説明

感熱転写記録媒体

【課題】感熱転写記録時のリボン強度が強いと共に、サーマルヘッドの耐久性を向上させることができ、さらには自己クリーニング性にも優れる耐熱滑性層を有する感熱転写記録媒体の提供を目的とする。
【解決手段】
基材の一方の面には少なくとも感熱転写層が、基材のもう一方の面には少なくとも耐熱滑性層がそれぞれ設けられていて、耐熱滑性層は、水酸基価100mgKOH/g以上の熱可塑性樹脂と多価イソシアネートの反応物で、且つ多価イソシアネートの添加量がNCO/OHの比で0.8以上のバインダーと、ステアリン酸塩およびリン酸エステル系界面活性剤と、比重3.0×103kg/m3以上で、且つ平均粒子径3.0μm以下の無機粒子とを含有するものであることを特徴とする感熱転写記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感熱転写方式による熱転写記録に使用される感熱転写記録媒体に関するもので、さらに詳しくは、熱転写記録時のリボン強度が強いと共に、サーマルヘッドの耐久性を向上させことができ、さらには自己クリーニング性にも優れる耐熱滑性層を有する感熱転写記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータ、ワープロ、ファクシミリ等から出力される出力プリントへ感熱転写方式により記録をする際には、基材フィルムの一方の面に熱溶融性のインキからなる感熱転写層あるいは熱昇華性染料を含む感熱転写層を、もう一方の面に耐熱滑性層を設けた感熱転写記録媒体が使用されている。
【0003】
このような感熱転写記録媒体を用いた転写画像の形成は、感熱転写記録媒体の感熱転写層と被転写体を重ね、感熱転写記録媒体の耐熱滑性層面からサーマルヘッドにより加熱することによって行われる。
【0004】
しかし、印字や画像形成速度の高速化に伴い、サーマルヘッドによる印加エネルギーが高くなった結果、サーマルヘッドが感熱転写記録媒体の基材フィルムに融着したり、スリップ性が損なわれたり、著しい場合には基材フィルムが破断する等の問題が生じるようになった。
【0005】
これらの問題を解決する為に、耐熱滑性層の構成部材として、ポリアミドイミド樹脂をバインダーとして用いたもの(特許文献1)や、バインダー樹脂と不飽和二重結合基を有する離型剤と2個以上の不飽和二重結合基を有するモノマーまたはオリゴマーを組み合わせたものを用いたもの(特許文献2)が提案されている。前者は耐熱性の高いポリアミドイミド樹脂を用いることにより画像形成時のリボン強度が強くなるようにしたものであり、また後者は離型剤や2個以上の不飽和二重結合基を有するモノマーまたはオリゴマーを添加することによりスリップ性を向上させたものである。
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開平7−179077号公報
【特許文献2】特開平6−171249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者はポリアミドイミド樹脂自体のコストが高いために製品のコストアップが避けられず、スリップ性も劣っている。また後者は自己クリーニング性が劣り(走行するサーマルヘッドにより削り取られる滓がサーマルヘッドに溜まる)、連続的に良好な画像形成を行う上で問題がある。
【0007】
本発明は上記の問題点を解決しようとなされたものであり、熱転写記録時のリボン強度が強いと共に、サーマルヘッドの耐久性を向上させることができ、さらには自己クリーニング性にも優れる耐熱滑性層を有する感熱転写記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような課題を解決するためになされ、請求項1に記載の発明は、基材の一方の面には少なくとも感熱転写層が、基材のもう一方の面には少なくとも耐熱滑性層がそれぞれ設けられていて、耐熱滑性層は、水酸基価100mgKOH/g以上の熱可塑性樹脂と多
価イソシアネートの反応物で、且つ多価イソシアネートの添加量がNCO/OHの比で0.8以上のバインダーと、ステアリン酸塩およびリン酸エステル系界面活性剤と、比重3.0×103kg/m3以上で、且つ平均粒子径3.0μm以下の無機粒子とを含有するものであることを特徴とする感熱転写記録媒体である。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の感熱転写記録媒体において、前記耐熱滑性層中の熱可塑性樹脂のガラス転移点が40℃以上であることを特徴とする。
【0010】
さらにまた、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の感熱転写記録媒体において、前記耐熱滑性層中の無機粒子の含有量が固形分に対して0.5乃至2.0質量%であることを特徴とする。
【0011】
