説明

成形体の酸化方法

【課題】工数が少なく、製造コストを抑制できる、天然繊維を含む表面及び内部を酸化できる成形体の酸化方法の提供。
【解決手段】天然繊維を含む成形体2a、2b、2cと、N−オキシル化合物を含む酸化触媒液4とを機械的操作で接触させる工程を含んでおり、前記工程において前記成形体表面及び内部を酸化処理して、前記天然繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量を0.1〜2mmol/gの範囲にする、天然繊維を含む成形体の酸化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然繊維を含む成形体の酸化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、非特許文献1には、いずれもセルロースを酸化して利用する技術が知られている。これらの技術では、いずれもパルプ懸濁液(パルプスラリー)と酸化剤とを接触させる方法が適用されている。
【0003】
この方法であると、酸化された成形体を製造する場合、まず前処理として酸化されていないパルプを解繊及び必要に応じて叩解する必要があり、該解繊・叩解されたパルプ繊維の懸濁液と酸化剤とを接触させた後に濾過、洗浄、脱水、乾燥等の工程を経て得られた酸化パルプ繊維を、さらに再度パルプ懸濁液にして抄紙、乾燥させる工程が必要となり、処理操作が煩雑であり、工数も増加する。
【0004】
一方、特許文献2には、材料の形状を保ったまま多糖類材料の表面が酸化された酸化多糖類材料の製造方法が開示されている。
【0005】
この方法は、多糖類材料を酸化触媒液に浸漬させているのみであり、酸化改質されるのは材料の表面部分に限られていて、得られた酸化された材料の適用範囲が限定されていた。
【特許文献1】特開2001−115389号公報
【特許文献2】特開2003−183302号公報
【非特許文献1】Bio MACROMOLECULES Volume7, Number6,2006年6月,Published by the American Chemical Society
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、処理を簡略化させ、工数も減少させることができる、天然繊維を含み、表面及び内部を酸化できる、成形体の酸化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は解決手段として、天然繊維を含む成形体と、N−オキシル化合物を含む酸化触媒液とを機械的操作で接触させる工程を含んでおり、前記工程において前記成形体の表面及び内部を酸化処理して、前記天然繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量を0.1〜2mmol/gの範囲にする、天然繊維を含む成形体の酸化方法を提供する。
【0008】
請求項4の発明は解決手段として、天然繊維を含む成形体を、N−オキシル化合物を含む酸化触媒液が注入された酸化反応槽内へ送り出す工程、該酸化反応槽内の成形体を移送しながら、前記成形体とN−オキシル化合物を含む酸化触媒液を機械的操作で接触させ、前記成形体の表面及び内部を酸化処理して、前記天然繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量を0.1〜2mmol/gの範囲にする工程、
酸化処理後の成形体を水洗する工程、
を有している天然繊維を含む成形体の酸化方法であって、
前記機械的操作が酸化反応槽内の成形体を移送させることである、天然繊維を含む成形体の酸化方法を提供する。
【0009】
請求項5の発明は解決手段として、N−オキシル化合物を含む酸化触媒液が注入され、吸引手段が設置されている酸化反応槽内に、天然繊維を含む成形体を浸漬する工程、
前記成形体とN−オキシル化合物を含む酸化触媒液を機械的操作で接触させ、前記成形体の表面及び内部を酸化処理して、前記天然繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量を0.1〜2mmol/gの範囲にする工程、
を有している天然繊維を含む成形体の酸化方法であって、
前記機械的操作が、前記吸引手段により、前記酸化反応槽内の酸化触媒液を吸引することである天然繊維を含む成形体の酸化方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の天然繊維を含む成形体の酸化方法によれば、処理操作が容易で工数も少なくすることができる。また、表面及び内部が酸化処理された成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<成形体の酸化方法−1>
