説明

感温型吸水性ポリマーの塗布方法

【課題】感温型吸水性ポリマーを内部に貫通孔等を有する多孔構造体に適切にコーティングする塗布方法を提供する。
【解決手段】感温点より低い温度で水を吸着し、前記感温点より高い温度で水を放出する感温型吸水性ポリマーFpを多孔構造体1に付着させる感温型吸水性ポリマーFpの塗布方法であって、前記感温型吸水性ポリマーFpと水との混合液Fを、前記混合液がゲル化するゲル化温度より高く、且つ、前記感温型吸水性ポリマーFpが水から分離する分離温度より低い付着処理温度で、前記感温型吸水性ポリマーFpを前記多孔構造体1に付着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感温点より低い温度で水を吸着し、前記感温点より高い温度で水を放出する感温型吸水性ポリマーを多孔構造体に付着させる感温型吸水性ポリマーの塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感温点より低い温度で水を吸着し、感温点より高い温度で水を放出する感温型吸水性ポリマーとして、アクリルアミド誘導体又はメタクリルアミド誘導体を重合させたものが知られている(特許文献1を参照)。このような感温型吸水性ポリマーを内部に貫通孔等を有する多孔構造体の表面に付着させたもの(以下、吸湿構造体と称する)は、空気を吹き付けることで、環境温度が低い場合には空気に含まれる水分を吸着し、環境温度が高い場合には空気に対して水分を放出するため、例えば、湿度を調節する調湿機の除湿ロータの一構成部材として利用することができる。
【0003】
【特許文献1】特開平2−196806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、この種の吸湿構造体を製造する場合、平面状の繊維シートに、感温型吸水ポリマーを塗布し、この繊維シートをロール状に巻き取ることで、ロール軸方向に貫通孔を有する吸湿構造体を得ていた。
しかしながら、このような製造手法を採用する場合は、繊維シートの巻き取り過程で、感応型吸水ポリマーが繊維シートから剥がれ脱離してしまうことがある。
さらに、このような製造手法は、巻き取り工程を必要とするため、例えば、円筒状に成形され、その軸方向に多数の貫通孔を有する多孔構造体を使用して、貫通孔内面に均等に感応型吸水ポリマーが分布した吸湿構造体を得ることはできなった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、多数の貫通孔を有する多孔構造体の貫通孔内面に、均等に感温型吸水性ポリマーを塗布することができる塗布方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、発明者らが感温型吸水性ポリマーを多孔構造体の貫通孔に均等に塗布するには、感温型吸水性ポリマーと水との混合液の温度管理を適切にすることが必要であるとの知見を見出して完成したものである。感温型吸水性ポリマーの塗布に際しては、前記混合液を得て、この混合液を多孔構造体構造物の貫通孔の一方の開口から他方の開口側へ送り込む必要があるが、この種の混合液は、その温度によって、混合液がゲル化するゲル化状態、両者が良好に混合された好適混合状態、さらには感温型吸水性ポリマーが水から分離した分離状態に変化することを新たに確認した。そして、これまで説明したように、多孔構造体の貫通孔の内面に斑なく感温型吸水性ポリマーを塗布するには、上記の好適混合状態で塗布する必要があることを確認したのである。
【0007】
即ち、上記目的を達成するための本発明に係る感温型吸水性ポリマーの塗布方法は、感温点より低い温度で水を吸着し、前記感温点より高い温度で水を放出する感温型吸水性ポリマーを多孔構造体に付着させる感温型吸水性ポリマーの塗布方法であって、
その特徴構成は、前記感温型吸水性ポリマーと水との混合液を、前記混合液がゲル化するゲル化温度より高く、且つ、前記感温型吸水性ポリマーが水から分離する分離温度より低い付着処理温度で、前記感温型吸水性ポリマーを前記多孔構造体に付着させる点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、塗布処理時に、混合液は、前記混合液がゲル化するゲル化温度より高い温度に維持される。これにより、混合液はゲル化により流動性を失うことを適切に抑制される状態となることができ、適度な流動性を保ちながら貫通孔等を有する多孔構造体の内部に流入することができる。さらに、混合液は感温型吸水性ポリマーが水から分離する分離温度よりも低い温度に維持される。これにより、混合液は感温型吸水性ポリマーと水とが適切に混合した状態を維持し、貫通孔内に流入させて塗布する場合に、斑なく塗布することが可能となる。以上より、混合液は、適切な流動性と分散性とを維持し、さらに適度な粘性を有する状態で多孔構造体の貫通孔内に導かれることとなるので、貫通孔に容易に流入させることができると共に、貫通孔の内面に塗布残留させることができる。この結果、感温型吸水性ポリマーを、多孔構造体に適切に塗布することができる。
