説明

成形機

【課題】成形機の動作条件設定に対するアクセス制限の段階的な解除を通じて操作者による誤設定を簡易に防止する機能を備えた成形機を提供すること。
【解決手段】本発明の成形機は、操作者によるアクセスが禁止される設定項目A1〜A5を含む設定画面を表示する表示装置3と、設定項目A1〜A5に対するアクセスの禁止を解除するための解除キーを受け入れる解除キー受入装置2とを備える。設定項目A1〜A5は、成形機の動作条件に関する設定項目である。また、より多数の設定項目に対するアクセスの禁止を解除する上位の解除キーによってアクセスの禁止が解除される設定項目は、より少数の設定項目に対するアクセスの禁止を解除する下位の解除キーによってアクセスの禁止が解除される設定項目の全てを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機の動作条件設定に対するアクセス制限を通じて操作者による誤設定を防止する機能を備えた成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザ管理機能を備えた成形機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この成形機は、ユーザのログオンがあった場合にそのユーザの属するグループを判別し、判別したグループに適合する操作画面を表示させる。その結果、この成形機は、判別したグループに対して操作権限が付与されていない操作に関する設定項目の表示を禁止し、操作権限が付与されていない操作をユーザが実行できないようにする。なお、ユーザの属するグループは、管理者又は作業者といったユーザの職種に基づいて決定され、各グループに属するユーザは、それぞれの職種に関連する操作に対してのみ操作権限が付与されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−289778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のユーザ管理機能は、ユーザ名及びパスワードの入力によるユーザ認証と、認証済みユーザの特定グループへの対応付けとを行うため、ユーザ名とパスワードとの対応関係やユーザとグループとの対応関係を成形機側に記憶しておく必要があり、その構成が複雑となっている。
【0005】
上述の点に鑑み、本発明は、成形機の動作条件設定に対するアクセス制限の段階的な解除を通じて操作者による誤設定を簡易に防止する機能を備えた成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係る成形機は、操作者によるアクセスが禁止される設定項目を含む設定画面を表示する表示装置と、前記設定項目に対するアクセスの禁止を解除する解除キーを受け入れる解除キー受入装置とを備えた成形機であって、前記解除キーによる解除度合いは、段階的に設定され、解除度合いの高い解除キーによってアクセスの禁止が解除される設定項目の解除内容は、解除度合いの低い解除キーによってアクセスの禁止が解除される設定項目の解除内容の全てを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述の手段により、本発明は、成形機の動作条件設定に対するアクセス制限の段階的な解除を通じて操作者による誤設定を簡易に防止する機能を備えた成形機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例に係る成形機に搭載される誤設定防止システムの構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】解除キーとその解除キーによってアクセスの禁止が解除される設定項目数との間の関係を示す概念図である。
【図3】ヒータ温度設定画面を示す図(その1)である。
【図4】ヒータ温度設定画面を示す図(その2)である。
【図5】ヒータ温度設定画面を示す図(その3)である。
【図6】ヒータ温度設定画面を示す図(その4)である。
【図7】ヒータ温度設定画面を示す図(その5)である。
【図8】ヒータ温度設定画面を示す図(その6)である。
