説明

感温性界面活性剤

【課題】水性成分と油性成分との混合物に添加したときに、ある温度で界面活性を示し、その温度を変化させると親油性を示すが親水性を示さない性質を有する感温性界面活性剤および当該感温性界面活性剤を含有する洗浄剤を提供すること。
【解決手段】N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーのセグメントと親水性基含有ポリマーのセグメントとを有する(メタ)アクリル系ブロックコポリマーからなる感温性界面活性剤、N−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させ、得られたN−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーの存在下で、さらに親水性基含有モノマーを重合させることを特徴とする(メタ)アクリル系ブロックコポリマーからなる感温性界面活性剤の製造方法、および前記感温性界面活性剤を含有する洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感温性界面活性剤に関する。さらに詳しくは、一定の温度以下では界面活性を示し、一定の温度以上では界面不活性を示す感温性界面活性剤に関する。本発明の感温性界面活性剤は、例えば、頭髪用洗浄剤、食器用洗剤などの各種洗浄剤、油性成分吸着剤、帯電防止剤、分散剤、防曇剤などの幅広い用途での使用が期待されるものである。なお、本明細書において、感温性とは、温度変化によって変化する性質を意味する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は、親油性のセグメントと親水性セグメントとを有する両親媒性物質である。界面活性剤は、イオン性界面活性剤と非イオン界面活性剤に大別される。また、イオン性界面活性剤は、主として、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤などに分類されている。従来、界面活性剤として、種々のものが開発されている。例えば、陰イオン界面活性剤としてカルボン酸塩、スルホン酸塩硫酸エステル塩、リン酸エステル塩など、陽イオン界面活性剤として脂肪酸アミン塩、脂肪酸四級アンモニウム塩など、両性界面活性剤としてカルボキシベタイン型両性界面活性剤など、非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのエーテル型非イオン界面活性剤やポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどのエステル型非イオン界面活性剤などが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来のほとんどの界面活性剤は、ある程度の温度変化があっても親油性および親水性の双方の性質を維持するため、水性成分と油性成分との混合物に界面活性剤を添加した後、当該混合物から親油性成分または親水性成分のみを分離させることが極めて困難である。
【0004】
水性成分と油性成分との混合物に添加したときに、ある温度で界面活性を示し、その温度を変化させると親油性を示すが親水性を示さないという性質を有する界面活性剤は、例えば、水性成分と油性成分との混合物から当該混合物に含まれている油性成分を除去することによって油性成分と水性成分とを分離するのに非常に有用であると考えられる。
【0005】
したがって、近年、水性成分と油性成分との混合物に添加したときに、ある温度で界面活性を示し、その温度を変化させると親油性を示すが親水性を示さない性質を有する界面活性剤の開発が待ち望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「15710の化学商品」、化学工業日報社、2010年1月26日、1393−1424頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、水性成分と油性成分との混合物に添加したときに、ある温度で界面活性を示し、その温度を変化させると親油性を示すが親水性を示さない性質を有する界面活性剤およびその製造方法、ならびに前記界面活性剤を含有する洗浄剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(1) N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーのセグメントと親水性基含有ポリマーのセグメントとを有する(メタ)アクリル系ブロックコポリマーからなる感温性界面活性剤、
(2) N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーが炭素数1〜8のアルキル基を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させてなる前記(1)に記載の感温性界面活性剤、
(3) N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーのセグメントの平均重合度(m)が30〜300である前記(1)または(2)に記載の感温性界面活性剤、
(4) 親水性基含有ポリマーが(メタ)アクリル酸またはそのアルキル金属塩、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シラノール基含有モノマー、チタノール基含有モノマー、アルミノール基含有モノマー、N,N−ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよびその3級塩または4級塩、N,N−ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその3級塩または4級塩、N,N−ジアルキルアミノスチレンおよびその3級塩または4級塩、およびN−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインからなる群より選ばれた少なくとも1種の親水性基含有モノマーを重合させてなる前記(1)〜(3)のいずれかに記載の感温性界面活性剤、
(5) 親水性基含有ポリマーのセグメントの平均重合度(n)が30〜300である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の感温性界面活性剤、
(6) N−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させ、得られたN−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーの存在下で、さらに親水性基含有モノマーを重合させることを特徴とする(メタ)アクリル系ブロックコポリマーからなる感温性界面活性剤の製造方法、
(7) N−アルキル(メタ)アクリルアミドが炭素数1〜8のアルキル基を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミドである前記(6)に記載の感温性界面活性剤の製造方法、
(8) 親水性基含有ポリマーが(メタ)アクリル酸またはそのアルキル金属塩、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シラノール基含有モノマー、チタノール基含有モノマー、アルミノール基含有モノマー、N,N−ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよびその3級塩または4級塩、N,N−ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその3級塩または4級塩、N,N−ジアルキルアミノスチレンおよびその3級塩または4級塩、およびN−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインからなる群より選ばれた少なくとも1種の親水性基含有モノマーを重合させてなる前記(6)または(7)に記載の感温性界面活性剤の製造方法、および
