説明

感熱転写記録媒体

【課題】自己クリーニング性を持ちメンテナンスフリーで、サーマルヘッドへの負荷が無く、負荷により生じるサーマルヘッドの摩耗が原因の熱伝導のムラの無い、熱伝導ムラに過敏な高速プリンタにも適用可能な耐熱滑性層を有する感熱転写記録媒体を提供する。
【解決手段】基材1の一方の面に感熱転写層2、他方の面に熱可塑性樹脂と多価イソシアネートとの反応物を主成分とする耐熱滑性層3が設けられた感熱転写記録媒体4において、前記耐熱滑性層に焼成処理されたタルクを含有することを特徴とする感熱転写記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱転写方式のプリンタに使用される感熱転写記録媒体に関するもので、さらに詳しくは、自己クリーニング性を持ったメンテナンスフリーで、サーマルヘッドに負荷を与えず、サーマルヘッドの摩耗が原因の熱伝導にムラがなく、熱伝導ムラに過敏な高速プリンタにも適用可能な耐熱滑性層(バックコート層)を有する感熱転写記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、感熱転写記録媒体は、サーマルリボンと呼ばれ、感熱転写方式のプリンタに使用されるインクリボンのことであり、基材の一方の面に感熱転写層、その基材の他方の面に耐熱滑性層を設けたものである。ここで感熱転写層は、インクの層であって、プリンタのサーマルヘッドに発生する熱によって、そのインクを昇華転写方式あるいは溶融転写方式により、被転写体側に転写するものである。
【0003】
現在、感熱転写方式は、プリンタの高機能化と併せて各種画像を簡便にフルカラー形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等、広く利用されている。そういった用途の多様化と共に、小型化、高速化、低コスト化、また得られる印画物への耐久性を求める声も大きくなり、近年では基材シートの同じ側に印画物への耐久性を付与する保護層等を重ならないように設けられた複数の感熱転写層をもつ感熱転写記録媒体がかなり普及してきている。
【0004】
その様な用途の多様化と普及拡大に伴い、前記耐熱滑性層にも様々な特性が求められるようになった。(1)自己クリーニング性をもちメンテナンスフリーであること、(2)サーマルヘッドに負荷を与えないこと、(3)負荷によるサーマルヘッド摩耗が原因で生じる熱伝導のムラがなく、熱伝導ムラに過敏な高速プリンタにも適用可能な、耐熱滑性層を有する感熱転写記録媒体の開発が要望されている。
【0005】
前記要望を解決するために、いくつかの方法が提案されている。例えば、色素及び結合剤を含む色素層を片側に有し、且つ該色素層を有する側と反対側に結合剤及び焼成ケイ酸アルミニウム粒子を含む耐熱層を有することで、サーマルヘッドの汚染を減少させると同時にサーマルプリントヘッドのパシベーション層の機械的摩耗を最小にし、サーマルプリントヘッドの寿命を延長させることを提案している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−108639号公報号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に提案されている感熱転写記録媒体にて昨今の昇華転写方式の高速プリンタにて印画を行ったところ、サーマルヘッドの汚染は確認されなかったもののサーマルヘッド表面の摩耗が激しく、摩耗に起因すると思われる熱伝導ムラも確認され、要求特性を満足するには十分であるとは言えないことが解った。
【0008】
また特許文献1には、本願発明に使用しているタルクに関して、タルク及びチャイナクレーは柔らかすぎて分解したポリマーをサーマルヘッドの表面から除去できずと記載されている。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑み、自己クリーニング性を持ちメンテナンスフリーで、サーマルヘッドへの負荷が無く、負荷により生じるサーマルヘッドの摩耗が原因の熱伝導のムラの無い、熱伝導ムラに過敏な高速プリンタにも適用可能な耐熱滑性層を有する感熱転写記録媒体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材の一方の面に感熱転写層、他方の面に熱可塑性樹脂と多価イソシアネートとの反応物を主成分とする耐熱滑性層が設けられた感熱転写記録媒体において、前記耐熱滑性層に焼成処理されたタルクを含有することを特徴とする感熱転写記録媒体である。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記耐熱滑性層中の焼成処理されたタルクの含有量が、3〜20質量%であることを特徴とする請求項1記載の感熱転写記録媒体である。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記耐熱滑性層中の焼成処理されたタルクの平均粒子径が、2.0μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の感熱転写記録媒体である。