風量と患者の顔付近の風速測定値との関係を示す表5である。
【図9】循環送風量と患者のドラフト感との関係を調査した測定結果を示す表6である。
【図10】本発明に係る感染拡大防止ブースの他の例を示す斜視図である。
【図11】図10に示したブースの一部を破断して示す横断面図である。
【図12】本発明に係る感染拡大防止ブースのさらに他の例を示す正面図であり、(a)は出入り口の閉鎖状態を示し、(b)は出入り口の開放状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る感染拡大防止ブース10は、図1に示されているように、ベッド12の外方を区画するための全体に矩形の枠体14と、ベッド12を収容する空間16を形成するために枠体14を覆って配置される例えば透明ビニールのような軟質合成樹脂からなる包囲体18と、例えば、フィルタ20aが内蔵されたFFU(ファンフィルタユニット)からなる送風器であって、空間16に陰圧を作用させるための送風器20と、空間16を加湿するための加湿器22と、空間内に循環空気流24を形成するための補助ファン26とを含む。
【0016】
ベッド12は、例えば縦(L1)×横(W1)×高さ(H1)が1940mm×845mm×310mmの大きさを有し、図示しないが、例えば病室の床上に設置される。枠体14は、前記床上に設置され、ベッド12の外方を覆うように、その縦、横及び高さに沿った縦(L2)×横(W2)×高さ(H2)が例えば2700mm×2300mm×2000mmの大きさの各枠寸法を有する。
【0017】
包囲体18は、枠体14の天井枠部に対応した矩形形状を有し該天井枠部に配置される矩形の頂部18aと、該頂部の一対の長辺から前記床上に連続的に垂れ下がる一対の側壁部分18bと、頂部18aの一対の短辺から前記床上に連続的に垂れ下がる一対の端壁部分18cとを備える。各側壁部分18bと各端壁部分18cとの互いに隣接する縦縁には、隣接する両縦縁を解除可能に結合するファスナ18dが設けられており、該ファスナの結合作用により、一対の側壁部分18b及び一対の端壁部18cにより、連続する環状の周壁部(18b、18c)が形成される。
【0018】
このファスナ18dの結合により、包囲体18はベッド12を収容する空間16を形成する。図1に示す例では、12.4m3の容積を有する空間16が形成される。また、少なくとも一つのファスナ18dは、隣接する両縦縁部18b及び18cの結合を解除することにより、空間16への患者28あるいは医師の出入りを許す。図1に示す例では、包囲体18の連続する周壁部(18b、18c)の下縁は、前記床上で空間16の外方へ約5cmの長さで折り曲げられており、この折曲げ下縁部18eと前記床との間に、実質的に空隙が形成されている。
【0019】
前記ベッド12上の患者28に閉塞感を与えることなく収容し得る最小寸法の包囲体18として、該包囲体の縦(L2)×横(W2)×高さ(H2)が例えば2000mm×1500mm×2000mmの大きさの各枠寸法を有する包囲体18及びそれに適する枠体14を用いることにより、6m3の最小容積の空間16を構成することができる。
【0020】
また、必要に応じて医療機器を空間16内に設置するために、感染拡大防止ブース10の縦(L2)×横(W2)×高さ(H2)を例えば3000mm×2000mm×2500mmに設定することができる。この場合、空間16は15m3の最大容積となる。この最大容積と前記最小容積との間で、空間16を所望の容積と、縦(L2)×横(W2)×高さ(H2)の所望寸法に設定することができる。
【0021】
図1に示す例では、FFUからなる送風器20は患者28の足元側に位置する一方の端壁部分18cに設置されている。送風器20に設けられるフィルタ20aは、定格流で0.3μmの粒径を有する粒子の捕集率が99.97%以上を示すHEPAフィルタが用いられている。
【0022】
インフルエンザウイルスの単体の大きさは0.1μmであるが、患者28の口や鼻から放出されるとき、体液由来の蛋白質に包まれた状態でウイルスが飛散し、浮遊する。そのため、実質的にウイルスの大きさは単体よりも数倍大きなサブミクロン粒子として浮遊するので、フィルタ20aとして、HEPAフィルタ及びこれよりも低精度の準HEPAフィルタを用いても、これら粒子を除去することができる。もちろんHEPAフィルタよりも高精度のUPLAフィルタを用いることができる。しかしながら、耐久性の点で、準HEPAフィルタ又はHEPAフィルタを採用することが望ましい。
【0023】
送風器20は、その作動により、空間16内の空気を吸引し、フィルタ20aでインフルエンザウイルスのような粒子を捕獲した後、この浄化された空気を包囲体18外に排出する。このとき、前記したように、包囲体18の折曲げ下縁部18eは、約5cmの長さの領域に渡って前記床上に折り曲げられている。そのため、折曲げ下縁部18eの一部が前記床に密着するが、その残部は前記床に密着することなく、部分的に間隙が保持されており、この間隙は総開口面積が100cm2程度の実質的な吸引開口として作用する。この間隙について、包囲体18の周壁部(18b、18c)の下縁がその全周にわたって前記床との間に1mmの均等な間隔を生じたと仮定しても、その総開口面積は100cm2に過ぎない。したがって、折曲げ下縁部18eを設けた場合、実質的に100cm2程度の小さな総開口面積が保持されていると考えられるからである。
【0024】
送風器20は、このような吸引開口を経て包囲体18内に空気を吸引する。また、感染拡大防止ブース10が通常設置される大部屋の病室内には、方向の定まらない10〜15cm/秒の熱対流や自然対流が発生する。この方向の定まらない空気流の向きの如何に拘わらず空間16に陰圧を保持する必要がある。したがって、前記吸引開口から逆流して吹き出す15cm/秒×100cm2の最大風量に対して陰圧を生成するために、送風器20には、この値を超える風量が必要になる。この積の値は、0.090m3/分となり、前記周壁部(18b、18c)のファスナ18d等から吸引される空気流量を考慮して、送風器20を0.1m3/分以上の送風能力で運転することにより、空間16を陰圧に確実に保持することが可能となる。
【0025】
この陰圧により、患者28から放出されたインフルエンザウイルスが包囲体18外に漏れ出すことを防止することができるので、空間16をクリーンブース空間として確実に機能させることができる。
【0026】
周壁部(18b、18c)の各折曲げ下縁部18eは、各側壁部分18b及び端壁部分18cの下縁部が前記床から浮き上がることを確実に防止し、この浮き上がりによって前記実行開口が100m2を超えることを確実に防止する作用をなす。したがって、折曲げ下縁部18eの長さを必要に応じて5cm以上とすることができる。また、図示のとおり、折曲げ下縁部18eを空間16外に向けて形成することに代えて、空間16内に向けて形成することができる。
【0027】
