感知装置
【課題】試料液を流しながら感知対象物の測定を行う感知装置において、信頼性の高い測定を行うことができる感知装置を提供すること。
【解決手段】反応用流路52の高さが非常に低く、振動領域4A、4B間の濡れ性に差のあるツインセンサー型の感知装置において、反応用流路52を形成する流路形成部材5に液体排出口54から振動領域4A、4Bに向けて夫々伸びる溝部55A、55Bを設けることにより、反応用流路52における液体の流れの偏りを抑制でき、反応用流路52内での気泡の残留を防止できる。
【解決手段】反応用流路52の高さが非常に低く、振動領域4A、4B間の濡れ性に差のあるツインセンサー型の感知装置において、反応用流路52を形成する流路形成部材5に液体排出口54から振動領域4A、4Bに向けて夫々伸びる溝部55A、55Bを設けることにより、反応用流路52における液体の流れの偏りを抑制でき、反応用流路52内での気泡の残留を防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子等の圧電振動子の発振周波数に基づいて、試料液に含まれる感知対象物を感知するための感知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料液に含まれる微量物質を感知し、測定する感知装置としては水晶センサーを用いたものが知られている。この種の感知装置として、特許文献1に開示されているように試料液を流しながら感知対象物の検出を行うものが知られている。 一方、水晶センサーとしては、計測環境の外部要因例えば温度等の影響を低減することができるツインセンサータイプの水晶センサーが知られている(特許文献2)。この水晶センサーは、水晶片に計測用振動領域及び参照用振動領域を形成し、計測用振動領域の表面には生体物質等からなる吸着層が形成される。これにより、感知対象物を吸着することによる質量変化を受けるのは計測用振動領域だけであることから、計測用振動領域より取り出される発振周波数から参照用振動領域より取り出される発振周波数の差分を取ることにより、外部要因を取り除いた精度の高い測定結果を得ることができる。
【0003】
ここで本願の出願人は、微量な物質の測定をより一層高感度、高精度に行うための手法の一例として、反応用流路の高さ(水晶振動子の表面からケース体内の対向面までの距離)を低減する方法を検討している。例えば、反応用流路の高さが1mmもの小さな寸法であっても、対向面側の液流中の抗原が抗体と反応する割合は水晶振動子側の液流中の抗原の同割合よりも小さい。このため、供給した試料液中に含まれる感知対象物のうち、吸着層に吸着される感知対象物の割合が少なく、感度と精度の両方の観点から有利とは言うことはできない。
【0004】
そこで、水晶センサーの表面と対向面とまでの距離即ち反応用流路の高さを例えば0.2mm以下に設定することにより、供給した試料液のうち水晶片の吸着層に接触するかあるいはその近傍を流れる試料液の割合を多くすることが考えられる。こうすることで、試料液に含有される感知対象物の吸着層に吸着される量が増大し、吸着されずに排出される感知対象物の量が少なくなり、感知対象物の測定感度及び精度が向上する。また、反応流路の高さを低くすることは、反応流路の容積の減少に繋がり、測定に必要な試料液量を低く抑えることができるため、試料液の希釈が不要となるという点からも、感知対象物の測定感度及び精度の向上に資する。
【0005】
しかし、このように反応用流路の高さを非常に低くした場合を前述のツインセンサータイプの水晶センサーに適用すると、2つの振動領域(例えば、表面に生体物質等からなる吸着層が形成された親水性の計測用振動領域及び金からなる疎水性の参照用振動領域)間の濡れ性の差のために、図13に示すように、2つの振動領域のうちより疎水性の振動領域例えば金の参照用振動領域側において気泡が排出されず残ってしまい、信頼性の高い測定が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−58086(段落0014、図11及び図13)
【特許文献2】特開2007−108170
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は試料液を流しながら感知対象物の測定を行う感知装置において、信頼性の高い測定を行うことができる感知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の感知装置は、共通の圧電片に第1の振動領域及び第2の振動領域とを形成するように2対の励振電極をX方向に並べて設けると共に当該圧電片の一面側の励振電極における第1の振動領域には試料液中の感知対象物を吸着する吸着層を形成し、当該一面側の第2の振動領域には吸着層を形成しない圧電センサーを用いて試料液中の感知対象物を感知する感知装置において、
前記圧電センサーの一面側に密着され、前記第1の振動領域及び第2の振動領域と隙間を介して対向する対向面を含み、当該一面側に臨む領域に反応用流路を形成するための流路形成部材と、
前記反応用流路におけるX方向と直交するY方向の一端側に設けられ、当該反応用流路に試料液を供給するための液体供給口と、
前記反応用流路におけるY方向の他端側に設けられ、当該反応用流路から試料液を排出するための液体排出口と、
前記吸着層の有無により第1の振動領域が親水性であり、第2の振動領域が疎水性であることに基づく液流れの偏りを抑えることを目的として、液の流れを規制するために前記対向面に形成された溝部と、を備え、
前記第1の振動領域及び第2の振動領域は、圧電センサーが発振回路により発振されたときに、これらの発振周波数に基づいて感知対象物を感知するために設けられたものであることを特徴とする。
【0009】
