説明

感熱印刷方法

印刷時に感熱印刷用リボンの皺の生成をなくすかまたは低減される感熱印刷方法を記載する。このリボンは、リボン上の少なくとも1層内の高分子母材中に無機粒子を含む。このリボンは無機粒子を混入しないリボンと比較して機械的特性および熱特性が向上している。この方法は高速印刷用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
印刷時の感熱印刷用リボンの皺を低減する感熱印刷方法を記載する。
【背景技術】
【0002】
電子的に生成されている、例えば、カラービデオカメラやデジタルカメラに由来する画像からプリントを得るために熱転写システムが開発されてきた。電子写真はカラーフィルターによる色分解に付すことができる。色分解された各画像は電気信号へと変換できる。これらの信号を操作して、特定の色、例えば、シアン、マゼンタまたはイエローに対応する個々の電気信号を発生させることができる。これらの信号は感熱式プリンターに伝送できる。プリントを得るには、有色色素供与層、例えば、ブラック、シアン、マゼンタまたはイエローを受容要素の色素受像層と対面配置してプリンター部を形成すればよく、そのプリンター部をサーマルプリントヘッドとプラテンローラーとの間に挿入すればよい。サーマルプリントヘッドを用いて、色素供与体の裏面から熱を加える。サーマルプリントヘッドは、種々の電気信号に応じて、順次に加熱されることができ、必要に応じてこの工程を繰り返し、全ての所望の色を印刷する。元の写真に対応するカラーハードコピーが得られる。カラー画像上にはラミネート層が施される。この方法およびそれを実施するための装置のさらなる詳細については、Brownsteinの米国特許第4,621,271号に記載されている。
【0003】
色素熱転写に使用される高温、例えば、150℃〜200℃では、感熱印刷用リボンに使用される多くのポリマーが軟化し、それがリボンの皺の原因となり、その結果、転写された画像に不要なラインが生じる。皺が画像の境界領域近くに生じる場合がある。それは、例えば、使用される色素転写領域の後に続くまたは後方部分から、次に使用される色素転写領域の少なくとも導入部または前部まで、広がるまたは伸びる場合がある。結果として、襞または皺が次に使用される色素転写領域の導入部または前部分に生じ、色素転写がこの襞で起きる場合には望ましくないラインアーチファクトが色素受容材料の導入部または前部分の対応個所に印刷される。色素受容材料に印刷されたラインアーチファクトは比較的短いものであるが、かなり目立つ。高速感熱印刷では、温度が高くなりそして/または印刷用リボンの移動が早くなるため、皺への懸念が増す。
【0004】
最終的な画像における皺形成を低減する種々の方法が知られている。例えば、印刷時に感熱印刷用リボンを引き伸ばして、襞または皺形成を防ぐ機械的メカニズムが、米国特許出願第10/394,888号および同10/392,502号に開示されている。JP1999−024368号には、色素供与層から受容体への色素の放出を高め、供与体と受容体との付着を低減することによって皺形成を低減するための、感熱印刷用リボンの色素供与層における有機樹脂微粒子とシリコーン粒子の使用が開示されている。しかしながら、これらの方法は、皺に影響を及ぼし得るいくつかの基本的要因、すなわち、感熱印刷用リボンの物理的性質に直接取り組むものではない。米国特許第6,475,696号には、写真要素の受容体支持体、例えば、写真フィルムおよび写真ペーパーの剛性を増強するためのナノ粒子などの無機粒子の使用が開示されている。剛性強化によって仕上げられた写真製品に望ましい取扱性が提供されるが、皺は感熱印刷用リボンによって生じるため、画像における皺の出現は低減しない。
【0005】
JP1999−208079号および対応するEP0909659号には、抵抗ヘッド感熱印刷のための再利用可能な供与体(ここでの供与体リボン基体は低熱伝導性ポリマーマトリックスと高熱伝導性金属粒子を含む)が開示されている。これらの粒子は、粒子の長軸が基体の厚さと一致するように配向されている。支持体の厚さになるように1種または2種以上の粒子を使用することができる。開示内容によれば、色素供与要素への熱伝達効率を高めるため、供与体支持体の厚さおよび/または強度を増加させるため、そしてその支持体の滑りを小さくするために磁性粒子が含まれている。皺への影響については記載されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先行技術に付随する問題を有しない、感熱印刷用リボンにおける襞または皺の生成をなくすかまたは低減する手段が望まれる。感熱印刷用リボンが皺または襞の制御に有用な、望ましい曲げ剛性、厚さ、熱伝導率および熱的寸法安定性を有していることがさらに望まれる。このようなリボンが高速印刷に耐え得ることがさらに望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
色素供与層と、支持体と、高分子材料および少なくとも1種の無機粒子を含む高分子層とを含む感熱印刷用リボンを形成すること;色素受容層と支持体とを含む受容体を形成すること;前記感熱印刷用リボンの色素供与層を前記受容体の色素受容層に近接して置くこと;そして画像を前記受容体上に印刷することを含んで成る感熱印刷方法であって、印刷時に前記リボンが実質的に皺を有しないままである感熱印刷方法を記載する。
【発明の効果】
【0008】
本明細書に記載する感熱印刷方法は、印刷時の感熱印刷用リボンの皺または襞を低減するかまたはなくし、それによって色素受容要素上の対応する印刷された画像におけるプリントアーチファクト、例えばラインの存在を低減するかまたはなくす。本方法はより薄い感熱印刷用リボンの使用を可能にする。本方法は高速印刷に使用することができ、より鮮明な画像を作り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書では、皺が低減し、そして曲げ剛性の増強、厚さの減少、熱伝導率の増加または熱的寸法安定性の増大のうちの1つ以上を示す感熱印刷用リボン、ならびに該リボンを用いた印刷方法を記載する。感熱印刷用リボンは色素供与層と支持体とを含みことができる。色素供与層と支持体との間には1つ以上の中間層(例えば、接着層)が存在してもよい。色素供与層とは反対側の支持体側には1t以上の副層(例えば、スリップ層)が存在してもよい。
【0010】
色素供与層は、感熱印刷に好適な色素を含む1つまたは2つ以上の有色領域(パッチ)を含むことができる。本明細書において「色素」とは、1種または2種以上の、色素、顔料、着色剤またはそれらの組合せとなることができ、場合によっては、当業者には公知の結合剤またはキャリア中にあるものとなることができる。感熱印刷時には、1つまたは2つ以上の有色領域の少なくとも一部が色素受容要素に転写され、色素受容要素上にカラー画像を形成できる。色素供与層は、色素を含んでいないラミネート領域(パッチ)を含むことができる。ラミネート領域は1つまたは2つ以上の有色領域の後に続くことができる。感熱印刷時に、ラミネート領域全体が色素受容要素に転写されることができる。色素供与層は、1つまたは2つ以上の同じかまたは異なる有色領域と1つまたは2つ以上のラミネート領域とを含むことができる。例えば、色素受容要素上に保護ラミネート層を有する3色画像を形成するためには、色素供与層に、3種類のカラーパッチ(例えば、イエロー、マゼンタおよびシアン)と透明なラミネートパッチを含めることができる。他のパッチ組合せを使用して、モノカラーリボン、ラミネートリボンまたは種々のマルチカラーリボン(ラミネートパッチを含むまたは含まない)を含む種々の感熱印刷用リボンを形成することができる。
【0011】
感熱印刷用リボンの色素供与層には、熱によって転写可能であればいかなる色素も使用することができる。例えば、これらに限らないが、アントラキノン色素、例えば、Sumikalon Violet RS(商標)(住友化学株式会社の製品)、Dianix Fast Violet 3R−FS(商標)(三菱化学株式会社の製品)ならびにKayalon Polyol Brilliant Blue N−BGM(商標)およびKST Black 146(商標)(日本化薬株式会社の製品));アゾ色素、例えば、Kayalon Polyol Brilliant Blue BM(商標)、Kayalon Polyol Dark Blue 2BM(商標)、KST Black KR(商標)(日本化薬株式会社の製品)、Sumickaron Diazo Black 5G(商標)(住友化学株式会社の製品)ならびにMiktazol Black 5GH(商標)(三井東圧化学株式会社の製品));直接色素、例えば、Direct Dark Green B(商標)(三菱化学株式会社の製品)ならびにDirect Brown M(商標)およびDirect Fast Black D(商標)(日本化薬株式会社の製品);酸性色素、例えば、Kayanol Milling Cyanine 5R(商標)(日本化薬株式会社の製品);ならびに塩基性色素、例えば、Sumicacryl Blue 6G(商標)(住友化学株式会社の製品)およびAizen Malachite Green(商標)(保土谷化学工業株式会社の製品));下記構造のマゼンタ色素
【0012】
【化1】

【0013】
;下記構造のシアン色素
【化2】

【0014】
;および下記構造のイエロー色素
【化3】

などの昇華性色素を使用することができる。
【0015】
その他の色素の例については、米国特許第4,541,830号に記載されており、当業者には公知である。単色の色素供与層を得るために、色素を単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。色素は0.05g/m2〜1g/m2という範囲の量で使用できる。種々の態様に従って、これらの色素は疎水性となることができる。