図2に示すグラフは、感染拡大防止ブース10の浮遊微粒子のリーク特性を示すグラフである。感染拡大防止ブース10として、6.3m3の容積の感染拡大防止ブース10が用いられ、該ブースには前記したと同様な吸引開口として作用する100cm2の総開口面積が設定された。また前記感染拡大防止ブース10を覆う実験用の覆いにより、感染拡大防止ブース10を収容する外チャンバが形成された。フィルタ20aとしてHEPAフィルタが採用された。
【0028】
感染拡大防止ブース10内に、ネブライザを用いて患者28の咳を模擬したウイルス粒子を1秒間噴霧した後、感染拡大防止ブース10内及び該ブース外すなわち前記外チャンバ内のそれぞれで、レーザパーティクルカウンタを用いて、粒子径が0.3μm以下の浮遊粒子数濃度を測定した。
【0029】
図2に示すグラフの横軸はウイルス粒子の噴霧後の経過時間(分)を示し、縦軸は捕獲された粒子数濃度(カウント数/1リットル空気)を示す。感染拡大防止ブース10に設けられた送風器20の運転流量がパラメータとして採用された。特性線30(30a、30b)、32(32a、32b)及び34(34a、34b)は、送風器20の運転流量が0リットル/分、97リットル/分、191リットル/分の場合の測定結果をそれぞれ示し、各特性線30a、32a、34a及び30b、32b、34bは、感染拡大防止ブース10内及び外でのそれぞれの測定値である。
【0030】
すなわち、特性線30a、30bは、送風器20の運転停止状態での感染拡大防止ブース10内外での粒子数濃度の変化を示す。粒子の噴霧直後では、前記ブース10内の粒子数濃度が急激に増大し、その後ほぼ一定値を保つ。これに対し、前記ブース10外では、特性線30bが特性線30aに近づくように、時間の経過に伴って粒子数濃度が前記ブース10内のそれに近づく。これは、感染拡大防止ブース10に前記粒子の漏れが生じていることを示す。
【0031】
他方、特性線32a、32bは、送風器20の運転流量を97リットル/分に設定した場合の前記ブース10内外での粒子数濃度の変化を示す。この運転状況では、時間の経過に拘わらずブース10外の粒子数濃度が10カウント/リットル空気以下に保持されている。これは、前記粒子に関して前記ブース10に実質的なリークが生じていないことを意味する。送風器20の運転流量を191リットル/分に設定した場合の特性線34a、34bも、特性線32a、32bと同様な傾向を示す。
【0032】
したがって、図2のグラフからも、前記したように、送風器20を0.1m3/分以上の送風能力で運転することにより、空間16を陰圧に確実に保持することができ、これにより、感染拡大防止ブース10外への0.3μm以下の粒子の漏れ出しが確実に防止される。その結果、空間16は、患者28から放出されるインフルエンザウイルスが包囲体18の外に排出されることを防止するクリーンブース空間として機能する。
【0033】
加湿器22は、水蒸気を空間16内に放出することにより、該空間の相対湿度を調整する。この相対湿度については、例えば「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(通称、ビル衛生管理法)では、人が快適と感じる20〜26℃の温度範囲で、相対湿度を40〜70%RHとすることが定められている。また、相対湿度とインフルエンザウイルスの失活との関係について、Schafferら(F.L.Schaffer, M.E. Soergel, and D.C.Straube, Survival of Airborne Influenza Virus: Effects of Propagating Host, Relative Humidity, and Comparison of Spray Fluids, Archives of Virology 51, 263-273(1976) by Springer-Verlag 1976)は、浮遊ウイルスの失活が50%RH〜55%RHで特に著しいことを報告している。
【0034】
今回、さらに相対湿度とインフルエンザウイルスの失活との関係を明らかにするために、図2に示すグラフを得たと同様な6.3m3の感染拡大防止ブース10内(温度は25℃)でネブライザを用いてウイルス粒子を1秒間噴霧した後、所定の時間経過後、サンプリング装置としてゼラチンフィルタを用いて感染拡大防止ブース10内の浮遊インフルエンザウイルスを捕獲し、その感染価を求めた。その実験結果が図3に示されている。なお、フィルタとしてゼラチンフィルタを用いることにより、1μm以下の大きさの浮遊粒子を確実に採取でき、ナノメータサイズの浮遊粒子を含めて1μm以下のどのような大きさの粒子をも98%以上を捕集できた。
【0035】
図3のグラフは、25℃の雰囲気における経過時間をパラメータとして、横軸が相対湿度(%RH)を示し、縦軸が感染価(PFU/40リットル空気)を示す。特性線36aは経過時間が零、すなわち初期値の感染価を示す。特性線36b〜36eは、それぞれ噴霧後の経過時間2、10、20及び30分の感染価を示す。初期値に比較して2桁以上の感染価の減少があれば、実質的に失活状態であると判断できる。したがって、20分経過後の特性線36dから明らかなように、20分の経過後であれば、相対湿度を45%RH〜65%RHに維持することにより、インフルエンザウイルスを失活させることができると考えられる。
【0036】
感染拡大防止ブース10内の温度を20、22及び26℃に変えて、それぞれで感染価と相対湿度との依存性についての関係を求めた。これらのいずれも、図3のグラフと同様な結果が得られた。
【0037】
したがって、快適性の点から、空間16内の温度を20〜26℃に保持することが望ましく、このとき、インフルエンザウイルスの失活を図り、また患者28の早期治癒を促す上で、加湿器22に組み込まれた湿度センサからの検出湿度に基づいて、空間16内の相対湿度を45%RH〜65%RHに維持される。
【0038】
また、相対湿度を45%RH〜65%RHに維持するための加湿器22は、患者28の頭部側の周壁部18cの内側に床置きされ、補助ファン26及び送風器20の送風量との関係で、空間16内に湿度むらを無くすために、0.4kg/時間以下の加湿水分量で運転される。
【0039】
この加湿器22による加湿水分量、0.4kg/時間の値の根拠について、次図4に示す表1〜図7に示す表4に沿って説明する。補助ファン26は、図1に示すように、ベッド12の長手方向への循環空気流24が生成されるように、送風器20と同様に患者28の足元側に、加湿器22と対角関係をなすように周壁部の18cの内側の頂部18aの近くに天吊りして配置された。感染拡大防止ブース10外の雰囲気は22℃、30%RHであり、加湿器22の制御設定値は55%RHである。
【0040】
表1〜4には、補助ファン26の循環送風量(m3/分)を0〜2.5m3/分まで、0.5m3/分毎に変えたときのそれぞれについて、一点での床からの高さ位置が60cm、120cm及び180cmのそれぞれで、計測された測定値が示されている。
【0041】
