説明

感知装置

【課題】内部に形成された通流空間の空間形状を維持しつつ、圧電センサーとこの上に載置された空間形成部材とを互いに密着させた状態で保持する感知装置を提供する。
【解決手段】圧電センサー7の圧電振動子72に設けられた吸着層へ感知対象物が吸着されることによる発振周波数の変化に基づいて感知対象物を感知する感知装置1において、保持部材6は、圧電センサー7、及びその上面側に試料流体を通流させるための通流空間を形成する空間形成部材73を上下に積層した状態で保持する。カバー部材51は前記空間形成部材73の上に載置され、第1の昇降機構3によって昇降する押圧部35は、空間形成部材73上に載置されたカバー部材51を予め設定された力で下方側に向けて押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子を備えた圧電センサー用いて感知対象物を感知する感知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子などの圧電振動子を発振回路に接続し、圧電振動子に設けた励振電極への感知対象物の付着に起因する発振周波数(共振周波数)の変化を検出して感知対象物を検知する圧電センサーが知られている。圧電センサーは感知対象物を含む試料流体の供給、排出系統や発振回路を備えた感知装置に装着されて使用されるが、感知装置への試料流体の供給法としてはフローセル方式が知られている。
【0003】
フローセル方式は、感知装置に試料流体の供給、排出路を備えたフローセルを設け、このフローセルに形成された空間内に圧電振動子を配置し、この空間を試料流体の通流空間として圧電振動子の表面に試料流体を連続的に供給する方式である(例えば特許文献1)。フローセル方式の感知装置は、試料流体を連続して供給できるので、周波数特性を安定化させることが容易であり、また液体の置換をスムーズに行うことができることから試料流体の使用量が少なくて済むという利点がある。
【0004】
このようなフローセル方式の感知装置では、圧電センサーをフローセルに配置し、当該圧電センサーに設けられた圧電振動子の電極の端子を発振回路に接続して圧電センサーを感知装置に装着する作業が必要となる。従来、こうした装着作業はユーザーが手作業で行っていたが、装着不良により良好な感知結果を得られないといった現象を回避し、また装着作業の時間を削減するため、圧電センサーを装着する工程の自動化が求められている。
【0005】
また本発明者らは、フローセルに通流させる試料流体の量を極力少なくするために、サブミリメートル〜1mm程度の浅い凹部が形成されたチップを圧電センサーに押し当てることにより、当該圧電センサーと空間形成部材であるチップとの間に試料流体を通流させるための通流空間であるマイクロ流路を形成する技術を開発している。
【0006】
本発明者らは、圧電センサーとの間での密着性を高めるために、シリコンゴムなどの弾性材料を用いて前記チップ(以下、マイクロ流路チップという)を構成し、このマイクロ流路チップを上面側から押圧することを検討している。このようなマイクロ流路チップが載置された圧電センサーを感知装置に自動的に装着する場合には、マイクロ流路からの試料流体の漏れを防止し、かつ、当該マイクロ流路をつぶしてしまわないように、適切な力でマイクロ流路チップを圧電センサーに密着させる技術が重要となる。
【0007】
特許文献2には、左右方向に開閉可能な開閉部(特許文献2の明細書では「第二部分」と記載。以下の特許文献2の引用においては括弧内に明細書中の名称を記す)の間に、圧電センサーを挿入するための筐体(センサー素子を受容するための手段)を備えた本体部(第一部分)を配した感知装置が記載されている。この筐体には、筐体内に挿入された圧電センサーの圧電振動子の位置に対応して開口部が形成されており、開閉部の一方側には、この開口部内に嵌合可能なフローセル(フローセル素子)が設けられている。そして前記筐体内に圧電センサーを挿入したあと、本体部を左右から挟むように開閉部材を閉位置に移動させることにより筐体の開口部内にフローセルを嵌合させて圧電振動子に試料流体を供給することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−183479号公報:段落0002、段落0024、図2
【特許文献2】特表2006−510901号公報:請求項1、段落0026、図2、図4、図9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載の感知装置では、圧電センサーを格納した筐体にフローセルを接続する操作は自動化されているが、この筐体内に圧電センサーを配置する手法については記載されていない。従って、この操作を手作業により行う場合には、依然として作業ロスや装着不良の問題が残されている。
【0010】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、内部に形成された通流空間の空間形状を維持しつつ、圧電センサーとこの上に載置された空間形成部材とを互いに密着させた状態で保持する感知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る感知装置は、測定器本体に設けられた接続部を介して圧電センサーの圧電振動子を発振回路に接続し、前記圧電振動子の上面に設けられた吸着層へ感知対象物が吸着されることによる当該圧電振動子の発振周波数の変化に基づいて感知対象物を感知する感知装置において、
前記接続部に対して圧電振動子が着脱自在な状態となるように圧電センサーを保持すると共に、この圧電センサーの上に載置されることにより前記圧電振動子の上面側に試料流体を通流させるための通流空間を形成し、試料流体の供給孔及び排出孔が設けられた弾性材料からなる空間形成部材を、前記圧電センサー上に積層された状態で保持する保持部材と、
前記供給孔と連通される試料流体の供給路を備えた試料流体供給部、及び前記排出孔と連通される試料流体の排出路を備えた試料流体排出部と、
圧電振動子が前記接続部に接続された状態にて空間形成部材の上に載置されるカバー部材と、
空間形成部材の上に載置された前記カバー部材を、当該空間形成部材に向けて予め設定された力で押圧するための押圧部と、
この押圧部にて前記カバー部材を押圧する押圧位置と、当該押圧位置から退避して当該カバー部材を押圧された状態から解放する解放位置との間で前記押圧部を昇降させるための第1の昇降機構と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
前記感知装置は、以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記試料流体供給部及び試料流体排出部は、前記カバー部材と共通化されていること。
(b)前記押圧部は、前記カバー部材を押圧する方向へ付勢されたバネ部材とこのバネ部材の先端部に設けられ、当該カバー部材に当接する当接部材とを含むこと。
(c)空間形成部材の上に前記カバー部材を載置する載置位置と、この載置位置から退避して前記保持部材に保持された圧電センサーを接続部から着脱可能にする着脱位置との間で当該カバー部材を昇降させるための第2の昇降機構を備えたこと。
(d)前記第1の昇降機構と第2の昇降機構とは共通化されていること。
(e)前記接続部の手前側に設定され、前記保持部材に圧電センサーを保持させるための保持位置と、圧電振動子が前記接続部に接続された状態で当該圧電センサーを測定器本体に装着するための接続位置との間で前記保持部材を前後に水平方向に移動させる移動機構を備えたこと。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、圧電振動子が設けられた圧電センサーと、この圧電センサーの上に載置され、前記圧電振動子の上面側に試料流体を通流させるための通流空間を形成する空間形成部材とを、上下に積層した状態で保持部材に保持し、当該空間形成部材を圧電センサーと密着させるためのカバー部材を空間形成部材の上に載置する際に、当該カバー部材を予め設定された力で押圧する押圧部を備えている。このため前述の予め設定された力を適切に調整することにより、圧電センサーと空間形成部材とを互いに密着させて通流空間からの試料流体の漏れ出しを防止すると共に、弾性材料からなる前記空間形成部材の過度の変形を抑制し、前記通流空間がつぶれて試料流体を通流させることができなくなったり、感知特性が変化したりするといった不具合の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る感知装置の外観構成を示す斜視図である。
