説明

所定形状のケースを備えたドラムモータ

本願発明は、ドラムモータに関し、ドラムモータは、例えば、電気モータのロータ/ステータユニット、油圧または空気圧式アクチュエータユニットなどの駆動ユニットと、力とトルクを伝達するための駆動ユニットと連結された出力軸と、出力ユニットを少なくとも部分的に囲み、締付軸に対して回転可能に設けられた外側ドラムと、回転可能なドラムの外面に接続され、所定形状を備えるケースと、を有する。本願発明は、ケースの形状がらせん溝を有し、らせん溝はケースの表面の少なくとも一部に広がり、回転可能なドラムの回転軸周りにらせん状に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はドラムモータに関し、該ドラムモータは、
例えば、電気モータのロータ/ステータユニット、油圧または空気圧式アクチュエータユニットなどの駆動ユニットと、
力とトルクを伝達するための駆動ユニットと連結された出力軸と、
出力ユニットを少なくとも部分的に囲み、締付軸に対して回転可能に設けられた外側ドラムと、
回転可能なドラムの外面に接続され、所定形状を備えるケースと、
を有する。
【0002】
前述の構造を備えたドラムモータは、特に物品搬送の分野において使用され、コンベヤベルトのための主な駆動源としての機能を果たす。この目的のため、ドラムモータは、円筒状の外側ドラム面を有し、該外側ドラム面は、ドラム内部に搭載されたドライブモータによってドライブモータに設けられた締結軸に対して相対的に回転可能である。一般に締結軸は、ドラムの回転軸と同軸上にあり、例えば、ドラムモータの各端面に配置され、端面から軸方向に伸びている2つの軸ユニットによって形成されてもよい。
【背景技術】
【0003】
ドラムモータは、物流への適用、工業への適用、高い基準の衛生やIP(進入保護)保護等級が必要とされる環境への適用、例えば、食品、化学または薬品産業への適用などの異なる設置環境で使用される。
【0004】
そのような厳しい衛生要件を備えた適用では、ドラムモータの洗浄が簡易でかつ信頼できる方法で行わなければならない。
【0005】
ドラムモータ表面に貼り付けられ、適度な弾力性があり、洗浄が容易なゴム材料からなるゴム層によってこれらの衛生要件が満たされることは知られている。ドラムモータ表面からコンベヤベルトへトルクを伝達するため、歯付きベルト歯車と歯付きベルトのような確実なかみ合いを提供することもまた知られており、このコンベヤベルトにおける同軸上に伸びる軸方向溝は、ドラムモータ表面に案内されてコンベヤベルト上の適合横リブと協働する。この点についての代案として、ドラムモータ表面に溶接され、コンベヤベルト上の適合反転形状と協働する歯車によってトルクを伝達することもまた知られている。
【発明の概要】
【0006】
衛生面で慎重に扱うべき場所に設置されたドラムモータは、汚染や病原菌の温床等に対する安全に関してより厳しい要求に従わなくてはならない。同時に、製造現場やそのようなドラムモータを使用する使用現場におけるコストを最小にしようとするより大きな圧力は、洗浄に要する労力と時間を減らしたいという要求を生み出している。さらに、結局のところは、ドラムモータの購入コストを最小にしようとする圧力があり、これは、ドラムモータのメーカが機能や品質を妥協せずにドラムモータの生産コストを削減しようとする圧力に反映されている。
【0007】
これらの異なる要件のため、より信頼できる方法で高い衛生基準が必要とされる適用分野において使用可能であり、さらに製造が容易で安価なドラムモータが要求されている。
【0008】
本願発明によれば、この要求は、冒頭に特定された種類のドラムモータによって満たされる。そのドラムモータにおいて、ケースの形状はらせん溝を有し、らせん溝はケースの表面の少なくとも一部にわたり、回転可能なドラムの回転軸周りにらせん状に設けられている。
【0009】
本願発明によるドラムモータの形状の詳細設計により、コンベヤベルトがドラムモータの上に配置されているときに、液噴流による簡素な方法でドラムモータの表面を清掃できる。形状のらせん溝によって、ドラムモータのドラム全面が洗浄液で濡れるように、さらにまた、ドラムモータとかみ合うコンベヤベルトの表面も濡れるように液体が供給される。先行技術の不利な点は、このようにして回避される。すなわち、コンベヤベルトとドラムモータ表面との間で効果を奏するシールによって遮断されるため、後者の表面の部分には液体は到達できない。また、同時に実現されることであるが、洗浄液は確実にドラムの表面およびコンベヤベルトの全域から排水できるため、病原菌が溜まる液溜めは形成されない。