表1は、加湿器22の加湿量を0.2kg/時間に設定した場合の測定値の結果を示す。表2〜表5は、加湿器22の加湿量を0.3kg/時間、0.4kg/時間及び0.5kg/時間にそれぞれ設定した場合の測定値の結果を示す。ベッド12の高さを考慮すると、120cm及び180cmの高さ位置で、相対湿度にむらが見られなければ、むらが解消されていると考えられ、インフルエンザウイルスの失活に必要な相対湿度45%RH〜65%RHは、図4に示された表1、図5に示された表2及び図6に示された表3のそれぞれに※印を付したとおり、加湿器22の加湿量を各表についてそれぞれ0.2kg/時間、0.3kg/時間及び0.4kg/時間に設定し、補助ファン26の送風量を1〜2.5m3/分に設定したときに、実質的に相対湿度のむらが解消していると考えられる。
【0042】
したがって、相対湿度のむらを無くすために、補助ファン26の送風量は1〜2.5m3/分に設定する必要がある。また、感染拡大防止ブース10外の温度が22℃である場合、発熱源となる医療機器を空間16内に持ち込まない限り、該空間内のいずれの箇所においても温度は23〜26℃の快適範囲にあった。
【0043】
また、表1〜4には、前記したように、加湿器22の加湿量を0.2kg/時間から0.5kg/時間の間で変化させた例が示されているが、相対湿度をある値に保持するためには、送風器20の送風量と加湿器22の加湿水分量との間に比例関係が存在する。つまり、加湿水分量が大きいほど送風量を大きくして過剰相対湿度になるのを防ぎ、また加湿水分量が小さいほど送風量を小さくして相対湿度が不足することを防ぐ必要がある。表1〜4を求めた場合では、加湿器22が0.2kg/時間の水分量であるとき、送風器20には0.64m3/分の送風量が必要となる。同様に、加湿器22が0.3kg/時間、0.4kg/時間及び0.6kg/時間の水分量であるとき、送風器20には0.96m3/分、1.28m3/分及び1.6m3/分の送風量がそれぞれ必要となる。
【0044】
したがって、加湿器22の加湿水分量が0.4kg/時間とは、送風器20の送風量が1.28m3/分を意味する。表4に示すように、加湿水分量を0.5kg/時間とした場合には、送風器20の送風量は1.6m3/分となり、所望の相対湿度45%RH〜65%RHで、むらを解消できないことから、相対湿度のむらの解消する上で、送風器20の送風量を1.28m3/分以下に設定する必要がある。
【0045】
その結果、送風器20の送風量は、空間16内に必要な陰圧を保持するための下限送風量0.1m3/分と、空間16内の相対湿度むらを解消し得る上限値である1.28m3/分との間に設定する必要がある。
【0046】
さらに、補助ファン26の循環送風量と、感染拡大防止ブース10内のベッドベッド12上の患者28が顔で感じる体感温度の低下との関係を調べた。このときの送風器20の送風量は上限値である1.28m3/分に設定され、加湿器22による加湿水分量は0.4kg/時間に設定された。
【0047】
またベッド12の高さは50cmに設定され、このベッド12に横臥した被検者(28)の足元側から、斜め30度上向きに向けられた補助ファン26で空間16に循環空気流24を形成した。さらに、補助ファン26の方向は、直進した気流が被験者(28)の身体に直接到達しないように、補助ファン26の中心軸延長線が被検者(28)の身体から外れるようにした。
【0048】
体感温度の低下すなわちドラフト感の有無を判定した被験者(28)は5名であり、被験者の顔表面付近の気流風速測定値は、日本カノマックス製アネモマスター風速風量計6034と称される熱線風速計が用いられた。測定結果を表5に示す。
【0049】
表6は、被験者のドラフト感の有無判定の結果である。表5及び表6の対応から明らかなように、顔面付近の最大風速が15cm/秒を越えると、被験者(28)は不快なドラフト感を感じた。また、顔面付近の最大風速が15cm/秒を越えないようにするためにも、補助ファン26の作動下での空間16内に生じる循環空気流24の循環風量は2.5m3/分以下に保つ必要があった。さらに、補助ファン26を足元側から斜め30度下向き、頭側から斜め30度上向き及び頭側から斜め30度下向きに設置した例ついても、同様な結果が得られた。
【0050】
前記したところから明らかなように、
1.クリーンブース容量すなわち空間16の容量は、6m3以上かつ15m3以下とし、包囲体18には実質的にほぼ100cm2の空気取り入れ口を形成し、
2.送風器20を0.1m3/分以上かつ1.28m3/分以下の送風能力で運転し、
3.補助ファン26による循環空気風量24を1m3/分以上かつ2.5m3/分以下に設定し、
4.加湿器22による加湿水分量を0.4kg/hr以下とし、
5.クリーンブースすなわち空間16内の相対湿度を45%RH以上かつ65%RH以下に保持する。
【0051】
これにより、インフルエンザウイルスの失活に有効な相対湿度を保持しかつ適正な陰圧を保持することができ、送風器20に大きな送風量を設定することなく、また大きな送風量に起因する騒音問題を引き起こすことなく、患者を快適に収容することができる感染拡大防止ブースを提供することができる。
【0052】
騒音問題に関し、従来の前記した陰圧隔離ブースの送風器では、3.3m3/分の送風量が設定されており、40dBの騒音値が測定された。これに対し、感染拡大防止ブース10では、26dBの騒音値が測定されたに過ぎず、著しい静寂化が可能になった。
【0053】
また、本発明に係る感染拡大防止ブース10は、空気が乾燥し易い冬期において、一層優れた効果を発揮する。
【0054】
前記したところでは、感染拡大防止ブース10をインフルエンザウイルス用として使用する例について説明した。しかしながら、風邪の原因となるウイルスは200種以上もあると言われており、冬はインフルエンザウイルス(風邪とは区別するが)以外にコロナウイルスやライノウイルスが活動的になる。これらのウイルスもインフルエンザウイルスと同様に、脂質を含むエンべロープで覆われている。この構造のウイルスは空気中に浮遊すると、いずれも低温低湿の冬の環境には失活しにくく、長時間にわたり感染価を維持する。一方、高温多湿な環境である夏には、アデノウイルスやエコーウイルス(エンテロウイルス)、コクサッキーウイルスなどが活動する(小児ではこの他ヒトメタニューモウイルス(3〜6月)など)。これらのウイルスはエンベロープ膜を持たず、空気中に浮遊すると、いずれも高温多湿の夏の環境には失活しにくく、長時間にわたり感染価を維持する。
【0055】
本発明に係る感染拡大防止ブース10は、インフルエンザウイルスのようなエンベロープ膜を有するウイルスの加湿による失活のみならず、エンベロープ膜を持たず空気中に浮遊するといずれも高温多湿の夏の環境には失活しにくくかつ長時間にわたり感染価を維持するウイルスに対する失活をも可能にすべく、加湿器22に加えて、あるいはこれに代えて、乾燥器又は加湿、乾燥及び温度調整機能を有する空調機を配置することができる。
【0056】
