説明

感熱転写受像シートおよびその製造方法

【課題】高い平滑性を有し、転写濃度に優れ、圧力による転写濃度への影響が少なく、さらに印画物の経時後の画像にじみが少ない感熱転写受像シート、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】支持体上に、少なくとも1層の断熱層および受容層を順次有する感熱転写受像シートであって、該断熱層が中空ポリマー粒子、ゼラチンおよびガラス転移温度が30〜85℃のラテックスを含有し、該ラテックスを構成するポリマー分子鎖中にスチレン繰り返し単位とブタジエン繰り返し単位を有することを特徴とする感熱転写受像シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱転写受像シートおよびその製造方法に関するものである。特に、転写濃度に優れ、圧力による転写濃度への影響が少なく、さらに印画後の画像保存性に優れる感熱転写受像シート、および、その製造方法を提供しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の熱転写記録方法が知られているが、中でも染料拡散転写記録方式は、銀塩写真の画質に最も近いカラーハードコピーが作製できるプロセスとして注目されている。しかも、銀塩写真に比べて、ドライであること、デジタルデータから直接可視像化できる、複製作りが簡単であるなどの利点を持っている。
【0003】
この染料拡散転写記録方式では、色素(染料とも称す)を含有する感熱転写シート(以下、単にインクシートとも称す)と感熱転写受像シート(以下、単に受像シートとも称す)を重ね合わせ、次いで、電気信号によって発熱が制御されるサーマルヘッドによって感熱転写シートを加熱することで感熱転写シート中の色素を感熱転写受像シートに転写して画像情報の記録を行うものであり、シアン、マゼンタ、イエローの3色あるいはこれにブラックを加えた4色を重ねて記録することで色の濃淡に連続的な変化を有するカラー画像を転写記録することができる。染料の拡散転写過程では、インクシートと受像シートが密着していることが必要である。したがって、高い画像均一性を有する高品質プリントを得るためには、受像シートには高い平滑性が求められる。
近年、コンピューターによるデジタル画像処理技術の発達により、記録画像の画質が向上し、染料拡散転写記録方式はその市場を拡大しており、これに伴い、プリントシステムの高速化、高濃度化への要求が高まってきている。
【0004】
この方式の感熱転写受像シートは、転写された色素を染着するための受容層が支持体上に形成されている。また、支持体上に中空粒子を含有する断熱層を塗設し、中空粒子が持つ空隙による断熱効果により色素の転写効率を向上させることが知られている。特許文献1には、同時重層塗布によって高い印画濃度と平滑性を有する受像シートを製造する方法が開示されている。同時重層塗布は生産性に優れる受像シートの製造方法であり、ゼラチンを使用する事が有用である。これはゼラチンがゲル化しやすい性質を有するためであり、塗布直後に冷却することで高速塗布が可能になり、層間混合を防ぐことができる。しかし、ゲル化した後の膜は水分蒸発に伴い収縮するため、断熱層に含まれる中空粒子に潰れが生じていた。すなわち、中空粒子のもつ断熱性を充分に活かしきれないという問題があった。
【0005】
特許文献2には、断熱性を有する低密度層に中空粒子、疎水性樹脂接着剤および親水性接着剤を含み、高い画像濃度と画像均一性を有する受像シートが開示されている。疎水性樹脂接着剤として10℃以下の低いガラス転移温度を有するポリブタジエン樹脂やスチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体樹脂が使用され、親水性接着剤としてポリビニルアルコールが用いられており、圧力による凹みが少ない効果も示されている。
しかし、この組成は同時重層塗布に適用した場合、高速塗布が難しく層間混合も充分に防ぐ事ができなかった。また、ゲル化能を持たせる為に親水性接着剤としてゼラチンを用いたところ、中空粒子の顕著な潰れが発生して画像濃度が大きく低下した。
【0006】
以上のことから、中空粒子の断熱性を充分に活かした高い転写性を有し、同時重層塗布方式の特徴を生かした高い平滑性を有した感熱転写受像シートが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−246943号公報
【特許文献2】特開2008−296528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高い平滑性を有し、高画質でロバスト性の高い感熱転写受像シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。具体的には、高い平滑性を有し、転写濃度に優れ、圧力による転写濃度への影響が少なく、さらに印画物の経時後の画像にじみが少ない感熱転写受像シート、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、下記手段で本発明の上記目的が達成できることを見出した。
[1] 支持体上に、少なくとも1層の断熱層および受容層を順次有する感熱転写受像シートであって、該断熱層が中空ポリマー粒子、ゼラチンおよびガラス転移温度(以下、Tgとも言う)が30〜85℃のラテックスを含有し、該ラテックスを構成するポリマー分子鎖中にスチレン繰り返し単位とブタジエン繰り返し単位を有することを特徴とする感熱転写受像シート。
[2] 前記断熱層中における前記ゼラチンの固形分aと、前記ラテックスの固形分bの質量比(a/b)が、30/70〜70/30であることを特徴とする[1]に記載の感熱転写受像シート。
[3] 前記受容層が、ポリマーラテックスまたは水溶性ポリマーを含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の感熱転写受像シート。
[4] ロール状に巻き上げられていることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
[5] [1]〜[4]のいずれか1項に記載の感熱転写受像シートを製造する方法であって、中空ポリマー粒子、ゼラチンおよびガラス転移温度が30〜85℃のラテックスを含有する断熱層用塗布液と、受容層用塗布液とを支持体上に同時重層塗布し、前記ラテックスを構成するポリマー分子鎖中にスチレン繰り返し単位とブタジエン繰り返し単位を有することを特徴とする感熱転写受像シートの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、高い平滑性を有し、転写濃度に優れ、圧力による転写濃度への影響が少なく、さらに印画物の経時後の画像にじみが少ない感熱転写受像シート、およびその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書中、ポリマーラテックスとは、水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散したもののことを言う。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散したものなどいずれでもよい。
【0012】
[感熱転写受像シート]
本発明の感熱転写受像シート(以下本発明の受像シートともいう)は、支持体上に、少なくとも1層の断熱層(多孔質層)および受容層(染料受容層)を順次有する感熱転写受像シートであって、該断熱層が中空ポリマー粒子、ゼラチンおよびガラス転移温度が30〜85℃のラテックスを含有し、該ラテックスを構成するポリマー分子鎖中にスチレン繰り返し単位とブタジエン繰り返し単位を有することを特徴とする。以下、本発明の感熱転写シートについて説明する。
【0013】
また、本発明の感熱転写受像シートは、前記支持体と前記受容層との間に、例えば白地調整、帯電防止、接着性、クッション性、平滑性、バリア性などの各種機能を付与した中間層が形成されていてもよい。また、転写シートと重ね合わせられる面の最外層には、離型層が形成されてもよい。
前記支持体の、前記受容層を塗設した面の他方の面にはカール調整層、筆記層、帯電調整層を設けてもよい。
【0014】
<断熱層>
本発明の感熱転写受像シートは少なくとも1層の断熱層を有し、該断熱層は中空粒子、ゼラチン、およびガラス転移温度が30〜85℃のラテックスを含有し、該ラテックスを構成するポリマー分子鎖中にスチレン繰り返し単位とブタジエン繰り返し単位を有する。前記断熱層は2層以上あってもよく、本発明のより好ましい態様では2層以上の前記断熱層が前記受容層と前記支持体の間に設けられる。
【0015】
(中空ポリマー粒子)
本発明において、前記断熱層は中空ポリマー粒子を含有する。
本発明における中空ポリマー粒子(以下、中空粒子ともいう)とは、粒子内部に空隙を有するポリマー粒子のことを言う。前記中空粒子は好ましくは水分散物であり、例えば、1)ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂等により形成された隔壁内部に水などの分散媒が入っており、塗布乾燥後、粒子内の水が粒子外に蒸発して粒子内部が中空となる非発泡型の中空ポリマー粒子、2)ブタン、ペンタンなどの低沸点液体を、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステルのいずれかまたはそれらの混合物もしくは重合物よりなる樹脂で覆っており、塗工後、加熱により粒子内部の低沸点液体が膨張することにより内部が中空となる発泡型マイクロバルーン、3)上記の2)をあらかじめ加熱発泡させて中空粒子としたマイクロバルーンなどが挙げられる。
これらの中でも、前記中空粒子は上記1)の非発泡型の中空粒子であることがより好ましく、必要に応じて2種以上混合して使用することができる。具体例としてはロームアンドハース社製 ローペイク HP−1055、JSR社製 SX866(B)、日本ゼオン社製 Nipol MH5055(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0016】
前記中空粒子の平均粒子径は、0.5μm〜5.0μmであることが好ましく、0.5μm〜2.0μmであることがより好ましい。前記中空粒子の平均粒子径が小さすぎなければ膜の空隙率を高く設計できるため高い断熱性が得られ、前記中空粒子の平均粒子径が大きすぎなければ製造時の乾燥工程での膜収縮による中空粒子の潰れが発生し難くなる。
【0017】
本発明に用いられる中空粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて、その外径の円相当換算直径を測定し算出する。平均粒子径は、中空粒子を少なくとも300個透過電子顕微鏡を用いて観察し、その外形の円相当径を算出し、平均して求める。
