説明

成形機の成形品取出構造

【課題】 取出可能な成形品の材質,形状,重量に制限が少なく、成形品に傷が付きにくく、成形品の大きさの変化にも容易に対応可能な成形機の成形品取出構造を提供する。
【解決手段】成形機の金型(1),(3)の型開き空間と成形品引き渡し位置との間を移動できる成形品取出部材(18)を有する。成形品取出部材は成形品(12)を載置する棚部(19)と、成形品(12)を押圧して該棚部(19)との間で成形品(12)を挟持可能な可動面板(21)を備えている。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、発泡成形機等の成形機における成形品の取出構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図1は本考案の成形品取出構造を備えた成形機を示した図であるが、成形品取出構造を除いた一般的な成形機としての構成は従来と同様であるため、便宜上本図を用いて一般的な成形機の構成を概説する。
【0003】
図中において(1)は固定金型、(2)は固定金型(1)を装着する固定ダイプレートである。(3)は移動金型、(4)は移動金型(3)を往復駆動させるための駆動装置のシリンダである。(5)は発泡成形機の制御装置であり、装置全体の制御を行うものである。(6)はエジェクターで、固定ダイプレート(2)にスライド自在に取り付けられており、その先端部分はキャビティ(9)の内面に突出できるようになっている。(7)はフィラーで、固定金型(1)のキャビティ(9)に連通するように配設されている。(8)は原料供給筒で、フィラー(7)に接続され、フィラー(7)に原料ビーズを供給するようになっている。(11)はタイバーで、固定ダイプレート(2)とシリンダプレート(10)との間に架設されており、移動金型(3)がタイバー(11)に沿って往復移動できるようになっている。
【0004】
駆動装置(4)を作動させ、移動金型(3)を固定金型(1)方向に移動させて型閉を行い、次いでフィラー(7)を作動させて、移動金型(3)と固定金型(1)によって形成されるキャビティ(9)内に原料ビーズを充填する。
【0005】
原料ビーズのキャビティ(9)への供給は、原料供給筒(8)によって行われる。キャビティ(9)に原料ビーズが充填されると高温蒸気を固定金型(1)または移動金型(3)の蒸気室に供給してキャビティ(9)内の原料ビーズを加熱し、発泡膨張させて発泡成形品(12)を形成する。然る後、発泡成形品(12)を冷却してから駆動装置(4)を逆作動させ、移動金型(3)を固定金型(1)から離間させる。移動金型(3)が固定金型(1)から離れると、移動金型(3)と連動するエジェクター作動板(6a)がエジェクター(6)の端部に当接し、エジェクター(6)が成形品を固定金型(1)から押し出す。
【0006】
押し出された成形品の取出手段としては従来より以下のような形式のものがある。
[従来例1]
まず、移動金型と固定金型との間にポンプ等により減圧吸引する真空パッドを備えた取出部を挿入し、成形品を吸着して整列台等に移送させる手段がある(図示せず)。
【0007】
しかしながら、真空パッド式の場合は成形品が発泡成形品の取出に用いると、強い吸引による吸引口の跡(いわゆる「キスマーク」)が成形品に残り、商品価値が低下する。
【0008】
又、成形品の吸引口当接部に凹凸がある場合には、成形品と真空パッドとの隙間から空気が入り込むため、十分に吸引することができず、更に成形品の重量が大い場合には吸着保持が困難となる。したがって、適用できる成形品の形状や重量範囲が狭いという問題点がある。
【0009】
[従来例2]
次に、板バネ式の成形品取出構造を図5に示す。垂直ガイド(115)に沿って昇降する成形品取出部材(118)の授受パネル(117)に、成形品に合わせて成形品引取用通孔(117a)が一定の間隔で穿設されており、その周囲に板バネ(117b)が設けられており、エジェクターを作動させてキャビティから成形品を押し出した時に、前記成形品引取用通孔(117a)に成形品が挿入され、板バネ(117b)にて成形品(112)の外面が挟持されて保持されるようになっている。
【0010】
この状態で昇降駆動装置(133)を下降させ、成形品を保持したままで、成形品取出部材を下死点まで引き降ろす。引き降ろされて下死点に達した成形品取出部材から成形品(112)を取り出し、次々と成形品引渡位置である整列台に整列させる。
【0011】
この場合、成形品(112)の引き取りは成形品(112)に合わせて形成された成形品引取用通孔(117a)によるので、成形品(112)の形状が変更になればその都度成形品の形状に丁度合った授受パネル(117a)に切り替える必要があり、非常に繁雑であるという問題がある。
【0012】