包囲体18のファスナ18dに代えて、図10及び11に示すように、永久磁石38を例えば一つの側壁部分18bの両縦縁に固着し又は埋め込み、該永久磁石の磁力によって対応する枠体14の柱部14aに側壁部分18bの両縦縁を吸着保持することができる。この場合、枠体14の少なくとも柱部14aは、磁性体で構成する必要があり、柱部14aは矩形の横断面形状を有することが望ましい。また、この場合、図11に示すように、永久磁石38が設けられる両縦縁に隣接する各端壁部分18cの縦縁に前記柱部14aに巻きつく延長部18fを設け、この延長部18fの延長端を例えばマジックテープ(登録商標)18gで端壁部分18cの縦縁に固定することができる。
【0057】
さらに、図12(a)、(b)に示されているように、一つの側壁部分18bを縦方向に走る分割線に沿って分断し、その両切断縁部のそれぞれに永久磁石38をその異磁極が相互に向き合うように、各切断縁部に沿って配列し、この永久磁石38の磁力によって開閉可能な入口を形成することができる。
【0058】
図12に示す例においても、永久磁石38に代えて、ファスナ18dを適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、上記実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない限り、種々に変更することができる。例えば、包囲体18の周壁部(18b、18c)の下縁を床に密着させ、前記した間隙に代えて、例えば送風器20が設置された一方の端壁部分18cと反対側の端壁部分18cに、空気取り入れ口として100cm3程度の開口部を形成することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 感染拡大防止ブース
12 ベッド
14 枠体
16 空間(クリーンブース空間)
18 包囲体
20 送風器
22 加湿器
24 循環空気流
26 補助ファン
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染防止ブースに関し、特に、インフルエンザに感染した患者を収容又は診察するのに適した感染防止ブースに関する。
【背景技術】
【0002】
患者を収容する簡易ブースの一つとして、陽圧型の簡易ブースが知られている(例えば、特許文献1参照)。この陽圧型の簡易ブースは無菌室として使用できる。また、他の簡易ブースとして陰圧型の簡易ブースがあり、この陰圧型の簡易ブースの例として、三機工業(株)から販売されている商品名「エアロガーディアン」と称されるユニット型陰圧隔離室がある。この隔離室によれば、その包囲体に開口部が設けられ、前記包囲体の前記開口部と反対側にはFFU(ファンフィルタユニット)が設けられている。FFUは、前記開口部を経て吸引した空気をHEPAフィルタで濾過した後、隔離室すなわち前記包囲体外に放出することにより、隔離室内を陰圧が保持する。したがって、この隔離室をインフルエンザに感染した患者を収容又は診察する感染防止ブースとして使用することができる。
【0003】
ところで、人が快適と感じる温度範囲は20℃〜26℃の温度範囲であり、またインフルエンザが失活し易い相対湿度範囲の研究結果に基づいて、建築物環境衛生管理基準では、40〜70%RHが最適相対湿度であると定められている。そこで、前記隔離室をインフルエンザ感染防止ブースとして使用する場合、隔離室内をインフルエンザが失活し易い適正な相対湿度に維持することが望ましい。
【0004】
しかしながら、従来の前記隔離室では、前記開口部を経て吸引される空気流量を考慮すると、前記隔離室内に適正な陰圧を保持するためには、FFUに3.3m3/分を超える大きな送風量が必要となる。そのため、この大送風量に対応して、適正な相対湿度の条件を満たすためには、極めて大容量の加湿器が必要となる。このような大容量の加湿器の適用は隔離室内に湿度のむらを生じ易い。また、この湿度むらを解消すべく、FFUの運転能力を増大すると、騒音問題や空気流の増大が隔離室に収容されるベッド上の患者の体感温度の低下を招くことから、患者に不快感を及ぼすおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−180724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、インフルエンザウイルスの失活に有効な相対湿度を保持しかつ適正な陰圧を保持することができ、患者を快適に収容することができる感染拡大防止ブースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る感染拡大防止ブースは、室内に配置されたベッドの全体を覆うクリーンブースを前記室内に形成するための包囲体と、前記クリーンブース内の空気を浄化し該クリーンブース外に排出するための送風器と、前記クリーンブース内に配置され、該クリーンブース内で空気循環流を生成するための補助ファンと、前記クリーンブース内の湿度を調整するための加湿器とを含む。前記包囲体により形成される前記クリーンブース容量は6m3以上かつ15m3以下であり、前記包囲体には実質的にほぼ100cm2の空気取り入れ口が形成され、前記送風器は0.1m3/分以上かつ1.28m3/分以下の送風能力で運転される。また、前記補助ファンによる循環空気風量は、1m3/分以上かつ2.5m3/分以下であり、前記加湿器による加湿水分量は0.4kg/hr以下であり、該加湿器により前記クリーンブース内の相対湿度が45%RH以上かつ65%RH以下に保持される。
【0008】
本発明に係る感染防止ブースでは、前記したように前記クリーンブース容量は6m3以上かつ15m3以下であり、前記包囲体には実質的にほぼ100cm2の空気取り入れ口が形成されることから、前記送風器を0.1m3/分以上かつ1.28m3/分以下の送風能力で運転することにより、前記ベッド上の患者に騒音や体感温度の低下を感じさせることなく、クリーンブース内を適正な陰圧に保持することができる。また、前記補助ファンによる循環空気風量を1m3/分以上かつ2.5m3/分以下に設定し、前記加湿器による加湿水分量を0.4kg/hr以下とすることにより、クリーンブース内に空気流のむらや湿度むらを生じさせることなく、加湿器により前記クリーンブース内の相対湿度を45%RH以上かつ65%RH以下に保持することができる。
【0009】
前記補助ファンによる前記循環空気流は、前記クリーンブース内の湿度のむらを解消する。これにより、前記加湿器からのより少ない加湿水分量で最適な相対湿度の実現が可能となる。
【0010】
前記加湿器にスチーム式加湿器を用いることにより、蒸気発生源となる水に含まれる種々の細菌を滅菌、消毒することができるので、これら細菌の放出を防止することができる。
【0011】
前記包囲体は前記ベッドの上方を覆う矩形の頂部と、該頂部の頂部から前記室内の床に垂れ下がる周壁部とを有し、該周壁部の下縁と前記床との間の間隙により前記空気取り入れ口を形成することができる。これに代えて、周壁部の下縁と前記床との間を密閉構造とし、前記周壁の一部に前記空気取入口を形成することができる。
【0012】