【0016】
色素供与層は、各色の色素パッチに対して結合剤に対する色素の比を有することができる。例えば、結合剤に対するイエロー色素の比は0.3〜1.2または0.5〜1.0となることができる。結合剤に対するマゼンタ色素の比は0.5〜1.5または0.8〜1.2となることができる。結合剤に対するシアン色素の比は1.0〜2.5または1.5〜2.0となることができる。
【0017】
色素供与層を形成するために、1種または2種以上の色素を、高分子結合剤、例えばポリカーボネート;ポリ(スチレン−コ−アクリロニトリル);ポリ(スルホン);ポリ(フェニレンオキシド);セルロース誘導体、例えば、これらには限らないが、フタル酸水素酢酸セルロース、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロースもしくは三酢酸セルロース;またはそれらの組合せ中に分散させてもよい。結合剤は0.05g/m2〜5g/m2の量で使用できる。
【0018】
色素供与要素の色素供与層は、支持体上に形成するかまたは支持体上に塗布することができる。色素供与層は、印刷技術、例えば、これらには限らないが、グラビア印刷、スピンコーティング、ソルベントコーティング、押し出しコーティングまたは当業者には公知の他の方法により支持体上に形成できる。
【0019】
支持体は、感熱印刷の熱に耐え得る材料であればいずれで形成してもよい。種々の態様によれば、支持体は印刷中の寸法が安定しているものとなることができる。好適な材料としては、ポリエステル、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート);ポリアミド;ポリカーボネート;グラシン紙;コンデンサー紙;セルロースエステル、例えば、酢酸セルロース;フッ素ポリマー、例えば、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ(テトラフルオロエチレン−コヘキサフルオロプロピレン);ポリエーテル、例えば、ポリオキシメチレン);ポリアセタール;ならびにポリオレフィン、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびメチルペンタンポリマーが挙げられる。支持体は、厚さ2μm〜30μm、例えば、2μm〜10μm、3μm〜8μmまたは4μm〜6μmとなることができる。
【0020】
種々の態様によれば、下引き層、例えば、接着層またはつなぎ層、色素障壁層またはそれらの組合せを、支持体と色素供与層との間に塗布することができる。接着層またはつなぎ層は色素供与層を支持体に接着できる。好適な接着剤については当業者には公知であり、例えば、E.I.DuPont de Nemours and Company(Delaware,USA)のTyzor TBT(商標)がある。色素障壁層としては、例えば、親水性ポリマーが挙げられる。色素障壁層は色素転写濃度の向上を提供することができる。
【0021】
また、感熱印刷用リボンには、プリントヘッドが感熱印刷用リボンに付着するのを防止することができるスリップ層を含めることができる。スリップ層は色素供与層とは反対側の支持体側に塗布できる。スリップ層には、滑り材料、例えば、表面活性剤、液体滑剤、固体滑剤またはそれらの混合物(高分子結合剤を含むまたは含まない)を含めることができる。好適な滑り材料としては、油状物または100℃より低い温度で溶解する半結晶性有機固体、例えば、ポリ(ビニルステアレート)、蜜蝋、過フッ素化アルキルエステルポリエーテル、ポリ(カプロラクトン)、カーボワックス、ポリエチレンホモポリマーまたはポリ(エチレングリコール)が挙げられる。スリップ層に好適な高分子結合剤としては、ポリ(ビニルアルコール−コ−ブチラール)、ポリ(ビニルアルコール−コ−アセタール)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルアセテート)、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース、エチルセルロースおよび当業者には公知の他の結合剤が挙げられる。スリップ層に使用する滑り材料の量は、少なくともある程度は滑り材料のタイプに依存するが、0.001〜2g/m2の範囲内となることができるが、必要に応じて、それより少ないまたは多い滑り材料を使用してもよい。高分子結合剤を使用する場合には、滑り材料は高分子結合剤の0.1重量%〜50重量%または0.5重量%〜40重量%の範囲内で存在することができる。
【0022】
米国特許出願第10/667,065号に記載されている粘着防止剤、当業者には公知の剥離剤またはその両方を感熱印刷用リボンに加えることができる。好適な剥離剤としては、米国特許第4,740,496号および同第5,763,358号に記載されているものが挙げられる。
【0023】
感熱印刷用リボンは、1つまたは2つ以上の有色パッチまたはラミネートのシート、あるいは連続ロールまたはリボンとなることができる。連続ロールまたはリボンは、単色カラーまたはラミネートのうちの1つのパッチを含むことができ、あるいは種々のパッチ、例えば、シアン、マゼンタ、イエローまたはブラックのうち1つまたは2つ以上の色素パッチ、1つまたは2つ以上のラミネートパッチまたはそれらの組合せ領域を交互に有することもできる。
【0024】
図1は、感熱式プリンターにおいて使用できるマルチカラー感熱印刷用リボン1を示す。リボン1は、例えば、図1に示されるような、反復する一連のカラーパッチ、イエローカラーパッチ2、マゼンタカラーパッチ3およびシアンカラーパッチ4を有することができる。シアンカラーパッチ4の直後に透明なラミネートパッチ(示していない)が存在してもよい。各カラーパッチ2、3および4は、印刷に使用される色素転写領域5を含むことができる。色素転写領域5はリボン1の一端からもう一方の端にかけて広がることができ、またはその転写領域に並んで一組の向かい合った縦方向の端部領域6および7がある場合もある。端部領域6および7は印刷には使用されない。端部領域6および7が存在する場合には、各組の端部領域6および7は一まとめにした色素転写領域5と同様に着色される。
【0025】
感熱印刷用リボンを使用する感熱式プリンターは、図2に示されるように、色素受容要素に関して重ねた、連続画像色素転写、例えば、イエロー、マゼンタおよびシアン色素の転写を達成するよう操作することができる。作動中、感熱印刷用リボン1は、リボン供給源10からプリントヘッド49を通り過ぎてリボン巻き取り機構、例えば、リール54まで移動できる。リボン1の各パッチがサーマルプリントヘッド49を通り過ぎて進行する際に、それをプラテンローラー51などの表面上で受容体12と位置を合わせ、受容体12に近接近させる。プリントヘッド49が熱を加え、リボン1のパッチから受容体12へ、像様の色素またはラミネートの転写を可能にする。種々の機械的配置については、感熱印刷に関する当分野では公知であるということに留意されたい。このようないずれの配置も、本明細書において記載する感熱印刷用リボンを用いた使用に適している。
【0026】
印刷時、印刷に付されているリボン1のパッチは、リボン供給源10に対して作用するリボン巻き取り機構54の牽引力によって生じる縦方向の張力を受け得る。また、印刷に付されているパッチは、プリントヘッド49によって加熱され得る。リボン1のパッチの加熱は、加熱による軟化によってパッチ部分でリボン1を弱める場合がある。選択領域内でのリボン1の軟化は、加熱されたリボンと加熱されていないリボンとの間の移行領域内での皺または襞形成の原因となり得る。皺は、リボン1における縦方向の張力によって形成される場合もあるし、またはその張力によって悪化する場合もある。リボン1が色素転写領域5周囲に端部領域6および7を含んでいる場合、端部領域6および7は必ずしもプリントヘッド49により加熱されるとは限らないため、色素転写領域5と端部領域6および7との間の移行時に皺が発生する可能性がある。例えば、図3に示されるように、皺62は端部領域6および7(存在する場合)に近接した移行領域64および/または加熱された色素転写領域5aのリヤ移行領域66で形成され得る。移行領域64および66の皺は、次の色素転写領域5bのフロント部分68まで広がるまたは伸びる可能性がある。襞または皺62は、図3に示されるように、傾斜しているか、直線をなしているか、または波状に現れる。次の色素転写領域5bのフロント部分68に入った襞または皺62により、画像転写が襞で起こる場合には望ましくないラインアーチファクトが対応する位置、すなわち、色素受容要素12の前部および/または側端部に印刷される。ラインアーチファクトはより濃い色素転写ラインとしてまたは色素の転写不良として現れる。端部領域6および7が存在する場合には、端部領域6および7に近接した色素転写領域5の領域64において、弱まった色素転写領域5と非加熱端部領域6および7間の急激な移行により襞または皺62が最も顕著となり得る。
【0027】
感熱印刷技術においては、感熱印刷用リボンの皺は、上記のように張力および/またはリボンの加熱によって発生し得る。感熱印刷用リボンは薄くなることができ、例えば、3μm〜30μm、例えば、4μm〜20μmまたは4μm〜8μmとなることができ、そのために、リボンのあらゆる不均一性、リボンの不均一な変形またはリボンの局部温度の変化がリボンに歪みを生じさせ得る特定の方向に局部圧縮力をもたらし、圧縮力を受けた領域(移行領域)の周辺部に襞または皺を形成する可能性がある。長方形フィルム、例えば、感熱印刷用リボンの限界座屈荷重、Pcは、圧縮荷重下では下式として表すことができる。
