説明

感熱記録シート

【課題】表裏の判定が容易で、プリンタ等の画像記録装置やシャウカステンへの誤装填の恐れがない医療画像記録用等の感熱記録シートを提供する。
【解決手段】四角形状の透明フィルムの一面に、ロイコ染料および呈色剤を含有する感熱記録層と、水性樹脂を主成分とする保護層とが設けられた感熱記録シートにおいて、その四隅に、少なくとも1つの着目コーナー部1aを含む4つのコーナー部1a、1b、1c、1dが設けられる。コーナー部1a、1b、1c、1dは、それぞれ、5mm以上の曲率半径の端縁を有し、かつ、着目コーナー部1aの端縁が実質的に最大曲率半径または最小曲率半径を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイコ染料と呈色剤との発色反応を利用した感熱記録シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロイコ染料と呈色剤との発色反応を利用した感熱記録シートは、比較的安価であり、またこの感熱記録シートに対する記録機器がコンパクトでかつその保守も容易であるため、ファクシミリの記録媒体やワードプロセッサーおよびコンピュータ用プリンタの記録媒体として、広範囲に使用されている。
そして、最近では、医療用レントゲン写真に代表される医療画像記録用銀塩フィルムに代わる記録媒体として、透明性および記録画質に優れた感熱記録シートが使用されるようになってきている。
【0003】
従来の医療画像記録用銀塩フィルムにおいては、暗室内での取扱いに際し、フィルムの表裏および左右の判定を容易かつ確実にするため、フィルムの特定箇所にノッチが設けられている(特許文献1参照)。
感熱記録シートの場合も同様に、その透明性が上がるにつれて記録面と裏面との区別がつきにくくなる。感熱記録シートに画像記録を行う場合には、一般に、プリンタ等の画像記録装置が用いられ、感熱記録シートが画像記録装置に備えられたシート集積部に装填される。ところが、この場合、感熱記録シートの記録面と裏面の区別が付きにくいと、感熱記録シートの画像記録装置への装填作業が面倒であり、またシートの誤装填が生じやすくなる。
【0004】
また、画像記録装置を用いて感熱記録シートに画像記録を行う場合、画像記録装置のシート集積部には、多数の感熱記録シートを確実にセットしておく必要があるため、通常は感熱記録シートパックとして、包材と一体化された感熱記録シート束がシート集積部に装着される。
【0005】
そして、従来の感熱記録シートパックは、できるだけ小さなフロアスペースで使用できるような構成となるように意図されている(特許文献2参照)。
ところで、近年、省スペース化の観点から、感熱記録シートパックを従来の横置き(平置きとも呼ばれる)だけでなく、縦置きでも使用できる画像記録装置が開発されている。しかしながら、感熱記録シートパックが縦置きで使用される場合、画像記録装置のシート集積部に感熱記録シート束を立ててセットする必要があり、従来の感熱記録シートパックでは確実にセットするのが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2549363号公報
【特許文献2】特開平10−157704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、表裏の判定が容易で、プリンタ等の画像記録装置やシャウカステンへの誤装填の恐れがない医療画像記録用等の感熱記録シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、感熱記録面と裏面とを有する感熱記録シートであり、四角形状の透明フィルムの前記感熱記録面に、ロイコ染料および呈色剤を含有する感熱記録層と、水性樹脂を主成分とする保護層とが設けられた感熱記録シートにおいて、前記シートの四隅に、4つのコーナー部が設けられ、前記コーナー部は、1つの着目コーナー部と、残りの同一形状の、前記着目コーナー部以外のコーナー部とからなり、それぞれ、5mm以上の曲率半径の端縁を有し、かつ、前記着目コーナー部の端縁の曲率半径は、前記着目コーナー部以外のコーナー部の端縁の曲率半径より大きいか、または、前記着目コーナー部以外のコーナー部の端縁の曲率半径より小さくなっており、前記シートの前記4つのコーナー部における前記着目コーナー部の位置に応じて、前記感熱記録面と前記裏面とが区別されることを特徴とする感熱記録シートを構成したものである。
【0009】
本発明の構成において、好ましくは、前記着目コーナー部の端縁の最大曲率半径(Rmax)の、前記着目コーナー部以外のコーナー部の端縁の前記曲率半径(R)に対する比(Rmax/R)が2以上である。
また好ましくは、前記着目コーナー部の端縁は、1/4円未満の円弧からなり、前記着目コーナー部以外のコーナー部の端縁は、1/4円の円弧からなっている。また、前記コーナー部の端縁は、それぞれ、前記感熱記録シートの本体部分の直線状端縁と実質上滑らかに接続していることが好ましい。
また好ましくは、前記着目コーナー部の位置により前記感熱記録シートの表裏の表示を示す注意表示をさらに有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感熱記録シートは、表裏の判定が容易で、プリンタやシャウカステンへの誤装填の恐れがない効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のシート状感熱記録シートの1実施例の平面図である。
