説明

懸濁水和させて施用する緩効性肥料

【課題】懸濁水和させて使用する緩効性肥料を提供する。
【解決手段】緩効性窒素肥料を63μm以下に粉砕分級した肥料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率的な施肥技術に関する。
【背景技術】
【0002】
緩効性肥料は、肥料の利用率を向上させ、環境への負荷を軽減できる上に、施用の省力化が図れることから広く使用されている。一般的に、肥料は粒径が小さくなるほど単位重量当たりの表面積が大きくなり、土壌への溶出ならびに土壌微生物による分解が速くなることから、市販されている緩効性肥料の多くは粒状である。また、一部には粉砕し、水を用いて散布することができる化学合成の緩効性窒素肥料も存在する。
【0003】
水溶性の肥料成分を被覆した緩効性肥料は安価であり、農業場面を中心に広く使用されている。一方、化学合成の緩効性窒素肥料は高価であるが、細菌のみによって分解され、糸状菌による発病を抑制する特徴から利用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
市販されている被覆緩効性肥料は粒状であり、水に懸濁させて散布することができない。芝生の育成で粒状の緩効性肥料が広く使用されているが、均一な施肥ができず、芝丈が不揃いになる傾向がある(特許文献1参照)。一方、化学合成の難溶性窒素肥料の粉砕品は水に懸濁して施用できるものの、粒径100μm以上の粒子を多数含むため、強制攪拌装置を有する大型散布機を必要とする。また、ジョウロ等の簡便な器具では沈殿を生じ、施用が困難であるため、家庭等で使用されることはなかった。加えて、散布量によっては葉上に汚れが見られるため好ましくない。
【特許文献1】特開平7−101793
【0005】
肥料は、粒径が小さくなるほど単位重量当たりの表面積が大きくなり、土壌への溶出ならびに土壌微生物による分解が速くなるといった理由から、懸濁水和可能な範囲で大きいほうが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは肥効を保持しながら、容易な散布を可能にする懸濁水和性を持たせるために、化学合成の緩効性窒素肥料を63μm以下に粉砕分級した。本発明に関わる緩効性窒素肥料としては、シクロジウレア(以下CDUと称す、窒素含量:32.6%)、オキサミド(窒素含量:31.8%)、およびメチレンウレアが挙げられる。
【0007】
本発明に関わる肥料を使用する場合、窒素肥料単独で用いる事もできるが、多くの場合は、使用する作物、土壌、使用時期等に応じてリン酸、カリウム、カルシウム、その他の微量要素を加えて用いられる。混合する肥料として、例えば、塩化カリウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、過リン酸石灰、重過リン酸石灰等が挙げられる。更に緩効性窒素肥料だけでは効果発現が遅い場合、粉砕強度を上げて対応することも可能であるが、安価な塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素などを適量加えて効果の発現速度、持続時間を調整することもできる。
【0008】
63μm以下に粉砕分級した緩効性窒素肥料に、その他の肥料成分を混合する場合、水に難溶性の化合物は緩効性窒素肥料と同様に63μm以下に粉砕分級する必要がある。一方、水溶性の高い肥料成分の場合は必ずしも細かく粉砕する必要はない。
【発明の効果】
【0009】
化学合成の緩効性窒素肥料を63μm以下に粉砕分級することによって、肥効を保持しながら、懸濁水和させて簡便な器具による施肥を可能にする。
【0010】
63μm以下に粉砕分級することによって、植物体を汚さない施肥を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
(調製例1)
【0011】
CDU(窒素保証値:31%、チッソ株式会社商品)178gに、リン酸水素二カリウム(和光純薬工業株式会社商品)22gを加え、振動ボールミル(筒井理化学器械株式会社製)で1時間粉砕して粒径63μm以下に篩い分けした。
N:P:KO=27.6:4.5:5.9
(調製例2)
【0012】
スーパーオキサミド(窒素保証値:30%、宇部興産農材株式会社商品)178gに、リン酸水素二カリウム22gを加え、振動ボールミルで1時間粉砕して粒径63μm以下に篩い分けした。
N:P:KO=26.7:4.5:5.9
(調製例3)
【0013】
CDU63gに尿素(和光純薬工業株式会社商品)15g、重過リン酸石灰(リン保証値:45%、住友商事株式会社商品)7g、硫酸カリウム(上野製薬株式会社商品)15gを加え、振動ボールミルで1時間粉砕して粒径63μm以下に篩い分けした。
N:P:KO=26.3:3.2:8.1
【実施例1】
【0014】
茨城県つくば市殿山地区の圃場内にある、植栽したベント芝を0.5mに区切り、調製例1、2による肥料と市販の比較対照肥料を電動散布機(株式会社丸山製作所製)を用いて、一平方メートル当たり500mlの水量で散布した。比較対照肥料1は、水に懸濁させて施用する微粉の速効性肥料であり、比較対照肥料2は、水に希釈して施用する液状の速効性肥料である。また、肥効の持続性を検討するために、比較対照肥料2は10日間隔で施肥し、その他の肥料は、10日、30日、60日と施肥間隔の異なる区を設けた。施肥量は、無処理区を除き、いずれの区も窒素成分量として1ヶ月当たり3gに統一した。肥料の効果は10日もしくは20日おきに、芝の緑度によって評価した。試験は各々2反復として、2004年4月14日から処理を開始した。尚、芝の刈り込みは1〜2日おきに行った。その結果の平均値を表1に示す。緑度は、水稲用の富士葉色カラースケール(富士写真フィルム株式会社製)を用い、1(黄色)〜7(深緑)の7段階と各段階の中間位を加えて評価した。また、比較対照肥料組成は以下の通りである。
比較対照肥料1(微粉ハイポネックス、日本ハイポネックス株式会社商品)
N:P:KO=6.5:6.0:19.0
比較対照肥料2(ハミドリンエース、丸和バイオケミカル株式会社商品)
N:P:KO:Fe=16.0:5.0:3.0:0.5
【0015】
【表1】

【実施例2】
【0016】
茨城県つくば市殿山地区の圃場内にある、植栽したベント芝を0.5mに区切り、調製例3による肥料と比較対照肥料を電動散布機により、一平方メートル当たり500mlの水量で散布した。比較対照肥料3は、水に懸濁させて施用する微粉の緩効性肥料である。施肥間隔は、調製例3による肥料および比較対照肥料3は30日、60日、比較対照肥料2は10日とした。施肥量は、無処理区を除き、いずれの区も窒素成分量として1ヶ月当たり3gに統一した。芝生の管理、緑度評価は実施例1と同様に行った。試験は各々2反復として、2004年9月24日から処理を開始した。その結果の平均値を表2に示す。また、市販の比較対照肥料組成は以下の通りである。
比較対照肥料3(グリーンベースNPK チッソ旭株式会社商品)
N:P:KO:Mg=18.0:6.0:10.0:4.0
【0017】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁水和させて施用する粒径63μm以下に調製した緩効性窒素肥料。
【請求項2】
請求項1に示す緩効性窒素肥料に、粒径63μm以下に調製した水に難溶性のその他の肥料成分、もしくは水に易溶性のその他の肥料成分を混合した肥料。