【0010】
当然のことながら、本願発明が奏する効果は、基本的にらせん溝がドラムケース表面の一部にわたっている場合に実現できる。らせん溝は特に、ドラムモータのドラムの軸方向全長にわたっていることが好ましい。また、このことによって確実に、ドラムの軸方向の全長およびコンベヤベルトの全幅に洗浄効果が働く。
【0011】
ドラムの独創的な形状によって、洗浄液は、ドラムに巻かれたコンベヤベルトの全幅に到達でき、コンベヤベルトから全幅を横切って流れ去ることができる。
【0012】
第1の好ましい実施形態によれば、形状は、平行かつ円周方向に間隙を介して設けられた複数の軸方向溝を有し、該軸方向溝はこのようにして、相互に分離された、前記らせん溝と前記軸方向溝の底面から突出する複数の形状部分を定める。本願発明のこの構成を備え、長手方向のリブを有する形状のコンベヤベルトと確実にかみ合わせることによるトルク伝達に適した形状を有するドラム表面を提供する。それによって、コンベヤベルトが跳んで外れる原因となり得る、コンベヤベルトに伝達される望まれない軸方向の力は生じず、独創的な形状によってもたらされる有利な洗浄能力をあきらめることもない。
【0013】
この点について、らせん溝の深さは、軸方向溝の深さと異なる、特に軸方向溝の深さより深い場合が、特に好ましい。この形状によって、らせん溝に沿って、また、各軸方向溝とかみ合う適合歯形リブを有するコンベヤベルトによって覆われる領域においても、洗浄液を確実に供給できる。
【0014】
軸スラストがなく、さらに製造が安価である確実なかみ合い機構によってトルクが伝達されるように、軸方向溝は、回転軸に対して平行であることがさらに好ましい。
【0015】
軸方向溝を有する本実施形態は、軸方向溝が、第1の幅を有する第1のタイプの軸方向溝と、第1の幅と異なる幅を有する第2のタイプの軸方向溝とを有するように、さらに発展させても良い。2つの異なるタイプの軸方向溝を備えるこの構造は、これらの形状や離間によって2つのタイプの軸方向溝のうちの一方のみと協働する適合長手方向リブを備えるコンベヤベルトと協働するために使用できる。その結果として、コンベヤベルトが巻かれたドラムの領域で他のタイプの軸方向溝も洗浄液の流路として機能できる。したがって、あるらせん溝から隣接するらせん溝に洗浄液を軸方向に供給するのを改善できる。この点について当然ながら、この優位性は特に、歯付きベルトのリブと確実にかみ合う1つの軸方向溝がそのような確実なかみ合いをしない軸方向溝に隣接して配置されるように、第1のタイプの軸方向溝と第2のタイプの軸方向溝がドラムの表面上に交互に配置されている場合に獲得される。その結果、液体は後者の軸方向溝を通ることができる。しかし、当然ながら他の配列、例えば、2つの一方のタイプの液体流路軸方向溝の後に、1つの確実にかみ合ってトルクを伝達する他のタイプの軸方向溝が続いている配列も本願発明に含まれている。
【0016】
第1のタイプの軸方向溝の深さは、第2のタイプの軸方向溝の深さと異なることがさらに好ましい。2つのタイプの軸方向溝が異なる深さを有しているこの構造は、洗浄液をよりよく供給することが可能であり、歯型ベルトのリブが各軸方向溝にかみ合っている場合でも、洗浄液は少なくともより深い溝を連続して流れることができる。また、この発展によって、ドラムモータ表面のぎざぎざを減らすために、コンベヤベルトのリブ部が止まらない軸方向溝を他の軸方向溝よりも浅く設計することができる。
【0017】
複数のらせん溝をケースの少なくとも一部に、ドラムモータシェルの回転軸周りにらせん状に設けることがさらに好ましい。本願発明のこの発展では、多条ねじ、特に、二条、三条、四条ねじのような複数回の巻きつけを、ドラム表面周りに1回または複数回巻かれた一条ねじのようならせん溝の替わりに設ける。その結果、複数の巻きつけによって、洗浄液の供給がさらに改善される。この点について当然のことであるが、多条ねじの個々のねじは、同一形状または異なる形状、例えば、異なる幅や深さのらせん溝に設計しても良い。さらに特に、複数のらせん溝は、異なるピッチのらせん溝を使用するように設計しても良い。それによって、溝は互いの間で優位に濡れるため、ドラム表面に洗浄液をより一層供給することができる。
【0018】
基本原理として、本願発明による効果は、ドラムの全長にわたって360度巻きつけることによって実現可能である。しかし、特に好ましい実施形態は、らせん溝をドラム表面に複数回巻きつけるものであり、特に、巻きつけの回数が、ドラムの長さと直径の比の3倍を超えないことが好ましい。ドラムの全長にわたって少なくとも3回は巻きつけるべきである。