【0028】
【数1】

【0029】
(式中、aおよびbは、それぞれ、フィルムの幅および長さであり、mは歪みが生じた状態での正弦波の数であり、Dは曲げ剛性(bending stiffnessまたはbending rigidity)と呼ばれるものであり、次式として表される。
【0030】
【数2】

【0031】
(式中、Eはヤング率であり、tはフィルムの厚さであり、vはフィルムのポアソン比である))。上記方程式は、フィルムの所与の寸法(長さおよび幅)について、限界座屈荷重がフィルムの曲げ剛性(ヤング率の一次関数であり、フィルムの厚さの三次関数である)に比例することを明示している。従って、感熱印刷用リボンのヤング率、厚さまたはその両方の変化はリボンの限界座屈荷重に影響を及ぼす場合がある。より厚いリボンもしくはより高いヤング率を有するリボンまたはその両方は、印刷時のリボンの座屈または皺によりよく耐えることができる。
【0032】
上記式ではより厚い印刷用リボンを使用するためのものが導かれるが、より薄い印刷用リボンが実際には望ましい。より薄いリボンは、より薄い層を使用することによって実現されるものであるため、使用する材料を低減することによって、コスト優位性を提供できる。また、感熱式プリンターのリボン取り付けスペースも低減することができる。取り扱いおよび印刷時に剛性を与える感熱印刷用リボンの支持体は、リボン中の最も厚い層となることができる。しかし支持体は、印刷後、廃棄され廃棄物となる場合がある。それは使用後に廃棄される場合があるため、支持体の材料および寸法選択は、得られる感熱印刷用リボンの望ましい剛性を考慮に入れて決定することができる。
【0033】
リボン中の1つまたは2つ以上の層のヤング率、Eを増加させることによって感熱印刷用リボンの曲げ剛性を強化することで、印刷時の感熱印刷用リボンにおける皺または襞の発生を低減することができる。ヤング率の増加により、リボンの限界座屈荷重が同じ割合で増加することができる。リボンの限界座屈荷重がリボンに対する圧縮力より高い場合には、襞または皺の発生が低減されるかまたはなくなる。感熱印刷用リボンのヤング率を増加させる利点は、襞または皺を低減するかまたはなくし、またリボンをより薄くすることができるということである。
【0034】
印刷時の襞または皺の発生は、感熱印刷用リボンの熱的寸法安定性を増大させることによっても低減することができる。熱的寸法安定性とは、リボンが温度の上昇を受けたときにほとんど歪曲なくその形状および寸法を維持するその能力を指す。材料が、感熱印刷時に生じるような高温、例えば、材料のガラス転移点より高いが融点より低い温度に付されても、歪曲、カールまたは変形が実質的に生じない場合には、熱的に寸法が安定している。「実質的に生じない」とは、歪曲、カールまたは変形が材料の15%未満、例えば、10%未満、5%未満、2%未満で生じることまたは材料の一部たりとも生じないことを意味する。高分子材料は、材料のガラス転移点を超える温度に曝されると収縮を起こす場合があり、これによって材料の形状および寸法が変化する。フィルム材料の製造工程中に内部応力が材料内で生じ、その材料が加熱されるまで、その応力が材料内に残留応力として事実上残り、これによって材料が1つまたは2つ以上の方向に収縮する。残留応力パターンおよび収縮量は、フィルムが延伸された方向、材料の性質および/または加工条件を示す場合がある。薄い高分子フィルムが張力を受けると、温度の上昇に起因するフィルムのヤング率の低下が起こり、その結果としてフィルムが変形する可能性がある。この変形はフィルムの襞または皺として現れる場合がある。感熱印刷用リボンの熱的寸法安定性を増大させることによって、印刷時の襞または皺を低減するかまたはなくすことができる。
【0035】
感熱印刷用リボンの熱伝導率を増加させることによっても印刷時の襞または皺の発生を低減するかまたはなくすことができる。リボンの熱伝導率を増加させることで、より多くの熱をリボンの厚みを通じてより短い時間で伝達することが可能になり、画像を印刷するために使用する熱が少なくなることができ、時間が短くなることができ、またはその両方が可能になる。また、熱量または加熱時間を低減することによっても熱により生じるリボンの変形が低減し、印刷時の皺が低減するかまたはなくなる。種々の態様によれば、熱伝導率が増加すると、リボン全体に広がる熱よりもより多くの熱がリボンを通って下に向けられることで加熱領域の周縁部がより明瞭になる結果、より鮮明な画像を得ることができる。
【0036】
感熱印刷用リボンの皺が高速印刷の制限因子であるため、皺形成に対し高い耐性を有する感熱印刷用リボンにより高速印刷が可能になり得る。本明細書において「高速」印刷とは、プリント速度が4ms/ライン以下、2ms/ライン以下または1.5ms/ライン以下であることを指す。
【0037】
望ましいヤング率、熱的寸法安定性および/または熱伝導率を実現するために、感熱印刷用リボンの1つまたは2つ以上の層に、高分子材料と無機粒子、例えば、シリカ、ガラスビーズ、セラミック粒子、ポリマー粒子、金属粒子(例えば、Au、Ag、Cu、Pd、Pt、Ni)、アルミナ、マイカ、グラファイト、カーボンブラックまたはそれらの組合せなどを含めることができる。無機粒子はポリマーより高いヤング率、熱的寸法安定性および/または熱伝導率を有することができる。このような無機粒子を感熱印刷用リボンの高分子層に導入することで、層のヤング率、熱的寸法安定性および/または熱伝導率を高めることができる。感熱印刷用リボンにおいて好適な高分子材料は6GPa以下のヤング率を有することができ、一方、無機粒子は6GPaより高いヤング率(例えば、45GPa以上)を有することができる。感熱印刷用リボンに好適な高分子材料は0.3W/mK以下の熱伝導率を有することができ、一方、無機粒子の熱伝導率は0.3W/mKより高くてもよい(例えば、2W/mK以上、50W/mK以上または200W/mK以上)。感熱印刷用リボンのヤング率または熱伝導率を増加させるために、感熱印刷用リボンの高分子層に、それぞれ、層の高分子材料より高いヤング率またはより高い熱伝導率を有する無機粒子を添加してもよい。
【0038】
種々の態様によれば、無機粒子を含む高分子材料は、感熱印刷用リボンの色素供与層より下にある任意の層に存在することができる。例えば、無機粒子を含む高分子材料は、色素供与層と支持体との間の層、支持体、支持体の真下の層またはそれらの組合せ中に存在することができる。無機粒子を含む高分子材料によって一つの独立層を形成してもよいし、またはその無機粒子を含む高分子材料を同時押し出しして、積層し、あるいは1つまたは2つ以上の他のポリマーと組み合わせて感熱印刷用リボンの1つの層を形成してもよい。無機粒子を有する高分子材料を含む層は、逐次または同時に、一方向または二方向(二軸)に引き伸ばすことによって延伸することができる。種々の態様によれば、無機材料を含むポリマーが感熱印刷用リボンの支持体を形成するか、または支持体に近接した層を形成することができる。
【0039】
高分子材料はポリマー、例えば、熱可塑性ポリマー、水溶性ポリマー、熱可塑性エラストマーまたはそれらの混合物となることができる。例えば、高分子材料は、セルロースエステル、例えば、硝酸セルロースまたは酢酸セルロース;ポリ(ビニルアセテート);ポリエステル、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)またはポリ(エチレンナフタレート);ポリカーボネート;ポリアミド;ポリエーテル;ポリオレフィン;またはそれらの組合せとなることができる。高分子材料は中空層または非中空層を形成することができる。
【0040】
好適な高分子材料としては、熱可塑性樹脂、例えば、ポリラクトン(例えば、ポリ(ピバロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、など);ジイソシアネート、例えば、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’ジフェニル−メタンジイソシアネート、3,3−’ジメチル−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンなどと線状長鎖ジオール(例えば、ポリ(テトラメチレンアジパート)、ポリ(エチレンアジパート)、ポリ(1,4−ブチレンアジパート)、ポリ(エチレンスクシネート)、ポリ(2,3−ブチレンスクシネート)、ポリエーテルジオールなど)の反応によって生じるポリウレタン;ポリカーボネート(例えば、ポリ(メタンビス(4−フェニル)カーボネート)、ポリ(1,1−エーテルビス(4−フェニル)カーボネート)、ポリ(ジフェニルメタンビス(4−フェニル)カーボネート)、ポリ(1,1−シクロヘキサンビス(4−フェニル)カーボネート)、ポリ(2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)カーボネートなど);ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン;ポリアミド(例えば、ポリ(4−アミノ酪酸)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリ(6−アミノヘキサン酸)、ポリ(m−キシリレンアジパミド)、ポリ(p−キシリエンセバカミド)、ポリ(2,2,2−トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)(E.I.Dupont de