天然繊維を含む成形体としては、木材パルプ、非木材パルプ、再生セルロース、バクテリアセルロース、コットン、絹、羊毛、キチン、キトサン、アルギン酸、コラーゲン等を含むシートを挙げることができる。
【0012】
成形体の大きさや形状は特に制限されないが、厚さは、好ましくは0.01〜10mm、より好ましくは0.03〜3mm、さらに好ましくは0.05〜1mmの範囲から選択することができ、シート状の成形体が好ましい。
【0013】
N−オキシル化合物を含む酸化触媒液としては、N−オキシル化合物、他の酸化剤、ハロゲン化物を含む溶液又は懸濁液を使用する。
【0014】
N−オキシル化合物としては、2,2,6,6,−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(TEMPO)を用いることができる。TEMPOの使用量は、成形体(絶対乾燥基準)に対して、約0.1〜30質量%となる範囲であることが好ましい。また、触媒液の濃度としては0.001〜30質量%となる範囲であることが好ましい。
【0015】
他の酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸,亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物等を挙げることができ、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。酸化剤の使用量は、成形体(絶対乾燥基準)に対して、約1〜50質量%となる範囲である。
【0016】
ハロゲン化物としては、臭化物又はヨウ化物が好ましく、例えば、臭化アルカリ金属やヨウ化アルカリ金属を挙げることができ、臭化ナトリウムが好ましい。ハロゲン化物の使用量は、成形体(絶対乾燥基準)に対して、約1〜30質量%となる範囲であることが好ましい。また、触媒液の濃度としては0.01〜30質量%となる範囲であることが好ましい。
【0017】
溶媒は水を使用するが、酸化触媒液の表面張力を低下させ、成形体に浸透させやすくする観点から、メタノール、エタノール等のアルコール、各種の界面活性剤を含有させることができる。アルコールは反応性の観点から2級以上のアルコールが好ましい。1級アルコールを使用すると、酸化触媒液と1級アルコール自身が反応する場合があるからである。
【0018】
酸化触媒液の溶媒として、水とエタノール等の有機溶媒の混合物を使用する場合、有機溶媒の含有量は5〜80質量%が好ましく10〜60質量%がより好ましく、20〜50質量%が更に好ましい。
【0019】
酸化触媒液のpHは、酸化反応を効率良く進行させる点から9〜12の範囲であることが好ましい。
【0020】
酸化処理においては、成形体と酸化触媒液を機械的操作で接触させる。本願でいう機械的操作とは、成形体又は酸化触媒液に機械的な運動を与えることを意味し、例えば下記の方法がある。
【0021】
(I)容器内に満たされた酸化触媒液に、成形体を浸漬し、酸化触媒液を攪拌(機械的操作)して、酸化触媒液を成形体内に拡散及び/又は通過させる方法、
(II)成形体に酸化触媒液を塗布又は噴霧(機械的操作)して、酸化触媒液を成形体内に拡散及び/又は通過させる方法、
(III)成形体を酸化触媒液が注入された酸化反応槽内へ送り出し、酸化反応槽内の成形体を移送(機械的操作)して、酸化触媒液を成形体内に拡散及び/又は通過させる方法、
(IV)酸化触媒液を重力で酸化触媒液を成形体内に拡散及び/又は通過させる方法、
(V)酸化触媒液を吸引(機械的操作)して、酸化触媒液を成形体内に拡散及び/又は通過させる方法、
等を適用できる。
【0022】
(I)の方法において、攪拌方法としては、撹拌装置又は成形体自体で容器内の酸化触媒液を攪拌する方法、容器自体を振動させる方法、容器内の酸化触媒液を超音波振動させる方法、容器内の酸化触媒液を循環させる方法等を適用できる。また、酸化触媒液が運動していれば良いとの観点から、酸化触媒液を容器に充填しながら該溶液を攪拌させる方法、攪拌した直後に容器中の酸化触媒液が動いている間に成形体を入れる方法も適用できる。さらに、酸化触媒液に成形体を浮かべた状態で攪拌する方法も適用できる。なお、容器には後述の酸化反応槽内も含まれる。
【0023】
(II)の方法において、成形体の一部に酸化触媒液を塗布又は噴霧する場合には、例えば、成形体の或る一面又は全面に酸化触媒液を塗布又は噴霧する方法を適用できる。また、噴霧には噴射の意味も含まれている。例えば、適当な容器内にて、成形体を垂設した状態で固定し、成形体の或る一面(帯状又はシート状成形体の場合は片面)又は全面(帯状又はシート状成形体の場合は両面)に酸化触媒液を噴射させる方法等を適用できる。