【図2】前記感知装置の内部構成を示す斜視図である。
【図3】前記感知装置に設けられているシャーシ部を示す外観斜視図である。
【図4】前記感知装置に設けられるフローセルベース及びその移動機構の構成を示す斜視図である。
【図5】前記感知装置に設けられているフローセルカバー及びその昇降機構を示す一部破断斜視図である。
【図6】前記フローセルカバー及びその昇降機構を示す一部縦断側面図である。
【図7】前記フローセルカバーの押圧部を構成するスプリングプランジャーの構成を示す縦断側面図である。
【図8】前記フローセルベース、フローセルカバー及びこれらの間に取り付けられる圧電センサーの構成例を示す分解斜視図である。
【図9】前記フローセルベースの側面図である。
【図10】前記圧電センサーに設けられる圧電振動子の構成例を示す説明図である。
【図11】前記圧電振動子が発振回路部に接続された状態を示す説明図である。
【図12】前記圧電センサーとフローセルカバーとの間に試料流体の通流空間を形成するためのマイクロ流路チップの外観構成を示す斜視図である。
【図13】前記フローセルベース、フローセルカバー及びこれらの間に装着される圧電センサーの他の構成例を示す分解斜視図である。
【図14】前記感知装置に設けられた移動機構及び昇降機構に係る電気的構成を示すブロック図である。
【図15】前記感知装置の作用を示す第1の説明図である。
【図16】前記感知装置の作用を示す第2の説明図である。
【図17】前記感知装置の作用を示す第3の説明図である。
【図18】前記感知装置の作用を示す第4の説明図である。
【図19】前記フローセルカバーの他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る感知装置の例として、圧電振動子である水晶振動子72を備えた圧電センサー7を自動的に装着する機構を備えた感知装置1の構成について図1〜図14を参照しながら説明する。図1及び図2に示すように、感知装置1は圧電センサー7を発振させる後述の発振回路部81a、81bを格納したシャーシ部41と、このシャーシ部41へ向けて圧電センサー7を保持した保持部材であるフローセルベース6を水平方向に移動させる移動機構2と、圧電センサー7との間に試料流体の通流空間を形成する空間形成部材であるマイクロ流路チップ73やゴムパッキン73aを圧電センサー7の板面に押し当てて固定するフローセルカバー51と、このフローセルカバー51を昇降させる昇降機構3と、を備えており、これらは共通の基台11に配置されている。以下、図1〜図4、図9、図15〜16の各図においては、図面に向かって左手を手前側、右手を奥手側として説明を行う。
【0016】
図3は、基台11からシャーシ部41を取り外した状態を示しており、シャーシ部41は金属製の筐体として構成されている。シャーシ部41の手前側の側壁面には、圧電センサー7を挿入するための接続口411が設けられており、接続口411内には圧電センサー7を発振回路部81a、81bに接続するための接続部をなす端子部412が配置されている(図14参照)。
【0017】
図3に示すように、接続口411の手前側には、接続口411の下端部を基点として手前側へ向けて水平方向に伸びる板状の部材からなる案内部材42が配置されている。案内部材42は、その上面が平坦に加工されており、圧電センサー7を保持した後述のフローセルベース6は、この案内部材42の上面に載置された状態で接続口411に向けて移動するようになっている。さらに案内部材42の手前側の先端部の上面には、手前側から奥手側へ向けて徐々に高くなるように形成された傾斜面からなる案内面421が設けられている。
【0018】
シャーシ部41の下面には、水晶振動子72や通流空間内を流れる試料流体の温度を一定に保つために、フローセルベース6などを介して圧電センサー7に接するシャーシ部41や案内部材42の温度を調節するためのペルチェ素子43が設けられている。ペルチェ素子43は不図示の電源部及び後述の制御部8に接続されており、不図示の熱電対などによってシャーシ部41や案内部材42の温度を検出した結果に基づいて電源部から印加される電力を増減することによりペルチェ素子43の吸熱面からの吸熱量が調節され、シャーシ部41や案内部材42を介して水晶振動子72や試料流体の温度を一定に保つことができる。
【0019】
図3中、442はペルチェ素子43の放熱面から受け取った熱を放熱するための放熱体であり、放熱体442には放熱効率を高めるための多数のフィン443が設けられている。また441はペルチェ素子43の放熱面から放熱体442へ熱を伝える伝熱板である。
ここで水晶振動子72の温度を一定に保つための温度調節機構はペルチェ素子43を利用する場合に限られず、設定温度によってはテープヒーターなど加熱手段を用いてもよい。
【0020】
本例の感知装置1は、図2に示すようにシャーシ部41を基台11の上面側に突出させ、伝熱板441や放熱体442を基台11の下面側に位置させている。また図1に示すようにシャーシ部41は、昇降機構3の回転モーター314などを支える筐体12内に配置されている。
【0021】
次いで移動機構2について説明する。図2に示すように基台11の上面側に突出して配置されたシャーシ部41を手前側から見ると、その左右両脇には、シャーシ部41の左右の両側壁に沿って前後方向に伸びる2本のアーム部材212が配置されている。図4に示すようにこれらのアーム部材212は、手前側の先端位置に設けられた支持板24及び奥手側の後端位置に設けられた連結部材214によって互いに連結されている。ここで先端位置にて2本のアーム部材212を連結する支持板24は、圧電センサー7を保持するフローセルベース6を下面側から支持する役割を果たすが、その詳細についてはフローセルベース6の構成と併せて後述する。
【0022】
各アーム部材212には、シャーシ部41を挟んで外側の側面にレール部材211が取り付けられており、これらのレール部材211は基台11上に配置されたガイド部22にガイドされて前後方向に移動することができるようになっている。ガイド部22はレール部材211を上下から挟み、レール部材211の移動方向を回転しながらガイドするガイドホイール222とこのガイドホイール222を支持する支持部材221とを備えている。図2に示すようにガイド部22は、シャーシ部41を挟んで左右に2個ずつ、レール部材211の移動方向に沿って前後に配置されている。
【0023】
図4に示すように2本のアーム部材212の一方側、例えば手前側から見て右手側のアーム部材212の下面にはラックギア213が形成されており、このラックギア213は基台11の下面側に配置されたピニオン部材231と歯合してピニオンラック機構を形成している。ピニオン部材231はさらに回転モーター235によって回転する歯車部233と歯合しており、この歯車部233を回転させることにより、ピニオン部材231を介してアーム部材212を移動させることができる。
【0024】
また回転モーター235は歯車部233の回転方向を切り替えることが可能であり、これによりアーム部材212の移動方向を切り替えられる。図中、232はピニオン部材231の回転軸、234は歯車部233の回転軸であり、236はこれら回転軸232、234や回転モーター235を支持する支持台である。
【0025】
図4に示すように、後端位置にて2本のアーム部材212を連結する連結部材214には、下方側へ向けて伸びる突片部215が設けられている。一方、手前側から見て左手側のアーム部材212のほぼ中央部にはアーム部材212の下縁側を切り欠いて形成された切り欠き部216が設けられている。これに対して図2に示すように基台11上には、アーム部材212の移動に伴って前後方向に移動する突片部215の軌道上に例えば赤外線式の遮蔽型センサー13が配置されている。また左手側のアーム部材212の移動軌道上には例えば赤外線式の透過型センサー14が配置されている。