前記送風器に装着されるフィルタとして、準HEPA又はHEPAフィルタを装着することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記したように、前記ベッド上の患者に騒音や体感温度の低下を感じさせることなく、クリーンブース内に適正な陰圧を保持することができ、しかもインフルエンザウイルスの失活に有効な相対湿度を保持することができるので、患者を快適に収容することができ、インフルエンザの感染拡大を有効に阻止し得る感染拡大防止ブースが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る感染拡大防止ブースを概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明に係る感染拡大防止ブースの浮遊微粒子のリーク特性を実験結果に基づいて示すグラフである。
【図3】浮遊インフルエンザウイルスの感染価と相対湿度との関係を実験結果に基づいて示すグラフである。
【図4】測定値に基づく循環送風量と相対湿度との関係を示す表1である。
【図5】測定値に基づく循環送風量と相対湿度との関係を示す表2である。
【図6】測定値に基づく循環送風量と相対湿度との関係を示す表3である。
【図7】測定値に基づく循環送風量と相対湿度との関係を示す表4である。
【図8】測定値に基づく循環送風量と患者の顔付近の風速測定値との関係を示す表5である。
【図9】循環送風量と患者のドラフト感との関係を調査した測定結果を示す表6である。
【図10】本発明に係る感染拡大防止ブースの他の例を示す斜視図である。
【図11】図10に示したブースの一部を破断して示す横断面図である。
【図12】本発明に係る感染拡大防止ブースのさらに他の例を示す正面図であり、(a)は出入り口の閉鎖状態を示し、(b)は出入り口の開放状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る感染拡大防止ブース10は、図1に示されているように、ベッド12の外方を区画するための全体に矩形の枠体14と、ベッド12を収容する空間16を形成するために枠体14を覆って配置される例えば透明ビニールのような軟質合成樹脂からなる包囲体18と、例えば、フィルタ20aが内蔵されたFFU(ファンフィルタユニット)からなる送風器であって、空間16に陰圧を作用させるための送風器20と、空間16を加湿するための加湿器22と、空間内に循環空気流24を形成するための補助ファン26とを含む。
【0016】
ベッド12は、例えば縦(L1)×横(W1)×高さ(H1)が1940mm×845mm×310mmの大きさを有し、図示しないが、例えば病室の床上に設置される。枠体14は、前記床上に設置され、ベッド12の外方を覆うように、その縦、横及び高さに沿った縦(L2)×横(W2)×高さ(H2)が例えば2700mm×2300mm×2000mmの大きさの各枠寸法を有する。
【0017】
包囲体18は、枠体14の天井枠部に対応した矩形形状を有し該天井枠部に配置される矩形の頂部18aと、該頂部の一対の長辺から前記床上に連続的に垂れ下がる一対の側壁部分18bと、頂部18aの一対の短辺から前記床上に連続的に垂れ下がる一対の端壁部分18cとを備える。各側壁部分18bと各端壁部分18cとの互いに隣接する縦縁には、隣接する両縦縁を解除可能に結合するファスナ18dが設けられており、該ファスナの結合作用により、一対の側壁部分18b及び一対の端壁部18cにより、連続する環状の周壁部(18b、18c)が形成される。
【0018】
このファスナ18dの結合により、包囲体18はベッド12を収容する空間16を形成する。図1に示す例では、12.4m3の容積を有する空間16が形成される。また、少なくとも一つのファスナ18dは、隣接する両縦縁部18b及び18cの結合を解除することにより、空間16への患者28あるいは医師の出入りを許す。図1に示す例では、包囲体18の連続する周壁部(18b、18c)の下縁は、前記床上で空間16の外方へ約5cmの長さで折り曲げられており、この折曲げ下縁部18eと前記床との間に、実質的に空隙が形成されている。
【0019】
前記ベッド12上の患者28に閉塞感を与えることなく収容し得る最小寸法の包囲体18として、該包囲体の縦(L2)×横(W2)×高さ(H2)が例えば2000mm×1500mm×2000mmの大きさの各枠寸法を有する包囲体18及びそれに適する枠体14を用いることにより、6m3の最小容積の空間16を構成することができる。
【0020】
また、必要に応じて医療機器を空間16内に設置するために、感染拡大防止ブース10の縦(L2)×横(W2)×高さ(H2)を例えば3000mm×2000mm×2500mmに設定することができる。この場合、空間16は15m3の最大容積となる。この最大容積と前記最小容積との間で、空間16を所望の容積と、縦(L2)×横(W2)×高さ(H2)の所望寸法に設定することができる。
【0021】
図1に示す例では、FFUからなる送風器20は患者28の足元側に位置する一方の端壁部分18cに設置されている。送風器20に設けられるフィルタ20aは、定格流で0.3μmの粒径を有する粒子の捕集率が99.97%以上を示すHEPAフィルタが用いられている。
【0022】
インフルエンザウイルスの単体の大きさは0.1μmであるが、患者28の口や鼻から放出されるとき、体液由来の蛋白質に包まれた状態でウイルスが飛散し、浮遊する。そのため、実質的にウイルスの大きさは単体よりも数倍大きなサブミクロン粒子として浮遊するので、フィルタ20aとして、HEPAフィルタ及びこれよりも低精度の準HEPAフィルタを用いても、これら粒子を除去することができる。もちろんHEPAフィルタよりも高精度のUPLAフィルタを用いることができる。しかしながら、耐久性の点で、準HEPAフィルタ又はHEPAフィルタを採用することが望ましい。
【0023】
送風器20は、その作動により、空間16内の空気を吸引し、フィルタ20aでインフルエンザウイルスのような粒子を捕獲した後、この浄化された空気を包囲体18外に排出する。このとき、前記したように、包囲体18の折曲げ下縁部18eは、約5cmの長さの領域に渡って前記床上に折り曲げられている。そのため、折曲げ下縁部18eの一部が前記床に密着するが、その残部は前記床に密着することなく、部分的に間隙が保持されており、この間隙は総開口面積が100cm2程度の実質的な吸引開口として作用する。この間隙について、包囲体18の周壁部(18b、18c)の下縁がその全周にわたって前記床との間に1mmの均等な間隔を生じたと仮定しても、その総開口面積は100cm2に過ぎない。したがって、折曲げ下縁部18eを設けた場合、実質的に100cm2程度の小さな総開口面積が保持されていると考えられるからである。
【0024】