【0018】
また、本発明に用いられる中空粒子は、中空率が20〜80%程度のものが好ましく、30〜70%程度のものがより好ましい。中空率が低すぎなければ高い断熱性が得られ、高すぎなければ中空粒子の強度が低下せず、製造時の乾燥工程での膜収縮による中空粒子の潰れが発生し難くなる。
本発明に用いられる中空粒子の中空率は、中空粒子を少なくとも300個透過型電子顕微鏡を用いて観察し、外径の平均円相当径(R1)と内径の平均円相当径(R2)をそれぞれ算出し、粒子体積に対する空隙部分の体積の割合(R2/R1)3×100を計算して求めることができる。
【0019】
前記中空粒子は、ガラス転移温度(Tg)が70℃〜200℃であることが好ましく、90℃〜180℃であることがさらに好ましい。
前記中空粒子としては、中空粒子を水中に分散したポリマーラテックスのような中空ポリマー粒子ラテックスを用いることが特に好ましい。
【0020】
本発明においては、断熱層が2層以上ある場合、例えば断熱層が断熱上層と断熱下層の2層に分かれている態様が好ましい。その場合、前記断熱上層および断熱下層にそれぞれ含まれる中空ポリマー粒子は、以下の構成であることが断熱性が高く、かつ、圧力の影響を受け難い断熱層を形成する観点から好ましい。
前記断熱上層と前記断熱下層に含まれる中空ポリマー粒子の平均粒子径は、断熱上層の方が大きい方が好ましい。
前記断熱上層と前記断熱下層に含まれる中空ポリマー粒子の含有量は、断熱下層の方が多い方が好ましい。
【0021】
(ゼラチン)
本発明において前記断熱層はゼラチンを含有する。本発明に用いるゼラチンは、その製造過程において、ゼラチン抽出前、アルカリ浴に浸漬されるいわゆるアルカリ処理(石灰処理)ゼラチン、酸浴に浸漬される酸処理ゼラチンおよびその両方に浸漬した二重浸漬ゼラチン、酵素処理ゼラチンのいずれでもよい。本発明に用いるゼラチンは分子量10,000から1,000,000までのものを用いることができる。本発明に用いられるゼラチンはCl-、SO 42-等の陰イオンを含んでいてもよいし、Fe2+、Ca2+、Mg2+、Sn2+、Zn2+などの陽イオンを含んでいてもよい。ゼラチンは水に溶かして添加することが好ましい。
【0022】
(併用可能な水溶性ポリマー)
前記断熱層にはゼラチン以外の水溶性ポリマーを併用することが可能である。本発明に用いることのできるゼラチン以外の水溶性ポリマーとしては、天然高分子(多糖類系、微生物系、動物系)、半合成高分子(セルロース系、デンプン系、アルギン酸系)および合成高分子系(ビニル系、その他)であり、以下に述べるポリビニルアルコールを始めとする合成ポリマーや、植物由来のセルロース等を原料とする天然あるいは半合成ポリマーが本発明で使用できる水溶性ポリマーに該当する。
【0023】
本発明に併用することのできるゼラチン以外の水溶性ポリマーのうち、天然高分子および半合成高分子について詳しく説明する。植物系多糖類としては、アラビアガム、κ−カラギーナン、ι−カラギーナン、λ−カラギーナン、グアガム(Squalon製Supercolなど)、ローカストビーンガム、ペクチン、トラガント、トウモロコシデンプン(National Starch & Chemical Co.製Purity−21など)、リン酸化デンプン(National Starch & Chemical Co.製National 78−1898など)など、微生物系多糖類としては、キサンタンガム(Kelco製Keltrol Tなど)、デキストリン(National Starch & Chemical Co.製Nadex360など)など、動物系天然高分子としては、カゼイン、コンドロイチン硫酸ナトリウム(Croda製Cromoist CSなど)などが挙げられる(いずれも商品名)。セルロース系としては、エチルセルロース(I.C.I.製Cellofas WLDなど)、カルボキシメチルセルロース(ダイセル製CMCなど)、ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル製HECなど)、ヒドロキシプロピルセルロース(Aqualon製Klucelなど)、メチルセルロース(Henkel製Viscontranなど)、ニトロセルロース(Hercules製Isopropyl Wetなど)、カチオン化セルロース(Croda製Crodacel QMなど)などが挙げられる(いずれも商品名)。デンプン系としては、リン酸化デンプン(National Starch & Chemical製National 78−1898など)、アルギン酸系としては、アルギン酸ナトリウム(Kelco製Keltoneなど)、アルギン酸プロピレングリコールなど、その他の分類として、カチオン化グアガム(Alcolac製Hi−care1000など)、ヒアルロン酸ナトリウム(Lifecare Biomedial製Hyalureなど)が挙げられる(いずれも商品名)。
【0024】
本発明に併用することのできるゼラチン以外の水溶性ポリマーのうち、合成高分子について詳しく説明する。アクリル系としてはポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミド共重合体、ポリジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩またはその共重合体など、ビニル系としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体、ポリビニルアルコールなど、その他としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリメチルビニルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ナフタレンスルホン酸縮合物塩、ポリビニルスルホン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、アクリル酸またはその共重合体等、マレイン酸共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸またはその共重合体、など)、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライドまたはその共重合体、ポリアミジンまたはその共重合体、ポリイミダゾリン、ジシアンシアミド系縮合物、エピクロルヒドリン・ジメチルアミン縮合物、ポリアクリルアミドのホフマン分解物、水溶性ポリエステル(互応化学(株)製プラスコートZ−221、Z−446、Z−561、Z−450、Z−565、Z−850、Z−3308、RZ−105、RZ−570、Z−730、RZ−142(いずれも商品名)などである。
【0025】
また、米国特許第4,960,681号明細書、特開昭62−245260号公報等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SO3M(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマーの共重合体(例えばメタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、住友化学(株)製のスミカゲルL−5H(商品名))も使用することができる。
【0026】
(ポリマー分子鎖中にスチレンおよびブタジエン繰り返し単位を有するラテックス)
本発明において、前記断熱層はポリマー分子鎖中にスチレン繰り返し単位とブタジエン繰り返し単位を有し、かつ、ガラス転移温度が30〜85℃のラテックスを含有する。なお、本明細書中、ポリマー分子鎖中にスチレン繰り返し単位とブタジエン繰り返し単位を含むラテックスのことを、便宜的にスチレン−ブタジエン系ラテックスとも言う。
また、Tgが30〜85℃であってスチレン−ブタジエン系ラテックスは、Tgが30〜85℃であってスチレン−ブタジエン系以外のラテックスと比較して、圧力の影響を受け難い断熱層が形成できる点で優れる。
【0027】
本発明者らは、ゼラチンと中空粒子を用いて断熱層を形成した場合に中空粒子の潰れが発生し、断熱性が低下することを見出した。また、このような中空粒子の潰れは、断熱層と受容層とを同時重層塗布したときに特に顕著に生じてしまうことを見出した。いかなる理論に拘泥するものでもないが、この中空粒子の潰れは、ゼラチンを含む塗布膜が乾燥によって収縮し、膜全体に圧力がかかっていることが原因と推定された。
中空粒子の潰れを防ぐため、および本発明の課題を解決するために各種ラテックスを検討した結果、中空粒子とゼラチンに加え、Tgが30〜85℃であってスチレン−ブタジエン系ラテックスを組み合わせて断熱層に用いることにより、上記中空粒子の潰れや本発明の課題解決できることがわかった。すなわち、前記スチレン−ブタジエン系ラテックスのTgが30℃未満の場合では、塗布膜の乾燥中に生じる中空粒子の潰れだけでなく、本発明の課題を解決できなかった。
さらに本発明者らは、中空粒子の潰れは塗布膜乾燥時だけではなく、感熱転写受像シートがロール形態保管時にも発生しうることを見出した。感熱転写受像シートはロール形態の製品として提供されることが多く、ロールの内側では圧力がかかり易い。環境条件によって支持体が膨張する場合には断熱層にかかる面圧も大きくなり、中空粒子の潰れが発生すると転写性能に変動が生じる。スチレン−ブタジエン系ラテックスのTgが高すぎると、中空粒子の潰れは防げるものの、層が脆くなるため、圧力がかかった場合に潰れが発生し転写濃度が低下した。そのため、Tgが85℃を超えるラテックス、例えばポリスチレンラテックス(Tg=100℃)は好ましくない。
このような理由で、本発明に用いられるスチレン−ブタジエン系ラテックスのガラス転移温度(Tg)は30℃〜85℃であり、50℃〜85℃が好ましく、50℃〜80℃であることさらに好ましく、50℃〜70℃であることが最も好ましい。なお、ポリブタジエンのガラス転移温度(以下、Tgとも称す)は約−90℃であり、ポリスチレンのTgは100℃であるため、スチレン−ブタジエン系ラテックスのTgはこの中間にあり、一般的にTgの低いものが柔軟性を有することが知られている。
【0028】
ガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に規定された方法にしたがって、示差走査熱量計を用いて測定することができる。
【0029】
前記スチレン−ブタジエン系ラテックスは、数平均分子量が2,000〜1,000,000であるのが好ましく、5,000〜500,000であるのがより好ましい。
【0030】
前記スチレン−ブタジエン系ラテックスは、繰り返し単位を構成するモノマーのモル比で表した場合、スチレン繰り返し単位:ブタジエン繰り返し単位が99:1〜40:60であることが好ましく、95:5〜50:50であることがさらに好ましい。
【0031】
