説明

感熱記録材料

【課題】植物由来の原材料成分が高い比率(樹脂中に質量比で39〜95質量%で含有)で使用されたバイオウレタン樹脂を背面層の皮膜形成成分として用いた、環境問題に対する有効な対応策になり得るエコロジー素材によって加工され、しかも、適度の滑り性、耐熱性、基材フィルムとの密着性の他、サーマルヘッドとの接触摩擦によっても粉落ちの発生がないことや、ヘッドへ焼き付かないことなどの物性面における基本的性能をも満足した感熱記録材料の提供。
【解決手段】基材シートと、該基材シートの一方の面に設けた感熱記録層と、該基材シートの他方の面に設けた背面層とからなる感熱記録材料であって、該背面層が、バイオウレタン樹脂を皮膜形成成分として含む形成材料からなることを特徴とする感熱記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録層の背面層(耐熱保護層)が、環境に優しいバイオウレタン樹脂を皮膜形成成分として含む樹脂組成物で形成された感熱記録材料に関する。さらに詳しくは、地球温暖化対策や環境負荷低減を目的としたカーボンニュートラルに大きく貢献する、植物由来の原料利用率(含有量)の高いバイオウレタン樹脂が使用された感熱記録材料(例えば、サーマルプリンターなどで使用されるインクリボン)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、枯渇性資源でない産業資源として「バイオマス」が注目されているが、かかる観点からの「バイオマス」の定義は、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」とされている。従来から、木綿、ウール、でんぷん、天然ゴムなどの天然系やその誘導体は、古典的なバイオマスポリマーとして使用されてきている。また、環境保全を目的に、1980年代から、バイオマスを原材料とする、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカン酸などの生分解性を重視するバイオマスポリマーの開発が盛んに行われてきている。その後、バイオマスである、1,3−プロパンジオール、コハク酸、キチン・キトサンをベースに、石油系モノマーを反応させてバイオマスポリマー(バイオベースポリマー)に転換させることについての開発が行われてきている。これらのバイオベースポリマーは、地球環境温暖化防止策として、多種多様な製品の素材として期待されており、応用分野も多岐にわたり、あらゆる産業分野への展開が期待されている。そして、一部では実用化もされている。しかしながら、バイオマスポリマーは、用途によっては、従来の石油系のポリマーと比較して素材としての物性面が十分であると言い難く、これを用いた製品の開発は容易ではない。
【0003】
ここで、ポリウレタン系樹脂は、耐摩耗性、屈曲性、可撓性、柔軟性、加工性、接着性、耐薬品性などの諸物性に優れ、かつ、各種加工法への適性にも優れるため、感熱記録材料、合成擬革(人工皮革と合成皮革の総称)用材料、各種コーティング剤、インキ、塗料などのバインダーとして、或いは、フィルム、シートおよび各種成型物用材料として広く使用されている。そして、これら種々の用途に適したポリウレタン系樹脂が提案されている。なお、本発明で言う「ポリウレタン系樹脂」とは、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタン−ポリウレア樹脂の総称である。ポリウレタン系樹脂は、基本的には高分子量ポリオール成分、有機ポリイソシアネート成分、さらには必要に応じて鎖伸長剤成分を反応させて得られるものであり、これらの各成分の種類、組み合わせを変化させることによって、種々の性能を有するポリウレタン系樹脂の提供を可能としている。このような広範な用途を持つ多様な性能を有するポリウレタン系樹脂において、前記したバイオマスポリマーを利用でき、その物性面において十分に対応可能な用途が開発されれば非常に有用である。
【0004】
一方、従来、サーマルプリンターなどで使用されるインクリボンは、薄いポリエステルフィルムを基材とし、該基材上面に溶融型熱転写インク層が、該基材下面のサーマルヘッドと接する面には耐熱保護層が設けられた構造となっている。そして、この耐熱保護層形成材料として、シロキサン変性ポリウレタン樹脂とポリイソシアネートからなる架橋硬化物の使用や(特許文献1、2参照)、アクリルシロキサン系グラフト共重合体の使用(特許文献3〜5参照)が提案されている。ここで、インクリボンを構成する上記耐熱保護層への物性面の要求としては、適度の滑り性、耐熱性、基材フィルムとの密着性の他に、サーマルヘッドとの接触摩擦によっても粉落ちの発生がないことや、サーマルヘッドへ焼き付かないことなどが求められる。
【0005】
近年、環境保護の観点から、サーマルプリンターなどで使用される感熱記録材料であるインクリボンにあっては、新たにエコロジーを考慮した感熱記録材料のシステム開発が強く求められている。その理由は、従来、感熱記録材料を製造する原材料の殆どが石油由来の原材料で構成され、さらに、有機溶剤に溶解した種々の樹脂溶液が原材料として使用されているため、揮発性有機化合物(VOC)対策が急務とされている点にある。
【0006】
上記インクリボンにおいて、その原材料である種々の樹脂のライフサイクル考えた場合、原材料調達、素材製造、使用、ゴミとして焼却する、というのが大半であり、この点からもエコロジーを考慮した改善が求められている。すなわち、上記のゴミ処理の焼却によって発生する、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)などの温室効果ガス発生における地球温暖化や、石油資源の枯渇などは、社会問題となっている。これらの温室効果ガスは、地表から熱が宇宙空間に逃げる作用を妨げる働きがあり、温室効果ガスの増加に伴って生じる、地球全体の海面の上昇や、温度上昇による生態系や農林業への影響が指摘されている。さらに、原材料調達、素材製造、使用、廃棄までのライフサイクルにおいて、少なくとも、従来の石油由来の原材料を使用し続ける状態は、環境に配慮したものとは言えない。
【0007】
これに対し、植物由来の原材料は、植物が生育する際にCO2を吸収するために、例え焼却された場合でもCO2発生はゼロとカウントすることができ、植物由来の原材料の利用は、地球温暖化対策に貢献できるという考えがある。しかしながら、例えば、従来から知られている植物由来のポリ乳酸は、土壌微生物分解によって廃棄物削減に貢献できるとの立場から用途の拡大が推進されてきたが、その耐久性が低いために、限定された部位にしか使用できない、という実用上の課題がある。
【0008】
前記した従来技術に挙げたように、シロキサン変性ポリウレタン系樹脂は、諸物性に優れ、かつ、各種加工法への適性にも優れるため、感熱記録材料の特に背面層への適応がなされている。しかし、これを植物由来の原材料を用いたシロキサン変性ポリウレタン系樹脂に代替する場合は、その素材は、植物由来の原料利用率(含有量)が高いものであることは勿論、下記の物性面における要求を満足することが必要となる。すなわち、感熱記録材料の耐熱保護層は、例えば、適度の滑り性、耐熱性、基材フィルムとの密着性の他、サーマルヘッドとの接触摩擦によっても粉落ちの発生がないことや、ヘッドへ焼き付かないことが求められる。また、前記したような社会的事情から、一般的に、より地球環境に配慮した素材の提供が求められている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61−227087号公報
【特許文献2】特開昭64−11888号公報
【特許文献3】特開昭62−30082号公報
【特許文献4】特開昭63−37620号公報
【特許文献5】特開平2−274596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
感熱記録材料に使用される従来のシロキサン変性ポリウレタン系樹脂においての環境問題に対する対策対応については、揮発性有機化合物(VOC)対策が限度であり、CO2問題をも視野に入れた環境問題までは考慮されていないのが現状である。一方で、製品の用途にもよるが、一般的に、感熱記録材に要求される諸物性としては、以下のことが要求される。すなわち、適度の滑り性、耐熱性、基材フィルムとの密着性の他、サーマルヘッドとの接触摩擦によっても粉落ちの発生がないことや、ヘッドへ焼き付かないことなどが同時に要求される。
【0011】