(9) 前記(1)〜(5)のいずれかに記載の感温性界面活性剤を含有してなる洗浄剤
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の感温性界面活性剤は、水性成分と油性成分との混合物に添加したときに、ある温度で界面活性を示し、その温度を変化させると親油性を示すが親水性を示さないという優れた効果を奏する。また、本発明の洗浄剤は、前記感温性界面活性剤を含有するので、水性成分と油性成分との混合物に添加したときに、ある温度で界面活性を示し、その温度を変化させると親油性を示すが親水性を示さないという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の感温性界面活性剤は、前記したように、N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーのセグメントと親水性基含有ポリマーのセグメントとを有する(メタ)アクリル系ブロックコポリマーからなる。
【0011】
なお、本願明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味する。また、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および/または「メタクリレート」を意味する。
【0012】
(メタ)アクリル系ブロックコポリマーは、例えば、N−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させ、得られたN−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーの存在下で、さらに親水性基含有モノマーを重合させる方法、親水性基含有モノマーを重合させ、得られた親水性基含有ポリマーの存在下で、さらにN−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させる方法などによって調製することができるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。
【0013】
以下に便宜上、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーを製造する方法として、N−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させ、得られたN−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーの存在下で、さらに親水性基含有モノマーを重合させる方法について説明する。
【0014】
N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーは、N−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させることによって得られる。なお、N−アルキル(メタ)アクリルアミドには、本発明の目的が阻害されない範囲内で、N−アルキル(メタ)アクリルアミド以外のモノマーが含まれていてもよい。
【0015】
N−アルキル(メタ)アクリルアミドのなかでは、水性成分と油性成分との混合物に本発明の感温性界面活性剤を添加し、その温度を変化させたときに親油性を示すが親水性を十分に示さないようにする観点から、炭素数1〜8のアルキル基を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミドが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
【0016】
N−アルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、n−プロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、n−ブチル(メタ)アクリルアミド、イソブチル(メタ)アクリルアミド、tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、n−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、2−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのN−アルキル(メタ)アクリルアミドのなかでは、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、n−プロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、n−ブチル(メタ)アクリルアミド、イソブチル(メタ)アクリルアミドおよびtert-ブチル(メタ)アクリルアミドなどの炭素数1〜4のアルキル基を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0017】
N−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させる方法としては、例えば、原子移動ラジカル重合法(ATRP法)、可逆的付加開裂連鎖移動重合法(RAFT法)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(TEMPO)などを媒体とするリビングラジカル重合法(TEMPO法)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0018】
N−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させる際には、重合開始剤を用いることが好ましい。
【0019】
重合開始剤としては、例えば、4,4’−アゾシアノペンタン酸、アゾイソブチロニトリル、アゾイソ酪酸メチル、アゾビスジメチルバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ベンゾフェノン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ベンゾケトン誘導体、フェニルチオエーテル誘導体、アジド誘導体、ジアゾ誘導体、ジスルフィド誘導体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
重合開始剤の量は、特に限定されないが、通常、N−アルキル(メタ)アクリルアミド100重量部あたり0.03〜5重量部程度であることが好ましい。
【0021】
N−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させる際には、必要により、連鎖移動剤を用いることができる。
【0022】
連鎖移動剤としては、例えば、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、チオグリセロール、ジチオ安息香酸ベンジル、ジチオ安息香酸1−フェニルエチル、ジチオ安息香酸クミル、ジチオ安息香酸1−アセトキシルエチル、ヘキサキス(チオベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス(チオベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(チオベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス−(2−(チオベンゾイルチオ)プロプ−2−イル)ベンゼン、ジチオ安息香酸1−(4−メトキシフェニル)エチル、ジチオ酢酸ベンジル、ジチオ酢酸エトキシカルボニルメチル、tert−ブチルトリチオパーベンゾエート、4−シアノペンタン酸ジチオベンゾエート、ジベンジルテトラチオテレフタレート、ジベンジルトリチオカーボネート、カルボキシメチルジチオベンゾエート、次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0023】
