説明

成形型内面の寸法検査方法

【目的】 簡易な設備で容易に、しかも型内面を傷つけることなく型内面の寸法検査を行える方法を提供することを目的とする。
【構成】 成形型10の型内面17,19間より大なる厚みの軟質発泡体12に硬化型樹脂を含浸させて樹脂含浸発泡体15を形成し、前記樹脂含浸発泡体15を成形型10内に配置し、前記成形型10を閉じて樹脂含浸発泡体15を成形型内面17,19で圧縮して型内面17,19形状に付形するとともに、前記樹脂含浸発泡体15内の含浸樹脂を硬化させて発泡体硬化物を形成し、その後前記発泡体硬化物を成形型10から取り出して発泡体硬化物各部分の寸法を測定することにより成形型内面の寸法を検査する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、成形型の製造途中あるいは製造後に型内面の寸法を検査する方法に関する。ここで寸法とは、単に長さ、厚み、間隔のみならず、曲面形状、屈曲形状等の表面形状も言う。
【0002】
【従来の技術】自動車用成形天井、自動車用ドアパネル等の自動車内装製品あるいはその他のパネル状樹脂製品にあっては、製品の外面と等しい形状の型内面を有する成形型を用いて成形材料を型内面形状に圧縮成形あるいは発泡成形することがなされている。
【0003】ところで前記の成形型は、型内面によって製品外形が定まるため、型内面を正確に仕上げる必要がある。そのため、成形型の製造途中であるいは製造後に成形型内面の寸法を検査することがなされている。
【0004】従来、成形型内面の寸法検査方法として、型内面の寸法を直接測定する代わりに鉛板、鉛棒または粘土を型内面間で挟んで型内面形状に付形し、あるいはシリコンゴムを型内に注入して型内面形状に硬化させ、その後鉛板等を成形型から取り出して鉛板等の各部分の寸法を測定することにより、型内面の寸法を簡易に検査したり、またはその型を正規の工程、設備に搭載すると共に所定の素材を使用し、通常の生産工程とほぼ同一の条件で製作した物を検査することが行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記の寸法検査方法にあっては次のような問題がある。まず鉛板または鉛棒を用いる場合には、鉛自体の密度が高いため、検査対象の型内面が大きくなると鉛板、鉛棒が極めて重くなって取り扱いが容易ではなくなる。また、鉛板、鉛棒は型締め圧を大きくしないと型内面形状に変形しないため、大なる型締め装置が必要になるばかりか、特に成形型がアルミ製の場合には鉛板、鉛棒による傷が型内面に生じやすい問題もある。
【0006】一方、粘土にあっては粘土を型内面に配置する際あるいは成形型から取り出す際、さらには寸法測定の際に粘土が破損し易く、取り扱いが容易ではない問題がある。またシリコンゴムは、成形型から取り出すと変形し易いため寸法測定が容易ではなく、しかも高価なため安価に寸法測定を行うことができない問題もある。そこで一部には前述のように型を正規工程、設備に搭載して試作されることも多い。しかしこの場合には、型及び付属装置の予熱や素材の準備等その前準備、後処理が必須となる等ロスが大きくなる問題を有している。
【0007】そこでこの発明は、前記の点に鑑み、簡易な設備で容易に、しかも型内面を傷つけることなく型内面の寸法検査を行える方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は、成形型の型内面間より大なる厚みの軟質発泡体に硬化型樹脂を含浸させて樹脂含浸発泡体を形成し、前記樹脂含浸発泡体を成形型内に配置し、前記成形型を閉じて樹脂含浸発泡体を成形型内面で圧縮して型内面形状に付形するとともに、前記樹脂含浸発泡体内の含浸樹脂を硬化させて発泡体硬化物を形成し、その後前記発泡体硬化物を成形型から取り出して発泡体硬化物各部分の寸法を測定することを特徴とする成形型内面の寸法検査方法に係る。
【0009】
【実施例】以下添付の図面に従ってこの発明を詳細に説明する。図1ないし図5はこの発明の一実施例を作業順に示す断面図である。まず成形型10の型内面間より大なる厚みの軟質発泡体12に硬化型樹脂14を含浸させて樹脂含浸発泡体15を形成する。
【0010】この実施例における成形型10は、上型16と下型18とからなり、内部に製品形状の型内空間20を有する。型内空間20は、上型型内面17と下型型内面19とから構成される。なお、成形型10は製造途中段階でも、あるいは製造終了段階でもよい。
【0011】軟質発泡体12は、硬化型樹脂14が含浸可能な連通気泡構造を主体とするものであればよく、特には軟質ウレタンフォームのスラブからなるものが好適である。軟質発泡体12の厚みは、用いる軟質発泡体の硬さ、型内面の形状等によって異なるが、通常型内面17,19間の間隔に対し120%程度にするのが好ましい。なお、軟質発泡体12は多層としてもよい。また、軟質発泡体12の大きさは、型内面の検査対象部分より大きくされる。たとえば型内面全体の寸法を検査する場合は、その型内面全体より大きくされ、一方型内面一部の寸法を検査する場合には、その検査対象部分よりも大きくされる。