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記耐熱滑性層中の焼成処理されたタルクが、シランカップリング剤により表面処理されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の感熱転写記録媒体である。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、前記感熱転写層が、熱昇華性染料とバインダーとからなる感熱昇華転写層であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の感熱転写記録媒体である。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、前記感熱転写層が、染料又は/及び顔料とバインダーとからなる感熱溶融転写層であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の感熱転写記録媒体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自己クリーニング性を持ちメンテナンスフリーで、サーマルヘッド表面への負荷が無く、負荷よるサーマルヘッド表面の摩耗に起因する熱伝導ムラが無く、よって熱伝導ムラに過敏な高速プリンタに適用可能な耐熱滑性層を有する感熱転写記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の熱転写記録媒体の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の感熱転写記録媒体4は、図1に示すように、基材1の一方の面にイエロー感熱転写層2Y、マゼンタ感熱転写層2M、シアン感熱転写層2Cに塗り分けられた感熱転写層2を、他方の面に耐熱滑性層3が設けられている。
【0019】
前記基材1としては、熱転写における熱圧で軟化変形しない耐熱性と強度が要求され、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミド、ポリスチレン等の合成樹脂のフィルム、およびコンデンサー紙、パラフィン紙などの紙類等を単独で又は組み合わされた複合体として使
用可能であるが、中でも、物性面、加工性、コスト面などを考慮するとポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。また、その厚さは、操作性、加工性を考慮し、2〜50μmの範囲のものが使用可能であるが、転写適性や加工性等のハンドリング性を考慮すると、2〜9μm程度のものが好ましい。
【0020】
耐熱滑性層3は熱可塑性樹脂と多価イソシアネートとの反応物を主成分とし、焼成処理されたタルクを含有している。熱可塑性樹脂と多価イソシアネートとの反応物としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂とジイソシアネートとの反応物、アクリルポリオールとポリイソシアネートとの反応物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応物、ウレタンポリオールとポリイソシアネートとの反応物、ポリエステル樹脂とポリイソシアネートとの反応物、酢酸セルロース樹脂とポリイソシアネートとの反応物、ニトロセルロース樹脂とポリイソシアネートとの反応物、塩化ゴム樹脂とポリイソシアネートとの反応物等を挙げることができるが、これらの組合せに限定されるものではない。
【0021】
前記耐熱滑性層3には、本発明の必須成分である焼成処理されたタルクを含有する。ここで焼成処理されたタルクとは、市販の一般的なタルクを800℃以上に焼成した上で、公知の方法にて粒度調整、分級されたものである。一般的にタルクは3MgO・4SiO・HOと示すことができるが、焼成処理されることで3MgSiO・SiOと示されるものであり、タルク中に存在する水の影響を除去できるとともに、粒度調整を非常にシャープにできる特徴がある。
【0022】
前記特許文献1には、タルク及びチャイナクレーは柔らかすぎて、分解したポリマーをサーマルヘッドの表面から除去できずと記載されているが、その柔らかすぎて分解したポリマーをサーマルヘッドの表面から除去できないとされているタルクに、焼成処理を施し、熱可塑性樹脂と多価イソシアネートとの反応物を結合剤とすることにより、サーマルヘッド表面への負荷を無くし、よって負荷による摩耗に起因する熱伝導ムラを無くし、自己クリーニング性を持ちメンテナンスフリーな感熱転写記録媒体を供給できるものとした。
【0023】
前記耐熱滑性層3は、例えば、バインダー樹脂としてアクリルポリオールとポリイソシアネート、焼成タルク、滑剤、溶剤などを配合して耐熱滑性層形成用インクを調製し、公知の方法にて塗布、乾燥することで形成することができる。