前記スチレン−ブタジエン系ラテックスには、カルボキシル基等により変性したものも含まれる。
また、前記スチレン−ブタジエン系ラテックスはスチレンおよびブタジエン繰り返し単位以外の共重合成分を含んでいてもよく、例えばアクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸やメチルメタクリレート、エチルアクリレートのようなアルキルアクリレートもしくはアルキルメタクリレート等を共重合してもよい。前記スチレン−ブタジエン系ラテックスがスチレンおよびブタジエン以外の繰り返し単位を含有する場合は、スチレン繰り返し単位およびブタジエン繰り返し単位の合計が50質量%以上であることが好ましい。
【0032】
前記スチレン−ブタジエン系ラテックスは、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。また、前記スチレン−ブタジエン系ラテックスは、直鎖ポリマーあっても、枝分かれしたものであっても、架橋構造を有するものであってもよい。
【0033】
前記スチレン−ブタジエン系ラテックスの平均粒子径は50nm〜500nmであることが好ましく、50〜300nmであることがさらに好ましい。
【0034】
前記スチレン−ブタジエン系ラテックスとしては、市販品を使用しても良く、例えばNipol LX433C、2507H、LX407BP6、V1004(日本ゼオン(株)製)、ナルスター SR−115、SR−143(日本エイアンドエル(株)製)、PCL0602(JSR(株)製)が挙げられる。
【0035】
本発明では、前記断熱層中における前記ゼラチンの固形分aと、前記ラテックスの固形分bの質量比(ゼラチン固形分質量/スチレン−ブタジエン系ラテックスの固形分質量、すなわち、a/b)は、30/70〜70/30であることが好ましく、40/60〜60/40であることがさらに好ましい。
【0036】
前記断熱層に含まれるゼラチンとスチレン−ブタジエン系ラテックスの固形分質量の和をAとし、中空粒子の固形分質量をBとしたとき、B/Aは、30/70〜70/30であることが好ましく、40/60〜60/40であることがさらに好ましい。ゼラチン以外の水溶性ポリマーを含有する場合は、その固形分質量もAに加える。Aが大きすぎなければ断熱層中の空隙量が十分に維持されるため充分な断熱性を確保することが容易になり、Aが小さすぎなければ膜の脆性も良好となる。
【0037】
前記断熱層の厚みは5〜40μmであることが好ましく、10〜30μmであることがさらに好ましい。厚みが小さすぎると所望の断熱性を得ることが困難になり、大きすぎると塗布液をゲル化させて乾燥させるための製造負荷が大きくなる。
【0038】
<受容層>
本発明に用いられる受像シートは、少なくとも染料を受容し得る熱可塑性の受容ポリマーを有する少なくとも1層の受容層を有する。受容層は、感熱転写シートから移行してくる染料を受容し、形成された画像を維持する役割を果たす。
【0039】
(ポリマーラテックス)
本発明において、前記受容層は、ポリマーラテックス、ポリマーを微分散した水分散エマルジョンまたは/および水溶性ポリマーを含有することが好ましく、ポリマーラテックスまたは水溶性ポリマーを含有することがより好ましく、水溶性の分散媒中に分散したポリマーラテックスを使用することが特に好ましい。
【0040】
また、前記受容層は、感熱転写時に感熱転写シートから移行された染料を受容して記録画像を形成する受容ポリマーとしてのポリマーラテックス以外にも、例えば、膜の弾性率を調整するなどの目的で、他の機能を有するポリマーラテックスも併用して用いることができる。
【0041】
前記受容層に用いられるポリマーラテックスの分散粒子の平均粒径は1〜50000nmであることが好ましく、5〜1000nmの範囲であることが好ましい。
【0042】
本発明の前記受容層に用いられるポリマーラテックスに用いられる熱可塑性樹脂の例としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、塩化ビニル系共重合体、ポリウレタン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、ポリカプロラクトン等が挙げられる。
このうち、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、塩化ビニル系共重合体が好ましく、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体が特に好ましく、塩化ビニル系共重合体が最も好ましい。
【0043】
本明細書中、前記塩化ビニル系共重合体とは、重合体を得るためのモノマーとして塩化ビニルを少なくとも使用し、かつ他のモノマーと共重合させたものであり、例えば、塩化ビニルと酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルとアクリレートの共重合体、塩化ビニルとメタクリレートの共重合体、塩化ビニルと酢酸ビニルとアクリレートの共重合体、塩化ビニルとアクリレートとエチレンの共重合体等が挙げられる。このように2元共重合体でも3元以上の共重合体でもよく、モノマーが不規則に分布していても、ブロック共重合していてもよい。
これらの共重合体にはビニルアルコール誘導体やマレイン酸誘導体、ビニルエーテル誘導体などの補助的なモノマー成分を添加してもよい。
塩化ビニル系共重合体において、塩化ビニル成分は50モル%以上含有されていることが好ましく、またマレイン酸誘導体、ビニルエーテル誘導体等の補助的なモノマー成分は10モル%以下であることが好ましい。
【0044】
本発明において、前記受容層に用いられるポリマーラテックスは単独でも混合物として使用してもよい。また前記受容層に用いられるポリマーラテックスは、均一構造であってもコア/シェル型であってもよく、このときコアとシェルをそれぞれ形成する樹脂のガラス転移温度が異なってもよい。
【0045】
本発明において、前記受容層で使用するポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)は、−30℃〜100℃が好ましく、0℃〜90℃がより好ましく、20℃〜90℃がさらに好ましく、40℃〜90℃が特に好ましい。
なお、このガラス転移温度(Tg)は実測できない場合、下記式で計算することができる。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの質量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)は「Polymer Handbook(3rd Edition)」(J.Brandrup,E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用できる。
【0046】
また、本発明に好ましく用いられるポリマーラテックスは、ポリマー濃度がラテックス液に対して10〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。受容層中の全ポリマーラテックスの添加量は、ポリマーラテックスの固形分が受容層中の全ポリマーの50〜98質量%であることが好ましく、70〜95質量%であることがより好ましい。
【0047】
ポリマーラテックスの好ましい態様としては、アクリル系ポリマー、ポリエステル類、ゴム類(例えばSBR樹脂)、ポリウレタン類、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルアクリル酸エステル共重合体、塩化ビニルメタアクリル酸共重合体等の共重合体を含めたポリ塩化ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体等の共重合体を含めたポリ酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン等のポリマーラテックスを好ましく用いることができる。これらポリマーラテックスとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。これらポリマーの分子量は数平均分子量で5000〜1000000が好ましく、より好ましくは10000〜500000である。
【0048】
ポリマーラテックスとしては、ポリエステルラテックス、塩化ビニル/アクリル化合物共重合体ラテックス、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体ラテックス、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル化合物共重合体ラテックス等の塩化ビニル共重合体ラテックスのいずれか1つまたは任意の組み合わせが好ましい。
【0049】
塩化ビニル系共重合ラテックスとしては、例えば、ビニブラン240、ビニブラン270、ビニブラン276、ビニブラン277、ビニブラン375、ビニブラン380、ビニブラン386、ビニブラン410、ビニブラン430、ビニブラン432、ビニブラン550、ビニブラン601、ビニブラン602、ビニブラン609、ビニブラン619、ビニブラン680、ビニブラン680S、ビニブラン681N、ビニブラン683、ビニブラン685R、ビニブラン690、ビニブラン860、ビニブラン863、ビニブラン685、ビニブラン867、ビニブラン900、ビニブラン938、ビニブラン950(以上いずれも日信化学工業(株)製)、SE1320、S−830(以上いずれも住友ケムテック(株)製)が挙げられ、これらは本発明において好ましいポリマーラテックスである。
【0050】
塩化ビニル系共重合ラテックス以外のポリマーラテックスとしては、ポリエステル系ポリマーラテックスを挙げることができ、例えば、バイロナール MD1200、バイロナール MD1220、バイロナール MD1245、バイロナール MD1250、バイロナール MD1500、バイロナール MD1930、バイロナール MD1985(以上いずれも東洋紡(株)製)が挙げられる。
これらのなかでも、塩化ビニル/アクリル化合物共重合体ラテックス、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体ラテックス、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル化合物共重合体ラテックス等の塩化ビニル共重合体ラテックスがもっとも好ましい。
【0051】
(水溶性ポリマー)
本発明において、前記受容層は該ポリマーラテックス以外に水溶性ポリマーを含有することが好ましい。ポリマーラテックスと水溶性ポリマーとを含有させることで、染料に染着し難い水溶性ポリマーをポリマーラテックス間に存在させ、ポリマーラテックスに染着した染料が拡散するのを防止することができ、この結果、受容層の経時による鮮鋭性の変化を少なくし、転写画像の経時変化が小さい記録画像を形成することができる。