連鎖移動剤の量は、通常、N−アルキル(メタ)アクリルアミド100重量部あたり0.3〜10重量部程度であることが好ましい。
【0024】
N−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させる方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。N−アルキル(メタ)アクリルアミドを溶液重合法によって重合させる場合には、例えば、N−アルキル(メタ)アクリルアミドおよび重合開始剤を溶媒に溶解させ、得られた溶液を重合させることにより、N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーを調製することができる。
【0025】
溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物、n−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステル、水などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
溶媒の量は、通常、N−アルキル(メタ)アクリルアミドを溶媒に溶解させることによって得られる溶液におけるモノマーの濃度が10〜80重量%程度となるように調整することが好ましい。
【0027】
N−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させる際の重合温度、重合時間などの重合条件は、N−アルキル(メタ)アクリルアミドの使用量、重合開始剤の種類およびその使用量などに応じて適宜調整することが好ましい。
【0028】
N−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させるときの雰囲気は、不活性ガスであることが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0029】
重合反応の終了や反応系内における未反応モノマーの有無は、例えば、ガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析方法で確認することができる。
【0030】
以上のようにしてN−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させることにより、N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーを含む反応溶液を得ることができる。得られたN−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーの平均重合度(m)は、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーの疎水性を高める観点から、好ましくは30以上であり、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーの親水性を高める観点から、好ましくは300以下である。なお、N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーの平均重合度(m)は、プロトン核磁気共鳴法により、容易に測定することができる。
【0031】
なお、N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーには、本発明の目的が阻害されない範囲内で、N−アルキル(メタ)アクリルアミド以外の他のモノマーに基づくセグメントが含まれていてもよい。
【0032】
前記で得られたN−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーは、必要により、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物などで沈殿させることにより、反応溶液から回収することができる。
【0033】
以上のようにして得られるN−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーは、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーにおいて、N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーのセグメントを構成するものである。
【0034】
好適なN−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーのセグメントとしては、例えば、式:
【0035】
【化1】

【0036】
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、mは30〜300の数を示す)
で表わされるセグメントが挙げられる。
【0037】
次に、N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーの存在下で、親水性基含有モノマーを重合させることにより、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーが得られる。
【0038】
親水性基含有ポリマーは、親水性基含有モノマーを重合させることによって得られる。なお、親水性基含有モノマーには、本発明の目的が阻害されない範囲内で、親水性基含有モノマー以外のモノマーが含まれていてもよい。
【0039】
親水性基含有モノマーのなかでは、水性成分と油性成分との混合物に本発明の感温性界面活性剤を添加し、その温度を変化させたときに親油性を示すが親水性を十分に示さないようにする観点から、例えば、(メタ)アクリル酸またはそのアルキル金属塩、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シラノール基含有モノマー、チタノール基含有モノマー、アルミノール基含有モノマー、N,N−ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよびその3級塩または4級塩、N,N−ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその3級塩または4級塩、N,N−ジアルキルアミノスチレンおよびその3級塩または4級塩、N−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインなどが好ましいが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの親水性基含有モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0040】
(メタ)アクリル酸のアルキル金属塩としては、例えば、(メタ)アクリル酸ナトリウム塩、(メタ)アクリル酸カリウム塩などのアルキル金属がナトリウム、カリウムなどである(メタ)アクリル酸のアルキル金属塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル酸のアルキル金属塩は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0041】
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシtert−ブチルなどのアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0042】
