説明

感温変色チューブ

【課題】 感温変色チューブを流体の温度変化に感応して多段階に発色、変色、消色するようにする。
【解決手段】 流体2が流動する中空内部を有する基材3に感温変色性色素材4を混入し、前記中空内部を流動する流体2の温度変化に前記感温変色性色素材4を感応させ、感温変色チューブ1を多段階に発色、変色、消色させる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
この考案は、液体、気体、粉体等の流体が流動するチューブ、ホース、パイプ等に係るものであって、詳しくは流体の温度変化に感応して発色、変色、消色する感温変色チューブに関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、チューブ、ホース、パイプ等(以下、チューブ等と略す)は、その素材の有する耐熱及び耐寒温度や諸特性の範囲内で、低温、高温、その他の特性を有する様々な液体、気体、粉体等の流体を所定の箇所にまで導き流す誘導路として各分野で広範囲に使用されているが、通常、このチューブ等は、様々な色合いの顔料が素地内に混入され、又は、様々な色合いの塗料が素地に塗布されるなどして着色されている。また、必要に応じては、素地内にカーボンブラック等が混入されて着色されていることもある。これら着色の目的は、主に、視覚でその色合いを楽しむことや、素地色とは違った高級感、清潔感を付与することや、素材の補強等のためになされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このチューブ等の使用目的によっては、内部を流動する流水が身体等に触れ、特に、その流水が熱水であるときには火傷等の皮膚外傷を受けることがあり、身体の安全性の良否を事前に確認する必要が生じる場合がある。例えば、浴室において、給水・給湯管の水出箇所からシャワーホース内を流水してシャワーノズルから冷水、温水、熱水が浴び水として排水されるが、シャワーノズルからの浴び水は、水温の異なる冷水と熱水を切り換えるバルブ切り換えや、ユニットバス式のように冷水用蛇口と熱水用蛇口の2つの蛇口をおよその見当で共に開栓して混水することによって適温に温度調節されている。このとき、バルブ切り換えによると、冷水から熱水に、逆に熱水から冷水に切り換えた場合に、浴び水の温度変化する経過時間を誤ることによって熱水を浴びることがある。一方、冷水用蛇口と熱水用蛇口を共に開栓する場合には、微調節して適温の浴び水を作る感が鈍って必要以上に熱せられた熱水を誤って作って浴びることがある。
【0004】
また、太陽熱を利用した温水器では、季節、その日の日照時間、最高気温によって温水器内の貯水の水温が異なるので、特に、気温の高い夏季等になると40°から60°に温度上昇することが知られており、この温水器で作られた温水を浴槽等に連結ホース等を用いて注ぎ込んで風呂水とする場合、誤って熱水を素手で触れる危険性が生じる。
【0005】
このような危険は、単に着色されて流体を誘導する目的のみを有し、チューブ等自体に何の安全対策も施されていないことに起因するものである。そこで、チューブ等の内部を流動する流水の水温を確認することが最重要となり、温度変化を視認でき、熱水等の危険温度を容易に確認できるような技術の開発が要望されている。
【0006】
この考案は、上記事情に鑑みてなされたもので、温度変化に感応して多段階に発色、変色、消色する所謂感温変色性色素を用いて、流体の温度変化を視認することができる感温変色チューブを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、その手段として、請求項1記載の感温変色チューブは、流体が流動する中空内部を有する基材に感温変色性色素材が混入され、前記中空内部を流動する流体の温度変化に前記感温変色性色素材が感応して多段階に発色、変色、消色することにある。
【0008】
ここで、流体とは、水、油等の液体や、空気等の気体、粉末状の粉体等を意味する。そして、基材としては、天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマー、合成樹脂からなる成形物が挙げられる。また、チューブは、ホース、パイプを含む意味である。
【0009】
請求項2記載の感温変色チューブは、上記の基材に、メッシュ状又はスパイラル状に織られた細線材からなる補強層を埋設したものである。ここで、細線材とは合成繊維又は針金等を意味する。
【0010】