【0052】
本発明の感熱転写受像シートにおいては、受容層に水溶性ポリマーを含有してもよく、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体を好ましく用いる事ができる。これらの水溶性ポリマーは乾燥時の受容層のひび割れ抑制に有効であり、多量に使用し過ぎない場合はインクシートからの染料転写が良好であり、転写濃度も良好となる。
水溶性ポリマーの使用量は、受容層の固形分全体の質量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0053】
(離型剤)
また前記受容層には、離型剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、防腐剤、滑剤、酸化防止剤、造膜助剤、硬膜剤、その他の添加剤を含有させることができる。その中でも、前記受容層は離型剤を含有することがさらに好ましい。
【0054】
離型剤:
本発明の受容層には、離型剤を使用することが好ましい。離型剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、脂肪酸エステルワックス、アミドワックス等の固形ワックス類、シリコーンオイル、リン酸エステル系化合物、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびその他当該技術分野で公知の離型剤を使用することができるが、シリコーンオイルを好ましく使用することができ、その中でもポリエーテル変性シリコーンオイルが特に好ましい。
【0055】
前記ポリエーテル変性シリコーンオイルは、画像印画時の感熱転写シートと感熱転写受像シートとの離型性を確保するだけでなく、受容層中のポリマーラテックス粒子同士の融着を防止し、乾燥時のひび割れの防止にも効果的である。
本発明において、前記ポリエーテル変性シリコーンオイルは、25℃で液体のものが好ましい。
また、本発明において、前記ポリエーテル変性シリコーンオイルは、非反応性のものが好ましく、エポキシ基を含まないものが特に好ましい。
【0056】
本発明に好ましく用いられる前記ポリエーテル変性シリコーンオイルは、下記一般式(1)に示す片末端変性型、下記一般式(2)に示す両末端変性型、下記一般式(3)に示す側鎖変性型、または下記一般式(4)に示す主鎖共重合型が好ましい。
【0057】
【化1】

【0058】
一般式(1)〜(4)において、R1はアルキル基を表し、R2は−Y−(C24O)a−(C36O)b−R4を表し、R3は、水素原子、l個のアシル部を有するアシル基、l価のアルキル基、l価のシクロアルキル基または、l価のアリール基を表し、R4は各々独立に、水素原子、アシル基、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表す。Yは単結合または2価の連結基を表し、Xは2価の連結基を表す。nは正の数を表し、n'は0または正の整数を表し、mは0または正の数を表し、sは正の数を表す。aおよびbは各々独立に0または正の数を表すが、aとbが同時に0であることはない。また、n'とmが同時に0になることはない。
【0059】
前記R1におけるアルキル基は置換基を有してもよい。前記R1のアルキル基の炭素数は1〜20が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。また、置換アルキル基よりも無置換アルキル基が好ましい。なかでもメチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
前記R3におけるl個のアシル部を有するアシル基は、1個のアシル部を有するアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基が挙げられ、2個のアシル部を有するアシル基としては、例えば、オキザリル基、マロニル基、スクシノイル基、マレオイル基、テレフタロイル基が挙げられ、3個のアシル部を有するアシル基としては、例えば、1,2,3−プロパントリカルボニル基が挙げられる。これらのアシル期としては、炭素数2〜20のアシル基が好ましく、炭素数2〜10のアシル基がより好ましい。
前記R3におけるl価のアルキル基において、1価のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基が挙げられ、2価のアルキル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられ、3価のアルキル基としては、例えば、1,2,3−プロパントリイル基が挙げられ、4価のアルキル基としては、例えば、1,2,2,3−プロパンテトライル基が挙げられる。これらのアルキル基の炭素数は1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。
前記R3におけるl価のシクロアルキル基において、1価のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられ、2価のシクロアルキル基としては、2価のシクロヘキシル基としては、例えば、1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基が挙げられ、3価のシクロアルキル基としては、例えば、1,3,5−シクロヘキサントリイル基が挙げられる。シクロヘキシル基の炭素数は、5〜10が好ましい。
前記R3におけるl価のアリール基において、1価のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられ、2価のアリール基としては、例えば、フェニレン基が挙げられ、3価のアリール基としては、例えば、ベンゼン−1,3,5−トリイル基が挙げられる。アリール基のアリール部としてはベンゼン環が好ましい。
前記R3は、l価のアルキル基が好ましい。
【0060】
前記R4におけるアシル基の炭素数は20以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下がさらに好ましく、アセチル基が最も好ましい。
前記R4におけるアルキル基は、置換基を有してもよい。R4のアルキル基の炭素数は1〜20が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。また、置換アルキル基よりも無置換アルキル基が好ましい。なかでもメチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
前記R4におけるシクロアルキル基は、置換基を有してもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましく、無置換のシクロアルキル基がさらに好ましい。
前記R4におけるアリール基は、置換基を有してもよく、フェニル基、ナフチル基が挙げられるが、フェニル基が好ましい。置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子が好ましいが、無置換のフェニル基が最も好ましい。
前記R4は、水素原子、アシル基、アルキル基またはアリール基が好ましく、水素原子、アシル基またはアルキル基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
【0061】
前記Xおよび前記Yにおける2価の連結基は、それぞれ独立にアルキレン基またはアルキレンオキシ基が好ましく、例えば、前記アルキレン基としてはメチレン基、エチレン基およびプロピレン基が挙げられ、前記アルキレンオキシ基としては、−CH2CH2O−、−CH(CH3)CH2O−、−CH2CH(CH3)O−および−(CH23O−が挙げられ、これらが好ましい。前記2価の連結基の炭素数は1〜4が好ましく、2または3がより好ましい。
また、XおよびYは、単結合または上記の好ましい2価の連結基が好ましい。
【0062】
前記aおよび前記bは、それぞれ独立に0または1以上の整数が好ましく、0〜500がより好ましく、0〜200がさらに好ましい。
前記nは1〜1000が好ましく、n'およびmは0〜1000が好ましい。
前記sは1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。
【0063】
前記一般式(1)〜(4)で表されるポリエーテル変性シリコーンオイルのなかでも、一般式(2)〜(4)で表されるポリエーテル変性シリコーンオイルが好ましく、一般式(2)または(3)で表されるポリエーテル変性シリコーンオイルがより好ましく、一般式(3)で表されるポリエーテル変性シリコーンオイルが最も好ましい。
【0064】
本発明において、前記ポリエーテル変性シリコーンは、HLB値(Hydrophile−Lipophile Balance)は、5〜9であることが好ましい。より好ましくは5〜7が好ましい。HLB値が低過ぎると塗工液中で分離・凝集し、面状故障の原因となる。HLB値が高いと離型効果およびラテックス粒子表面への配向効果が小さく十分な効果が発揮されない。
本発明において、HLB値はグリフィン法に基づき、以下の式で定義された計算式で求める(西一郎、今井怡知朗、笠井正威 共編,「界面活性剤便覧」,産業図書株式会社(1960年))。
【0065】
HLB = 20 × Mw/M
【0066】
ここで、Mは分子量であり、Mwは親水性部分の式量(分子量)である。ちなみに、M=Mw + Mo であり、ここで、Moは新油性部分の式量(分子量)である。
【0067】
本発明で好ましく用いられる前記ポリエーテル変性シリコーンオイルの具体例としては、信越化学株式会社製 KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017、X−22−4515、X−22−6191、東レ・ダウコーニング株式会社製 SH3749、SH3773M、SH8400、SF8427、SF8428、FZ−2101、FZ−2104、FZ−2110、FZ−2118、FZ−2162、FZ−2203、FZ−2207、FZ−2208、FZ−77、L−7001、L−7002(いずれも商品名)等が挙げられる。
また、本発明で好ましく用いられるポリエーテル変性シリコーンオイルは、例えば、特開2002−179797号公報、特開2008−1896号公報、特開2008−1897号公報に記載の方法または、これに準じた方法で、容易に合成できる。
【0068】
本発明においては、ポリエーテル変性シリコーンオイルは単独でも、2種類以上混合して使用することもできる。また、本発明においては、ポリエーテル変性シリコーンオイルに他の離型剤を併用してもよい。
【0069】
ポリエーテル変性シリコーンオイルの添加量としては、受容層中の全ポリマーラテックスに対して1質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましい。
