説明

感熱転写記録媒体

【課題】高速印画時における転写感度が高く、すなわち染料層に使用する染料を低減し、長期間の高温・高湿下に保存後においても、印画における異常転写を防止することができ、テカリを軽減する事が可能となる感熱転写記録媒体を提供する。
【解決手段】基材10の一方の面に耐熱滑性層40を設け、当該基材10の他方の面に下引き層20、染料層30を順次形成した感熱転写記録媒体において、下引き層20は、アルコキシド、その加水分解物および塩化錫の少なくともいずれか1つと、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と、水溶性高分子と、ウレタン系樹脂とを主成分として含むことを特徴とする感熱転写記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱転写方式のプリンタに使用される感熱転写記録媒体に関するもので、基材の一方の面に耐熱滑性層を設け、該基材の他方の面に下引き層、染料層を順次形成した感熱転写記録媒体に関し、さらに詳しくは、高速印画時における転写感度が高く、すなわち染料層に使用する染料を低減でき、また長期間における高温・高湿下に保存後においても、印画における異常転写を防止することができ、しかも、高濃度部で発生する画質不良、すなわち、被転写体の受容層が感熱転写記録媒体に融着することで色相変動が起こり、その結果、印画物表面が部分的にマット化する、いわゆる「テカリ」の現象を少なくすることができる感熱転写記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、感熱転写記録媒体は、サーマルリボンと呼ばれ、感熱転写方式のプリンタに使用されるインクリボンのことであり、基材の一方の面に感熱転写層、その基材の他方の面に耐熱滑性層(バックコート層と称すこともある)を設けたものである。
【0003】
ここで感熱転写層とは、インクの層であって、プリンタのサーマルヘッドに発生する熱によって、そのインクを昇華(昇華転写方式)あるいは溶融(溶融転写方式)させ、被転写体側に転写するものである。
【0004】
現在、感熱転写方式の中でも昇華転写方式は、プリンタの高機能化と併せて各種画像を簡便にフルカラー形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等、広く利用されている。そういった用途の多様化と共に、小型化、高速化、低コスト化、また得られる印画物への耐久性を求める声も大きくなり、近年では基材シートの同じ側に印画物への耐久性を付与する保護層等を重ならないように設けられた複数の感熱転写層をもつ感熱転写記録媒体が、かなり普及してきている。
【0005】
被転写体側である受像シートには、溶剤系塗工液により形成した染料受容層を備える溶剤系受像シートや水系塗工液により形成した染料受容層を備える水系受像シートなどが知られている。
【0006】
上記溶剤系受像シートは、水系受像シートと比較して、染料層と染料受容層との離型性の点で優れるが、光沢度が低い。さらに、溶剤系塗工液により形成した受像シートは刺激臭が強く、人体に吸引されると健康被害を及ぼすこと、さらには廃液等の処理による環境への影響等の問題から、使用が敬遠される傾向にある。
【0007】
そのような中で用途の多様化と普及拡大とに伴い、よりプリンタの印画速度の高速化が進むに従って、従来の感熱転写記録媒体では十分な印画濃度が得られないという問題が生じてきた。
【0008】
そこで転写感度を上げるべく、感熱転写記録媒体の薄膜化により印画における転写感度の向上を試みることが行われてきた。しかしながら、感熱転写記録媒体の製造時や印画の際に熱や圧力等によりシワが発生したり、場合によっては破断が発生したりするという問題を抱えている。
【0009】
また、感熱転写記録媒体の染料層における染料/樹脂(Dye/Binder)の比率を大きくして、印画濃度や印画における転写感度の向上を試みることが行われているが、染料を増やすことでコストアップとなるばかりではなく、製造工程における巻き取り状態時に感熱転写記録媒体の耐熱滑性層へ染料の一部が移行し(いわゆる裏移り)、その後の巻き返し時に、その移行した染料が他の色の染料層、あるいは保護層に再転移し(いわゆる裏裏移り)、この汚染された層を被転写体へ熱転写すると、指定された色と異なる色相になり、いわゆる地汚れが生じる。
【0010】
また、感熱転写記録媒体側ではなく、プリンタ側で画像形成時のエネルギーをアップする試みも行われている。しかしながら、プリンタ側で画像形成時のエネルギーをアップすると消費電力が増えるばかりではなく、プリンタのサーマルヘッドの寿命を短くする他、染料層と被転写体とが融着し、いわゆる異常転写が生じやすくなる。それに対して異常転写を防止するために、染料層あるいは被転写体に多量の離型剤を添加すると、画像のにじみや地汚れが生じたりする。
【0011】
さらには感熱転写記録媒体と水系塗工液とにより形成した染料受容層(以下、「受容層」と称すことがある)を備えた受像シートを組合せて画像を形成する際に、水系塗工液により形成した受容層と熱転写シートとが熱融着を起こし、その結果、印画物表面が部分的にマット化する、いわゆる「テカリ」が発生することがある。
【0012】
このような要望を解決するために、いくつかの方法が提案されている。
【0013】
例えば、特許文献1では、基材と染料層との間にポリビニルピロリドン樹脂と変性ポリビニルピロリドン樹脂とを含有する接着層を有する熱転写シートが提案されている。
【0014】
また、例えば、特許文献2には、基材と染料層との間にポリビニルピロリドン樹脂またはポリビニルアルコール樹脂の熱可塑性樹脂とコロイド状無機顔料超微粒子とからなる接着層を有する熱転写シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2005−231354号公報
【特許文献2】特開2006−150956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記特許文献1に提案されている感熱転写記録媒体にて、昨今の昇華転写方式の高速プリンタにて印画を行ったところ、高温・高湿下に保存したものを含めて、異常転写は確認されないものの印画における転写感度が低く、充分なレベルまで至らず、また、テカリも充分に抑える事ができなかった。
【0017】
また、上記特許文献2に提案されている感熱転写記録媒体にて同じく印画を行ったところ、印画における転写感度は高く、充分なレベルに至っているものの、高温・高湿下に保存したもので異常転写が確認され、テカリも確認された。
【0018】
このように、従来技術では、印画における転写感度が高く、高温・高湿下に保存した場合においても異常転写を発生しない高速プリンタに対応できる感熱転写記録媒体が見出されていない状況である。
【0019】
本発明は上記の問題点に鑑み、高速印画時における転写感度が高く、すなわち染料層に使用する染料を低減でき、また長期における高温・高湿下に保存後においても、印画における異常転写を防止でき、しかも、高濃度部で発生する画質不良、すなわち、被転写体の受容層が感熱転写記録媒体に融着することで色相変動が起こり、その結果、印画物表面が部分的にマット化する、いわゆる「テカリ」の現象を少なくすることができる感熱転写記録媒体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。