【0026】
そしてアーム部材212を奥手側から手前側へと前方へ移動させることにより突片部215が遮蔽型センサー13に到達すると、当該突片部215によって赤外線の導通状態が遮蔽される。この導通状態の変化は後述の制御部8に出力され、この状態変化に基づいて制御部8から回転モーター235へ停止信号が出力されることによりアーム部材212の前方移動を停止することができる。このときアーム部材212の先端に設けられた支持板24の停止している位置は、当該支持板24上に支持されるフローセルベース6への圧電センサー7の保持位置となる。
【0027】
一方、アーム部材212を手前側から奥手側へと後方へ移動させることにより切り欠き部216が透過型センサー14に到達すると、アーム部材212によって遮蔽されていた赤外線が導通状態となる。この状態変化は後述の制御部8に出力され、この状態変化に基づいて制御部8から回転モーター235へ停止信号が出力されることによりアーム部材212の後方移動が停止されることとなる。このとき支持板24に支持されたフローセルベース6はフローセルカバー51の下方位置で停止し、この位置がフローセルベース6に保持された圧電センサー7を発振回路部81a、81bへと接続する接続位置となる。
【0028】
次に図5を参照しながらフローセルカバー51を昇降させるための昇降機構3の構成について説明する。後で詳しく説明するようにフローセルカバー51は、ほぼ直方体形状の部材として構成され、接続位置まで移動してきたフローセルベース6の上面に載置される。手前側から見てフローセルカバー51の左右両側には、フローセルカバー51を昇降させるための支持部材331が上下方向に伸びるように設けられており、各支持部材331の下端部にはフローセルカバー51を下面側から支持するために内側に折れ曲がったチャック部334が形成されている。
【0029】
このチャック部334上にフローセルカバー51を載置することにより、フローセルカバー51は支持部材331に支持され、この支持部材331の昇降動作に伴ってフローセルカバー51を昇降させることができる。図2、図5、図6等に示すように支持部材331には、フローセルカバー51の下に配置されるマイクロ流路チップ73に向けて当該フローセルカバー51を押圧するための押圧部をなすスプリングプランジャー35が設けられている。ここで図6においては、フローセルカバー51、マイクロ流路チップ73、圧電センサー7、及びフローセルベース6は縦断面を示してある。
【0030】
図2に示すようにスプリングプランジャー35は、平面形状がコの字に形成されたホルダー36の四隅に各々1個ずつ設けられている。そしてコの字の切り欠き部分を手前側に向けて前記ホルダー36を支持部材331に固定することにより、下端部の高さ位置が揃った状態でこれら4つのスプリングプランジャー35を同時に昇降させ、フローセルカバー51の上面を均一な力で押圧することができる。
【0031】
図7に示すようにスプリングプランジャー35は、下端面が開口する円筒形状のプランジャー本体351の内部にバネ部材352を設け、このバネ部材352の下端部に、先端部が半球状に丸め加工された円柱状の当接部材353を設けた構造となっている。バネ部材は、当接部材353を下方側へ向けて押し出す方向に付勢されており、負荷が加わっていない状態において当接部材353は、図7に示すようにプランジャー本体351の開口部から下半分が突出した状態となっている。
【0032】
そしてこのように当接部材353の下端部がプランジャー本体351から突出した状態から、当該当接部材353の全体がプランジャー本体351の内部に収納されるまでの移動範囲内においては、当接部材353はバネ部材352のバネ定数に応じた一定の力でフローセルカバー51を下方側へ向けて押圧することができる。
【0033】
また図6に示すようにフローセルカバー51を下面側から支持するチャック部334の上面と、当該フローセルカバー51を上面側から押圧するスプリングプランジャー35の下端部との間の距離は、これらチャック部334やスプリングプランジャー35と接するフローセルカバー51の上下面間の距離よりも長くなっている。このため図6に示したようにフローセルカバー51がマイクロ流路チップ73上に載置されると、チャック部334はフローセルカバー51から離れて下方側まで移動し、このチャック部334に替わってスプリングプランジャー35がフローセルカバー51を上面側から押圧する状態となる。この結果、スプリングプランジャー35がフローセルカバー51を押圧する力の殆ど全てがマイクロ流路チップ73を圧力センサー7に向けて密着させる力として利用される。
【0034】
昇降機構3全体の説明に戻ると、図5に示すように各支持部材331の上端部にはクランク軸332が設けられており、このクランク軸332はアーム部材321の軸受け孔322内に挿入されている。アーム部材321は、クランク軸332の設けられている位置から奥手側へ向けて伸びだしており、その後端部にて回転軸313に接続されている。回転軸313は2本のアーム部材321を貫くように左右方向に伸びており、アーム部材321はこの回転軸313の左右両端部に配置されている。
【0035】
さらにこの回転軸313には、左右両端部に配されたアーム部材321に挟まれた中間位置にウォームホイール312が設けられている。ウォームホイール312にはウォーム311が歯合しており、これらのウォーム311及びウォームホイール312によりウォームギア機構が構成されている。ウォーム311は回転モーター314によって回転駆動され、当該ウォーム311の回転によってウォーム311に歯合するウォームホイール312が回転し、回転軸313を介して当該ウォームホイール312に連結されているアーム部材321を回転軸313周りに回転させる。
【0036】
そしてアーム部材321の回転動作がクランク軸332を介して支持部材331の昇降動作に変換され、当該支持部材331に支持されたフローセルカバー51をフローセルベース6(圧電センサー7)上の載置位置と、この載置位置から上方側へ退避して、フローセルベース6に保持された圧電センサー7を端子部412から着脱可能にする着脱位置との間で昇降させることができる。さらにフローセルカバー51の昇降動作と並行して支持部材331は、フローセルカバー51を押圧する押圧位置と、当該押圧位置から上方側に退避して前記フローセルかバー51を押圧された状態から解放する解放位置との間でスプリングプランジャー35を昇降させる役割も果たしている。上述の観点において昇降機構3は、スプリングプランジャー34の昇降を行うための第1の昇降機構としての機能及びフローセルカバー51の昇降を行うための第2の昇降機構としての機能が共通化されているといえる。
【0037】
ここで前記アーム部材321に設けられ、クランク軸332が貫通している軸受け孔322は回転軸313を中心として形成される円の半径方向に向けて細長く形成されている。これによりアーム部材321の回転動作を支持部材331の昇降動作に変換する際にクランク軸332が軸受け孔322と干渉することなく当該軸受け孔322内を自由に移動することができるようになっている。
【0038】
また図中の323は左右のアーム部材321を連結する連結部材である。図6に示すように、この昇降機構3についても例えば遮蔽形センサーからなる上限センサー372並びに下限センサー373が設けられている。そして支持部材331に接続されたL字型の作動片を当該支持部材331の昇降動作に伴って昇降させ、各センサー372、373を作動させることにより、回転モーター314の駆動を停止する構成となっている。これによりフローセルカバー51並びにスプリングプランジャー35を予め定めた位置まで上昇させ、またマイクロ流路チップ73上に載置されたフローセルカバー51の上面側にてスプリングプランジャー35を予め定めた位置まで降下させることができる。なお図6では作動片371の先端部は、図面と直交する方向に手前側から奥手側へ向けて伸び出しており、当該先端部は作動片371の基端部に隠れて見えない。