また、前記感知装置の具体例として、次の例を挙げることができる。 1.前記圧電センサーの一面側に臨む前記反応用流路の高さは、0.3mm以下である。 2.前記溝部は、前記液体排出口側から第1の振動領域に向かって伸びる第1の溝部と、前記液体排出口側から第2の振動領域に向かって伸びる第2の溝部と、を含み、第1の溝部及び第2の溝部における振動領域側の端部は、夫々第1の振動領域及び第2の振動領域に重ならないように位置している。
【0010】
この際、本発明では、前記第1の溝部及び第2の溝部は、上から見て、液体排出口から振動領域側に向かうにつれて互いの距離が大きくなるように形成されていてもよく、
さらに、前記第1の溝部は、液体排出口から第1の振動領域側に伸びる反応用流路の縁から、液体供給口と液体排出口とを結ぶライン側に寄っており、
前記第2の溝部は、液体排出口から第2の振動領域側に伸びる反応用流路の縁から、前記ライン側に寄っていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、計測用の振動領域(第1の振動領域)と参照用の振動領域(第2の振動領域)とがX方向に並ぶツイン型の圧電センサーに臨むように反応用流路が形成され、反応用流路における試料液の流入口及び流出口がY方向に並ぶ感知装置において、圧電センサーの対向面における流出口側に溝部を形成し、両振動領域の濡れ性の程度の差に基づく液流れの偏りを抑えるようにしている。従って、反応用流路内における気泡の残留を防止することができ、信頼性の高い測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る感知装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明に係る圧電センサーを備えたセンサーユニットを示す分解斜視図である。
【図3】前記センサーユニットを示す縦側断面図である。
【図4】前記圧電センサーの一部を構成する水晶振動子を示す表面図及び裏面図である。
【図5】前記感知装置の一部を構成する水晶振動子と周波数測定部との接続を説明するブロック図である。
【図6】前記センサーユニットを拡大して示す縦側断面図である。
【図7】前記センサーユニットの一部を構成する流路形成部材の裏面及び表面を夫々示す斜視図である。
【図8】前記流路形成部材と水晶振動子が当接したときの溝部と励振電極との位置関係を示す説明図である。
【図9】図6における溝部の断面を示すA−A’矢視断面図である。
【図10】前記溝部の作用を説明するための、液体の流入状況を経時的に示す平面図である。
【図11】前記溝部に関する他の実施形状の例を示す流路形成部材の平面図である。
【図12】凹部に関する他の実施形状の例を示す流路形成部材の平面図である。
【図13】溝部のない流路形成部材を備えたセンサーユニットに試料液を流入させたときの状態を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の感知装置の実施の形態は、図1に示すように、センサーユニット2と、このセンサーユニット2に液体(試料液や緩衝液)を供給する液供給系1と、センサーユニット2から排出される液体を貯留する液排出系90と、センサーユニット2に取り付けられた圧電センサーである水晶センサー7と、センサーユニット2に隣接して設けられた発振回路ユニット6と、を備えている。
【0014】
センサーユニット2は、図2に示すように、支持体21、配線基板3、水晶振動子4、流路形成部材5及びカバー体24が下側からこの順番で積層されて構成されている。支持体21には、水晶センサー7及び流路形成部材5を嵌合し、保持するための支持体凹部22が形成されている。従って、前記支持体凹部22に水晶センサー7を嵌合した状態で、流路形成部材5を水晶センサー7に押し付けることにより、流路形成部材5の下面が水晶振動子4を配線基板3に押圧して、固着される。さらに、支持体21は上方よりカバー体24により覆われる。
【0015】
図2及び図3中26は液体供給管、27は排出手段である液体排出管であり、液供給系1から液体供給管26を介して反応用流路52に供給される液体が液体排出管27を通って液排出系90へと排出されるように構成されている。液供給系1は水晶センサー7に対して参照液としての緩衝液及び試料液を夫々供給する緩衝液供給部及び試料液供給部を備えており、液排出系90は廃液貯留部を備えている。
【0016】
水晶センサー7は、配線基板3上に圧電振動子である水晶振動子4を設けて構成されている。この水晶振動子4は、図4に示すように、圧電片である円板状の水晶片41の両面に励振電極42、43を設けて構成されるが、この例では裏面側(図4中(b))に第1の励振電極43A及び第2の励振電極43Bを互いに離間してX方向に並ぶように配置すると共に、表面側(図4中(a))に前記2つの励振電極43A、43Bに対する共通の励振電極(共通電極)42を配置している。従って、第1の励振電極43A及び共通電極42により第1の振動領域4Aが、また第2の励振電極43B及び共通電極42により第2の振動領域4Bが形成されることになる。なお、前記共通電極42及び励振電極43A、43Bの等価厚みは、例えば0.2μmであり、電極材料としては例えば金あるいは銀等が用いられている。第1の励振電極43A及び第2の励振電極43Bは、水晶センサー7をセンサーユニット2に装着した時に、図5に示すように、配線基板3の導電路32、34を介して、2つの発振回路6A、6Bに夫々接続されると共に、共通電極42は配線基板3の導電路33を介して発振回路6A、6Bのアース側に接続されることになる。上記の配線基板3の端部領域には、各導電路32〜34と夫々接続される接続端子35〜37が形成されている。
【0017】