【図2】図1中のコーナー部の拡大図である。
【図3】本発明の感熱記録シートパックの主要構成要素である保護カバーの斜視図である。
【図4】保護カバーに感熱記録シート束を載せる状態を示す分解斜視図である。
【図5】感熱記録シート束が保護カバーと一体化される途中の状態を示す斜視図である。
【図6】感熱記録シート束が保護カバーと一体化された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による感熱記録シートは、四角形状の透明フィルムの一面に、ロイコ染料および呈色剤を含有する感熱記録層と、水性樹脂を主成分とする保護層とが設けられた感熱記録シートにおいて、その四隅に、少なくとも1つの着目コーナー部を含む4つのコーナー部を設け、コーナー部は、それぞれ、5mm以上の曲率半径の端縁を有し、かつ、着目コーナー部の端縁が実質的に最大曲率半径または最小曲率半径を有するようにしたものである。
【0013】
着目コーナー部は少なくとも1つ設けられればよく、好ましくは、一対の着目コーナー部が、感熱記録シートの1つの対角線上に対置される。この場合、一対の着目コーナー部の端縁には若干の大小差があっても許容される。いずれにしても、着目コーナー部は、感熱記録シートの裏表を表す目印として、簡単に視認または接触確認され得る。
【0014】
結局、4つのコーナー部の端縁の曲率半径が全て同じであれば、感熱記録シートの表裏が取違えられても全く同じ形状になり、表裏の区別が付かない。四隅中の少なくとも一個所の着目コーナー部の端縁の曲率半径が他の個所のコーナー部の端縁の曲率半径と異なることにより、裏と表で位相的に異なった形状になり、感熱記録シートの表裏の区別がつくようになる。
【0015】
コーナー部の端縁の曲率半径が5mmより小さくなると、感熱記録シートの隅角部が実質的に先鋭な形状になり、プリンタ等の画像記録装置における給紙の時にケース等に引掛かり給紙がうまくいかなかったり、或いは取扱い時に衣服その他のものに引掛かって、感熱記録シートを取落して記録面を損なう等の問題を生じるおそれがある。また、隅角部が他の感熱記録シートの表面に接触して傷を与えるおそれもある。
【0016】
着目コーナー部の端縁の曲率半径を小さくすることは、前述のように、隅角部を先鋭な形状とすることに至るため、曲率半径を大きくする方向が好ましい。しかし、曲率半径を大きくした場合に、その1/4円でコーナー部を形成すると、印刷可能領域がより減少することになる。従って、印刷可能面積をできるだけ広く確保するために、全てのコーナー部におけるシートカット量を少なくするという制約条件を加えることがより実際的となる。この制約条件下では、コーナー部の円弧を1/4円より小さくすることが好ましい。
現実に使用される17インチ×14インチの長方形状の感熱記録シートの場合を挙げると、具体的には、感熱記録シートの3つのコーナー部の端縁を、10mm程度の曲率半径の1/4円弧とし、着目コーナー部の端縁は、1/4円未満の円弧とし、コーナー部のカット部分の直線部相当長さは全ての隅において同一とすることが好ましい(これについては、後述する)。
【0017】
なお、着目コーナー部の端縁の曲率半径の最大値は無限大、すなわち着目コーナー部の端縁は斜めにカットされた直線状部分として形成されてもよい。このような場合、後述するように、感熱記録シートの本体部分の直線状端縁との接続個所が滑らかな曲線になるように着目コーナー部を形成することが好ましい。具体的には、滑らかな曲線状のカットラインを備えた歯型を用いて打ち抜き加工を行えばよい。
【0018】
また、いずれのコーナー部が着目コーナー部として選定されたのかを何らかの形で表示しておくと、使用者により親切になるので、「左下に曲率の大きなコーナー部が位置するとき、感熱記録シートは表面が上になります」等の注意記載を、多数枚の感熱記録シートを重ねた一束毎に、別添の注意書き紙片として挿入しても良い。また必要に応じて、それぞれの感熱記録シートに上記の記載を小さく印刷または感熱印字することも考えられる。
【0019】
透明フィルムとしては、無延伸または二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルムなどが挙げられる。かかるフィルムの厚さとしては、40〜300μm程度が塗工性に優れ、好ましい。特に、本発明の効果は、厚さ100〜300μm程度の透明フィルム、とりわけ厚さ150〜250μm程度の透明ポリエチレンテレフタレートフィルムに対して、高められる。
【0020】
透明フィルムは、シャウカステン適性を高めるために、ヘイズ値が10%以下に青色に着色されていてもよい。なお、感熱記録シートのヘイズ値としては、10〜50%程度が好ましい。なお、透明フィルムは、その表面および裏面をコロナ放電処理、あるいはアンカーコート層が形成されていてもよい。
【0021】
感熱記録層中に含有される電子供与性化合物と電子受容性化合物との組合せによる感熱記録方式としては、例えばロイコ染料と呈色剤との組合せ、ジアゾニウム塩とカプラーとの組合せ、有機銀塩と還元剤の組み合わせ、鉄、コバルト、銅など遷移元素とキレート化合物との組合せ、芳香族イソシアネート化合物とイミノ化合物との組合せなどが挙げられるが、ロイコ染料と呈色剤との組合せが発色濃度に優れるため、好ましく用いられる。以下、ロイコ染料と呈色剤との組合せからなる感熱記録シートについて詳細に述べる。
【0022】