請求項3記載の感温変色チューブは、上記の基材が、その中空内部を流動する流体の温度変化に感応して多段階に発色、変色、消色する感温変色性色素材が混入された外側層と、該外側層の内側に形成された耐食層とからなり、これら外側層と耐食層との間に上記の補強層を介在させたものである。ここで、耐食層とは、流体が有機化合物や強酸からなる薬品類であっても腐食されることのない材質又は被膜を意味する。
【0011】
【この考案の実施の形態】
以下、この考案の実施の一形態について、図に基づいて説明する。この感温変色チューブ1は、例えば、図1に示すように、天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマー、合成樹脂等を素材とする流体2が流動する中空内部を有する基材3に、温度変化に感応する所謂感温変色性色素材4が混入され、径が小さく伸縮性の高いチューブ、比較的に径が大きく柔軟性を有するホース、硬質なパイプ等に成形されたものである。主に、基材3を溶融して感温変色性色素材4を均一に混入し、これを圧縮成形、抽出成形、押し出し成形等の成形方法によって得たものである。
【0012】
上記感温変色性色素材4は、公知である微小カプセル化をしたものでもよく、その組成としては、例えば、発色剤としての電子供与性呈色性有機化合物と、変色剤としてのフェノール性水酸基含有化合物と、消色作用を有するアルコール類やエステル類との組み合わせ等が挙げられるが限定されるものではない。また、ここでは、流体2の所定の温度に感応した際の発色は、例えば、5°刻み等の温度変化毎によって多段階に変色し、又は、消色するように設定されており、これらは可逆的に進行する。
【0013】
このように成形される感温変色チューブ1は、例えば、図2に示すように、浴室のシャワー設備でシャワーホース5として使用することができる。具体的には、ユニットバス式の浴室においては、給水・給湯管の水出箇所と通じるように、洗面器6の一部分にシャワーノズル7を有するシャワーホース5が連結されているが、この場合に有効に機能を発揮する。通常、洗面器6に取付けられた切り換えレバー8をシャワー側に開栓すると共に、冷水用蛇口9と熱水用蛇口10とを共に開栓すると給水・給湯管の水出箇所から適温の水が混水され、シャワーホース5を通じてシャワーノズル7から浴び水が排水されるが、このとき、シャワーホース5内を流水する浴び水の温度によってシャワーホース5自体は素地色から所定の色に発色することになる。
【0014】
ここで、例えば、予め、浴び水の適温を40°とし、その適温を基準にして±5°の温度変化を想定して35°以下を低温水、45°以上を危険温度と改め、これらの温度に感応する感温変色性色素材4によってシャワーホース5自体が35°以下の低温水で任意の色に発色し、40°の適温で中間色に変色し、45°以上の危険温度で消色(素地色等)するという作用設定を行った場合、シャワーノズル7から排水される浴び水が適温であるか、危険温度であるのか、低温水であるのかが容易に視認することが可能となって火傷等の皮膚外傷を避けることができる。また、これらの色の変化は、それぞれの前記した温度域で消色、中間色、発色へと可逆的に進行するので、視認性が安定している。尚、これら温度設定や発色する色具合は適宜選択されるものであり、その温度変化の想定も±3°、±4°、±6°、±7°等でもよく適宜選択するのが好ましい。
【0015】
また、その他には、例えば、図3に示すように、建物11の屋根上に設置された太陽熱を有効利用する温水器12で作られた温水を感温変色チューブ1である連結ホース13で浴槽14内に風呂水として貯水する場合にも有効に機能する。
この場合にも、予め、上記のようにして連結ホース13を所定の温度で所定の色に発色、変色、消色するように設定するようにし、連結ホース13内を流水する水の温度を色具合で視認するようにすればよい。そうすることによって、同様にして、低温水、適温、危険温度の区別を視認することができ、熱水に触れて被る被害を未然に防止することができる。
【0016】
このようにして感温変色チューブ1は使用されるが、感温変色チューブ1内を流動する流体2としては、油液や他の原料からなる液体でもよい。また、空気等の気体であってもよい。この場合、温風乾燥機等で熱空気の誘導ホースとして用いることがてきる。ここでは、通常、熱空気の温度は幾つかの値に温度設定されるが、温度設定毎に誘導ホースの色具合に変化を与えるようにすると外観上から熱空気の温度及び温度変化を視認することができ、温風乾燥機等が稼働していることを人に知らせる合図にもなる。