その他、成形品(112)のエジェクターによる突き出し位置が不良の場合、成形品引取用通孔(117a)への挿入がうまく行かなかったり、成形品(112)が成形品引取用通孔(117a)に強く接触して外面に長い擦り傷つけるというような問題がある。又、授受パネル(117)から成形品を外すためには、成形品(112)を授受パネル(117)から押し出すための押出シリンダを別途設ける必要があるという問題もある。
【0013】
[従来例3]
次に、特開平7-96524号において提案されている針突刺式の成形品取出構造を図6に示す。金型の型開き空間と成形品引渡位置との間を移動する成形品取出部材(218)を備え、そこに成形品側に突出するような針(219)が植設されている。取出時にはこの針(219)で金型内の成形品を突き刺して成形品取出部材に成形品を保持する。
【0014】
しかしながら、成形品に針を突き刺しているので当然成形品に針の刺し傷が残ることとなる。又、この方法により取り出せる成形品は、発泡成形品のように針を刺すことのできるものに限られ、硬質樹脂や金属等の成形品の取り出しには適用できなかった。更に、成形品取出部材から成形品を外すためには従来例2と同様に押出シリンダが必要であった。
【0015】
【考案が解決しようとする課題】
従来の上記のような問題点を解消し、取出可能な成形品の材質,形状,重量に制限が少なく、成形品に傷が付きにくく、成形品の大きさの変化にも容易に対応可能な成形品取出構造を提供することが課題となる。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本考案の成形機の成形品取出構造は、成形機の金型(1),(3)の型開き空間と成形品引き渡し位置との間を移動できる成形品取出部材(18)を有し、該成形品取出部材は成形品(12)を載置する棚部(19)と、成形品(12)を押圧して該棚部(19)との間で成形品(12)を挟持可能な可動面板(21)を備えていることを特徴とする。
【0017】
又、成形機の金型(1),(3)の型開き空間と成形品引き渡し位置との間を移動できる成形品取出部材(18)を有し、該成形品取出部材(18)は成形品を挿入可能な開口部(13)を有し、該開口部(13)の上下には該開口部(13)内側に向かって移動可能な可動面板(21)を有しており、上下の可動面板(21)間で成形品(12)を押圧することにより成形品(12)を挟持可能であることを特徴とする。
【0018】
更には、上記各成形品取出構造において可動面板(21)の押圧力が調整可能であることを特徴とする。
【0019】
【考案の実施の形態】
以下、本考案を好適な実施例を用いて説明する。成形機の一般的な構成は上記した従来のものと同様であるので、ここでは本考案の成形品取出構造についてのみ説明する。
【0020】
図1は本考案の成形品取出構造を備えた成形機の正面図であり、図2は成形品取出構造の斜視図、図3はその成形品取出構造の平面図、図4はその成形品取出構造の要部拡大縦断面図である。
【0021】
(15)は垂直ガイドで、タイバー(11)に取り付けられている。その取り付け位置は固定金型(1)と移動金型(3)の型開空間の側方に配置されており、後述する成形品取出部材(18)が固定金型(1)と移動金型(3)の型開空間内に挿入されるようになっている。
【0022】
(18)は成形品取出部材であり、その両側端にガイドローラ取付板(16)が取り付けられており、ガイドローラ取付板(16)には垂直ガイド(15)を前後から挟み込むガイドローラ(17)がそれぞれ回転自在に枢着されている。(33)は昇降駆動装置であり、これにより成形品取出部材(18)が昇降される。
【0023】
成形品取出部材(18)の縦縁間には棚板(19)が取り付けられており、この縦縁と上下の棚板(19)とで開口部(13)を構成している。
【0024】
開口部(13)の上辺となる棚板(19)の基部には、開口部(13)内に挿入された成形品(12)を下方に向けて押さえるための押圧部(20)が備えられている。
【0025】
押圧部(20)はエアシリンダー(22)により下方に移動する押圧面板(21)と、エアシリンダー(22)にエアーが送られていないときに押圧面板(21)を押し上げるためのバネ(23)を有している。押圧面板(21)による押圧力は、エアシリンダー(22)に送るエアー圧を変えることで容易に調整することができる。
【0026】
(取出作業)
成形作業の後、型開が完了すると、昇降駆動装置(33)を作動させて固定金型(1)と移動金型(3)の下方にて待機していた成形品取出部材(18)が上昇し、固定金型(1)と移動金型(3)の型開空間内に位置する。然る後、移動金型(3)に接続しているエジェクター作動板(6a)を介してエジェクター(6)を作動させ、キャビティ(9)から成形品(12)を押し出し、待機している成形品取出部材(18)の開口部(13)に挿入し、該開口部(13)の上縁の押圧部(20)の押圧面板(21)をエアシリンダー(22)によって下方、すなわち開口部(13)内側に突出させ、エジェクトされて開口部(13)内に挿入された成形品(12)を上方から押さえ付けることにより棚板(14)との間で成形品(12)を挟持する。