Nemours(デュポン)よりNomex(商標)として販売されている)、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(デュポンよりKevlar(商標)として販売されている)など);ポリエステル(例えば、ポリ(エチレンアゼレート)、ポリ(エチレン−1,5−ナフタレート)、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンオキシベンゾエート)(A−Tell(商標)として販売されている)、ポリ(パラ−ヒドロキシベンゾエート)(Eastman Chemical Company(米国、テネシー州、キングスポート)よりEkonol(商標)として販売されている)、ポリ(1,4−シクロヘキシリデンジメチレンテレフタレート)(Eastman Chemical CompanyよりKodel(商標)(シス)として販売されている)、ポリ(1,4−シクロヘキシリデンジメチレンテレフタレート)(Eastman Chemical CompanyよりKodel(商標)(トランス)として販売されている)、ポリエチレンテレフスレート(polyethylene terephthlate)、ポリブチレンテレフタレートなど);ポリ(アリーレンオキシド)(例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンオキシド)など)、ポリ(アリーレンスルフィド)(例えば、ポリ(フェニレンスルフィド)など);ポリエーテルイミド;ビニルポリマーおよびそれらのコポリマー(例えば、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−ビニルアセテートコポリマーなど);ポリアクリル、ポリアクリレートおよびそれらのコポリマー(例えば、ポリエチルアクリレート、ポリ(n−ブチルアクリレート)、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(n−プロピルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、エチレン−アクリル酸コポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、アクリロニトリルコポリマー、メチルメタクリレート−スチレンコポリマー、エチレン−エチルアクリレートコポリマー、メタクリル化ブダジエン−スチレンコポリマーなど);ポリオレフィン(例えば、ポリ(エチレン)((線状)低および高密度)、ポリ(プロピレン)、塩素化低密度ポリ(エチレン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(エチレン)、ポリ(スチレン)など);イオノマー;ポリ(エピクロロヒドリン);ポリ(ウレタン)(例えば、ジオール(例えば、グリセリン、トリメチロール−プロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、ペンタエリトリトール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなど)とポリイソシアネート(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアンテ(2,6−tolylene diisocyante)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシコヘキシルメタンジイソシアネート(4,4’−dicycohexylmethane diisocyanate)など)との重合生成物);およびポリスルホン(例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのナトリウム塩と4,4’−ジクロロジフェニルスルホンとの反応生成物);フラン樹脂(例えば、ポリ(フラン));セルロースエステルプラスチック(例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、プロピオン酸セルロースなど);シリコーン(例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジメチルシロキサンコ−フェニルメチルシロキサン)など);タンパク質プラスチック;ポリエーテル;ポリイミド;ポリハロゲン化ビニリデン;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリテトラフルオロエチレン;ポリアセタール;ポリスルホネート;ポリエステルイオノマー;ポリオレフィンイオノマー;ならびに上記ポリマーのコポリマーおよび/または混合物が挙げられる。種々の態様によれば、熱可塑性樹脂はポリエステルまたはα−β不飽和モノマーまたはコポリマーから生じるポリマーとなることができる。
【0041】
有用な熱可塑性エラストマーとしては、例えば、臭素化ブチルゴム;塩素化ブチルゴム;ポリウレタンエラストマー;フルオロエラストマー;ポリエステルエラストマー;ブタジエン/アクリロニトリルエラストマー;シリコーンエラストマー;ポリ(ブタジエン);ポリ(イソブチレン);エチレン−プロピレンコポリマー;エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー;スルホン化エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー;ポリ(クロロプレン);ポリ(2,3−ジメチルブタジエン);ポリ(ブタジエン−ペンタジエン);クロロスルホン化ポリ(エチレン);ポリ(スルフィド)エラストマー;ガラス性または結晶性ブロック(例えば、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニル−トルエン)、ポリ(t−ブチルスチレン)またはポリエステル)のブロックコポリマー;ならびにエラストマーブロック(例えば、ポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−ブチレンコポリマーおよびポリエーテルエステル)が挙げられる。好適なブロックコポリマーの一例は、シェル・ケミカルズ社(Shell Chemical Company)よりKraton(商標)の商品名で製造されているポリ(スチレン)−ポリ(ブタジエン)−ポリ(スチレン)ブロックコポリマーである。上記ポリマーのコポリマーおよび/または混合物も使用することができる。
【0042】
さらなる好適なポリマーとしては、線状ポリエステルが挙げられる。任意の特定の配合の用途のために選択されるポリエステルは、無機粒子を含有するポリマーの所望の物理的性質および特徴に依存する。例えば、考慮すべき性質には、引張強さ、ヤング率および/または熱的寸法安定性が含まれ得る。ポリエステルはホモポリエステルもしくはコポリエステル、またはそれらの混合物であってもよい。ポリエステルは有機ジカルボン酸と有機ジオールとの縮合によって調製することができる。有用なポリエステルの具体例を、ジオールおよびジカルボン酸前駆体に関して以下で記載する。
【0043】
好適なポリエステルとしては、芳香族、脂環式または脂肪族ジオールと脂肪族、芳香族または脂環式ジカルボン酸との縮合によって生じるものが挙げられ、脂環式、脂肪族または芳香族ポリエステルとなることができる。典型的な脂環式、脂肪族および芳香族ポリエステルとしては、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(シクロヘキシレンジメチレン)(poly(cyclohexlenedimethylene))、ポリ(エチレンドデケート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(エチレン(2,7−ナフタレート))、ポリ(メタフェニレンイソフタレート)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(エチレンスクシネート)、ポリ(エチレンアジパート)、ポリ(エチレンセバケート)、ポリ(デカメチレンアゼレート)、ポリ(エチレンセバケート)、ポリ(デカメチレンアジパート)、ポリ(デカメチレンセバケート)、ポリ(ジメチルプロピオラクトン)、ポリ(パラ−ヒドロキシベンゾエート)(Eastman Chemical CompanyよりEkonol(商標)として販売されている)、ポリ(エチレンオキシベンゾエート)(A−tell(商標)として販売されている)、ポリ(エチレンイソフタレート)、ポリ(テトラメチレンテレフタレート、ポリ(ヘキサメチレンテレフタレート)、ポリ(デカメチレンテレフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(トランス)、ポリ(エチレン1,5−ナフタレート)、ポリ(エチレン2,6−ナフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(Eastman Chemical CompanyよりKodel(商標)(シス)として販売されている)およびポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(Eastman Chemical CompanyよりKodel(商標)(トランス)として販売されている)が挙げられる。
【0044】