そして、水晶センサー7の共通電極42における第1の励振電極43Aに対応する領域には、感知対象物である抗原を吸着するための抗体からなる吸着層(反応物質)46が形成されている。従って、上記の吸着層46に例えば試料液中の感知対象物が吸着すると、第1の振動領域4Aにおける発振周波数が質量負荷効果により低下する。一方、第2の振動領域4Bでは共通電極の表面が吸着層26が設けられておらず剥き出しとなっているため共通電極42に感知対象物が吸着しない。このため、感知対象物の吸着前後における各領域4A、4Bの発振周波数を比べることにより、センサーユニット2の周囲の温度、試料液の粘度、試料液中に含まれる感知対象物以外の物質の付着などの外乱の影響を抑えて吸着層46に吸着した感知対象物の量に対応する発振周波数の変化(低下分)を感知できることになる。なお、第2の振動領域を形成する領域の共通電極の表面は剥き出しとせず、例えば感知対象物と反応しないタンパク質からなるブロッキング層を形成してもよい。
【0018】
次に、流路形成部材5について図6及び図7を用いて説明する。図6は、センサーユニット2の縦断面を拡大したものである。図7(a)、(b)は、夫々流路形成部材5の裏面側及び表面側を示しており、凹部52の高さを誇張して描いている。流路形成部材5は弾性材料例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いて配線基板3の一端側に対応した形状に作成されている。流路形成部材5の裏面側の中央部には凹部52が形成されており、流路形成部材5と配線基板3とを流路形成部材5の裏面側が配線基板3と接するように重ね合わせて水晶振動子4に押し付けることにより、この凹部52が反応用流路となる。即ち、このとき前記凹部52の天井面は水晶振動子4の一面側である表面側における振動領域と隙間を介して対向する対向面であり、反応用流路はこの対向面と水晶振動子4との間の領域で凹部52の輪郭に沿った内周面に囲まれるように形成される。このため凹部及び反応用流路のいずれも符号52を用いることとする。この凹部52は、反応用流路52における液体の流れにデッドスペースが生じないように角が曲線状の菱形の形状をしている。この凹部52の中央部は水晶振動子4の前記第1の振動領域4A及び第2の振動領域4Bを含む領域よりもやや大きく設定され、流路形成部材5が配線基板3に当接することで凹部52内の中央部にて前記領域4A、4Bが収まるようになっている。そして、前記凹部52の高さは、例えば0.3mm以下に設定され、この例では0.15mmに設定されている。また、凹部52の対向面のY方向の対角線の両端に対応する箇所には流路形成部材5の裏面から表面に向けて前記対向面に対して垂直方向(Z方向)に流路が形成されている。この対向面に対して垂直な流路は、一方が液体供給口53となり、もう一方が液体排出口54に相当する。
【0019】
そして、図8及び図9に示すように、前記凹部52の対向面には、前記液体排出口54から前記第1の振動領域4A及び第2の振動領域4Bに向かって直線状に伸びる2本の溝部55A、55Bが形成されている。これら溝部55A、55Bは水晶振動子4の水晶部分に対向するように形成され、当該溝部55A、55Bにおける振動領域4A、4B側の端部は前記両振動領域4A、4Bに夫々対向しないように位置している。また、これら溝部55A、55Bは、液体排出口54から振動領域4A、4B側に夫々向かうにつれて互いの距離(X方向における距離)が大きくなるように形成されていて全体の平面形状がV字状をなしており、前記液体排出口54から各振動領域4A、4B側に伸びる反応用流路52の縁から、液体供給口53と液体排出口54とを結ぶライン側に寄っている。この例では、2本の溝部55A、55Bの各寸法は、例えば長さ3mm、幅0.5mm、深さ0.5mmに設定されている。
【0020】
また、発振回路ユニット6は、センサーユニット2に差し込まれることにより、図5に示すように、前記配線基板3の接続端子部と電気的に接続される。発振回路ユニット6の後段には、測定回路部81及びデータ処理部82が設けられている。前記測定回路部81は、例えば入力信号である周波数信号をディジタル処理して、発振周波数を計測する機能を有する。なお、測定回路部81は周波数カウンターであってもよく、測定方式を適宜選定することができる。データ処理部82は、計測された周波数の時系列データを記憶したりその時系列データを表示したりする部位であり例えばパーソナルコンピュータからなる。
【0021】
次に、感知装置の作用について図10を用いて説明する。液供給系1よりセンサーユニット2内に液体が供給され、その液体は液体供給口53から反応用流路52に流入する。その後、流入した液体は、反応用流路52内を液体排出口54に向けて放射状に両サイドに広がりながら(図10中(a))、第1の振動領域4A及び第2の振動領域4Bに達すると、当該両振動領域4A、4B間の濡れ性の差により親水性の第1の振動領域4A側に液体の流れが偏る(図10中(b))。ここで溝部55Aがない場合、このようにして液体の大部分が親水性振動領域4Aを通過し、さらにそのうちの一部が液体排出口54の付近から疎水性の振動領域4Bの側に回りこむことにより疎水性振動領域4B側に気泡が残留する場合があり、測定の信頼性を下げる原因になっている。
【0022】
これに対し、本感知装置では、実際にこの実施形態の寸法で反応用流路52を作製したところ、気泡は認められなかった。その理由は次のように推測される。溝部55Aがあるため表面張力の影響により液体に対して反応用流路52における溝部55Aの下方から両側に押し広げられる作用が働き、その結果親水性領域4A側からの一方的な液体の流出が抑制される。このため、その分液体の疎水性領域4B側への侵入の推進力が増し疎水性領域4Bへも液体が侵入し始める(図10中(c))。その後、親水性領域4A側からの液体は疎水性の金からなる引き出し電極44を越えて疎水性領域4B側に侵入するが、ここでも疎水性領域4B側の溝部55Bに妨げられ当該溝部55Bに沿って液体排出口54と反対方向に迂回することになる。