(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールの付加モル数が1〜8の(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールの付加モル数が1〜8の(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのアルキレン基の炭素数が2または3である(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0043】
シラノール基含有モノマーとしては、例えば、シラノール基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0044】
チタノール基含有モノマーとしては、例えば、チタノール基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0045】
アルミノール基含有モノマーとしては、例えば、アルミノール基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0046】
N,N−ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよびその3級塩または4級塩としては、例えば、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレートおよびその3級塩または4級塩、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその3級塩または4級塩、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートおよびその3級塩または4級塩、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレートおよびその3級塩または4級塩などのアミノアルキル基の炭素数が1〜4のN,N−ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよびその3級塩または4級塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのN,N−ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよびその3級塩または4級塩は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0047】
N,N−ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその3級塩または4級塩としては、例えば、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミドおよびその3級塩または4級塩、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドおよびその3級塩または4級塩、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよびその3級塩または4級塩、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミドおよびその3級塩または4級塩などのアミノアルキル基の炭素数が1〜4のN,N−ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその3級塩または4級塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのN,N−ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその3級塩または4級塩は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0048】
N,N−ジアルキルアミノスチレンおよびその3級塩または4級塩としては、例えば、N,N−ジメチルアミノスチレンおよびその3級塩または4級塩、N,N−ジエチルアミノスチレンおよびその3級塩または4級塩、N,N−ジプロピルアミノスチレン、N,N−ジブチルアミノスチレンおよびその3級塩または4級塩などのアルキル基の炭素数が1〜4のN,N−ジアルキルアミノスチレンおよびその3級塩または4級塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのN,N−ジアルキルアミノスチレンおよびその3級塩または4級塩は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0049】
N−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインとしては、例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインなどのオキシアルキル基の炭素数が1〜4であり、ジアルキル基におけるアルキル基の炭素数がそれぞれ1〜4であるN−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのN−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0050】
親水性基含有モノマーのなかでは、水性成分と油性成分との混合物に本発明の感温性界面活性剤を添加し、その温度を変化させたときに親油性を示すが親水性を十分に示さないようにする観点から、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよびジメチルアミノスチレンからなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ基含有モノマーの3級塩または4級塩、およびN−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインがより好ましく、これらの親水性基含有モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。親水性基含有モノマーのなかでは、水性成分と油性成分との混合物に本発明の感温性界面活性剤を添加し、その温度を変化させたときに親油性を示すが親水性を十分に示さないようにする性質をさらに高める観点から、ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド4級塩、ジメチルアミノプロピルメタクリレートのメチルクロライド4級塩、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドのメチルクロライド4級塩(例えば、3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなど)、ジメチルアミノスチレンのメチルクロライド4級塩、およびN−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインからなる群より選ばれた少なくとも1種の親水性基含有モノマーがさらに好ましい。
【0051】
親水性基含有モノマーを重合させる方法としては、例えば、原子移動ラジカル重合法(ATRP法)、可逆的付加開裂連鎖移動重合法(RAFT法)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(TEMPO)などを媒体とするリビングラジカル重合法(TEMPO法)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0052】