【0024】
(III)の方法において、酸化反応槽内の成形体を移送させることにより、成形体の表面及び内部を酸化処理できる理由を以下に様に考えている。成形体を移送させることにより、成形体の周囲に酸化触媒液の乱れ(渦等)が発生し、この乱れが成形体内に酸化触媒液を拡散及び/又は通過させるドライビングフォースとなっているものと考えられる。
【0025】
(IV)の方法において酸化触媒液を重力で酸化触媒液を成形体内に拡散及び/又は通過させる場合には、例えば、一面が開口した容器の開口部に成形体を置き、上から酸化触媒液を流し、成形体内に酸化触媒液を重力で拡散及び/又は通過させる方法等を適用できる。
【0026】
(V)の方法において酸化触媒液を吸引して酸化触媒液を成形体内に拡散及び/又は通過させる方法には、例えば、一面が開口した容器の開口部に成形体を置き、成形体の上から酸化触媒液を流し、成形体の下面に吸引ポンプ等の吸引手段を接触させて、成形体内に酸化触媒液を吸引力で拡散及び/又は通過させる方法等を適用できる。
【0027】
上記のようにして成形体と酸化触媒液を接触させるときには、0〜80℃(好ましくは1〜50℃)で、0.1〜360分間(好ましくは1〜120分間)保持することが望ましい。
【0028】
このような酸化処理により、成形体の表面及び内部に対して、成形体(天然繊維)を構成するセルロースの構成単位のC6位が選択的にカルボキシル基に酸化され(−CHOH → −COONa)、前記成形体(天然繊維)を構成するセルロースのカルボキシル基含有量を0.1〜2mmol/gの範囲にすることができる。前記カルボキシル基含有量は、好ましくは0.4〜2mmol/g、より好ましくは0.6〜1.8mmol/gである。カルボキシル基含有量は、実施例に記載の測定方法により、求められるものである。
【0029】
酸化処理後、脱水、洗浄、乾燥等の処理をすることができるが、パルプ懸濁液の場合に比べると、いずれの処理も容易である。
【0030】
本発明の酸化方法により得られた成形体は、酸素、水蒸気等のガスバリア膜の製造原料、イオン交換膜、透析膜、脱塩膜等の製造原料として適している。
【0031】
<成形体の酸化方法−2;連続式酸化方法>
図1により、連続式酸化方法を説明する。これは、前記酸化方法(III)を利用した方法である。図1は、連続式酸化方法を示す概念図である。以下、工程ごとに説明する。なお、成形体、酸化触媒液、酸化処理条件等は、上記の成形体の酸化方法−1と同じである。
【0032】
第1工程にて、原反ロール1から、天然繊維を含む帯状の成形体2aを連続的に送り出す。
【0033】
次に、第2工程にて、帯状の成形体2aを酸化反応槽3内に導き、酸化反応槽3内に満たされた酸化触媒液4とを機械的操作で接触させる。この場合の機械的操作とは、前述の様に酸化反応槽内の帯状の成形体を移送させることである。このような酸化処理により、帯状の成形体の表面及び内部に対して、成形体(天然繊維)2aを構成するセルロースの構成単位のC6位が選択的にカルボキシル基に酸化され(−CHOH → −COONa)、前記帯状の成形体(天然繊維)を構成するセルロースのカルボキシル基含有量を0.1〜2mmol/g(好ましくは0.4〜2mmol/g、より好ましくは0.6〜1.8mmol/g)の範囲にすることができる。
【0034】
次に、第3工程において、酸化処理後の帯状の成形体2bをイオン交換水(又は蒸留水)6が満たされた水槽(水洗槽)5内に導き、連続的に水洗する。水洗の条件は、帯状の成形体2bが水槽5内に合計で10〜600秒間、留まるようにする。
【0035】
次に、第4工程にて、水洗後の帯状の成形体2cをロールに巻き取る。巻き取る前に必要な場合に帯状の成形体2cを適宜な方法で乾燥させても良い。乾燥は、自然乾燥でもよいし、送風乾燥でもよい。第1〜第4工程における帯状の成形体の送りは、駆動手段により回転可能な送りロール1と巻き取りロールを回転させることで行われ、複数の送り及び支持ロール9により、途中の帯状の成形体を支持する。
【0036】
本発明の連続式酸化方法によれば、酸化、水洗、乾燥を連続的に行うことができるため、生産効率を高くすることができる。
【0037】
本発明の連続酸化方法により得られた帯状の成形体は、酸素、水蒸気等のガスバリア膜の製造原料、イオン交換膜、透析膜、脱塩膜等の製造原料として適している。
【0038】
<成形体の酸化方法−3;循環式酸化方法>