【0023】
その間に、疎水性領域4B側からの液体も疎水性領域4B側の溝部55Bまで到達し、また疎水性領域4B側の溝部55Bと疎水性領域4B側の反応用流路52の縁とに挟まれている領域が気泡の逃げ道として最後まで機能しているため(図10中(d))、気泡が残留することがなくなり、反応用流路52の両振動領域4A、4Bにおける均等な押し出し流れが実現される。その後、溝部55A、55Bの下の領域に液体が侵入してくるまでの間、気泡の残留し易い反応用流路52の縁付近に液体の流れが集中し液体の流速は増しているため、そのことも気泡の残留防止に寄与する。また、溝部55A、55Bは夫々両振動領域4A,4Bにかかっていないため、例えば振動領域4A、4B内の液体の流れを乱すような測定に対する邪魔をすることもない。そして、液体排出口54に到達した液体は液排出系90に排出される。
【0024】
一方、水晶センサー7の第1の振動領域4A及び第2の振動領域4Bは夫々発振回路ユニット6により発振し、それらの発振周波数は測定回路部81に取り込まれる。そして、データ処理部82にて第1の振動領域4Aにおける発振周波数と第2の振動領域4Bにおける発振周波数との差分が取り出され、その差分が感知対象物の吸着量として評価されることになる。
【0025】
上述の実施形態によれば、計測用の振動領域(第1の振動領域)4Aと参照用の振動領域(第2の振動領域)4BとがX方向に並ぶツイン型の水晶センサー7に臨むように反応用流路52が形成され、試料液の液体供給口53及び液体排出口54がY方向に並ぶ感知装置において、水晶センサー7の対向面における液体排出口54側に溝部55A、55Bを夫々形成し、両振動領域4A、4Bの濡れ性の程度の差に基づく液流れの偏りを抑えるようにしている。従って、反応用流路52内における気泡の残留を防止することができ、信頼性の高い測定を行うことができる。
【0026】
上記の例では、流路形成部材5における溝部55は、液体排出口54から両振動領域4A、4Bに向かって直線状に形成されていたが、この構成に限られない。溝部55の機能の一つとしては親水性領域4A側から疎水性領域4B側への液体の回りこみ防止が挙げられるため、図11(a)に示すように、親水性の第1の振動領域4A側のみに1本だけ溝部55が形成されていてもよい。また、溝部55は、曲線状であったり(図11中(b))、あるいは両振動領域4A、4Bの間即ち液体排出口54から液体供給口53に向かって1本だけ形成されていてもよい(図11中(c))。
【0027】
上述の実施形態では、凹部52は、角が曲線状の菱形の形状をしていたが、図12に示すように、楕円の形状であってもよいし、あるいは長方形や正方形であってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 液供給系
90 液排出系
2 センサーユニット
21 支持体
22 支持体凹部
24 カバー体
26 液体供給管
27 液体排出管
3 配線基板
4 水晶振動子
41 水晶片
4A 第1の振動領域
4B 第2の振動領域
42 共通電極
42、43 励振電極
44 引き出し電極
46 吸着層
7 水晶センサー
5 流路形成部材
52 反応用流路(凹部)
53 液体供給口
54 液体排出口
55 溝部
6 発振回路ユニット
6A、6B 発振回路
81 測定回路部
82 データ処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子等の圧電振動子の発振周波数に基づいて、試料液に含まれる感知対象物を感知するための感知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料液に含まれる微量物質を感知し、測定する感知装置としては水晶センサーを用いたものが知られている。この種の感知装置として、特許文献1に開示されているように試料液を流しながら感知対象物の検出を行うものが知られている。 一方、水晶センサーとしては、計測環境の外部要因例えば温度等の影響を低減することができるツインセンサータイプの水晶センサーが知られている(特許文献2)。この水晶センサーは、水晶片に計測用振動領域及び参照用振動領域を形成し、計測用振動領域の表面には生体物質等からなる吸着層が形成される。これにより、感知対象物を吸着することによる質量変化を受けるのは計測用振動領域だけであることから、計測用振動領域より取り出される発振周波数から参照用振動領域より取り出される発振周波数の差分を取ることにより、外部要因を取り除いた精度の高い測定結果を得ることができる。
【0003】
ここで本願の出願人は、微量な物質の測定をより一層高感度、高精度に行うための手法の一例として、反応用流路の高さ(水晶振動子の表面からケース体内の対向面までの距離)を低減する方法を検討している。例えば、反応用流路の高さが1mmもの小さな寸法であっても、対向面側の液流中の抗原が抗体と反応する割合は水晶振動子側の液流中の抗原の同割合よりも小さい。このため、供給した試料液中に含まれる感知対象物のうち、吸着層に吸着される感知対象物の割合が少なく、感度と精度の両方の観点から有利とは言うことはできない。
【0004】
そこで、水晶センサーの表面と対向面とまでの距離即ち反応用流路の高さを例えば0.2mm以下に設定することにより、供給した試料液のうち水晶片の吸着層に接触するかあるいはその近傍を流れる試料液の割合を多くすることが考えられる。こうすることで、試料液に含有される感知対象物の吸着層に吸着される量が増大し、吸着されずに排出される感知対象物の量が少なくなり、感知対象物の測定感度及び精度が向上する。また、反応流路の高さを低くすることは、反応流路の容積の減少に繋がり、測定に必要な試料液量を低く抑えることができるため、試料液の希釈が不要となるという点からも、感知対象物の測定感度及び精度の向上に資する。