【0039】
また図5中、342は各支持部材331の左右外側位置に上下方向に伸びるように配置され、支持部材331の昇降軌道をガイドするガイドレール、341は当該ガイドレール342を基台11上に固定する支柱部材である。そして各支持部材331の支柱部材341と対向する面には、ガイドレール342を前後両側から挟み込むように走行ホイール333が設けられており、支持部材331の昇降動作の際にこれらの走行ホイール333がガイドレール342に沿って回転しながら走行することにより支持部材331の昇降方向がガイドされる。
【0040】
次に、図8〜図12を参照しながら圧電センサー7、この圧電センサー7を保持するフローセルベース6、圧電センサー7との間に試料流体の通流空間を形成するマイクロ流路チップ73、このマイクロ流路チップ73を圧電センサー7の板面に向けて押し当てて固定するフローセルカバー51の構成について各々説明する。図8は、下方側から順に、フローセルベース6、圧電センサー7、水晶振動子72、フローセルカバー51を示している。
【0041】
フローセルベース6は金属などからなる角板状の小片から構成され、2本のアーム部材212の先端部に設けられた支持板24の上面に配置可能な大きさに形成されている。フローセルベース6はベース本体部61及び突片部62から構成され、ベース本体部61には圧電センサー7を配置するための凹部63が形成されている。突片部62はこの凹部63から横方向に突出するように形成されており、当該突片部62には圧電センサー7の後方部分が載置される(図8、図9)。この突片部62の下面には、当該突片部62が突出する方向(フローセルベース6を昇降機構3に取り付けたときの手前側から奥手側へ伸びる方向に相当する)へ向けて徐々に高くなる傾斜面からなる被案内面621が形成されている。
【0042】
図8、図9に示すようにベース本体部61の側面には、フローセルベース6をアーム部材212に取り付けるための取り付けネジ穴641が形成されている。そして図4に示すごとく突片部62を奥手側に向けて、支持板24上にフローセルベース6を配置し、アーム部材212側から取り付けネジ穴641内に取り付けネジ25を挿入することによりフローセルベース6が移動機構2に取り付けられる。図9に示すように取り付けネジ穴641は上下方向に細長い長穴状に形成されており、この長穴内に取り付けネジ25を挿入することによりフローセルベース6は上下方向に移動可能な遊びを持って移動機構2に取り付けられることになる。
【0043】
ベース本体部61の側壁面には、上述の取り付けネジ穴641を挟むようにして手前側と奥手側の位置に、当該側壁面を下面側へ向けて切り欠いた切り欠き部642が形成されている。一方、図4に示すようにアーム部材212に取り付けられた支持板24の内側面には、これら切り欠き部642へ向けて突出する突起部26が設けられており、これらの突起部26が切り欠き部642に挿入される。
【0044】
ここで、これら突起部26は取り付けネジ25よりもやや低い高さ位置に配置されており、また図4に示すようにフローセルベース6を支える支持板24は奥手側の部分が四角く切り欠かれている。これらの構成により、取り付けネジ25にてフローセルベース6をアーム部材212に取り付けると、突片部62側が重くなっているフローセルベース6は取り付けネジ25周りに突片部62の設けられている方向へと回転することになる。しかしながら取り付けネジ25の奥手側には突起部26が設けられているのでフローセルベース6の回転は当該突起部26が切り欠き部642の上端と接触する位置にて規制され、結果として図15(a)に示すように奥手側へ向けて傾いた状態で停止する。
【0045】
またフローセルベース6の底面は、支持板24の切り欠きに対応して下方側に突出した領域が設けられており、さらに既述のようにフローセルベース6は上下方向に移動可能な遊びを持たせてアーム部材212に取り付けられている。これらの構成により突片部62側を持ち上げてフローセルベース6を水平な状態にすると支持板24の切り欠きから、フローセルベース6の下面が突出した状態となり、フローベース6を案内部材42上に載置した状態とすることができる。
さらに図8に示においてフローセルベース6の凹部63内に配置された631は圧電センサー7やマイクロ流路チップ73の位置合わせを行うための位置合わせピンである。また凹部63の左右に設けられた65は、フローセルカバー51側に設けられたガイドシャフト514を挿入して、フローセルベース6に対するフローセルカバー51の位置決めを行うための位置決め孔である。
【0046】
圧電センサー7は、配線基板71上に水晶振動子72を配置することにより構成され、図10に示すように水晶振動子72は、圧電片である円形板状の水晶片721の表裏両面の中央部に、水晶片721を励振させるための励振電極722、723、726、727を設けてなる。図10(a)は水晶振動子72の表面を上面側から見た平面図であり、水晶片721には、Y方向(手前側から感知装置1を見たときの左右横方向に相当する)に伸びる短冊状の2つの励振電極722、723が間隔を空けて互いに平行に配置されている。これら2つの励振電極722、723は接続線724によって互いに接続され、この接続線724からは励振電極722、723の長手方向と同じ方向へ向けて引き出し電極725が引き出されており、当該引き出し電極725は水晶片721の裏面側へ向けて延びだしている。
【0047】
図10(b)は水晶振動子72の裏面を下面側から見た平面図であり、表面側の各励振電極722、723と各々対向する位置に短冊状の励振電極726、727が配置されている。各励振電極726、727からはこれら励振電極726、727と直交する方向に向けて引き出し電極728、729が互いに反対向きに引き出されている。
【0048】
図11に示すように上下に対向する一方側の励振電極722、726及びこれらに挟まれた水晶片721は第1の振動領域70aを形成し、他方側の励振電極723、727及びこれらに挟まれた水晶片721は第2の振動領域70bを形成している。そして、これらの振動領域70a、70bは互いに弾性的に絶縁されており、各々の振動領域70a、70bが独立した水晶振動子として作用する。そして例えば第1の振動領域70aの表面側の励振電極722には感知対象物を吸着するための吸着層720が形成される一方、第2の振動領域70bには吸着層720を設けず、リファレンス電極として用いられる。そして感知対象物が吸着する第1の振動領域70aからの発振周波数と感知対象物が吸着しない第2の振動領域70bからの発振周波数との差分を取ることにより、試料流体の粘度変化や感知対象物以外の物質の付着による周波数変化の影響が差し引かれ、吸着層720への感知対象物の吸着のみに起因する発振周波数の変化(発振周波数の低下)を検出することができる。
【0049】
図8に示すように配線基板71はフローセルベース6の凹部63内に配される前方部分が同じくフローセルベース6の突片部62上に配置される後方部分よりも幅広のプラカード形状に加工されたプリント基板であり、その前方部分には水晶振動子72の自由な振動を確保するための貫通孔711が形成されている。水晶振動子72はこの貫通孔711を覆うように配線基板71上に固定され、各励振電極722、726、723、727は貫通孔711の輪郭の内側に配置される。
【0050】
貫通孔711の周囲には、水晶振動子72の裏面側に引き出された各引き出し電極725、728、729に接続される電極部712〜714が互いに間隔をおいて配置されている。本例では、配線基板71の前方部分の手前側に配置された電極部712が水晶振動子72の裏面側の励振電極726の引き出し電極728と接続され、奥手側に配置された電極部714が同じく水晶振動子72の裏面側の励振電極727の引き出し電極729と接続されている。またこれら2つの電極部712、714の中間位置に配置された電極部713は、表面の励振電極722、723に接続され、裏面側まで引き出された引き出し電極725と接続されている。
【0051】
