説明

成形用二軸延伸ポリエステルフィルム

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は成形性、厚さ斑、耐熱性及び表面光沢性に優れた成形用二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。
〔従来の技術および発明が解決しようとする課題〕
従来、二軸延伸ポリエステルフィルムは強度、耐熱性に優れ、種々の工業用用途に幅広く適用されている。例えば、真空、圧空、張出、冷間、射出、インモールド、エンボス加工等の原材料または補助材としてポリエステルフィルムを用いることが検討され、加工されるポリエステルフィルムの用途として、成形転写用、成形容器用、電絶用、包装用、装飾用等への適用が検討されている。
しかしながら二軸延伸ポリエステルフィルムは、塩化ビニール系樹脂に比べ成形性が劣るため、これらの用途における適用が困難であった。特に成形転写用、成形容器用ベースフィルムとして成形性の改良が求められていた。
本発明者らは上記要求に対し、種々の成形性を改良した二軸延伸ポリエステルフィルムを提案してきた。
しかしながら、成形性を改良すると、フィルムの厚さ斑が大きく悪化してしまい、加工時にさまざまな問題が生じる。例えば、成形転写用フィルムの厚さ斑が不良であると、フィルムの平面性が悪化するだけでなく、成形転写時にフィルムの伸びが不均一となるため、転写した図柄の精度が低下する。また、成形容器用フィルムの厚さ斑が不良であると成形性が不均一となるため、フィルムの破断や積層加工時に部分的な層間剥離が発生する傾向がある。
このように、成形用ポリエステルフィルムにおいて、成形性及び厚さ斑の改良という二律排反の現象を同時に満足させることが要求され、また、耐熱性および表面光沢性の改良も求められていた。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、ある特定の特性を有するポリエステルフィルムが成形用フィルムとして有用であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の要旨は、下記■〜■式を同時に満足することを特徴とする成形用二軸延伸ポリエステルフィルムに存する。
10≦Gs(60゜)≦90 …■ 55≦X100≦80 …■0.05・(80−X100)≦F100≦0.05・(135−X100) …