【図9】解除キー及び解除キー受入装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の実施例に係る成形機に搭載される誤設定防止システムSYSの構成例を示す機能ブロック図である。
【0011】
誤設定防止システムSYSは、成形機の動作条件を設定するための動作条件設定画面における誤設定を防止するためのシステムであり、主に、制御装置1、解除キー受入装置2、及び表示装置3から構成される。
【0012】
制御装置1は、CPU、RAM、ROM、NVRAM等を備えたコンピュータであり、例えば、解除キー識別部10及びアクセス制御部11のそれぞれに対応するプログラムをROM等の記憶媒体から読み出してRAMに展開しながら、各部に対応する処理をCPUに実行させる。
【0013】
解除キー受入装置2は、解除キーを受け入れるための装置であり、例えば、キーボード、タッチパネル、バーコードリーダ等、操作者の入力を受け付ける装置である。
【0014】
「解除キー」とは、動作条件設定画面におけるアクセスが禁止された設定項目のそのアクセスの禁止を解除するためのキー(鍵)を意味し、例えば、電子的にやりとりされるコードで構成される。なお、解除キーは、物理的な道具としての差し込み式キーであってもよく、その場合、解除キー受入装置2は、例えば、キーシリンダを含む構成となる。
【0015】
また、「アクセスの禁止」とは、動作条件設定画面における特定の設定項目に対し操作者がアクセスできないようにすることを意味する。具体的には、「アクセスの禁止」は、設定項目を不可視化すること、可視化された状態にある設定項目に対する入力を禁止すること、設定項目の設定可能幅を制限すること等の禁止内容を含む。なお、「アクセスの禁止」の度合いには高低の差があるものとし、例えば、設定項目の設定可能幅の制限、可視化された状態にある設定項目に対する入力の禁止、設定項目の不可視化の順にアクセス禁止度合いが高くなるものとする。また、アクセスが禁止される設定項目の数が多いほど、アクセス禁止度合いが高くなるものとする。
【0016】
また、各解除キーによってアクセスの禁止が解除される設定項目(以下、「解除対象設定項目」とする。)及びその解除内容は、追加、削除、変更等が可能とする。なお、「解除内容」とは、解除される禁止内容を意味し、例えば、設定項目の不可視化を解除すること、可視化された状態にある設定項目に対する入力の禁止を解除すること、設定項目の設定可能幅の制限を解除すること等を含む。
【0017】
表示装置3は、各種情報を表示するための装置であり、例えば、成形機本体に取り付けられる液晶ディスプレイであって、動作条件設定画面を含め、成形機に関する各種画面を表示する。
【0018】
解除キー識別部10は、解除キー受入装置2を通じて受け入れた解除キーを識別するための機能要素であり、例えば、タッチパネルを通じて入力された解除キー(文字列)が所定の有効キーコードであるか否かを判定する。
【0019】
具体的には、解除キー識別部10は、キー入力スイッチがオンされたときに、解除キー入力画面(図示せず。)を表示装置3上に表示し、操作者による解除キーの入力を促すようにする。
【0020】
その後、解除キー識別部10は、入力された解除キーが所定の有効キーコードでないと判定した場合には、その旨を表すメッセージを表示装置3上に表示し、キー解除を拒否する。
【0021】
一方、解除キー識別部10は、入力された解除キーが所定の有効キーコードであると判定した場合には、その解除キーをアクセス制御部11に対して出力する。
【0022】
また、解除キー識別部10は、ROMやNVRAMに記憶された変換表を用いて、操作者が入力した情報(文字列)を、判定対象としての解除キー(文字列)に変換するようにしてもよい。長い解除キーの入力を簡略化するためである。この場合、操作者は、本来の解除キー(比較的長い文字列又は比較的憶えにくい文字列)の代わりに、自身の社員コードや電話番号等(比較的短い文字列又は比較的憶えやすい文字列)を解除キー受入装置2に対して入力するようにしてもよい。
【0023】
また、解除キーは、独立して存在可能な下位の解除キー(部分キーコード)の後ろに別の部分キーコードを付け足すことによって構成される。なお、「独立して存在可能な解除キー」とは、独立の解除キーとして使用され得ることを意味する。