ロイコ染料および呈色剤としては、各種公知のものが使用できる。ロイコ染料の具体例としては、例えば3−〔2,2−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)ビニル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,7−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(nブチル)アミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−p−(p−ジメチルアミノアニリノ)アニリノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−p−(p−クロロアニリノ)アニリノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−〔1,1−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)〕−3−p−ジエチルアミノフェニルフタリド、3,3’−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリドなどが挙げられる。
【0023】
もちろん、これらに限定されるものではなく、また2種以上を併用することも可能である。また、ロイコ染料の使用量は、使用する呈色剤により異なるため限定できないが、感熱記録層全固形量に対して5〜35質量%程度が好ましい。
【0024】
呈色剤としては、例えば4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2’−ビス〔4−(4−ヒドロキシフェニル)フェノキシ〕ジエチルエーテル、4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、N−p−トルエンスルホニル−N’−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレア、3,3’−ビス(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、N,N’−ジ−m−クロロフェニルチオ尿素、N−p−トリルスルホニル−N’−フェニルウレア、4,4’−ビス(p−トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4−〔2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸亜鉛、4−{3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛、5−〔p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸亜鉛などが挙げられる。
【0025】
ロイコ染料と呈色剤との使用比率は、用いるロイコ染料や呈色剤の種類に応じて適宜選択されるものであり、特に限定するものではないが、一般に、ロイコ染料1質量部に対して1〜10質量部、好ましくは、2〜6質量部程度の呈色剤が使用される。
【0026】
なお、ロイコ染料は樹脂膜に内包されたマイクロカプセル形態または樹脂中に含有された複合粒子の形態で使用することにより、ヘイズ値の低い感熱記録シートが得られ、好ましい。マイクロカプセルおよび複合粒子の体積平均径としては、0.5〜3.0μm程度が好ましい。
【0027】
感熱記録層には、記録部の保存安定性を高めるための保存性改良剤、および記録感度を高めるための増感剤を含有させることもできる。かかる保存性改良剤の具体例としては、例えば2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス−(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、4,4’−ジグリシジルオキシジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4’−(2−メチルグリシジルオキシ)ジフェニルスルホン、テレフタル酸ジグリシジル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、ビス(4−エチレンイミノカルボニルアミノフェニル)メタン等が挙げられる。
【0028】
増感剤の具体例としては、例えばステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、テレフタル酸ジベンジル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、2−ナフチルベンジルエーテル、m−ターフェニル、p−ベンジルビフェニル、p−トリルビフェニルエーテル、ジ(p−メトキシフェノキシエチル)エーテル、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−メトキシフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−クロロフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、1−(4−メトキシフェノキシ)−2−(3−メチルフェノキシ)エタン、p−メチルチオフェニルベンジルエーテル、1,4−ジ(フェニルチオ)ブタン、p−アセトトルイジド、p−アセトフェネチジド、N−アセトアセチル−p−トルイジン、ジ(β−ビフェニルエトキシ)ベンゼン、シュウ酸ジ−p−クロロベンジルエステル、シュウ酸ジ−p−メチルベンジルエステル、シュウ酸ジベンジルエステル等が挙げられる。