好適なポリエステル化合物を、ジオールと芳香族ジカルボン酸との縮合により調製することができる。典型的な芳香族カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、α−フタル酸、1,3−ナプタレンジカルボン酸(1,3−napthalenedicarboxylic acid)、1,4ナプタレンジカルボン酸(1,4 napthalenedicarboxylic acid)、2,6−ナプタレンジカルボン酸(2,6−napthalenedicarboxylic acid)、2,7−ナプタレンジカルボン酸(2,7−napthalenedicarboxylic acid)、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニスルホン−ジカルボン酸(4,4’−diphenysulfphone−dicarboxylic acid)、1,1,3−トリメチル−5−カルボキシ−3−(p−カルボキシフェニル)−イダン、ジフェニルエーテル、4,4’−ジカルボン酸およびビス−p(カルボキシ−フェニル)メタンが挙げられる。種々の態様によれば、ベンゼン環に基づく芳香族カルボン酸、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸およびオルトフタル酸を使用することができる。種々の態様によれば、芳香族カルボン酸はテレフタル酸となることができる。
【0045】
種々の態様によれば、好適なポリエステルとしては、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ならびにそれらのコポリマーおよび/または混合物が挙げられる。種々の態様によれば、ポリエステルはポリ(エチレンテレフタレート)となることができる。
【0046】
ナノコンポジットの形成において使用に好適な他の熱可塑性ポリマーは、式R12C=CH2のα−β−不飽和モノマーの重合により形成することができる(式中、R1およびR2は同じであるかまたは異なっており、それらはシアノ、フェニル、カルボキシ、アルキルエステル、ハロ、アルキル、1つまたは2つ以上のクロロもしくはフルオロで置換されたアルキルまたは水素である)。このようなポリマーの例としては、エチレン、プロピレン、ヘキセン、ブテン、オクテン、ビニルアルコール、アクリロニトリル、ハロゲン化ビニリデン、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、塩化ビニル、スチレン、ならびにそれらのコポリマーおよび/または混合物が挙げられる。
【0047】
高分子材料に、α−β−不飽和モノマーの重合によって形成された熱可塑性ポリマーが含まれる種々の態様によれば、熱可塑性ポリマーはポリ(プロピレン)、ポリ(エチレン)、ポリ(スチレン)、またはそれらのコポリマーおよび/もしくは混合物となることができる。種々の態様によれば、熱可塑性ポリマーはポリ(プロピレン)ポリマーまたはコポリマーとなることができる。
【0048】
高分子材料において使用に好適な親水性ポリマーとしては、米国特許第5,683,862号;同第5,891,611号;および同第6,060,230号に記載されているポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーには、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド)、ポリ6,(2−エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(スチレンスルホネート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメタクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、多糖、デキストラン、ならびにセルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよび当分野で公知の他のもの)が含まれる。
【0049】
好適な親水性ポリマーとしては、親水コロイド、例えば、ゼラチンまたはゼラチングラフト化ポリマーが挙げられる。画像化要素に使用される既知ゼラチンタイプのいかなるものも使用することができ、例えば、アルカリ処理ゼラチン(牛骨または皮ゼラチン)、酸処理ゼラチン(ブタ皮または骨ゼラチン)、修飾ゼラチン(例えば、米国特許第6,077,655号および本明細書において引用される参考文献に開示されているもの)、ゼラチン誘導体(例えば、部分的フタル化ゼラチン、アセチル化ゼラチン、脱イオン化ゼラチンおよび米国特許第4,855,219号;同第5,066,572号;同第5,248,558号;同第5,330,885号;同第5,910,401号;同第5,948,857号;および同第5,952,164号に開示されているようなビニルポリマー上にグラフト化されたゼラチン)がある。本発明において単独またはゼラチンと組み合わせて用いることができる他の親水コロイドとしては、デキストラン、アラビアガム、ゼイン、カゼイン、ペクチン、コラーゲン誘導体、コロジオン、寒天、クズウコンおよびアルブミンが挙げられる。その他の有用な親水コロイドとしては、水溶性ポリビニル化合物(例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドおよびポリ(ビニルピロリドン))が挙げられる。
【0050】
無機粒子は、所望の物理的性質を実現するのに十分な任意の量で高分子材料に添加できる。無機粒子の添加量が少なすぎると、性質の所望の改善は達成できない。無機粒子の添加量が多すぎると、感熱印刷用リボンが脆弱になるか、または一般加工条件下での加工に適さなくなる可能性がある。無機粒子は、高分子材料に50重量%以下、例えば、2重量%〜50重量%、2重量%〜20重量%、2重量%〜12重量%または4重量%〜8重量%の量で含めることができる。無機粒子の添加レベルが低い場合には、高分子母材と無機粒子の組合せを、無機粒子を含まない高分子母材と同じように加工することが可能である。それゆえ、同様の加工条件下で同じ製造装置を使用することが可能である。また、無機粒子の低添加により、コストの増加がほとんどなく、機械的および熱的性質が向上した感熱印刷用リボンも提供される。無機粒子は膨潤性となることができ、その結果他の物質、例えば、有機イオンまたは分子は、無機粒子にインターカレートし、そして/または無機粒子を剥離することができ、その結果、高分子材料中で無機粒子の望ましい分散が起こる。
【0051】
無機粒子は、6GPaより高いヤング率、例えば、45GPa以上を有することができる。無機粒子は、高分子材料よりも高いヤング率、例えば、高分子材料のヤング率の2倍、3倍、4倍以上を有することができる。無機粒子の熱伝導率は、0.3W/mKより高く(例えば、2W/mK以上、50W/mK以上または200W/mK以上)あり得る。無機粒子は、いかなる形状、例えば、不整形、円形、棒状、板状または他の任意の形状も有することができる。無機粒子は最小寸法0.5nm以上、最大寸法2000nm以下を有することができる。無機粒子のアスペクト比(最大寸法と最小寸法の比)は1:1〜4000:1または1:1〜200:1となることができる。
【0052】
好適な無機材料には上記性質の1つまたは2つ以上を有するものが挙げられ、それらとして、例えば、シリカ、ガラスビーズ、セラミック粒子、ポリマー粒子、金属粒子(例えば、Au、Ag、Cu、Pd、Pt、Ni)、アルミナ、マイカ、グラファイト、カーボンブラックまたはそれらの組合せが挙げられる。高分子材料よりも高いヤング率、熱的寸法安定性または熱伝導率を有するいかなる無機材料も使用に好適となることができる。
【0053】
種々の態様によれば、無機粒子は直径5nm〜100nmを有するアルミナとなることができる。アルミナのヤング率は250Gpa〜400Gpaとなることができる。アルミナ粒子を感熱印刷用リボンに混合することにより感熱印刷用リボンのヤング率を高めることができる。また、アルミナ粒子によって印刷用リボンの熱的寸法安定性および熱伝導率も増加させることができる。
【0054】
種々の態様によれば、無機粒子を含む高分子材料はナノコンポジット材料となることができる。ナノコンポジットとは、混合または結合により2種以上の材料(ただし、少なくとも1種の材料の最大直径がナノメーター範囲である)を組み合わせて作製された材料である。ナノコンポジット中の少なくとも1種の材料はとても小さいため、ナノコンポジットは均質物質様に作用する。ナノコンポジットは、高分子材料に無機粒子を比較的低い重量%で添加することにより、コストの増加がほとんどなく、高分子材料の1つまたは2つ以上の物理的性質を向上させながら、機械的および熱的性質を向上させることができる。近年、ナノコンポジット材料は、自動車業界および包装業界などの工業部門からその独特の物理的性質に強い関心が寄せられている。これらの性質としては、米国特許第4,739,007号;同第4,810,734号;同第4,894,411号;同第5,102,948号;同第5,164,440号;同第5,164,460号;同第5,248,720号;同第5,854,326号;および同第6,034,163号に記載されているように、改良熱歪曲特性、遮断性および機械的性質が挙げられる。感熱印刷用リボンにおけるナノコンポジットの使用についてはこれまで示されていない。
【0055】