以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるポリエステルは、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸等、公知のジカルボン酸の一種もしくは二種以上からなり、また、ジオール成分としてエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリゴール等公知のジオール成分の一種又は二種以上からなるポリエステルである。
本発明のポリエステルにおいて共重合成分として、例えばp−オキシ安息香酸のようなオキシカルボン酸、安息香酸、ベンゾイル安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールのような一官能性化合物、グリセリン、ペンタエリスリトールのような多官能性化合物も、生成物が実質的に線状の高分子を保持し得る範囲内で使用することができる。
本発明のフィルムを構成するポリエステルにおいて、ポリエチレンテレフタレートの割合は好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上である。ポリエチレンテレフタレートが50モル%未満であるとフィルムにした場合の強度及び耐熱性が低下するので好ましくない。
また、上記ポリエステルに対し、ポリエステル以外のポリマー、例えばポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリアミド等を本発明の要旨を越えない範囲、例えば全体の30wt%以下であれば添加、混合しても構わない。このように、他種のポリマーを添加、混合することによりフィルム表面を粗面化し、好適な表面光沢性、筆記性を与える方法も、本発明を具現化するための一手法として挙げられる。
本発明のフィルムの成形性および耐熱性を向上させるためには、フィルムを構成するポリエステルの酸成分中に脂肪族ジカルボン酸成分を好ましくは1〜20mol%、更に好ましくは1〜10mol%含有させる。
本発明のフィルムを構成するポリエステル中に含有させる脂肪族ジカルボン酸成分としては、通常、炭素数4〜12、好ましくは炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸成分が用いられる。
また、フィルムに易滑性、表面光沢性等を付与するために、有機、無機等の微粒子を含有させることも好ましく、必要に応じて安定剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、静電防止剤等の添加剤を含有するものであってもよい。滑り性、表面光沢性を付与する微粒子としては、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、テレフタレ酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、フッ化リチウム、カーボンブラック等の公知の不活性外部粒子、ポリエステル樹脂の溶融製膜に際して不溶な高融点有機化合物、架橋ポリマー及びポリエステル合成時に使用する金属化合物触媒、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などによってポリエステル製造時にポリマー内部に形成される内部粒子等が挙げられる。
本発明のフィルムに含有させる微粒子としては、特に、所要の表面光沢性を効率よく付与するために、酸化ケイ素の微粒子を主体とすることが好ましい。
上記態様において、酸化ケイ素微粒子に加えて他の微粒子例えば、酸化チタンを含有することも、また好ましい態様の一つである。
本発明のフィルム中に含まれる微粒子の含有量は好ましくは0.1〜5.0wt%、更に好ましくは0.1〜3.0wt%、特に好ましくは0.2〜2.0wt%の範囲であり、その平均粒径は好ましくは0.5〜10μm、更に好ましくは1.0〜10μm、特に好ましくは2.0〜7.0μmの範囲である。本発明のフィルムにおいて上記含有量及び平均粒径の粒子を選択することにより、所望の表面光沢性、筆記性を持つフィルムを得ることができる。
本発明のポリエステルフィルムの極限粘度は、好ましくは0.50以上、更に好ましくは0.60以上である。フィルムの極限粘度が0.50未満の場合、十分な成形性が得られず好ましくない。
本発明のフィルムにおいてフィルムの光沢度Gs(60゜)は10〜90%の範囲である。Gs(60゜)が10%未満のフィルムでは、成形加工後の成形品表面が粗面化し過ぎて好ましくない。一方、Gs(60゜)が90%を超えるフィルムでは、成形品表面に十分な艶消しを与えられず、好ましくない。フィルムのGs(60゜)の値は好ましくは15〜80%、更に好ましくは、20〜70%、特に好ましくは20〜60%の範囲である。
フィルムの光沢度Gs(60゜)を上記範囲とするためには、例えば、前述したようにフィルムに有機,無機等の微粒子を含有させる方法が採用され、該微粒子としては、酸化ケイ素微粒子を主体とすることが特に好ましい。
本発明のフィルムにおいて、微結晶サイズ(X100)は、55〜80Åの範囲であり、好ましくは60〜80Åの範囲、更に好ましくは65〜75Åの範囲である。
本発明でいう微結晶サイズ(X100)とは、X線回折によって測定される(100)回折ピークの半価幅よりShellerの式を用いて得られる微結晶サイズである。
我々の検討結果によると、微結晶サイズ(X100)は、フィルムの耐熱性及び強度に深く関係しており、微結晶サイズ(X100)が55Å未満のフィルムでは、フィルムの耐熱性が低下し、好ましくない。また、微結晶サイズ(X100)が80Åを越えるフィルムでは、フィルムの強度が低下し、平面性が悪化するため好ましくない。
本発明のフィルムにおいて、F100は、0.05・(80−X100)〜0.05・(135−X100)の範囲であり、好ましくは0.05・(85−X100)〜0.05・(130−X100)の範囲、更に好ましくは0.05・(90−X100)〜0.05・(130−X100)の範囲である。
本発明でいうF100は、150℃の雰囲気下における100%伸長時でのフィルムの縦及び横方向の強度の平均値(kg/mm2)である。
我々の検討結果によると、フィルムの強度F100は、フィルムの成形性に深く関係しており、F100値が低い程、フィルムの成形性が良好となる傾向にあるが、単にF100値を下げるとフィルムの厚さ斑が悪化する。微結晶サイズ(X100)との関係において上記範囲内とすることにより、予想外にも、厚さ斑だけでなく、成形性および耐熱性も改良できたものである。