【0009】
本発明に係る感温型吸水性ポリマーの塗布方法の更なる特徴構成は、
前記付着処理温度は、前記感温点より5℃高い温度を下限とし、かつ、前記感温点より10℃高い温度を上限とする範囲内の温度である点にある。
【0010】
本願に係るような感温型吸水性ポリマーでは、付着処理温度の下限であるゲル化温度及び上限である分離温度が感温点と一定の関係にあることを、本願発明者らは見出した。従って、感温点が判明している場合、本願にいう付着処理温度は、感温点と一定の関係の温度、例えば、感温点より5℃高い温度を下限とし、かつ、感温点より10℃高い温度を上限とする範囲内の温度に設定して、良好に塗布を実行することができる。
即ち、感温型吸水性ポリマーが必要以上に水を吸着する温度よりも高い温度として、粘性の高いゲル状態となることを抑制することができる。一方、感温型吸水性ポリマーが水を放出しきる温度よりも低い温度として、感温型吸水性ポリマーが適度に水を吸着した状態を作り出すことができる。
このように、感温型吸水性ポリマーと水との混合液を、感温型吸水性ポリマーの感温点を基準にして適切な温度範囲に設定することで、混合液を、適切な粘度に維持しながら分離することを抑制して、多孔構造体の貫通孔等に流入させることで、貫通孔等を有する多孔構造体に対して均等に感温型吸水性ポリマーを塗布することができる。
【0011】
本発明に係る感温型吸水性ポリマーの塗布方法の更なる特徴構成は、前記多孔構造体は、複数のハニカム状の貫通孔を有するものである点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、多孔構造体は、複数のハニカム状の貫通孔を有しているので、その表面積を大きいものとすることができる。当該多孔構造体に感温型吸水性ポリマーと水との混合液を塗布することで、大きい表面積に感温型吸水性ポリマーを付着させることができ、除湿性能の高い除湿ロータを作ることができる。また、多孔構造体の孔を貫通孔とすることで、比較的粘度の高い混合液を用いる場合であっても、例えば、貫通孔の一端側を高圧とし他端側を低圧とする等して、貫通孔に混合液を良好に塗布できる。
【0013】
本発明に係る感温型吸水性ポリマーの塗布方法の更なる特徴構成は、
両端に開口を有する筒状部材に前記多孔構造体を内設し、
前記混合液の温度を前記付着処理温度に維持した状態で、一方の前記開口から前記筒状部材へ流入させ、加圧状態で、前記混合液を前記多孔構造体の前記貫通孔の内部に流入させるとともに、他方の開口へ流出させて、前記混合液を前記貫通孔の内面に塗布する点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、両端に開口を有する筒状部材に多孔構造体を内設し、感温型吸水性ポリマーと水との混合液を一方の開口から筒状部材へ流入させ、加圧状態で、多孔構造体の貫通孔の内部に混合液を流入させることができる。これにより、自然状態では貫通孔に流入し難い混合液を、貫通孔に対して良好に流入させることができる。
例えば、多孔構造体を除湿ロータ等に使用する場合にあっては、感温型吸水性ポリマーの塗布面積を稼ぐため、ハニカム状の貫通孔の開口面積を小さくして多数の貫通孔を設けることが望まれる。このような場合であっても、上記特徴構成によれば、混合液を貫通孔に対して良好に流入させることができる。
【0015】
本発明に係る感温型吸水性ポリマーの塗布方法の更なる特徴構成は、前記混合液を前記多孔構造体の前記貫通孔の内部に流入させる際、
前記筒状部材の前記他方の開口側からの吸引操作により、前記混合液を流入させる点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、混合液が、多孔構造体の貫通孔の内部に流入する際、貫通孔における混合液の流入する側とは逆側から吸引されることとなるので、混合液をより一層良好に貫通孔に流入させ、塗布を行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
まず、本発明において、感温型吸水性ポリマーFpを多孔構造体1に塗布する塗布方法を実施するための塗布装置100について、図1に基づいて簡単に説明する。
