説明

感熱転写記録媒体

【課題】面状の不均一さや、熱シワの発生といった問題を解決した感熱転写記録媒体の提供を目的とする。
【解決手段】
基材フィルムの一方の面に少なくとも昇華性染料とバインダーを含有してなる感熱昇華転写色材層が設けられている熱転写記録媒体であって、感熱昇華転写色材層のバインダーの固有粘度が塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン、トルエンおよびエタノールを重量比5:2:2:1で含む混合溶媒中、25℃で測定した場合に、0.5dL/g以上、1.5dL/g以下の範囲にあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材フィルムの一方の面には少なくとも昇華性染料とバインダーを含有してなる感熱昇華転写色材層が設けられている感熱転写記録媒体に関し、さらに詳しくは、感熱昇華転写色材層がムラなく均一であり、しかもシワの発生なしに感熱転写記録が行われるようにした感熱記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱転写記録は、サーマルヘッド等に熱記録部材による加熱加圧により感熱転写記録媒体の感熱転写層の一部を被転写体に転移させて所望の転写画像を受像体上に形成するようにした記録方法である。この感熱転写記録に際して用いられる感熱転写記録媒体としては、昇華性染料を色材として用いたものが、階調表現に優れるために近年特に広く用いられるようになっている。このような感熱転写記録媒体を用いて得られる転写画像はその階調の滑らかさと濃度において銀塩写真に迫るものであり、しかも光学系の銀塩写真と異なり、記録しようとする画像をデジタル的に処理して熱転写(プリント)できるため、デジタルカメラやコンピュータグラフィックに係る画像情報や、印刷校正用途の画像情報の出力用記録媒体として有用である。
【0003】
この昇華性染料を用いた感熱昇華転写記録媒体は、昇華性染料とバインダーを混合したものをコーティングして感熱昇華転写色材層を基材フィルム上に設けることによって得られる。染料熱転写による感熱転写記録は、このようにして得られる感熱昇華転写記録媒体を用い、サーマルヘッド等の熱記録部材を用いて受像媒体に昇華性染料の一部を移行させることにより行われる。
【0004】
一方、感熱転写記録ができるだけきれいに得られるようにするため、感熱転写記録媒体は、転写時に感熱転写記録媒体にシワが発生せず、また受像体への貼り付き等が発生しないように設計しなければならない。また、通常染料やバインダーを基材フィルム上にコーティングして感熱転写記録層を形成する際にはそれらを有機溶剤に溶解させて塗布を行うが、その際にできるだけ均一に、ムラなく塗布が行われるように配慮することも要求される。
【0005】
染料熱転写に用いられる感熱転写記録媒体として、特許文献1に記載されているようなものがある。この感熱転写記録媒体は、バインダーを、固有粘度が塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン、トルエンおよびエタノールを重量比5:2:2:1で含む混合溶媒中、25℃で測定した場合に、1.6dL/g以上であるものを選定することによって、感熱昇華転写色材層形成時の塗布の不均一性を解消し、良好な転写画像が得られるようにしたものである(本明細書中でいう固有粘度とは特許文献1に記載されている極限粘度と同一の意味のものである。)。
【特許文献1】特許第2703159号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のような感熱転写記録媒体を用いた感熱転写記録においては次のような問題点が発生した。すなわち、バインダーとして固有粘度が高いものを用いることは、感熱昇華転写色材層の形成に用いられる、染料とバインダーを有機溶剤に溶解させてなる塗布液の粘度が高いものになることを意味し、この塗布液を用いグラビアロール等により塗布を行った際に均一な塗布膜が得られ難くなってしまった。より具体的には、グラビア塗布の際に塗布液のはねが生じ、塗布面に塗布の不均一さに由来するムラが発生してしまった
。この事実は下記する比較のための実施例により裏付けられている。
【0007】
有機溶剤の量を多くすれば塗布液の粘度は下げられるが、この場合は所望の塗布量を得るためにはその分だけ塗布液を多量に塗布せねばならず、効率が悪く実用的ではない。また特許文献1に記載されているように、塗布液に使用される有機溶剤が塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン、トルエンおよびエタノールの混合物であり、さらに塗布する基材フィルムの厚みが厚く、使用する染料の量が多いときには所定の効果を奏するものと考えられるが、コスト面や環境負荷を考えて溶剤には汎用有機溶剤を使用し、基材フィルムには薄いフィルムを使用し、さらには染料をできるだけ少なく使用した場合、所望の感熱昇華転写色材層を有する感熱転写記録媒体を得ることができず、希望する画質の転写画像が得られなかった。