【0005】
しかし、このように反応用流路の高さを非常に低くした場合を前述のツインセンサータイプの水晶センサーに適用すると、2つの振動領域(例えば、表面に生体物質等からなる吸着層が形成された親水性の計測用振動領域及び金からなる疎水性の参照用振動領域)間の濡れ性の差のために、図13に示すように、2つの振動領域のうちより疎水性の振動領域例えば金の参照用振動領域側において気泡が排出されず残ってしまい、信頼性の高い測定が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−58086(段落0014、図11及び図13)
【特許文献2】特開2007−108170
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は試料液を流しながら感知対象物の測定を行う感知装置において、信頼性の高い測定を行うことができる感知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の感知装置は、共通の圧電片に第1の振動領域及び第2の振動領域とを形成するように2対の励振電極をX方向に並べて設けると共に当該圧電片の一面側の励振電極における第1の振動領域には試料液中の感知対象物を吸着する吸着層を形成し、当該一面側の第2の振動領域には吸着層を形成しない圧電センサーを用いて試料液中の感知対象物を感知する感知装置において、
前記圧電センサーの一面側に密着され、前記第1の振動領域及び第2の振動領域と隙間を介して対向する対向面を含み、当該一面側に臨む領域に反応用流路を形成するための流路形成部材と、
前記反応用流路におけるX方向と直交するY方向の一端側に設けられ、当該反応用流路に試料液を供給するための液体供給口と、
前記反応用流路におけるY方向の他端側に設けられ、当該反応用流路から試料液を排出するための液体排出口と、
前記吸着層の有無により第1の振動領域が親水性であり、第2の振動領域が疎水性であることに基づく液流れの偏りを抑えることを目的として、液の流れを規制するために前記対向面に形成された溝部と、を備え、
前記第1の振動領域及び第2の振動領域は、圧電センサーが発振回路により発振されたときに、これらの発振周波数に基づいて感知対象物を感知するために設けられたものであることを特徴とする。
【0009】
また、前記感知装置の具体例として、次の例を挙げることができる。 1.前記圧電センサーの一面側に臨む前記反応用流路の高さは、0.3mm以下である。 2.前記溝部は、前記液体排出口側から第1の振動領域に向かって伸びる第1の溝部と、前記液体排出口側から第2の振動領域に向かって伸びる第2の溝部と、を含み、第1の溝部及び第2の溝部における振動領域側の端部は、夫々第1の振動領域及び第2の振動領域に重ならないように位置している。
【0010】
この際、本発明では、前記第1の溝部及び第2の溝部は、上から見て、液体排出口から振動領域側に向かうにつれて互いの距離が大きくなるように形成されていてもよく、
さらに、前記第1の溝部は、液体排出口から第1の振動領域側に伸びる反応用流路の縁から、液体供給口と液体排出口とを結ぶライン側に寄っており、
前記第2の溝部は、液体排出口から第2の振動領域側に伸びる反応用流路の縁から、前記ライン側に寄っていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、計測用の振動領域(第1の振動領域)と参照用の振動領域(第2の振動領域)とがX方向に並ぶツイン型の圧電センサーに臨むように反応用流路が形成され、反応用流路における試料液の流入口及び流出口がY方向に並ぶ感知装置において、圧電センサーの対向面における流出口側に溝部を形成し、両振動領域の濡れ性の程度の差に基づく液流れの偏りを抑えるようにしている。従って、反応用流路内における気泡の残留を防止することができ、信頼性の高い測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る感知装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明に係る圧電センサーを備えたセンサーユニットを示す分解斜視図である。
【図3】前記センサーユニットを示す縦側断面図である。
【図4】前記圧電センサーの一部を構成する水晶振動子を示す表面図及び裏面図である。
【図5】前記感知装置の一部を構成する水晶振動子と周波数測定部との接続を説明するブロック図である。
【図6】前記センサーユニットを拡大して示す縦側断面図である。
【図7】前記センサーユニットの一部を構成する流路形成部材の裏面及び表面を夫々示す斜視図である。
【図8】前記流路形成部材と水晶振動子が当接したときの溝部と励振電極との位置関係を示す説明図である。
【図9】図6における溝部の断面を示すA−A’矢視断面図である。
【図10】前記溝部の作用を説明するための、液体の流入状況を経時的に示す平面図である。
【図11】前記溝部に関する他の実施形状の例を示す流路形成部材の平面図である。
【図12】凹部に関する他の実施形状の例を示す流路形成部材の平面図である。
【図13】溝部のない流路形成部材を備えたセンサーユニットに試料液を流入させたときの状態を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の感知装置の実施の形態は、図1に示すように、センサーユニット2と、このセンサーユニット2に液体(試料液や緩衝液)を供給する液供給系1と、センサーユニット2から排出される液体を貯留する液排出系90と、センサーユニット2に取り付けられた圧電センサーである水晶センサー7と、センサーユニット2に隣接して設けられた発振回路ユニット6と、を備えている。