さらにまた、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感熱転写記録媒体において、前記耐熱滑性層中の無機粒子が酸化マグネシウムであることを特徴とする。
【0012】
さらにまた、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感熱転写記録媒体において、前記感熱転写層が、少なくとも熱昇華性染料とバインダーとからなる感熱昇華転写層であることを特徴とする。
【0013】
さらにまた、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感熱転写記録媒体において、前記感熱転写層が、少なくとも染料または/及び顔料とバインダーとからなる感熱溶融転写層であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る感熱転写記録媒体は、基材の一方の面に少なくとも感熱転写層が、もう一方の面に少なくとも耐熱滑性層が設けられた感熱転写記録媒体であって、耐熱滑性層が、水酸基価100mgKOH/g以上の熱可塑性樹脂と多価イソシアネートの反応物で、且つ多価イソシアネートの添加量がNCO/OHの比で0.8以上のバインダーを主成分とし、滑剤としてステアリン酸塩およびリン酸エステル系界面活性剤を含有し、さらに比重3.0×103kg/m3以上で、且つ平均粒子径3.0μm以下の無機粒子を含有するものであるので、熱転写記録時のリボン強度が強いと共に、サーマルヘッドの耐久性を向上させることができ、しかも自己クリーニング性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態を図1に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明に係る感熱転写記録媒体の概略の断面構成を示す説明図である。
【0017】
この感熱転写記録媒体(1)は、基材(2)の一方の面に感熱転写層(3)が、もう一方の面に耐熱滑性層(4)がそれぞれ設けられている。そして、耐熱滑性層(4)は、水酸基価100mgKOH/g以上の熱可塑性樹脂と多価イソシアネートの反応物で、且つ多価イソシアネートの添加量がNCO/OHの比で0.8以上のバインダーを主成分とし、滑剤としてステアリン酸塩およびリン酸エステル系界面活性剤を含有し、さらに比重3.0×103kg/m3以上で、且つ平均粒子径3.0μm以下の無機粒子を含有するものである。
【0018】
基材(2)としては、従来公知の耐熱性と強度を有するものであればいずれのものでもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルフォンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリビニ
ルアルコールフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム等が挙げられる。また、基材(2)の厚さは、2.0乃至50μm程度のものが使用可能であるが、転写適性等を考慮すると、2.0乃至9.0μm程度のものを用いることが好ましい。
【0019】
耐熱滑性層(4)を構成するバインダー中に使用される水酸基価100mgKOH/g以上の熱可塑性樹脂としては、多価イソシアネートとの反応性や相溶性の観点から考えても、反応性のポリオール基を持つ樹脂が好適に用いられる。
【0020】
この熱可塑性樹脂のガラス転移点(Tg)は40℃以上が好適であると考えられる。Tgを40℃以上にすることにより、感熱転写記録時のリボン強度がさらに強くなり、耳切れ(リボンの両サイドの非印画部が熱収縮に負けて切れる現象)、ちぎれ、裂け(印画部終点が切れる現象)のような印画不良が起こりにくくなると考えられる。
【0021】
また、耐熱滑性層(4)を構成するバインダー中に使用される多価イソシアネートの添加量はNCO/OHの比で0.8以上とする。特に0.8乃至1.3の範囲で添加することが好ましい。多価イソシアネートの含有量が0.8未満の場合、架橋密度が低く耐熱性が不十分となる。一方、多価イソシアネートの含有量が多すぎると、耐熱滑性層に残った未反応のNCO基と空気中の水分、或いは未反応のNCO基同士が反応し、造膜性の低いバインダー樹脂が形成されてしまう場合がある。
【0022】
耐熱滑性層(4)に含有されるステアリン酸塩およびリン酸エステル系界面活性剤は、サーマルヘッドから耐熱滑性層(4)を介して加熱が行われるときにこの層に滑性を与える働きをしており、バインダー中に分子状に溶解した状態で存在している。そのため、固体状の滑剤を添加した場合と比較して、転写画像形成部においてざらつきが生じにくい。また、ステアリン酸塩およびリン酸エステル系界面活性剤の存在により、反応性のポリオール基を持つ熱可塑性樹脂と多価イソシアネートの反応性が高まる結果、感熱転写層の耐熱滑性層への転移が起こりにくくなる。