各電極部712〜714は配線基板71の奥手側へ向けて引き出されていて、配線基板71の後端部にはこれらの電極部712〜714に接続された端子部715〜717が形成されている。そしてこれら端子部715〜717が設けられた配線基板71の後端部分をシャーシ部41の接続口411内に挿入することにより圧電センサー7が感知装置1に接続されることになる。端子部715〜717は本実施の形態の被接続端子に相当する。また配線基板71に形成されている718はフローセルベース6側の位置合わせピン631を挿入することにより圧電センサー7の固定及び位置合わせを行う位置合わせ孔である。
【0052】
ここで図11に示したブロック図を参照しながら圧電センサー7が接続された状態における感知装置1の電気的な構成について説明しておく。接続口411に挿入された配線基板71の各端子部715〜717は、シャーシ部41側の端子部412と接続され、これにより本例では第1の振動領域70aの裏面側の励振電極726は第1の発振回路部81aに接続され、また第2の振動領域70bの裏面側の励振電極727は第2の発振回路部81bに接続される。また両振動領域70a、70bの表面側の励振電極722、723は接地される。
【0053】
第1の発振回路部81aは第1の振動領域70aと接続されてコルピッツ回路などの発振回路が形成される構成を備えており、独立した水晶振動子として作用する第1の振動領域70aから発振周波数を取り出すことができる。また第2の発振回路部81bについても同様に、第2の振動領域70bと接続されて発振回路が形成され、第2の振動領域70bの発振周波数を取り出すことができる。これらの発振回路部81a、81bは切り替えスイッチ部821を介して周波数測定部82に接続されており、周波数測定部82は切り替えスイッチ部821にて時分割された周波数信号を取得することができる。
【0054】
そして例えば1秒間をn分割(nは偶数)し、各チャンネルの発振周波数を1/n秒の処理で順次求めることにより、厳密には完全に同時に測定しているわけではないが、1秒間に少なくとも1回以上周波数信号を取得しているため、各振動領域70a、70bの発振周波数を実質的に並行して取得することが可能となる。
【0055】
周波数測定部82で取得された各振動領域70a、70bの発振周波数は、パーソナルコンピュータ100などの解析装置へと出力される。解析装置では第1の振動領域70aと第2の振動領域70bとの発振周波数の差分を取ることにより、試料流体の粘度変化や感知対象物以外の物質の付着による周波数変化の影響が取り除かれる。そのうえで、試料流体の供給前後の発振周波数周波数を計測することにより、感知対象物の吸着のみに起因する発信周波数の変化量を取得することができる。この変化量に基づいて試料流体中の感知対象物の濃度と発振周波数の低下量との対応関係を表す検量線を作成することが可能となり、また予め作成されていた検量線に照らし合わせて試料流体中の感知対象物の濃度を求めたり、感知対象物の有無を検出したりすることが可能となる。
【0056】
図8の説明に戻ると、フローセルベース6に保持された圧電センサー7の上面には、本実施の形態の空間形成部材を成すマイクロ流路チップ73が載置される。マイクロ流路チップ73はPDMS(ポリジメチルシロキサン)といったシリコンゴムなどの弾性材料にて構成される本実施の形態の空間形成部材に相当し、その前後方向及び左右方向の寸法は圧電センサー7の前方部分の寸法と揃えられているので、マイクロ流路チップ73は圧電センサー7上に載置した状態のままフローセルベース6の凹部63内に配置することができる。
【0057】
マイクロ流路チップ73は厚さが数mmの薄片状に加工され、その下面には図12に示すように凹部731が形成されており、この凹部731内に配線基板71上に配置された水晶振動子72を嵌合させ、水晶振動子72の上面(表面)を密閉することができる。さらにこの凹部731の内側には深さサブミリメートル〜1mm程度に形成された、試料流体の通流用の凹部732(以下、通流用凹部という)が形成されている。この通流用凹部732を備えたマイクロ流路チップ73を圧電センサー7上に配置することにより、マイクロ流路チップ73と水晶振動子72との間に、試料流体を通流させるための通流空間が形成される。
【0058】
通流用凹部732の平面形状は左右方向に長い扁平なひし形に形成され、当該ひし形の長軸方向の左右両端部には、通流空間内に試料流体を供給するための供給孔733及び通流空間から試料流体を排出するための排出孔734が形成されている。マイクロ流路チップ73と水晶振動子72との間に形成される通流空間は例えば数マイクロリットル程度の微小な空間なので、感知対象物を含む試料の量が少なくても希釈せずに試料流体を通流空間に供給することが可能となり、低濃度領域での感度を向上させることができる。
【0059】
また通流用凹部732の平面形状を扁平なひし形とすることにより、供給孔733から供給された試料流体はひし形の短軸方向に広がりながら長軸方向へと流れ、やがて短軸方向の流路幅が次第に狭まる流路に案内されるようにして排出孔734へ到達する。このように形成された通流空間においては、試料流体が到達しにくかったり、滞留しやすかったりする狭角部部分が流路上になく、また空間内を流れる試料流体の流線の向きの変化も小さい。このため、サブミリメートル程度の非常に狭い空間であっても空気溜まりなどが形成されにくく、通流空間内全体にスムーズに試料流体を広げることができる。
【0060】
ただし、通流用凹部732の平面形状は図12に示した扁平なひし形に限られるものではなく、空気溜まりなどが形成されにくい形状、例えば円形などであってもよい。
またマイクロ流路チップ73に形成されている位置合わせ孔735はフローセルベース6側の位置合わせピン631を挿入することによりマイクロ流路チップ73の固定及び位置合わせを行う位置合わせ孔である。
【0061】
次いでフローセルカバー51について説明する。図8に示すようにフローセルカバー51はほぼ直方体に形成された部材であり、その内部には試料流体供給用の供給路511及び排出用の排出路512が形成されている。これら供給路511及び排出路512は、フローセルカバー51の下面にて、マイクロ流路チップ73側に設けられた供給孔733及び排出孔734と接続可能な位置に開口している。
【0062】
圧電センサー7とマイクロ流路チップ73とを上下に重ねてフローセルベース6の凹部63に配置すると、マイクロ流路チップ73の上面はフローセルベース6の上面よりやや上方に突出した状態となる。このマイクロ流路チップ73の上面をフローセルカバー51の底面にて押さえつけ、マイクロ流路チップ73を圧電センサー7の板面へ向けて押し当てることによりマイクロ流路チップ73が固定され、通流空間が密閉されると共に、フローセルカバー51側の供給路511、排出路512が各々マイクロ流路チップ73側の供給孔733、排出孔734に接続される。これら供給路511、排出路512が形成されている点において、フローセルカバー51は、本実施の形態の試料流体供給部及び試料流体排出部としての機能を兼ね備えていることになる。
【0063】
但し、マイクロ流路チップ73の通流用凹部732と水晶振動子72との間に形成される通流空間の高さは既述のようにサブミリメートル程度と非常に狭く、且つマイクロ流路チップ73はシリコンゴムなどの弾性材料にて構成されているため、過度に強い力で押さえつけると通流空間が潰れてしまうおそれもある。そこで本例のフローセルカバー51は図5、図6を用いて説明したように昇降機構3側に設けられたスプリングプランジャー35を利用してフローセルカバー51を下方側へ均一な力で押さえつけることにより、通流空間を押し潰さないようにしつつ圧電センサー7に対するマイクロ流路チップ7の密着性を保っている。
【0064】
図8に示すようにフローセルカバー51の上面は、上面から見てコの字型の切り欠きが形成されており、スプリングプランジャー35を保持したホルダー36をこの切り欠きに嵌合させることができる。そしてこの切り欠きにより上下2段に形成されたフローセルカバー51の下段側の面にスプリングプランジャー35を当接させることにより当該フローセルカバー51をマイクロ流路チップ73側へ向けて押下することができる。