親水性基含有モノマーを重合させる際には、重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては、前記N−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させる際に用いられるものと同様のものが例示される。重合開始剤の量は、特に限定されないが、通常、親水性基含有モノマー100重量部あたり0.03〜5重量部程度であることが好ましい。
【0053】
親水性基含有モノマーを重合させる際には、必要により、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、前記N−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させる際に用いられるものと同様のものが例示される。連鎖移動剤の量は、通常、親水性基含有モノマー100重量部あたり0.03〜10重量部程度であることが好ましい。
【0054】
親水性基含有モノマーを重合させる方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。親水性基含有モノマーを溶液重合法によって重合させる場合には、例えば、N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーを溶解させた溶液に親水性基含有モノマーおよび重合開始剤を添加することによって重合させることができる。
【0055】
溶媒としては、前記N−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させる際に用いられるものと同様のものが例示される。溶媒の量は、通常、親水性基含有モノマーの濃度が10〜80重量%程度となるように調整することが好ましい。
【0056】
親水性基含有モノマーを重合させる際の重合温度、重合時間などの重合条件は、その親水性基含有モノマーの種類およびその使用量、重合開始剤の種類およびその使用量などに応じて適宜調整することが好ましい。
【0057】
親水性基含有モノマーを重合させるときの雰囲気は、不活性ガスであることが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0058】
重合反応の終了や反応系内における未反応モノマーの有無は、例えば、ガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析方法で確認することができる。
【0059】
以上のようにしてN−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーの存在下で、親水性基含有モノマーを重合させることにより、N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーのセグメントと親水性基含有ポリマーのセグメントを有する(メタ)アクリル系ブロックコポリマーが得られる。
【0060】
得られたN−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーに含まれている親水性基含有ポリマーの平均重合度(n)は、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーの親水性を高める観点から、好ましくは30以上であり、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーの疎水性を高める観点から、好ましくは300以下である。なお、親水性基含有ポリマーの平均重合度(n)は、プロトン核磁気共鳴法により、容易に測定することができる。
【0061】
なお、親水性基含有ポリマーには、本発明の目的が阻害されない範囲内で、親水性基含有モノマー以外の他のモノマーに基づくセグメントが含まれていてもよい。
【0062】
以上のようにして得られた親水性基含有ポリマーは、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーにおいて親水性基含有ポリマーのセグメントを構成するものである。
【0063】
好適な親水性基含有ポリマーのセグメントとしては、例えば、式:
【0064】
【化2】

【0065】
(式中、R3は水素原子またはメチル基、R4は親水性基、nは30〜300の数を示す)
で表わされるセグメントが挙げられる。
【0066】
親水性基含有ポリマーのセグメントにおいて、R4は、親水性基である。親水性基としては、例えば、前記親水性基含有モノマーに対応する基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0067】
親水性基のなかでは、水性成分と油性成分との混合物に本発明の感温性界面活性剤を添加し、その温度を変化させたときに親油性を示すが親水性を十分に示さないようにする観点から、例えば、カルボキシル基またはそのアルキル金属塩基、アミノ基、ヒドロキシアルキル基、末端に水酸基を有する(ポリ)オキシアルキレン基、シラノール基、チタノール基、アルミノール基、N,N−ジアルキルアミノ基およびその3級塩基または4級塩基、N,N−ジメチルアミノアルキル基およびその3級塩基または4級塩基、N−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン残基などが好ましいが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの親水性基は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0068】
前記アルキル金属としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記ヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基などのアルキル基の炭素数が1〜4のヒドロキシアルキル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記末端に水酸基を有する(ポリ)オキシアルキレン基としては、例えば、オキシアルキレン基の炭素数が2または3であり、オキシアルキレン基の付加モル数が1〜8である末端に水酸基を有する(ポリ)オキシアルキレン基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記N,N−ジアルキルアミノ基としては、アルキルアミノ基の炭素数が1〜4のN,N−ジアルキルアミノ基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記アミノアルキル基としては、例えば、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノブチル基などのアルキル基の炭素数が1〜4のアミノアルキル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、前記N−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン残基において、オキシアルキル基におけるアルキル基およびジアルキルアンモニウム基におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数が1〜4のアルキル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0069】