【0029】
これらの保存性改良剤および増感剤の使用量は特に限定されないが、一般に呈色剤100質量部に対して1〜400質量部程度である。
【0030】
感熱記録層は、水を分散媒体とし、例えばロイコ染料、呈色剤、必要により増感剤、保存性改良剤などを共に、或いは別々にボールミル、アトライター、サンドミルなどの攪拌・粉砕機により平均粒子径が3μm以下、好ましくは2μm以下となるように微粉砕した後、少なくとも接着剤を添加して調製された感熱記録層用塗液を透明フィルムの表面に乾燥後の塗布量が3〜30g/m程度となるように塗布乾燥して形成される。
【0031】
感熱記録層用塗液中の接着剤としては、例えばデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ジアセトンアクリルアミド変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ケイ素変性ポリビニルアルコール、ジイソブチレン・無水マレイン酸共重合体塩、スチレン・無水マレイン酸共重合体の一価の塩、エチレン・アクリル酸共重合体の一価の塩、スチレン・アクリル酸共重合体の一価の塩等の水溶性接着剤類、および酢酸ビニル系ラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリル系ラテックス、ウレタン系ラテックス等の水分散性接着剤類が挙げられる。
【0032】
接着剤の使用量としては、感熱記録層の全固形分に対して8〜40質量%程度である。さらに、感熱記録層は、各種添加剤を含有し得る。かかる添加剤としては、例えば一次粒子の平均粒子径が0.01〜2.0μm程度の無定形シリカ、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、クレー、焼成カオリン、尿素・ホルマリン樹脂フィラー等の顔料類、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム等の界面活性剤類、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム等の滑剤類、ポリエチレワックス、カルナウバワックス、パラフィン等のワックス類、消泡剤、増粘剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、架橋剤、蛍光染料、着色染料等が挙げられる。もちろん、これらのものに限定されるものではなく、また上述の添加剤の2種類以上を併用することもできる。
【0033】
感熱記録層上には、記録走行性、耐摩擦カブリ性、耐薬品性を高めるために、成膜性を有する水性樹脂を主成分とする保護層を設けることにより、さらに感熱記録シートの透明性が高められる効果が得られる。
【0034】
かかる保護層中の水性樹脂としては、例えば感熱記録層中の接着剤が使用される。さらに、保護層中には感熱記録層中に含有される顔料類、架橋剤類、ワックス類、滑剤類等を使用することもできる。
【0035】
保護層は、一般には水を媒体とし、水性樹脂溶液、必要により顔料類、架橋剤類、ワックス類、滑剤類等と共に混合攪拌して調製された保護層用塗液を乾燥後の塗工量が0.5〜10g/m程度となるように感熱記録層上に塗布乾燥して形成される。
【0036】
透明フィルムに上記の各層用の塗液を塗布する方法としては、スロットダイ法、スライドビード法、カーテン法、エアナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、およびエクストルージョン法等の既知の塗布方法の何れを採用してもよい。
【0037】
各層を形成した後、スーパーカレンダーやソフトカレンダー等の既知の平滑化方法を用いて平滑化処理することは、その発色感度を高めることに効果がある。感熱記録面を、カレンダーの金属ロールおよび弾性ロールの何れに当てて処理してもよい。
【0038】
(実施例1)
本発明を下記実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断らない限り、「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
【0039】
・ロイコ染料含有の複合粒子分散液(A液)の調製
ロイコ染料として3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン12部、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン5部および3,3’−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド3部と、紫外線吸収剤として2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン5部とを、ジシクロへキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(住友バイエルウレタン社製、デスモジュールW)11部、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(三井武田ケミカル社製、TMXDI)11部からなる混合溶媒に加熱溶解(150℃)し、この溶液をポリビニルアルコール(クラレ社製、ポバールPVA−217EE)8.8部と界面活性剤としてアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物(日信化学社製、オルフィンE1010)0.5部を含む水溶液100部中に徐々に添加し、ホモジナイザーを用い、回転数10000rpmの攪拌によって乳化分散した。