【0024】
前記耐熱滑性層3中の焼成処理されたタルクの含有量は、2〜30質量%が好ましく、より好ましくは3〜20質量%である。含有量が2質量%未満では、効果が不十分であり、30質量%より多い場合には、耐熱滑性層としての塗膜強度の低下を注意する必要があるためである。
【0025】
前記耐熱滑性層3中に含まれる焼成処理されたタルクの平均粒子径は、3.0μm以下が好ましく、より好ましくは0.3〜2.0μmである。平均粒子径が3.0μmを超えると、サーマルヘッドの耐久性に影響を及ぼす可能性も否定できず、あまり細かすぎても粒子自体の均一性が低下する可能性があるためである。
【0026】
前記耐熱滑性層3中に含まれるの焼成処理されたタルクは、シランカップリング剤により表面処理されていることが好ましい。表面をシランカップリング剤で処理することで、焼成されたタルク粒子の分散安定性を向上させることができるとともに、熱可塑性樹脂と多価イソシアネートとの反応物との相溶性を向上させることができ、さらに焼成処理されたタルクがシランカップリング剤に被覆された状態で耐熱滑性層表面に凹凸を形成することでサーマルヘッドの耐久性をより向上させることができるためである。
【0027】
前記シランカップリング剤は、一般式XSiYで表されるものであり、Xは有機質材
料と反応する有機官能基であり、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基等があげられる。一方、Yは無機質材料と反応する加水分解基であり、クロル基、メトキシ基、エトキシ基、アルコキシ基、アセトキシ基等があげられるが、特に限定されるものではない。
【0028】
前記耐熱滑性層3の厚みは、特に限定されないものの、0.3〜2.5μmが好ましく、さらに0.5〜1.5μmがより好ましい。耐熱滑性層の厚みが0.3μmより小さい場合、サーマルヘッドからの耐熱性が劣り、印画時に貼り付き、破断等の危険性が大きくなる。一方、2.5μmより大きい場合、サーマルヘッドからの熱が熱転写層に十分伝わらず、所望の濃度の印画物を得ることができない危険性が大きくなるためである。
【0029】
前記耐熱滑性層3は滑り性を向上させる目的で滑剤を含有してもよい。例えば、動物系ワックス、植物系ワックス等の天然ワックス、合成炭化水素系ワックス、脂肪族アルコールと酸系ワックス、脂肪酸エステルとグリセライト系ワックス、合成ケトン系ワックス、アミン及びアマイド系ワックス、塩素化炭化水素系ワックス、アルファーオレフィン系ワックス等の合成ワックス、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩、長鎖アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル又は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル等のリン酸エステル等の界面活性剤などをあげることができる。
【0030】
前記耐熱滑性層3は焼成処理されたタルク以外の粒子を含有してもよい。粒子を含有させることで耐熱滑性層の表面に凹凸が形成されサーマルヘッドとの接触面積が小さくなるので、印画時のサーマルヘッドに対する離型性が向上する。該粒子は有機系粒子又は無機系粒子どちらでもよいが、サーマルヘッドからの熱により変形しないものが好ましい。具体的には、シリカ粒子、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、シリコーン粒子、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子、ポリスチレン粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子などをあげることができる。
【0031】
次に、感熱転写層2には、熱昇華性染料とバインダーとからなる昇華型感熱転写層と、染料および/または顔料とバインダーとからなる溶融型感熱転写層とを利用できる。
【0032】
昇華型感熱転写層は、例えば、熱昇華性染料、バインダー、溶剤などを配合して昇華熱転写層形成用インクを調製し、公知の方法にて塗布、乾燥することで形成され、乾燥膜厚で1μm程度が適当である。
【0033】
溶融型感熱転写層は、例えば、染料および/または顔料、バインダー、溶剤などを配合して溶融熱転写層形成用インクを調製し、公知の方法にて塗布、乾燥することで形成され、乾燥膜厚で0.5〜1μm程度が適当である。
【0034】
昇華熱転写層形成用インクに用いられる熱昇華性染料としては、昇華性分散染料が好ましく、一例を挙げると、イエロー成分としては、ソルベントイエロー56,16,30,93,33、ディスパースイエロー201,231,33等があげられる。マゼンタ成分としては、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースバイオレット26、C.I.ソルベントレッド27、あるいはC.I.ソルベントレッド19等があげられる。シアン成分としては、C.I.ディスパースブルー354、C.I.ソルベントブルー63、C.I.ソルベントブルー36、あるいはC.I.ディスパースブルー24等があげられる。墨の染料としては、上記の各染料を組み合わせて調色するのが一般的である。