送風器20は、このような吸引開口を経て包囲体18内に空気を吸引する。また、感染拡大防止ブース10が通常設置される大部屋の病室内には、方向の定まらない10〜15cm/秒の熱対流や自然対流が発生する。この方向の定まらない空気流の向きの如何に拘わらず空間16に陰圧を保持する必要がある。したがって、前記吸引開口から逆流して吹き出す15cm/秒×100cm2の最大風量に対して陰圧を生成するために、送風器20には、この値を超える風量が必要になる。この積の値は、0.090m3/分となり、前記周壁部(18b、18c)のファスナ18d等から吸引される空気流量を考慮して、送風器20を0.1m3/分以上の送風能力で運転することにより、空間16を陰圧に確実に保持することが可能となる。
【0025】
この陰圧により、患者28から放出されたインフルエンザウイルスが包囲体18外に漏れ出すことを防止することができるので、空間16をクリーンブース空間として確実に機能させることができる。
【0026】
周壁部(18b、18c)の各折曲げ下縁部18eは、各側壁部分18b及び端壁部分18cの下縁部が前記床から浮き上がることを確実に防止し、この浮き上がりによって前記実行開口が100m2を超えることを確実に防止する作用をなす。したがって、折曲げ下縁部18eの長さを必要に応じて5cm以上とすることができる。また、図示のとおり、折曲げ下縁部18eを空間16外に向けて形成することに代えて、空間16内に向けて形成することができる。
【0027】
図2に示すグラフは、感染拡大防止ブース10の浮遊微粒子のリーク特性を示すグラフである。感染拡大防止ブース10として、6.3m3の容積の感染拡大防止ブース10が用いられ、該ブースには前記したと同様な吸引開口として作用する100cm2の総開口面積が設定された。また前記感染拡大防止ブース10を覆う実験用の覆いにより、感染拡大防止ブース10を収容する外チャンバが形成された。フィルタ20aとしてHEPAフィルタが採用された。
【0028】
感染拡大防止ブース10内に、ネブライザを用いて患者28の咳を模擬したウイルス粒子を1秒間噴霧した後、感染拡大防止ブース10内及び該ブース外すなわち前記外チャンバ内のそれぞれで、レーザパーティクルカウンタを用いて、粒子径が0.3μm以下の浮遊粒子数濃度を測定した。
【0029】
図2に示すグラフの横軸はウイルス粒子の噴霧後の経過時間(分)を示し、縦軸は捕獲された粒子数濃度(カウント数/1リットル空気)を示す。感染拡大防止ブース10に設けられた送風器20の運転流量がパラメータとして採用された。特性線30(30a、30b)、32(32a、32b)及び34(34a、34b)は、送風器20の運転流量が0リットル/分、97リットル/分、191リットル/分の場合の測定結果をそれぞれ示し、各特性線30a、32a、34a及び30b、32b、34bは、感染拡大防止ブース10内及び外でのそれぞれの測定値である。
【0030】
すなわち、特性線30a、30bは、送風器20の運転停止状態での感染拡大防止ブース10内外での粒子数濃度の変化を示す。粒子の噴霧直後では、前記ブース10内の粒子数濃度が急激に増大し、その後ほぼ一定値を保つ。これに対し、前記ブース10外では、特性線30bが特性線30aに近づくように、時間の経過に伴って粒子数濃度が前記ブース10内のそれに近づく。これは、感染拡大防止ブース10に前記粒子の漏れが生じていることを示す。
【0031】
他方、特性線32a、32bは、送風器20の運転流量を97リットル/分に設定した場合の前記ブース10内外での粒子数濃度の変化を示す。この運転状況では、時間の経過に拘わらずブース10外の粒子数濃度が10カウント/リットル空気以下に保持されている。これは、前記粒子に関して前記ブース10に実質的なリークが生じていないことを意味する。送風器20の運転流量を191リットル/分に設定した場合の特性線34a、34bも、特性線32a、32bと同様な傾向を示す。
【0032】
したがって、図2のグラフからも、前記したように、送風器20を0.1m3/分以上の送風能力で運転することにより、空間16を陰圧に確実に保持することができ、これにより、感染拡大防止ブース10外への0.3μm以下の粒子の漏れ出しが確実に防止される。その結果、空間16は、患者28から放出されるインフルエンザウイルスが包囲体18の外に排出されることを防止するクリーンブース空間として機能する。
【0033】
加湿器22は、水蒸気を空間16内に放出することにより、該空間の相対湿度を調整する。この相対湿度については、例えば「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(通称、ビル衛生管理法)では、人が快適と感じる20〜26℃の温度範囲で、相対湿度を40〜70%RHとすることが定められている。また、相対湿度とインフルエンザウイルスの失活との関係について、Schafferら(F.L.Schaffer, M.E. Soergel, and D.C.Straube, Survival of Airborne Influenza Virus: Effects of Propagating Host, Relative Humidity, and Comparison of Spray Fluids, Archives of Virology 51, 263-273(1976) by Springer-Verlag 1976)は、浮遊ウイルスの失活が50%RH〜55%RHで特に著しいことを報告している。
【0034】
今回、さらに相対湿度とインフルエンザウイルスの失活との関係を明らかにするために、図2に示すグラフを得たと同様な6.3m3の感染拡大防止ブース10内(温度は25℃)でネブライザを用いてウイルス粒子を1秒間噴霧した後、所定の時間経過後、サンプリング装置としてゼラチンフィルタを用いて感染拡大防止ブース10内の浮遊インフルエンザウイルスを捕獲し、その感染価を求めた。その実験結果が図3に示されている。なお、フィルタとしてゼラチンフィルタを用いることにより、1μm以下の大きさの浮遊粒子を確実に採取でき、ナノメータサイズの浮遊粒子を含めて1μm以下のどのような大きさの粒子をも98%以上を捕集できた。
【0035】
図3のグラフは、25℃の雰囲気における経過時間をパラメータとして、横軸が相対湿度(%RH)を示し、縦軸が感染価(PFU/40リットル空気)を示す。特性線36aは経過時間が零、すなわち初期値の感染価を示す。特性線36b〜36eは、それぞれ噴霧後の経過時間2、10、20及び30分の感染価を示す。初期値に比較して2桁以上の感染価の減少があれば、実質的に失活状態であると判断できる。したがって、20分経過後の特性線36dから明らかなように、20分の経過後であれば、相対湿度を45%RH〜65%RHに維持することにより、インフルエンザウイルスを失活させることができると考えられる。
【0036】
感染拡大防止ブース10内の温度を20、22及び26℃に変えて、それぞれで感染価と相対湿度との依存性についての関係を求めた。これらのいずれも、図3のグラフと同様な結果が得られた。
【0037】
したがって、快適性の点から、空間16内の温度を20〜26℃に保持することが望ましく、このとき、インフルエンザウイルスの失活を図り、また患者28の早期治癒を促す上で、加湿器22に組み込まれた湿度センサからの検出湿度に基づいて、空間16内の相対湿度を45%RH〜65%RHに維持される。
【0038】