【0023】
ステアリン酸塩としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。これらの中では、特にステアリン酸亜鉛がより好適である。
【0024】
また、リン酸エステル系界面活性剤としては、例えば、長鎖アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルまたは、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のリン酸エステル等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0025】
また、耐熱滑性層(4)に含有される比重3.0×103kg/m3以上の無機粒子は、耐熱性及びクリーニング性を付与する働きをしている。3.0×103kg/m3以上の無機粒子を用いることにより無機粒子が耐熱滑性層中に沈み込むので、無機粒子が脱落しにくく、しかも研磨性も十分確保することが可能となる。
【0026】
比重3.0×103kg/m3以上の無機粒子としては、従来公知の酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化ケイ素粉、アルミナ、硫酸バリウム等が挙げられるが、耐熱性や研磨性、クリーニング性を付与する働きに加えて、中和剤としての働きを持つという点から、特に酸化マグネシウムが好適である。ここで述べる中和剤としての働きとは、感熱転写記録時にサーマルヘッドからの熱量が大きくなることでリン酸エステル系界面活性剤が分解し、耐熱滑性層が低pHになるのを防ぐ働きのことであって、この働きによってサーマルヘッドが腐食磨耗しなくなる。
【0027】
比重3.0×103kg/m3以上の無機粒子の平均粒子径は、3.0μm以下が必須であるが、0.1乃至1.5μmの範囲のものがより好ましい。平均粒子径が0.1μmより小さいと、クリーニング性を確保する為に含有量を多くしなければならないのでコストが高くなる。また平均粒子径が3.0μmを超えると、サーマルヘッドの磨耗や無機粒子の脱落により感熱転写記録に不良が生じるという問題が発生する。
【0028】
耐熱滑性層(4)に含有される比重3.0×103kg/m3以上で、且つ平均粒子径3.0μm以下の無機粒子の含有量は、固形分に対して0.5乃至2.0質量%であると、耐熱性や研磨性、クリーニング性が良好となる。0.5質量%未満であると、クリーニング性が低下することで自己クリーニング性が低下気味となり、一方、2.0質量%を超えると、無機粒子によっては耐熱滑性層自体の膜強度の低下に結び付く危険性がある。
【0029】
一方、基材(2)のもう一方の面に設けられている感熱転写層(3)には、熱昇華性染料とバインダーとからなる感熱昇華転写層と、染料または/及び顔料とバインダーとからなる感熱溶融転写層がある。
【0030】
感熱昇華転写層は、例えば、熱昇華性染料、バインダー、溶剤等を配合して調製された塗布液の薄膜を塗布し、乾燥することにより得られる。この塗布液の塗布量は、乾燥膜厚で1.0μm程度になるようにすることが好ましい。
【0031】
また、感熱溶融転写層は、例えば、染料または/及び顔料、バインダー、溶剤等を配合して調製された塗布液の薄膜を塗布し、乾燥することにより得られる。この転写層の塗布量は、乾燥膜厚で1.0μm程度が好適である。
【0032】
感熱昇華転写層形成用の塗布液に用いられる熱昇華性染料としては、昇華性分散染料が好ましく用いられる。そのバインダーとしては、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂やポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂やポリエステル樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリビニルブチラール、スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂が好適である。
【0033】
一方、感熱溶融転写層形成用の塗布液に用いられる染料としては、ジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メチン系、アゾメタン系、キサンテン系、アキサジン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、アゾ系、スピロジピラン系、イソドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンダクタム系、アントラキノン系等の一般に使用されている感熱転写性染料を広く使用することができる。また、顔料としては、公知の有機顔料、無機顔料を使用することができる。そのバインダーとしては、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体、カルナバワックス、パラフィンワックス等のワックス類が用いられる。中でも、ポリエステル、エポキシ樹脂が好適に用いられる。