【0014】
センサーユニット2は、図2に示すように、支持体21、配線基板3、水晶振動子4、流路形成部材5及びカバー体24が下側からこの順番で積層されて構成されている。支持体21には、水晶センサー7及び流路形成部材5を嵌合し、保持するための支持体凹部22が形成されている。従って、前記支持体凹部22に水晶センサー7を嵌合した状態で、流路形成部材5を水晶センサー7に押し付けることにより、流路形成部材5の下面が水晶振動子4を配線基板3に押圧して、固着される。さらに、支持体21は上方よりカバー体24により覆われる。
【0015】
図2及び図3中26は液体供給管、27は排出手段である液体排出管であり、液供給系1から液体供給管26を介して反応用流路52に供給される液体が液体排出管27を通って液排出系90へと排出されるように構成されている。液供給系1は水晶センサー7に対して参照液としての緩衝液及び試料液を夫々供給する緩衝液供給部及び試料液供給部を備えており、液排出系90は廃液貯留部を備えている。
【0016】
水晶センサー7は、配線基板3上に圧電振動子である水晶振動子4を設けて構成されている。この水晶振動子4は、図4に示すように、圧電片である円板状の水晶片41の両面に励振電極42、43を設けて構成されるが、この例では裏面側(図4中(b))に第1の励振電極43A及び第2の励振電極43Bを互いに離間してX方向に並ぶように配置すると共に、表面側(図4中(a))に前記2つの励振電極43A、43Bに対する共通の励振電極(共通電極)42を配置している。従って、第1の励振電極43A及び共通電極42により第1の振動領域4Aが、また第2の励振電極43B及び共通電極42により第2の振動領域4Bが形成されることになる。なお、前記共通電極42及び励振電極43A、43Bの等価厚みは、例えば0.2μmであり、電極材料としては例えば金あるいは銀等が用いられている。第1の励振電極43A及び第2の励振電極43Bは、水晶センサー7をセンサーユニット2に装着した時に、図5に示すように、配線基板3の導電路32、34を介して、2つの発振回路6A、6Bに夫々接続されると共に、共通電極42は配線基板3の導電路33を介して発振回路6A、6Bのアース側に接続されることになる。上記の配線基板3の端部領域には、各導電路32〜34と夫々接続される接続端子35〜37が形成されている。
【0017】
そして、水晶センサー7の共通電極42における第1の励振電極43Aに対応する領域には、感知対象物である抗原を吸着するための抗体からなる吸着層(反応物質)46が形成されている。従って、上記の吸着層46に例えば試料液中の感知対象物が吸着すると、第1の振動領域4Aにおける発振周波数が質量負荷効果により低下する。一方、第2の振動領域4Bでは共通電極の表面が吸着層26が設けられておらず剥き出しとなっているため共通電極42に感知対象物が吸着しない。このため、感知対象物の吸着前後における各領域4A、4Bの発振周波数を比べることにより、センサーユニット2の周囲の温度、試料液の粘度、試料液中に含まれる感知対象物以外の物質の付着などの外乱の影響を抑えて吸着層46に吸着した感知対象物の量に対応する発振周波数の変化(低下分)を感知できることになる。なお、第2の振動領域を形成する領域の共通電極の表面は剥き出しとせず、例えば感知対象物と反応しないタンパク質からなるブロッキング層を形成してもよい。
【0018】
次に、流路形成部材5について図6及び図7を用いて説明する。図6は、センサーユニット2の縦断面を拡大したものである。図7(a)、(b)は、夫々流路形成部材5の裏面側及び表面側を示しており、凹部52の高さを誇張して描いている。流路形成部材5は弾性材料例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いて配線基板3の一端側に対応した形状に作成されている。流路形成部材5の裏面側の中央部には凹部52が形成されており、流路形成部材5と配線基板3とを流路形成部材5の裏面側が配線基板3と接するように重ね合わせて水晶振動子4に押し付けることにより、この凹部52が反応用流路となる。即ち、このとき前記凹部52の天井面は水晶振動子4の一面側である表面側における振動領域と隙間を介して対向する対向面であり、反応用流路はこの対向面と水晶振動子4との間の領域で凹部52の輪郭に沿った内周面に囲まれるように形成される。このため凹部及び反応用流路のいずれも符号52を用いることとする。この凹部52は、反応用流路52における液体の流れにデッドスペースが生じないように角が曲線状の菱形の形状をしている。この凹部52の中央部は水晶振動子4の前記第1の振動領域4A及び第2の振動領域4Bを含む領域よりもやや大きく設定され、流路形成部材5が配線基板3に当接することで凹部52内の中央部にて前記領域4A、4Bが収まるようになっている。そして、前記凹部52の高さは、例えば0.3mm以下に設定され、この例では0.15mmに設定されている。また、凹部52の対向面のY方向の対角線の両端に対応する箇所には流路形成部材5の裏面から表面に向けて前記対向面に対して垂直方向(Z方向)に流路が形成されている。この対向面に対して垂直な流路は、一方が液体供給口53となり、もう一方が液体排出口54に相当する。
【0019】
そして、図8及び図9に示すように、前記凹部52の対向面には、前記液体排出口54から前記第1の振動領域4A及び第2の振動領域4Bに向かって直線状に伸びる2本の溝部55A、55Bが形成されている。これら溝部55A、55Bは水晶振動子4の水晶部分に対向するように形成され、当該溝部55A、55Bにおける振動領域4A、4B側の端部は前記両振動領域4A、4Bに夫々対向しないように位置している。また、これら溝部55A、55Bは、液体排出口54から振動領域4A、4B側に夫々向かうにつれて互いの距離(X方向における距離)が大きくなるように形成されていて全体の平面形状がV字状をなしており、前記液体排出口54から各振動領域4A、4B側に伸びる反応用流路52の縁から、液体供給口53と液体排出口54とを結ぶライン側に寄っている。この例では、2本の溝部55A、55Bの各寸法は、例えば長さ3mm、幅0.5mm、深さ0.5mmに設定されている。
