説明

成形部品の整列方法および整列装置

【課題】簡単、かつ、低コストで成形部品を整列できる成形部品の整列方法および整列装置を提供すること。
【解決手段】筒状部の一端側の開口が底板で封止され、他端側が開口状態の複数のカップ状成形部品13を治具11に設けられた織金網12上に載せる第1工程と、治具11を揺らす第2工程とからなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の成形部品を同じ向きに整列させる成形部品の整列方法および整列装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラウン管の電子銃を構成するグリッド電極などの成形部品は、円筒状の一端側の開口が底板で封止され、他端側が開口状態にあるカップ状をしている。このような構造のグリッド電極を用いて電子銃を組み立てる場合、その作業工程の関係から複数のグリッド電極の向きを一定方向に揃える必要があり、たとえば開口部分が上向きとなるように配列する工程が設けられている。
【0003】
ここで、カップ状成形部品を一定の向きに整列する従来の成形部品の整列方法について図4の断面図を参照して説明する。
【0004】
図4(a)において、符号41は成形部品を一定の向きに整列させるための治具で、平坦な底面41aの周囲に所定高さの枠41bを設けた箱状に形成されている。そして、治具41の中に複数の成形部品42が載せられる。成形部品42は、円筒状の側壁部42aの一端側の開口が底板42bで封止され、他端側が開口部42cになっている。成形部品42が電子銃用のグリッド電極の場合には、底板42bの中央に、電子ビームが通過するための小さな透孔が形成されている。
【0005】
次に、図4(b)に示すように、複数の成形部品42を載せた治具41を矢印Y1方向に前後左右に複数回揺する。このとき、成形部品42の一部は側壁部42aが下側になり、また、一部は底板42bが下側になり、また、一部は開口部42cが下側になる。
【0006】
次に、側壁部42aや開口部42cが下側になっている成形部品42を、たとえば、手作業などによって、図4(c)に示すように、底板42bが下側になるように揃え、整列が終了する。
【0007】
上記の方法では、箱状の治具が利用されている。しかし、カップ状成形部品を整列する他の方法としては、振動などを利用した整列機を用いる方法も用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の成形部品の整列方法のうち、治具を用いる方法は、成形部品が所望の向き、たとえば底板42bが下側にならない割合が多い。このため、所望の向きになっていない成形部品を整列し直す必要があり、工数が増え、作業効率が低下する。また、整列機を用いる方法は、整列機などの設備に費用がかかり、整列する成形部品の量が少ない場合は、コストが高くなる。
【0009】
本発明は、上記の欠点を解決するもので、簡単、かつ、低コストで成形部品を整列できる成形部品の整列方法および整列装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の成形部品の整列方法は、筒状部の一端側の開口が底板で封止され、他端側が開口状態の複数のカップ状成形部品を治具の凹凸面上に載せる第1工程と、前記治具を揺らす第2工程とからなっている。
【0011】
また、本発明の成形部品の整列装置は、周辺部に所定高さの枠が形成され、前記枠で囲まれた底面部が凹凸に形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単で、かつ、低コストで成形部品を整列できる成形部品の整列方法および整列装置が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態について図1を参照して説明する。
【0014】
図1(a)において、符号11は、平坦な底面11aの周囲に所定高さの枠11bが設けられた箱状の治具で、この治具11の底面11aに、表面が凹凸をしている織金網12が張り付けられている。そして、織金網12が底面に張り付けられた治具11の中に複数のカップ状成形部品13を載せる。カップ状成形部品13は、たとえば円筒状の側壁部13aの一端側の開口が底板13bで封止され、他端側が開口部13cになっている。成形部品13が電子銃用のグリッド電極の場合は、側壁部13aの長さおよび底板13bの直径はいずれも10mm程度で、底板13bの中央には電子ビームが通過する透孔が形成されている。そして、複数の成形部品13を載せた治具11を矢印Y1方向に前後左右に複数回揺する。
【0015】
このとき、図1(b)に示すように、ほとんど全ての成形部品13が底板13bが下側になって整列する。
【0016】
ここで、治具11の底面11aに張り付けられる織金網12について、その一部を抜き出した図2を参照して説明する。織金網12としては、たとえば一般に市販されている織金網が用いられる。織金網12は、縦方向(矢印X)および横方向(矢印Y)にそれぞれ配列される多数の金属線X1〜X4、Y1〜Y4が織られて構成されている。たとえば、縦方向の金属線X1は、横方向の金属線Y1〜Y4と交差する場合、交差する横方向の金属線Y1〜Y4に対し順に上下する構造になっている。また、その隣の縦方向の金属線X2も、横方向の金属線Y1〜Y4と交差する場合、交差する横方向の金属線Y1〜Y4に対し順に上下する構造になっている。この場合、金属線X2は、隣の縦方向の金属線、たとえば金属線X1が上側で交差している横方向の金属線に対しては、下側で交差する構造になっている。
【0017】
次に、治具11を揺すった場合における織金網12上の成形部品13の動作について図3を参照して説明する。
【0018】
治具11を前後左右に揺すると、成形部品13の開口部13cが織金網12の縦方向あるいは横方向の金属線の凹凸に当たり、矢印Y2方向に動きその向きが変わる。このとき、成形部品13の重心が底板13bの側にあるため、成形部品13は重心が低い底板13bが下向きになる。また、成形部品13は底板13bが下向きになると、その後、治具11が前後左右に揺れても、底板13bは織金網12の凹凸面上を滑るだけで、金属線の凹凸には引っ掛からない。このため、一度、底板13bが下向きになった成形部品13は、その後、側壁部13aが下向きになったり、開口部13cが下向きになったりするようなことがない。その結果、治具11を何回か揺すると、ほとんど全部の成形部品13が一定の向き、たとえば、底板13bが下向きになって整列する。
【0019】
なお、上記の実施形態では、治具の凹凸面を織金網で構成しているが、その他の材料を用いて治具の凹凸面を構成することもできる。また、本発明は、電子銃のグリッド電極以外の成形部品を整列する場合にも適用できる。
【0020】
上記した構成によれば、簡単で、かつ、高効率、低コストでカップ状成形部品を整列できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態を説明するための断面図である。
【図2】本発明に使用される織金網を説明するための斜視図である。
【図3】本発明に使用される織金網上における成形部品の動きを説明するための断面図である。
【図4】従来例を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0022】
11…治具
11a…治具の底面
11b…治具の枠
12…織金網
13…成形部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部の一端側の開口が底板で封止され、他端側が開口状態の複数のカップ状成形部品を治具の凹凸面上に載せる第1工程と、前記治具を揺らす第2工程とからなる成形部品の整列方法。
【請求項2】
筒状部の一端側の開口が底板で封止され、他端側が開口状態の複数のカップ状成形部品を治具の凹凸面上に載せる第1工程と、前記治具を揺らし、前記カップ状成形部品の底板が前記凹凸面側となるように整列させる第2工程とからなる成形部品の整列方法。
【請求項3】
凹凸面が織金網で構成されている請求項1または請求項2記載の成形部品の整列方法。
【請求項4】
周辺部に所定高さの枠が形成され、前記枠で囲まれた底面部が凹凸に形成された成形部品の整列装置。
【請求項5】
底面部の凹凸が織金網で構成されている請求項4記載の成形部品の整列装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−172910(P2006−172910A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364009(P2004−364009)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000113322)東芝ホクト電子株式会社 (172)
【Fターム(参考)】