F100が0.05・(135−X100)を超すフィルムでは、成形性が低下し、好ましくない。また、F100が0.05・(80−X100)未満のフィルムでは、成形時フィルムが不均一に変形し、例えば転写用フィルムでは、転写する図柄の歪み等が生じ好ましくない。
本発明のフィルムにおいて、F100値は好ましくは0.2〜3kg/mm2の範囲であり、更に好ましくは0.5〜2.5kg/mm2の範囲である。
また縦方向と横方向の150℃、100%伸長時のフィルム強度の差は通常2kg/mm2以下であり、好ましくは1.5kg/mm2以下、更に好ましくは1kg/mm2以下である。かかる差が2kg/mm2を超えると異方性が大きくなるため成形性が悪化する。
また本発明のフィルムにおいて、フィルムの厚さ斑は好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下である。厚さ斑が30%を越えるフィルムでは、成形性及び成形時の伸びが不均一となり、成形転写時に図柄の歪みが生じ好ましくない。
本発明のフィルムの収縮特性に関しては、150℃で3分間処理後の縦及び横方向の収縮率が共に10%以下であることが好ましく、更に好ましくは5%以下である。
縦又は横方向の収縮率が10%を上回るフィルムは、加工工程中の加熱区間においてフィルムの縮みが大きく発生し好ましくない。特に転写用フィルムの用途では、上記条件下における横方向の収縮率が0%以下(フィルムが膨張する場合は収縮率をマイナスとする)であることが好ましい。横方向の収縮率が0%を越えるフィルムでは、成形転写用として用いる場合、印刷層形成後の乾燥工程においてフィルムが巾縮みを起こし好ましくない。
また、本発明においてフィルムの融解熱は好ましくは1〜8cal/g、更に好ましくは1〜6cal/gの範囲である。融解熱が8cal/gを越えるフィルムでは成形性が低下し好ましくない。一方、融解熱が1cal/g未満のフィルムは、特に耳部等のリサイクルを行なう場合、製膜等の原料乾燥工程において結晶化が極めて困難なため、真空乾燥等の繁雑な工程が必要となり、好ましくなく、またフィルムの厚さ斑も悪化し好ましくない。
本発明において、フィルムの密度は好ましくは1.370以下、更に好ましくは1.365以下、特に好ましくは1.360以下である。フィルムの密度が、1.370を越えるフィルムでは成形性が不十分となり好ましくない。
本発明のフィルムの機械的強度に関し、フィルムの縦方向及び横方向におけるヤング率が好ましくは200kg/mm2以上、更に好ましくは300kg/mm2以上である。ヤング率が200kg/mm2未満のフィルムでは、成形工程においてフィルムの伸びが生じやすく好ましくない。
本発明のフィルムの厚さは特に限定されないが、成形転写用のフィルムとして好ましく用いられる厚さは5〜500μm、更に好ましくは5〜300μmの範囲である。
次に本発明のフィルムの製造法を具体的に説明するが、本発明の構成要件を満足する限り、以下の例示に特に限定されるものではない。
滑り剤として無機粒子等を必要に応じて適量含有する本発明のポリエステルを、ホッパードライヤー、パドルドライヤー、オーブン等の通常用いられる乾燥機または真空乾燥機等を用いて乾燥した後、200〜320℃で押出す。押出しに際しては、Tダイ法、チューブラ法等、既存のどの手法を採用しても構わない。
押出し後、急冷して無定形シートを得るが、急冷する際に静電印加法を用いると該無定形シートの厚さ斑が向上するので好ましい。
次いで得られた無定形シートを縦方向に少なくとも2.8倍以上、好ましくは3.0倍以上、更に好ましくは3.2倍以上延伸する。縦方向の延伸倍率が2.8倍未満ではフィルムの縦方向の厚さ斑が悪化するので好ましくない。
次に得られた縦延伸フィルムを横方向に3.0〜5.0倍に延伸し二軸配向フィルムを形成する。横方向の延伸倍率が3.0倍未満では、横方向の厚さ斑が悪化するので好ましくない。横延伸倍率は、好ましくは3.2〜5.0倍、更に好ましくは3.4〜5.0倍の範囲である。
次に得られた二軸配向フィルムを、熱処理するが、本発明のフィルムを得るためには、この熱処理工程が重要である。フィルムの融点をTm(℃)とすると、熱処理温度は、(Tm−40)〜(Tm−5)℃の範囲が好ましく、更に好ましくは、(Tm−35)〜(Tm−10)℃、特に好ましくは(Tm−30)〜(Tm−15)℃の範囲である。
熱処理温度が(Tm−40)℃より低い場合は、フィルムの配向の緩和が不充分でありフィルムの成形性及び耐熱性が劣り、好ましくない。また、フィルムの熱処理温度が(Tm−5)℃を超えると、フィルムの成形性が悪化するだけでなく、製膜時の破断が生じるため好ましくない。
熱処理時間は、通常、1秒〜10分間である。
熱処理工程において、熱処理の最高温度のゾーン及び/又は熱処理出口のクリーングゾーンにて横方向及び/又は縦方向に0.1〜30%の弛緩を行なうことも本発明においては好ましい態様の1つである。特に横方向においては5〜30%の弛緩を行なうことが好ましい。また、熱処理工程において、二段熱処理を行なっても構わない。
上記延伸工程中又は延伸後に、フィルムに表面光沢性、接着性、帯電防止性、滑り性、離型性等を付与するために、フィルムの片面又は両面に塗布層を形成したり、コロナ放電処理等を施したりしても構わない。特に、フィルムに表面光沢性を付与するためにフィルム表面に塗布量を形成することは好ましい態様である。フィルムに表面光沢性を付与するために、塗布層を形成する場合、塗布層中に有機,無機等の微粒子、例えば、酸化ケイ素微粒子等を含有させることが好ましい。塗布層中に含まれる微粒子の含有量は好ましくは5.0〜50wt%、更に好ましくは10〜40wt%、特に好ましくは10〜30wt%の範囲であり、その平均粒径は好ましくは塗布層厚みの0.1〜3.0倍、好ましくは塗布層厚みの0.5〜2.0倍の範囲である。
また延伸工程中又は延伸後に形成する塗布層が、二種以上の機能、例えば表面光沢性と離型性を兼ね備えていてもよく、また、二層以上の多層塗布層であっても構わない。
〔実施例〕
以下、実施例にて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、フィルムの評価方法を以下に示す。
(1) フィルムの光沢度Gs(60゜)
日本電色工業(株)製VGS−1001DP型光沢度計を用いて、60度鏡面光沢度Gs(60゜)をJIS Z 8741に準じて測定した。すなわち、入射角、反射角60度における黒色標準板の反射率を基準に試料の反射率を求め光沢度とした。
(2) X線回折測定X100(平均微結晶サイズ)
X線自動回折測定装置でフィルム状でサンプルを2θ=26゜付近の(100)面のピークの半価幅より次式(Schellerの式)により微結晶サイズX100を算出した。なお、X線出力は30kV15mAで行なった。