【0020】
また、発振回路ユニット6は、センサーユニット2に差し込まれることにより、図5に示すように、前記配線基板3の接続端子部と電気的に接続される。発振回路ユニット6の後段には、測定回路部81及びデータ処理部82が設けられている。前記測定回路部81は、例えば入力信号である周波数信号をディジタル処理して、発振周波数を計測する機能を有する。なお、測定回路部81は周波数カウンターであってもよく、測定方式を適宜選定することができる。データ処理部82は、計測された周波数の時系列データを記憶したりその時系列データを表示したりする部位であり例えばパーソナルコンピュータからなる。
【0021】
次に、感知装置の作用について図10を用いて説明する。液供給系1よりセンサーユニット2内に液体が供給され、その液体は液体供給口53から反応用流路52に流入する。その後、流入した液体は、反応用流路52内を液体排出口54に向けて放射状に両サイドに広がりながら(図10中(a))、第1の振動領域4A及び第2の振動領域4Bに達すると、当該両振動領域4A、4B間の濡れ性の差により親水性の第1の振動領域4A側に液体の流れが偏る(図10中(b))。ここで溝部55Aがない場合、このようにして液体の大部分が親水性振動領域4Aを通過し、さらにそのうちの一部が液体排出口54の付近から疎水性の振動領域4Bの側に回りこむことにより疎水性振動領域4B側に気泡が残留する場合があり、測定の信頼性を下げる原因になっている。
【0022】
これに対し、本感知装置では、実際にこの実施形態の寸法で反応用流路52を作製したところ、気泡は認められなかった。その理由は次のように推測される。溝部55Aがあるため表面張力の影響により液体に対して反応用流路52における溝部55Aの下方から両側に押し広げられる作用が働き、その結果親水性領域4A側からの一方的な液体の流出が抑制される。このため、その分液体の疎水性領域4B側への侵入の推進力が増し疎水性領域4Bへも液体が侵入し始める(図10中(c))。その後、親水性領域4A側からの液体は疎水性の金からなる引き出し電極44を越えて疎水性領域4B側に侵入するが、ここでも疎水性領域4B側の溝部55Bに妨げられ当該溝部55Bに沿って液体排出口54と反対方向に迂回することになる。
【0023】
その間に、疎水性領域4B側からの液体も疎水性領域4B側の溝部55Bまで到達し、また疎水性領域4B側の溝部55Bと疎水性領域4B側の反応用流路52の縁とに挟まれている領域が気泡の逃げ道として最後まで機能しているため(図10中(d))、気泡が残留することがなくなり、反応用流路52の両振動領域4A、4Bにおける均等な押し出し流れが実現される。その後、溝部55A、55Bの下の領域に液体が侵入してくるまでの間、気泡の残留し易い反応用流路52の縁付近に液体の流れが集中し液体の流速は増しているため、そのことも気泡の残留防止に寄与する。また、溝部55A、55Bは夫々両振動領域4A,4Bにかかっていないため、例えば振動領域4A、4B内の液体の流れを乱すような測定に対する邪魔をすることもない。そして、液体排出口54に到達した液体は液排出系90に排出される。
【0024】
一方、水晶センサー7の第1の振動領域4A及び第2の振動領域4Bは夫々発振回路ユニット6により発振し、それらの発振周波数は測定回路部81に取り込まれる。そして、データ処理部82にて第1の振動領域4Aにおける発振周波数と第2の振動領域4Bにおける発振周波数との差分が取り出され、その差分が感知対象物の吸着量として評価されることになる。
【0025】
上述の実施形態によれば、計測用の振動領域(第1の振動領域)4Aと参照用の振動領域(第2の振動領域)4BとがX方向に並ぶツイン型の水晶センサー7に臨むように反応用流路52が形成され、試料液の液体供給口53及び液体排出口54がY方向に並ぶ感知装置において、水晶センサー7の対向面における液体排出口54側に溝部55A、55Bを夫々形成し、両振動領域4A、4Bの濡れ性の程度の差に基づく液流れの偏りを抑えるようにしている。従って、反応用流路52内における気泡の残留を防止することができ、信頼性の高い測定を行うことができる。
【0026】
上記の例では、流路形成部材5における溝部55は、液体排出口54から両振動領域4A、4Bに向かって直線状に形成されていたが、この構成に限られない。溝部55の機能の一つとしては親水性領域4A側から疎水性領域4B側への液体の回りこみ防止が挙げられるため、図11(a)に示すように、親水性の第1の振動領域4A側のみに1本だけ溝部55が形成されていてもよい。また、溝部55は、曲線状であったり(図11中(b))、あるいは両振動領域4A、4Bの間即ち液体排出口54から液体供給口53に向かって1本だけ形成されていてもよい(図11中(c))。
【0027】
上述の実施形態では、凹部52は、角が曲線状の菱形の形状をしていたが、図12に示すように、楕円の形状であってもよいし、あるいは長方形や正方形であってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 液供給系
90 液排出系
2 センサーユニット
21 支持体
22 支持体凹部
24 カバー体
26 液体供給管
27 液体排出管
3 配線基板
4 水晶振動子
41 水晶片
4A 第1の振動領域
4B 第2の振動領域
42 共通電極
42、43 励振電極
44 引き出し電極
46 吸着層