【0035】
昇華熱転写層形成用インクに用いられるバインダーとしては、特に限定されるものではないが、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂やポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂やポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂等である。中でも、イソシアネート等により架橋可能な水酸基を含有するポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール樹脂が好適である。
【0036】
昇華熱転写層形成用インク層中の染料とバインダーとの割合は、染料/バインダー=10/100から300/100(質量比)が好ましい。これは、染料/バインダーの割合が、10/100(質量比)を下回ると、染料が少な過ぎて発色感度が不十分となり良好な熱転写画像が得られず、また、この割合が300/100(質量比)を越えると、バインダーに対する染料の溶解性が極端に低下するために、感熱転写記録媒体となった際にインク層の保存安定性が悪くなって染料が析出し易くなってしまうためである。
【0037】
溶融熱転写層形成用インクに用いられる染料としては、ジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メチン系、アゾメタン系、キサンテン系、アキサジン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、アゾ系、スピロジピラン系、イソドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンダクタム系、アントラキノン系等の一般に使用されている感熱転写性染料を広く使用することができる。また、顔料としては、公知の有機顔料、無機顔料を使用することができ、一例をあげると、カーボンブラック、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、アンスラキノン系、イソインドリノン系等の顔料があげられる。
【0038】
溶融熱転写層形成用インクに用いられるバインダーとしては、熱溶融性以外特に限定されるものではないが、一例を挙げると、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体、カルナバワックス、パラフィンワックス等のワックス類である。中でも、ポリエステル、エポキシ樹脂が好適である。
【0039】
溶融熱転写層形成用インク層中の染料および/または顔料(以下、色剤成分と記載することもある)とバインダーとの割合は、色剤成分/バインダー=5/100から200/100(質量比)が好ましい。これは、色剤/バインダーの割合が、5/100(質量比)を下回ると、色剤が少な過ぎて良好な熱転写画像が得られず、また、この割合が200/100(質量比)を越えると、溶融熱転写層の凝集力が極端に低下するために感熱転写記録媒体となった際にインク層の保存安定性が悪くなってしまうためである。
【0040】
感熱転写層2としては熱転写性保護層を設けることも可能である。熱転写性保護層としては、熱転写性インク層により被転写体上に形成された画像への紫外線等からの耐久性が要求されると同時に、熱転写法というプロセスにより被転写体上に形成される必要がある
ため、一般的には、保護層表面の滑り性を調整することに加え、紫外線吸収等の保護層としての本来的な性能と同時に被転写体への接着性を兼ね備える接着層、その下層に基材から熱転写時に容易に剥離するための剥離層といった複数の層の積層体から形成されることが一般的である。
【0041】
熱転写性保護層における接着層は、例えば、滑り性や紫外線吸収剤等の機能性添加剤、バインダー、溶剤などを配合して接着層形成用インクを調製し、公知の方法にて塗布、乾燥することで形成され、1〜5μm程度(乾燥厚)が適当である。
【0042】