【0065】
また図6に示すようにフローセルカバー51の下面からは下方側へ向けて円柱状のガイドシャフト514が突出しており、フローセルカバー51をマイクロ流路チップ73に載置する際に、フローセルベース6に設けられた既述の位置決め孔65に当該ガイドシャフト515が挿入される。これにより、フローセルベース6に対するフローセルカバー51の位置決めが行われ、マイクロ流路チップ73側の供給孔733、排出孔734に対してフローセルカバー51側の供給路511、排出路512が各々連通した状態となる。
【0066】
フローセルカバー51の供給路511及び排出路512は図1に示すように各々供給管131及び排出管132に接続されており、供給管131は感知対象物を含む試料流体である試料溶液などを貯留した不図示の試料供給部に接続され、また排出管132は試料流体の排出先となる不図示の排出部に接続されている。試料供給部から通流空間への試料流体の供給は、シリンジポンプなどにより試料供給部側から試料流体を押し出すようにして供給してもよいし、真空ポンプなどにより排出部側から試料流体を引くことによって供給してもよい。
図1に示した133は、フローセルカバー51を昇降させても供給管131や排出管132が折れ曲がったり、互いに絡まったりしないように各配管131、132をガイドするガイド部材であり、134は、これらの配管を束ねて試料供給部や排出部側へ案内するクリップ部材である。
【0067】
以上、図8〜図12を参照しながらマイクロ流路チップ73を空間形成部材としてこのマイクロ流路チップ73をフローセルカバー51により圧電センサー7の板面に押し当てて固定する各部材6、7、73、51の構成について説明した。ここで本例に係る感知装置1はフローセルベース6、圧電センサー7、フローセルカバー51を取り替えることによって、マイクロ流路チップ73以外の空間形成部材を用いて試料流体の通流空間を形成することも可能である。
【0068】
例えば図13は、ゴムパッキン73aを用いて圧電センサー7aとの間に通流空間を形成する例を示している。図13中、図8に示したものと同様の構成要素については、当該図と同じ符号を付してある。図13に示した例ではゴムパッキン73aの中央部にはすり鉢状の傾斜面を有する貫通孔736が形成されており、フローセルベース6aに圧電センサー7を保持し、ゴムパッキン73aをフローセルカバー51aにて固定したとき、圧電センサー7の上面(水晶振動子72)と貫通孔736の側周面、及びフローセルカバー51aの下面との間に通流空間が形成される。ゴムパッキン73aを用いる例では、通流空間の容積は数十マイクロリットル程度とマイクロ流路チップ73の場合よりも大きくなっており、入手可能量が比較的多い試料流体や粘度が高く、マイクロ流路チップ73の狭い通流空間を通流させることが困難な試料流体などの分析を行う場合などに選択される。図13に示した例の場合には、ゴムパッキン73aが空間形成部材に相当し、当該ゴムパッキン73aの供給孔及び排出孔は、貫通孔736にて共通化されていることになる。
【0069】
ここで本例のフローセルカバー51aの下面には、貫通孔736の上面側の開口部に嵌合して通流空間を密閉するための密閉部513が下方側へと突出するように設けられており、フローセルカバー51aに形成された供給路511や排出路512はこの密閉部513の下面に開口している。またごく少量の試料流体に含まれる感知対象物をできるだけ多く吸着するために、やや大きめに形成されたマイクロ流路チップ73用の圧電センサー7と比較して、圧電センサー7aの水晶振動子72の直径はやや小さく形成されている。これに伴って配線基板71の前方部分やフローセルベース6の凹部63もやや小さく形成されている点についても図8に記載のフローセルベース6、圧電センサー7とは異なっている。
【0070】
以上に説明した構成を備えた本実施の形態の感知装置1は、図14に示すように制御部8と接続されている。制御部8は図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部にはフローセルベース6の移動機構2やフローセルカバー51の昇降機構3を作動させて感知装置1に圧電センサー7を装着し、マイクロ流路チップ73やゴムパッキン73aによって水晶振動子72との間に形成された通流空間内に試料流体を供給して感知対象物の感知を行う動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0071】
図14に示した83は移動機構2や昇降機構3の回転モーター235、314に各々電力を供給するためのモータードライバー(図14のブロック図においては移動機構2及び昇降機構3の1個のモータードライバー83で総括的に示してある)、85は各回転モーター235、314に加わる負荷を検出するために、当該モータードライバー83の接地ラインに設けられた抵抗部、84はこの抵抗部85の電圧を監視する電圧計である。そして制御部8は、電圧計84から取得した抵抗部85の電圧値が予め設定したしきい値を超えたら、モータードライバー83内に設けられている不図示の電力遮断回路を作動させて各回転モーター235、314を停止させることができる。
【0072】
以下、感知装置1の動作について説明する。図15〜図18では空間形成部材としてマイクロ流路チップ73を用いる場合について示している。感知装置1においては、シャーシ部41及び案内部材42の温度はペルチェ素子43によって予め設定された温度に調整されており、この状態で図15(a)に示すようにフローセルカバー51を退避位置まで上昇させ、フローセルベース6を保持位置まで移動させる。しかる後、フローセルベース6に圧電センサー7を保持させ、さらにその上面にマイクロ流路チップ73を載置すると、フローセルベース6は突片部62側の重さにより取り付けネジ25周りに奥手側へ向けて傾き、突片部62の被案内面621を下方側へ向けた状態となる。このとき当該突片部62の少なくとも下端部は案内部材42の案内面421の上端部よりも低い位置まで移動する。
【0073】
しかる後、移動機構2の回転モーター235を作動させてフローセルベース6を接続位置側へ向けて移動させると、突片部62の被案内面621が案内部材42の案内面421に当接する。このとき既述のようにフローセルベース6は上下方向に移動可能な遊びを持ってアーム部材212に取り付けられていることから、突片部62はこの案内面421に案内されるようにして斜め上方側へ向けて移動していく(図15(b))。
【0074】
そしてフローセルベース6の底面が案内面421の上端部に到達すると、フローセルベース6が案内部材42の上面に乗り上げ、当該フローセルベース6は案内部材42上に載置された状態となる。フローセルベース6は、この状態で案内部材42上を水平方向に移動し、圧電センサー7が接続位置に到達すると、移動機構2はフローセルベース6の移動を停止する。この結果、図16(a)に示すように配線基板71の後端部に設けられた端子部715〜717がシャーシ部41内の発振回路部81a、81b側の端子部412に接触し、各振動領域70a、70bが発振回路部81a、81bに接続された状態となる。
【0075】
ここでフローセルベース6が保持位置から接続位置まで移動するまでの間に異物が挟まるなどすると、回転モーター235に過大な負荷が加わり、その結果モータードライバー83内のスイッチ回路が作動してフローセルベース6の移動が停止する。そして例えばユーザーが異物などの停止の原因を取り除き、不図示の動作スイッチなどから動作開始命令を受け付けるとフローセルベース6の移動が再開される。
【0076】
またフローセルベース6は、案内部材42上に載置され、上下方向に移動可能な遊びを持ってアーム部材212に取り付けられていることから、ピニオンラック機構(ラックギア213、ピニオン部材231)のように上下方向へのがたつきが発生しやすい機構を備えた移動機構2を用いる場合であっても、フローセルベース6は案内部材42の上面にて位置決めされた状態で毎回同じ高さ位置を接続口411に向けて案内される。このため手作業で圧電センサー7を接続口411に接続する場合と比較して、不用意に圧電センサー7を周囲の機器にぶつけたりすることなく、スムーズな装着が可能となる。