【0024】
また、解除キーの上位下位は、解除度合いの高低によって決まるものとする。「解除度合い」とは、アクセス禁止度合いの逆を意味し、アクセス禁止度合いが高いほど、解除度合いは低いこととなる。このように、解除キーの上位下位は、例えば解除対象設定項目の数が多いというように、解除度合いが高いほど上位であるとされる。なお、上位の解除キーによってそのアクセスの禁止が解除される設定項目及びその解除内容は、下位の解除キーによってそのアクセスの禁止が解除される設定項目及びその解除内容の全てを含むものとする。ここで、「上位の解除キーによる解除内容が下位の解除キーによる解除内容を含む」とは、例えば、「設定項目の設定可能幅の制限を解除すること」が「設定項目の不可視化を解除すること」及び「可視化された状態にある設定項目に対する入力の禁止を解除すること」を含むことを意味する。
【0025】
アクセス制御部11は、動作条件設定画面におけるアクセスが禁止された設定項目のアクセスの禁止を解除するか否かを制御するための機能要素である。
【0026】
アクセス制御部11は、例えば、解除キー識別部10が識別した解除キーが所定の有効キーコードであると判定された場合に、その有効キーコードに関連付けられた設定項目に対するアクセスの禁止を解除する。
【0027】
具体的には、アクセス制御部11は、不可視の状態にあった設定項目を可視化したり、可視化された状態ではあるが入力を受け付けない状態にあった設定項目を、入力を受け付ける状態にしたりする。
【0028】
図2は、解除キーとその解除キーによってアクセスの禁止が解除される設定項目数との間の関係を示す概念図である。
【0029】
図2は、四つの同心円で表される四つの領域A〜Dを示し、領域Dが領域A〜Cを含み、領域Cが領域A及びBを含み、領域Bが領域Aを含むことを示す。
【0030】
領域A〜Dの大きさはそれぞれ、解除対象設定項目数の大きさを表す。すなわち、領域が大きいほど解除対象設定項目数が多いこととなる。また、四つの領域A〜Dのそれぞれにおける解除対象設定項目数は、領域Dで最大となり、領域Aで最小となる。なお、領域Aに属する解除対象設定項目は、領域B〜Dのそれぞれにも属することとなる。
【0031】
また、「解除対象設定項目数」は、「解除度合い」で読み替えられてもよい。この場合、領域が大きいほど解除度合いが高いこととなる。また、四つの領域A〜Dのそれぞれにおける解除度合いは、領域Dで最大となり、領域Aで最小となる。なお、領域Aに属する解除内容は、領域B〜Dのそれぞれにも属することとなる。
【0032】
アクセス制御部11は、解除キー識別部10が識別した解除キーが有効キーコード「AAA」であると判定された場合に、領域Aに属する解除対象設定項目に対するアクセスの禁止を解除する。以下、この処理を「第一レベル」の解除とする。なお、「AAA」は、任意の一つ以上の文字、数字、又は記号等が所定の順番で並ぶことを意味する。以下の「BBB」、「CCC」、及び「DDD」についても同様である。
【0033】
また、アクセス制御部11は、解除キー識別部10が識別した解除キーが有効キーコード「AAABBB」であると判定された場合に、(領域Aに属する解除対象設定項目の全てを含む)領域Bに属する解除対象設定項目に対するアクセスの禁止を解除する。以下、この処理を「第二レベル」の解除とする。
【0034】
この場合、解除キー「AAABBB」は、二つの部分キーコード「AAA」及び「BBB」を「AAABBB」の順番で連結することによって構成されることとなる。なお、部分キーコード「AAA」は、解除キー「AAABBB」より下位の独立した解除キー(第一レベルの解除を実現する解除キー)を構成する。また、部分キーコード「BBB」は、領域B−A(領域Bから領域Aを除いた領域)に属する解除対象設定項目に対するアクセスの禁止を解除するためのキーコードを意味することとなる。なお、部分キーコード「BBB」は、独立の解除キーを構成することはない。
【0035】
また、アクセス制御部11は、解除キー識別部10が識別した解除キーが有効キーコード「AAABBBCCC」であると判定された場合に、(領域Bに属する解除対象設定項目の全てを含む)領域Cに属する解除対象設定項目に対するアクセスの禁止を解除する。以下、この処理を「第三レベル」の解除とする。