【0070】
(受容層の構造)
受容層の塗布量は、0.5〜10g/m2(固形分換算、以下本発明における塗布量は特に断りのない限り、固形分換算の数値である。)が好ましい。
受容層の膜厚は1〜20μmであることが好ましい。
【0071】
<中間層>
受容層と支持体との間には断熱層以外に中間層が形成されていてもよく、白地調整、帯電防止、接着性、クッション性、平滑性、バリア性などの機能を有する従来公知の中間層を付与することができる。中間層の塗設位置に限定は無いが、クッション性、平滑性、バリア性を付与する場合には、中間層を受容層と断熱層の間に設けることが効果的である。
【0072】
<支持体>
本発明の感熱転写受像シートに用いる支持体は、従来公知の支持体を用いることができる。その中でも耐水性支持体が好ましく用いられる。耐水性支持体を用いることで支持体中に水分が吸収されるのを防止して、受容層の経時による性能変化を防止することができる。耐水性支持体としては例えばコート紙やラミネート紙、合成紙を用いることができる。なかでもラミネート紙が好ましい。
【0073】
<カール調整層>
本発明に用いる感熱転写受像シートには、必要に応じてカール調整層を形成することが好ましい。カール調整層には、ポリエチレンラミネートやポリプロピレンラミネート等が用いられる。具体的には、例えば特開昭61−110135号公報、特開平6−202295号公報などに記載されたものと同様にして形成することができる。
【0074】
<筆記層・帯電調整層>
本発明に用いる感熱転写受像シートには、必要に応じて筆記層・帯電調整層を設けることができる。筆記層、帯電調整層には、無機酸化物コロイドやイオン性ポリマー等を用いることができる。帯電防止剤として、例えば第四級アンモニウム塩、ポリアミン誘導体等のカチオン系帯電防止剤、アルキルホスフェート等のアニオン系帯電防止剤、脂肪酸エステル等のノニオン系帯電防止剤など任意のものを用いることができる。具体的には、例えば特許第3585585号公報などに記載されたものと同様にして形成することができる。
【0075】
<添加剤>
本発明に用いる感熱転写受像シートには、必要に応じて前記受容層以外にも、添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、前述した離型剤の他、紫外線吸収剤、界面活性剤、防腐剤、造膜助剤、硬膜剤、マット剤(滑剤を含む)、酸化防止剤、その他の添加剤を含有させることができる。
【0076】
紫外線吸収剤:
本発明の感熱転写受像シートには、紫外線吸収剤を含有させてもよい。その紫外線吸収剤としては、従来公知の無機系紫外線吸収剤、有機系紫外線吸収剤が使用できる。有機系紫外線吸収剤としては、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、置換アクリロニトリル系、ヒンダートアミン系等の非反応性紫外線吸収剤や、これらの非反応性紫外線吸収剤に、例えば、ビニル基やアクリロイル基、メタアクリロイル基等の付加重合性二重結合、あるいは、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等を導入し、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂に共重合若しくは、グラフトしたものを使用することができる。また、樹脂のモノマーまたはオリゴマーに紫外線吸収剤を溶解させた後、このモノマーまたはオリゴマーを重合させる方法が開示されており(特開2006−21333号公報)、こうして得られた紫外線遮断性樹脂を用いることもできる。この場合には紫外線吸収剤は非反応性のものでよい。
これら紫外線吸収剤に中でも、特にベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系が好ましい。これら紫外線吸収剤は画像形成に使用する染料の特性に応じて、有効な紫外線吸収波長域をカバーするように組み合わせて使用することが好ましく、また、非反応性紫外線吸収剤の場合には紫外線吸収剤が析出しないように構造が異なるものを複数混合して用いることが好ましい。
紫外線吸収剤の市販品としては、チヌビン−P(チバガイギー製)、JF−77(城北化学製)、シーソープ701(白石カルシウム製)、スミソープ200(住友化学製)、バイオソープ520(共同薬品製)、アデカスタブLA−32(旭電化製)等が挙げられる。
【0077】
界面活性剤:
また、本発明の感熱転写受像シートは、前記の任意の層に界面活性剤を含有させることができる。その中でも、受容層および中間層中に含有させることが好ましい。
界面活性剤の添加量は、全固形分量に対して0.01〜5質量%であることが好ましく、0.01〜1質量%であることがより好ましく、0.02〜0.2質量%であることが特に好ましい。
界面活性剤としては、アニオン系、ノニオン系、カチオン系など種々の界面活性剤が知られている。本発明で用いることのできる界面活性剤としては、公知のものが使用でき、例えば、「機能性界面活性剤監修/角田光雄、発行/2000年8月、第6章」で紹介されているもの等を用いることができるが、その中でもアニオン系のフッ素含有界面活性剤が好ましい。
【0078】
防腐剤:
本発明の感熱転写受像シートには、防腐剤を添加してもよい。本発明の感熱転写受像シートに含有される防腐剤としては、特に限定されないが、防腐防黴ハンドブック、技報堂出版(1986)、堀口博著、防菌防黴の化学、三共出版(1986)、防菌防黴剤事典、日本防菌防黴学会発行(1986)等に記載されているものを用いることができる。具体的には、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ベンゾトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、四級アンモニウム塩類、ピロジン,キノリン,グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、2−メルカプトピリジン−N−オキサイドまたはその塩等が挙げられる。これらの中でも、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オンが好ましい。
【0079】
造膜助剤:
本発明の感熱転写受像シートには、高沸点溶剤を添加することが好ましい。高沸点溶剤は造膜助剤または可塑剤として機能し、ポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常有機溶剤)で、例えば室井宗一著,「合成ラテックスの化学」,高分子刊行会発行(1970年)に記載されている。高沸点溶剤(造膜助剤)の例として以下のものが挙げられる。
Z−1:ベンジルアルコール類
Z−2:2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチレート類
Z−3:2−ジメチルアミノエタノール類
Z−4:ジエチレングリコール類
これらの高沸点溶剤を添加すると、画像のにじみが見られ、実用上好ましくない場合があるが、塗布膜中の上記溶剤類の含有量が固形分で1%以下であれば、性能上問題がない。
【0080】
硬膜剤:
本発明においては、硬膜剤を使用してもよい。感熱転写受像シートの塗設層(例えば、受容層、断熱層、下塗層など)中に添加することができる。
本発明で用いることができる硬膜剤としては、特開平1−214845号公報17頁のH−1,4,6,8,14,米国特許第4,618,573号明細書のカラム13〜23の式(VII)〜(XII)で表される化合物(H−1〜54)、特開平2−214852号公報8頁右下の式(6)で表される化合物(H−1〜76),特にH−14、米国特許第3,325,287号明細書のクレーム1に記載の化合物などが好ましく用いられる。硬膜剤の例としては米国特許第4,678,739号明細書の第41欄、同第4,791,042号、特開昭59−116655号、同62−245261号、同61−18942号、特開平4−218044号の公報または明細書等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒドなど)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N'−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタンなど)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素など)、ほう酸、メタほう酸あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234157号公報などに記載の化合物)が挙げられる。好ましくはビニルスルホン系硬膜剤やクロロトリアジン類が挙げられる。
【0081】
マット剤:
本発明の感熱転写受像シートにおいて、ブロッキング防止、離型性付与、滑り性付与のためにマット剤を添加してもよい。マット剤は感熱転写受像シートの受容層が塗布される面、受容層が塗布される他方の面、あるいはその両方の面に添加することができる。
【0082】
マット剤は、一般に水に不溶の有機化合物の微粒子、無機化合物の微粒子を挙げることができるが、本発明では、分散性の観点から、有機化合物を含有する微粒子が好ましい。有機化合物を含有していれば、有機化合物単独からなる有機化合物微粒子であってもよいし、有機化合物だけでなく無機化合物をも含有した有機/無機複合微粒子であってもよい。マット剤の例としては、例えば米国特許第1,939,213号、同2,701,245号、同2,322,037号、同3,262,782号、同3,539,344号、同3,767,448号等の各明細書に記載の有機マット剤を用いることができる。
【0083】
[感熱転写受像シートの製造方法]
以下、本発明の感熱転写受像シートの製造方法について説明する。
本発明の感熱転写受像シートの製造方法は、中空ポリマー粒子、ゼラチンおよびガラス転移温度が30〜85℃のラテックスを含有する断熱層用塗布液と、受容層用塗布液とを支持体上に同時重層塗布し、前記ラテックスを構成するポリマー分子鎖中にスチレン繰り返し単位とブタジエン繰り返し単位を有することを特徴とする。
すなわち、本発明の感熱転写受像シートは、少なくとも1層の受容層および少なくとも1層の断熱層を支持体上に同時重層塗布して製造されるものである。
【0084】
このような同時重層塗布は、水系塗布であることが好ましい。ただし、ここで言う「水系」とは塗布液の溶媒(分散媒)の60質量%以上が水であることをいう。塗布液の水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、オキシエチルフェニルエーテルなどの水混和性の有機溶媒を用いることができる。