塗布装置100は、一端に開口部2aを有すると共に他端の底開口部2bに連通接続する配管5を介して筒状部材2の内部の空気を吸引する吸引ポンプ4と、筒状部材2と吸引ポンプ4との間で吸引ポンプ4側の圧力を降下させる自動膨張弁6と、筒状部材2の開口部2aの側から底開口部2bの側へ筒状部材2の内周面に密接する状態で嵌込可能な圧入部材3とから構成されている。
当該塗布装置100は、多孔構造体1を開口2aから筒状部材2に対して内接し、筒状部材2の一端の開口部2aから、感温型吸水性ポリマーFpと水との混合液Fを流入した状態で用いる。
【0018】
上記多孔構造体1は、例えば、ハニカム形状の貫通孔1aを有するものが用いられる。尚、当該ハニカム形状は、広義のハニカム形状を意味しており、六角柱形状のものの他に三角柱形状のもの等も含むものとする。このような多孔構造体1は、新日本フェザーコア株式会社製のものが好適に用いられる。本実施形態の貫通孔1aは、その断面の底辺が2.4mm程度で高さが1.2mm程度の三角形形状のものが用いられる。
【0019】
上記感温型吸水性ポリマーFpは、感温点より低い温度で水を吸着し、前記感温点より高い温度で水を放出する感温型吸水性ポリマーであればどのようなものでも用いることができ、特に、アクリルアミド誘導体及びメタクリルアミド誘導体を重合させたものが好適に用いられる。例えば、ポリエチルアクリルアミド、ポリエチルメタクリルアミド、ポリn−プロピルアクリルアミド、ポリn−プロピルメタクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリイソプロピルメタクリルアミド、ポリシクロプロピルアクリルアミド、ポリシクロプロピルメタクリルアミド、ポリメチルエチルアクリルアミド、ポリジエチルアクリルアミド、ポリメチルイソプロピルアクリルアミド、ポリメチルn−プロピルアクリルアミド等が挙げられる。
本実施形態では、感温型吸水性ポリマーFpとして、例示的に、株式会社興人が提供しているサーモゲル300及びサーモゲル400を用いている。サーモゲル300は、N−イソプロピルアクリルアミドを主な成分としており、サーモゲル400は、N−イソプロピルアクリルアミドにアクリル酸ナトリウム、ダイアセトンアクリルアミド等を混合したものである。サーモゲル300の感温点は32℃であり、サーモゲル400の感温点は42℃である。
【0020】
次に、上記塗布装置100を用いた感温型吸水性ポリマーFpの多孔構造体1への塗布方法について説明する。
本発明の塗布方法では、まず、上述した感温型吸水性ポリマーFpと水とを重量パーセントで1:9に混合した混合液Fを、混合液Fがゲル化するゲル化温度より高く、且つ、感温型吸水性ポリマーFpが水から分離する分離温度より低い付着処理温度に維持する(温度維持工程)。これにより、感温型吸水性ポリマーFpが水を適度に吸着して、ゲル化して粘度が高くなることを抑制すると共に、感温型吸水性ポリマーFpが水と分離してしまうことを抑制して、上記混合液Fが適度な粘性を維持した状態とすることができる。
上記付着処理温度の下限であるゲル化温度は、感温型吸水性ポリマーFpの感温点に対して5℃程度高い温度となり、上記付着処理温度の上限である分離温度は、感温型吸水性ポリマーFpの感温点に対して10℃程度高い温度とする必要がある。
この付着処理温度の温度維持は、予め混合液の温度を具体的な付着処理温度より数度程度高くしておいて、付着処理時の温度が先の付着処理温度となるようにしても良いし、塗布装置の周部に温度調整機構を設けておいて温度を付着処理温度に維持する他、恒温室内での塗布作業としても良い。
【0021】
次に、塗布装置100の筒状部材2の内部に筒状部材2の内周面に嵌り込む外径を有する多孔構造体1を内設する(多孔構造体設置工程)。多孔構造体1は、内部の貫通孔1aが筒状部材2の一端の開口部2a側から他端の底開口部2b側へ貫通するように配置される。
次に、筒状部材2の開口部2aから付着処理温度に維持された感温型吸水性ポリマーFpを流し込む(ポリマー流込工程)。
【0022】
次に、筒状部材2の開口部2aから圧入部材3を筒状部材の内周面に密接する状態で開口部2a側から筒状部材2へ嵌込した後、当該圧入部材3を筒状部材2の底開口部2b側へ摺動し、筒状部材2の開口部2aと多孔構造体1との間を加圧する(加圧工程)。これにより、筒状部材2の開口部2aと多孔構造体1との間に位置する混合液Fを、多孔構造体1内部の連通孔1aに流入させることができる。
【0023】