図2により、循環式酸化方法を説明する。これは、前記酸化方法(V)を利用した方法である。図2は、循環式酸化方法を示す概念図である。なお、成形体、酸化触媒液、酸化処理条件等は、上記の成形体の酸化方法−1と同じである。
【0039】
酸化反応槽11内には、酸化触媒液12が満たされている。更に、酸化反応槽11内の中央部には、図示していない固定手段で着脱自在に固定された平板状の吸引手段13が浸漬されており、平板状の吸引手段13を間において、図示していない固定手段で着脱自在に固定された2枚の天然繊維を含むシート状成形体14、15が浸漬されている。平板状の吸引手段13と、2枚のシート状成形体14、15は正対しており、それらの間隔は同じである。
【0040】
平板状の吸引手段13は、両面部分が通液可能な構造であり、酸化触媒液12の液面から出ている上端部には、図示していない吸引ポンプと接続された2本の返送パイプ14a、15aが接続されている。
【0041】
図示していない吸引ポンプを駆動させると、平板状の吸引手段13の両面側から酸化触媒液12が吸引され、吸引された酸化触媒液12は2本の返送パイプ14a、15aを通って、酸化反応槽11内に返送される。
【0042】
この過程において、酸化触媒液12は、平板状の吸引手段13に等間隔で正対している2枚のシート状成形体14、15内を拡散及び/又は通過し、それらを構成する天然繊維(セルロース)を酸化する。このような酸化処理により、シート状成形体(天然繊維)14、15を構成するセルロースの構成単位のC6位が選択的にカルボキシル基に酸化され(−CHOH → −COONa)、前記シート状成形体(天然繊維)14、15を構成するセルロースのカルボキシル基含有量を0.1〜2mmol/g(好ましくは0.4〜2mmol/g、より好ましくは0.6〜1.8mmol/g)の範囲にすることができる。
【0043】
酸化反応終了後、2枚のシート状成形体14、15を酸化反応槽11から引き上げ、水洗、乾燥等の処理をする。
【0044】
本発明の循環式酸化方法により得られたシート状成形体は、酸素、水蒸気等のガスバリア膜の製造原料、イオン交換膜、透析膜、脱塩膜等の製造原料として適している。
【0045】
本発明は、前記実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【0046】
前述の<成形体の酸化方法−2;連続式酸化方法>では、原反ロール1から、天然繊維を含む帯状の成形体を連続的に送り出して、酸化反応槽内に導いたが、帯状の成形体の代わりに毎葉のシート状成形体を用い、把持具付きの移送装置等(たとえば、環状に接続されているチェーンやベルトにシート状成形体を把持するグリッパーが設置されていて、モーター等でチェーン等を動かす装置)で、酸化反応槽内を移送させることもできる。
【0047】
本発明の製造方法において、酸化触媒液との接触により成形体の強度が低下し、成形体が破断したり繊維の脱落を防止するために、成形体をサポートするネットで成形体の或る一面(帯状又はシート状成形体の場合は片面)もしくは全面(帯状又はシート状成形体の場合は両面)を支持することができる。また、非酸化性の長繊維を成形体に含有させることによって、成形体自体を強化することもできる。この場合、使用するネット又は長繊維は、酸化反応に影響を与えずに且つ天然繊維との分離が容易であることが好ましく、例えば合成樹脂性、金属製の繊維を使用することが望ましい。
【0048】
なお、酸化触媒液との接触により成形体の強度が低下することを防止する為に、成形体には、例えば湿潤紙力剤(例えばポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂)等を適宜添加させることもできる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。しかし、本発明は、下記により何ら制限されるものではない。
【0050】
(1)カルボキシル基含有量(mmol/g)の測定法
絶乾パルプ約0.5gを100mlビーカーにとり、イオン交換水を加えて全体で55mlとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mlを加えて0.83質量%パルプ懸濁液とし、パルプが十分に分散するまでスタラーにて攪拌した。そして、0.1M塩酸を加えてpH2.5〜3.0としてから、自動滴定装置(AUT−501、東亜デイーケーケー(株)製)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で注入し、パルプ懸濁液の1分ごとの電導度とpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続けた。そして、得られた電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、カルボキシル基含有量を算出した。