【0008】
この問題を解決するには、固有粘度がさらに低いバインダーを使用することが考えられる。しかしバインダーの固有粘度が低い場合は、次のような問題点が発生することが判明した。すなわち、熱転写時にサーマルヘッドの熱によって感熱転写記録媒体に熱シワが発生し、その結果所望の品質の画像が得られなくなるという問題である。この事実は下記する比較のための実施例により裏付けられている。
【0009】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたもので、感熱転写記録媒体の感熱昇華転写色材層を構成するバインダーの固有粘度を最適なものにすることによって、薄い基材フィルムを用い、昇華性染料の含有割合が少ない感熱昇華転写色材を用いても、加工適正が良好で均一な感熱昇華転写色材層の塗布・形成ができ、さらには熱シワを生ぜずに良好な感熱転写記録が行えるという性能を有する感熱転写記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するためになされる、請求項1に記載の発明は、基材フィルムの一方の面には少なくとも昇華性染料とバインダーを含有してなる感熱昇華転写色材層が設けられている感熱転写記録媒体であって、感熱昇華転写色材層のバインダーの固有粘度が塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン、トルエンおよびエタノールを重量比5:2:2:1で含む混合溶媒中、25℃で測定した場合に、0.5dL/g以上、1.5dL/g以下の範囲にあることを特徴とする感熱転写記録媒体である。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の感熱転写記録媒体において、基材フィルムの感熱昇華転写色材層が設けられていない面に、バックコート層が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の感熱転写記録媒体において、基材フィルムが1〜20μmの厚さのプラスチックフィルムであることを特徴とする。
【0013】
さらにまた、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の感熱転写記録媒体において、感熱昇華転写色材層の乾燥厚みが0.5〜5μmであることを特徴とする。
【0014】
さらにまた、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の感熱転写記録媒体において、感熱昇華転写色材層には添加剤として界面活性剤が含まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の感熱転写記録媒体は、基材フィルムの一方の面に少なくとも昇華性染料とバイ
ンダーを含有してなる感熱昇華転写色材層が設けられている感熱転写記録媒体であって、感熱昇華転写色材層のバインダーの固有粘度が塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン、トルエンおよびエタノールを重量比5:2:2:1で含む混合溶媒中、25℃で測定した場合に、0.5dL/g以上、1.5dL/g以下の範囲内にあるので、感熱昇華転写色材層の加工適性が優れると共に、均一な面性を示し、さらには熱シワを発生せずに感熱転写記録が行え、良好な画質の転写画像の記録が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を説明する。図1は本発明に係る感熱転写記録媒体の概略の断面構成を示している。
【0017】
この感熱転写記録媒体は、基材フィルム(1)の一方の面に少なくとも昇華性染料とバインダーを含有してなる感熱昇華転写色材層(2)が設けられ、他方の面にバックコート層(3)が設けられてなるものである。
【0018】
基材フイルム(1)は感熱昇華転写色材層(2)とバックコート層(3)を支持するものである。昇華転写方式による記録の場合、サーマルヘッド等の熱記録部材により感熱昇華転写色材層(2)中の昇華性染料を受像体に移行させる際に、感熱昇華転写色材層(2)自体が転写されるのを防ぐため、フィルムベース(11)とこの上に形成された易接着層(12)から成ることが望ましい。
【0019】
フィルムベース(11)は、サーマルヘッド等の熱記録部材による加熱で軟化変形しない耐熱性を有しているものである。かかる理由からポリエステルフィルム、具体的にはポリエチレンテレフタレートフイルムやポリエチレンナフタレートフイルムが望ましい。また、熱伝導性及び強度の点から1〜20μm程度の厚さで、幅1〜20cm程度の長尺のフィルムが好ましい。
【0020】
易接着層(12)は、かかるフィルムベース(11)と感熱昇華転写色材層(2)を強固に接着させるためのものである。
【0021】
後述するように、感熱昇華転写色材層(2)はポリビニルアセタール等をバインダーの主成分とすることから、この易接着層(12)の形成用材料としてはポリイソシアネートとポリオールの反応硬化物から成るポリウレタン系樹脂が好ましい。