K=0.94(rad)〔Sheller定数〕
λ=1.5418(Å)〔X線の波長〕
Hc=半価幅(rad)
(3) 150℃雰囲気下における100%伸長時のフィルム強度F100(kg/mm2
(株)インテスコ製恒温槽付引張試験機インテスコ2001型の恒温槽を150℃に設定し、幅15mmのフィルムをチャック間50mmとなるようにセットして2分間放置後、引張速度200mm/minで100%伸長時の強度を測定した。測定は、フィルムの縦および横方向について行い、その平均値をF100とした。なお、100%伸長前に破断するフィルムについては、次式に従って換算した。


(4) フィルムの厚さ斑 安立電気社製連続フィルム厚さ測定器(電子マイクロメーター使用)により、フィルムの縦方向に沿って5mの長さで測定し、次式により厚さ斑を算出した。


(5) 極限粘度(η)
試料200mgをフェノール/テトラクロロエタン=50/50の混合溶媒20mlに加え、約110℃で30分間加熱後、30℃で測定した。
(6) フィルムの加熱収縮率(%)
150±2℃の温度のギャードオーブン中にフィルムを無負荷の状態で3分間熱収縮させ、縦及び横方向についての加熱収縮率を下記式に従い求めた。


ただし、l0:原長10cm l :収縮後の長さ(7) フィルムの融解熱△Hm(cal/g)
パーキンエルマー社製差動走査熱量計DSC−1Bにより、昇温速度16℃/minにて測定した試料の結晶の融解に伴うピークの面積を求め、下記式に従い計算した。