【0017】
更には、粉末状の粉体であってもよい。この場合には、粉体静電塗装機等で粉体を噴射するときの誘導管として用いることができる。この場合にも同様に、粉体の持つ温度に感応する感温変色チューブ1である誘導管を使用するようにすればよい。そうすることによって、上記と同様に、外観上で粉体静電塗装機等の稼働状態を視認することができる。
【0018】
又、この感温変色チューブ1の他の利用法として、流体2が流れる他のチューブに、この考案のチューブの一部を長手方向に切り欠いて、その弾力性を利用して巻くようにしてもよい。この場合には、他のチューブを介して流体2の温度がこの考案のチューブに伝達されて流体2の温度変化を視覚的に観察できる。
【0019】
更にまた、他の利用法として、魚釣りの釣り糸に浮子の軸を止めるチューブとした時には、水温の変化によってチューブの色が変化するために、釣り人が水温を陸上で知ることができる。
【0020】
尚、図4に示すように、メッシュ状又はスパイラル状に織られた図外の細線材からなる断面環形の補強層15を基材3に埋設してもよい。この場合に、細線材としては、例えばナイロン等の合成繊維やスチール製の針金等が挙げられるが、前記基材3の引張強度を向上できるものであれば、特に材質が限定されることはない。また、図5に示すように、前記基材3を、前記感温変色性色素材4が混入された外側層3aと、該外側層3aの内側に形成された耐食層3bとから構成してもよい。
【0021】
前記耐食層3bは、流体2が有機化合物や強酸からなる薬品類であっても腐食されることのない可撓性の材質又は被膜が好ましいが、例えば、ステンレス,ガラス又はセラミック製のチューブ等でもよい。更に、図5に示すように、前記外側層3aと耐食層3bとの間に補強層15を介在してもよい。
【0022】
【考案の効果】
請求項1記載の感温変色チューブによれば、流体の温度変化によって感温変色チューブ自体が多段階に発色、変色、消色するので、流体の温度変化を視認することができると共に、流体の温度を確認することが可能となる。そして、使用目的によっては、流体が身体に触れるものであれば、適温、危険温度等が確認できて火傷等の皮膚外傷を未然に防ぐことができる。また、感温変色チューブ自体が多段階に変色するので、視覚を通じて興味深く楽しむことができる。
【0023】
請求項2記載の感温変色チューブによれば、メッシュ状又はスパイラル状に織られた細線材からなる補強層を基材に埋設しているので、基材の引張強度を向上することができる。
【0024】
請求項3記載の感温変色チューブによれば、中空内部を流動する流体が有機化合物や強酸からなる薬品類であっても基材が腐食されることがなく、化学プラント等の配管として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この考案の実施の一形態に係る感温変色チューブの縦断面図。
【図2】この考案の実施の一形態に係る感温変色チューブの一使用状態を示す一部省略図。
【図3】この考案の実施の一形態に係る感温変色チューブの他の使用状態を示す一部省略図。
【図4】この考案の実施の一形態に係る感温変色チューブの基材の変形例を断面視した概略図。
【図5】この考案の実施の一形態に係る感温変色チューブの基材の更なる変形例を断面視した概略図。
【符号の説明】
1 感温変色チューブ
2 流体
3 基材
3a 外側層
3b 耐食層
4 感温変色性色素材
15 補強層

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 流体が流動する中空内部を有する基材に感温変色性色素材が混入され、前記中空内部を流動する流体の温度変化に感応して多段階に発色、変色、消色することを特徴とする感温変色チューブ。
【請求項2】 前記基材に、メッシュ状又はスパイラル状に織られた細線材からなる補強層を埋設した請求項1記載の感温変色チューブ。
【請求項3】 前記基材が、その中空内部を流動する流体の温度変化に感応して多段階に発色、変色、消色する感温変色性色素材が混入された外側層と、該外側層の内側に形成された耐食層とからなり、これら外側層と耐食層との間に前記補強層を介在させた請求項2記載の感温変色チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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