【0012】硬化型樹脂14は、軟質発泡体12に含浸可能な粘度を有する液状のものが用いられる。その硬化型樹脂14としては、エポキシ樹脂あるいは水分硬化性のイソシアネート化合物溶液等が用いられる。硬化型樹脂14の含浸量は、硬化型樹脂14の種類等により異なるが、エポキシ樹脂を用いる場合は軟質発泡体12の1リットル容積当り200〜600gにするのが好ましい。エポキシ樹脂の一例として、L−404(エス化研製)100gに対し硬化剤H−18(エス化研製)18gを混合して、硬化時間を24時間に設定したものを挙げる。
【0013】なお、硬化型樹脂14の含浸は、垂らし、ハケ塗り、あるいは浸漬等通常なされている含浸方法により行う。また含浸量を一定にするためには、含浸後の軟質発泡体をロール間に通して所定厚みまで軟質発泡体を絞るのが好ましい。
【0014】次いで、図2に示すように前記樹脂含浸発泡体15を成形型10内に配置する。勿論、型内面の一部の寸法を検査する場合には、その検査対象となる型内面部分に樹脂含浸発泡体15を配置すればよい。
【0015】なお、前記樹脂含浸発泡体15を成形型10内に配置するに先立って、型内面17,19には離型剤を塗布し、あるいは離型用のシートを配置するのが好ましい。また、寒冷紗等からなる網状の補強シートを樹脂含浸発泡体15に一層または二層以上積層、あるいは樹脂含浸発泡体15が多層からなる場合には樹脂含浸発泡体15間に挟んでもよい。前記補強シートを併用すれば、含浸樹脂の硬化により形成される発泡体硬化物の強度を増大させることができ、その発泡体硬化物の脱型あるいは寸法測定時の取り扱いがより容易になる。
【0016】その後、図3に示すように成形型10の上型16と下型18を閉じ、前記樹脂含浸発泡体15を型内面17,19により圧縮して型内面形状に付形する。この時の型締め圧は、型内の樹脂含浸発泡体15が軟らかい軟質発泡体12を構成材としているため小さなものでよい。そして閉型状態で所定時間放置して樹脂含浸発泡体15内の硬化型樹脂を硬化させる。それにより樹脂含浸発泡体15は、型内面形状と等しい形状に固定された発泡体硬化物22になる。なお、含浸樹脂がエポキシ系樹脂等のように硬化時に発熱する樹脂の場合には、歪みの少ない、しかも寸法安定性の高い発泡体硬化物22を得るため、硬化時における成形型10の温度を40℃以下に保つのが好ましい。
【0017】前記含浸樹脂の硬化後、図4に示すように成形型10を開けて発泡体硬化物22を脱型する。そして図5に示すように、ノギス、マイクロメーター、Rゲージ等の測定具24により発泡体硬化物22各部分の厚み、長さ、曲面形状等の寸法を測定し、その測定値により型内面17,19の寸法が正確になっているか否か検討する。なおその際に目視による検査も適宜加える。
【0018】
【発明の効果】以上図示し説明したように、この発明は、軟質発泡体に硬化型樹脂を含浸させて形成した樹脂含浸発泡体を型内面で圧縮するため、型締め圧力が小さくて済み、簡易な設備で容易に型内面の寸法を検査できる。しかも、軟らかい軟質発泡体を型内面で圧縮するため、型内面が傷付けられることもない。さらに、軟質発泡体は軽量なため取り扱いが容易であり、そのうえ鉛、シリコンゴム等と比べると格段に安価なため、それによっても容易安価に型内面の寸法検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例における硬化型樹脂の含浸時を示す断面図である。
【図2】同実施例において樹脂含浸発泡体を型内に配置する際を示す断面図である。
【図3】同実施例において樹脂含浸発泡体を型内面で圧縮した状態を示す断面図である。
【図4】同実施例において発泡体硬化物を脱型する際を示す断面図である。
【図5】同実施例において発泡体硬化物の寸法測定時を示す断面図である。
【符号の説明】
10 成形型
12 軟質発泡体
14 硬化型樹脂
15 樹脂含浸発泡体
17 型内面
19 型内面
20 型内空間
22 発泡体硬化物

【特許請求の範囲】
【請求項1】 成形型の型内面間より大なる厚みの軟質発泡体に硬化型樹脂を含浸させて樹脂含浸発泡体を形成し、前記樹脂含浸発泡体を成形型内に配置し、前記成形型を閉じて樹脂含浸発泡体を成形型内面で圧縮して型内面形状に付形するとともに、前記樹脂含浸発泡体内の含浸樹脂を硬化させて発泡体硬化物を形成し、その後前記発泡体硬化物を成形型から取り出して発泡体硬化物の各部分の寸法を測定することを特徴とする成形型内面の寸法検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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