説明

所定のコード被覆用ゴム組成物ならびにそれを用いたカーカスおよび/またはベルトを有するタイヤ

【課題】所定のコードとの接着性および耐亀裂成長性をともに向上させることができる所定のコード被覆用ゴム組成物、ならびにそれを用いたカーカスおよび/またはベルトを有するタイヤ。
【解決手段】ゴム成分100重量部に対して、平均粒子径が200nm以下である超微粒子酸化亜鉛を1〜7重量部配合するポリエステルコード、ナイロンコード、アラミドコードまたはポリエチレンナフタレートコードを被覆するためのコード被覆用ゴム組成物、ならびにそれを用いたカーカスおよび/またはベルトを有するタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のコード被覆用ゴム組成物ならびにそれを用いたカーカスおよび/またはベルトを有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車用タイヤには大きな荷重がかかるため、補強材としてコードが用いられている。とくに走行中に、タイヤが発熱することによって、ゴムとコードとが剥離すると、致命的なタイヤ故障の原因となる。
【0003】
従来、コードには、様々な材料が使用されており、コード被覆用ゴム組成物には、接着性を向上させるために、酸化亜鉛を多量に配合する手法(たとえば、特許文献1参照)が知られている。しかし、酸化亜鉛を多量に配合すると、耐亀裂成長性が悪化するという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−239874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、所定のコードとの接着性および耐亀裂成長性をともに向上させることができる所定のコード被覆用ゴム組成物、ならびにそれを用いたカーカスおよび/またはベルトを有するタイヤに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ゴム成分100重量部に対して、平均粒子径が200nm以下である超微粒子酸化亜鉛を1〜7重量部配合するポリエステルコード、ナイロンコード、アラミドコードまたはポリエチレンナフタレートコードを被覆するためのコード被覆用ゴム組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、前記コード被覆用ゴム組成物を用いたカーカスおよび/またはベルトを有するタイヤに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ゴム成分および所定の超微粒子酸化亜鉛を所定量配合することで、所定のコードとの接着性および耐亀裂成長性をともに向上させることができる所定のコード被覆用ゴム組成物、ならびにそれを用いたカーカスおよび/またはベルトを有するタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のコード被覆用ゴム組成物は、ゴム成分および超微粒子酸化亜鉛を配合する。
【0010】
前記ゴム成分としてはとくに制限はなく、たとえば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などがあげられ、これらのゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、コードとの接着性および加硫時の熱安定性の観点から、NRおよびSBRが好ましい。
【0011】
NRとしては、従来ゴム工業で使用されるRSS♯3、TSR20などのグレードのNRを用いることができる。
【0012】
本発明で使用する超微粒子酸化亜鉛は、通常使用される酸化亜鉛よりも、平均粒子径の小さいものである。超微粒子酸化亜鉛を配合することで、接着性を向上させつつ、耐亀裂成長性も向上させることが可能となる。
【0013】
超微粒子酸化亜鉛の平均粒子径は200nm以下、好ましくは160nm以下である。超微粒子酸化亜鉛の平均粒子径が200nmをこえると、耐亀裂成長性の低下がみられる場合がある。また、超微粒子酸化亜鉛の平均粒子径は30nm以上が好ましく、60nm以上がより好ましい。超微粒子酸化亜鉛の平均粒子径が30nm未満では、凝集力が非常に強くなり、耐亀裂成長性の改善効果がみられない傾向がある。
【0014】
超微粒子酸化亜鉛の配合量は、ゴム成分100重量部に対して1重量部以上、好ましくは3重量部以上である。超微粒子酸化亜鉛の配合量が1重量部未満では、超微粒子酸化亜鉛を配合することによる接着性の改善効果が得られない。また、超微粒子酸化亜鉛の配合量は7重量部以下である。超微粒子酸化亜鉛の配合量が7重量部をこえると、分散が困難になり(凝集塊が発生し)、耐亀裂成長性が悪化する。
【0015】
本発明のコード被覆用ゴム組成物には、カーボンブラックを配合することが好ましい。
【0016】
カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100重量部に対して30重量部以上が好ましく、40重量部以上がより好ましい。カーボンブラックの配合量が30重量部未満では、ゴム自身の補強性が不充分となり、引張強度が低下する傾向がある。また、カーボンブラックの配合量は100重量部以下が好ましく、70重量部以下がより好ましい。カーボンブラックの配合量が100重量部をこえると、ゴム自身の発熱性が高くなり、耐久性が不充分となる傾向がある。
【0017】
