説明

戸当り

【課題】 従来の戸当りの台座の上面はフラットではなく、掃除や歩行の邪魔になるという問題があり、美観も損なわれる場合があった。
【解決手段】 ドア10の下端に内蔵されたドア側部材30と、床面に固定された台座21からなる戸当りであって、ドア側部材30には回転軸32に回動自在に取り付けられたストッパー31が収納され、ストッパー31には磁石35が内蔵され、台座21はその上面がフラットな磁性体で構成され、ドア10が開扉されてドア側部材30が台座21の上方に位置したとき、磁石35の磁力によってストッパー31がバネ部材33のバネ力に抗して回動し、ドア10の下端と台座21の間に入り込み、ドア10の開扉方向への移動を規制する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石を利用し所定の位置でドアの開扉方向への移動を規制することのできる戸当りに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドアを開いたときにドアと壁との衝突を防止する戸当りが知られている。この戸当りは、建物の床面または壁面に固定されて使用される。
【0003】
図8は特許文献1に示されている従来の戸当りの構造を示す断面図であるが、ドアDの下端に埋め込まれたシリンダ1内を上下方向に摺動するピストン2の下端に磁石2aが装着され、床面Fに固定された磁性体で構成される台座5の上にドアが開扉されて位置すると上記磁石2aが台座5に吸着されるよう構成されている。台座5には壁部5a、5bがあり、壁部5bはドアDがそれ以上開かないようにするものであり、壁部5aはドアDを開放状態で安定に停止保持するためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3118176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の戸当りにおいては、台座の上面はフラットではなく、掃除や歩行の邪魔になるという問題があり、美観も損なわれる場合があった。本発明は、上記の問題を解決する戸当りを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の戸当りは、ドアの下端に内蔵されたドア側部材と、床面に固定された台座からなる戸当りであって、ドア側部材には回転軸に回動自在に取り付けられたストッパーが収納され、ストッパーには磁石が内蔵され、台座はその上面がフラットな磁性体で構成され、ドアが開扉されてドア側部材が台座の上方に位置したとき、磁石の磁力によってストッパーがバネ部材のバネ力に抗して回動し、ドアの下端と台座の間に入り込み、ドアの開扉方向への移動を規制することを特徴とする。
【0007】
ここで、ストッパーは弾性体で構成され、その外形は略三角形であり、回転軸に近い三角形の頂点に対向する三角形の一辺に相当する下部側面を除く二辺の長さは異なるように構成されていることが好ましい。
【0008】
また、ストッパーは剛体で構成され、その外形は略二等辺三角形であり、二等辺三角形の底辺に相当する下部側面の略中心の平面に垂直な方向に長孔が二等辺三角形の頂点に近い部分に設けられ、該回転軸は該長孔に通され、該長孔に装着されたスプリングにより該回転軸と該ストッパーの該下部側面側は反発する方向に付勢され、該下部側面の両端の少なくとも一方に曲面が形成されることが好ましい。
【0009】
また、台座の上面に溝を形成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば上記の構成としたので、台座の上面をフラットとすることができ、掃除や歩行の邪魔にならず、美観を損なうことのない戸当りを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る戸当りを備えたドアの正面図である。
【図2】図1におけるY矢視図である。
【図3】本発明に係る戸当りである。
【図4】本発明に係る戸当りの動作を説明する図である。
【図5】本発明に係る戸当りの台座である。
【図6】本発明に係る戸当りの他の実施例を示す図である。
【図7】本発明に係る戸当りの他の実施例の動作を説明する図である。
【図8】従来の戸当りの図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明に係る戸当りを備えたドア10であり、ドア10は丁番13,13等で壁11に設けられたドア枠12に取り付けられている。ドア10の下端には一部破断して内部を示すように戸当りのドア側部材30がドア10に収納されて取り付けられている。20は床面であり、21は戸当りの台座である。台座21は床面20からわずかに突出しているが上面はフラットであり、磁石が吸引するように磁性体で構成されている。