【0085】
支持体上に複数の機能の異なる複数の層(気泡層、断熱層、中間層、受容層など)からなる多層構成の受像シートを製造する場合、特開2004−106283号、同2004−181888号、同2004−345267号等の各公報に示されている如く各層を順次塗り重ねていくか、あらかじめ各層を支持体上に塗布したものを張り合わせることにより製造することが知られている。一方、写真業界では例えば複数の層を同時に重層塗布することにより生産性を大幅に向上させることが知られている。例えば特開米国特許第2,761,791号、同第2,681,234号、同第3,508,947号、同第4,457,256号、同第3,993,019号、特開昭63−54975号、特開昭61−278848号、同55−86557号、同52−31727号、同55−142565号、同50−43140号、同63−80872号、同54−54020号、特開平5−104061号、同5−127305号、特公昭49−7050号の公報または明細書やEdgar B. Gutoffら著,「Coating and Drying Defects:Troubleshooting Operating Problems」,John Wiley&Sons社,1995年,101〜103頁などに記載のいわゆるスライド塗布(スライドコーティング法)、カーテン塗布(カーテンコーティング法)といわれる方法が知られている。これらの塗布方法では、複数の塗布液を塗布装置に同時に供給して異なる複数の層を形成する。
【0086】
本発明の感熱転写受像シートの製造方法では、同時重層塗布が可能で高い生産性を実現できる事から、スライド塗布あるいはカーテン塗布が好ましい。本発明の感熱転写受像シートは、少なくとも1層の受容層および少なくとも1層の断熱層を水系塗布により、支持体上に塗布して製造されるものであるが、これらが複数の層からなる場合、あるいは、中間層や下引き層を有する場合には、それらを全て含めて支持体上に同時塗布することが好ましい。
同時重層塗布においては、均質な塗膜形成および良好な塗布性の点で、各層を構成する塗布液の粘度および表面張力を調整する必要がある。塗布液の粘度は、公知の増粘剤や減粘剤を他の性能に影響を与えない範囲で使用することにより容易に調整できる。また、塗布液の表面張力は各種の界面活性剤により調整可能である。
【0087】
本発明においては複数の層は樹脂を主成分として構成される。各層を形成するための塗布液はポリマーラテックスであることが好ましい。各層の塗布液に占めるラテックス状態の樹脂の固形分重量は5〜80%の範囲が好ましく20〜60%の範囲が特に好ましい。上記ポリマーラテックスに含まれる樹脂の平均粒子径は5μm以下であることが好ましく、1μm以下が特に好ましい。上記ポリマーラテックスは必要に応じて界面活性剤、分散剤、バインダー樹脂など公知の添加剤を含むことができる。
【0088】
これらの各層を形成するための塗布液の温度は、25℃〜60℃が好ましく、30℃〜50℃であることがさらに好ましい。
【0089】
本発明においては多層構成を構成する1層あたりの塗布液の塗布量は1g/m2〜500g/m2の範囲が好ましい。多層構成の層数は2以上で任意に選択できる。受容層は支持体から最も遠く離れた層として設けられることが好ましい。
【0090】
乾燥ゾーンでは、乾燥速度が一定で、材料温度とほぼ湿球温度が等しい恒率乾燥期間と、乾燥速度が遅くなり、材料温度が上昇する減率乾燥期間を経て乾燥が進む。恒率乾燥期間では、外部から与えられた熱はすべて水分の蒸発に使われる。減率乾燥期間では、材料内部での水分拡散が律速になり、蒸発表面の後退等により乾燥速度が低下し、与えられた熱は材料温度上昇にも使われるようになる。
【0091】
セットゾーンおよび乾燥ゾーンにおいては、各塗布膜の間および支持体と塗布膜の間で水分移動が起こり、また塗布膜の冷却と水分蒸発による固化が起こる。このため、製品の品質・性能には乾燥途中での膜面温度・乾燥時間等の履歴が大きく影響し、要求品質に応じた条件の設定が必要とされる。
【0092】
セットゾーンの温度は、15℃以下であり、なおかつその冷却工程時間を5秒以上30秒未満とすることが好ましい。5秒未満では十分な塗布液粘度上昇が得られずその後の乾燥時に面状が悪化してしまう。また30秒以上の冷却工程を経るとその後の乾燥工程においての水分除去に時間がかかり、生産効率が低下する。
【0093】
15℃以下での冷却工程後、15℃を越える環境下で乾燥を行うが、その際、本発明においては、冷却終了後から30秒以内に、重層塗布された塗布膜における水の蒸発量を、塗布直後に1m2あたりに塗りつけられた膜面に含まれる水分の60%以上とすることが好ましい。塗布直後に1m2あたりに塗りつけられた膜面に含まれる水分とは、塗布前に調液された塗工液中の含水量に等しい。蒸発水分量が少なすぎなければ、塗布面状の水分が多すぎず、面状が良好となる。一方、該蒸発量を60%以上とする際に乾燥温度を50℃より高くしすぎなければ、水分の蒸発が急激とならず、ひび割れなどを起こさず、面状が良好となるため、乾燥温度は50℃以下に抑えることが好ましい。
蒸発量の規定は、塗布後の感熱転写受像シートを110℃1時間の条件(雰囲気)で乾燥させたものの質量を100%蒸発したものと定義して、質量の差分を量ることで行うことができる。
【0094】
乾燥された塗布済み品は、一定の含水率に調整され巻き取られるが、巻取り、塗布済み品の保存過程での含水率、温度によって硬膜進行が影響されるため、巻取りでの含水率について適切な調湿過程条件の設定が必要となる。
一般に、硬膜反応は高温・多湿条件ほど進行しやすい。しかし、含水率が高すぎると、塗布品同士が接着したり、性能上の問題が生じたりする場合がある。この為、巻取りの含水率(調湿条件)と貯蔵条件は品質に応じた設定が必要とされる。
代表的な乾燥装置としては、エアループ方式、つるまき方式等がある。エアループ方式は、ローラーで支持された塗布済み品に乾燥風噴流を吹き付ける方式であり、ダクトは縦に配置する方式と、横に配置する方式がある。乾燥機能と搬送機能は基本的に分離されていて、風量等の自由度が大きい。しかし、多くのローラーを使うため、寄り・シワ・スリップ等のベースの搬送不良が発生しやすい。つる巻き方式は、円筒状のダクトに塗布済み品をつる巻き状に巻きつけて乾燥風で浮上させて(エアフローティング)搬送・乾燥する方式で、基本的にローラー支持がいらない(特公昭43−20438号公報)。その他、上下互いにダクトを設置して搬送する乾燥方式がある。一般的に乾燥分布はつるまき式に比べ良いが、浮上能力が劣る。
【0095】
<画像形成方法>
本発明の感熱転写受像シートを用いた画像形成方法では、本発明の感熱転写受像シートの受容層と感熱転写シートの染料層(熱転写層)とが接するように重ね合わせて、サーマルヘッドからの画像信号に応じた熱エネルギーを付与することにより画像を形成する。
具体的な画像形成は、例えば特開2005−88545号公報などに記載された方法と同様にして行うことができる。本発明では、消費者にプリント物を提供するまでの時間を短縮するという観点から、プリント時間は15秒未満が好ましく、3〜12秒がより好ましく、さらに好ましくは、3〜7秒である。
【0096】
上記プリント時間を満たすために、プリント時のライン速度は2.0msec/line以下が好ましく、1.5msec/line以下であることがより好ましく、さらに好ましくは0.73msec/line以下であり、最も好ましくは0.65msec/line以下である。また、高速化条件における転写効率向上の観点から、プリント時のサーマルヘッド最高到達温度は、180℃〜450℃が好ましく、さらに好ましくは200℃〜450℃である。さらには350℃〜450℃が好ましい。
【0097】
本発明の感熱転写受像シートは、感熱転写記録方式を利用したプリンター、複写機などに利用することができる。熱転写時の熱エネルギーの付与手段は、従来公知の付与手段のいずれも使用することができ、例えば、サーマルプリンター(例えば、日立製作所製、商品名、ビデオプリンターVY−100)等の記録装置によって記録時間をコントロールすることにより、5〜100mJ/mm2程度の熱エネルギーを付与することによって所期の目的を十分に達成することができる。また、本発明の感熱転写受像シートは、支持体を適宜選択することにより、熱転写記録可能な枚葉またはロール状の感熱転写受像シート、カード類、透過型原稿作成用シート等の各種用途に適用することもできる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、実施例中で、部または%とある場合、特に断りのない限り質量基準である。
【0099】
[製造例1]
(感熱転写シートの作製)
基材フィルムとして片面に易接着処理がされている厚さ6.0μmのポリエステルフィルム(ダイアホイルK200E−6F、商品名、三菱化学ポリエステルフィルム(株)製)の易接着処理がされていない面に、乾燥後の固形分塗布量が1g/m2となるように背面層塗工液を塗布した。乾燥後、60℃で熱処理を行い硬化させた。
このようにして作製したポリエステルフィルムの易接着層塗布側に前記塗工液により、イエロー、マゼンタ、シアンの各感熱転写層および転写性保護層積層体(離型層、保護層および接着層からなる)を面順次となるように塗布した感熱転写シートを作製した。各染料層の固形分塗布量は、0.8g/m2とした。また、転写性保護層積層体の乾膜時の塗布量は離型層0.3g/m2、保護層0.5g/m2、接着層2.2g/m2とした。
【0100】
背面層塗工液:
アクリル系ポリオール樹脂 26.0質量部
(アクリディックA−801、商品名、大日本インキ化学工業(株)製)
ステアリン酸亜鉛 0.43質量部
(SZ−2000、商品名、堺化学工業(株)製)
リン酸エステル 1.27質量部
(プライサーフA217、商品名、第一工業製薬(株)製)
イソシアネート(50%溶液) 8.0質量部
(バーノックD−800、商品名、大日本インキ化学工業(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比2/1) 64質量部
【0101】
イエロー染料層塗工液:
染料化合物(Y−1) 3.9質量部
染料化合物(Y−2) 3.9質量部
ポリビニルアセタール樹脂 6.1質量部
(エスレックKS−1、商品名、積水化学工業(株)製)
ポリビニルブチラール樹脂 2.1質量部
(デンカブチラール#6000−C、商品名、電気化学工業(株)製)
離型剤 0.05質量部
(X−22−3000T、商品名、信越化学工業(株)製)
離型剤 0.03質量部
(TSF4701、商品名、モメンティブ・パフォーマンス・
マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
マット剤 0.15質量部