【0021】
本発明は、感熱転写記録媒体である。当該感熱転写記録媒体は、基材と耐熱滑性層と下引き層と染料層とを備える。また、基材の一方の面には耐熱滑性層が形成され、基材の他方の面には下引き層が形成されている。また、下引き層上には染料層が形成されている。なお、下引き層は、アルコキシド、その加水分解物、および塩化錫から成る群より選ばれる少なくとも1つと、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と、水溶性高分子と、ウレタン系樹脂とを主成分として含むことを特徴とする。
【0022】
なお、ウレタン系樹脂は、ポリエステル系ウレタンであることが好ましい。また、ウレタン系樹脂は、ポリウレタンアイオノマーであることが好ましい。
【0023】
また、水溶性高分子は、ポリビニルピロリドンであることが好ましい。
【0024】
アルコキシドは、テトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、またはそれらの混合物であることが好ましい。
【0025】
下引き層の乾燥後の塗布量、つまり、基材上に下引き層形成用の塗工液を塗布し乾燥した後に残った固形分量は、0.10g/m2〜0.30g/m2の範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、下引き層が、アルコキシド、その加水分解物、および塩化錫から成る群より選ばれる少なくとも1つと、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と、水溶性高分子と、ウレタン系樹脂とを主成分として含むことにより、高速印画時における転写感度が高く、すなわち染料層に使用する染料を増やすことなく高濃度の印画が得られ、かつ長期間高温・高湿下に保存後においても印画における異常転写がなく、しかも、高濃度部で発生する画質不良、すなわち、被転写体の受容層が感熱転写記録媒体に融着することで色相変動が起こり、その結果、印画物表面が部分的にマット化する、いわゆる「テカリ」の現象が少ない印画物を得る事が可能となる感熱転写記録媒体を提供することが可能になる。
【0027】
また、ウレタン系樹脂は、ポリウレタンアイオノマーであることによって、比較的安定な塗布液を得ることが可能になる。水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであることによって、より高濃度の印画が得られる感熱転写記録媒体を提供する事が可能になる。また、水溶性高分子がポリビニルピロリドンであることによって、高濃度の印画が得られ、且つ安定して異常転写し難い感熱転写記録媒体を提供することが可能になる。
【0028】
また、アルコキシドが、テトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウムであることにより、比較的安定な塗布液を得ることが可能になる。
【0029】
さらに、下引き層の乾燥後の塗布量が、0.10〜0.30g/m2の範囲内にあることにより、高濃度の印画が得られ、異常転写し難く、かつテカリの少ない印画物を得ることが可能となる感熱転写記録媒体を提供することが可能になる。
【0030】
つまり、本発明によれば、感熱転写記録媒体は、下引き層が、アルコキシド、その加水分解物、および塩化錫から成る群より選ばれる少なくとも1つと、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と、水溶性高分子と、ウレタン系樹脂とを主成分として含むことにより、高速印画時における転写感度が高く、すなわち染料層に使用する染料を増やすことなく高濃度の印画が得られ、かつ長期間における高温・高湿下に保存後においても印画における異常転写がなく、しかも、高濃度部で発生する画質不良、すなわち、被転写体の受容層が感熱転写記録媒体に融着することで色相変動が起こり、その結果、印画物表面が部分的にマット化する、いわゆる「テカリ」の現象の現象が少ない印画物を得ることができる他、以下の効果がある。
【0031】
下引き層のアルコキシドまたは/およびその加水分解物または塩化錫は、反応性に富む無機成分であり、水溶液中から乾燥形成される中で自らが重縮合反応して鎖状あるいは三次元構造のポリマーを形成する他、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体、水溶性高分子及びウレタン系樹脂とは分子レベルの複合体を形成すると考えられる。そこで上記下引き層のアルコキシドまたは/およびその加水分解物または塩化錫の重縮合物は、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体及び水溶性高分子だけでは不足する高速印画時における転写感度の向上をもたらすと考えられる。
【0032】
また、下引き層のアルコキシドまたは/およびその加水分解物または塩化錫とビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体、ウレタン系樹脂及び水溶性高分子との複合体は、水溶性高分子だけでは劣る高温・高湿下に保存後における異常転写およびテカリに関して、改善をもたらすものと考えられる。
【0033】
さらに、水溶性高分子をポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンとし、ウレタン系樹脂をポリエステル系ウレタン、特にポリエステル系ウレタンアイオノマーとし、アルコキシドをテトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、またはそれらの混合物とし、下引き層の乾燥後の塗布量を0.10〜0.30g/m2の範囲内にすることで、高速印画時における転写感度が高く、より高濃度の印画が得られ、かつ高温・高湿下に保存後においても印画における異常転写がなく、より充分に満足できる印画物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態である感熱転写記録媒体の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態である感熱転写記録媒体について説明する。図1は、本発明の一実施形態である感熱転写記録媒体の側断面図である。
【0036】
図1に示すように、一実施形態である感熱転写記録媒体は、基材10の一方の面に耐熱滑性層40を設け、当該基材10の他方の面に下引き層20、染料層30を順次形成した感熱転写記録媒体である。具体的には、一実施形態である感熱転写記録媒体は、基材10の一方の面にサーマルヘッドとの滑り性を付与する耐熱滑性層40設け、基材10の他方の面にアルコキシド、その加水分解物、および塩化錫の少なくとも1つと、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と、水溶性高分子と、ウレタン系樹脂とを、主成分として含む塗布液を塗布、乾燥して形成される下引き層20、そして染料層30を順次形成した構成とするものである。
【0037】