また、相対湿度を45%RH〜65%RHに維持するための加湿器22は、患者28の頭部側の周壁部18cの内側に床置きされ、補助ファン26及び送風器20の送風量との関係で、空間16内に湿度むらを無くすために、0.4kg/時間以下の加湿水分量で運転される。
【0039】
この加湿器22による加湿水分量、0.4kg/時間の値の根拠について、次図4に示す表1〜図7に示す表4に沿って説明する。補助ファン26は、図1に示すように、ベッド12の長手方向への循環空気流24が生成されるように、送風器20と同様に患者28の足元側に、加湿器22と対角関係をなすように周壁部の18cの内側の頂部18aの近くに天吊りして配置された。感染拡大防止ブース10外の雰囲気は22℃、30%RHであり、加湿器22の制御設定値は55%RHである。
【0040】
表1〜4には、補助ファン26の循環送風量(m3/分)を0〜2.5m3/分まで、0.5m3/分毎に変えたときのそれぞれについて、一点での床からの高さ位置が60cm、120cm及び180cmのそれぞれで、計測された測定値が示されている。
【0041】
表1は、加湿器22の加湿量を0.2kg/時間に設定した場合の測定値の結果を示す。表2〜表5は、加湿器22の加湿量を0.3kg/時間、0.4kg/時間及び0.5kg/時間にそれぞれ設定した場合の測定値の結果を示す。ベッド12の高さを考慮すると、120cm及び180cmの高さ位置で、相対湿度にむらが見られなければ、むらが解消されていると考えられ、インフルエンザウイルスの失活に必要な相対湿度45%RH〜65%RHは、図4に示された表1、図5に示された表2及び図6に示された表3のそれぞれに※印を付したとおり、加湿器22の加湿量を各表についてそれぞれ0.2kg/時間、0.3kg/時間及び0.4kg/時間に設定し、補助ファン26の送風量を1〜2.5m3/分に設定したときに、実質的に相対湿度のむらが解消していると考えられる。
【0042】
したがって、相対湿度のむらを無くすために、補助ファン26の送風量は1〜2.5m3/分に設定する必要がある。また、感染拡大防止ブース10外の温度が22℃である場合、発熱源となる医療機器を空間16内に持ち込まない限り、該空間内のいずれの箇所においても温度は23〜26℃の快適範囲にあった。
【0043】
また、表1〜4には、前記したように、加湿器22の加湿量を0.2kg/時間から0.5kg/時間の間で変化させた例が示されているが、相対湿度をある値に保持するためには、送風器20の送風量と加湿器22の加湿水分量との間に比例関係が存在する。つまり、加湿水分量が大きいほど送風量を大きくして過剰相対湿度になるのを防ぎ、また加湿水分量が小さいほど送風量を小さくして相対湿度が不足することを防ぐ必要がある。表1〜4を求めた場合では、加湿器22が0.2kg/時間の水分量であるとき、送風器20には0.64m3/分の送風量が必要となる。同様に、加湿器22が0.3kg/時間、0.4kg/時間及び0.6kg/時間の水分量であるとき、送風器20には0.96m3/分、1.28m3/分及び1.6m3/分の送風量がそれぞれ必要となる。
【0044】
したがって、加湿器22の加湿水分量が0.4kg/時間とは、送風器20の送風量が1.28m3/分を意味する。表4に示すように、加湿水分量を0.5kg/時間とした場合には、送風器20の送風量は1.6m3/分となり、所望の相対湿度45%RH〜65%RHで、むらを解消できないことから、相対湿度のむらの解消する上で、送風器20の送風量を1.28m3/分以下に設定する必要がある。
【0045】
その結果、送風器20の送風量は、空間16内に必要な陰圧を保持するための下限送風量0.1m3/分と、空間16内の相対湿度むらを解消し得る上限値である1.28m3/分との間に設定する必要がある。
【0046】
さらに、補助ファン26の循環送風量と、感染拡大防止ブース10内のベッドベッド12上の患者28が顔で感じる体感温度の低下との関係を調べた。このときの送風器20の送風量は上限値である1.28m3/分に設定され、加湿器22による加湿水分量は0.4kg/時間に設定された。
【0047】
またベッド12の高さは50cmに設定され、このベッド12に横臥した被検者(28)の足元側から、斜め30度上向きに向けられた補助ファン26で空間16に循環空気流24を形成した。さらに、補助ファン26の方向は、直進した気流が被験者(28)の身体に直接到達しないように、補助ファン26の中心軸延長線が被検者(28)の身体から外れるようにした。
【0048】
体感温度の低下すなわちドラフト感の有無を判定した被験者(28)は5名であり、被験者の顔表面付近の気流風速測定値は、日本カノマックス製アネモマスター風速風量計6034と称される熱線風速計が用いられた。測定結果を表5に示す。
【0049】
表6は、被験者のドラフト感の有無判定の結果である。表5及び表6の対応から明らかなように、顔面付近の最大風速が15cm/秒を越えると、被験者(28)は不快なドラフト感を感じた。また、顔面付近の最大風速が15cm/秒を越えないようにするためにも、補助ファン26の作動下での空間16内に生じる循環空気流24の循環風量は2.5m3/分以下に保つ必要があった。さらに、補助ファン26を足元側から斜め30度下向き、頭側から斜め30度上向き及び頭側から斜め30度下向きに設置した例ついても、同様な結果が得られた。
【0050】
前記したところから明らかなように、
1.クリーンブース容量すなわち空間16の容量は、6m3以上かつ15m3以下とし、包囲体18には実質的にほぼ100cm2の空気取り入れ口を形成し、
2.送風器20を0.1m3/分以上かつ1.28m3/分以下の送風能力で運転し、
3.補助ファン26による循環空気風量24を1m3/分以上かつ2.5m3/分以下に設定し、
4.加湿器22による加湿水分量を0.4kg/hr以下とし、
5.クリーンブースすなわち空間16内の相対湿度を45%RH以上かつ65%RH以下に保持する。
【0051】
これにより、インフルエンザウイルスの失活に有効な相対湿度を保持しかつ適正な陰圧を保持することができ、送風器20に大きな送風量を設定することなく、また大きな送風量に起因する騒音問題を引き起こすことなく、患者を快適に収容することができる感染拡大防止ブースを提供することができる。
【0052】
騒音問題に関し、従来の前記した陰圧隔離ブースの送風器では、3.3m3/分の送風量が設定されており、40dBの騒音値が測定された。これに対し、感染拡大防止ブース10では、26dBの騒音値が測定されたに過ぎず、著しい静寂化が可能になった。
【0053】
また、本発明に係る感染拡大防止ブース10は、空気が乾燥し易い冬期において、一層優れた効果を発揮する。
【0054】