【0077】
以上の動作においてフローセルベース6は、フローセルベース6、圧電センサー7及びマイクロ流路チップ73の自重によって案内部材42側に押し付けられた状態で移動するので、不要な方向に傾いたりせず、水晶振動子72を水平な状態に保ったまま圧電センサー7を第1の発振回路部81a、81bに接続することができる。この結果、例えば装着操作を手作業で行い、接続口411への挿入方向のずれなどにより傾いた状態で圧電センサー7が装着され、そのままフローセルカバー51により上面側から押さえつける場合に比べて水晶振動子72に加わるストレスが小さく、感知対象物を感知する際の特性が崩れるおそれが少ない。
【0078】
こうして圧電センサー7が第1の発振回路部81a、81bに接続されたとき、図17(a)に示すように支持部材331は、フローセルカバー51を着脱位置まで上昇させ、またスプリングプランジャー35を解放位置まで上昇させた状態で待機している。このときフローセルカバー51は、その下面から突出しているガイドシャフト514が、圧電センサー7を接続位置まで搬送するフローセルベース6と干渉しない高さ位置まで退避しており、その下面はマイクロ流路チップ73とは接触していない。また本例ではスプリングプランジャー35についても解放位置にあるフローセルカバー51のさらに上方位置に退避していて、当接部材353はフローセルカバー51の上面から離れている。但し、フローセルカバー51が開放位置にあるとき、当接部材353の移動範囲を十分に確保しつつ、当該当接部材353をフローセルカバー51の上面に当接させておくことにより、昇降時などにおけるフローセルカバー51の位置ずれを防止してもよい。
【0079】
こうして圧電センサー7が接続位置に到達し、発振回路部81a、81bと接続されたら、回転モーター314を作動させ、支持部材331を降下させて、解放位置まで退避しているフローセルカバー51を降下させる(図16(a))。フローセルカバー51を降下させてゆくと、図17(b)に示すようにまずガイドシャフト514がフローセルベース6の位置決め孔65内に進入して、当該位置決め孔65に案内され、フローセルベース6に対するフローセルカバー51の位置決めがなされる。
【0080】
そしてさらにフローセルカバー51を降下させると、マイクロ流路チップ73上にフローセルカバー51が載置される。このときフローセルベース6−フローセルカバー51間で位置決めがなされていることにより、フローセルカバー51側の供給路511及び排出路512がマイクロ流路チップ73側の供給孔733並びに排出孔734と各々連通した状態となる。
【0081】
そしてさらに支持部材331を降下させていくと、図18に示すようにチャック部334がフローセルカバー51の下面から離れて、当該フローセルカバー51を保持した状態が解除される一方、スプリングプランジャー35の当接部材353がフローセルカバー51の上面に到達する。しかる後、図6に示した下限センサー373の作動する位置まで支持部材331が降下したら、回転モーター314が停止して支持部材331の移動を停止する(図16(b))。
【0082】
このとき支持部材331の停止位置は、図7を用いて説明した当接部材353の移動範囲内の例えば中間の高さ位置に設定されている。このため、4つのスプリングプランジャー35はバネ部材352のバネ定数に応じた均等な押圧力をフローセルカバー51に加えている。またこのとき圧電センサー7やマイクロ流路チップ73などの高さが加工公差により例えばサブミリメートル程度の範囲で変化した場合などであっても、この変化幅が当接部材353の移動範囲内であれば、スプリングプランジャー35の押圧力は変化しない。
【0083】
このように、スプリングプランジャー35にてフローセルカバー51をマイクロ流路チップ73側へ押圧することにより、マイクロ流路チップ73と圧力センサー7との間の密着性が確保される。また、スプリングプランジャー35の当接部材353の移動範囲内では、一定の力でフローセルカバー51を押圧できるので、加工公差などの理由によりマイクロ流路チップ73の上面の高さ位置が上方側に移動した場合であっても、マイクロ流路チップ73に過度の力が加わって通流空間を押しつぶしたり歪めたりすることが防止され、水晶振動子72による感知対象物の感知特性に悪影響を与えるおそれが少ない。また反対に前期上面の高さ位置が下方側へ移動したとしてもマイクロ流路チップ73を押圧する力が弱くなって圧電センサー7との間の十分な密着性が保てなくなり、試料流体が漏れ出したりするといった不具合の発生を抑制できる。
【0084】
これらの動作においてもフローセルカバー51が退避位置から固定位置に移動するまでの間に異物などが挟まると、回転モーター314に過大な負荷が加わり、モータードライバー83のスイッチ回路が作動しフローセルカバー51の降下動作が停止される。そして異物など停止の原因が取り除かれたら、動作の開始命令を受け付けてフローセルカバー51の降下を再開する。
【0085】
フローセルカバー51が固定位置まで降下してマイクロ流路チップ73が固定され、フローセルカバー51側の供給、排出路511、512とマイクロ流路チップ73側の供給、排出孔733、734が接続されたら、例えば供給管131から通流空間内へバッファ液の供給を開始すると共に各発回路部81a、81bを作動させて各振動領域70a、70bからの発振周波数の取得を開始する。
【0086】
しかる後、例えば水晶振動子72の温度が安定して発振周波数が一定となったら、供給管131に試料流体である試料溶液を供給し、この試料溶液が通流空間に到達することにより、試料溶液に感知対象物が含まれる場合には、この感知対象物が吸着層720に吸着する。この結果、吸着層720が設けられている振動領域(図11に示す例では第1の振動領域70a)の発振周波数が低下して、感知対象物の存在を感知することができ、また発振周波数の低下量に基づいて感知対象物の吸着量を定量することもできる。
【0087】
感知対象物の感知を終えたら、供給管131からパージガスを供給するなどして通流空間から試料流体を追い出し、接続時とは反対にフローセルカバー51及びスプリングプランジャー35を各々着脱位置並びに解放位置まで上昇させる。しかる後、フローセルベース6を保持位置まで移動させることにより感知動作終了後の圧電センサー7をフローセルベース6から取り外すことができる。この際にも、異物が挟まった場合などにはフローセルカバー51の上昇動作やフローセルベース6の移動動作が停止することは勿論である。
【0088】
本実施の形態に係る感知装置1によれば以下の効果がある。水晶振動子72が設けられた圧電センサー7と、この圧電センサー7の上に載置され、前記水晶振動子72の上面側に試料流体を通流させるための通流空間を形成する空間形成部材(マイクロ流路チップ73、ゴムパッキン73a)とを、上下に積層した状態でフローセルベース6に保持し、当該空間形成部材を圧電センサーと密着させるためのフローセルカバー51を空間形成部材上に載置する際に、当該フローセルカバー51を予め設定された力で押圧するスプリングプランジャー35を備えている。このため前述の予め設定された力を適切に調整することにより、圧電センサー7と空間形成部材とを互いに密着させて通流空間からの試料流体の漏れ出しを防止すると共に、弾性材料からなる前記空間形成部材の過度の変形を抑制し、前記通流空間がつぶれて試料流体を通流させることができなくなったり、感知特性が変化したりするといった不具合の発生を抑制することができる。
【0089】
ここで上述の実施の形態においては、図6、図8に示すようにフローセルカバー51内に試料流体の供給路511及び排出路512が形成されており、試料流体供給部及び試料流体排出部が当該フローセルカバー51と共通化されている例について説明したが、これらを独立した構成としてもよい。図19(a)、図19(b)に示した感知装置1では、マイクロ流路チップ73の側面に試料流体の供給孔731及び排出孔732を設け、フローセルカバー51とは別体として構成された試料流体供給部523、試料流体排出部521を備えている。図19中、図1〜図18に示したものと同じ構成要素には、これらの図と同様の符号を付してある。