【0022】
ポリイソシアネートとしては、2,4トリレンジイソシアネート、2,6トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ビトリレンジイソシアネート等が使用できる。また、ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリル系ポリオール等が使用できる。
【0023】
より具体的には、日本ポリウレタン(株)製ニツポラン3110、3113、3115等のポリイソシアネートと、日本ポリウレタン(株)製コロネートEH等のポリオールである。かかるポリウレタン系樹脂は、ウレタン系塗料もしくはウレタン系接着剤の名で市販されている。
【0024】
易接着層(12)はロールコート、リバースコート、グラビアコート等の薄膜形成方法で塗布形成できる。厚さは熱伝導性の点から薄い方が好ましく、例えば5μm以下であるが、接着力を保持させるため、0.1μm程度以上の厚さを有することが望まれる。
【0025】
一方、感熱昇華転写色材層(2)は、諧調のあるカラー画像を形成するためのものとし
ては、基材フィルム(1)の長手方向に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色相を呈する感熱昇華転写色材層を面順次で配置させた構成のものが望ましい。
【0026】
この感熱昇華転写色材層(2)は各色相を呈する染料とバインダーとを少なくとも含有してなるものである。染料はいわゆる昇華性染料で、気化性染料または熱溶融移行性染料と呼ばれることもある。通常分散染料または油溶性染料である。この感熱昇華転写色材層(2)は、例えば、サーマルヘッドにおける5〜50V、数ms程度の印加による300〜400℃程度の発熱温度で良好に転写記録ができるものである必要がある。
【0027】
色相がイエロー(Y)の感熱昇華転写色材層(2−Y)に用いる染料としては、例えば、Kayacet Yellow AG、Kayakut Yellow TDN(以上、日本化薬(株)製)、PTY52、Dianix Yellow 5R−E、Dianix Yellow F3G−E、Dianix Brilliant Yellow 5G−E、(以上、三菱化学(株)製)、DY 108(以上、有本化学(株)製)、Sumikaron Yellow EFG、Sumikaron Yellow E−4GL(以上、住友化学(株)製)、FORON Brilliant Yellow S6GLPI(Sand社製)等が例示できる。
【0028】
また、色相がマゼンタ(M)の感熱昇華転写色材層(2−M)に用いる染料としては、例えば、Kayact Red 026、Kayacet Red 130、Kayacet Red B(以上、日本化薬(株)製)、Oil Red DK−99(以上、有本化学(株)製)、Diacelliton Pink B(以上、三菱化学(株)製)、Sumikaron Red E−FBL(住友化学(株)製)、Latyl Red
B(du pont社製)、Sudan Red 7B(BASF社製)、Resolin Red FB、Ceres Red 7B(以上、Bayer 社製)等が例示できる。
【0029】
さらに、色相がシアン(C)の感熱昇華転写色材層(2−C)に用いる染料としては、例えば、Kayalon Fast Blue FG、Kayacet Blue FR、Kayacet Blue 136、Kayacet Blye 906(以上日本化薬(株)製)、Oil Blue 63(以上、有本化学(株)製)、HSB9(以上、三菱化学(株)製)、Disperse Blue ♯1(住友化学(株)製)、Ceres Blue GN(Bayer社製)、Duranol Duranol Brilliant Blue 2G(ICI)社製)等が例示できる。
【0030】
バインダーは上記した昇華性染料を基材フィルム(1)面に固定させるためのもので、サーマルヘッド等の熱記録部材による感熱転写を行う時に受像体に接着せず、受像体側に転移しないことが必要である。この理由から、ポリビニルアルコールの架橋物を主成分とする樹脂が望ましい。例えば、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等である。これらの樹脂は分子量10,000〜80,000程度のものを好ましく用いることができる。このバインダーとしては一種類の樹脂だけではなく、複数の樹脂を混合して用いてもよい。また、転写時の染料の透過を向上させるため、エチルセルロース等の他の樹脂を少量混合して用いることもできる。
【0031】
なお、感熱昇華転写色材層(2)の熱応答性を向上させるため、昇華性染料はこの感熱昇華転写色材層(2)中の30〜70重量%を占めることが望ましい。感熱昇華転写色材層(2)は、染料とバインダーを適当な溶剤に溶解又は分散して塗布液とし、これを用いてグラビア塗布法等により塗布形成することができる。溶剤としてはアルコール系、ケトン系、芳香族系等の周知の溶剤が使用できる。この感熱昇華転写色材層(2)は、目的とする画像の濃度に応じて0.5〜5μm程度の厚さに設ければ良い。層の形成に際しては