【0036】
この場合、解除キー「AAABBBCCC」は、三つの部分キーコード「AAA」、「BBB」及び「CCC」を「AAABBBCCC」の順番で連結することによって構成されることとなる。なお、部分キーコード「AAABBB」は、解除キー「AAABBBCCC」より下位の独立した解除キー(第二レベルの解除を実現する解除キー)を構成する。また、部分キーコード「CCC」は、領域C−B(領域Cから領域Bを除いた領域)に属する解除対象設定項目に対するアクセスの禁止を解除するためのキーコードを意味することとなる。なお、部分キーコード「CCC」は、独立の解除キーを構成することはない。
【0037】
同様に、アクセス制御部11は、解除キー識別部10が識別した解除キーが有効キーコード「AAABBBCCCDDD」であると判定された場合に、(領域Cに属する解除対象設定項目の全てを含む)領域Dに属する解除対象設定項目に対するアクセスの禁止を解除する。以下、この処理を「第四レベル」の解除とする。
【0038】
この場合、解除キーは、四つの部分キーコード「AAA」、「BBB」、「CCC」、及び「DDD」を「AAABBBCCCDDD」の順番で連結することによって構成されることとなる。なお、部分キーコード「AAABBBCCC」は、解除キー「AAABBBCCCDDD」より下位の独立した解除キー(第三レベルの解除を実現する解除キー)を構成する。また、部分キーコード「DDD」は、領域D−C(領域Dから領域Cを除いた領域)に属する解除対象設定項目に対するアクセスの禁止を解除するためのキーコードを意味することとなる。なお、部分キーコード「DDD」は、独立の解除キーを構成することはない。
【0039】
上述のような段階的な階層構造を有する複数の解除キーの何れかが解除キー識別部10によって識別された場合、アクセス制御部11は、例えば、各解除キーに対応する設定項目のアクセスの禁止を解除する。
【0040】
なお、アクセス制御部11は、アクセスの禁止を解除した場合に所定の制御信号を表示装置3に対して出力し、どのレベルの解除が行われたかを表示させるようにしてもよい。
【0041】
また、アクセス制御部11は、解除キー入力画面において解除キーが一文字ずつ入力される場合には、部分キーコードの入力が完了する毎に、その部分キーコードに対応するレベルの解除が行われたことを表示装置3に表示させ或いは音声出力させるようにしてもよい。なお、解除キー入力画面に入力された文字は、他人に見られることがないよう、「*」で表現されてもよく、非表示とされてもよい。
【0042】
また、アクセス制御部11は、任意の文字列を、判定対象としての文字列に変換することによって解除キーの入力を受け付けた場合には、その解除キーを構成する複数の部分キーコードのそれぞれに対応する複数レベルの解除が同時に行われたことを表示させ或いは音声出力させるようにしてもよい。
【0043】
ここで、図3〜図8を参照しながら、誤設定防止システムSYSが、入力された解除キーに応じて動作条件設定画面の内容を変更する処理について説明する。
【0044】
図3〜図8は、動作条件設定画面の一例であるヒータ温度設定画面を示す図であり、図3は、設定項目に対するアクセスの禁止が全て解除された状態(全解除状態)を示し、図4は、所定の設定項目に対するアクセスが禁止された初期状態を示す。
【0045】
また、図5〜図8はそれぞれ、設定項目に対するアクセスの禁止が一部解除された状態(一部解除状態)を示す。なお、図5から図8に進むにつれて解除度合いが高くなるものとする。
【0046】
図3で示されるように、ヒータ温度設定画面は、成形機の射出シリンダに取り付けられるシリンダヒータの目標温度を設定するための画面であり、設定項目として、主設定A1、パージ設定A2、保温設定A3、監視範囲A4、及び冷間起動防止時間A5を含む。
【0047】