接着層形成用インクに用いる機能性添加剤の一例をあげると、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリコーンパウダー、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、サチンホワイト、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロサイト、水酸化マグネシウム等の無機フィラー、アクリル系プラスチックピグメント、スチレン系プラスチックピグメント、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機フィラーに代表される粒子類をあげることができ、中でも、シリコーンパウダーのような形状が真球状のものが保護層表面の滑り性を均一調整できる点で好適である。さらに、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ベンゾエート、トリアジン系に代表される紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系に代表される光安定剤、ヒンダードフェノール系に代表される酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤等をあげることができる。
【0043】
また、接着層形成用インクに用いるバインダーとしては、熱溶融性以外特に限定されるものではないが、一例をあげると、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体、カルナバワックス、パラフィンワックス等のワックス類である。中でも、アクリル系樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂が好適である。
【0044】
熱転写性保護層における剥離層は、例えば、離型性や滑り性を付与する機能性添加剤、バインダー、溶剤などを配合して剥離層形成用インクを調製し、この剥離層のインク塗布量は、0.3〜3μm程度(乾燥厚)が適当である。
【0045】
剥離層形成用インクに用いる機能性添加剤の一例を挙げると、シリコーンオイル、リン酸エステル系に代表される離型剤、ワックス、樹脂フィラーに代表される滑り剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤等をあげることができる。また、バインダーとしては、熱溶融性以外特に限定されるものではないが、一例をあげると、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体、カルナバワックス、パラフィンワックス等のワックス類である。中でも、アクリル系樹脂、セルロース誘導体が好適である。
【実施例】
【0046】
以下の4条件のタルクを得た。タルクAは市販の平均粒子径2.5μmのタルク10kgを800℃にて2時間焼成し、その後公知の乾式ジェットミルにて粒度調整を行い、粗大粒子をフィルタリングすることで、平均粒子径2.2μmの焼成処理されたものである。
【0047】
タルクBは市販の平均粒子径2.2μmのタルク10kgを800℃にて2時間焼成し、その後公知の乾式ジェットミルにて粉砕圧1.6MPaにて粉砕を行い、粗大粒子をフィルタリングすることで、平均粒子径1.2μmの焼成処理されたものである。
【0048】
タルクCはタルクA1kgを90℃にて、公知のミキサーを用い、1000rpmで攪拌を継続しながら、3−アミノプロピルトリメトキシシラン10gを滴下し、その後1時間攪拌を継続した後、粗大粒子をフィルタリングすることで、平均粒子径2.2μmの焼成処理シランカップリング処理されたものである。
【0049】
タルクDはタルクCに用いたタルクAを市販の平均粒子径2.2μmのタルクに代えること以外は同様にして、平均粒子径2.2μmの未焼成のシランカップリング処理されたものである
【0050】
基材1には厚さ4.5μmのポリエステルフィルムを用いた。
【0051】
耐熱滑性層用塗液はアクリルポリオール樹脂、ステアリン酸亜鉛、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・リン酸エステル、タルク、酸化マグネシウム、2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー、トルエンメチルエチルケトン、酢酸エチルを混錬インキ化した。
【0052】
タルクに関しては前記タルクA,タルクB,タルクC,タルクDおよび市販のタルクを、表1に示す組成にて前記基材1のポリエステルフィルム上にグラビアコート法を用い、乾燥膜厚1.0μmの耐熱滑性層を形成し、その後40℃で5日間エージングした。
【0053】
さらに耐熱滑性層を設けた裏面に、表2に示す熱転写用塗液である熱転写層用イエロー塗液、熱転写層用マゼンタ塗液、熱転写層用シアン塗液を、グラビアコート法により塗り分けを行い、各層乾燥厚1.0μmとなるよう塗工、乾燥し、3種の熱転写層からなる感熱転写記録媒体を作製した。模式的断面を図1に示す。
【0054】
被転写体は厚さ188μmの発泡ポリエステルフィルム上に塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、アミノ変性シリコーンオイル、トルエン、メチルエチルケトンを表3に示す組成で混錬インキ化し熱転写用受像層形成塗液製造し、グラビアコート法により、前記発泡ポリエステルフィルム上に乾燥厚5.0μmに形成し、感熱転写用の被転写体を得た。