、一回の塗布で所定の厚さが確保できない場合には多数回重ねて塗布すれば良い。
【0032】
なお、受像体への熱転写時における離型性を向上させるために、感熱昇華転写色材層(2)には離型剤を含有させることが好ましい。かかる離型剤の例としてはフッ素系やシリコーン系の界面活性剤や、ポリエチレンワックス等が挙げられる。さらに、感熱昇華転写色材層(2)を形成する際に塗布液の操作性を向上させるために、塗布液に消泡剤を含有させてもよい。
【0033】
本発明では、必要に応じて受像体の転写画像を保護するための熱転写性保護層(図示せず)が感熱昇華転写色材層と面順次に基材フィルム上に設けてあってもよい。この熱転写性保護層の構成材料としては、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリアミド樹脂、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体等が挙げられる。熱転写性保護層は上記のような材料の1種あるいは2種以上よりなる組成物により形成することができる。
【0034】
なお、必要に応じて熱転写性保護層の剥離性をよくするために、熱転写性保護層の構成材料と相溶性の悪い樹脂、あるいは相溶性のない樹脂よりなる離型層を基材フィルムとの間に設けておいてもよい。さらに、受像体の受像面と保護層の間の密着性を向上させるためにこの熱転写性保護層のうえに接着層を設けておいてもよい。また、これらの保護層、接着層には、必要に応じて、紫外線吸収剤や光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、有機・無機微粒子等を含有させておいてもよい。
【0035】
なお、長尺状の感熱転写記録媒体を巻き取った際に、感熱昇華転写色材層(2)や上述した熱転写性保護層がそれらが形成されていない基材フィルムの面に接着(ブロッキング)することを防ぐと共に、サーマルヘッドが付着して感熱昇華転写媒体のスムーズな走行を妨害することを防止するため、基材フィルム(1)の感熱昇華転写色材層(2)や熱転写性保護層が形成されていない基材フィルムの面にバックコート層(3)を設けておくことが望ましい。
【0036】
このバックコート層(3)は、感熱転写記録媒体のスムーズな走行を確保するため、滑性のある成分を含有する層であることが望ましい。例えば、リン酸エステルの金属塩や、アルキルリン酸エステル、シリコーン系樹脂、シリコーンオイル等を含有する層である。このバックコート層(3)は薄いものが好ましく、0.1〜5μm程度の厚さで十分である。形成はグラビアコート、ロールコート、リバースコート等により行えばよい。
【0037】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0038】
まず、予め片面に易接着処理されているPETフィルム(厚さ4.5μm、東レ製)の、易接着処理がされていない面に、シリコーン(信越化学製)を0.5g/m2になるように塗布し、バックコート層つき基材フィルムを得た。
【0039】
次に、上記のようにして得られたバックコート層つき基材フィルムの、易接着処理が施されている面の上に、下記の感熱昇華転写色材層形成用塗液をグラビアコート方式により、乾燥後の厚さが1.5μmとなるように塗布して感熱昇華転写色材層を設け、実施例1に係る感熱転写記録媒体を得た。
【0040】
<感熱昇華転写色材層形成用塗液の組成>
昇華性染料 8重量部
バインダー(ビニルアルコール・ビニルブチラール含有ポリマー:Tg68℃)
9重量部
離型剤(フッ素系界面活性剤、DIC製) 0.1重量部
溶剤(メチルエチルケトン) 27重量部
溶剤(トルエン) 53重量部
【実施例2】
【0041】
実施例1の感熱昇華転写色材層形成用塗液のバインダーを、ビニルアルコール・ビニルブチラール含有ポリマー(Tg68℃)が2.3重量部と、ビニルアルコール・ビニルブチラール含有ポリマー(Tg100℃)が6.8重量部の混合物からなるものに代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る感熱転写記録媒体を得た。
【実施例3】
【0042】
実施例1の感熱昇華転写色材層形成用塗液のバインダーをビニルアルコール・ビニルブチラール含有ポリマー(Tg100℃)9重量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、比較のための実施例3に係る感熱転写記録媒体を得た。
【実施例4】
【0043】
実施例1の感熱昇華転写色材層形成用塗液のバインダーをビニルアルコール・ビニルブチラール含有ポリマー(Tg68℃)が2.3重量部と、ビニルアルコール・ビニルアセタール含有ポリマー(Tg110℃)が6.8重量部との混合物からなるものに代えた以外は実施例1と同様にして、比較のための実施例4に係る感熱転写記録媒体を得た。
【実施例5】
【0044】
実施例1の感熱昇華転写色材層形成用塗液のバインダーをビニルアルコール・ビニルアセタール含有ポリマー(Tg110℃)の9重量部に代えた以外は実施例1と同様にして、比較のための実施例5に係る感熱転写記録媒体を得た。