ナノコンポジットに用いるのに好適な無機粒子としては、層間間隔を広げるために膨張剤でインターカレートされ得る層をなし、分離されたナノ粒子を形成する材料が挙げられる。このような無機層状材料としては、フィロケイ酸塩(例えば、スメクタイトクレイ、特に、モンモリロナイト、ナトリウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイトおよび/またはカルシウムモンモリロナイト(これらの例は米国特許第4,739,007号、同第4,810,734号、同第4,889,885号、同第4,894,411号、同第5,102,948号、同第5,164,440号、同第5,164,460号、同第5,248,720号、同第5,973,053号および同第5,578,672号に記載されている);ノントロナイト;バイデライト;ボルコンスコイト;ヘクトライト;サポナイト;ソーコナイト;ソボッカイト(sobockite);スティーブンサイト;スビンホルダイト(svinfordite);バーミキュライト;ハロイサイト;マガダイト;ケニヤアイト;タルク;マイカ;カオリナイト;ならびにそれらの混合物)が挙げられる。その他の好適な無機層状材料としては、イライト、イライト/スメクタイト混合層鉱物、例えば、レジカイト(ledikite)およびイライトと上に列挙したクレイ材料との混合物が挙げられる。アニオン性ポリマーを有する特に有用なその他の好適な無機層状材料が、正に帯電した層と層間空間に交換可能なアニオンを有している層状ハイドロタルサイトまたは複水酸化物、例えば、Mg6Al3.4(OH)18.8(CO31.72Oである。層状材料の層間間隔を広げるために、膨張剤でインターカレートされ得るとすれば、層がほとんどまたは全く帯電していないその他の層状材料が有用である。このような層状材料としては、塩化物、例えば、FeCl3、FeOCl;カルコゲニド(例えば、TiS2、MoS2およびMoS3);シアン化物(例えば、Ni(CN)2);および酸化物、例えば、H2Si25、V613、HTiNbO5、Cr0.50.52、V25、AgドープV25、W0.22.87、Cr38、MoO3(OH)2、VOPO4・2H2O、CaPO4CH3・H2O、MnHAsO4・H2OおよびAg6Mo1033が挙げられる。
【0056】
種々の態様によれば、無機層状材料は、層が負に帯電し、層間空間に釣り合いのとれた数の交換可能なカチオンを有しており、総電荷中性を維持している2:1タイプのフィロケイ酸塩となることができる。例えば、カチオン交換能が100グラム当たり50〜300ミリグラム当量のフィロケイ酸塩を使用することができる。
【0057】
ナノコンポジットにおいて使用に好適なスメクタイトクレイは天然物であっても合成物であってもよい。この違いは粒径および/または付随する不純物のレベルに影響を及ぼし得る。合成クレイは対応する天然クレイよりも少なくとも1つの寸法が小さく、そのためより小さいアスペクト比をとる。合成クレイは対応する天然クレイより純粋となることができる。合成クレイは対応する天然クレイより狭い粒径分布を有することができる。合成クレイは使用前の精製や分離を必要としないことがある。合成物または天然物を問わず、好適なクレイ粒子は、長さ10nm〜5000nm間、例えば、50nm〜2000nm間または100nm〜1000nm間を有するものとなることができる。無機粒子の粒子寸法が小さすぎると、その無機粒子を添加したポリマーの物理的性質がほとんど向上しない場合がある。粒子寸法が大きすぎると、その粒子を添加したポリマーの光学的性質(例えば、透明性)に影響を及ぼす場合がある。クレイ粒子の厚さは0.5nm〜10nm間または1nm〜5nm間の値をとることができる。アスペクト比は>10:1、>100:1または>1000:1となることができる。種々の態様によれば、クレイ粒子の厚さは、粒子を含有するポリマーの透明性が維持され得るようなものである。
【0058】
層状材料として提供されるものを含む無機粒子は、有機分子、例えば、アンモニウムイオンで処理することができる。有機分子は近接する平面層間にインターカレートし、および/またはその有機分子が無機粒子または層状材料の各層を剥離することができる。層にインターカレートし、または層を剥離することにより、ポリマーと混合される層の、ポリマーの1つまたは2つ以上の性質、例えば、機械的強度、熱伝導率および/または熱的寸法安定性を向上させることが可能になる。層は、ポリマーの重合前、重合後または重合中にポリマーと混合することができる。ナノコンポジットを形成する、混合される無機粒子とポリマーは、均質なポリマー単位と同じように加工することが可能である。
【0059】
高分子材料には、無機粒子のほかにも追加成分を含めることができる。例えば、高分子材料には、1つまたは2つ以上の、核形成剤;増量剤;可塑剤;衝撃改質剤;鎖延長剤;滑剤;帯電防止剤;顔料、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウムなど;分散剤、例えば、脂肪アミド(例えば、ステアルアミド)または脂肪酸の金属塩(例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム);着色剤もしくは色素、例えば、ウルトラマリンブルーまたはコバルトバイオレット;酸化防止剤;蛍光増白剤;紫外線吸収剤;難燃剤;粗面処理剤;架橋剤;空隙形成剤またはそれらの組合せも含めることができる。本明細書において「色素」、「着色剤」および「顔料」とは、互いに交換可能な用語であり、各々独立に、色素、着色剤および顔料を含むことを意味している。上記の任意の成分のタイプは、当業者には公知のように、必要に応じて決められた適切な量で添加することができる。無機粒子は、当分野で公知の任意の好適な手段により高分子材料に組み込むことができる。例えば、無機粒子を所望のポリマーの好適なモノマーまたはオリゴマー中に分散させることができる。モノマーまたはオリゴマーは、例えば、米国特許第4,739,007号および同第4,810,734号に開示されているものと同様の方法により重合させることができる。あるいは、無機粒子をポリマー、オリゴマーまたはそれらの混合物と、ポリマー、オリゴマーまたは混合物の融点以上の温度で溶解ブレンドしてもよい。溶解ブレンドした組成物は、例えば、米国特許第5,385,776号;同第5,514,734号;または同第5,747,560号に開示されているものと同様の方法により剪断することができる。
【0060】
無機粒子を高分子材料中に配向して、熱伝導率を高めることができる。高分子材料中に熱伝導性無機粒子を等方性(ランダム)配向することによって高分子材料の熱伝導率が増加し、一般に、その結果として感熱印刷用リボン全体の伝導率が増加し得る。このことは、熱伝導率の増加によって感熱印刷用リボンを通じたプリントヘッドから色素供与層へのより迅速かつ効率的な熱伝達が可能となることから、優れた画像転写を維持しながら、高速印刷および/またはより低い温度での印刷を可能にする。高分子材料中に熱伝導性無機粒子を異方性配向することによっても感熱印刷用リボンの伝導率が同様に増加し、優れた画像転写を維持しながら、高速印刷および/または印刷温度の低下が可能となる。また、高分子材料の厚さに沿った粒子の異方性配向(すなわち、材料の上から下に粒子を整列させること)では、横方向よりも(色素を転写する)厚さ方向により多くの熱が向けられるため、より鮮明な画像ももたらされる。感熱印刷用リボンおよびその各層は、当分野で公知の任意の好適な方法、例えば、溶液流延、押し出し成形、同時押し出し成形、吹き込み成形、射出成形または積層により形成できる。感熱印刷用リボン全体またはその各層は、一方向または二方向に引き伸ばすことによって延伸することができる。種々の態様によれば、高分子材料および無機粒子を含む層は、少なくとも一方向に延伸することができる。種々の態様によれば、高分子材料および無機粒子を含む層は、高分子材料の二軸延伸に関する当分野で公知の任意の方法により、同時または逐次に、両方向に(すなわち、二軸に)延伸することができる。
【0061】
本明細書において記載する感熱印刷用リボンは、以下の米国特許第6,600,505号;同第6,309,498号;同第6,303,228号;同第6,303,210号;同第6,088,048号;同第6,063,842号;同第6,057,385号;同第6,043,833号;同第5,977,208号;同第5,932,643号;同第5,908,252号;同第5,853,255号;同第5,698,490号;同第5,681,379号;同第5,552,231号;同第5,547,298号;同第5,538,351号;同第5,342,672号;同第5,318,368号;同第5,248,652号;同第5,240,781号;同第5,182,252号;同第5,158,813号;同第5,157,413号;同第5,128,308号;同第5,089,350号;同第4,995,741号;同第4,988,563号;もしくは同第4,983,445号、または米国特許出願公開番号US2002/0033875の1つまたは2つ以上に記載されている構造を有することができる。感熱印刷用リボンは厚さ3μm〜30μmまたは4μm〜20μmを有することができる。印刷時に感熱印刷用リボンには皺または襞が実質的にない状態となることができ、ここで、「実質的にない」とは、無機粒子を含まない感熱印刷用リボンよりも、印刷時の皺の発生が少なくとも80%低減すること、例えば、85%、90%、95%または100%の低減を意味する。
【0062】
感熱印刷用リボンに望ましい、印刷時の襞または皺の低減を補助し得る性質としては、ヤング率、厚さ、熱伝導率および熱的寸法安定性が挙げられる。本明細書において記載するこれらの性質の1つまたは2つ以上を有する感熱印刷用リボンにより、印刷時の襞または皺を低減するかまたはなくし、それによって色素受容要素上の該当印刷画像におけるプリントアーチファクトの出現を低減するかまたはなくす。また、本明細書において記載する感熱印刷用リボンは、印刷時の皺を低減するかまたはなくすことによって高速印刷も可能となることができ、熱的に寸法が安定している。
【実施例】
【0063】
次の例により本発明の実施を例示する。それらは、本発明のあらゆる可能な変形を網羅するものではない。部および百分率は、特に断りのない限り重量による。
【0064】
例1−ヤング率