【0034】
以下に本発明の感熱転写記録媒体について、具体的に幾つかの実施例を挙げて、更に詳しく説明する。
【0035】
まず、基材フィルムとして、厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。また、感熱転写層の形成に使用する「感熱昇華転写層形成用塗布液」として、下記配合割合からなる塗布液を調整した。
マゼンタ染料 8重量部
ブチラール樹脂 6重量部
ポリエステル樹脂 2重量部
トルエン 42重量部
メチルエチルケトン 42重量部
更に、「感熱溶融転写層形成用塗布液」として、下記配合からなる塗布液を作製した。マゼンタ顔料 8重量部
マゼンタ染料 2重量部
エポキシ樹脂 20重量部
カルナバワックス 10重量部
トルエン 30重量部
メチルエチルケトン 30重量部
【実施例1】
【0036】
基材の一方の面に、下記の耐熱滑性層形成用塗布液−1を用いてグラビア方式により乾燥膜厚が1.0μmとなるように薄膜を塗工した後、50℃24時間、オーブン中で加熱して硬化処理を行った。
<耐熱滑性層形成用塗布液−1>
アクリルポリオール樹脂(KOH=150mgKOH/g、Tg=37℃)
1重量部
ステアリン酸亜鉛 0.4重量部
リン酸エステル系界面活性剤 3.7重量部
アルミナ(平均粒子径=0.6μm) 0.1重量部(0.3質量%)トリレンジイソシアネート(NCO%=12.5)
14重量部(NCO/OH=1.0)トルエン 42.6重量部
メチルエチルケトン 18.2重量部
続いて、前記基材のもう一方の面に、前記した感熱昇華転写層形成用塗布液を用いてグラビア方式により乾燥膜厚が1.0μmとなるように薄膜を塗布し、乾燥させて感熱昇華転写層を形成し、実施例1の感熱転写記録媒体を作製した。
【実施例2】
【0037】
水酸基価150mgKOH/g、Tg=37℃のアクリルポリオール樹脂を使用する代わりに、水酸基価150mgKOH/g、Tg=43℃のアクリルポリオール樹脂を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例2の感熱転写記録媒体を得た。
【実施例3】
【0038】
アルミナ(平均粒子径=0.6μm)の含有量を0.1重量部にする代わりに、0.7重量部(1.8質量%)にした以外は実施例1と同様にして、実施例3の感熱転写記録媒体を得た。
【実施例4】
【0039】
アルミナ(平均粒子径=0.6μm)の含有量を0.1重量部にする代わりに、0.7
重量部(1.8質量%)にした以外は実施例1と同様にして、実施例4の感熱転写記録媒体を得た。
【実施例5】
【0040】
アルミナを使用する代わりに、酸化マグネシウム(平均粒子径=0.8μm)を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例5の感熱転写記録媒体を得た。
【実施例6】
【0041】
アルミナを使用する代わりに、酸化マグネシウム(平均粒子径=0.8μm)を使用した以外は実施例2と同様にして、実施例6の感熱転写記録媒体を得た。
【実施例7】
【0042】
アルミナを使用する代わりに、酸化マグネシウム(平均粒子径=0.8μm)を使用した以外は実施例3と同様にして、実施例7の感熱転写記録媒体を得た。
【実施例8】
【0043】
アルミナを使用する代わりに、酸化マグネシウム(平均粒子径=0.8μm)を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例8の感熱転写記録媒体を得た。
【実施例9】
【0044】
感熱昇華転写層形成用塗布液を使用する代わりに、感熱溶融転写層形成用塗布液を使用した以外は実施例8と同様にして、実施例9の感熱転写記録媒体を得た。
【実施例10】
【0045】
水酸基価150mgKOH/g、Tg=43℃のアクリルポリオール樹脂を使用する代わりに、水酸基価41mgKOH/g、Tg=43℃のアクリルポリオール樹脂を使用した以外は実施例8と同様にして、比較のための実施例10の感熱転写記録媒体を得た。
【実施例11】
【0046】
トリレンジイソシアネートの含有量を14重量部(NCO/OH=1.0)にする代わりに、7重量部(NCO/OH=0.5)にした以外は実施例8と同様にして、比較のための実施例11の感熱転写記録媒体を得た。
【実施例12】
【0047】
ステアリン酸亜鉛およびリン酸エステル系界面活性剤の代わりにシリコーンオイルを使用した以外は実施例8と同様にして、比較のための実施例12の感熱転写記録媒体を得た。
【実施例13】
【0048】