この乳化分散液に、水30部、多価アミン化合物(シェル・インターナショナル・ペトロリウム社製、エピキュアT)2.5部を水22.5部に溶解した水溶液を加えて均一化した。この乳化分散液を75℃に昇温し、7時間の重合反応を行ない、平均粒子径0.8μm(レーザー光回折法による)の、黒発色性の複合粒子分散液を調製した。また、黒発色性の複合粒子分散液の固形分濃度が20%となるように水で調整した。
【0040】
・B液調製
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン25部、3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン15部、ポリビニルアルコール(クラレ社製、クラレポバールPVA−203)の25%水溶液40部、天然油脂系消泡剤の2%エマルジョン5部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩の5%水溶液10部、および水50部からなる組成物を横型サンドミル(アイメックス社製、ウルトラビスコミル UVX−2)を用いて、平均粒子径が0.3μmとなるまで粉砕してB液を得た。
【0041】
・感熱記録層用塗液の調製
A液150部、B液115部、ポリビニルアルコール〔クラレ社製、クラレポバール(登録商標)PVA−235〕の7%水溶液20部、スチレン−ブタジエン系ラテックス〔日本エイアンドエル社製、固形分48%、スマーテックス(登録商標)PA9281〕30部、アイオノマー型ウレタン系樹脂ラテックス(大日本インキ化学工業社製、ハイドラン(登録商標)AP−30F、固形濃度20%)50部、アジピン酸ジヒドラジドの5%水溶液8部、および水30部からなる組成物を攪拌して感熱記録層用塗液を得た。
【0042】
・保護層用塗液の調製
アイオノマー型ウレタン系樹脂ラテックス(大日本インキ化学工業社製、ハイドラン(登録商標)AP−30F、固形濃度20%)100部、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(日本合成化学工業社製、ゴーセファイマー(登録商標)OKS−3431、重合度;約2300、ケン化度;約98モル%)の8%水溶液500部、ポリアミドアミン・エピクロルヒドリンの25%水溶液5部、平均粒子径0.8μmのカオリン(エンゲルハード社製、UW−90)の60%スラリー50部、ステアリン酸アミド(中京油脂社製、ハイミクロンL271、固形濃度25%)26部、ステアリルリン酸エステルカリウム塩(松本油脂製薬社製、ウーポール1800、固形濃度35%)4部、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(セイミケミカル社製、サーフロン(登録商標)S−145)の10%水溶液15部および水300部からなる組成物を混合攪拌して保護層用塗液を得た。
【0043】
・感熱記録シートの作製
厚さ175μmの青色透明ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:メリネックス(登録商標)914、帝人デュポンフィルム社製)の一方の面に感熱記録層用塗液と保護層用塗液を、乾燥後の塗布量がそれぞれ25g/m、3g/mとなるように順次塗布乾燥して感熱記録層および保護層とを設け、感熱記録シートを得た。
【0044】
・コーナーカット処理
17インチ×14インチの長方形にカットされた前述の感熱記録シートを準備し、シートの四隅のうちの三隅を、曲率半径10mmの1/4円になるようにカットした。シートの残りの一隅を、着目コーナー部とし、他の三隅と同じ箇所から曲線を描くように曲率半径30mmでカットした。すなわち、最大曲率半径(曲率半径30mm)を有する着目コーナー部は、その端縁が1/4円未満の円弧となり、着目コーナー部を除く他の3つのコーナー部は、その端縁が1/4円の円弧となる。この状態を、図1に示した。図1中、着目コーナー部1aが、他のコーナー部1b、1c、1dに較べてより直線的であることが分かる。図2は、図1に示されたコーナー部1aの拡大図である。図2中、mで示される長さが、コーナー部におけるカット部分の直線部相当長さであり、四隅のすべてにおいてこの長さが同一であると、視覚的に対称性が保たれるので好ましい。この長さを同一にするために、前述のように、着目コーナー部の形成に際し、「他の三隅と同じ箇所から曲線を描くように」カットしている。
なお、以上の条件を満足した上で、この着目コーナー部の端縁の曲率半径を、最大曲率半径(Rmax)とし、他の3つのコーナー部の端縁が、同一の曲率半径(R)をもつ1/4円の円弧とすると、
Rmax/R=21/2/(2×sin(θ/2)) ・・・(1)
が得られる、ここで、θは、着目コーナー部の端縁の円弧の中心角である。
(1)式において、Rmax/Rが2のときθは約52度となり、着目コーナー部の端縁は、1/4円の円弧(円弧の中心角は90度)よりかなり円周角の小さな1/7円の円弧程度になることがわかる。