【0051】
(2)以下の実施例及び比較例で使用した酸化触媒とパルプシートは次のとおり;
酸化触媒水溶液:TEMPO 1.25質量%、NaClO 12.5質量%、NaBr 14.2質量%、イオン交換水 9.900質量%(いずれも使用したパルプシートの絶乾質量に対する割合)
パルプシート:商品名針葉樹の漂白クラフトパルプ(製造会社:フレッチャー チャレンジ カナダ、商品名 「Machenzie」寸法(縦50mm、横50mm、厚み1.5mm)、質量3g
実施例1
約300mlの酸化触媒液を満たした300mlのビーカー内に、室温(20℃)で、厚さ1.5mmのパルプシートを完全に浸漬した。この状態で攪拌装置で攪拌しながら30分間放置した後、ビーカーから引き上げ、洗浄ろ液の水の電導度が洗浄前の水のそれと同等になるまで十分に洗浄した後、自然乾燥させた。その結果、セルロースのカルボキシル基含有量は0.25mmol/gであり、パルプシートが酸化されていることを確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の酸化方法の一実施形態を示す概念図。
【図2】本発明の酸化方法の他実施形態を示す概念図。
【符号の説明】
【0053】
1 原反ロール
2a、2b、2c 帯状の成形体
3 酸化反応槽
5 水洗槽
11 酸化反応槽
14、15 シート状成形体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維を含む成形体と、N−オキシル化合物を含む酸化触媒液とを機械的操作で接触させる工程を含んでおり、前記工程において前記成形体の表面及び内部を酸化処理して、前記天然繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量を0.1〜2mmol/gの範囲にする、天然繊維を含む成形体の酸化方法。
【請求項2】
前記機械的操作が、容器内の酸化触媒液を攪拌することである請求項1に記載の天然繊維を含む成形体の酸化方法。
【請求項3】
前記機械的操作が、酸化触媒液を成形体に塗布又は噴霧することである請求項1に記載の天然繊維を含む成形体の酸化方法。
【請求項4】
天然繊維を含む成形体を、N−オキシル化合物を含む酸化触媒液が注入された酸化反応槽内へ送り出す工程、該酸化反応槽内の成形体を移送しながら、前記成形体とN−オキシル化合物を含む酸化触媒液を機械的操作で接触させ、前記成形体の表面及び内部を酸化処理して、前記天然繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量を0.1〜2mmol/gの範囲にする工程、
酸化処理後の成形体を水洗する工程、
を有している天然繊維を含む成形体の酸化方法であって、
前記機械的操作が酸化反応槽内の成形体を移送させることである天然繊維を含む成形体の酸化方法。
【請求項5】
N−オキシル化合物を含む酸化触媒液が注入され、吸引手段が設置されている酸化反応槽内に、天然繊維を含む成形体を浸漬する工程、
前記成形体とN−オキシル化合物を含む酸化触媒液を機械的操作で接触させ、前記成形体の表面及び内部を酸化処理して、前記天然繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量を0.1〜2mmol/gの範囲にする工程、
を有している天然繊維を含む成形体の酸化方法であって、
前記機械的操作が、前記吸引手段により、前記酸化反応槽内の酸化触媒液を吸引することである天然繊維を含む成形体の酸化方法。
【請求項6】
前記天然繊維を含む成形体が厚さ0.01〜10mmのものである、請求項1〜5のいずれか1項記載の天然繊維を含む成形体の酸化方法。
【請求項7】
前記天然繊維を含む成形体と、N−オキシル化合物を含む酸化触媒液との接触を0〜80℃で、0.1〜360分間行う、請求項1〜6のいずれか1項記載の天然繊維を含む成形体の酸化方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−1936(P2009−1936A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164495(P2007−164495)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】