シリンダヒータは、射出シリンダの複数箇所に取り付け可能となっており、例えば、射出シリンダの後端から前端に向かって並ぶ七つのゾーンZ0、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5b、Z5aのそれぞれに取り付け可能となっている。なお、ゾーンZ5a、Z5bは、射出シリンダの前端にある射出シリンダヘッドの前部、後部に取り付けられるヒータである。また、本実施例ではゾーンZ3のシリンダヒータを使用しないために、関連する設定項目が設定不可となっている。網掛け部分は、関連する設定項目が設定不可であることを示す。
【0048】
「水冷温度」は、射出シリンダと樹脂供給装置(例えばホッパである。)との間の接続部分に設置される水冷シリンダの温度であり、例えば、冷却管内を流れる冷却水の流量を調節することによって制御可能な温度である。なお、本実施例では冷却水の流量調節を行わないために、関連する設定項目が設定不可となっている。網掛け部分は、関連する設定項目が設定不可であることを示す。
【0049】
主設定A1は、成形中における制御対象のヒータのそれぞれの目標値を決定するための設定項目である。
【0050】
パージ設定A2は、射出シリンダ内に残った樹脂を洗い出すための処理であるパージ処理中におけるシリンダヒータのそれぞれの目標値を決定するための設定項目である。
【0051】
保温設定A3は、成形機による成形動作を一時中断する際に金型や射出シリンダの温度を一定レベルに維持するために使用される制御対象のヒータのそれぞれの目標値を決定するための設定項目である。
【0052】
監視範囲A4は、制御対象のヒータのそれぞれの出力値の正常範囲を定義するための設定項目である。本実施例に係る成形機は、例えば、監視範囲A4が「20.00」℃に設定された場合、シリンダヒータの出力値が目標値から±20.00℃の範囲を逸脱した場合に警報を発するようにする。
【0053】
冷間起動防止時間A5は、制御対象のヒータのそれぞれの出力値の全てが監視範囲A4内となってから成形機を起動させるまでの時間(成形機の起動を禁止する時間)を決定するための設定項目である。本実施例に係る成形機は、例えば、冷間起動防止時間A5が「15」分に設定された場合、制御対象のヒータのそれぞれの出力値の全てが監視範囲A4内となってから15分の間は成形動作の起動を禁止する。
【0054】
実測値表示装置D1は、制御対象のヒータの現在値を数値表示する領域である。
【0055】
状態表示装置G1は、制御対象のヒータの現在の状態をグラフィック表示する領域であり、例えば、目盛りG10及びポインタG11を用いて現在の状態を表現する。
【0056】
目盛りG10は、基準目盛りとその基準目盛りの上下のそれぞれに配置される補助目盛り領域とで構成され、基準目盛りが目標値に対応し、補助目盛り領域の上限及び下限のそれぞれが監視範囲の上限及び下限のそれぞれに対応する。
【0057】
ポインタG11の位置は、制御対象のヒータの現在値の、目標値に対する相対位置を示す。ポインタG11の位置は、例えば、目標値が0℃、監視範囲が±20℃、現在値が19.99℃であれば、補助目盛り領域の上限付近に位置することとなる。
【0058】
使用・不使用切り替えボタンB1は、成形機に搭載されたヒータのそれぞれに対する制御を実行するか否かを切り替えるためのボタンである。なお、本実施例では、ゾーンZ3のシリンダヒータ及び金型ヒータを使用せず、また、冷却水の流量調節を行わないため、関連するボタンは、不使用(灰色表示)となっている。
【0059】
以上の画面構成の下で、アクセス制御部11は、有効キーコードが入力されていない場合には、図4で示されるような所定の初期状態でヒータ温度設定画面を表示させるようにする。
【0060】
具体的には、図4の初期状態は、図3の全解除状態に比べ、主設定A1、保温設定A3、及び監視設定A4が不可視の状態となり、可視化されたパージ設定A2及び冷間起動防止時間A5が入力不可の状態となっている。なお、初期状態の内容は、適宜変更が可能である。
【0061】
そして、アクセス制御部11は、解除キー識別部10が識別した解除キーが有効キーコード「AAA」であると判定された場合に、第一レベルの解除を実行し、図5で示されるような一部解除状態でヒータ温度設定画面を表示させるようにする。
【0062】
具体的には、図5の一部解除状態は、図4の初期状態に比べ、パージ設定A2及び冷間起動防止時間A5が入力禁止表示(背景灰色表示)から入力受付表示(背景白色表示)に切り替わり入力を受け付ける状態となっている。