まず、上記下引き層20は、アルコキシド、その加水分解物、および塩化錫の少なくともいずれか1つと、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と、水溶性高分子と、ウレタン系樹脂とを、主成分として含むことを特徴とする。
【0038】
ここで、上記主成分とは、効果を損なわない限り、アルコキシド、その加水分解物、および塩化錫の少なくともいずれか1つと、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と、水溶性高分子とウレタン系樹脂との他に、さらに他の成分が添加されていても良い旨を表す。
【0039】
例えば、上記主成分とは、アルコキシド、その加水分解物、および塩化錫の少なくともいずれか1つと、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と、水溶性高分子と、ウレタン系樹脂との合計が、下引き層20形成時の全体からみて50質量%超で含まれる意味であるが、好ましくは80質量%以上である。
【0040】
次に、上記基材10としては、熱転写における熱圧で軟化変形しない耐熱性と強度とが要求されるので、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミド、ポリスチレン等の合成樹脂のフィルム、およびコンデンサー紙、パラフィン紙などの紙類等を単独で又は組み合わされた複合体として使用可能であるが、中でも、物性面、加工性、コスト面などを考慮するとポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0041】
また、上記基材10の厚さは、操作性、加工性を考慮し、2〜50μmの範囲のものが使用可能であるが、転写適性や加工性等のハンドリング性を考慮すると、2〜9μm程度のものが好ましい。
【0042】
また、上記基材10においては、後述する耐熱滑性層40または/および下引き層20を形成する面に、接着処理を施すことも可能である。
【0043】
なお、上記接着処理としては、コロナ処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、プラズマ処理、プライマー処理等の公知の技術を適用することができ、それらの処理を二種以上併用することもできるが、基材10と下引き層20との接着性を高めることが有効であり、コスト面からもプライマー処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0044】
次に、上記耐熱滑性層40は、従来公知のもので対応でき、例えば、バインダーとなる樹脂、離型性や滑り性を付与する機能性添加剤、充填剤、硬化剤、溶剤などを配合して調製し、塗布、乾燥して形成することができる。この耐熱滑性層40の乾燥後の塗布量は、0.1〜2.0g/m2程度が適当である。ここで、耐熱滑性層40の乾燥後の塗布量とは、耐熱滑性層形成用の塗工液を塗布、乾燥した後に残った固形分量のことをいい、後述する下引き層20の乾燥後の塗布量および染料層30の乾燥後の塗布量も、同様に、塗工液を塗布、乾燥した後に残った固形分量のことを指す。
【0045】
ここで、上記耐熱滑性層40の一例を挙げると、バインダー樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。
【0046】
また、上記機能性添加剤としては、特に限定されるわけではないが、動物系ワックス、植物系ワックス等の天然ワックス、合成炭化水素系ワックス、脂肪族アルコールと酸系ワックス、脂肪酸エステルとグリセライト系ワックス、合成ケトン系ワックス、アミンおよびアマイド系ワックス、塩素化炭化水素系ワックス、アルファーオレフィン系ワックス等の合成ワックス、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩、長鎖アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル又は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル等のリン酸エステル等の界面活性剤等を挙げることができる。
【0047】
また、充填剤としては、特に限定されるわけではないが、タルク、シリカ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、シリコーン粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ポリプロピレン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。
【0048】
また、上記硬化剤としては、特に限定されるわけではないが、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等のイソシアネート類、およびその誘導体を挙げることができる。
【0049】
次に、上記下引き層20は、必須成分として、アルコキシド、その加水分解物、および塩化錫の少なくともいずれか1つと、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と、水溶性高分子と、ウレタン系樹脂とを、主成分として含む。
【0050】
ここで、上記水溶性高分子の一例を挙げると、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等を挙げることができる。その中でもポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが好ましく、より好ましくはポリビニルアルコールである。
【0051】
なお、ここでいうポリビニルアルコールとは、特に限定されるわけではないが、一般にポリ酢酸ビニルを、けん化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化ポリビニルアルコールから、酢酸基が数%しか残存していない、いわゆる完全けん化ポリビニルアルコールまでを含む。
【0052】
なお、上記ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体とは、N−ビニルピロリドン系モノマーとビニル重合性モノマーであるビニルカプロラクタムとの共重合体である。また、共重合形態は、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合いずれに限定されるものではない。なお、特に限定されるわけではないが、上記N−ビニルピロリドン系モノマーとは、N−ビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−ピロリドン等)およびその誘導体をいうものであって、誘導体としては、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドン、N−ビニル−3−ベンジルピロリドン、N−ビニル−3,3,5−トリメチルピロリドン等のピロリドン環に置換基を有するものを挙げることができる。
【0053】
また、上記ウレタン系樹脂の一例を挙げると、エステル系ポリウレタン樹脂、エーテル系ポリウレタン樹脂、カーボネート系ポリウレタン樹脂などを乳化剤によりエマルジョン化したエマルジョン型ポリウレタン樹脂、エステル系ポリウレタン樹脂、エーテル系ポリウレタン樹脂、カーボネート系ポリウレタン樹脂などに、カルボン酸またはスルホン酸などの金属塩またはアンモニウム塩を部分的に結合させて水溶性を付与したアイオノマー型ポリウレタン樹脂などを挙げることができる。