(フローセンUF、商品名、住友精工(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比2/1) 84質量部
【0102】
【化2】

【0103】
マゼンタ染料層塗工液:
染料化合物(M−1) 0.1質量部
染料化合物(M−2) 0.7質量部
染料化合物(M−3) 6.6質量部
ポリビニルアセタール樹脂 8.0質量部
(エスレックKS−1、商品名、積水化学工業(株)製)
ポリビニルブチラール樹脂 0.2質量部
(デンカブチラール#6000−C、商品名、電気化学工業(株)製)
離型剤 0.05質量部
(X−22−3000T、商品名、信越化学工業(株)製)
離型剤 0.03質量部
(TSF4701、商品名、モメンティブ・パフォーマンス・
マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
マット剤 0.15質量部
(フローセンUF、商品名、住友精工(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比2/1) 84質量部
【0104】
【化3】

【0105】
シアン染料塗工液:
染料化合物(C−1) 1.2質量部
染料化合物(C−2) 6.6質量部
ポリビニルアセタール樹脂 7.4質量部
(エスレックKS−1、商品名、積水化学工業(株)製)
ポリビニルブチラール樹脂 0.8質量部
(デンカブチラール#6000−C、商品名、電気化学工業(株)製)
離型剤 0.05質量部
(X−22−3000T、商品名、信越化学工業(株)製)
離型剤 0.03質量部
(TSF4701、商品名、モメンティブ・パフォーマンス・
マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
マット剤 0.15質量部
(フローセンUF、商品名、住友精工(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比2/1) 84質量部
【0106】
【化4】

【0107】
離型層塗工液:
変性セルロース樹脂 5.0質量部
(L−30、商品名、ダイセル化学)
メチルエチルケトン 95.0質量部
保護層塗工液:
アクリル樹脂 30質量部
(ダイアナールBR−100、商品名、三菱レイヨン(株)製)
イソプロパノール 70質量部
接着層塗工液:
アクリル樹脂 25質量部
(ダイアナールBR−77、商品名、三菱レイヨン(株)製)
下記紫外線吸収剤UV−1 1質量部
下記紫外線吸収剤UV−2 2質量部
下記紫外線吸収剤UV−3 1質量部
下記紫外線吸収剤UV−4 1質量部
シリコーン樹脂微粒子 0.05質量部
(トスパール120、商品名、モメンティブ・パフォーマンス・
マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比2/1) 70質量部
【0108】
【化5】

【0109】
[比較例1]
(感熱転写受像シート1の作製)
ポリエチレンで両面ラミネートした紙支持体表面に、コロナ放電処理を施した後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含むゼラチン下塗層を設けた。この上に、下記組成の下引き層、断熱層、中間層、受容層を支持体側からこの順に積層させた状態で、米国特許第2,761,791号明細書に記載の第9図に例示された方法により、同時重層塗布を行った。固形分が下引き層:3g/m2、断熱層:15g/m2、中間層:2.5g/m2、受容層:2.5g/m2となるように塗布した。
【0110】
受容層塗布液1:
塩化ビニル系ラテックス 20.0質量部
(ビニブラン900、商品名、日信化学工業(株)製、固形分40%)
塩化ビニル系ラテックス 20.0質量部
(ビニブラン690、商品名、日信化学工業(株)製、固形分55%)
ゼラチン(10%水溶液) 2.0質量部
ポリビニルピロリドン 0.5質量部
(K−90、商品名、ISP(株)製)
ポリエーテル変性シリコーンオイル 1.0質量部
(L−7001、商品名、東レ・ダウ・コーニング・シリコーン社製、
側鎖変性型、HLB値=5)
下記界面活性剤F−1(5%水溶液) 1.5質量部
下記界面活性剤F−2(5%水溶液) 5.0質量部
水 50.0質量部
【0111】
中間層塗布液1:
塩化ビニル系ラテックス 50.0質量部
(ビニブラン690、商品名、日信化学工業(株)製、固形分55%)
ゼラチン(10%水溶液) 30.0質量部
水 20.0質量部
【0112】
断熱層塗布液1:
アクリル系中空粒子 20.0質量部
(ローペイクHP−1055、商品名、平均粒径1.0μm、
固形分26.5%、中空率55%、ロームアンドハース社製)
アクリルスチレン系中空粒子 3.0質量部
(Nipol MH5055、商品名、平均粒径0.5μm、
固形分30%、中空率55%、日本ゼオン(株)製)
ゼラチン(10%水溶液) 50.0質量部
水 27.0質量部
【0113】
下引き層塗布液1:
ポリビニルアルコール 5.0質量部
(ポバールPVA205、商品名、(株)クラレ製)
スチレンブタジエンゴムラテックス 60.0質量部
(SN−307、商品名、日本エイアンドエル(株)製、固形分48%)
水 35.0質量部
【0114】
【化6】

【0115】
[比較例2〜4および実施例1〜5]
(感熱転写受像シート2〜9の作製)
感熱転写受像シート1において、断熱層塗布液1を下記の断熱層塗布液2〜9に変更し、それ以外は感熱転写受像シート1と同様にして、比較例2〜4および実施例1〜5の感熱転写受像シート2〜9をそれぞれ作成した。断熱層の塗布量についても、感熱転写受像シート1と同じく、固形分が15g/m2となるようにした。
【0116】
(感熱転写受像シート2)
断熱層塗布液2:
アクリル系中空粒子 20.0質量部
(ローペイクHP−1055、商品名、平均粒径1.0μm、
固形分26.5%、中空率55%、ロームアンドハース社製)
アクリルスチレン系中空粒子 3.0質量部
(Nipol MH5055、商品名、平均粒径0.5μm、
固形分30%、中空率55%、日本ゼオン(株)製)
ゼラチン(10%水溶液) 25.0質量部
変性スチレン−ブタジエンラテックス 5.0質量部
(Nipol LX426、商品名、Tg=−39℃、
平均粒径120nm、固形分50%、日本ゼオン(株)製)
水 47.0質量部
【0117】
(感熱転写受像シート3)
断熱層塗布液3:
アクリル系中空粒子 20.0質量部
(ローペイクHP−1055、商品名、平均粒径1.0μm、
固形分26.5%、中空率55%、ロームアンドハース社製)
アクリルスチレン系中空粒子 3.0質量部
(Nipol MH5055、商品名、平均粒径0.5μm、
固形分30%、中空率55%、日本ゼオン(株)製)
ゼラチン(10%水溶液) 25.0質量部
変性スチレン−ブタジエンラテックス 5.1質量部
(Nipol LX430、商品名、Tg=12℃、
平均粒径150nm、固形分49%、日本ゼオン(株)製)
水 46.9質量部
【0118】
(感熱転写受像シート4)
断熱層塗布液4:
アクリル系中空粒子 20.0質量部
(ローペイクHP−1055、商品名、平均粒径1.0μm、
固形分26.5%、中空率55%、ロームアンドハース社製)
アクリルスチレン系中空粒子 3.0質量部
(Nipol MH5055、商品名、平均粒径0.5μm、
固形分30%、中空率55%、日本ゼオン(株)製)
ゼラチン(10%水溶液) 25.0質量部
カルボキシル変性スチレン−メチルメタクリレート−
アクリロニトリル−ブタジエンラテックス 5.2質量部
(SR−143、商品名、Tg=35℃、平均粒径160nm、
固形分48%、日本エイアンドエル(株)製)
水 46.8質量部
【0119】
(感熱転写受像シート5)
断熱層塗布液5:
アクリル系中空粒子 20.0質量部
(ローペイクHP−1055、商品名、平均粒径1.0μm、
固形分26.5%、中空率55%、ロームアンドハース社製)
アクリルスチレン系中空粒子 3.0質量部
(Nipol MH5055、商品名、平均粒径0.5μm、
固形分30%、中空率55%、日本ゼオン(株)製)
ゼラチン(10%水溶液) 25.0質量部
変性スチレン−ブタジエンラテックス 5.0質量部
(Nipol LX433C、商品名、Tg=50℃、
平均粒径100nm、固形分50%、日本ゼオン(株)製)
水 47.0質量部
【0120】
(感熱転写受像シート6)
断熱層塗布液6:
アクリル系中空粒子 20.0質量部
(ローペイクHP−1055、商品名、平均粒径1.0μm、
固形分26.5%、中空率55%、ロームアンドハース社製)
アクリルスチレン系中空粒子 3.0質量部
(Nipol MH5055、商品名、平均粒径0.5μm、
固形分30%、中空率55%、日本ゼオン(株)製)
ゼラチン(10%水溶液) 25.0質量部
スチレン−ブタジエンラテックス 4.8質量部
(Nipol 2507H、商品名、Tg=58℃、
平均粒径250nm、固形分52%、日本ゼオン(株)製)
水 47.2質量部
【0121】
(感熱転写受像シート7)
断熱層塗布液7:
アクリル系中空粒子 20.0質量部
(ローペイクHP−1055、商品名、平均粒径1.0μm、
固形分26.5%、中空率55%、ロームアンドハース社製)
アクリルスチレン系中空粒子 3.0質量部
(Nipol 中空率55%、MH5055、商品名、平均粒径0.5μm、
固形分30%、日本ゼオン(株)製)
ゼラチン(10%水溶液) 25.0質量部
スチレン−ブタジエンラテックス 5.0質量部
(Nipol LX407BP6、商品名、Tg=70℃、
固形分50%、日本ゼオン(株)製)
水 47.0質量部
【0122】
(感熱転写受像シート8)
断熱層塗布液8:
アクリル系中空粒子 20.0質量部
(ローペイクHP−1055、商品名、平均粒径1.0μm、
固形分26.5%、中空率55%、ロームアンドハース社製)
アクリルスチレン系中空粒子 3.0質量部
(Nipol MH5055、商品名、平均粒径0.5μm、
固形分30%、中空率55%、日本ゼオン(株)製)
ゼラチン(10%水溶液) 25.0質量部
スチレン−ブタジエンラテックス 5.0質量部
(Nipol V1004、商品名、Tg=80℃、
固形分50%、日本ゼオン(株)製)
水 47.0質量部
【0123】
(感熱転写受像シート9)
断熱層塗布液9:
アクリル系中空粒子 20.0質量部
(ローペイクHP−1055、商品名、平均粒径1.0μm、
固形分26.5%、中空率55%、ロームアンドハース社製)
アクリルスチレン系中空粒子 3.0質量部
(Nipol MH5055、商品名、平均粒径0.5μm、
固形分30%、中空率55%、日本ゼオン(株)製)
ゼラチン(10%水溶液) 25.0質量部
ポリスチレンラテックス 5.0質量部
(Nipol LX303A、商品名、Tg=100℃、