【0063】
また、アクセス制御部11は、解除キー識別部10が識別した解除キーが有効キーコード「AAABBB」であると判定された場合に、第二レベルの解除を実行し、図6で示されるような一部解除状態でヒータ温度設定画面を表示させるようにする。
【0064】
具体的には、図6の一部解除状態は、図5の一部解除状態に比べ、主設定A1、保温設定A3、及び監視設定A4が入力不可の状態で可視化された状態となっている。
【0065】
また、アクセス制御部11は、解除キー識別部10が識別した解除キーが有効キーコード「AAABBBCCC」であると判定された場合に、第三レベルの解除を実行し、図7で示されるような一部解除状態でヒータ温度設定画面を表示させるようにする。
【0066】
具体的には、図7の一部解除状態は、図6の一部解除状態に比べ、保温設定A3が入力禁止表示(背景灰色表示)から入力受付表示(背景白色表示)に切り替わり入力を受け付ける状態となっている。
【0067】
また、アクセス制御部11は、解除キー識別部10が識別した解除キーが有効キーコード「AAABBBCCCDDD」であると判定された場合に、第四レベルの解除を実行し、図8で示されるような一部解除状態でヒータ温度設定画面を表示させるようにする。
【0068】
具体的には、図8の一部解除状態は、図7の一部解除状態に比べ、監視範囲A4が入力禁止表示(背景灰色表示)から入力受付表示(背景白色表示)に切り替わり入力を受け付ける状態となっている。
【0069】
以上の構成により、誤設定防止システムSYSを搭載した成形機は、操作者が入力した解除キーに対応する解除対象設定項目以外の設定項目に対するアクセスを禁止することができ、アクセスの禁止が解除されていない設定項目に対する誤設定を防止することができる。
【0070】
また、誤設定防止システムSYSは、下位の解除キーによる解除対象設定項目及びその解除内容が、上位の解除キーによる解除対象設定項目及びその解除内容の部分集合を構成するという枠組みを採用する。そのため、誤設定防止システムSYSは、成形機の動作条件設定に関する操作者の熟練度が高くなるにつれて成形機の動作条件設定に対するアクセス制限を段階的に解除していくといった管理方針に適用され得ることとなる。
【実施例2】
【0071】
次に、図9を参照しながら、誤設定防止システムSYSで使用される解除キーの別の構成例について説明する。
【0072】
図9は、解除キー及び解除キー受入装置の構成例を示す図であり、四つの差し込み式解除キーK1〜K4と、それら解除キーK1〜K4が差し込まれる解除キー受入装置としてのキーシリンダ2Aとを示す。
【0073】
解除キーK1は、図2の有効キーコード「AAA」を有する電子的にやりとりされるコードとしての解除キーに対応し、キーシリンダ2Aに差し込まれた場合に、キーシリンダ2Aの初期位置IPから第一位置P1までキーシリンダ2Aを回転させることができる。
【0074】
解除キー識別部10は、キーシリンダ2Aに解除キーK1が差し込まれ、キーシリンダ2Aが第一位置P1まで回転させられた場合に、第一レベルの解除を実行する。
【0075】
解除キーK2は、図2の有効キーコード「AAABBB」を有する解除キーに対応し、キーシリンダ2Aに差し込まれた場合に、キーシリンダ2Aの初期位置IPから第一位置P1を経て第二位置P2までキーシリンダ2Aを回転させることができる。
【0076】
解除キー識別部10は、キーシリンダ2Aに解除キーK2が差し込まれ、キーシリンダ2Aが第二位置P2まで回転させられた場合に、第二レベルの解除を実行する。
【0077】
解除キーK3は、図2の有効キーコード「AAABBBCCC」を有する解除キーに対応し、キーシリンダ2Aに差し込まれた場合に、キーシリンダ2Aの初期位置IPから第一位置P1及び第二位置P2を経て第三位置P3までキーシリンダ2Aを回転させることができる。
【0078】
解除キー識別部10は、キーシリンダ2Aに解除キーK3が差し込まれ、キーシリンダ2Aが第三位置P3まで回転させられた場合に、第三レベルの解除を実行する。
【0079】
解除キーK4は、図2の有効キーコード「AAABBBCCCDDD」を有する解除キーに対応し、キーシリンダ2Aに差し込まれた場合に、キーシリンダ2Aの初期位置IPから第一位置P1、第二位置P2、及び第三位置P3を経て第四位置P4までキーシリンダ2Aを回転させることができる。