本発明は、以上のような従来型技術における種々の問題に鑑みてなされたものである。その目的は、植物由来の原材料成分が高い比率で使用されて合成してなるポリウレタン樹脂(バイオウレタン樹脂)を用いた、環境問題に対する有効な対応策になり得るエコロジー素材によって加工された感熱記録材料であって、しかも、適度の滑り性、耐熱性、基材フィルムとの密着性の他、サーマルヘッドとの接触摩擦によっても粉落ちの発生がないことや、ヘッドへ焼き付かないことなどの物性面における基本的性能を満足した感熱記録材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、基材シートと、該基材シートの一方の面に設けた感熱記録層と、該基材シートの他方の面に設けた背面層とからなる感熱記録材料であって、該背面層が、バイオウレタン樹脂を皮膜形成成分として含む形成材料からなることを特徴とする感熱記録材料である。
【0013】
また、上記感熱記録材料の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。植物由来の短鎖ジオール成分(a)と石油由来のカーボネート成分(b)から合成されてなる、バイオポリカーボネートポリオール(A)、植物由来の短鎖ジオール成分(a)と植物由来のカルボン酸成分(c)とから合成されてなるバイオポリエステルポリオール(B)、および、植物由来の短鎖ジオール成分(a)からなるバイオポリエーテルポリオール(C)からなる群より選ばれる少なくとも1種のバイオポリオール成分と、その構造中に少なくとも1個以上の活性水素基を含むシロキサン成分(d)と、イソシアネート成分(e)と、を含有する反応成分から合成されてなり、かつ、該バイオウレタン樹脂100質量%に対して植物由来成分の含有量が39〜95質量%、シロキサン成分の含有量が0.1〜50質量%である感熱記録材料が挙げられる。
【0014】
さらに、本発明の感熱記録材料においては、上記のバイオウレタン樹脂の構成が、下記に挙げる形態であることが好ましい。
前記反応成分として、植物由来の短鎖ジオール成分(a)、石油由来のジオール成分またはジアミン成分(f)のいずれかをさらに含むこと。
前記バイオウレタン樹脂が、合成に用いる反応成分中の、前記バイオポリオールと、前記シロキサン成分(d)と、必要に応じて含有する前記植物由来の短鎖ジオール成分(a)と、必要に応じて含有する前記石油由来のジオール成分またはジアミン成分(f)の、各成分中における活性水素基含有基の合計と、合成に用いる反応成分中の前記イソシアネート成分(e)のイソシアネート基とが、イソシアネート基:活性水素基含有基が0.8〜1.5の当量比となるようにして反応させて得られたものであること。
【0015】
前記短鎖ジオール成分(a)が、植物由来の、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールから選ばれる少なくとも1種であること。
前記カルボン酸成分(c)が、植物由来のひまし油誘導体からなるセバシン酸および/または植物由来のコハク酸であること。
前記カーボネート成分(b)が、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネートおよびジフェニルカーボネートから選ばれる少なくとも1種であること。
前記イソシアネート成分(e)が、植物由来成分の誘導体からなるジイソシアネート成分、植物由来のダイマー酸ジイソシアネート成分、アミノ酸由来のポリイソシアネート成分、および、石油由来のジイソシアネート成分からなる群から選ばれたものであること。
【0016】
前記バイオウレタン樹脂の形態が、有機溶剤系、水系または100%ソリッドのいずれかであること。
前記背面層の形成材料が、必要に応じて、植物由来成分の誘導体からなるポリイソシアネート系架橋剤成分、または、植物由来のダイマー酸ポリイソシアネート架橋剤成分、または、アミノ酸由来のポリイソシアネート架橋剤成分、または、石油由来のポリイソシアネートの少なくともいずれかで架橋されていること。
前記背面層の形成材料が、さらに、植物由来のセルロースアセテートブチレート樹脂、またはセルロースアセテートプロピオネート樹脂、またはセルロースアセテート樹脂の少なくともいずれかをバインダーとして含むこと。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、植物由来の原材料成分が高い比率(例えば、樹脂中に質量比で39〜95質量%で含有)で使用されて合成してなるポリウレタン樹脂(バイオウレタン樹脂)を背面層の皮膜形成成分として用いた、環境問題に対する有効な対応策になり得るエコロジー素材によって加工された感熱記録材料であって、しかも、適度の滑り性、耐熱性、基材フィルムとの密着性の他、サーマルヘッドとの接触摩擦によっても粉落ちの発生がないことや、ヘッドへ焼き付かないことなどの物性面における基本的性能を満足した感熱記録材料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の感熱記録材料は、基材シートと、該基材シートの一方の面に設けた感熱記録層と、該基材シートの他方の面に設けた背面層とからなる感熱記録材料であって、該背面層が、バイオウレタン樹脂を皮膜形成成分として含む形成材料を用いてなることを特徴とする。特に、本発明において好適な特定の材料構成からなるバイオウレタン樹脂については後述する。
【0019】
本発明の感熱記録材料は、その背面層の皮膜形成成分に、バイオウレタン樹脂、好ましくは特定の材料構成のバイオウレタン樹脂を用いること以外は、一般的な感熱記録材料形成用塗料を用いて、従来公知の方法で製造することができ、製造方法自体は特に限定されない。また、本発明の感熱記録材料に用いる基材は、従来公知の感熱記録材料製造に使用されている基材がいずれも使用でき、感熱記録材料の使用目的に最適な基材を選定すればよく、特に限定されない。例えば、易接着処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやバイオマスポリマーなどが挙げられる。
【0020】
本発明で用いるバイオウレタン樹脂を用いて感熱記録材料の背面層を形成するに際しては、バイオウレタン樹脂を含む背面層形成用塗料を、従来公知の方法により、上記したような基材に塗布することで形成でき、特に限定されない。例えば、グラビアコーター、コンマコーター、リバースコーター、マイクロバーコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、各種薄膜コーターなどで、基材上に背面層形成用塗料をダイレクト塗布することで形成できる。
【0021】
本発明の感熱記録材料は、その背面層の形成に、植物由来の成分を高い比率(例えば、樹脂中に質量比で39〜95質量%で含有)で使用されてなるバイオウレタン樹脂を用いたことを特徴とするが、以下、特に本発明において好適な特定の材料構成のバイオウレタン樹脂について説明する。すなわち、本発明で好適に使用されるバイオウレタン樹脂は、植物由来の成分として、少なくとも植物由来からなる短鎖ジオール成分(a)を用いることで得られる植物由来のポリカーボネートポリオール(A)、植物由来の短鎖ジオール成分(a)と植物由来のカルボン酸成分(c)を用いることで得られる、植物由来のポリエステルポリオール(B)、或いは、植物由来の短鎖ジオール成分(a)を用いることで得られる、植物由来のポリエーテルポリオール(C)からなる群より選ばれる少なくとも1種のバイオポリオール成分と、その構造中に少なくとも1個以上の活性水素基を含むシロキサン成分(以下、活性水素基含有シロキサン成分と呼ぶ)(d)と、(ポリ)イソシアネート成分(d)とを主成分としてなることを特徴とする。ここで、本発明でいう「ポリウレタン」とは、ポリウレタンおよびポリウレタン−ポリウレアの総称である。したがって、その形成材料には、必要に応じてジアミン成分を用いることができる。また、本発明でいう活性水素基含有基とは、イソシアネート基と反応性の、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基などの活性水素を有する官能基を意味する。
【0022】
本発明に用いるバイオウレタン樹脂は、下記に挙げるような成分を主とし、常法によって容易に得ることができる。すなわち、例えば、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートまたは脂環式ジイソシアネート、植物由来成分の誘導体からなるジイソシアネート成分や、植物由来のダイマー酸ジイソシアネート成分、アミノ酸由来のポリイソシアネート成分(リジンジイソシアネートなど)と、活性水素基含有基として、植物由来の短鎖ジオール、植物由来のポリオール成分とが反応して形成された、ポリウレタンブロックおよび/またはポリウレアブロックの少なくとも一種の反復体、或いは、これらのブロックを共重合として得られる。
【0023】
そして、上記バイオウレタン樹脂を用いて、脂肪族、芳香族、または、脂環式ジイソシアネート、植物由来成分の誘導体からなるジイソシアネート成分や、植物由来のダイマー酸ジイソシアネート成分、アミノ酸由来のポリイソシアネート成分(リジンジイソシアネートなど)と、植物由来成分を含んでなる活性水素基含有基とを反応してなる、上記多ブロック縮合体に基づく感熱記録材料組成物とすればよい。例えば、多ブロック縮合体の分子鎖は、植物由来からなる短鎖ジオール成分(a)0〜30質量%と、植物由来からなるポリオール成分10〜100質量%と、少なくとも1個以上の活性水素基を含有するシロキサン成分0.1〜50質量%と、必要に応じて石油由来のジオール成分および/またはジアミン成分と、ポリウレタンブロックおよび/またはポリウレアブロックの少なくとも一種との反復体からなる。そして、本発明に好適なものは、上記バイオポリウレタンブロックおよび/またはバイオポリウレアブロックから構成され、植物由来成分を39〜95質量%の範囲で含有することを特徴とする。その重量平均分子量は、2,000〜500,000程度のものが好ましい。このような構成の感熱記録材料組成物によって得られる感熱記録材料は、適度の滑り性、耐熱性、基材フィルムとの密着性の他、サーマルヘッドとの接触摩擦によっても粉落ちの発生がないことや、ヘッドへ焼き付かないことなどに優れたものになる。
【0024】
本発明に用いるバイオウレタン樹脂の形態は、有機溶剤系、水系、100%ソリッドなどのいずれのものでもよいが、下記に述べるように植物由来の成分を用いているため、環境に配慮した素材となる。例えば、有機溶剤系のバイオウレタン樹脂は、植物由来からなる短鎖ジオール成分(例えば、1,3−プロパンジオール成分や、1,4−ブタンジオールやエチレングリコール)と、植物由来からなるポリオール成分を含有してなるため、下記に述べるようにCO2排出量の削減に寄与し得る。他方、水系、100%ソリッドの形態の場合は、VOC(揮発性有機化合物)対策の観点から、さらに地球環境に配慮した素材となる。
【0025】
本発明の感熱記録材料を構成するバイオウレタン樹脂も、焼却した場合にCO2を発生する。しかし、本発明で用いるバイオウレタンの原料の一部は、トウモロコシやヒマ(トウゴマの種子)などの植物であり、この原料植物は、その育成過程において、水を与え、光合成を行うことで、大気中のCO2を吸収する。このため、これらの植物から、植物由来の短鎖ジオールやポリオールが得られる。本発明では、これらの植物由来の成分と、植物由来のイソシアネートや石油由来のイソシアネートと反応させることで、バイオウレタン樹脂として用いるが、その際、高い比率で植物由来の成分を使用している。したがって、排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量とはならないまでも、いわゆるカーボンニュートラルの考えに沿ったものとなっている。
【0026】
次に、本発明に好適に用いることのできるバイオウレタン樹脂を構成する各成分について、さらに詳しく説明する。本発明に好適なバイオウレタン樹脂は、植物由来の短鎖ジオール成分(a)と石油由来のカーボネート成分(b)から合成されてなる、バイオポリカーボネートポリオール(A)、植物由来の短鎖ジオール成分(a)と植物由来のカルボン酸成分(c)とから合成されてなるバイオポリエステルポリオール(B)、および、植物由来の短鎖ジオール成分(a)からなるバイオポリエーテルポリオール(C)、からなる群より選ばれる少なくとも1種のバイオポリオール成分と、その構造中に少なくとも1個以上の活性水素基を含むシロキサン成分(d)と、およびイソシアネート成分(e)と、を含有する反応成分から合成されてなる。さらに、必要に応じて、植物由来の短鎖ジオール成分(a)、石油由来のジオール成分および/またはジアミン成分(f)を反応成分として含んでもよい。
【0027】
上記バイオウレタン樹脂は、その製造にあたり、植物由来の成分を含んでなる上記したバイオポリオール(A)、(B)および(C)の少なくともいずれかの成分を用いることを要する。バイオポリオール(A)、バイオポリオール(B)およびバイオポリオール(C)は、ともに、植物由来の短鎖ジオール成分(a)を原料とする。植物由来の短鎖ジオール成分(a)としては、例えば、下記のような方法によって植物原料から得られる、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールなどが挙げられ、いずれも使用し得る。これらは、単独で用いても併用してもよい。
【0028】
1,3−プロパンジオール(HOCH2CH2CH2OH)は、植物資源(例えば、トウモロコシ)を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3−ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て、製造される。上記発酵法のようなバイオ法で製造された1,3−プロパンジオール化合物は、EO製造法の1,3−プロパンジオール化合物と比較し、安全性面から乳酸など有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能であり、この点でも有用である。
【0029】
1,4−ブタンジオールは、植物資源からグリコールを製造し発酵することで得られたコハク酸を得、これを水添することによってバイオマス1,4−ブタンジオールが製造できる。さらに、上記エチレングリコールは、例えば、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造される。
【0030】
バイオポリカーボネートポリオールであるバイオポリオール成分(A)は、上記した植物由来の短鎖ジオール成分(a)と、石油由来のカーボネート成分(b)とを合成することにより得られる。上記カーボネート成分(b)としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチレンカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。これらは単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。上記カーボネート成分(b)の使用量は、短鎖ジオール成分(a)に対し等モルとなるように用いるのがよい。
【0031】
バイオポリエステルポリオールであるバイオポリオール(B)は、上記した短鎖ジオール成分(a)と共に、植物由来のカルボン酸成分(c)を原料として得られる。前記カルボン酸成分(c)としては、セバシン酸、コハク酸、乳酸、グルタル酸、ダイマー酸などが挙げられる。例えば、セバシン酸は、ひまし油(トウゴマの種子より抽出)から得られるリシノール酸をアルカリ熱分解することにより、ヘプチルアルコールを副生成物として生成される。
【0032】
上記バイオポリオール(B)は、これらの植物由来のカルボン酸成分(c)と、上述した植物由来の短鎖ジオール成分(a)と縮合反応することによって、100%植物由来のバイオポリエステルポリオールとして生成される。このため、本発明のバイオウレタン樹脂の原料として好適である。例えば、植物由来のセバシン酸と植物由来の1,3−プロパンジオールとを直接脱水縮合して得られるポリトリメチレンセバセートポリオール、植物由来のコハク酸と植物由来の1,4−ブタンジオールとを直接脱水縮合して得られるポリブチレンサクシネートポリオールまた植物由来のポリ乳酸ポリオールなどのバイオポリエステルポリオールが生成される。これらは単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。本発明者らの検討によれば、前記したセバシン酸と、前記した植物由来の短鎖ジオールとによって得られる全ての植物由来のバイオポリエステルポリオールは、特に、ウレタン樹脂原料として有用である。
【0033】
本発明で使用するバイオウレタン樹脂には、上記バイオポリオール(A)および(B)と共に、植物由来のバイオポリエーテルポリオール(C)を、バイオポリオールとして併用することができる。バイオポリエーテルポリオール(C)を併用することにより、バイオウレタン樹脂中の植物由来成分の割合を増やすことができる。バイオポリエーテルポリオール(C)は、植物由来のポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール−ポリテトラメチレングリコール(ブロックまたはランダム)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。例えば、植物由来のポリトリメチレングリコールは、1,3−プロパンジオールの酸触媒重縮合によって得られる。これらは単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
上述したバイオポリオール(A)、バイオポリオール(B)およびバイオポリオール(C)の重量平均分子量は特に限定されないが、通常数平均分子量は500〜3,000程度である。すなわち、3,000を超えるとウレタン結合の凝集力が発現せず機械特性が低下したり、結晶性ポリオールにおいては皮膜化にした際に白化現象を引き起こす場合があるので、好ましくない。また、これらのバイオポリオールは単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
また、必要に応じて、植物由来の短鎖ジオール成分(a)や石油由来の短鎖ジオール成分および/またはジアミン成分(e)を、上記したバイオポリオール(A)、(B)および(C)と共に合成する際の反応成分として使用することもできる。石油由来の短鎖ジオール成分(a)としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類およびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満);1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,1−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式系グリコール類およびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満);キシリレングリコールなどの芳香族グリコール類およびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満);ビスフェノールA、チオビスフェノール、スルホンビスフェノールなどのビスフェノール類およびそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満);炭素数が1〜18のアルキルジエタノールアミンなどのアルキルジアルカノールアミン類などの化合物が挙げられる。また、多価アルコール系化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパンなどが挙げられる。これらは、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
また、本発明の効果の範囲内であれば、その他、石油由来のポリエステルポリオールを、上記したバイオポリオール(A)、(B)および(C)と共に合成する際の反応成分として使用して得られたバイオウレタン樹脂を用いることも可能である。石油由来のポリエステルポリオールとは、例えば、石油由来の脂肪族系ジカルボン酸類(例えば、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸など)および/または芳香族系ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸など)と石油由来の低分子量グリコール類(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなど)とを縮重合したものであり、具体的にはポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン/ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリ−3−メチルペンタンアジペートジオール、ポリブチレンイソフタレートジオール、ポリラクトンポリオール、ポリカプロラクトンジオールまたはトリオール、ポリ−3−メチルバレロラクトンジオールなどが挙げられる。これらは単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
また、低分子量グリコール類として石油由来の原材料を使用することもでき、また、石油由来のポリカーボネートポリオール(例えば、ポリテトラメチレンカーボネート、ポリペンタメチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート)なども併用できる。
【0038】
さらに、本発明の効果の範囲内であれば、石油由来のポリアミンを、本発明に用いるバイオウレタン樹脂を合成する際の反応成分として使用することも可能である。石油由来のポリアミンとしては、短鎖ジアミン、脂肪族系、芳香族系ジアミン類、ヒドラジン類などが挙げられる。上記短鎖ジアミンとしては、例えばメチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン化合物;フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ジアミン化合物;シクロペンダジアミン、シクロヘキシルジアミン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン化合物などが挙げられる。また、ヒドラジン、カルボジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジドなどのヒドラジン類が挙げられる。その他、アミノ変性シロキサンなどが挙げられる。これらは単独であるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。ポリオールおよびポリアミンとしては、ジオール化合物、ジアミン化合物が好ましい。
【0039】
その他、必要に応じて、石油由来のポリオレフィンポリオールを反応成分として使用することもできる。例えば、ポリブタジエングリコール、シロキサン変性ポリオール、ポリイソプレングリコールまたは、その水素化物など、が挙げられる。また、石油由来のポリメタクリレートジオールとしては、例えば、α,ω−ポリメチルメタクリレートジオール、α,ω−ポリブチルメタクリレートジオールなどが挙げられる。
【0040】
次に、本発明に好適なバイオウレタン樹脂を合成する際の反応成分として使用する、その構造中に少なくとも1個以上の活性水素基を含むシロキサン成分(d)(以下、単に「活性水素基含有シロキサン成分(d)」とも呼ぶ)について説明する。
本発明において使用される活性水素基含有シロキサン成分(d)としては、例えば、以下のような構造のポリシロキサン化合物を用いることが好ましい。なお、下記のポリシロキサン化合物の中には活性水素基を利用して変性されたエポキシ変性ポリシロキサン化合物も含めている。この理由は、バイオウレタン樹脂を合成する際の反応成分として該化合物を用いた場合も、イソシアネート基と反応することによって、ポリウレタン樹脂中にシロキサン成分が含有されることとなるためである。
【0041】
本発明において使用できる活性水素基含有シロキサン成分(d)としては、以下のものが挙げられる。
(1)アミノ変性ポリシロキサン化合物


【0042】
(2)エポキシ変性ポリシロキサン化合物


【0043】
上記のエポキシ化合物は、ポリオール、ポリアミド、ポリカルボン酸などと反応させ、末端活性水素を有するようにして使用することができる。
【0044】
(3)アルコール変性ポリシロキサン化合物



【0045】
(4)メルカプト変性ポリシロキサン化合物


【0046】
以上に列記したポリシロキサン化合物は、いずれも、本発明において活性水素基含有シロキサン成分(d)として使用できる好ましい化合物であるが、本発明で用いる成分(d)は、上記の例示の化合物に限定されるものではない。従って、上述の例示の化合物のみならず、その他現在市販されており、市場から容易に入手し得る、その構造中に活性水素基を有するポリシロキサン化合物はいずれも本発明において好ましく使用することができる。本発明において特に好ましい化合物は、2個の水酸基またはアミノ基を有するポリシロキサン化合物である。
【0047】
これらの他にも、ポリシロキサン化合物をラクトンで変性したポリラクトン(ポリエステル)−ポリシロキサン化合物、およびエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドで変性したポリエチレンオキサイド−ポリシロキサン化合物や、ポリプロピレンオキサイド−ポリシロキサン化合物なども好ましく使用される。特に好ましいものとしては、分子内に1個以上の活性水素基を有するポリシロキサン化合物をラクトンで変性したポリラクトン−ポリシロキサン化合物、および分子内に1個以上の活性水素基を有するポリシロキサン化合物をエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどでエーテル変性した、ポリエーテル−ポリシロキサン化合物が挙げられる。
【0048】
ここで使用する好ましいラクトンは、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、7−ヘプタノリド、8−オクタノリド、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトンおよびδ−カプロラクトンなどがある。
【0049】
また、オキシアルキレン重合体の分子鎖を得るには、アルキレンオキサイド類、具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、α−ブチレンオキサイド、β−ブチレンオキサイド、ヘキセンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド、α−メチルスチレンオキサイドなどが挙げられ、種々の触媒の存在下に開環重合させることによって得られる。
【0050】
また、本発明において前記ポリラクトン−ポリシロキサン化合物、すなわち、分子内に少なくとも1個以上の活性水素基を有するポリシロキサン化合物をラクトンで変性したポリラクトン−ポリシロキサン化合物は、分子中に1個または2個以上の活性水素基、例えば、アミノ基、水酸基、カルボキシル基などを有するシロキサン化合物を、その活性水素原子団によりラクトンを開環重合させた後、減圧処理することによって得ることができる。
【0051】
本発明に好適なバイオウレタン樹脂を合成する際に使用するイソシアネート成分(e)は、特に限定されないが、植物由来成分の誘導体からなるジイソシアネート成分や、植物由来のダイマー酸ジイソシアネート成分、アミノ酸由来のポリイソシアネート成分(リジンジイソシアネートなど)が、最も好ましい。
【0052】
また、従来公知のポリウレタンの製造に使用されているポリイソシアネートをいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、好ましいものとして、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)、ジュリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0053】
また、メチレンジイソシアネート(MDI)、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添XDIなどの脂環式ジイソシアネートなど、あるいは、これらのジイソシアネート化合物と低分子量のポリオールやポリアミンを末端がイソシアネートとなるように反応させて得られる、ポリウレタンプレポリマーなども当然使用することができる。
【0054】
本発明の感熱記録材料を製造する場合、その背面層の形成に、本発明に好適な上記したような成分から得られたバイオウレタン樹脂を皮膜形成成分として含む形成材料を用いることを要するが、形成材料中にさらに架橋剤成分を含有させて、バイオウレタン樹脂を架橋する構成とすることができる。ポリウレタン樹脂のウレタン基を利用する架橋方法としては、例えば、下記に挙げるようなポリイソシアネート架橋剤による架橋が挙げられる。使用するポリイソシアネート架橋剤としては、植物由来成分の誘導体からなるジイソシアネート成分の誘導体や、植物由来のダイマー酸ジイソシアネート成分の誘導体、アミノ酸由来のポリイソシアネート成分(リジントリイソシアネートなど)が本発明に最も好ましい。また、従来から使用されている公知のものが使用でき、特に限定されない。例えば、2,4−トルイレンジイソシアネートの二量体、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス−(p−イソシアネートフェニル)チオフォスファイト、多官能芳香族イソシアネート、多官能芳香族脂肪族イソシアネート、多官能脂肪族イソシアネート、脂肪酸変性多官能脂肪族イソシアネート、ブロック化多官能脂肪族イソシアネートなどのブロック型ポリイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマーなどが挙げられる。これらのポリイソシアネート架橋剤は、適量であれば耐熱性や基材密着性の向上に特に有効であるが、使用量が多過ぎると、製造した感熱記録材料の背面層が硬過ぎて白粉が発生したり、未反応イソシアネートが残留するので、適宜な量で使用することが好ましい。ポリイソシアネート架橋剤の使用量は、バイオウレタン系樹脂100質量部に対して100質量部以下、好ましくは、2〜50質量部の範囲内のとすることが好ましい。
【0055】
また、本発明の感熱記録材料の背面層の形成材料には、さらに必要に応じて、植物由来のバインダーをブレンドすることができる。例えば、セルロース系のCAB(セルロース・アセテート・ブチレート樹脂)、またはCAP(セルロースアセテートプロピオネート樹脂)、またはCA(セルロースアセテート樹脂)、ポリ乳酸や、植物由来のデンプン類作物(イネ、コムギ、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、キャッサバ、ショクヨウカンナなど)、糖類作物(テンサイ、サトウキビなど)、繊維類作物(ワタ、アマ、タイマ、ケナフ、タケなど)、油類作物などの化合物から誘導されるバイオポリマーや、前記植物由来化合物を利用した複合材料などが挙げられる。
【0056】
上記に挙げたような原材料を用いて得られるバイオウレタン樹脂は、その製造方法については特に限定されず、従来公知のポリウレタンの製造方法を用いることができる。例えば、分子内に活性水素を含まない有機溶剤の存在下、または不存在下に、短鎖ジオール成分(a)として植物由来の1,3−プロパンジオール化合物と、植物由来のカルボン酸成分(c)からなるバイオポリエステルポリオール(B)と、その構造中に少なくとも1個以上の活性水素基を含むシロキサン成分(d)と、ポリイソシアネート(e)と、必要に応じて低分子ジアミンを鎖伸長剤とし、イソシアネート基とを用いて合成される。その際、イソシアネート基:活性水素基含有官能基が0.8〜1.5の当量比となるように、通常、当量比が1.0となる配合で、ワンショット法、または多段法により、通常、20〜150℃、好ましくは60〜110℃で、理論イソシアネート%となるまで反応し、イソシアネート基がほとんどなくなるまで反応させることで、バイオウレタン樹脂を得ることができる。
【0057】
本発明で用いるポリウレタン系樹脂の合成においては、必要に応じて触媒を使用できる。触媒としては、例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸亜鉛、テトラn−ブチルチタネートなどの金属と有機および無機酸の塩、および有機金属誘導体、トリエチルアミンなどの有機アミン、ジアザビシクロウンデセン系触媒などが挙げられる。
【0058】
また、本発明で用いるポリウレタンの合成は、無溶剤で合成しても、必要であれば有機溶剤を用いて合成してもよい。有機溶剤として好ましい溶剤としては、イソシアネート基に不活性であるか、または、反応成分よりも低活性なものが挙げられる。例えば、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、芳香族系炭化水素溶剤(トルエン、キシレン、スワゾール(コスモ石油株式会社製の芳香族系炭化水素溶剤)、ソルベッソ(エクソン化学株式会社製の芳香族系炭化水素溶剤)など)、脂肪族系炭化水素溶剤(n−ヘキサンなど)、アルコール系溶剤(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、エーテル系溶剤(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなど)、グリコールエーテルエステル系溶剤(エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなど)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、ラクタム系溶剤(n−メチル−2−ピロリドンなど)が挙げられる。
【0059】
なお、上記ポリウレタン樹脂の合成工程においては、ポリマー末端に、イソシアネート基が残った場合、イソシアネート基末端の停止反応を加えてもよい。例えば、モノアルコールやモノアミンのように単官能性の化合物ばかりでなく、イソシアネートに対して異なる反応性のもつ2種の官能基を有するような化合物であっても使用することができる。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのモノアルコール;モノエチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミンなどのモノアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミンなどが挙げられ、この中でもアルカノールアミン類が反応制御しやすいという点で好ましい。
【0060】
さらに、上記バイオウレタン系樹脂の製造に当たり、必要に応じて添加剤を加えてもよい。例えば、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、光安定剤(ヒンダードアミン系など)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系など)、ガス変色安定剤(ヒドラジン系など)、加水分解防止剤(カルボジイミドなど)、金属不活性剤(ヒドラジン系など)やこれら2種類以上の併用が挙げられる。さらに意匠性付与剤(有機微粒子、無機微粒子)、有機顔料、無機顔料、防黴剤、難燃剤やその他の添加剤を適宜使用することができる。有機微粒子、無機微粒子としては、例えば、シリカ、シリコーン樹脂微粒子、フッ素樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子、シリコーン変性ウレタン樹脂微粒子、ポリエチレン樹脂微粒子、反応性シロキサンなどを含み得る。
【0061】
本発明に特に好適なバイオウレタン樹脂を製造する場合には、下記の配合からなる形成材料を用いることが好ましい。すなわち、それぞれ前記で説明した、植物由来からなるポリオール成分である、バイオポリカーボネートポリオール(A)、バイオポリエステルポリオール(B)およびバイオポリエーテルポリオール(C)の少なくともいずれかを10〜100質量%、必要に応じて、植物由来のジオールや石油由来のジオール成分および/またはジアミン成分0〜30質量%と(但し、これらの反応成分の合計量は100質量%である。)の割合で使用する。そして、これらの反応成分と、ポリイソシアネート化合物とを、これらの反応成分中の全活性水素とイソシアネート基とがほぼ等モル(0.8〜1.5)となるように反応させる。全活性水素とイソシアネート基が等量で反応したことを確認するには、例えば、赤外吸収スペクトルで、2,270cm-1の遊離イソシアネート基による吸収が消失する迄反応を行うといった方法を用いればよい。
【0062】
本発明では、植物由来成分の含有量が、39質量%以上95質量%以下となるように構成されたバイオウレタン樹脂を用いることが特に好ましい。植物由来成分の含有量が多いほど、本発明の特徴であるカーボンニュートラルを実現することができるからである。本発明の感熱記録材料に用いるバイオウレタン系樹脂の分子量は、重量平均分子量(GPCで測定。標準ポリスチレン換算。)が2,000〜500,000の範囲が好ましい。
【実施例】
【0063】
以下に、背面層の形成に使用した成分の合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の文中の「部」および「%」は特に断りのない限り質量基準である。
【0064】
<バイオポリオールの合成>
[バイオポリエステルポリオール合成例PES1]
撹拌機、分溜管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、セバシン酸(ひまし油由来)1,500部と、1,3−プロパンジオール(植物由来)645部とを仕込み、窒素雰囲気下において、130℃まで加熱して溶解させた。その後、テトラブトキシチタン0.21部を添加し、230℃まで昇温して、発生する水を溜出させながら反応させ、水の溜出がほとんどなくなるまで反応させた。減圧して水をさらに溜去させながら酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで加熱減圧を続けた。このようにして、水酸基価、56.5mgKOH/g、酸価、0.3mgKOH/gの、100%植物由来ポリエステルポリオールPES1[植物由来成分含有量(以下、BPと表記)=100%]を得た。
【0065】
[バイオポリカーボネートポリオール合成例PC1]
撹拌機、分溜管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、1,3−プロパンジオール(植物由来)450部と、ジメチルカーボネート533部(1,3−プロパンジオールに対して等モル)と、テトラブトキシチタン0.1部とを仕込み、窒素雰囲気下において、180℃まで昇温してメタノールを溜出させながら反応させ、メタノールの溜出がほぼなくなるまで反応させた。発生したメタノールおよび過剰のジメチルカーボネートを減圧して除去した。このようにして、水酸基価、59.5mgKOH/gのポリカーボネートポリオールPC1(BP=73%)を得た。
【0066】
[合成例:シロキサン共重合バイオウレタン樹脂PU1(実施例用)]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、マンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、先に得た植物由来のポリエステルポリオールPES1を100部、シロキサン化合物としてKF−6001(両末端型シリコーンジオール、水酸基価=62mgKOH/g、信越化学工業(株)製)20部、および1,4−ブタンジオール10部、反応溶剤としてメチルエチルケトン(「MEK」と略)74.2部を加えた。続いて、水添MDI(「H12MDI」と略)45.2部を加えて80℃にて反応を進行させた。30分後、ジブチルチンジラウレート0.12部を加え、赤外吸収スペクトルで2,270cm-1の遊離イソシアネート基による吸収が消失する迄反応を行った。粘度上昇に伴いMEKで希釈を行い、最終固形分を30%としてシロキサン共重合バイオウレタン樹脂PU1を得た(BP=57.1%)。
【0067】
[合成例:シロキサン共重合バイオウレタン樹脂PU2(実施例用)]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、マンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、先に得た植物由来のポリカーボネートポリオールPC1を100部、シロキサン化合物としてKF−6001(両末端型シリコーンジオール、水酸基価=62mgKOH/g、信越化学工業(株)製)20部、および1,4−ブタンジオール10部、反応溶剤としてMEKを74.5部加えた。続いて、H12MDIを45.9部加えて80℃にて反応を進行させた。30分後ジブチルチンジラウレート0.12部を加え、赤外吸収スペクトルで2,270cm-1の遊離イソシアネート基による吸収が消失する迄反応を行った。粘度上昇に伴いMEKで希釈を行い、最終固形分を30%としてシロキサン共重合バイオウレタン樹脂PU2を得た(BP=41.5%)。
【0068】
[シロキサン共重合バイオウレタン樹脂合成例PU3(実施例用)]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、先に得た植物由来のポリカーボネートポリオールPC1を100部、シロキサン化合物としてKF−6001(両末端型シリコーンジオール、水酸基価=62mgKOH/g、信越化学工業(株)製)20部、1,3−プロパンジオール(植物由来)を10部、N,N−ジメチルホルムアミド(「DMF」と略)を195.2部およびイソホロンジイソシアネート(「IPDI」と略)を65.2部(イソシアネート基と水酸基の比率が1.5)仕込み、90℃で加熱撹拌した。NCO%が理論値に達したところで20℃まで冷却し、イソホロンジアミン(「IPDA」と略)を16.6部と、DMFを299部添加して鎖伸長反応を行い、固形分30%のシロキサン共重合バイオウレタン樹脂PU3(BP=39.2%)を得た。
【0069】
[合成例:シロキサン共重合バイオウレタン樹脂PU4(実施例用)]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、ポリトリメチレングリコール(植物由来ポリエーテルポリオール、分子量2,000)を100部、シロキサン化合物としてKF−6001(両末端型シリコーンジオール、水酸基価=62mgKOH/g、信越化学工業(株)製)20部、1,3−プロパンジオール(植物由来)を10部、DMFを194.1部およびIPDIを64.1部(イソシアネート基と水酸基の比率が1.5)仕込み、90℃で加熱撹拌した。NCO%が理論値に達したところで20℃まで冷却し、IPDAを16.4部と、DMFを297.1部添加して鎖伸長反応を行い、固形分30%のシロキサン共重合バイオウレタン樹脂PU4(BP=52.3%)を得た。
【0070】
[合成例:シロキサン共重合バイオウレタン樹脂PU5−水性(実施例用)]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、先に得た植物由来のポリカーボネートポリオールPC1を100部、シロキサン化合物としてKF−6001(両末端型シリコーンジオール、水酸基価=62mgKOH/g、信越化学工業(株)製)20部、ジメチロールプロパン酸を8.6部およびIPDIを42.7部(イソシアネート基と水酸基の比率が1.5)仕込み、90℃で加熱撹拌した。NCO%が理論値に達したところで40℃まで冷却し、トリエチルアミン6.5部を添加し、均一になったところで、脱イオン水418.6部を激しく撹拌しながら徐々に投入してプレポリマーの水分散液を調製した。続いてIPDAを10.9部添加して鎖伸長反応を行い、固形分30%の水分散ポリカーボネートポリウレタン樹脂PU5(BP=40.1%)を得た。
【0071】
[合成例:シロキサン共重合バイオウレタン樹脂PU6−紫外線硬化(実施例用)]
撹拌機、還流冷却管、温度計、マンホールを備えた反応容器に、先に得た植物由来のポリカーボネートポリオールPC1を100部、シロキサン化合物としてKF−6001(両末端型シリコーンジオール、水酸基価=62mgKOH/g、信越化学工業(株)製)20部、およびE−10(グリセリンモノアリルエーテル、ダイソー株式会社製)10部、反応希釈剤としてアロニクスM−350(特殊アクリレート、東亞合成株式会社製)16.3部を加えた。続いて、H12MDIを32.7部(イソシアネート基と水酸基との比率が0.9)加えて80℃にて反応を進行させた。30分後ジブチルチンジラウレート0.12部を加え、赤外吸収スペクトルで2,270cm-1の遊離イソシアネート基による吸収が消失する迄反応を行い、シロキサン共重合バイオウレタン樹脂PU6を得た(BP=40.8%)。
【0072】
[比較合成例:シロキサン共重合比較ウレタン樹脂PU7(比較例用)]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、マンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、ポリブチレンアジペートジオール(分子量2,000)を100部、シロキサン化合物としてKF−6001(両末端型シリコーンジオール、水酸基価=62mgKOH/g、信越化学工業(株)製)20部、および1,4−ブタンジオール10部、反応溶剤としてMEKを74.1部加えた。続いて、MDIを43.8部加えて80℃にて反応を進行させ、赤外吸収スペクトルで2,270cm-1の遊離イソシアネート基による吸収が消失する迄反応を行った。粘度上昇に伴いMEKで希釈を行い、最終固形分を30%としてシロキサン共重合比較ウレタン樹脂PU7を得た(BP=0%)。
【0073】
[実施例1]
(背面層用塗料1)
・シロキサン共重合バイオウレタン樹脂溶液PU1 40部
・コロネートL 3.2部
・メチルエチルケトン 195.8部
・シクロヘキサノン 49.0部
上記のコロネートL(固形分75%、日本ポリウレタン工業株式会社製)は、石油系イソシアネート架橋剤である。
【0074】
上記の背面層用塗料を用い、グラビア印刷により、厚さ6μmの易接着処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの表面に、乾燥後の厚みが0.5μmになるように塗布した後、乾燥機中で溶剤を蒸発させて背面層を形成した。
【0075】
更に、得られたフィルムの背面層と反対側の面に、下記の組成の感熱記録層塗工液をその塗布量が5g/m2になるようにホットメルトによるロールコート法によって塗布することによって、実施例1の感熱記録材料を作成した。
【0076】
〔感熱記録層塗工液〕
・パラフィンワックス 20部
・ポリブテン(新日本石油株式会社社製) 1部
・カーボンブラック 2部
【0077】
[実施例2]
実施例1で使用した背面層用塗料1を下記のものに変えた以外は実施例1と同様にして、実施例2の感熱記録材料を作成した。
【0078】
(背面層用塗料2)
・シロキサン共重合バイオウレタン樹脂溶液PU2 40部
・コロネートL 3.2部
・メチルエチルケトン 195.8部
・シクロヘキサノン 49.0部
上記のコロネートL(固形分75%、日本ポリウレタン工業株式会社製)は、石油系イソシアネート架橋剤である。
【0079】
[実施例3]
実施例1の背面層用塗料1を下記のものに変えた以外は実施例1と同様にして、実施例3の感熱記録材料を作成した。
【0080】
(背面層用塗料3)
・シロキサン共重合バイオウレタン樹脂溶液PU1 40部
・リジントリイソシアネート 0.9部
・メチルエチルケトン 195.8部
・シクロヘキサノン 49.0部
上記のリジントリイソシアネート(固形分100%、協和発酵株式会社製)は、アミノ酸由来イソシアネート架橋剤である。
【0081】
[実施例4]
実施例1の背面層用塗料1を下記の背面層用塗料4に変えた以外は実施例1と同様にして、実施例4の感熱記録材料を作成した。
【0082】
(背面層用塗料4)
・シロキサン共重合バイオウレタン樹脂溶液PU3 40部
・DMF 200部
【0083】
[実施例5]
実施例1の背面層用塗料1を下記の背面層用塗料5に変えた以外は実施例1と同様にして、実施例5の感熱記録材料を作成した。
【0084】
(背面層用塗料5)
・シロキサン共重合バイオウレタン樹脂溶液PU4 40部
・CAB−381−20 12部
・DMF 428部
上記で使用したCAB−381−20(イーストマンケミカル社製)は、セルロース系のセルロース・アセテート・ブチレート樹脂である。
【0085】
[実施例6]
実施例1の背面層用塗料1を下記の背面層用塗料6に変えた以外は実施例1と同様にして、実施例6の感熱記録材料を作成した。
【0086】
(背面層用塗料6)
・シロキサン共重合バイオウレタン樹脂溶液PU5 40部
・カルボジライトV−02
(カルボジイミド架橋剤 日清紡ケミカル株式会社製) 4.8部
・イオン交換水 219.2部
上記で用いたカルボジライトV−02(日清紡ケミカル株式会社製)は、カルボジイミド架橋剤である。
【0087】
[実施例7]
(背面層用塗料7)
・シロキサン共重合バイオウレタン樹脂溶液PU6 10部
・イルガキュア651(光開始剤、BASF社製) 0.1部
・メチルエチルケトン 191.9部
【0088】
上記の背面層用塗料7を用い、グラビア印刷により、厚さ6μmの易接着処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの表面に、乾燥後の厚みが0.5μmになるように塗布した。その後、乾燥機中で溶剤を蒸発させた後、メタルハライドランプによる紫外線照射処理(積算光量300mJ/cm2)をして背面層を形成した。
【0089】
更に、得られたフィルムの背面層と反対側の面に、実施例1と同様に感熱記録層塗工液を塗布することによって実施例7の感熱記録材料を作成した。
【0090】
[実施例8]
実施例1の感熱記録層塗工液を植物由来の原材料を用いる下記のものに変えた以外は実施例1と同様にして、実施例8の感熱記録材料を作成した。
【0091】
〔植物由来原料使用感熱記録層塗工液〕
・カルナウバワックス(植物由来) 20部
・ポリブテン(新日本石油株式会社社製) 1部
・カーボンブラック 2部
【0092】
[実施例9]
実施例1で使用した背面層および感熱記録層を塗工する基材シートであるPETフィルムを、植物由来の原材料を用いるポリトリメチレンテレフタレート(TTP)フィルムに変えた以外は実施例1と同様にして、実施例9の感熱記録材料を作成した。
【0093】
[実施例10]
実施例1で使用した背面層および感熱記録層を塗工する基材シートであるPETフィルムを、植物由来の原材料を用いるポリ乳酸フィルムに変えた以外は実施例1と同様にして、実施例10の感熱記録材料を作成した。