親水性基のなかでは、水性成分と油性成分との混合物に本発明の感温性界面活性剤を添加し、その温度を変化させたときに親油性を示すが親水性を十分に示さないようにする観点から、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基およびジメチルアミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の3級塩基または4級塩基、およびN−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン残基がより好ましく、これらの親水性基は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。親水性基のなかでは、水性成分と油性成分との混合物に本発明の感温性界面活性剤を添加し、その温度を変化させたときに親油性を示すが親水性を十分に示さないようにする性質を高める観点から、ジメチルアミノエチル基のメチルクロライド4級塩基、ジメチルアミノプロピル基のメチルクロライド4級塩基、ジメチルアミノ基のメチルクロライド4級塩基およびN−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン残基からなる群より選ばれた少なくとも1種の親水性基がさらに好ましい。
【0070】
本発明において好適な感温性界面活性剤は、式(I):
【0071】
【化3】

【0072】
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基、R3は水素原子またはメチル基、R4は親水性基、mは30〜300の数、nは30〜300の数を示す)
で表わされるセグメントを有する(メタ)アクリル系ブロックコポリマーが挙げられる。
【0073】
N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーのセグメントの平均重合度(m)と親水性基含有ポリマーのセグメントの平均重合度(n)との比〔N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーのセグメントの平均重合度(m)/親水性基含有ポリマーのセグメントの平均重合度(n)〕は、水性成分と油性成分との混合物に本発明の感温性界面活性剤を添加し、その温度を変化させたときに親油性を示すが親水性を十分に示さないようにする観点から、1/10〜10/1であることが好ましく、2/10〜10/2であることがより好ましい。
【0074】
前記で得られたN−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーは、必要により、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物とテトラヒドロフランとの混合溶媒などで沈殿させることにより、反応溶液から回収することができる。
【0075】
以上のようにして得られたN−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーは、感温性界面活性剤として好適に用いることができる。
【0076】
本発明の感温性界面活性剤は、水性成分と油性成分との混合物に添加したときに、ある温度で界面活性を示し、その温度を変化させると親油性を示すが親水性を示さないという優れた性質を有することから、例えば、水性成分と油性成分との混合物から当該混合物に含まれている油性成分を除去することによって油性成分と水性成分とを分離することができる。
【0077】
このように、本発明の感温性界面活性剤は、一定の温度以下では界面活性を示し、一定の温度以上では界面不活性を示すことから、例えば、油性成分吸着剤、頭髪用洗浄剤などの洗浄剤、食器洗用洗剤などの洗剤、帯電防止剤、分散剤、防曇剤などの幅広い用途での使用が期待されるものである。
【0078】
なお、前記「一定の温度以下では界面活性を示し、一定の温度以上では界面不活性を示す」において、前記一定の温度は、(メタ)アクリル系ブロックコポリマーを構成しているN−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーのセグメントおよび親水性基含有ポリマーのセグメントの平均重合度、N−アルキル(メタ)アクリルアミドの種類、親水性基含有モノマーの種類などによって異なるので一概には決定することができない。(メタ)アクリル系ブロックコポリマーが界面活性を示す温度または界面不活性を示す温度は、当該N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーのセグメントおよび親水性基含有ポリマーのセグメントの平均重合度、N−アルキル(メタ)アクリルアミドの種類、親水性基含有モノマーの種類などを適宜調整することによって所定値に調節することができる。
【0079】
また、本発明の感温性界面活性剤は、有機溶媒に溶解させた溶液の状態で、例えば、水面上に展開させれば、単分子膜とすることができるので、液体のみならず、固体の膜として利用することもできる。
【実施例】
【0080】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0081】
実施例1
25ミリリットル容のシュレンク管で4−シアノペンタン酸ジチオベンゾエート24.6mgをN-メチルホルムアミド4mlに溶解せさ、これにN−イソプロピルアクリルアミド2gと重合開始剤として4,4’−アゾシアノペンタン酸49.6mgを添加し、凍結脱気を行なった後、アルゴンガス雰囲気中で、オイルバス中にて69℃で1時間反応させることにより、N−イソプロピルアクリルアミドポリマーを含む反応溶液を得た。得られた反応溶液に含まれているN−イソプロピルアクリルアミドポリマーは、ジエチルエーテルで沈殿させることによって回収した。
【0082】
次に、前記で得られたN−イソプロピルアクリルアミドポリマー0.2gを25ml容のシュレンク管中で、n−メチルホルムアミド2mlに溶解させ、3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド0.1gと4,4’−アゾシアノペンタン酸5.5mgを添加し、凍結脱気を行なった後、アルゴンガス雰囲気中で油浴中にて69℃の温度で90分間重合させることにより、N−イソプロピルアクリルアミドポリマーと3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーとのブロックコポリマーを得た。
【0083】
得られたN−イソプロピルアクリルアミドポリマーと3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーとのブロックコポリマーにおいて、N−イソプロピルアクリルアミドポリマーの平均重合度(m)および3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーの平均重合度(n)をプロトン核磁気共鳴法によって調べたところ、N−イソプロピルアクリルアミドポリマーの平均重合度(m)は69であり、3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーの平均重合度(n)は35であった。
【0084】
次に、前記で得られた反応溶液からN−イソプロピルアクリルアミドポリマーと3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーとのブロックコポリマーを、テトラヒドロフランとジエチルエーテルの1:1の重量比の混合液で単離した後、N−イソプロピルアクリルアミドポリマーと3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーとのブロックコポリマーを感温性界面活性剤として用いた。
【0085】
実施例2
実施例1において、3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーの量を0.2gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてN−イソプロピルアクリルアミドポリマーと3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーとのブロックコポリマーを得た。