【0014】
図2は図1のY矢視図であり、台座21はドア10がほぼ全開した位置で床面20に固定されている。矢印Xはドアの開扉方向を表している。
【0015】
図3はドア10の下端部の側面の断面図であり、本発明に係る戸当りのドア側部材30が収納されている。ドア側部材30は、主にケース36に収納されたストッパー31で構成され、ドア10の下端に内蔵されて固定されている。ストッパー31は、ケース36に突設された回転軸32に回動自在に取り付けられ、弾性体で構成され、磁石35を内蔵している。磁石35はストッパー31がドア側部材30に組み込まれた状態において床面20に最も近い部分に埋め込まれている。33はねじりコイルバネ等のバネ部材であり、ストッパー31を矢印P方向へ付勢し、通常ではストッパー31が床面20に接触しないように保持している。34は突部であり、ストッパー31がそれ以上矢印P方向へ回動しないよう規制している。突部34はネジ等で構成され、突部34の長さを変えられるようにしてストッパー31と床面20との間隔を調整することができる。37はスプリングであり、ストッパー31を矢印P方向へ付勢している。ストッパー31の形状は略三角形であり、回転軸32を通す孔は三角形の一つの頂点の近くに設けられ、その頂点に対向する三角形の一辺に相当する下部側面S以外の2辺は長さが異なり、突部34に当接する側面の長さは他の側面の長さより長くなるよう構成されている。
【0016】
台座21は図5(a)に示すように、上面がフラットに形成された磁性体でできた板であり、ボルト22,22で床に固定されている。図5の(b)は台座21の別の実施例であり、上面に溝23を施している。図5の(c),(d)は台座21のさらに別の実施例であり、図5の(c)は平面図、図5の(d)は側面図であるが、台座21の上面に山形24を施したものである。溝23および山形24はいずれもストッパー31と台座21の摩擦力を増大させるのに有効である。
【0017】
以上のように構成された戸当りの動作を主に図3、図4を使って以下に説明する。図1、図2のように閉じられた状態のドア10におけるドア側部材30と床面20の状態は図3で示すように、ストッパー31はバネ部材33の付勢力により突部34に当接し、床面20には接触していない。ドア10を矢印Xで示す開扉方向に開扉していくと、ドア側部材30は台座21の上方に達することになる。この時の状態を図4(a)に示すが、台座21は磁性体でできているので、磁石35が磁力によって吸引され、ストッパー31が回転軸32の周りでバネ部材33のバネ力に抗して矢印Q方向へ回動し、わずかにストッパー31の下部側面Sが台座21の上面と接触する。ドア10がさらに開扉方向へ移動すると、ストッパー31は台座21の上面の摩擦によりさらに回動され、スプリング37のバネ力にも抗しながらストッパー31がドア10の下端と台座21の間でくさびのようにはまり込み、それ以上回動できなくなり、図4(b)に示した状態で止まる。すなわち、開扉方向への移動が規制されるのである。これは、台座21の上面に接触する下部側面Sにおける回転軸32から下部側面Sの長さがストッパー31の回動とともに長くなるよう構成されているので、ドア10の下端と台座21の間の長さより長くなった時点で、ドア10の下端と台座21の間でくさびのような効果を発揮するからである。ドア10を閉じるときはドア10から手を離せばよく、ドア10には図示しないドアクローザが通常設置されているので、その力によりドア側部材30と台座21の状態は図4(b)から図4(a)へ移り、ドア10は閉扉する。スプリング37はこの時のドアクローザの働きを補助するためのものである。
【0018】
次に本発明の別の実施例について説明する。図6において、図3と同じものには同じ番号を付すが、戸当りのドア側部材50はストッパー51を有している。ストッパー51は、ケース36に突設された回転軸32に回動自在に取り付けられ、磁石35を内蔵しているが、材質は弾性体に限らず剛体でもよい。磁石35はストッパー51がドア側部材50に組み込まれた状態において床面20に最も近い部分に埋め込まれている。ストッパー51の形状は、略二等辺三角形であり、二等辺三角形の底辺に相当する下部側面Tに垂直な方向に長孔52が二等辺三角形の頂点に近い部分に設けられ、回転軸32は長孔52に通され、長孔52に装着されたスプリング53により回転軸32とストッパー51の下部側面T側は反発する方向に付勢されている。このように構成することにより、ストッパー51が剛体であっても下部側面Tに垂直な方向に弾性を有する。回転軸32から下部側面Tまでの距離は同じではなく、回転軸32を通り下部側面Tの略中心の平面に垂直な線上の距離が一番長くなるよう(厳密には、前記平面の両端部分において一番長くなる)、下部側面Tの両端は丸みを持った曲面Rとして形成されている。54はスプリング等のバネ部材であり、ストッパー51を矢印P方向へ付勢し、通常ではストッパー51が床面20に接触しないように保持している。