【0090】
この例では、前記供給孔731、排出孔732に連通される供給路511、排出路512は、各々試料流体供給部523、試料流体排出部521内に形成されている一方、フローセルカバー51にはこれらの流路511、512が形成されていない。またスプリングプランジャー35を保持するホルダー36は、昇降する2本の支持部材331の下端部に横架された棒状の部材として構成され、当該ホルダー36の下面にはフローセルカバー51を昇降させるための2本の昇降アーム38が下方側へ向けて伸びだしている。これら昇降アーム38の下端部には、フローセルカバー51の下面に係止されて当該フローセルカバー51を持ち上げるチャック部334が設けられている。そして共通の昇降機構3(図19では支持部材331等、一部のみを示してある)により、昇降アーム38を上下に移動させ、フローセルカバー51を着脱位置-載置位置間で昇降させる。また、同じく前記昇降機構3によりホルダー36を昇降させることにより、スプリングプランジャー35を開放位置-押圧位置間で昇降させる。
【0091】
一方、試料流体供給部523及び試料流体排出部521には、これらを左右方向に移動させる移動機構522が設けられている。そしてフローセルベース6による圧電センサー7の搬入出時には、図19(a)に示すようにこれらの部材523、521を左右方向外側に退避させる。これに対して、圧電センサー7が感知装置1に装着されたら図19(b)に示すように試料流体供給部523及び試料流体排出部521を内側に移動させて、各々供給孔731、排出孔732に供給路511、排出路512を連通させる。
【0092】
また、上述の各実施の形態においては、フローセルカバー51及びスプリングプランジャー35を昇降させる昇降機構3としてクランク機構(アーム部材321、クランク軸332及び支持部材331)を用いた場合を例示したが、これらの部材51、35を昇降させる機構はこの例に限られるものではなく、シリンダー機構やボールネジ機構、ピニオンラック機構などを用いて移動させてもよい。またフローセルベース6を移動させる移動機構2についてもピニオンラック機構(ピニオン部材231、ラックギア213)に限定されるものではなく、シリンダー機構やボールネジ機構を利用してもよいことは勿論である。
【0093】
さらには、フローセルカバー51、スプリングプランジャー35の昇降機構3は共通化されている場合に限られず、別々の昇降機構を用いてこれらの部材51、35の昇降動作を行ってもよい。さらには、フローセルカバー51は昇降機構3により昇降させる場合に限定されるものではない。例えば接続位置まで移動した圧電センサー7上に積層されているマイクロ流路チップ73の上に手作業でフローセルカバー51を載置し、しかる後、昇降機構3を動作させて押圧位置までマイクロプランジャー3を移動させてもよい。
【0094】
このほか、フローセルカバー51を押圧する押圧部は、スプリングプランジャー35にて構成する場合に限定されない。例えば伸張方向に付勢され、プランジャー本体351に格納されていない剥き出しの状態のバネ部材352の下端部をフローセルカバー51に当接させる構成としてもよい。またゴムやスポンジなどの弾性体からなるクッション片を利用し、これらのクッション片のバネ定数がほぼ一定となる範囲内でフローセルカバー51を押圧するようにしてもよい。
【0095】
そして本感知装置1を適用可能な圧電センサー7は上述の例に限定されるものではない。例えば水晶振動子72に設けられた振動領域70a、70bの数は2個に限定されるものではなく、1個でもよいし3個以上であってもよい。この場合には、感知装置1は振動領域の数に応じた発振回路部81a、81bを備えることが好ましいが、複数の振動領域にて1個の発振回路を共有してもよい。また水晶以外の圧電材料を用いて圧電振動子を構成してもよく、圧電センサー7やフローセルベース6、空間形成部材(マイクロ流路チップ73、ゴムパッキン73a)、フローセルカバー51の形状も必要に応じて適宜変更できる。
このほか通流空間に供給される試料流体は液体に限られるものではなく、気体であってもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0096】
1 感知装置
2 移動機構
3 昇降機構
35 スプリングプランジャー
41 シャーシ部
411 接続口
412 端子部
42 案内部材
421 案内面
51、51a
フローセルカバー
6 フローセルベース
62 突片部
621 被案内面
7 圧電センサー
70a 第1の振動領域
70b 第2の振動領域
72 水晶振動子
73 マイクロ流路チップ
73a ゴムパッキン
8 制御部
81a 第1の発振回路部
81b 第2の発振回路部
83 モータードライバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定器本体に設けられた接続部を介して圧電センサーの圧電振動子を発振回路に接続し、前記圧電振動子の上面に設けられた吸着層へ感知対象物が吸着されることによる当該圧電振動子の発振周波数の変化に基づいて感知対象物を感知する感知装置において、
前記接続部に対して圧電振動子が着脱自在な状態となるように圧電センサーを保持すると共に、この圧電センサーの上に載置されることにより前記圧電振動子の上面側に試料流体を通流させるための通流空間を形成し、試料流体の供給孔及び排出孔が設けられた弾性材料からなる空間形成部材を、前記圧電センサー上に積層された状態で保持する保持部材と、
前記供給孔と連通される試料流体の供給路を備えた試料流体供給部、及び前記排出孔と連通される試料流体の排出路を備えた試料流体排出部と、
圧電振動子が前記接続部に接続された状態にて空間形成部材の上に載置されるカバー部材と、
空間形成部材の上に載置された前記カバー部材を、当該空間形成部材に向けて予め設定された力で押圧するための押圧部と、
この押圧部にて前記カバー部材を押圧する押圧位置と、当該押圧位置から退避して当該カバー部材を押圧された状態から解放する解放位置との間で前記押圧部を昇降させるための第1の昇降機構と、を備えたことを特徴とする感知装置。
【請求項2】
前記試料流体供給部及び試料流体排出部は、前記カバー部材と共通化されていることを特徴とする請求項1に記載の感知装置。
【請求項3】
前記押圧部は、前記カバー部材を押圧する方向へ付勢されたバネ部材とこのバネ部材の先端部に設けられ、当該カバー部材に当接する当接部材とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の感知装置。
【請求項4】
空間形成部材の上に前記カバー部材を載置する載置位置と、この載置位置から退避して前記保持部材に保持された圧電センサーを接続部から着脱可能にする着脱位置との間で当該カバー部材を昇降させるための第2の昇降機構を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の感知装置。
【請求項5】
前記第1の昇降機構と第2の昇降機構とは共通化されていることを特徴とする請求項4に記載の感知装置。
【請求項6】
前記接続部の手前側に設定され、前記保持部材に圧電センサーを保持させるための保持位置と、圧電振動子が前記接続部に接続された状態で当該圧電センサーを測定器本体に装着するための接続位置との間で前記保持部材を前後に水平方向に移動させる移動機構を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の感知装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−13534(P2012−13534A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150215(P2010−150215)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)