【0019】
さらに、各らせん溝の軸方向の幅は、らせん溝のピッチと略等しいことがより好ましい。これによって形状は、洗浄工程のための液の効果的な供給と同様に、トルク伝達のための好適で確実なかみ合いを可能とする。
【0020】
他の好ましい実施形態によれば、ケースは、樹脂、特に、ゴム状弾性樹脂で形成されている。ケースは有利には、回転可能なドラムの表面に加硫プロセスによって貼り付けるか、または表面に接着することができる。
【0021】
本願発明の他の態様は、ドラムモータ装置であり、これは前述の構造のいずれかひとつによるドラムモータと、外側ドラムモータ表面の周りに少なくとも部分的に巻きつき、軸方向溝の少なくとも一部と一致するドラムモータ表面と対向するリブをその表面上に備えるコンベヤベルトとを有する。特に、このようなドラムモータ装置は、ドラムモータとコンベヤベルトとの間の効率的なトルク伝達を可能にし、さらにまた、ドラムモータ表面とコンベヤベルトの両者の洗浄を確実かつ簡素な方法で実行可能にする。コンベヤベルトは、ドラムモータ表面にある1つおき、2つおき、または、3つおきの軸方向溝にかみ合うように間を空けて配置されたリブを備えるように設計されても良い。
【0022】
最後に、本願発明の他の態様は、ドラムモータのケースであり、当該ケースは、所定形状をその外面に有し、該形状は、ドラムモータの回転可能なドラムの回転軸周りにらせん状に設けられたらせん溝を有することを特徴とする。前述のケースをドラムモータ表面に貼り付けるような方法、例えば、加硫または接着等によって、必要に応じて、収縮、締め付け等によって、ドラムモータを改良する独創的な方法で既存のドラムモータを発展させるのにそのようなケースは使用できる。
【0023】
ケースは、この点についてドラムモータのための前述のケースのように具体化することによって発展させてもよい。
【0024】
好ましい実施形態について、ドラムモータケースの斜視図を示す添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本願発明によるドラムモータケースを示す斜視図である。
【0026】
図に示すように、ケースは円柱状の基本形状を有し、その中にドラムモータが配置された内側円筒状空洞10を囲んでいる。この点については当然のことながら、ドラムモータをラックフレーム等の中に搭載するため、軸マウントは、ケースの円筒基本形状の2つの開口端面11、12のそれぞれから伸びていてもよい。
【0027】
ケースの外側円筒面は、複数の軸方向溝20a、b、c・・・、30a、b、c・・・を有する。軸方向溝は、第1のタイプ20a、b、cと第2のタイプ30a、b、cに細分され、円周方向に互いに交互に配置される。第1のタイプの軸方向溝20a、b、cは、ドラムモータからコンベヤベルトにトルクを伝達するため、コンベヤベルト上の適合横リブと積極的に関わって協働するのに使用される。第2のタイプの軸方向溝30a、b、cは、コンベヤベルトの適合リブとはかみ合わないが、コンベヤベルトによって径方向に覆われるのみである。その結果、軸方向溝はコンベヤベルトが巻きつけられるケースの部分に長手方向の流路を形成する。
【0028】
また、ケースは、一条ねじ状にケースの表面の周りに複数回巻かれているらせん溝40を有する。
【0029】
らせん溝40は、軸方向溝20a、b、c・・・、30a、b、c・・を断ち切って、ドラムモータの外側の支持面を形成する複数の単一形状ブロック50a、b、c、d、e、f・・・を形成するようにケースに彫り込まれている。
【0030】
らせん溝40の深さは、第1のタイプの軸方向溝の深さと同じである。反対に、第2のタイプの軸方向溝30a、b、cの深さは、第1のタイプの軸方向溝20a、b、cおよびらせん溝40の深さよりも浅い。
【0031】
らせん溝40の幅は、一条ねじのピッチと略等しい。第2のタイプの軸方向溝30a、b、cの幅は、らせん溝の幅と略等しいのに対して、第1のタイプの軸方向溝20a、b、cの幅は、第2のタイプの軸方向溝30a、b、cおよびらせん溝の幅よりも狭い。特に、第2のタイプの軸方向溝30a、b、cは、チェーンリンクやコンベヤベルトジョイント等に必要な自由空間を供給し、また、洗浄液をより供給させることによってドラムモータ表面の掃除をより容易にする。
【符号の説明】
【0032】