【0045】
実施例1〜5に使用したバインダーの固有粘度を次のようにして測定した。
<固有粘度測定>
オストワルド式粘度計(仕様:水30℃、10mLで100sec(±20秒))を用い、25℃に保った恒温槽中で、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン、トルエンおよびエタノールを重量比5:2:2:1で含む混合溶媒にバインダーを溶解させ、固有粘度を測定した。バインダーを複数種使用している場合は、所定の量のバインダーを混合したものについて測定した。得られた結果は表1に示した。
【0046】
実施例1〜5に係る感熱転写記録媒体の感熱昇華転写色材層の面状態を次のようにして評価した。
<面状態評価>
感熱転写記録媒体のうち、感熱昇華転写色材層が設けられている部分を切り取り、透過光で肉眼観察を行い、面の均一さを、◎:非常によい、○:よい、×:悪い、の三段階で評価した。得られた結果は表1に示した。
【0047】
実施例1〜5に係る感熱転写記録媒体の転写時における熱シワの発生を次のようにして評価した。
<熱シワ評価>
感熱転写記録媒体を、市販のプリンタにセットし、市販の受像紙に対して転写を行い、転写後の画像に熱シワ由来の画像の乱れがあるかどうか確認した。評価は◎:良好な画像、×:画像にずれあり、の二段階で行った。得られた結果は表1に示した。
【0048】
【表1】

表1は、感熱転写記録媒体の加工適性と、使用したバインダーの固有粘度、感熱転写記録媒体の面状態、印画後の画像について、実施例1〜5について記した表である。
<評価結果>
バインダーの固有粘度が1.5以下の場合、すなわち実施例1〜3に係る感熱転写記録媒体は、良好な面状の感熱昇華転写色材層を有していた。バインダーの固有粘度が1.5を超える場合、すなわち実施例3〜5に係る感熱転写記録媒体の感熱昇華転写色材層においては、塗布時の感熱昇華転写色材層形成用塗液のはねに由来すると考えられる面状の不均一さが生じていた。
【0049】
また得られた感熱転写記録媒体を用いてサーマルヘッドによる印画を行った場合、バインダーの固有粘度が0.5以上の場合、すなわち実施例1、2、4、5に係る感熱転写記録媒体を使用した転写記録においては、熱シワの発生は見られなかった。バインダーの固有粘度が0.5以下の場合、すなわち実施例3に係る感熱転写記録媒体を使用した感熱転写においては、熱シワが発生した。
【0050】
以上の結果を総合して、印画後の画像を評価すると、バインダーの固有粘度が0.5〜1.5の範囲に入っている場合では良好な画像が得られたが、この範囲外では面状の不均一さや熱シワに由来する画像の悪化が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る感熱転写記録媒体の概略の断面構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1 基材フィルム
11 フィルムベース
12 易接着層
2 感熱昇華転写色材層
3 バックコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一方の面には少なくとも昇華性染料とバインダーを含有してなる感熱昇華転写色材層が設けられている感熱転写記録媒体であって、感熱昇華転写色材層のバインダーの固有粘度が塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン、トルエンおよびエタノールを重量比5:2:2:1で含む混合溶媒中、25℃で測定した場合に、0.5dL/g以上、1.5dL/g以下の範囲にあることを特徴とする感熱転写記録媒体。
【請求項2】
基材フィルムの感熱昇華転写色材層が設けられていない面に、バックコート層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の感熱転写記録媒体。
【請求項3】
基材フィルムが1〜20μmの厚さのプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の感熱転写記録媒体。
【請求項4】
感熱昇華転写色材層の乾燥厚みが0.5〜5μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の感熱転写記録媒体。
【請求項5】
感熱昇華転写色材層には添加剤として界面活性剤が含まれていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の感熱転写記録媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2010−5835(P2010−5835A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165454(P2008−165454)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】