【0027】
押圧面板(21)による押圧力は調整できるため、発泡成形品のように柔らかい成形品でも傷や押圧跡を残すことなく挟持することができる。
【0028】
この成形品(12)を挟持した状態で、昇降駆動装置(33)を逆方向に移動させ、成形品(12)を保持したままで、成形品取出部材(18)を下死点まで引き降ろす。引き降ろされて成形品引渡位置に達したときにエアシリンダー(22)へのエアーの供給を停止するとバネ(23)の働きにより押圧面板(21)が成形体(12)から離れ、挟持状態が解除される。
【0029】
成形品取出部材(18)に対して押出シリンダ(31)のシリンダロッドが突き出し、開口部(13)内に位置する成形品(12)を整列台(32)上に押し出す。このようにして成形品(12)は次々と整列台(32)に整列して取り出されていくことになる。
【0030】
尚、成形品(12)は棚板(19)上に載っているだけで挟持されていないので、成形品(12)を成形品取出部材(18)から外して整列台(32)上に置くためには必ずしも押出シリンダ(31)で押し出す必要はない。例えば発泡成形品のように軽量な成形品であればエアーを吹き付けて押し出したり、棚板(19)の角度を変えられるようにし、棚板(19)から整列台(32)上に滑り落とすようにしてもよい。又、成形品取出部材(18)全体を垂直に降下させずに角度をつけて降ろすことにより、成形品(12)が挟持解除後に棚板(19)から滑り落ちるようにしてもよい。
【0031】
又、押圧面板(21)は上記実施例のように上下いずれかの方向から押圧して、棚板(14)との間で成形品(12)を挟持してもよいし、開口部(13)の上下両側に設けて上下両方向から開口部(13)内側に突出させることにより押圧面板(21)相互間で挟持するようにしてもよい。
【0032】
本考案において、棚板(19)を成形品取出部材(18)の縦縁に沿って移動可能とし、上下の棚板(19)の間隔を拡縮できるように(すなわち、開口部(13)の位置や大きさを変えることができるように)しておけば、成形品(12)のサイズの変更に容易に対応することができる。
【0033】
【考案の効果】
以上述べたように本考案により、取出可能な成形品の材質,形状,重量に制限が少なく、成形品に傷が付きにくく、成形品の大きさの変化にも容易に対応可能な成形機の成形品取出構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の成形品取出構造を備えた成形機の一実施例の正面図。
【図2】実施例の成形品取出構造の斜視図。
【図3】実施例の成形品取出構造の平面図。
【図4】実施例の成形品取出構造の要部拡大縦断面図。
【図5】従来の成形品取出構造を示した図(従来例2)。
【図6】従来の成形品取出構造を示した図(従来例3)。
【符号の説明】
(1) 固定金型
(3) 移動金型
(12) 成形品
(13) 開口部
(15) 垂直ガイド
(18) 成形品取出部材
(19) 棚板
(20) 押圧部
(21) 押圧面板
(22) エアシリンダー
(23) バネ

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 成形機の金型の型開き空間と成形品引き渡し位置との間を移動できる成形品取出部材を有し、該成形品取出部材は成形品を載置する棚部と、成形品を押圧して該棚部との間で成形品を挟持可能な可動面板を備えていることを特徴とする成形機の成形品取出構造。
【請求項2】 成形機の金型の型開き空間と成形品引き渡し位置との間を移動できる成形品取出部材を有し、該成形品取出部材は成形品を挿入可能な開口部を有し、該開口部の上下には該開口部内側に向かって移動可能な可動面板を有しており、上下の可動面板間で成形品を押圧することにより成形品を挟持可能であることを特徴とする成形機の成形品取出構造。
【請求項3】 可動面板の押圧力が調整可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の成形機の成形品取出構造。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【登録番号】第3030655号
【登録日】平成8年(1996)8月14日
【発行日】平成8年(1996)11月1日
【考案の名称】成形機の成形品取出構造
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平8−4586
【出願日】平成8年(1996)4月26日
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)