【0094】
[比較例1]
実施例1の背面層用塗料1の配合において、シロキサン共重合バイオウレタン樹脂溶液PU1を、先に得た比較ウレタン樹脂PU7に変えた以外は実施例1と同様にして、比較例1の感熱記録材料を作成した。
【0095】
[評価]
上記で得られた実施例及び比較例の各感熱記録材料を、それぞれ市販のバーコードプリンターに装着し、これを用いて下記の条件下で印画を行って実装試験した。そして、サーマルヘッドのスティッキング性、ヘッドの汚染性、印画結果を評価した。また背面層と基材シートとの密着性をテープ剥離試験で評価し、背面層の移行性も試験した。
【0096】
(印画条件:溶融転写方式)
プリンター:110XiIIIplus(Zebra社製)
ドット密度:300dpi
印字濃度:12
受像紙:平滑度50秒の上質紙
【0097】
(1)スティッキング性
感熱記録材料を実装試験に供した場合の、印画時における感熱記録材料の皺の発生、サーマルヘッドの背面層に対するスティッキングの発生およびサーマルヘッドと感熱記録材料との熱融着を目視にて観察して評価した。評価の基準を、スティッキングのないものを5、感熱記録材料の破損によりサーマルヘッドが走行不能であったものを1として、下記の基準で5段階評価した。その際の感熱記録材の走行、搬送時の音の変化にも注目した。そして、評点4以上を合格(○)とし、3点以下を不合格(×)とした。評価結果を表1に示した。
*5:スティッキングないもの
*4:スティッキングないが走行音が変化するもの
*3:スティッキング発生気味のもの
*2:スティッキング発生しているが走行はしているもの
*1:スティッキングにより走行不可能となったもの
【0098】
(2)サーマルヘッドの汚染性
感熱記録材料を実装試験に供した場合の、サーマルヘッドのヘッド熱素子部分に対する汚れの付着の有無を、デジタルマイクロスコープにて走行前の状態と比較観察し、汚れのないものを合格(○)とし、汚れのあるものを不合格(×)として評価した。評価結果を表1に示した。
【0099】
(3)印画結果
感熱記録材料を実装試験に供して得られた印画物の状態を観察し、問題ないものを(○)、スジや色むらが見られるものを(×)とした。評価結果を表1に示した。
【0100】
(4)密着性
感熱記録材料の背面層と基材シートとの接着性を、下記のようにしてテープ剥離試験を行い、背面層の剥離がないものを(○)、剥離が見られるものを(×)として評価した。テープ剥離試験は、粘着テープにセロテープ(登録商標、ニチバン株式会社製)を用い、粘着テープの貼り付けを圧着ローラー1kg−1往復で、剥離を90°の角度で行った。評価結果を表1に示した。
【0101】
(5)移行性
各感熱記録材料の背面層と、100μmのPETフィルムを重ね合わせ、7cm×7cm単位あたり、20kgの荷重をかけ、50℃の高温槽内で72時間放置した。72時間後の100μmPETフィルムの背面層と重ねた面の表面エネルギーを、ぬれ張力試験用混合液で確認した(JIS K6768)。和光純薬工業株式会社製、ぬれ張力試験用混合液を用い、表面エネルギーが35mN/m以上を合格(○)とし、表面エネルギーが35mN/m未満を不合格(×)と評価した。
【0102】
(6)カーボンニュートラル
植物由来の原材料を使用しているものを(○)、使用していないものを×として評価した。
【0103】

【0104】
表1に示した通り、実施例の感熱記録材料はいずれも、スティッキングせず、サーマルヘッドの汚染もなく、印画結果も良好であった。これにより、本発明によって、石油由来の原材料のみから構成される比較例の感熱記録材料と、同等以上の性能の感熱記録材料が得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明によれば、物性面で従来のものと同等の性能が得られ、充分に実用化できるものであり、しかも、植物由来の原材料が高い比率で使用された環境問題に対する有効な対応策ともなるエコロジー素材によって加工した感熱記録材料が提供される。本発明で使用する素材は、バイオマスでエコロジー素材で、社会問題化している環境問題に資するものであるため、今後の展開が多いに期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、該基材シートの一方の面に設けた感熱記録層と、該基材シートの他方の面に設けた背面層とからなる感熱記録材料であって、該背面層が、バイオウレタン樹脂を皮膜形成成分として含む形成材料からなることを特徴とする感熱記録材料。
【請求項2】
前記バイオウレタン樹脂が、
植物由来の短鎖ジオール成分(a)と石油由来のカーボネート成分(b)から合成されてなる、バイオポリカーボネートポリオール(A)、
植物由来の短鎖ジオール成分(a)と植物由来のカルボン酸成分(c)とから合成されてなるバイオポリエステルポリオール(B)、
および、植物由来の短鎖ジオール成分(a)からなるバイオポリエーテルポリオール(C)からなる群より選ばれる少なくとも1種のバイオポリオール成分と、
その構造中に少なくとも1個以上の活性水素基を含むシロキサン成分(d)と、
イソシアネート成分(e)と、を含有する反応成分から合成されてなり、かつ、該バイオウレタン樹脂100質量%に対して植物由来成分の含有量が39〜95質量%、シロキサン成分の含有量が0.1〜50質量%である請求項1に記載の感熱記録材料。
【請求項3】
前記反応成分として、さらに、植物由来の短鎖ジオール成分(a)、石油由来のジオール成分またはジアミン成分(f)のいずれかを含む請求項2に記載の感熱記録材料。
【請求項4】
前記バイオウレタン樹脂が、合成に用いる反応成分中の、前記バイオポリオールと、前記シロキサン成分(d)と、必要に応じて含有する前記植物由来の短鎖ジオール成分(a)と、必要に応じて含有する前記石油由来のジオール成分またはジアミン成分(f)の、各成分中における活性水素基含有官能基の合計と、合成に用いる反応成分中の前記イソシアネート成分(e)のイソシアネート基とが、イソシアネート基:活性水素基含有官能基が0.8〜1.5の当量比となるようにして反応させて得られたものである請求項2又は3に記載の感熱記録材料。
【請求項5】
前記短鎖ジオール成分(a)が、植物由来の、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールから選ばれる少なくとも1種である請求項2〜4のいずれか1項に記載の感熱記録材料。
【請求項6】
前記カルボン酸成分(c)が、植物由来のひまし油誘導体からなるセバシン酸および/または植物由来のコハク酸である請求項2〜5のいずれか1項に記載の感熱記録材料。
【請求項7】
前記カーボネート成分(b)が、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネートおよびジフェニルカーボネートから選ばれる少なくとも1種である請求項2〜6のいずれか1項に記載の感熱記録材料。
【請求項8】
前記イソシアネート成分(e)が、植物由来成分の誘導体からなるジイソシアネート成分、植物由来のダイマー酸ジイソシアネート成分、アミノ酸由来のポリイソシアネート成分、および、石油由来のジイソシアネート成分からなる群から選ばれる請求項2〜7のいずれか1項に記載の感熱記録材料。
【請求項9】
前記バイオウレタン樹脂の形態が、有機溶剤系、水系または100%ソリッドのいずれかである請求項1〜8のいずれか1項に記載の感熱記録材料。
【請求項10】
前記背面層の形成材料が、必要に応じて、植物由来成分の誘導体からなるポリイソシアネート系架橋剤成分、または、植物由来のダイマー酸ポリイソシアネート架橋剤成分、または、アミノ酸由来のポリイソシアネート架橋剤成分、または、石油由来のポリイソシアネートの少なくともいずれかで架橋されている請求項1〜9のいずれか1項に記載の感熱記録材料。
【請求項11】
前記背面層の形成材料が、さらに、植物由来のセルロースアセテートブチレート樹脂、またはセルロースアセテートプロピオネート樹脂、またはセルロースアセテート樹脂の少なくともいずれかをバインダーとして含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の感熱記録材料。

【公開番号】特開2011−255639(P2011−255639A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134004(P2010−134004)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】