7 水晶センサー
5 流路形成部材
52 反応用流路(凹部)
53 液体供給口
54 液体排出口
55 溝部
6 発振回路ユニット
6A、6B 発振回路
81 測定回路部
82 データ処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の圧電片に第1の振動領域及び第2の振動領域を形成するように2対の励振電極をX方向に並べて設けると共に当該圧電片の一面側の励振電極における第1の振動領域には試料液中の感知対象物を吸着する吸着層を形成し、当該一面側の第2の振動領域には吸着層を形成しない圧電センサーを用いて試料液中の感知対象物を感知する感知装置において、
前記圧電センサーの一面側に密着され、前記第1の振動領域及び第2の振動領域と隙間を介して対向する対向面を含み、当該一面側に臨む領域に反応用流路を形成するための流路形成部材と、
前記反応用流路におけるX方向と直交するY方向の一端側に設けられ、当該反応用流路に試料液を供給するための液体供給口と、
前記反応用流路におけるY方向の他端側に設けられ、当該反応用流路から試料液を排出するための液体排出口と、
前記吸着層の有無により第1の振動領域が親水性であり、第2の振動領域が疎水性であることに基づく液流れの偏りを抑えることを目的として、液の流れを規制するために前記対向面に形成された溝部と、を備え、
前記第1の振動領域及び第2の振動領域は、圧電センサーが発振回路により発振されたときに、これらの発振周波数に基づいて感知対象物を感知するために設けられたものであることを特徴とする感知装置。
【請求項2】
前記圧電センサーの一面側に臨む前記反応用流路の高さは、0.3mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の感知装置。
【請求項3】
前記溝部は、前記液体排出口側から第1の振動領域に向かって伸びる第1の溝部と、前記液体排出口側から第2の振動領域に向かって伸びる第2の溝部と、を含み、第1の溝部及び第2の溝部における振動領域側の端部は、夫々第1の振動領域及び第2の振動領域に重ならないように位置していることを特徴とする請求項1または2に記載の感知装置。
【請求項4】
前記第1の溝部及び第2の溝部は、上から見て、液体排出口から振動領域側に向かうにつれて互いの距離が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の感知装置。
【請求項5】
前記第1の溝部は、液体排出口から第1の振動領域側に伸びる反応用流路の縁から、液体供給口と液体排出口とを結ぶライン側に寄っており、
前記第2の溝部は、液体排出口から第2の振動領域側に伸びる反応用流路の縁から、前記ライン側に寄っていることを特徴とする請求項4に記載の感知装置。
【請求項1】
共通の圧電片に第1の振動領域及び第2の振動領域を形成するように2対の励振電極をX方向に並べて設けると共に当該圧電片の一面側の励振電極における第1の振動領域には試料液中の感知対象物を吸着する吸着層を形成し、当該一面側の第2の振動領域には吸着層を形成しない圧電センサーを用いて試料液中の感知対象物を感知する感知装置において、
前記圧電センサーの一面側に密着され、前記第1の振動領域及び第2の振動領域と隙間を介して対向する対向面を含み、当該一面側に臨む領域に反応用流路を形成するための流路形成部材と、
前記反応用流路におけるX方向と直交するY方向の一端側に設けられ、当該反応用流路に試料液を供給するための液体供給口と、
前記反応用流路におけるY方向の他端側に設けられ、当該反応用流路から試料液を排出するための液体排出口と、
前記吸着層の有無により第1の振動領域が親水性であり、第2の振動領域が疎水性であることに基づく液流れの偏りを抑えることを目的として、液の流れを規制するために前記対向面に形成された溝部と、を備え、
前記第1の振動領域及び第2の振動領域は、圧電センサーが発振回路により発振されたときに、これらの発振周波数に基づいて感知対象物を感知するために設けられたものであることを特徴とする感知装置。
【請求項2】
前記圧電センサーの一面側に臨む前記反応用流路の高さは、0.3mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の感知装置。
【請求項3】
前記溝部は、前記液体排出口側から第1の振動領域に向かって伸びる第1の溝部と、前記液体排出口側から第2の振動領域に向かって伸びる第2の溝部と、を含み、第1の溝部及び第2の溝部における振動領域側の端部は、夫々第1の振動領域及び第2の振動領域に重ならないように位置していることを特徴とする請求項1または2に記載の感知装置。
【請求項4】
前記第1の溝部及び第2の溝部は、上から見て、液体排出口から振動領域側に向かうにつれて互いの距離が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の感知装置。
【請求項5】
前記第1の溝部は、液体排出口から第1の振動領域側に伸びる反応用流路の縁から、液体供給口と液体排出口とを結ぶライン側に寄っており、
前記第2の溝部は、液体排出口から第2の振動領域側に伸びる反応用流路の縁から、前記ライン側に寄っていることを特徴とする請求項4に記載の感知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−8029(P2012−8029A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144757(P2010−144757)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
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