前記したところでは、感染拡大防止ブース10をインフルエンザウイルス用として使用する例について説明した。しかしながら、風邪の原因となるウイルスは200種以上もあると言われており、冬はインフルエンザウイルス(風邪とは区別するが)以外にコロナウイルスやライノウイルスが活動的になる。これらのウイルスもインフルエンザウイルスと同様に、脂質を含むエンべロープで覆われている。この構造のウイルスは空気中に浮遊すると、いずれも低温低湿の冬の環境には失活しにくく、長時間にわたり感染価を維持する。一方、高温多湿な環境である夏には、アデノウイルスやエコーウイルス(エンテロウイルス)、コクサッキーウイルスなどが活動する(小児ではこの他ヒトメタニューモウイルス(3〜6月)など)。これらのウイルスはエンベロープ膜を持たず、空気中に浮遊すると、いずれも高温多湿の夏の環境には失活しにくく、長時間にわたり感染価を維持する。
【0055】
本発明に係る感染拡大防止ブース10は、インフルエンザウイルスのようなエンベロープ膜を有するウイルスの加湿による失活のみならず、エンベロープ膜を持たず空気中に浮遊するといずれも高温多湿の夏の環境には失活しにくくかつ長時間にわたり感染価を維持するウイルスに対する失活をも可能にすべく、加湿器22に加えて、あるいはこれに代えて、乾燥器又は加湿、乾燥及び温度調整機能を有する空調機を配置することができる。
【0056】
包囲体18のファスナ18dに代えて、図10及び11に示すように、永久磁石38を例えば一つの側壁部分18bの両縦縁に固着し又は埋め込み、該永久磁石の磁力によって対応する枠体14の柱部14aに側壁部分18bの両縦縁を吸着保持することができる。この場合、枠体14の少なくとも柱部14aは、磁性体で構成する必要があり、柱部14aは矩形の横断面形状を有することが望ましい。また、この場合、図11に示すように、永久磁石38が設けられる両縦縁に隣接する各端壁部分18cの縦縁に前記柱部14aに巻きつく延長部18fを設け、この延長部18fの延長端を例えばマジックテープ(登録商標)18gで端壁部分18cの縦縁に固定することができる。
【0057】
さらに、図12(a)、(b)に示されているように、一つの側壁部分18bを縦方向に走る分割線に沿って分断し、その両切断縁部のそれぞれに永久磁石38をその異磁極が相互に向き合うように、各切断縁部に沿って配列し、この永久磁石38の磁力によって開閉可能な入口を形成することができる。
【0058】
図12に示す例においても、永久磁石38に代えて、ファスナ18dを適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、上記実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない限り、種々に変更することができる。例えば、包囲体18の周壁部(18b、18c)の下縁を床に密着させ、前記した間隙に代えて、例えば送風器20が設置された一方の端壁部分18cと反対側の端壁部分18cに、空気取り入れ口として100cm3程度の開口部を形成することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 感染拡大防止ブース
12 ベッド
14 枠体
16 空間(クリーンブース空間)
18 包囲体
20 送風器
22 加湿器
24 循環空気流
26 補助ファン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に配置されたベッドの全体を覆うクリーンブースを前記室内に形成するための包囲体と、前記クリーンブース内の空気を浄化し該クリーンブース外に排出するための送風器と、前記クリーンブース内に配置され、該クリーンブース内で空気循環流を生成するための補助ファンと、前記クリーンブース内の湿度を調整するための加湿器とを含み、前記包囲体により形成される前記クリーンブース容量は6m3以上かつ15m3以下であり、前記包囲体には実質的にほぼ100cm2の空気取り入れ口が形成され、前記送風器は0.1m3/分以上かつ1.28m3/分以下の送風能力で運転され、前記補助ファンによる循環空気風量は、1m3/分以上かつ2.5m3/分以下であり、前記加湿器による加湿水分量は0.4kg/hr以下であり、該加湿器により前記クリーンブース内の相対湿度が45%RH以上かつ65%RH以下に保持されることを特徴とする感染拡大防止ブース。
【請求項2】
前記補助ファンによる前記循環空気流は、前記クリーンブース内の湿度のむらを解消する請求項1に記載のブース。
【請求項3】
前記加湿器はスチーム式加湿器である、請求項1に記載のブース。
【請求項4】
前記包囲体は前記ベッドの上方を覆う矩形の頂部と、該頂部の頂部から前記室内の床に垂れ下がる周壁部とを有し、該周壁部の下縁と前記床との間の間隙により前記空気取り入れ口が形成されている、請求項1に記載のブース。
【請求項5】
前記送風器には空気浄化のための準HEPA又はHEPAフィルタが装着されている、請求項1に記載のブース。
【請求項1】
室内に配置されたベッドの全体を覆うクリーンブースを前記室内に形成するための包囲体と、前記クリーンブース内の空気を浄化し該クリーンブース外に排出するための送風器と、前記クリーンブース内に配置され、該クリーンブース内で空気循環流を生成するための補助ファンと、前記クリーンブース内の湿度を調整するための加湿器とを含み、前記包囲体により形成される前記クリーンブース容量は6m3以上かつ15m3以下であり、前記包囲体には実質的にほぼ100cm2の空気取り入れ口が形成され、前記送風器は0.1m3/分以上かつ1.28m3/分以下の送風能力で運転され、前記補助ファンによる循環空気風量は、1m3/分以上かつ2.5m3/分以下であり、前記加湿器による加湿水分量は0.4kg/hr以下であり、該加湿器により前記クリーンブース内の相対湿度が45%RH以上かつ65%RH以下に保持されることを特徴とする感染拡大防止ブース。
【請求項2】
前記補助ファンによる前記循環空気流は、前記クリーンブース内の湿度のむらを解消する請求項1に記載のブース。
【請求項3】
前記加湿器はスチーム式加湿器である、請求項1に記載のブース。
【請求項4】
前記包囲体は前記ベッドの上方を覆う矩形の頂部と、該頂部の頂部から前記室内の床に垂れ下がる周壁部とを有し、該周壁部の下縁と前記床との間の間隙により前記空気取り入れ口が形成されている、請求項1に記載のブース。
【請求項5】
前記送風器には空気浄化のための準HEPA又はHEPAフィルタが装着されている、請求項1に記載のブース。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−124(P2012−124A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134821(P2010−134821)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【出願人】(504136993)独立行政法人国立病院機構 (37)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【出願人】(504136993)独立行政法人国立病院機構 (37)
【Fターム(参考)】
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