混合液Fが多孔構造体1の連通孔1aに十分に流入した時点で、圧入部材3の底開口部2b側への摺動を停止する(加圧停止工程)。これにより、混合液Fの一部は、多孔構造体1内部の連通孔1aの内面に塗布された状態で残留する。
加圧停止工程の後、多孔構造体100を12時間程度100℃程度に維持して乾燥させる(乾燥工程)。これにより、多孔構造体1の貫通孔1aの内部に充填された混合液Fの水分が感温型吸水性ポリマーFpから放出され、感温型吸水性ポリマーFpが貫通孔1aの内壁に付着することとなる。
尚、上記加圧工程と同時に、図1に示すように、吸引ポンプ4により、多孔構造体1と筒状部材2の底開口部2bとの間の空気を吸引してもよい(吸引工程)。これにより、感温型吸水性ポリマーFpは、多孔構造体1の連通孔1aに対してより良好に流入することができる。
【0024】
以上により、感温型吸水性ポリマーFpが多孔構造体1に対して良好に塗布される。ちなみに、当該塗布方法を実際に用いて、多孔構造体1に感温型吸水性ポリマーFpを塗布した場合、380g程度のガラスペーパーから成る多孔構造体1に対して、300g程度の感温型吸水性ポリマーを塗布することができることが確かめられた。
【0025】
次に、図2及び図3を用いて、感温型吸水性ポリマーFpと水との混合液の状態の温度依存性についての実験結果を示す写真について説明する。
図2は、上述した感温型吸水性ポリマーFpとしてサーモゲル300(N−イソプロピルアミドからなる感温型吸水性ポリマー:感温点32℃)を用いた場合の実験結果を示す写真である。図2の(a)乃至(h)の写真は、当該サーモゲル300と水とを重量パーセントで10:90で混合した混合液Fを作り、当該混合液Fを瓶詰めして、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、及び60℃に維持した状態を側方から撮ったものである。
図2(a)乃至(d)に示すように、温度が比較的低い場合、サーモゲル300は水を吸着してゲル状態となる。一方、図2(f)及び(h)に示すように、温度が比較的高い場合、サーモゲル300は水を放出して水と分離した状態となる。この実験から、出願人は、サーモゲル300と水との混合液Fの付着処理温度の下限であるゲル化温度は、サーモゲル300の感温点32℃に対して5℃程度高い温度であり、付着処理温度の上限である分離温度は、サーモゲル300の感温点32℃に対して10℃程度高い温度であることと特定した。従って、この混合液に関しては、付着処理温度を37℃以上42℃以下とすることができ、多孔構造体の貫通孔への塗布においては、溶液温度を42℃として塗布を行うことが好ましい。
【0026】
図3は、感温型吸水性ポリマーFpとしてサーモゲル400(N−イソプロピルアクリルアミドにアクリル酸ナトリウム、ダイアセトンアクリルアミド等を混合し感温点を変更したもの:感温点42℃)を用いた場合の実験結果を示す写真である。サーモゲル300に替えてサーモゲル400を用いた点以外は、上記実験結果と同じ条件であるので説明を割愛する。
図3(a)乃至(f)に示すように、温度が比較的低い場合、サーモゲル400は水を吸着してゲル状態となる。一方、図3(h)に示すように、温度が比較的高い場合、サーモゲル400は水を放出して水と分離した状態となる。この実験から、出願人は、サーモゲル400と水との混合液の付着処理温度の下限であるゲル化温度は、サーモゲル400の感温点42℃に対して5℃程度高い温度であり、付着処理温度の上限である分離温度は、サーモゲル400の感温点42℃に対して10℃程度高い温度であることを特定した。従って、この混合液に関しては、付着処理温度を47℃以上52℃以下とすることができ、多孔構造体の貫通孔への塗布においては、溶液温度を52℃として塗布を行うことが好ましい。
【0027】
図4は、感温型吸水性ポリマーと水との混合液Fの粘度の温度依存性を示すグラフであり、図4(a)は、感温型吸水性ポリマーFpとしてのサーモゲル300と水とを重量パーセントで1:9の割合で混合した混合液Fに関するものであり、図4(b)は、感温型吸水性ポリマーFpとしてのサーモゲル400と水とを重量パーセントで1:9の割合で混合した混合液Fに関するものである。
図4(a)の実験結果によれば、サーモゲル300の感温点Ts32℃に対して5℃程度高いゲル化温度Tgから、サーモゲル300の感温点32℃に対して10℃程度高い分離温度Tdまでの付着処理温度Tpであれば、その粘度は、70乃至100mPa・s程度であることがわかる。
【0028】
また、図4(b)のサーモゲル400を用いた場合でも、サーモゲル400の感温点Ts42℃に対して5℃程度高いゲル化温度Tgから、サーモゲル400の感温点42℃に対して10℃程度高い分離温度Tdまでの付着処理温度Tpであれば、その粘度は、70乃至100mPa・s程度あることがわかる。