平均粒径160nm、固形分50%、日本ゼオン(株)製)
水 47.0質量部
【0124】
(加圧プレス)
これらの感熱転写受像シートを正方形状(20cm×20cm)に裁断し、各5枚ずつ重ね合わせ、上下に厚さ0.5cmのゴムシートで挟んだサンプルを作成した。このサンプルに25℃・55%環境で0.4MPaのプレス圧をかけた状態で10日間放置した。その後、加圧プレスを行った受像シートの3枚目を取り出して、ロール状印画紙に接合し、プリンターに装填できるようにした。
一方、これらの感熱転写受像シートを正方形状(20cm×20cm)に裁断して、各5枚づつ重ね合わせ、上下に厚さ0.5cmのゴムシートで挟んだサンプルを作成した後、25℃・55%環境でプレス圧をかけずに10日間放置した。その後、加圧プレスを行っていない受像シートの3枚目を取り出して、ロール状印画紙に接合し、プリンターに装填できるようにした。
【0125】
(画像形成)
画像形成のためのプリンターには 富士フイルム(株)製 フジフイルムサーマルフォトプリンター ASK−2000L(商品名)を用いた。上記製造例1で製造した感熱転写シートと各実施例と比較例の感熱転写受像シートを装填可能なように加工し、最高濃度の黒ベタ画像の出力を行った。最高濃度の黒ベタ画像の出力は、各実施例と比較例において、前記加圧プレスを行っていない受像シートと加圧プレスを行った受像シートそれぞれについて実施した。
【0126】
なお、感熱転写受像シートはロール形態の製品として提供されることが多く、ロールの内側では圧力がかかり易く、環境条件によって支持体が膨張する場合には断熱層にかかる面圧も大きくなる。そのため、加圧プレスによる性能変化が生じないものが好ましい。
【0127】
(転写濃度)
上記の前記加圧プレスを行っていない受像シートと加圧プレスを行った受像シートをそれぞれ用いた画像形成で得られた最高濃度の黒ベタ画像において、V濃度をXrite310(Xrite社製、商品名)で測定した。感熱転写受像シート1の加圧プレスを行っていない受像シート(加圧なし)の濃度値を100として、その他の感熱転写受像シート2〜9の濃度値を相対値で表した。その結果を下記表1に記載した。
【0128】
【表1】

【0129】
上記表1より、断熱層に中空粒子とゼラチンのみを含有する受像シート1に対し、特開2008−296528号公報に記載のガラス転移温度の低いスチレン−ブタジエン系ラテックスラテックスを添加した受像シート2では転写濃度の向上は見られなかった。これはゼラチンを含有する塗布膜の乾燥収縮により断熱層に圧力が加わり、中空粒子の潰れが生じたからである。それに対して、ガラス転移温度が30℃より高いラテックスを用いた受像シート4(本発明品)では高い転写濃度を得ることができ、ガラス転移温度が50℃より高いラテックスを用いた受像シート5〜8(本発明品)ではさらに高い転写濃度が得られ、より好ましい結果が得られた。
一方、ガラス転移温度が100℃のポリスチレンラテックスを用いた受像シート9では、加圧プレスを行わない場合には高い転写濃度が得られたものの、加圧プレスを行うことにより著しい転写濃度の低下が得られ、転写濃度安定性に劣ることが判った。
本発明の受像シート4〜8では加圧プレスがある場合とない場合の転写濃度の差は小さいので、安定して高い転写濃度が得られることがわかる。
【0130】
(実施例11〜16)
実施例3の感熱転写受像シート6では、ゼラチンとスチレン−ブタジエンラテックスの固形分比率は50/50である。これらの固形分合計量は一定のまま、両者の比率を20/80、30/70、40/60、60/40、70/30、80/20になるよう塗布液組成を変更し、その他は感熱転写受像シート6と同様にして、実施例11〜16の感熱転写受像シート11〜16を作成した。断熱層の塗布量についても、感熱転写受像シート1と同じく、固形分が15g/m2となるようにした。
【0131】
(画像形成)
画像形成のためのプリンターには 富士フイルム(株)製 フジフイルムサーマルフォトプリンター ASK−2000L(商品名)を用いた。上記熱転写シートと上記感熱転写受像シートを装填可能なように加工し、最高濃度の黒ベタ画像、および細線パターン画像(幅1mm×長さ5cmの黒ベタ細線を1mm間隔で30本配置した画像)の出力を行った。黒ベタ画像は実施例3と同様の加圧プレスを行ったサンプルと行わなかったサンプルそれぞれについて出力した。細線パターン画像は加圧プレスを行わなかったサンプルについて出力し、後述の画像保存性評価に使用した。
【0132】
(転写濃度)
実施例3と同様にして、加圧プレスありと加圧プレスなしのサンプルを感熱転写受像シート11〜16それぞれに対して作成した。これらのサンプルに対して黒ベタ画像のV濃度をXrite310(Xrite社製、商品名)で測定した。比較例1の感熱転写受像シート1の加圧無しのときの濃度値を100として、感熱転写受像シート3および11〜16の濃度値を相対値で表した。その結果を下記表2にそれぞれ記載した。
【0133】
(画像保存後のにじみレベル)
比較例1および3の感熱転写受像シート1および3と、本発明の実施例3および11〜16の感熱転写受像シート6および11〜16について、細線パターン画像を印画したサンプルを50℃70%で3ヶ月間保管した。保管後のサンプルを観察し、受像シート中の染料の拡散に起因する細線パターンのにじみを下記の5段階の基準で目視にて評価した。
5: 保管前と比較して、にじみが全く認められない
4: 保管前と比較して、にじみがほぼ認められない
3: 保管前と比較して、にじみがやや認められるが細線同士が明確に識別でき実用上許容できる。
2: 保管前と比較して、細線同士の区別はできるものの、にじみが目立つ。
1: 保管前と比較して、にじみが非常に大きく、細線同士の識別が難しくなる。
以上により得られた結果を下記表2に示す。
【0134】
【表2】

【0135】
感熱転写受像シート11〜16はいずれも加圧プレスの有無にかかわらず高い転写濃度を示した。にじみレベルに着目すると、断熱層中のゼラチン/スチレン−ブタジエンラテックス比率が30/70〜70/30の場合に良好な結果が得られ、40/60〜60/40の場合にさらに優れた結果が得られることがわかった。
【0136】
(実施例21)
実施例3の感熱転写受像シート6において、断熱層塗布液6に替えて、下記の断熱上層塗布液21および断熱下層塗布液21を用いて断熱層を2層構成にした実施例21の感熱転写受像シート21を作成した。支持体上に、下引き層、断熱下層、断熱上層、中間層、受容層の順になるように、同時重層塗布を行った。固形分塗布量として、下引き層:3g/m2、断熱下層:7g/m2、断熱上層:8g/m2、中間層:2.5g/m2、受容層:2.5g/m2となるように塗布した。同時重層塗布方式では、生産性に大きな負荷を与えることなく、このような多層構成の感熱転写受像シートを作成することが容易である。
【0137】
(感熱転写受像シート21)
断熱上層塗布液21:
アクリル系中空粒子 23.0質量部
(ローペイクHP−1055、商品名、平均粒径1.0μm、
固形分26.5%、中空率55%、ロームアンドハース社製)
ゼラチン(10%水溶液) 25.0質量部
スチレン−ブタジエンラテックス 4.8質量部
(Nipol 2507H、商品名、Tg=58℃、
平均粒径250nm、固形分52%、日本ゼオン(株)製)
水 47.2質量部
断熱下層塗布液21:
アクリル系中空粒子 8.0質量部
(ローペイクHP−1055、商品名、平均粒径1.0μm、
固形分26.5%、中空率55%、ロームアンドハース社製)
アクリルスチレン系中空粒子 20.0質量部
(Nipol MH5055、商品名、平均粒径0.5μm、
固形分30%、中空率55%、日本ゼオン(株)製)
ゼラチン(10%水溶液) 25.0質量部
スチレン−ブタジエンラテックス 4.8質量部
(Nipol 2507H、商品名、Tg=58℃、
平均粒径250nm、固形分52%、日本ゼオン(株)製)
水 42.2質量部
【0138】
実施例3と同様にして、加圧プレスありと加圧プレスなしのサンプルを感熱転写受像シート21に対して作成した。これらのサンプルに対して黒ベタ画像のV濃度をXrite310(Xrite社製、商品名)で測定した。比較例1の加圧なしのときの黒ベタ画像の転写濃度を基準に評価した結果、感熱転写受像シート21の黒ベタ画像の転写濃度は、加圧プレス無しの場合で174、加圧プレスありの場合で168となり、実施例3の感熱転写受像シート6と比べてさらに優れた転写性能を有することがわかった。また、取扱い容易性を確認するために、受像紙表面を爪で擦り表面の窪み具合を比較した結果、実施例3の感熱転写受像シート6よりも爪跡が付きにくいことがわかった。
【0139】
さらに、同時重層塗布方式で製造して得られた本発明の感熱転写受像シートを用いて印画した画像には、表面凹凸に由来する白抜けのような画像欠陥が少なく、高い平滑性を有することが確認できた。
以上のことから、本発明の感熱転写受像シートを同時重層塗布方式で製造することにより、生産性への負荷増加を抑えつつ、総合性能の優れた感熱転写受像シートが得られることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、少なくとも1層の断熱層および受容層を順次有する感熱転写受像シートであって、該断熱層が中空ポリマー粒子、ゼラチンおよびガラス転移温度が30〜85℃のラテックスを含有し、該ラテックスを構成するポリマー分子鎖中にスチレン繰り返し単位とブタジエン繰り返し単位を有することを特徴とする感熱転写受像シート。
【請求項2】
前記断熱層中における前記ゼラチンの固形分aと、前記ラテックスの固形分bの質量比(a/b)が、30/70〜70/30であることを特徴とする請求項1に記載の感熱転写受像シート。
【請求項3】
前記受容層が、ポリマーラテックスまたは水溶性ポリマーを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の感熱転写受像シート。
【請求項4】
ロール状に巻き上げられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の感熱転写受像シートを製造する方法であって、
中空ポリマー粒子、ゼラチンおよびガラス転移温度が30〜85℃のラテックスを含有する断熱層用塗布液と、
受容層用塗布液とを支持体上に同時重層塗布し、
前記ラテックスを構成するポリマー分子鎖中にスチレン繰り返し単位とブタジエン繰り返し単位を有することを特徴とする感熱転写受像シートの製造方法。

【公開番号】特開2010−228405(P2010−228405A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80940(P2009−80940)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】