【0054】
なお、耐水性、耐可塑剤性、耐熱性の点から、カルボキシル基を有するエステル系ポリウレタン樹脂をエマルジョン化したエマルジョン型ポリウレタン樹脂あるいはアイオノマー型ポリウレタン樹脂を用いることが望ましく、ポリウレタンアイオノマー樹脂を用いることが更に望ましい。
【0055】
また、上記アルコキシドの一例を挙げると、テトラエトキシシラン〔Si(OC254〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2'−C373〕などの以下の一般式で表せるものである。その中でもテトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウムが水系の溶媒中においても比較的安定であるため好ましい。
【0056】
M(OR)n …(1)
(上記式1中、Mは、Si、Ti、Al、Zr等の金属を示し、RはCH3、C25等のアルキル基を示す)
【0057】
なお、上記塩化錫に関しては、塩化第一錫(SnCl2)、塩化第二錫(SnCl3)、あるいはそれらの混合物であってもよく、無水物でも水和物でも用いることができる。
【0058】
また、下引き層20の乾燥後の塗布量は、一概に限定されるものではないが、0.10〜0.30g/m2の範囲内であることが好ましい。0.10g/m2未満では、染料層30積層時の劣化により、高速印画時における転写感度が不足し、基材10あるいは染料層30との密着性に問題を抱える不安がある。一方、0.30g/m2超では、感熱転写記録媒体自体の感度低下に影響し、高速印画時における転写感度が不足する不安がある。
【0059】
次に、染料層30は、従来公知のもので対応でき、例えば、熱移行性染料、バインダー、溶剤などを配合して染料層形成用塗布液を調製し、塗布、乾燥することで形成され、1.0g/m2程度が適当である。
【0060】
なお染料層30は、1色の単一層で構成したり、色相の異なる染料を含む複数の染料層30を、同一基材の同一面に面順次に、繰り返し形成したりすることもできる。
【0061】
なお、上記染料層30の熱移行性染料は、熱により、溶融、拡散もしくは昇華移行する染料であれば、特に限定されるわけではなく、例えば、イエロー成分としては、ソルベントイエロー56、16、30、93、33、ディスパースイエロー201、231、33等を挙げることができる。マゼンタ成分としては、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースバイオレット26、C.I.ソルベントレッド27、あるいはC.I.ソルベントレッド19等を挙げることができる。シアン成分としては、C.I.ディスパースブルー354、C.I.ソルベントブルー63、C.I.ソルベントブルー36、あるいはC.I.ディスパースブルー24等を挙げることができる。墨の染料としては、上記の各染料を組み合わせて調色するのが一般的である。
【0062】
また、上記染料層30におけるバインダーは、従来公知の樹脂バインダーがいずれも使用でき、特に限定されるものではないが、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂やポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂やポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂等を挙げることができる。
【0063】
ここで、上記染料層30の染料とバインダーとの割合は、染料/バインダー=10/100から300/100が好ましい。これは、染料/バインダーの割合が、10/100を下回ると、染料が少な過ぎて発色感度が不十分となり良好な熱転写画像が得られないことがある。一方、この割合が300/100を越えると、バインダーに対する染料の溶解性が極端に低下するために、感熱転写記録媒体となった際に保存安定性が悪くなって染料が析出し易くなってしまうためである。
【0064】
また染料層30あるいは染料層形成塗布液には、性能を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、粘度調整剤、安定化剤等の公知の添加剤を使用することができる。
【0065】
なお、上述した耐熱滑性層40、下引き層20、染料層30は、いずれも従来公知の塗布方法にて、塗布、乾燥することで形成可能であり、塗布方法の一例を挙げると、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、スプレーコーティング法、リバースロールコート法を挙げることができる。
【0066】
次に、被転写体側である受像シート、具体的には水系熱転写受像シートは、基材10上に、少なくとも水系バインダーと中空粒子とを含有する水系中空粒子層と、水系バインダーと離型剤とを主成分とする水系受容層を積層したものである。
【0067】
上記水系熱転写受像シートは、基材上に、水系バインダーと中空粒子とを少なくとも含有する水系塗工液により形成した中空粒子層と、水系バインダーと、離型剤とを主成分とする水系塗工液により形成した受容層を積層したものである。
【0068】
なお、水系熱転写受像シートに用いられる基材については、特に制限はなく、使用目的等に応じて種々の材質、層構成およびサイズのものを適宜に選定、使用することができる。例えば、紙、コート紙、および合成紙(ポリプロピレン、ポリスチレン、または、それらを紙と貼り合わせた複合材料)等の各種紙類などを挙げることができる。
【0069】
(中空粒子層)
なお、熱転写方式の印画は、サーマルヘッドからの加熱により行われ、サーマルヘッドと受像紙基材との密着性が良好なことが要求される。中空粒子層を有する熱転写受像シートは、クッション性があるために、サーマルヘッドとの密着性が向上し、印画の際により均一な画像を得ることが可能である。
【0070】
また、中空粒子の壁を形成する材料としてアクリロニトリル、塩化ビニリデン、スチレンアクリル酸エステルの重合体等が好ましく使用される。なお、中空粒子の製造方法としては、樹脂粒子中にブタンガス等の発泡剤を封入し、加熱発泡させる方式や、エマルジョン重合方式などが挙げられる。加熱発泡させる方式としては、中空粒子を予め過熱処理によって発泡させた既発泡中空粒子を用いる場合と、未発泡の粒子を含有した層を塗工などにより形成した後、乾燥工程などの加熱処理によって中空構造を形成する場合とがある。中空粒子の中空率や粒子径を一定に制御することが容易な点から、一般的には既発泡粒子を用いることが好ましい。
【0071】
(受容層)
熱転写受像シートの受容層で使用される染着性樹脂としては、染料に対する親和性が高く、染料染着性の良好な熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。そして、上記樹脂としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル化合物モノマーとベンゾトリアゾール骨格および/またはベンゾフェノン骨格を有するモノマーとの共重合樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられ、これらの熱可塑性樹脂は単独で使用してもよいし、また二種以上を併用して使用してもよい。