酸化マグネシウムを添加しなかった事以外は実施例8と同様にして、比較のための実施例13の感熱転写記録媒体を得た。
【実施例14】
【0049】
酸化マグネシウムを使用する代わりに、比重2.0×103kg/m3のシリカを使用した以外は実施例8と同様にして、比較のための実施例14の感熱転写記録媒体を得た。
(評価)
実施例1乃至14の感熱転写記録媒体において、サーマルシミュレーターにより8inch/sの速さで800m全ベタ画像の転写試験を行い、試験後の基材フィルム、サーマルヘッド、印画物の状態を目視観察した。
【0050】
【表1】

評価基準は以下の通りである。
[基材フィルムの状態]
◎:ちぎれ、裂けなし
○:ちぎれ、裂けが2%未満(以後の印画に影響なし)
×:ちぎれ、裂けが2%以上(以後の印画に影響あり)
[サーマルヘッドの耐久性]
◎:磨耗なし
○:0.5μm未満の磨耗量
×:0.5μm以上の磨耗量
[自己クリーニング性]
◎:汚れなし
○:僅かに汚れあり(以後の印画に影響なし)
×:付着物あり(以後の印画に影響あり)
[印画物の状態]
◎:欠陥なく、良好
×:ムラ、スジ抜けあり
(評価結果)
実施例1乃至実施例9の本発明の感熱転写記録媒体は、感熱転写記録時のリボン強度、サーマルヘッドの耐久性、自己クリーニング性が良好であり、感熱転写層の転移も見られなかった。一方、実施例10の感熱転写記録媒体は、水酸基価が小さく架橋が不十分である為に基材フィルムのちぎれや裂けが発生し、それに伴い印画物にムラやスジ抜けが確認された。実施例11の感熱転写記録媒体は、硬化剤量が少なく、架橋が不十分である為に基材フィルムのちぎれや裂けが発生し、それに伴い印画物にムラやスジ抜けが確認された。また、実施例12の感熱転写記録媒体は、耐熱滑性層が感熱転写層に転移しやすくなる為に、基材フィルムのちぎれや裂けが発生し、それに伴い印画物にムラやスジ抜けが確認された。さらに、実施例13の感熱転写記録媒体は、酸化マグネシウムを添加していない為にサーマルヘッドの自己クリーニング性が付与されず、それに伴いサーマルヘッドの耐久性が劣化し、印画物にムラやスジ抜けが確認された。そして、実施例14の感熱転写記録媒体は、比重の小さい無機粒子を使用している為に無機粒子が耐熱滑性層から脱落した結果、サーマルヘッドの耐久性が劣化し、印画物にムラやスジ抜けが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る感熱転写記録媒体の概略の断面構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1・・・感熱転写記録媒体
2・・・基材
3・・・感熱転写層
4・・・耐熱滑性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面には少なくとも感熱転写層が、基材のもう一方の面には少なくとも耐熱滑性層がそれぞれ設けられていて、耐熱滑性層は、水酸基価100mgKOH/g以上の熱可塑性樹脂と多価イソシアネートの反応物で、且つ多価イソシアネートの添加量がNCO/OHの比で0.8以上のバインダーと、ステアリン酸塩およびリン酸エステル系界面活性剤と、比重3.0×103kg/m3以上で、且つ平均粒子径3.0μm以下の無機粒子とを含有するものであることを特徴とする感熱転写記録媒体。
【請求項2】
前記耐熱滑性層中の熱可塑性樹脂のガラス転移点が40℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の感熱転写記録媒体。
【請求項3】
前記耐熱滑性層中の無機粒子の含有量が固形分に対して0.5乃至2.0質量%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の感熱転写記録媒体。
【請求項4】
前記耐熱滑性層中の無機粒子が酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感熱転写記録媒体。
【請求項5】
前記感熱転写層が、少なくとも熱昇華性染料とバインダーとからなる感熱昇華転写層であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感熱転写記録媒体。
【請求項6】
前記感熱転写層が、少なくとも染料または/及び顔料とバインダーとからなる感熱溶融転写層であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感熱転写記録媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2010−36385(P2010−36385A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199512(P2008−199512)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】