このようなコーナー部は、歯型を使用することによって、一度に100枚程度の多量のシートを同時に加工して形成することができるので、コーナー部の作製が非常に効率的になされ得る。
【0045】
(比較例1)
実施例1のコーナー部形成加工において、四隅のコーナー部の端縁が、すべて、曲率半径10mmの1/4円の円弧となるようにした。
【0046】
[感熱記録シートの評価]
得られた各々の感熱記録シートについて、以下の評価を行った。
(表裏の判定)
本発明による着目コーナー部を備えた感熱記録シートの表裏を揃える時は、曲率半径30mmのコーナーを合わせることで自動的に表裏が揃う。また、感熱記録シートの表裏が違っていれば、曲率半径10mmのコーナー部が飛び出しているので、どれが表裏逆になっているのかがすぐに判明する。一方、比較例1のように四隅が同じ形状であれば表裏が間違って混ざっていてもすぐには判らず、1枚、1枚確認しなければならない。
【0047】
[更なる改良]
上述の実施例1においては、着目コーナー部1aの端縁と、感熱記録シートの本体部分の直線状端縁との接続部g、hは、所謂鈍角ではあるが角張っている。従って、引っ掛かり、傷等が発生する危険性をより低くするため、接続部g、hがこのように角張らず、滑らかな曲線状になるようにコーナー部を形成することがより好ましい。具体的には、そのような滑らかなカットラインを有する歯型を打ち抜き加工に使用すればよい。
【0048】
[着目コーナー部の他の認識方法]
また、このような着目コーナー部として形状の異なるコーナー部を設けるという着想の中では、コーナー部自体を雲形、凹形状等の特徴を有する形状にすることも考えられるが、加工の面倒さ、カット部の仕上げによっては、他のシート等の表面に傷を与える等の問題が生じうるため、以上のような曲率半径のコーナーカットを採用することがより好ましい。
【0049】
また、他にも、着目コーナー部に、インクジェット印刷等によって色彩を付与することなども考えられる。しかし、一度に多量にカットできるコーナー部に較べて、一枚一枚に加工する必要があるので、不利であると考えられる。大量の処理を考えた場合、重ねたシートの隅角部の縁のみに一度に彩色加工することも考えられるが、視認性等で不利である。また、縁は、特に摩擦等による剥げ落ち等のおそれも考えられるので、不利であると予想される。
【0050】
次に、本発明の感熱記録シートパックについて、添付図面を参照しながら説明する。感熱記録シートパックは、上述された感熱記録シートの積層体からなる感熱記録シート束と、感熱記録シート束の下面の全体を実質的に覆うシート状の保護カバーを備えている。
感熱記録シート束は、例えば、上述された250枚程度の感熱記録シートの積層体からなっている。画像記録装置においては、一般に、この感熱記録シート束の長手方向側がシート送り方向に設定される。
【0051】
図3は、感熱記録シートパックの主要構成要素である保護カバーの斜視図である。図3に示されるように、保護カバー2は、感熱記録シート束を構成する各感熱記録シートと略同一の形状を有し、感熱記録シート束の下面に当接する保護カバー本体部2dと、保護カバー本体部2dの一側縁に立設され、感熱記録シート束のシート送り方向の端面に当接する送り方向端面当接部2aと、保護カバー本体部2dにおける前記一側縁に直交する一対の側縁に立設され、感熱記録シート束のシート送り方向の端面に直交する両側部端面に当接する、一対の側部端面当接部2b、2cとを有している。
【0052】
保護カバー2は、例えば、シート部材を所定の形状に切断した後、保護カバー本体部2dを形成する領域を中心として、送り方向端面当接部2a、側部端面当接部2b、2cを形成する縁部分をそれぞれ垂直に折り曲げることによって形成され得る。保護カバー2の形成材料としては、ポリプロピレン、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のプラスチック樹脂、および紙、合成紙等、一定の強度等を確保できるものを使用することができる。酸化チタンなどを練りこんで白色にしたり、着色したプラスチック材料も適宜用いられる。後述の寸法程度であれば、厚みは1mm程度あれば十分である。
【0053】
このように得られた保護カバー2に感熱記録シート束が載せられ、これらが一体化されることによって本発明の感熱記録シートパックが得られる。
図4は、保護カバーに感熱記録シート束が載せられる状態を示した分解斜視図である。図4を参照して、保護カバー本体部2dは、感熱記録シート束6の下面と略同一の形状、すなわち感熱記録シート束の各感熱記録シートと略同一の形状を有している。送り方向端面当接部2a、側部端面当接部2b、2cの高さは感熱記録シート束6の厚みより若干低くなるように設定されることが好ましい。通常は、感熱記録シート束6の厚みは数十mm程度までであるので、その厚さより数mm位小さく設定される。また、感熱記録シート束6の感熱記録面側が保護カバー本体部2dに接するように載せるほうが、感熱記録面の保護の上でより好ましい。
感熱記録シート束6が保護カバー本体部2dに載せられた状態で、ちょうど保護カバー2の各当接部2a、2b、2cは感熱記録シート束6に当接する。つまり、感熱記録シートパックの画像記録装置への装着時に、感熱記録シートは、順次、送り方向端面当接部2aと反対方向に送り出される。
【0054】
図5は、感熱記録シート束6が保護カバー2と一体化される途中の状態を示し、図6は、一体化された状態を示したものである。図5および図6を参照して、感熱記録シート束6が保護カバー本体部2dに載せられた状態で、保護カバー2の一対の側部端面当接部2b、2cの間に渡されるとともに、両端部がそれぞれ、一対の側部端面当接部2b、2cの外側面に接合されることにより、感熱記録シート束6の上面の一部に圧接して感熱記録シート束6を保持する側部端面方向保持用帯状薄膜3が備えられる。
【0055】
この薄膜3は、側部端面当接部2b、2cの間に渡されて、感熱記録シート束6の上面の一部を覆う。ここで、側部端面当接部2b、2cの高さが感熱記録シート束6の厚みより若干低くなるように設定された場合には、薄膜3を適当な張力で張ることによって、感熱記録シート束6のシート面を保護カバー本体部2dに押圧するとともに、一対の側部端面当接部2b、2cを感熱記録シート束6に押圧することができるので、特に、感熱記録シート束6をシート送り方向に対して直角方向の向き、すなわち、一対の側部端面当接部2b、2cが並ぶ向きに崩さないように保持することができる。側部端面方向保持用帯状薄膜3は、両端部をそれぞれ、接着剤や両面粘着テープ等により側部端面当接部2b、2cの外側面に貼付けて固定される。
【0056】
また、感熱記録シート束6が保護カバー本体部2dに載せられた状態で、保護カバー2および感熱記録シート束6の外側をシート送り方向に沿って取り巻くように配置されるとともに、保護カバー6の送り方向端面当接部2aの外側面に少なくとも接することにより、送り方向端面当接部2aと反対側に位置する感熱記録シート束6のシート送り方向端面、および送り方向端面当接部2aと反対側の端部2e、並びに感熱記録シート束6の上面の少なくとも一部に圧接して、感熱記録シート束を保持するシート送り方向保持用環状薄膜4が備えられる。この薄膜4は、図5に示されるように、その一端に、接着剤が塗布され(図中の部分4a参照)、その部分4aに他端が重ねて合わされて接着されることにより環状に形成される。
【0057】
ここで、送り方向端面当接部2aの高さも、感熱記録シート束6の厚みより若干低くなるように設定された場合には、この薄膜4を適当な張力で張ることによって、感熱記録シート束6のシート面を保護カバー本体部2dに押圧するとともに、送り方向端面当接部2aを感熱記録シート束6に押圧することができるので、特に、感熱記録シート束6をシートの送り方向の向きに崩さないように保持することができる。
特に、図5、6から分かるように、送り方向端面当接部2aの中央部Mが低くなるような構成の場合には、前述のような感熱記録シート束6を押しつける圧力が適当に発生するとともに、中央部M以外の他の部分が、感熱記録シート束6の厚み以上の高さに設定されることで、送り方向端面当接部2aが、より確実に感熱記録シート束6に当接し、それによってシート送り方向の感熱記録シート束6のずれ等を抑制することができる。
【0058】
このように、側部端面方向保持用帯状薄膜3およびシート送り方向保持用環状薄膜4により、感熱記録シート束6および保護カバー2が一体化されて感熱記録シートパック7が形成される。なお、感熱記録シートパック7は、さらに、輸送、取扱等の際に全体を保護するために、1パック毎に、ほぼ密封状態で袋に詰められることがより好ましい。
【0059】
以上のように形成された感熱記録シートパック7を記録装置に装着する際には、装着完了後、各感熱記録シートが送り出されるように、シート送り方向保持用環状薄膜4のみを取り外すようにすると、装着時に感熱記録シートがずれたりするおそれが少なくなり、簡単に装着できるので好ましい。この際、この薄膜4の除去がより簡単、確実に行えるように、この薄膜4は環状に形成されていることが好ましい。また、このシート送り方向保持用環状薄膜4のみを外す上で、端面方向保持用帯状薄膜3の上側にシート送り方向保持用環状薄膜4を配置することが好ましい。
【0060】
この側部端面方向保持用帯状薄膜3およびシート送り方向保持用環状薄膜4は、薄い合成樹脂フィルムや紙等の薄い基材から形成され得る。塵、埃が混入しないほうが良いため、紙よりも樹脂フィルムから形成されるほうがより好ましい。これは先に説明した保護シートの材料についても同様である。厚さ100μm以下のポリプロピレンフィルム等が好適に使用され得る。
側部端面方向保持用帯状薄膜3、シート送り方向保持用環状薄膜4および保護カバー2が本発明の感熱記録シートパックの包材となる。
【0061】
また、側部端面方向保持用帯状薄膜3の両端が、それぞれ、保護カバー2の側部端面当接部2b、2cに接着され、側部端面方向保持用帯状薄膜3の上側にシート送り方向保持用環状薄膜4が配置され、シート送り方向保持用環状薄膜4の一部に、上述のような易切断部5が設けられる構造にすれば、感熱記録シートパックが画像記録装置に装着される際に、シート送り方向保持用環状薄膜4のみを容易に取り除くことができるのでより好ましい。易切断部5としては、単に破線状にフィルムに切れ目を入れた構造、菓子の包装などに使用される細い紐状フィルムを使用した構造、単に、フィルムを重ねあわせて、裏面粘着シール部材などで接着する構造等、様々な構造が適用可能である。
【0062】
送り方向端面当接部2aや側部端面当接部2b、2cの形状については、本当接部の作用を生じさせるものであれば、どのような形状であってもよい。これらの当接部は、感熱記録シート束6の側部に当接して支持する作用を生じさせるわけであるから、できるだけ広い面積を有していることが好ましい。したがって、図3に示されるように、送り方向端面当接部2aの中央付近に、数mm程度の深さの凹部であって、幅はその部分を覆うシート送り方向保持用環状薄膜4の幅より若干広い程度の凹部Mを形成することにより、当接面積はできるだけ大きくし、かつ送り方向端面当接部2aの少なくともシート送り方向保持用環状薄膜4に覆われる部分の高さが感熱記録シート束6の厚みより低くなるようにすることができる。このような凹部を同様に側部端面当接部2b、2cに設けても良い。