【0019】
以上のように構成された戸当りの動作を主に図6、図7を使って以下に説明する。図1、図2のように閉じられた状態のドア10におけるドア側部材50と床面20の状態は図6で示すように、ストッパー51がバネ部材54の付勢力により突部34に当接し、床面20には接触していない。ドア10を矢印Xで示す開扉方向に開扉していくと、ドア側部材50は台座21の上方に達することになる。この時の状態を図7(a)に示すが、台座21は磁性体で構成されているので、磁石35が磁力によって吸引され、ストッパー51が回転軸32の周りでバネ部材54のバネ力に抗して矢印Q方向へ回動し、わずかにストッパー51の下部側面T(曲面R)が台座21の上面と接触する。ドア10がさらに開扉方向へ移動すると、ストッパー51は台座21の上面の摩擦によりさらに回動され、バネ部材54のバネ力に抗しながらストッパー51がドア10の下端と台座21の間でくさびのようにはまり込み、それ以上回動できなくなり、図7(b)に示した状態で止まる。すなわち、開扉方向への移動が規制されるのである。これは、台座21の上面に接触する下部側面Tにおける回転軸32から下部側面Tの長さがストッパー51の回動とともに長くなるよう構成されているので、ドア10の下端と台座21の間の長さより長くなった時点で、ドア10の下端と台座21の間でくさびのような効果を発揮するからである。ストッパー51はスプリング53によって弾性力が付与されており下部側面Tの中心部分は平面であるので、図示しない通常設置されているドアクローザの閉扉力とバネ部材54のバネ力との間で力のバランスが取れ、図7(b)の状態でドア10を開放状態で安定に停止保持できる。ドア10を閉じるときは、ドア10を閉扉方向へ手で軽く押すと、上記バランスがくずれ、ドア側部材50と台座21の状態は図7(b)から図7(a)へ移り、ドア10は閉扉方向へ移動して閉まる。
【0020】
本発明による戸当りは、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、上記の説明では、ストッパー51は下部側面Tの両端が曲面Rとして形成されているとしたが、本発明において効果を発揮するのは磁石35に近い曲面Rであり、下部側面Tの両端の少なくとも一方に曲面Rが形成されていればよい。
【符号の説明】
【0021】
10 ドア、12 ドア枠、20 床面、21 台座、30 ドア側部材、31 ストッパー、33 バネ部材、32 回転軸、34 突部、35 磁石、50 ドア側部材、51 ストッパー、54 バネ部材、R 曲面、S 下部側面、T 下部側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアの下端に内蔵されたドア側部材と、床面に固定された台座からなる戸当りであって、該ドア側部材には回転軸に回動自在に取り付けられたストッパーが収納され、該ストッパーには磁石が内蔵され、該台座はその上面がフラットな磁性体で構成され、該ドアが開扉されて該ドア側部材が該台座の上方に位置したとき、該磁石の磁力によって該ストッパーがバネ部材のバネ力に抗して回動し、該ドアの下端と該台座の間に入り込み、該ドアの開扉方向への移動を規制することを特徴とする戸当り。
【請求項2】
該ストッパーは弾性体で構成され、その外形は略三角形であり、該回転軸に近い三角形の頂点に対向する三角形の一辺に相当する下部側面を除く二辺の長さは異なるように構成されたことを特徴とする請求項1記載の戸当り。
【請求項3】
該ストッパーは剛体で構成され、その外形は略二等辺三角形であり、二等辺三角形の底辺に相当する下部側面の略中心の平面に垂直な方向に長孔が二等辺三角形の頂点に近い部分に設けられ、該回転軸は該長孔に通され、該長孔に装着されたスプリングにより該回転軸と該ストッパーの該下部側面側は反発する方向に付勢され、該下部側面の両端の少なくとも一方に曲面が形成されたことを特徴とする請求項1記載の戸当り。
【請求項4】
該台座の上面に溝を形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の戸当り。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−231502(P2011−231502A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101756(P2010−101756)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)