A:同一条件でインジウムを測定したときのチャート上での単位面積当りの融解熱(cal/cm2
S:試料の融解ピークの面積(cm2
m:試料の重量(g)
(8) フィルムの密度ρ(g/cc)
n−ヘプタン,四塩化炭素の混合液で、密度の勾配ができている密度勾配管に標準密度のフロートを入れ、そのフロートに対し、試料がどの位置にあるかで試料の密度とした。なお、測定温度は25℃で行った。
(9) 転写フィルムとしての適性 加熱乾燥を行いながらフィルム(3)に離型層、印刷層及び接着層を形成し、第1図に示す縦10cm、横10cm、最大深さ5.0cmの金型(I)を用い、フィルムを真空及び圧空にて金型内部に予備成形した後、加熱した樹脂を射出して成形転写を連続で行った。成形時のフィルムの破断の頻度、射出成形品の形状及び成形品の印刷の仕上りに関し、転写フィルムとしての適性を以下のように評価した。
◎:フィルムの破断が全く無く、しかも成形品の形状及び印刷の仕上りも美しく、かつ成形品に十分な艶消し感がある。
○:フィルムの破断が全く無く、成形品に十分な艶消し感はあるものの成形品の形状、印刷の仕上りにおける不良品が時々発生する。
△:時々フィルム破れが1〜2箇所発生し、連続運転時には支障をきたす。ただし、成形品には十分な艶消し感がある。
×:フィルム破れが頻発し、使用不可能である。
実施例1 ジカルボン酸成分して、テレフタル酸単位75mol%,イソフタル酸単位20mol%及びセバシン酸単位5mol%よりなり、ジオール成分がエチレングリコール単位98mol%及びジエチレングリコール単位2mol%よりなる共重合ポリエステル(A)と、平均粒径2.4μmの無定形シリカ粒子4.0wt%含有するポリエチレンテレフタレート(B)とを、重量比で共重合ポリエステル(A):ポリエチレンテレフタレート(B)=80:20の割合でブレンドした。ブレンド後、予備結晶化を経て本乾燥し、Tダイを有する押出機を用いて280℃で押出し、急冷固化して無定形シートを得た。得られたシートを、加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に75℃で3.5倍延伸した後、続いて横方向に95℃で3.6倍延伸し、横方向に5%の弛緩と縦方向に0.5%の弛緩を行いながら、190℃で熱処理を施した。得られたフィルムの平均厚さは50μmで、極限粘度は0.70であった。また、フィルムの融点は220℃であった。
実施例2 実施例1の無定形シートを用い、縦延伸倍率を3.0倍とする以外は実施例1と全く同様に延伸製膜を行い、平均厚さ50μmのフィルムを得た。
比較例1 実施例1の無定形シートを用い、縦延伸倍率を3.0倍、熱処理温度を175℃とする以外は実施例1と全く同様に延伸製膜を行い、平均厚さ50μmのフィルムを得た。
実施例3 ジカルボン酸成分として、テレフタル酸単位84mol%及びイソフタル酸単位16mol%よりなり、ジオール成分がエチレングリコール単位98mol%及びジエチレングリコール単位2mol%よりなり、平均粒径4.5μmの無定形シリカ粒子4.0wt%含有する共重合ポリエステル(C)と、実施例1の共重合ポリエステル(A)とを重量比で共重合ポリエステル(C):共重合ポリエステル(A)=40:60の割合でブレンドした。ブレンド後、予備結晶化を経て本乾燥し、実施例1と全く同様にして延伸製膜を行い、平均厚さ50μmのフィルムを得た。また、フィルムの極限粘度は0.72であり、融点は210℃であった。
比較例2 ジカルボン酸成分として、テレフタル酸単位75mol%及びイソフタル酸単位25mol%よりなり、ジオール成分がエチレングリコール単位98mol%及びジエチレングリコール単位2mol%よりなる共重合ポリエステル(D)と実施例1のポリエチレンテレフタレート(A)とを重量比で共重合ポリエステル(D):ポリエチレンテレフタレート(A)=80:20の割合でブレンドした。ブレンド後、予備結晶化を経て、本乾燥し、Tダイを有する押出機を用いて280℃で押出し、急冷固化して無定形シートを得た。得られたシートを、加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に85℃で3.2倍延伸した後、続いて横方向に110℃で3.6倍延伸し、横方向に15%の弛緩と縦方向に0.5%の弛緩を行いながら、180℃で熱処理を施した。得られたフィルムの平均厚さは50μmで、極限粘度は0.66であり、融点は210℃であった。
以上、得られた結果をまとめて下記表−1に示す。


〔発明の効果〕
本発明のフィルムは、優れた成形性、耐熱性、及び厚さ斑を有し、成形用、特に成形転写用ベースフィルムとして好適であり、その工業的価値は高い。
【図面の簡単な説明】
第1図は成形と同時に転写も行なう成形転写法の概略を示す図である。図中の1は金型、2は射出機、3はベースフィルムそして4は印刷層を含む層を表わす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】下記式■〜■を同時に満足することを特徴とする成形用二軸延伸ポリエステルフィルム。
10≦Gs(60゜)≦90 …■55≦X100≦80 …■0.05・(80−X100)≦F100≦0.05・(135−X100) …■(ただし、上記式中で、Gs(60゜)はフィルムの光沢度(%)、X100はX線回折によって測定される微結晶サイズ(Å)、F100は150℃雰囲気下での100%伸長時強度(フィルム縦方向および横方向の平均値;kg/mm2)を示す)
【請求項2】150℃で3分処理後のフィルムの縦及び横方向の収縮率が共に10%以下であることを特徴とする請求項1記載の成形用二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項3】フィルムの厚さ斑が30%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の成形用二軸延伸ポリエステルフィルム。

【第1図】
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【特許番号】第2819761号
【登録日】平成10年(1998)8月28日
【発行日】平成10年(1998)11月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−102090
【出願日】平成2年(1990)4月18日
【公開番号】特開平4−1023
【公開日】平成4年(1992)1月6日
【審査請求日】平成8年(1996)10月31日
【出願人】(999999999)ダイアホイルヘキスト株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭64−45699(JP,A)
【文献】特開 昭64−40400(JP,A)
【文献】特開 平1−297287(JP,A)
【文献】特開 平2−204020(JP,A)
【文献】特開 昭64−11820(JP,A)