【0072】
上記の中でも、印画された画像の耐光性に優れることからアクリル系樹脂、ビニル化合物モノマーとベンゾトリアゾール骨格および/またはベンゾフェノン骨格を有するモノマーとの共重合樹脂、ウレタン系樹脂が好ましい。ウレタン系樹脂は分子内に結晶領域を持つため、異常転写が起こりにくいためである。
【0073】
また、上記染着性樹脂は、環境負荷の面から水溶性もしくは水分散系のいわゆる水系からなることがより好ましい。
【0074】
なお、熱転写方式の印画においては、受像紙基材上の受容層とインクリボンの染料層30とを重ね合わせてサーマルヘッドで加熱した後、受容層からインクリボンを剥がす工程があり、受容層には、インクリボンとの離型性も要求される。このため、受容層には、インクリボンとの融着を防止し、印画走行性を向上する目的で離型剤を添加することが好ましい。添加する離型剤としては、シリコーンオイル、ポリシロキサングラフトアクリル樹脂、ワックス類、フッ素化合物などが挙げられる。
【0075】
受容層には架橋剤を添加して耐熱性を向上させることが好ましい。架橋剤としては、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、有機チタンキレート化合物が好ましい。これら架橋剤の中でも、耐熱性向上の効果が高く、印画時のリボン融着などの走行性の問題が発生しにくい点や、水性塗料中での安定性の点で、カルボジイミド系架橋剤が好ましい。
【0076】
なお、カルボジイミド系架橋剤の添加量は、受容層に含有される樹脂100部に対しカルボジイミド系架橋剤が1〜30部となるようにすることが好ましく、3〜25部がより好ましい。1部未満では、充分な架橋の効果が得られず、印画走行不良が発生する場合がある。30部を超えると、樹脂の染着性を硬化剤が阻害して印画画像の濃度が低下する場合がある。
【0077】
受容層の塗布量は、0.5〜5g/m2が好ましく、より好ましくは0.5〜4g/m2である。0.5g/m2未満では、画像の耐光性が劣る場合がある。5g/m2を超えると、受容層中で染料が拡散してしまう場合があり、画像の滲みが発生する場合がある。
【0078】
(塗工方法)
上記各塗布層には、一般の塗被紙製造において使用される濡れ剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。各塗布層は、バーコーター、グラビアコーター、コンマコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ゲートロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、およびスライドビードコーター等の公知のコーターを使用して、所定の塗工液を各層毎、或いは2層以上を同時に塗工、乾燥して形成することができる。また、乾燥は、コーターに併設されている乾燥炉などによって行われる。乾燥方法としては、一般的に熱風乾燥、加熱乾燥などが挙げられる。その乾燥温度は、70〜130℃の範囲内で適宜選択することができるが、塗布後に塗工液に含まれる溶媒が蒸発すればよく、特に限定されない。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例および比較例に基づき更に説明するが、本発明は下記の例によって制限されるものではない。なお、以下で「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0080】
<耐熱滑性層付き基材の作製>
基材10として、4.5μmの片面易接着処理付きポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その非易接着処理面に下記に示す組成の耐熱滑性層塗工液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が1.0g/m2になるように塗布、乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、耐熱滑性層40付き基材を得た。
【0081】
<耐熱滑性層塗工液>
アクリルポリオール樹脂 12.5部
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・リン酸エステル 2.5部
タルク 6.0部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 4.0部
トルエン 50.0部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
【0082】
(実施例1)
実施例1にあっては、耐熱滑性層40付き基材の易接着処理面に、下記に示す組成の下引き層塗工液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.2g/m2になるように塗布し、100℃、2分で乾燥することで、下引き層20を形成した。引き続き、その下引き層20の上に、下記に示す組成の染料層塗工液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m2になるように塗布し、80℃、1分で乾燥することで、染料層30を形成し、実施例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0083】
<下引き層塗工液−1>
テトラエトキシシラン 6.2部
ポリビニルアルコール 2.2部
ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体 2.2部
アイオノマー型ポリエステルウレタン 2.2部
0.1N塩酸 53.8部
純水 33.9部
イソプロピルアルコール 3.9部
【0084】
<染料層塗工液>
C.I.ソルベントブルー63 6.0部
ポリビニルアセタール樹脂 4.0部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
【0085】
(実施例2)
実施例2にあっては、実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層20を下記に示す組成の下引き層塗工液−2にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の感熱記録転写媒体を得た。
【0086】
<下引き層塗工液−2>
テトラエトキシシラン 6.2部
ポリビニルピロリドン 2.2部
ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体 2.2部
アイオノマー型ポリエステルウレタン 2.2部
0.1N塩酸 53.8部
純水 33.9部
イソプロピルアルコール 3.9部
【0087】
(実施例3)
実施例3にあっては、実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層20を下記に示す組成の下引き層塗工液−3にした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の感熱記録転写媒体を得た。
【0088】
<下引き層塗工液−3>
塩化第一錫 1.8部
ポリビニルアルコール 1.2部
ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体 2.2部
アイオノマー型ポリエステルウレタン 2.2部
純水 64.0部
エチルアルコール 29.1部
イソプロピルアルコール 3.9部
【0089】
(実施例4)
実施例4にあっては、実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層20を下記に示す組成の下引き層塗工液−4にした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の感熱記録転写媒体を得た。
【0090】
<下引き層塗工液−4>
テトラエトキシシラン 6.2部
ポリビニルアルコール 2.2部
ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体 2.2部
アイオノマー型エーテルウレタン 2.2部
0.1N塩酸 53.8部
純水 33.9部
イソプロピルアルコール 3.9部
【0091】
(実施例5)
実施例5にあっては、実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層20を下記に示す組成の下引き層塗工液−5にした以外は、実施例1と同様にして、実施例5の感熱記録転写媒体を得た。
【0092】
<下引き層塗工液−5>
テトラエトキシシラン 6.2部
ポリビニルアルコール 2.2部
ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体 2.2部
エマルジョン型ポリエステルウレタン 2.2部
0.1N塩酸 53.8部
純水 33.9部
イソプロピルアルコール 3.9部
【0093】
(実施例6)
実施例6にあっては、実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層20を下記に示す組成の下引き層塗工液−6にした以外は、実施例1と同様にして、実施例6の感熱記録転写媒体を得た。
【0094】
<下引き層塗工液−6>
テトラエトキシシラン 6.2部
ポリビニルアルコール 2.2部
ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体 2.2部
アイオノマー型エーテルウレタン 0.3部
0.1N塩酸 53.8部
純水 33.9部
イソプロピルアルコール 3.9部
【0095】
(実施例7)
実施例7にあっては、実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層20を下記に示す組成の下引き層塗工液−7にした以外は、実施例1と同様にして、実施例7の感熱記録転写媒体を得た。
【0096】
<下引き層塗工液−7>
テトラエトキシシラン 6.2部
ポリビニルアルコール 2.2部
ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体 2.2部
アイオノマー型エーテルウレタン 0.12部
0.1N塩酸 53.8部
純水 33.9部
イソプロピルアルコール 3.9部
【0097】
(実施例8)
実施例8にあっては、実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層20を下記に示す組成の下引き層塗工液−8にした以外は、実施例1と同様にして、実施例8の感熱記録転写媒体を得た。
【0098】
<下引き層塗工液−8>
テトラエトキシシラン 6.2部
ポリビニルアルコール 0.3部
ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体 2.2部
アイオノマー型エーテルウレタン 2.2部
0.1N塩酸 53.8部
純水 33.9部
イソプロピルアルコール 3.9部
【0099】
(実施例9)
実施例9にあっては、実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層20を下記に示す組成の下引き層塗工液−9にした以外は、実施例1と同様にして、実施例9の感熱記録転写媒体を得た。
【0100】
<下引き層塗工液−9>
テトラエトキシシラン 6.2部
ポリビニルアルコール 0.12部
ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体 2.2部
アイオノマー型エーテルウレタン 2.2部
0.1N塩酸 53.8部
純水 33.9部
イソプロピルアルコール 3.9部
【0101】
(実施例10)
実施例10にあっては、実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層20を乾燥後の塗布量が0.05g/m2になるように塗布、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例10の感熱記録転写媒体を得た。
【0102】
(実施例11)
実施例11にあっては、実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層20を乾燥後の塗布量が0.35g/m2になるように塗布、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例11の感熱記録転写媒体を得た。
【0103】
(実施例12)
実施例12にあっては、耐熱滑性層40付き基材の易接着処理面に、下記に示す組成の下引き層塗工液−10を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.2g/m2になるように塗布、乾燥することで、下引き層20を形成した。引き続き、その下引き層20の上に、実施例1と同様の染料層塗工液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m2になるように塗布、乾燥することで、染料層30を形成し、実施例12の感熱転写記録媒体を得た。
【0104】
<下引き層塗工液−10>
テトラエトキシシラン 6.2部
ポリエステル 2.2部
アイオノマー型ポリエステルウレタン 2.2部
0.1N塩酸 53.8部
純水 33.9部
イソプロピルアルコール 3.9部
【0105】
(比較例1)
比較例1にあっては、耐熱滑性層40付き基材の易接着処理面に、下引き層20を形成することなく、易接着処理面の上に、実施例1と同様の染料層塗工液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m2になるように塗布、乾燥することで、染料層を形成し、比較例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0106】
(比較例2)
比較例2にあっては、耐熱滑性層40付き基材の易接着処理面に、下記に示す組成の下引き層塗工液−11を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.2g/m2になるように塗布、乾燥することで、下引き層20を形成した。引き続き、その下引き層20の上に、実施例1と同様の染料層塗工液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m2になるように塗布、乾燥することで、染料層30を形成し、比較例2の感熱転写記録媒体を得た。
【0107】
<下引き層塗工液−11>
ポリビニルアルコール 3.0部
純水 87.3部
イソプロピルアルコール 9.7部
【0108】
(比較例3)
比較例3にあっては、耐熱滑性層40付き基材の易接着処理面に、下記に示す組成の下引き層塗工液−12を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.2g/m2になるように塗布、乾燥することで、下引き層20を形成した。引き続き、その下引き層20の上に、実施例1と同様の染料層塗工液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m2になるように塗布、乾燥することで、染料層30を形成し、比較例3の感熱転写記録媒体を得た。
【0109】
<下引き層塗工液−12>
ポリビニルピロリドン 3.0部
純水 87.3部
イソプロピルアルコール 9.7部
【0110】
(比較例4)
比較例4にあっては、耐熱滑性層40付き基材の易接着処理面に、下記に示す組成の下引き層塗工液−13を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.2g/m2になるように塗布、乾燥することで、下引き層20を形成した。引き続き、その下引き層20の上に、実施例1と同様の染料層塗工液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m2になるように塗布、乾燥することで、染料層30を形成し、比較例4の感熱転写記録媒体を得た。
【0111】
<下引き層塗工液−13>
テトラエトキシシラン 6.2部
ポリビニルアルコール 2.2部
0.1N塩酸 53.8部
純水 33.9部
イソプロピルアルコール 3.9部
【0112】
(比較例5)
比較例5にあっては、耐熱滑性層40付き基材の易接着処理面に、下記に示す組成の下引き層塗工液−14を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.2g/m2になるように塗布、乾燥することで、下引き層20を形成した。引き続き、その下引き層20の上に、実施例1と同様の染料層塗工液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m2になるように塗布、乾燥することで、染料層30を形成し、比較例5の感熱転写記録媒体を得た。
【0113】
<下引き層塗工液−14>
テトラエトキシシラン 6.2部
ポリビニルピロリドン 2.2部
0.1N塩酸 53.8部
純水 33.9部
イソプロピルアルコール 3.9部
【0114】
(比較例6)
比較例6にあっては、耐熱滑性層40付き基材の易接着処理面に、下記に示す組成の下引き層塗工液−15を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.2g/m2になるように塗布、乾燥することで、下引き層20を形成した。引き続き、その下引き層20の上に、実施例1と同様の染料層塗工液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m2になるように塗布、乾燥することで、染料層30を形成し、比較例6の感熱転写記録媒体を得た。
【0115】
<下引き層塗工液−15>
テトラエトキシシラン 6.2部
ポリビニルアルコール 2.2部
アイオノマー型ポリエステルウレタン 2.2部
0.1N塩酸 53.8部
純水 33.9部
イソプロピルアルコール 3.9部
【0116】
(比較例7)
比較例7にあっては、耐熱滑性層40付き基材の易接着処理面に、下記に示す組成の下引き層塗工液−16を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.2g/m2になるように塗布、乾燥することで、下引き層20を形成した。引き続き、その下引き層20の上に、実施例1と同様の染料層塗工液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m2になるように塗布、乾燥することで、染料層30を形成し、比較例7の感熱転写記録媒体を得た。
【0117】
<下引き層塗工液−16>
テトラエトキシシラン 6.2部
ポリビニルピロリドン 2.2部
アイオノマー型ポリエステルウレタン 2.2部
0.1N塩酸 53.8部
純水 33.9部
イソプロピルアルコール 3.9部
【0118】
次に、熱転写受像シートを作製した。作製方法は以下の通りである。
【0119】
<中空粒子層の形成>
受像紙基材の上に、下記に示す組成の中空粒子層塗工液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が10g/m2になるように塗布、乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、中空粒子層付き受像紙を得た。
【0120】
<中空粒子層塗工液>
アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを
主成分とする共重合体からなる既発泡中空粒子 45部
(平均粒子径3.2μm、体積中空率85%)
ポリビニルアルコール 10部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 45部
(塩化ビニル/酢酸ビニル=70/30、Tg64℃)
水 200部
【0121】
<受容層の形成>
上記中空粒子層上に、下記に示す組成の受容層塗工液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が4g/m2になるように塗布、乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、受容層を得た。
【0122】
<受容層塗工液>
ウレタン樹脂 97部
(ガラス転移温度:−20℃)
会合型ウレタン系増粘剤 1部
スルホン酸系界面活性剤 2部
水 200部
【0123】
<常温における染料層の密着性評価>
実施例1〜12、比較例1〜7の感熱転写記録媒体に関して、常温にて保存された感熱転写記録媒体の染料層30の上に、幅18mm、長さ150mmのセロハンテープを貼り、その後すぐに剥がしたときの、セロハンテープ側への染料層30の付着の有無を調べることにより評価した結果を、表1に示す。
【0124】
なお、評価は、以下の基準にて行った。
○:染料層の付着が、認められない
△:染料層の付着が、ごく僅かに認められる
×:染料層の付着が、全面で認められる
【0125】
<高温・高湿保存後における染料層の密着性評価>
実施例1〜12、比較例1〜7の感熱転写記録媒体に関して、40℃90%RH環境下に72時間保存された後、常温にてさらに24時間保存された感熱転写記録媒体の染料層30の上に、幅18mm、長さ150mmのセロハンテープを貼り、その後すぐに剥がしたときの、セロハンテープ側への染料層30の付着の有無を調べることにより評価した結果を、表1に示す。なお、評価は、上記の常温における評価と同基準にて行った。
【0126】
<印画評価>
実施例1〜12、比較例1〜7の感熱転写記録媒体に関して、常温にて保存された感熱転写記録媒体、および40℃90%RH環境下に72時間保存された後、常温にてさらに24時間保存された感熱転写記録媒体と被転写体を使用し、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、最高反射濃度、異常転写の有無、およびテカリを評価した結果を、表1に示す。なお最高反射濃度は、テカリの確認されない印画部を、X−Rite528にて測定した値である。
【0127】
<印画条件>
印画環境:23℃50%RH
印加電圧:29V
ライン周期:0.7msec
印画密度:主走査300dpi 副走査300dpi
【0128】
<異常転写評価>
また、異常転写の評価は、以下の基準にて行った。
○:被転写体への異常転写が、認められない
△:被転写体への異常転写が、ごく僅かに認められる
×:被転写体への異常転写が、全面で認められる
【0129】
<テカリ評価>
また、テカリの評価は、以下の基準にて行った。
○:テカリが、認められない
△:テカリが、部分的に認められる
×:テカリが、はっきりと認められる
【0130】
【表1】

【0131】
【表2】

【0132】
表1、2に示す結果から、感熱転写記録媒体は基材10の一方の面に耐熱滑性層40を設け、当該基材10の他方の面に下引き層20、染料層30を順次形成し、当該下引き層20は、アルコキシド、その加水分解物、および塩化錫の少なくともいずれか1つと、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と、水溶性高分子とウレタン系樹脂とを、主成分として含む下引き層20を設けられた実施例1〜12の感熱転写記録媒体は、下引き層20が設けられていない比較例1の感熱転写記録媒体と比較して、明らかに高速印画時における転写感度が高いことがわかった。
【0133】
また、常温保存および高温・高湿保存における染料層30の密着性および印画における異常転写も実用上問題ないこともわかった。
【0134】
また、テカリに関しても概ね問題が無い事がわかった。その中で、実施例1、2、3、4、5、6、7、8、12の常温保存品および高温・高湿保存品の最高反射濃度から、水溶性高分子は、ポリビニルピロリドンあるいはポリビニルアルコールが好ましく、特にポリビニルアルコールが好ましいことがわかった。
【0135】
実施例1の高温・高湿保存後における染料層30の密着性から、テトラエトキシシランがより好ましいことがわかった。
【0136】
実施例8の感熱転写記録媒体は、下引き層20の塗布量が0.10g/m2未満であるせいか、幾分高温・高湿保存後の密着性が低下し、さらに転写感度も幾分効果が低下していることがわかった。
【0137】
実施例9の感熱転写記録媒体は、下引き層20の塗布量が0.30g/m2超であるせいか、転写感度の効果が低下していることがわかった。
【0138】
これに対して、比較例2の感熱転写記録媒体は、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、下引き層20を水溶性高分子であるポリビニルアルコールのみで設けた結果、常温保存における転写感度は高いものの、高温・高湿保存における染料層30の密着性に問題を抱えることがかわった。また、テカリに関しても問題を抱える事がわかった。
【0139】
同じく比較例3の感熱転写記録媒体は、実施例2の感熱転写記録媒体と比較して、下引き層20を水溶性高分子であるポリビニルピロリドンのみで設けた結果、比較例2と同じ問題を抱えることがわかった。
【0140】
また、比較例4、5の感熱転写記録媒体は、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、長期における高温・高湿保存において染料層30の密着性に問題を抱える事がわかった。また、テカリに関しても問題を抱える事がわかった。
【0141】
比較例6、7の感熱転写記録媒体は、常温保存における転写感度が高く、高温・高湿保存における染料層30の密着性に関しても良好ではあるものの、テカリに関して問題を抱える事がわかった。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明により得られる、基材上に水系塗工液により形成した中空粒子層を介して水系塗工液により形成した受容層が形成された熱転写受像シートに熱転写によって画像を形成するための感熱転写記録媒体は、昇華転写方式のプリンタに使用されるインクリボンのことであり、プリンタの高速・高機能化と併せて、各種画像を簡便にフルカラー形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0143】
10:基材
20:下引き層
30:染料層
40:耐熱滑性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱転写記録媒体であって、
基材と、
耐熱滑性層と、
下引き層と、
染料層とを備え、
前記基材の一方の面には前記耐熱滑性層が形成され、
前記基材の他方の面には前記下引き層が形成され、
前記下引き層上には染料層が形成され、
前記下引き層は、アルコキシド、その加水分解物、および塩化錫から成る群より選ばれる少なくとも1つと、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と、水溶性高分子と、ウレタン系樹脂とを主成分として含むことを特徴とする感熱転写記録媒体。
【請求項2】
前記ウレタン系樹脂は、ポリエステル系ウレタンであることを特徴とする、請求項1に記載の感熱転写記録媒体。
【請求項3】
前記ウレタン系樹脂は、ポリウレタンアイオノマーであることを特徴とする、請求項1または2に記載の感熱転写記録媒体。
【請求項4】
前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコールであることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1に記載の感熱転写記録媒体。
【請求項5】
前記水溶性高分子は、ポリビニルピロリドンであることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1に記載の感熱転写記録媒体。
【請求項6】
前記アルコキシドは、テトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1に記載の感熱転写記録媒体。
【請求項7】
前記基材上に下引き層形成用の塗工液を塗布し乾燥した後に残った固形分量は、0.10g/m2〜0.30g/m2の範囲内であることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか1に記載の感熱転写記録媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−206351(P2012−206351A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73507(P2011−73507)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】