【0086】
得られたN−イソプロピルアクリルアミドポリマーと3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーとのブロックコポリマーをテトラヒドロフランとジエチルエーテルの1:1の重量比の混合液で単離した後、N−イソプロピルアクリルアミドポリマーと3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーとのブロックコポリマーを感温性界面活性剤として用いた。
【0087】
N−イソプロピルアクリルアミドポリマーと3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーとのブロックコポリマーにおいて、N−イソプロピルアクリルアミドポリマーの平均重合度(m)および3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーの平均重合度(n)をプロトン核磁気共鳴法によって調べたところ、N−イソプロピルアクリルアミドポリマーの平均重合度(m)は69であり、3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーの平均重合度(n)は50であった。
【0088】
実施例3
実施例1において、3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーの量を0.4gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてN−イソプロピルアクリルアミドポリマーと3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーとのブロックコポリマーを得た。
【0089】
得られたN−イソプロピルアクリルアミドポリマーと3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーとのブロックコポリマーをテトラヒドロフランとジエチルエーテルの1:1の重量比の混合液単離した後、N−イソプロピルアクリルアミドポリマーと3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーとのブロックコポリマーを感温性界面活性剤として用いた。
【0090】
N−イソプロピルアクリルアミドポリマーと3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーとのブロックコポリマーにおいて、N−イソプロピルアクリルアミドポリマーの平均重合度(m)および3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーの平均重合度(n)をプロトン核磁気共鳴法によって調べたところ、N−イソプロピルアクリルアミドポリマーの平均重合度(m)は69であり、3−メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマーの平均重合度(n)は85であった。
【0091】
比較例1
25ミリリットル容のシュレンク管で4−シアノペンタン酸ジチオベンゾエート24.6mgをN-メチルホルムアミド4mlに溶解せさ、これにN−イソプロピルアクリルアミド2gと重合開始剤として4,4’−アゾシアノペンタン酸49.6mgを添加し、凍結脱気を行なった後、アルゴンガス雰囲気中で、オイルバス中にて69℃で1時間反応させることにより、N−イソプロピルアクリルアミドポリマーを含む反応溶液を得た。得られた反応溶液に含まれているN−イソプロピルアクリルアミドポリマーは、ジエチルエーテルで沈殿させることによって回収した。得られたN−イソプロピルアクリルアミドポリマーを界面活性剤として用いた。
【0092】
比較例2
従来のカチオン界面活性剤として、塩化ドデシルアンモニウムを用いた。
【0093】
比較例3
従来のアニオン界面活性剤として、ドデシル硫酸ナトリウムを用いた。
【0094】
比較例4
従来の非イオン界面活性剤として、ヘキサエチレングリコールドデシルモノエーテルを用いた。
【0095】
実験例1[表面張力の測定]
実施例1〜3で得られた感温性界面活性剤および比較例1で得られた界面活性剤の水溶液について、各種温度における表面張力を以下の方法に基づいて評価した。
【0096】
実施例3で得られた感温性界面活性剤を水に溶解させ、感温性界面活性剤の濃度が0.03mg/ml、0.1mg/mlまたは1mg/mlである水溶液を調製し、表面張力計〔協和界面科学(株)製、CBVP式表面張力計〕を用いて各水溶液の表面張力を25℃または45℃の温度で測定した。その結果、感温性界面活性剤の水溶液の濃度が0.03mg/mlのときの表面張力は、25℃で50μN/cm、40℃で65μN/cmであり、濃度が0.1mg/mlのとき表面張力は、25℃で45μN/cm、40℃で55μN/cmであり、濃度が1.0mg/mlのときの表面張力は、25℃で37μN/cm、40℃で53μN/cmであった。
【0097】
また、実施例1および実施例2で得られた感温性界面活性剤についても、前記と同様にして各水溶液の表面張力を25℃または45℃の温度で測定したところ、実施例3で得られた感温性界面活性剤と同様の結果が得られた。
【0098】
これに対して、比較例1で得られた界面活性剤の水溶液の濃度が0.03mg/mlのときの表面張力は、25℃で73μN/cmであったが、40℃の温度では界面活性剤の水溶液中で感温性界面活性剤自体が多量のポリマーとして析出したため、この界面活性剤は、40℃の温度では使用することができなかった。
【0099】
以上の表面張力の測定結果から、各実施例で得られた感温性界面活性剤は、いずれも、低温(25℃)で表面張力が小さく、高温(40℃)で表面張力が大きくなることがわかる。
【0100】
実験例2[起泡性および消泡性の測定]
実施例1〜3で得られた感温性界面活性剤および比較例1で得られた界面活性剤を水に溶解させて1mg/mlの界面活性剤水溶液を得た。得られた界面活性剤水溶液の液温を、25℃または洗髪時または食器洗いの際の一般的なシャワー温度である40℃に調節し、起泡させた後、泡の消失について調べた。
【0101】
その結果、各実施例で得られた感温性界面活性剤は、25℃の温度で起泡したが、40℃の温度では消泡したことから、25℃の温度で界面活性を有するが40℃の温度で界面不活性となっていることが確認された。したがって、各実施例で得られた感温性界面活性剤は、40℃において泡切れに優れているので、頭髪洗浄剤や食器用洗浄剤に好適に使用することができることが確認された。
【0102】
これに対して、比較例1で得られた界面活性剤は、25℃の温度で界面活性を有していたが、40℃の温度では、界面活性剤の水溶液中で界面活性剤自体が多量のポリマーとして析出したため、この界面活性剤は、40℃の温度では使用することができなかった。
【0103】
実験例3[臨界ミセル濃度の測定]
実施例1〜3で得られた感温性界面活性剤、比較例1で得られた界面活性剤、および比較例2〜4の界面活性剤の臨界ミセル濃度を蛍光分析によって測定した。
【0104】
その結果、実施例1で得られた感温性界面活性剤の臨界ミセル濃度は0.25mg/ml、実施例2で得られた感温性界面活性剤の臨界ミセル濃度は0.35mg/ml、実施例3で得られた感温性界面活性剤の臨界ミセル濃度は0.45mg/mlであるのに対し、比較例1で得られた界面活性剤の臨界ミセル濃度は存在せず、比較例2の界面活性剤の臨界ミセル濃度は6.14mg/ml、比較例3の界面活性剤の臨界ミセル濃度は2.39mg/ml、比較例4の界面活性剤の臨界ミセル濃度は0.45mg/mlであった。これらの結果から、各実施例で得られた感温性界面活性剤は、比較例2の塩化ドデシルアンモニウム(カチオン界面活性剤)、比較例3のドデシル硫酸ナトリウム(アニオン界面活性剤)および比較例4のヘキサエチレングリコールドデシルモノエーテル(ノニオン界面活性剤)と対比して、臨界ミセル濃度が低いことから、洗浄力に優れた洗浄剤として好適に使用することができることが確認された。