【0080】
解除キー識別部10は、キーシリンダ2Aに解除キーK4が差し込まれ、キーシリンダ2Aが第四位置P4まで回転させられた場合に、第四レベルの解除を実行する。
【0081】
なお、解除キー識別部10は、キーシリンダ2Aに解除キーK2が差し込まれ、キーシリンダ2Aが第一位置P1まで回転させられた場合であっても、第一レベルの解除を実行しないようにしてもよい。キーシリンダ2Aが第二位置P2まで回転させられたときに、第一レベルの解除を含む第二レベルの解除を実行させるようにするためである。
【0082】
キーシリンダ2Aに解除キーK3が差し込まれ、キーシリンダ2Aが第一位置P1又は第二位置P2まで回転させられた場合、及び、キーシリンダ2Aに解除キーK4が差し込まれ、キーシリンダ2Aが第一位置P1、第二位置P2、又は第三位置P3まで回転させられた場合についても同様である。
【0083】
以上の構成により、誤設定防止システムSYSを搭載した成形機は、差し込み式解除キーK1〜K4を用いた場合であっても、電子的にやりとりされるコードとしての解除キーがタッチパネル等を介して入力される場合と同じ効果を実現させることができる。
【0084】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0085】
例えば、上述の実施例において、電子的にやりとりされるコードとしての解除キーは、下位から上位に向かう順番で複数の部分キーコードを連結することによって構成されるが、その連結順を組み替えるようにしてもよい。
【0086】
具体的には、解除キー「AAABBBCCCDDD」を「AAADDDBBBCCC」や「AAACCCBBBDDD」としてもよい。但し、この連結順の組み替えは、解除対象設定項目又はその解除内容を変更するものではなく、複数段階の解除を可能にするものでもない。
【0087】
また、上述の実施例において、解除キー識別部10は、キー入力スイッチがオンされたときに、解除キー入力画面を表示装置3上に表示するが、例えば、各種設定画面が表示されたとき、設定画面が切り換えられたとき等、他の操作に連動させて表示するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1・・・制御部 2・・・解除キー受入装置 2A・・・キーシリンダ 3・・・表示装置 10・・・解除キー識別部 11・・・アクセス制御部 B1・・・使用・不使用切り替えボタン D1・・・実測値表示装置 A1・・・主設定 A2・・・パージ設定 A3・・・保温設定 A4・・・監視範囲 A5・・・冷間起動防止時間 G1・・・状態表示装置 G10・・・目盛り G11・・・ポインタ K1〜K4・・・解除キー SYS・・・誤設定防止システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者によるアクセスが禁止される設定項目を含む設定画面を表示する表示装置と、前記設定項目に対するアクセスの禁止を解除する解除キーを受け入れる解除キー受入装置とを備えた成形機であって、
前記解除キーによる解除度合いは、段階的に設定され、
解除度合いの高い解除キーによってアクセスの禁止が解除される設定項目の解除内容は、解除度合いの低い解除キーによってアクセスの禁止が解除される設定項目の解除内容の全てを含む、
ことを特徴とする成形機。
【請求項2】
前記解除キーは、電子的にやりとりされるコードによって構成され、
解除度合いの高い解除キーのコードは、解除度合いの低い解除キーのコードの全てを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の成形機。
【請求項3】
前記設定項目に対するアクセスの禁止は、該設定項目の不可視化、該設定項目に対する入力の禁止、又は、該設定項目の設定可能幅の制限を含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の成形機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate