説明

感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法

【課題】インクの転写性に優れる、溶融型感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリエステルを溶融押出後、冷却ロールで固化したシートをまず横方向に第1段目の延伸を行い、次いで巾方向に定長下熱処理した後、縦方向に第2段目の延伸を行い、次いで140〜230℃で巾方向に定長下熱固定処理し、さらに140〜230℃で幅方向に1〜8%の緩和処理を行う感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であって、 第1段目の横延伸と第2段目の縦延伸の間における熱処理をポリエステルのガラス転移温度〜ガラス転移温度+20℃の温度で0.5〜3秒間行って、フィルム表面の最大高さ(Rt)を5.0〜7.0μmとすることを特徴とする感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法に関し、さらに詳細には、印刷適性、寸法安定性、耐久性に優れる感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、感熱転写記録方式は、基材フィルム表面に設けられたインク層を、サーマルヘッドの加熱状態に応じて受像紙などの表面に転写する記録方式として知られており、印字が鮮明であるとともに、装置の簡便さや低騒音の観点から広く普及しており、なかでも、フィルム上に顔料とワックス類などで作られたインクを、サーマルヘッドの加熱で溶融転写させることにより受像紙に印刷する溶融型感熱転写法はコストの点で優れていることから、ファクシミリーやバーコードなどのモノクローム印刷用を中心に広く普及している。
【0003】
かかる記録方式における感熱転写記録材料に用いるポリエステルフィルムは、厚みが2〜10μmと非常に薄いものが求められるため、従来のポリエステルフィルムではリボンへの加工工程や印字の際に破断や皺等が発生しやすいという問題があった。
【0004】
かかる問題を回避するため、第1段目の延伸を横方向に行い、次いで、第2段目延伸を縦方向に行い、縦方向の屈折率が1.675〜1.695、かつ、横方向の屈折率が1.625〜1.645である二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、このフィルムはアンカーコートを施さない感熱転写記録材料に用いた場合、フィルム上に顔料とワックス類などで作られたインクをサーマルヘッドの加熱により受像紙に溶融転写させた際、フィルム上にインクが残りやすいという問題があった。
【特許文献1】特開2003−312154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点に鑑み、感熱転写リボンへの加工工程や印字の際に破断や皺等が発生しにくく、さらに感熱転写リボンに用いた場合、サーマルヘッドの加熱により受像紙に溶融転写させた際に印字性が優れる、即ち、フィルムからのインクの転写性に優れる、感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法は、ポリエステルを溶融押出後、冷却ロールで固化したシートをまず横方向に第1段目の延伸を行い、次いで巾方向に定長下熱処理した後、縦方向に第2段目の延伸を行い、次いで140〜230℃で巾方向に定長下熱固定処理し、さらに140〜230℃で幅方向に1〜8%の緩和処理を行う感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であって、
第1段目の横延伸と第2段目の縦延伸の間における熱処理をポリエステルのガラス転移温度〜ガラス転移温度+20℃の温度で0.5〜3秒間行って、フィルム表面の最大高さ(Rt)を5.0〜7.0μmとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明で得られる感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムは、感熱転写リボンへの加工工程や印字の際に破断や皺等が発生しにくく、さらに感熱転写リボンに用いた場合、サーマルヘッドの加熱により受像紙に溶融転写させた際の印字性、即ち、フィルムからのインクの転写性に優れている。また、本発明の感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法は、感熱転写リボンへの加工工程や印字の際に破断や皺等が発生しにくく、さらに感熱転写リボンに用いた場合、サーマルヘッドの加熱により受像紙に溶融転写させた際の印字性、即ち、フィルムからのインクの転写性に優れたフィルムを容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明では、フィルムを構成するポリエステルは、エチレンテレフタレート成分を主たる構成成分とすることが感熱転写リボンへの加工工程や印字の際に破断や皺等を抑制する点で重要である。
【0010】
本発明では、フィルムを構成するポリエステルは、その目的を阻害しない範囲で他の共重合成分を含むことができる。使用できる他の共重合成分のうち、ジカルボン酸成分として、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸,コハク酸,アジピン酸,セバシン酸,デカンジカルボン酸,マレイン酸,フマル酸,ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が使用できる。使用できる上記のジカルボン酸およびそれらのエステル誘導体の量は10モル%以下が好ましく、5モル%以下がさらに好ましい。他のジカルボン酸およびそれらのエステル誘導体の使用量が10モル%を超えるとポリエステルの熱安定性が悪くなる。
【0011】
また、グリコール成分として、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物,ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が使用できる。このほか少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有する化合物を含んでいてもよい。ここで、使用できる他のグリコール成分の量は10モル%以下が好ましく、5モル%以下がさらに好ましい。他のグリコール成分の使用量が10モル%を超えるとポリエステルの熱安定性が悪くなる。
【0012】
本発明において、横方向に第1段目延伸を行った後、縦方向に第2段目延伸を行う前に、ポリエステルのガラス転移温度〜ガラス転移温度+20℃の温度で0.5〜3秒間、巾方向に定長下熱処理することは、感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの表面の最大高さ(Rt)を5.0μm以上7.0μm以下に制御するために特に重要である。上記の第1段目延伸と第2段目延伸との間で熱処理を行わない場合、または前記熱処理の温度をポリエステルのガラス転移温度未満とした場合、または熱処理時間が0.5秒未満の場合には、得られた感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの最大高さが5.0μm未満となる。その結果、プリンターのサーマルヘッドの加熱により受像紙にインクを溶融転写させる際にインクの転写性が劣る。
【0013】
一方、第1段目延伸と第2段目延伸との間の熱処理の際に、熱処理の温度がガラス転移温度+20℃を超える場合、または熱処理の時間が3秒を超える場合、感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの表面の最大高さ(Rt)が7.0μmを超える。その結果、インク転写性は良好であるものの、第2段目延伸(縦延伸)を行う際にフィルムが破断しやすくなる。
【0014】
本発明では、第1段目延伸(横延伸)として、横方向にポリエステルのガラス転移温度以上の温度で3.0〜4.5倍に延伸し、第2段目延伸(縦延伸)として、縦方向にポリエステルのガラス転移温度以上の温度で2.5〜4.5倍に延伸することが好ましい。第1段目延伸において、横延伸の倍率が3.0未満の場合、または第2段目延伸において、縦延伸倍率が2.5未満の場合には、感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの平面性が悪化する。その結果、サーマルヘッドの加熱により受像紙に溶融転写させる際に、ポリエステルフィルムと受像紙との密着性が不十分となり、インクの転写性が劣る。一方、第1段目延伸において、横延伸倍率が4.5倍を超える場合、または第2段目延伸において縦延伸倍率が4.5倍を超える場合には、第2段目延伸でシワが発生する場合や、さらに第3段目延伸を行った際に第3段目延伸で破断する頻度が増加する。
【0015】
本発明では、第3段目の延伸として、横方向に、ポリエステルのガラス転移温度以上の温度で1.01〜1.50倍で再延伸してもよい。
【0016】
本発明では、第2段目延伸または第3段目延伸の後、140〜230℃で公知の巾方向を一定長とした熱固定(例えば、フィルムの両端をクリップで把持して行う熱固定)を実施し、次いで、140〜230℃の温度範囲で巾方向に1〜8%緩和処理を実施して寸法安定性を高めることは、感熱転写リボンへの加工工程や感熱転写リボンをプリンターで使用する際、シワが発生しにくく好ましい。
【0017】
本発明では、感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの極限粘度は、0.52〜0.65dl/gであるのが好ましい。極限粘度が0.52dl/g未満の場合、ポリエステルフィルム製造時や感熱転写リボンへの加工工程での破断が発生しやすくなる。一方、極限粘度が0.65dl/gを超える場合、所定の製品巾への裁断工程で寸法不良が起こりやすくなる。
【0018】
本発明では、感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みは2〜6μmであることが好ましく、3〜5μmであることがさらに好ましい。ポリエステルフィルムの厚みが2μm未満の場合、ポリエステルフィルム製造時や感熱転写リボンへの加工工程での破断が発生しやすくなる。逆に、ポリエステルフィルムの厚みが6μmを超える場合、熱の伝導が悪くなり、また熱が2次元的に拡散するので、印字性能が悪化する場合がある。
【実施例】
【0019】
以下、実施例をもとに本発明を説明する。まず、実施例および比較例に用いた評価方法について説明する。
【0020】
(1)ポリエステルのガラス転移温度
ポリエステル組成物を300℃で5分間加熱溶融した後、液体窒素で急冷して得たサンプル10mgを用い、窒素気流中、示差走査型熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で発熱・吸熱曲線(DSC曲線)を測定し、接線法によりガラス転移温度(Tg)を求めた。
【0021】
(2)フィルム表面の最大高さ(平均Rt)
3個のポリエステルフィルム片を、三次元非接触表面形状計測システム((株)菱化システム製、KP−MI白黒CCDカメラ、MICROSCOPE MM−40カメラ、ユニバーサル照明装置 EPI−Uより構成)を用いて、下記の光学条件と測定条件で測定したRt(中心線からの最高点と最低点の差)の平均値を最大高さ(平均Rt)とした。
【0022】
(光学条件)
(a)波長:5600Å、(b)対物レンズ:10倍、(c)ズームレンズ:0.5倍、(d)リレーレンズ:未使用、(e)CCDカメラ:2/3インチ
【0023】
(測定条件)
(a)モード:Wave 560M、(b)繰返し測定サイクル:1、(c)測定領域:Field X:480、Field Y:480、(d)サンプリング間隔:1
【0024】
(3)フィルムの横方向における105℃での熱収縮率(HS105)
JIS−C−2151に準拠し、105℃で30分間の熱処理を行った後のフィルムの横方向における熱収縮率を測定する。
【0025】
(4)インク剥離性
(インク層コート材の調製)
下記の材料からなる混合物を攪拌・加熱して溶融し、さらにカーボンブラック(13質量部)を加えて分散、混合した組成物をインク層コート材とした。
カルナウバワックス 40質量部
エステルワックス 34質量部
酢酸ビニルーエチレン共重合体 10質量部
ステアリン酸ナトリウム 3質量部
【0026】
(テストに用いる標準リボンの作製)
2段のグラビアコーターを用いて、市販のポリエステルフィルム(東洋紡績製、E5100、厚み12μm)のコロナ放電処理面にインク層コート材(液温:85℃)を塗布後、フィルムを冷却し、ついで、6インチ紙管に巻き取りリボンロール(インク層の厚み:4μm)を得た。このフィルムロールから100mm×200mmのフィルム片(200mmがフィルムの長手方向)を切り出し標準リボンとした。
【0027】
(インク剥離強度の試験方法)
実施例および比較例で得られたポリエステルフィルムから切り出したサンプル(110mm×200mm、200mmがフィルムの長手方向)と上記の標準リボンをヒートシールテスター(テスター産業製、TP−701−B)を用いて100℃、0.2MPa、1秒の条件で長手方向と直角に20mmピッチで5箇所ヒートシールした後、中央部の50mm×200mmを測定サンプルとした。この測定サンプルを23℃、65%RHの環境下において、引張り試験機(東洋ボールドウイン製、テンシロンHTM−100)を用いて、チャック間距離30mm、引張り速度200mm/分でT型剥離させ、実施例および比較例で得られたポリエステルフィルムからインクが剥離する強度(n=5の平均値)を求めた。○を実用性ありと判断した。
【0028】
○: 剥離強度が59mN/50mm幅未満。
△: 剥離強度が60mN/50mm幅以上69mN/50mm幅未満。
×: 剥離強度が69mN/50mm幅以上。
【0029】
実施例および比較例に用いたポリエステル原料の種類、第1段目延伸の延伸倍率、第1段目延伸後の熱処理条件、第2段目延伸の延伸倍率、第3段目延伸の延伸倍率、ポリエステルフィルムの表面の最大高さ(平均Rt)と横方向における105℃の熱収縮率(HS)、印刷適性を表1に示す。
【0030】
実施例および比較例に用いたポリエステル原料A、Bは、下記に示すものを使用した。
(1)ポリエステルA
ポリエステルAは、ガラス転移温度が74℃で、かつ平均粒径が3.5μmの凝集シリカを800ppm、平均粒径が0.8μmのカオリンを1700ppm、平均粒径が0.8μmの合成炭酸カルシウムを500ppm含有し、かつ固有粘度(IV)が0.57dl/gであるポリエチレンテレフタレートである。
(2)ポリエステルB
ポリエステルBは、ガラス転移温度が74℃で、かつ平均粒径が1.3μmの凝集シリカを1000ppm含有し、かつ固有粘度(IV)が0.60dl/gであるポリエチレンテレフタレートである。
【0031】
[実施例1]
ポリエステル原料としてポリエステルAを、120℃で24時間減圧乾燥(1.3hPa)し、単軸押出機を用いて280℃で溶融させた後、45cm幅のTダイより冷却ロール(周速50m/分)上へキャストして(冷却ロール周面に対向するように設置した直径が30μmのタングステンワイヤー電極から7.2kVの電圧を印加し、0.2mAの電流を流して静電密着させて)未延伸シートを得た。該未延伸シートをテンターで予熱温度96℃、延伸温度92℃で横方向に3.8倍延伸し(第1段目延伸)、78℃で1秒間熱処理し、予熱温度80℃、延伸温度105℃で縦方向に4.0倍延伸し(第2段目延伸)、220℃で1.05倍再横延伸し(第3段目延伸)、226℃で定長巾熱処理した後、226℃で横方向に2.0%、次いで、150℃で横方向に1.6%緩和処理して、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0032】
本実施例1で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すとおり、フィルム表面の最大高さ(Rt)が5.6μmであり、インク剥離性に優れており、感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムとして好適であった。
【0033】
[実施例2]
実施例1において、ポリエステル原料としてポリエステルBを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
本実施例2で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すとおり、フィルム表面の最大高さが5.4μmであり、インク剥離性に優れており、感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムとして好適であった。
【0034】
[実施例3]
実施例1において、第1段目の横延伸の延伸倍率を3.5倍、第3段目の横延伸倍率を1.15倍とした以外は実施例1と同様にして、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
本実施例3で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すとおり、フィルム表面の最大高さが5.9μmであり、インク剥離性に優れており、感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムとして好適であった。
【0035】
[実施例4]
実施例1において、第1段目の横延伸と第2段目の縦延伸の間の熱処理工程において、熱処理温度を82℃とした以外は実施例1と同様にして、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
本実施例4で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すとおり、フィルム表面の最大高さ(Rt)が6.3μmであり、インク剥離性に優れており、感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムとして好適であった。
【0036】
[比較例1]
実施例1において、第1段目の横延伸と第2段目の縦延伸の間の熱処理工程において、熱処理温度を70℃とした以外は実施例1と同様にして、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
本比較例1で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すとおり、フィルム表面の最大高さが4.6μmであり、インク剥離性に劣っており、感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムとして好ましくなかった。
【0037】
[比較例2]
実施例1において、第1段目の横延伸と第2段目の縦延伸の間の熱処理工程において、熱処理を実施しなかった以外は実施例1と同様にして、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
本比較例2で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すとおり、フィルム表面の最大高さ(Rt)が4.3μmであったため、インク剥離性に劣り、感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムとして好ましくなかった。
【0038】
[比較例3]
実施例1において、第1段目の横延伸と第2段目の縦延伸の間の熱処理工程において、熱処理温度を100℃とした以外は実施例1と同様にして、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得ようとした。しかしながら、第2段目の縦延伸においてフィルムが破断する頻度が多く、感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムを連続的に製造することが困難であった。
【0039】
【表1】

【0040】
以上、本発明の感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲において、明細書に開示した材料、製造条件を適宜組み合わせることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の方法で製造された感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムは、感熱転写リボンへの加工工程や印字の際に破断や皺等が発生しにくい。さらに、感熱転写リボンに用いた場合、サーマルヘッドの加熱により受像紙に溶融転写させた際の印字性に優れている。即ち、本発明は、フィルムからのインクの転写性に優れた、感熱転写記録材用ポリエステルフィルムを製造するための方法として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを溶融押出後、冷却ロールで固化したシートをまず横方向に第1段目の延伸を行い、次いで巾方向に定長下熱処理した後、縦方向に第2段目の延伸を行い、次いで140〜230℃で巾方向に定長下熱固定処理し、さらに140〜230℃で幅方向に1〜8%の緩和処理を行う感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であって、
第1段目の横延伸と第2段目の縦延伸の間における熱処理をポリエステルのガラス転移温度〜ガラス転移温度+20℃の温度で0.5〜3秒間行って、フィルム表面の最大高さ(Rt)を5.0〜7.0μmとすることを特徴とする感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。