【0105】
実験例4[洗浄力(油汚れの洗浄性)の測定]
(1)洗浄剤組成物の調製
500ml容のビーカー内に、各実施例で得られた感温性界面活性剤または各比較例の界面活性剤と精製水とを入れて界面活性剤を溶解させることにより、界面活性剤の濃度が2.0重量%の洗浄剤組成物500gを調製した。
【0106】
(2)洗浄試験
洗浄試験に用いられる油成分として、皮脂や食用油の主成分であるトリオレイン(トリオレイン酸グリセリド)を用いた。
【0107】
まず、ステンレス鋼製の金網(目開きの間隔:100メッシュ、大きさ:100mm×50mm)を試験片として用い、この試験片の重量を測定した。その後、この試験片をトリオレイン〔関東化学(株)製〕中に浸漬した後、105℃で30分間静置し、トリオレイン付着試験片の重量を測定した。
【0108】
次に、前記で得られた洗浄剤組成物500gの液温を25℃に調整し、この洗浄剤組成物に前記トリオレイン付着試験片をクリップで固定して浸漬した後、翼径50mmのプロペラ型攪拌翼にて200rpmで2分間撹拌して試験片の洗浄処理を行なった。
【0109】
この洗浄処理を行なった試験片を、25℃の蒸留水500mlが入った500ml容のビーカー内に入れ、翼径50mmのプロペラ型攪拌翼にて200rpmで1分間撹拌して試験片のすすぎ処理を行なった。すすぎの終了後、試験片を水中から取り出し、60℃の恒温槽中に一晩静置して乾燥させた。
【0110】
(3)洗浄力の評価
洗浄剤組成物の洗浄力を式:
〔洗浄力(%)〕=(A−B)×100/(A−C)
〔式中、Aはトリオレイン付着試験片の重量(g)、Bは洗浄後の試験片の乾燥重量(g)、C:トリオレイン付着前の試験片の乾燥重量(g)を示す〕
に基づいて求め、以下の洗浄力の評価基準に基づいて評価した。その結果を表1に示す。
【0111】
〔洗浄力の評価基準〕
◎:95%以上
○:90%以上95%未満
△:80%以上90%未満%
×:80%未満
【0112】
【表1】

【0113】
表1に示された結果から、各実施例で得られた感温性界面活性剤を用いて調製された洗浄剤組成物は、いずれも、洗浄力の評価が◎または○であり、洗浄性に優れていることがわかる。
【0114】
これに対して、各比較例の界面活性剤は、いずれも、洗浄力の評価が△または×であり、各実施例で得られた感温性界面活性剤と対比して、洗浄性に劣るものであることがわかる。
【0115】
以上の結果から、各実施例で得られた感温性界面活性剤は、低温(25℃)で洗浄力に優れ、高温(40℃)で消泡性に優れていることから、界面活性剤として優れた洗浄性を維持しつつ、泡切れがよい洗浄剤として好適に用いることができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の感温性界面活性剤は、優れた洗浄性を有し、一定の温度以下では界面活性を示し、一定の温度以上では界面不活性を示すことから、例えば、頭髪用洗浄剤、食器用洗剤などの各種洗浄剤、油性成分吸着剤、帯電防止剤、分散剤、防曇剤などの幅広い用途での使用が期待されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーのセグメントと親水性基含有ポリマーのセグメントとを有する(メタ)アクリル系ブロックコポリマーからなる感温性界面活性剤。
【請求項2】
N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーが炭素数1〜8のアルキル基を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させてなる請求項1に記載の感温性界面活性剤。
【請求項3】
N−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーのセグメントの平均重合度(m)が30〜300である請求項1または2に記載の感温性界面活性剤。
【請求項4】
親水性基含有ポリマーが(メタ)アクリル酸またはそのアルキル金属塩、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シラノール基含有モノマー、チタノール基含有モノマー、アルミノール基含有モノマー、N,N−ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよびその3級塩または4級塩、N,N−ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその3級塩または4級塩、N,N−ジアルキルアミノスチレンおよびその3級塩または4級塩、およびN−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインからなる群より選ばれた少なくとも1種の親水性基含有モノマーを重合させてなる請求項1〜3のいずれかに記載の感温性界面活性剤。
【請求項5】
親水性基含有ポリマーのセグメントの平均重合度(n)が30〜300である請求項1〜4のいずれかに記載の感温性界面活性剤。
【請求項6】
N−アルキル(メタ)アクリルアミドを重合させ、得られたN−アルキル(メタ)アクリルアミドポリマーの存在下で、さらに親水性基含有モノマーを重合させることを特徴とする(メタ)アクリル系ブロックコポリマーからなる感温性界面活性剤の製造方法。
【請求項7】
N−アルキル(メタ)アクリルアミドが炭素数1〜8のアルキル基を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミドである請求項6に記載の感温性界面活性剤の製造方法。
【請求項8】
親水性基含有ポリマーが(メタ)アクリル酸またはそのアルキル金属塩、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シラノール基含有モノマー、チタノール基含有モノマー、アルミノール基含有モノマー、N,N−ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよびその3級塩または4級塩、N,N−ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその3級塩または4級塩、N,N−ジアルキルアミノスチレンおよびその3級塩または4級塩、およびN−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−N,N−ジアルキルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインからなる群より選ばれた少なくとも1種の親水性基含有モノマーを重合させてなる請求項6または7に記載の感温性界面活性剤の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の感温性界面活性剤を含有してなる洗浄剤。

【公開番号】特開2012−177040(P2012−177040A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40995(P2011−40995)
【出願日】平成23年2月26日(2011.2.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1) 社団法人高分子学会、高分子学会予稿集59巻、平成22年9月1日 (2) 第59回高分子討論会、社団法人高分子学会、平成22年9月17日
【出願人】(000205638)大阪有機化学工業株式会社 (101)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】