10 円筒状空洞、11、12 開口端面、20 第1のタイプの軸方向溝、30 第2のタイプの軸方向溝、40 らせん溝、50 単一形状ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
例えば、電気モータのロータ/ステータユニット、油圧または空気圧式アクチュエータユニットなどの駆動ユニットと、
力とトルクを伝達するための駆動ユニットと連結された出力軸と、
前記出力ユニットを少なくとも部分的に囲み、締付軸に対して回転可能に設けられた外側ドラムと、
回転可能なドラムの外面に接続され、所定形状を備えるケースと、
を有するドラムモータであって、
前記ケースの前記所定形状はらせん溝を有し、前記らせん溝は前記ケースの表面の少なくとも一部に広がり、前記回転可能なドラムの回転軸周りにらせん状に設けられている
ことを特徴とするドラムモータ。
【請求項2】
前記形状は、平行かつ円周方向に間隙を介して設けられた複数の軸方向溝を有し、該軸方向溝はこのようにして、相互に分離された、前記らせん溝と前記軸方向溝の底面から突出する複数の形状部分を定める
ことを特徴とする請求項1に記載のドラムモータ。
【請求項3】
前記らせん溝の深さは、前記軸方向溝の深さと異なり、特に前記軸方向溝より深い
ことを特徴とする請求項2に記載のドラムモータ。
【請求項4】
前記軸方向溝は、前記回転軸と平行に延びている
ことを特徴とする請求項2に記載のドラムモータ。
【請求項5】
前記軸方向溝は、第1の幅を有する第1のタイプの軸方向溝と、前記第1の幅と異なる幅を有する第2のタイプの軸方向溝とを有する
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のドラムモータ。
【請求項6】
前記第1のタイプの軸方向溝は、第2のタイプの軸方向溝と異なる深さを有する
ことを特徴とする請求項5に記載のドラムモータ。
【請求項7】
複数のらせん溝は、前記ケースの少なくとも一部に適用され、前記ドラムの回転軸周りにらせん状に設けられている
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のドラムモータ。
【請求項8】
各らせん溝は、前記ドラムの全長にわたって360度1巻きするものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のドラムモータ。
【請求項9】
前記各らせん溝の軸方向の幅は、前記らせん溝のピッチと略等しい
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のドラムモータ。
【請求項10】
前記ケースは、樹脂、特にゴム状弾性樹脂で形成されている
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のドラムモータ。
【請求項11】
前記ケースは、前記回転可能なドラムの表面に加硫プロセスによって貼り付けられるか、または、前記回転可能なドラムの外面に接着される
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のドラムモータ。
【請求項12】
請求項2から12のいずれか1項に記載の前記ドラムモータと、前記ドラムモータの外面の周りに少なくとも部分的に巻きつけ、前記軸方向溝と適合する前記ドラムモータ表面と対向するその面上にリブを備えるコンベヤベルトと、を有するドラムモータ装置。
【請求項13】
ドラムモータのケースは、所定形状をその外面上に有し、前記形状は、ドラムモータの回転可能なドラムの回転軸周りにらせん状に設けられたらせん溝を備える
ことを特徴とするドラムモータのケース。
【請求項14】
請求項2から10のいずれか1項に記載の前記ケースの特徴を備えて設計された
ことを特徴とする請求項13に記載のケース。

【図1】
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【公表番号】特表2013−511454(P2013−511454A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539359(P2012−539359)
【出願日】平成22年11月23日(2010.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067999
【国際公開番号】WO2011/061342
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(506301427)インターロール・ホールディング・アーゲー (13)