【0055】
タルクの粒径、焼成の有無、シランカップリング処理の有無を変化させて得られたタルクA,タルクB,タルクC,タルクDおよび市販のタルクの5種類のタルクと、添加量を変えて調液した6種類の感熱記録媒体をサーマルシミュレーターを使用し、印加エネルギー0.15W/dot、スピード8inch/sでベタパターンを5000m転写試験を行い、試験後のサーマルヘッドの汚れと摩耗の度合いを顕微鏡観察した。
【0056】
評価条件は以下
サーマルヘッド観察
汚れ ○:ほぼ汚れなし
△:汚れは確認できるものの、極微量
×:全面汚れ
△以上で実用上問題なし
摩耗 ○:ほぼ摩耗なし
△:僅かに摩耗を確認
×:全面摩耗を確認
△以上で実用上問題なし
印画物観察
○:印画ムラなし
△:僅かに色ムラを確認
×:スジ状の色ムラを確認
△以上で実用上問題なし
とした。
【0057】
評価結果を表1に示す。結果から、実施例1〜4の感熱転写記録媒体は、連続印画を行ったがのサーマルヘッドのほぼ汚れはなく、有ってもごく微量な物で、いずれも自己クリーニング性により、メンテナンスフリーに対応でき、連続印画を行っても、サーマルヘッドに摩耗は見られなかった。また、連続印画後の印画物観察から、サーマルヘッドからの熱伝導ムラがなく、該熱伝導ムラに過敏な高速プリンタにも適用可能であることが解った。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
また実施例2の感熱転写記録媒体では、サーマルヘッドの汚れがほぼ確認されず、焼成処理されたタルクの含有量を3〜20質量%にすることで、よりサーマルヘッドの汚れが改善されることが解る。また実施例3の感熱転写記録媒体では、サーマルヘッドの摩耗がほぼ確認されず、焼成処理されたタルクの平均粒子径を2.0μm以下にすることで、よりサーマルヘッドの摩耗が改善されることが解る。また実施例4の感熱転写記録媒体では、サーマルヘッドの汚れおよび摩耗のいずれもほぼ確認されず、シランカップリング剤により表面処理された焼成処理されたタルクにすることで、よりサーマルヘッドの汚れおよび摩耗が改善されることが解った。
【0062】
これに対して、比較例1の感熱転写記録媒体は、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、タルクの焼成処理を行わなかっただけにもかかわらず、表1に示すとおりサーマルヘッドの汚れおよび摩耗が悪化し、印画物観察においても、問題レベルまで悪化していることが解った。
【0063】
また、比較例2の感熱転写記録媒体は、実施例4の感熱転写記録媒体と比較して、タルクの焼成処理を行わず、シランカップリング処理は同様に行ったにもかかわらず、表2に示すとおりサーマルヘッドの汚れおよび摩耗が悪化し、印画物観察においても、問題レベルまで悪化していることが解った。
【符号の説明】
【0064】
1・・・基材
2・・・感熱転写層
2Y・・イエロー感熱転写層
2M・・マゼンタ感熱転写層
2C・・シアン感熱転写層
3・・・耐熱滑性層
4・・・感熱転写記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に感熱転写層、他方の面に熱可塑性樹脂と多価イソシアネートとの反応物を主成分とする耐熱滑性層が設けられた感熱転写記録媒体において、前記耐熱滑性層に焼成処理されたタルクを含有することを特徴とする感熱転写記録媒体。
【請求項2】
前記耐熱滑性層中の焼成処理されたタルクの含有量が、3〜20質量%であることを特徴とする請求項1記載の感熱転写記録媒体。
【請求項3】
前記耐熱滑性層中の焼成処理されたタルクの平均粒子径が、2.0μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の感熱転写記録媒体。
【請求項4】
前記耐熱滑性層中の焼成処理されたタルクが、シランカップリング剤により表面処理されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の感熱転写記録媒体。
【請求項5】
前記感熱転写層が、熱昇華性染料とバインダーとからなる感熱昇華転写層であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の感熱転写記録媒体。
【請求項6】
前記感熱転写層が、染料又は/及び顔料とバインダーとからなる感熱溶融転写層であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の感熱転写記録媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−168013(P2011−168013A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35983(P2010−35983)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】