これにより、付着処理温度を、感温点を基準としたゲル化温度Tg以上分離温度Td以下の温度とすることで、サーモゲルと水との混合液Fの粘度は、混合液Fが複数の貫通孔1aに流入可能であると共に流入後に貫通孔1aに塗布された状態で残る粘度とすることができる。
【0029】
〔別実施形態〕
(1)多孔構造体1の貫通孔1aは、多孔構造体1に形成される表面積をなるべく大きくとる観点からは、ハニカム形状が好ましい。しかしながら、当該貫通孔1aは、ハニカム形状に限定されるものではなく、多孔構造体1が筒状部材2に嵌込された際、筒状部材2の一端から他端に対して連通する形状であれば、いかなる形状のものであってもよい。
【0030】
(2)上記実施形態において、感温型吸水性ポリマーFpと水との混合割合は、重量パーセントで1:9の混合割合としたが、別に他の混合割合にしてもよい。他の混合割合にした場合、混合液の粘度が変化することとなるので、これに伴って付着処理温度を適切に調整することが必要となる。
【0031】
(3)上記実施形態において、サーモゲル400の感温点は42℃であるが、感温型吸水性ポリマーFpの感温点を他の温度に変更してもよい。このようにN−イソプロピルアクリルアミドに対するアクリル酸ナトリウムやダイアセトンアクリルアミド等の混合割合を変化させて感温点を変更する場合でも、上記実施形態の如く、当該感温点に対して、ゲル化温度及び分離温度を適切に設定することで、感温型吸水性ポリマーと水との混合液の粘度を貫通孔への付着に適したものとすることができ、良好な塗布を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本願発明の感温型吸水性ポリマーの塗布方法は、感温型吸水性ポリマーを内部に貫通孔等を有する多孔構造体に適切にコーティングする塗布方法として、有効に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の塗布方法を実施する塗布装置の模式図
【図2】サーモゲル300の水の吸着状態を示す実験結果を示す写真
【図3】サーモゲル400の水の吸着状態を示す実験結果を示す写真
【図4】サーモゲル300及びサーモゲル400と水との混合液の粘度の温度依存性を示すグラフ図
【符号の説明】
【0034】
1 :多孔構造体
1a :貫通孔
2 :筒状部材
2a :開口部
2b :底開口部
3 :圧入部材
4 :吸引ポンプ
F :混合液
Fp :感温型吸水性ポリマー
100:塗布装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感温点より低い温度で水を吸着し、前記感温点より高い温度で水を放出する感温型吸水性ポリマーを多孔構造体に付着させる感温型吸水性ポリマーの塗布方法であって、
前記感温型吸水性ポリマーと水との混合液を、前記混合液がゲル化するゲル化温度より高く、且つ、前記感温型吸水性ポリマーが水から分離する分離温度より低い付着処理温度で、前記感温型吸水性ポリマーを前記多孔構造体に付着させる感温型吸水性ポリマーの塗布方法。
【請求項2】
前記付着処理温度は、前記感温点より5℃高い温度を下限とし、かつ、前記感温点より10℃高い温度を上限とする範囲内の温度である請求項1に記載の感温型吸水性ポリマーの塗布方法。
【請求項3】
前記多孔構造体は、複数のハニカム状の貫通孔を有するものである請求項1又は2に記載の感温型吸水性ポリマーの塗布方法。
【請求項4】
両端に開口を有する筒状部材に前記多孔構造体を内設し、
前記混合液の温度を前記付着処理温度に維持した状態で、一方の前記開口から前記筒状部材へ流入させ、加圧状態で前記混合液を前記多孔構造体の前記貫通孔の内部に流入させるととともに、他方の開口へ流出させて、前記混合液を前記貫通孔の内面に塗布する請求項3に記載の感温型吸水性ポリマーの塗布方法。
【請求項5】
前記混合液を前記多孔構造体の前記貫通孔の内部に流入させる際、
前記筒状部材の前記他方の開口側からの吸引操作により、前記混合液を流入させる請求項4に記載の感温型吸水性ポリマーの塗布方法。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−137184(P2010−137184A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317550(P2008−317550)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】