【0063】
また図面から分かるように、側部端面当接部2b、2cは、感熱記録シート束6の側面の全面を覆っていない、これは画像記録装置に装着後、シート送り機構が感熱記録シートを1枚ずつ送り出す際に、この部分に側部端面当接部2b、2cが存在しない方が、装置の機構上、好都合だからである。
このような各当接部の位置や構成は適宜実際の記録装置等との兼ね合いで、複数になったり場所を変更することができる。
【0064】
従来より、感熱記録シートパックは、例えば、アルミシート、ポリプロピレンでラミネートされたアルミシートから構成される防湿性フィルムが使用された袋に詰められて、全体が密封された状態で運搬される。運搬後、画像記録装置に装填される直前に、この袋から取り出されるのが普通である。このため、運搬中に受ける振動や衝撃により、感熱記録シートは、保護カバー上で微少な移動を繰り返し、感熱記録面にスリキズやコスレキズがつき、記録画質面について問題となっていた。本発明による感熱記録シートパックは、保護カバー本体部の縁の3箇所に当接部を設け、さらに、側部端面方向保持用帯状薄膜と、シート送り方向保持用環状薄膜とを用いたことにより、キズの発生を防止するものである。
【0065】
本発明の感熱記録シートパックは、特に、医療画像記録用の感熱記録シートの積層体を収納するのに適している。すなわち、医療分野で用いられる画像には、特に微細な描写が要求されており、鮮鋭性や粒状性に優れた高画質な画像を生成することが必要とされている。また、診断のし易さの観点から、冷黒調の画像が好まれる傾向がある。医療画像記録用フィルムにスリキズやコスレキズがあると、誤診を招くおそれがあるが、本発明の感熱記録シートパックにして使用すれば、スリキズやコスレキズの発生を確実に防止することができるため、誤診を未然に防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、四角形状の透明フィルムの一方の面に、ロイコ染料および呈色剤を有する感熱記録層と、水性樹脂を主成分とする保護層とを設けた感熱記録シートを使用する医療画像記録用記録媒体のほかに、工業用、あるいはその他の用途に使用される透明な感熱記録シートに適用され得る。
また、本発明による感熱記録シートパックは、感熱記録シート以外に、その記録面を繊細に保護すべき記録体があれば、そのような記録体のシート束を収容するパックにも適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1a 着目コーナー部
1b、1c、1d コーナー部
2 保護カバー
3 側部端面方向保持用帯状薄膜
4 シート送り方向保持用環状薄膜
5 易切断部
6 感熱記録シート束
7 感熱記録シートパック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱記録面と裏面とを有する感熱記録シートであり、四角形状の透明フィルムの前記感熱記録面に、ロイコ染料および呈色剤を含有する感熱記録層と、水性樹脂を主成分とする保護層とが設けられた感熱記録シートにおいて、
前記シートの四隅に、4つのコーナー部が設けられ、前記コーナー部は、1つの着目コーナー部と、残りの同一形状の、前記着目コーナー部以外のコーナー部とからなり、それぞれ、5mm以上の曲率半径の端縁を有し、かつ、前記着目コーナー部の端縁の曲率半径は、前記着目コーナー部以外のコーナー部の端縁の曲率半径より大きいか、または、前記着目コーナー部以外のコーナー部の端縁の曲率半径より小さくなっており、前記シートの前記4つのコーナー部における前記着目コーナー部の位置に応じて、前記感熱記録面と前記裏面とが区別されることを特徴とする感熱記録シート。
【請求項2】
前記着目コーナー部の端縁の最大曲率半径(Rmax)の、前記着目コーナー部以外のコーナー部の端縁の前記曲率半径(R)に対する比(Rmax/R)が2以上であることを特徴とする請求項1に記載の感熱記録シート。
【請求項3】
前記着目コーナー部の端縁は、1/4円未満の円弧からなり、前記着目コーナー部以外のコーナー部の端縁は、1/4円の円弧からなっていることを特徴とする請求項1に記載の感熱記録シート。
【請求項4】
前記コーナー部の端縁は、それぞれ、前記感熱記録シートの本体部分の直線状端縁と実質上滑らかに接続していることを特徴とする請求項1に記載の感熱記録シート。
【請求項5】
前記着目コーナー部の位置により前記感熱記録シートの表裏の表示を示す注意表示をさらに有していることを特徴とする請求項1に記載の感熱記録シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−47023(P2010−47023A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274455(P2009−274455)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【分割の表示】特願2005−514788(P2005−514788)の分割
【原出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】