この試験では2つの異なる種類のナノクレイ粒子を使用した。Laponite(商標)RDSおよびCloisite(商標)Na+は、サザン・クレイ・プロダクツ社(Southern Clay Products,Inc)(米国、テキサス州、ゴンザレス)により提供された。Laponite RDSは、白色微粉末の合成ヘクトライトである。Cloisite Na+は、黄緑色粉末の精製天然スメクチックケイ酸塩である。それらの性質の一部を表1に挙げる。アスペクト比、L/tは、クレイ粒子の最大寸法と最小寸法との比として定義される。
【0065】
【表1】

【0066】
タイプ4、クラス30の脱イオン化していないゼラチンを使用した。ゼラチン密度は1.34g/cm3であった。ヤング率は3.19Gpaであった。
【0067】
高剪断装置を使用して50℃の水浴中で固体クレイとゼラチンの水性混合物を作製した。40ミルクリアランスのコーティングナイフを使用して透明ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)支持体に混合物を塗布した。塗膜を冷却し、その後周囲条件に置いて少なくとも2日間乾燥させた。PET支持体から約1ミルの独立したフィルムをはがし、さらに試験を行うまで標準的な50%RH、21℃の環境で保存した。上記の手順を使用して、以下のサンプルを作製した:サンプル1−純粋ゼラチン;サンプル2−Cloisite−ゼラチンコンポジット;サンプル3−Laponite−ゼラチンコンポジット。以下で詳述するように、各クレイの種々の添加範囲のものを調製した。
【0068】
試験手順ASTM D 882−80aに従い、標準的な環境50%RHおよび23℃において、ゼラチンサンプルおよびCloisiteを5%添加したCloisite−ゼラチンコンポジットについての引張強さ試験を実施した。引張試験は、インストロンフレームおよびロードセルを備えた、Testwork バージョン4.5ソフトウェアによって操作されるSintech 2を使用して行った。50lbsのロードセルと一組のグリップ(フラットフェースのグリップとポイントフェースのグリップ)を使用した。サンプルの大きさは幅6.35mm、ゲージ長63.5mmであった。クロスヘッド速度は10%歪み/分に設定した。5試験片を各サンプルについて試験し、平均と標準偏差を報告した。変動係数、弾性率については5%、引張強さについては12%、および破断伸びについては15%が観察されたが、これらの数値には材料と寸法の変動の両方が含まれる。この試験により、Cloisite(商標)(サンプル2)の低添加により、ゼラチン単独(サンプル1)を上回る、機械的性質の良好な向上が得られることが示された。図4はサンプル1および2の応力−歪み曲線を示す。図4に示されるように、ゼラチン単独と比較して、ヤング率(曲線の傾き)は75%、引張強さ(試験中の最大応力)は、5%Cloisite(商標)の添加において25%増加している。
【0069】
サンプル2および3について、クレイの添加を変化させたとき(0〜25%)のヤング率の変化を調べた。各サンプルについて、正規化された弾性率、サンプル1のゼラチンのヤング率によって正規化したサンプル2またはサンプル3のヤング率の値を求めた。図5はクレイ含量の増加に伴う正規化ヤング率の増加を示す。図5は無機粒子のアスペクト比の組成物の性質に及ぼす影響も示している。Laponite(商標)はCloisite(商標)よりも1桁小さいアスペクト比を有している(表1参照)。図5に示されるように、Laponite(商標)は、ゼラチン単独と比較して、Cloisiteよりもヤング率の変化は小さい。従って、より大きなアスペクト比を有する粒子を使用することで、材料のヤング率がより小さなアスペクト比を有する粒子を使用するよりも大きく増加すると思われる。
【0070】
図6ではCloisite10%および50%添加時のサンプル2のヤング率を高温下でゼラチン(サンプル1)と比較している。図6より、サンプル2が高温においてゼラチンより高いヤング率を維持することが示される。図6に示されるように、無機粒子を含むサンプルは、温度範囲20℃〜200℃にわたり、対照(ゼラチン)と比較してヤング率の少なくとも10%の増加を示している。データは動的熱機械解析(DMTA)(レオメトリック(Rheometric)社製DMA熱解析装置にて実施)によって得た。各サンプルの5mm片を切り出し、張力固定下(歪み0.02%に固定)に置いた。弾性率(E’)は周波数10Hzにて、温度を室温〜250℃に上げながら測定した。
【0071】
上記例により、ヤング率および引張強さの増加がポリマーに無機粒子を含めることによって実現されることが示される。ヤング率の増加は高温下でさえも維持される。より高いアスペクト比を有する無機粒子を使用することにより、無機粒子を含む高分子材料のヤング率がさらに増加する。
【0072】
例2−熱的寸法安定性
本例に使用したナノコンポジット材料は、ナノコー(Nanocor)社によって提供される、市販のスメクタイトクレイ−ポリプロピレンマスターバッチC.31 PSであった。マスターバッチC.31 PSは、膨張剤および相溶剤により機能化したスメクタイトクレイと、ポリプロピレンとの混合物であった。共回転二軸スクリュー配合機によりマスターバッチを追加量のポリプロピレンまたはポリ(エチレンテレフタレート)で希釈して種々のナノコンポジット材料を形成し、それらをフィルムにし、一部には以下のとおり追加の作業を施した:
【0073】
サンプル4−ポリプロピレン、押し出し成形した;
サンプル5−10重量%C.31 PSを含有するポリプロピレン、押し出し成形した;
サンプル6−ポリプロピレン、押し出し成形し、二軸に4回延伸した;
サンプル7−10重量%C.31 PSを含有するポリプロピレン、押し出し成形し、二軸に4回延伸した;
サンプル8−ポリ(エチレンテレフタレート)、押し出し成形し、二軸に3回延伸した;および
サンプル9−4重量%C.31 PSを含有するポリ(エチレンテレフタレート)、押し出し成形し、二軸に3回延伸した。
【0074】
前述のとおり調製し、処理した、サンプルフィルム4〜9を161mm×25.4mmの細片に切り、13mmおきに印をつけて、加熱によって生じる寸法の変化の測定に使用した。オーブンを150℃に予熱した。切ったサンプルをオーブンに2分間入れた。無機粒子を含まないサンプルは収縮し、カールし、そして/または少なくとも部分的に不透明になった。無機粒子を含むサンプルはそれらの最初の寸法と色を維持した。本明細書において記載するように、無機粒子の添加によって加熱時の高分子材料の縦方向の収縮および/または横方向の収縮の発生を、対照サンプルと比較して、少なくとも10%低減することができる。例えば、いずれの方向への収縮も少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、あるいはそれ以上、最大100%量を低減することができる。
【0075】
寸法変化試験をウェブ張力および温度上昇下、幅6.35mm、ゲージ長49mmの細片に切ったサンプル1〜9を使用して実施した。サンプルを一端で固定し、もう一方の端で0.00689GPa引張荷重をもたらす重りによって引き伸ばした。この荷重の大きさは、当分野で公知の方法および装置による印刷時の感熱印刷用リボンにかかる一般的なウェブ引張荷重に一致する。オーブンを種々の温度(121℃以下)に加熱した。引張荷重サンプルを規定温度のオーブンに1分間入れ、1分後、規定温度のオーブン内でサンプルの伸びを測定した。ゲージ長と伸びから歪みを算出した。サンプル4および5の結果を図7に示す。図7に示されるように、無機粒子の添加によって、高温においてさえも供与リボンの変形(伸びまたは歪み)を大幅に低減することができる。例えば、121℃においては、サンプル4のポリプロピレンフィルムの歪みは9%であり、一方、サンプル5の10%無機粒子含有ポリプロピレンフィルムの歪みは6%であった。これは歪みの30%低減である。サンプル6と7およびサンプル8と9についても同様の結果が見られた。本例により、無機粒子を高分子材料に添加することによって、温度上昇下での高分子材料の歪みまたは伸びを少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、あるいはそれ以上)量を低減できることが示される。
【0076】
サンプルの熱的寸法安定性を、印刷時の感熱印刷用リボンの加熱条件を再現するように設計された方法により試験した。金属ブロックを、そのブロックが160℃に達するのに十分な時間オーブンに入れた。加熱した金属ブロックをサンプルの上に置き、これにより圧力0.0008Gpaがかかり、サンプル表面に沿って2秒かけて60mm移動させた。無機粒子を含まないサンプルでは試験中に著しい皺が発生したが、一方、無機粒子を含むサンプルは平らな状態のままであった。上記の試験を実施した後、サンプル9を室温から200℃まで加熱したが、平らで半透明な状態のままであった。
【0077】
これらの例によって示されるように、無機粒子の添加によって、リボンが、印刷時に温度の上昇を受けたときにほとんど歪曲なく、その形状および寸法を維持することができるように、高分子材料の熱的寸法安定性を増大させることができる。理論に拘束されようとは思わないが、無機粒子の熱的性質がそれらが添加された高分子材料に少なくとも部分的に付与されると考えられる。無機粒子を高分子材料に添加することによって、高分子材料の縦方向の伸び(歪み)、縦方向の収縮、横方向の収縮および/またはヤング率を大幅に低減することができる。影響を受けた高分子材料の性質によって、印刷時の温度の上昇による高分子材料の歪曲を防ぐことができ、それにより印刷時の皺および襞の発生が低減する。
【0078】
例3−熱伝導率