本発明のコード被覆用ゴム組成物には、前記ゴム成分および超微粒子酸化亜鉛以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、たとえば、カーボンブラックなどの補強用充填剤、軟化剤、ワックス、各種老化防止剤、ステアリン酸、硫黄などの加硫剤、各種加硫促進剤などを必要に応じて適宜配合することができる。
【0018】
本発明のコード被覆用ゴム組成物は、長期間良好な接着性を保ち、耐久性に優れるという理由から、コードのなかでも、ポリエステルコード、ナイロンコード、アラミドコード、ポリエチレンナフタレートを被覆して使用されるものである。なかでも、コードとしては、ポリエステルまたはナイロンが好ましく、ナイロンがより好ましい。
【0019】
本発明のタイヤは、本発明のコード被覆用ゴム組成物を用いて、通常の方法により製造することができる。すなわち、必要に応じて前記配合剤を配合した本発明のコード被覆用ゴム組成物を、未加硫の状態で、カレンダーロールなどを用いて、未加硫ゴムシートを作製し、コードを被覆することで未加硫カーカスおよび/または未加硫ベルトを作製し、タイヤの他の部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを成形する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより本発明のタイヤを得る。
【実施例】
【0020】
実施例にもとづいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0021】
次に、実施例および比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
天然ゴム(NR):RSS♯3
スチレンブタジエンゴム(SBR):住友化学(株)製のSBR1502
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックH(N330)
アロマオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスPS32
酸化亜鉛:東邦亜鉛(株)製の銀嶺R(平均粒子径:290nm)
超微粒子酸化亜鉛:ハクスイテック(株)製のジンコックススーパーF−2(平均粒径:130nm)
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸「桐」
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0022】
実施例1〜3および比較例1〜4
表1に示す配合処方にしたがい、1.7Lのバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。さらに、得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、実施例1〜3および比較例1〜4の加硫ゴム組成物を作成した。
【0023】
(屈曲亀裂成長試験)
JIS K 6260「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムのデマッチャ屈曲亀裂成長試験方法」に準じて、室温25℃の条件下で、加硫ゴム組成物に1mmのクラックを発生させ、このクラックが1mm成長するまでの屈曲回数を測定した。なお、この測定は2回行い、その平均値を算出した。また、数値が大きいほど、耐屈曲亀裂成長性に優れ、70%および110%は、もとの加硫ゴム組成物の長さに対する伸び率を示す。
【0024】
(接着試験)
ポリエステルコード(東レ(株)製、繊度:1500d/2)またはナイロンコード(旭化成(株)製、繊度:840d/2)を前記未加硫ゴム組成物で被覆し、170℃の条件下で12分間プレス加硫し、接着試験用試験片を作製した。
【0025】
前記試験片を用いて接着試験を実施し、ゴム組成物の剥離抗力(N/cm)およびゴム被覆率(%)をそれぞれ測定した。なお、ゴム被覆率とは、コードとゴム間を剥離したときの剥離面のゴムの覆われている割合(100%:全面が覆われている)を示し、5段階(5:100%、4:85〜99%、3:70〜84%、2:50〜69%、1:49%以下)で評価した。
【0026】
前記試験の評価結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例1および2と、比較例1および2とを比較すると、通常の酸化亜鉛を配合した場合に比べて、超微粒子酸化亜鉛を配合すると、接着性に優れることがわかる。
【0029】
実施例1と比較例3とを比較すると、超微粒子酸化亜鉛の配合量が1重量部未満では、接着性の充分な改善効果が得られないことがわかる。
【0030】
また、実施例3と比較例4とを比較すると、超微粒子酸化亜鉛の配合量が7重量部をこえると、耐カット性は向上しても、耐亀裂成長性が低下することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分100重量部に対して、
平均粒子径が200nm以下である超微粒子酸化亜鉛を1〜7重量部配合するポリエステルコード、ナイロンコード、アラミドコードまたはポリエチレンナフタレートコードを被覆するためのコード被覆用ゴム組成物。
【請求項2】
請求項1記載のコード被覆用ゴム組成物を用いたカーカスおよび/またはベルトを有するタイヤ。

【公開番号】特開2008−69199(P2008−69199A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246815(P2006−246815)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】