熱伝導率の変化は材料の熱拡散率を測定することによって決定することができる。熱拡散率は熱伝導率と関連しており、材料の熱伝導率をその比熱と密度の積で除した値と定義され、熱伝達に重要な性質である。幅広い材料の熱拡散率の測定には標準試験ASTM E1461−92に記載されているフラッシュ法を使用した。
【0079】
例2で調製したサンプル4および5の熱拡散率を、ASTM E1461−92に記載のフラッシュ法に従い、Holometrix μFlashを使用して測定した。サンプルは直径3mm、厚さ0.795mmの円板として調製した。サンプル4の拡散率は6.16×10-82/sであり、一方、サンプル5の拡散率は8.216×10-82/sであった。10重量%無機粒子の添加によって材料の熱拡散率が約33%増加した。
【0080】
例4−ヤング率の皺形成への影響
皺は温度および/または応力の急激な変化の結果であり、その急激な変化が局部的に特定の方向に感熱印刷用リボンの座屈を起こす局部圧縮応力を生み出すのである。本明細書の他の部分で記述したように、限界座屈荷重(Pc)は特定の長さおよび幅を有するサンプルの曲げ剛性(bending rigidity)(D)に比例する。曲げ剛性(bending rigidity)はヤング率の一次関数であり、サンプルの厚さの二次関数である。
【0081】
以下のように、サンプルを調製し、正規化皺抵抗を決定した。サンプルは、ゼラチンとサザン・クレイ・プロダクツ社(米国、テキサス州、ゴンザレス)によって提供される、Cloisite(商標)Na+用いて、表2に示す量および厚さで調製した。各サンプルのヤング率は、表2に示されるように、標準的な環境50%RHおよび23℃においてASTM D882−80aを用いて引張強さ試験によって測定した。無機粒子を含まない比較例について、サンプルが座屈なく維持できる最大圧縮応力を決定し、σ限界として表した。この数値を表2の他のサンプルについての正規化因子として使用した。各サンプルについて、表2の正規化皺抵抗、Rは、サンプルが座屈なく維持できる最大圧縮応力をσ限界で除した値と定義される。
【0082】
サンプルa〜cでは、正規化皺抵抗、Rの値が1より大きいことが示され、これにより無機粒子を含まない比較サンプルに対する改善が示された。サンプルdは他のサンプルよりも薄く、厚さは5μmであった。しかしながら、サンプルdのヤング率は比較例よりも依然として高く、R値1.45によって示されるように、比較例に対する皺抵抗の45%改善が示された。
【0083】
【表2】

【0084】
上記例に示されるように、無機粒子を高分子材料に添加することによって、材料の1つまたは2つ以上の性質(例えば、ヤング率、熱伝導率または熱的寸法安定性)に影響を及ぼし得る。無機粒子を用いて形成された高分子材料の厚さは、同じ性質を1つまたは2つ以上維持しながら、無機粒子を含まない高分子材料と比較して低減することができる。これらの性質は、感熱印刷用リボンに組み込んだ場合に、印刷時の皺が低減されているか、なくなっている感熱印刷用リボンが提供されるという高分子材料を提供するよう操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は感熱印刷用リボンの全体図である。
【図2】図2は印刷システムの概略図である。
【図3】図3は皺の入った感熱印刷用リボンの全体図である。
【図4】図4は本発明の一態様およびゼラチンについての応力−歪み曲線を示す図である。
【図5】図5はゼラチン中の種々の無機粒子の重量パーセントに対するヤング率の変化を示す図である。
【図6】図6はゼラチン中の種々の無機粒子の温度に対するヤング率の変化を示す図である。
【図7】図7は無機粒子を含む場合と含まない場合のポリプロピレンの温度に対する歪みを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素供与層と、支持体と、高分子材料および少なくとも1種の無機粒子を含む高分子層とを含む感熱印刷用リボンを形成すること、
色素受容層と支持体とを含む受容体を形成すること、
前記感熱印刷用リボンの色素供与層を前記受容体の色素受容層に近接して置くこと、そして
画像を前記受容体上に印刷すること、
を含んで成る感熱印刷方法であって、
印刷時に前記リボンが実質的に皺を有しないままである
感熱印刷方法。
【請求項2】
前記無機粒子が、6GPaより高いヤング率を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高分子層が前記支持体である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記高分子層が前記支持体と前記色素供与層との間にある請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記高分子層が前記色素供与層とは反対側の支持体側にある請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記無機粒子が、シリカ、ガラスビーズ、ポリマー粒子、アルミナ、マイカ、グラファイト、カーボンブラック、セラミック粒子またはそれらの組合せである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記高分子層がナノコンポジットである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記高分子層が押し出しコーティングされる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
皺の発生が95%以上低減される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記感熱印刷が4ms以下のラインスピードである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記リボンが、無機粒子を含まないリボンよりも少なくとも10%少ない縦方向の伸びを有する請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記リボンが、無機粒子を含まないリボンよりも少なくとも10%小さい縦方向の収縮、横方向の収縮、またはその両方を有する請求項1に記載の方法。
【請求項13】
色素供与層と、高分子材料および少なくとも1種のナノサイズの無機粒子を含むナノコンポジット支持体とを含む感熱印刷用リボンを形成すること、
色素受容層と支持体とを含む受容体を形成すること、
前記感熱印刷用リボンの色素供与層を前記受容体の色素受容層に近接して置くこと、そして
画像を前記受容体上に印刷すること、
を含んで成る感熱印刷方法であって、
印刷時に前記リボンが実質的に皺を有しないままである
感熱印刷方法。
【請求項14】
色素供与層と、支持体と、高分子材料および少なくとも1種の無機粒子とを含む高分子層とを含む感熱印刷用リボンを形成すること、
色素受容層と支持体とを含む受容体を形成すること、
前記感熱印刷用リボンの色素供与層を前記受容体の色素受容層に近接して置くこと、そして
画像を前記受容体上に印刷することと
を含んで成る印刷時の皺を低減する方法であって、
皺の発生が95%以上低減される方法。
【請求項15】
前記高分子層が前記支持体である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記無機粒子が、シリカ、ガラスビーズ、ポリマー粒子、アルミナ、マイカ、グラファイト、カーボンブラック、セラミック粒子またはそれらの組合せである請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記高分子層がナノコンポジットである請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記高分子層が押し出しコーティングされる請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記無機粒子が6GPa以上のヤング率を有する請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記高分子層が前記支持体と前記色素供与層との間にある請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記高分子層が前記色素供与層とは反対側の支持体側にある請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記印刷が4ms以下のラインスピードである請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記リボンが無機粒子を含まないリボンよりも少なくとも10%小さい縦方向の伸びを有する請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記リボンが無機粒子を含まないリボンよりも少なくとも10%小さい縦方向の収縮、横方向の収縮またはその両方を有する請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−518596(P2007−518596A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547058(P2006−547058)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/041026
【国際公開番号】WO2005/065959
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】