説明

扉用埋込み取手

【課題】極めて容易に、短時間で、扉に装着できる埋込み取手を提供する。
【解決手段】埋込み取手1は、本体2と、これを扉の正面板31に固定する取付部材3とを具備する。本体2は、手差込み用凹部4を形成するように膨出する膨出部5と、凹部4の周囲に広がるフランジ部6とを具備する。フランジ部6の背面と膨出部5との間に、係合突部32eを受け入れる係合凹部5fと、その反対側に位置する係合凹部5gとを具備する。係合凹部5gは、斜面5hを有する。取付部材3は、係合片7bを有するベース7と、これに枢着される締め付け部材8とを具備する。締め付け部材8は、締め付け位置と解放位置との間で回転し、締め付け位置で押圧部8aが凹部5g内へ進入し、斜面5hに係合して取手本体2を背面側へ引き込み、それによって、フランジ部6を正面板31に圧接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非常扉、厨房用扉等の扉に装着され、手先を差込んで扉の開放操作を行うために使用される埋込み取手に関する。
【背景技術】
【0002】
埋込み取手は、扉に形成された取付用開口に扉の正面側から嵌め込まれ、典型的にはボルトとナットによって扉に固着される。その一例が、特許文献1に記載されている。この埋込み取手は、正面側に手差込み用凹部を形成するように背面側に膨出する膨出部と、この凹部の周囲に広がるフランジ部とを具備する。フランジ部の背面側の四隅には、ボルトが植え付けられる。扉に形成された取付用開口に、正面側から膨出部を嵌め込み、取付用開口の外側四隅のボルト孔にボルトを挿通し、これに扉の裏側からナットを螺合させることによって、取手が固定される。
また、フランジの四隅に、ボルト挿通用の皿孔が形成され、この皿孔にボルトを挿通して、扉の裏側でナットにより締め付ける構造のもの、あるいは扉の裏側に、ボルト孔に重ねて、予めボルト螺合用のナットが溶接されるものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−250154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の埋込み取手は、いずれもボルト、ナットを螺合させる構造であって、取り付けに手間がかかる難点がある。
したがって、この出願に係る発明は、極めて容易に、短時間で、扉に装着することができる埋込み取手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するためのこの出願に係る埋込み取手1は、正面側に手差込み用凹部4を形成するように背面側に膨出する膨出部5と、この凹部4の周囲に広がるフランジ部6とを具備する本体2と、本体2を扉の正面板31に固定するための取付部材3とを具備する。取手本体2は、フランジ部6の背面と膨出部5との間に、第1,第2の係合凹部5f,5gを有する。第1の係合凹部5fは、扉の正面板31に形成された取付用開口32の係合突部32eを受け入れる。第2の係合凹部5gは、膨出部5を挟んで第1の係合凹部5fと反対側に位置する。第2の係合凹部5gは、背面側へ向かうにしたがって徐々に外方へ広がる斜面5hを有する。取付部材3は、ベース7と、締め付け部材8とを具備する。ベース7は、取付用開口32の側縁32bに沿って正面板31の背面に密着するように装着される。締め付け部材8は、ベースの背面側に枢着され、締め付け位置と解放位置との間でベース7の背面と平行に回転自在である。ベース7は、開口32の側縁32bに沿うように正面側へ起立する係合片7bを一側縁7eに有する。締め付け部材8は、押圧部8aと、回転操作部8bとを具備する。押圧部8aは、締め付け位置において取手本体2の係合凹部5g内へ進入し、斜面5hに係合して取手本体2を背面側へ引き込み、それによって、フランジ部6を正面板31に圧接させる。回転操作部8bは、指を掛けて締め付け部材8を回転操作できるように背面側へ起立している。
【発明の効果】
【0006】
この出願に係る発明の埋込み取手によれば、ボルト、ナットを螺合させることなく、極めて容易に、短時間で、扉に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の埋込み取手の背面側から見た分解斜視図である。
【図2】本発明の埋込み取手の装着状態の背面側から見た斜視図である。
【図3】本発明の埋込み取手の装着状態を背面側の図2と反対方向から見た斜視図である。
【図4】図1の埋込み取手の正面図である。
【図5】図1の埋込み取手の平面図である。
【図6】図1の埋込み取手の側面図である。
【図7】図1の埋込み取手の背面図である。
【図8】図4におけるVIII−VIII断面図である。
【図9】取付部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
埋込み取手1は、取手本体2と取付部材3とを具備する。取手本体2は、正面側に手差込み用凹部4を形成するように背面側に膨出する膨出部5と、凹部4の周囲に広がるフランジ部6とを具備する。取手本体2は、扉の正面板31に形成された取付用開口32へ、扉の正面側から膨出部5が嵌め込まれ、フランジ部6を正面板の前面に密着させて、取付部材3により正面板31に固定される。
【0009】
扉の正面板31に形成される取付用開口32は、ほぼ矩形で、相対向する第1及び第2の側縁32a,32bと、これらと直角の第3及び第4の側縁32c,32dと、第1の側縁32aから第2の側縁側32bへ向かって突出した係合突部32eとを有する。
【0010】
取手本体2の膨出部5は、フランジ部6と一体にプレス形成され、第1ないし第4の側板5a,5b,5c,5d及び底板5eを有するほぼ矩形の箱状で、相対向する第1、第2の側板5a,5bの、フランジ部6の背面との間に第1の係合凹部5fと第2の係合凹部5gが設けられる。第1の係合凹部5fは、取付用開口32の係合突部32eを受け入れる。第2の係合凹部5gは、背面側へ向かうにしたがって徐々に外方へ広がる斜面5hを具備する。また、係合凹部5f,5gの前面側には、手差込み用凹部4内に膨出する指掛け用突部4aが形成される。なお、図示の実施形態においては、第1の係合凹部5fと第2の係合凹部5gは膨出部5の中心線に対して対称に、同形に形成されるが、対称、同形でなくてもよい。
【0011】
取付部材3は、ベース7と締め付け部材8とを具備し、取付用開口32の第2の側縁32bに沿って正面板32の背面に密着するように装着される。
【0012】
ベース7は、コ字状をなした平板状の本体7aと、その一側縁7eから開口の第2の側縁32bに沿うように正面側へ起立する係合片7bとを具備する。ベース本体7aは、取手本体2の膨出部の側板5c,5dの外側面に沿う対向一対の延出片7c,7dをさらに具備する。ベース本体7aは、側縁7eを取付用開口32の側縁32bに、また延出片7c,7dを開口32から背面側へ突出した膨出部の側板5c,5dの外側面に沿わせるように正面板31の背面に装着される。
【0013】
締め付け部材8は、ベース7にピン9で枢着され、ベース7の背面と平行に、締め付け位置(図7における実線)と解放位置(図7における仮想線)との間で回転自在である。締め付け部材8は、締め付け位置において取手本体の係合凹部5g内へ進入する押圧部8aと、指を掛けて回転操作できるように背面側へ起立する回転操作部8bとを具備する。押圧部8aは、取手本体の係合凹部5g内へ進入したときに、斜面5hに係合して、取手本体2を背面側へ引き込み、それによって、フランジ部6を正面板31に圧接させる。図示の実施例において、締め付け部材8は、一対設けられ、図7に仮想線で示す解放位置から、互いの回転操作部8bを接近させるように相互に反対方向へ所定角度回転させることにより、実線で示す締め付け位置となるように設定される。
【0014】
締め付け部材8が斜面5hに係合した状態で、押圧部8aが斜面5hに対して十分に大きなばね力をもって圧接されれば、締め付け部材8を締め付け位置に固定する手段を別途講じなくてもよい。ばね力を補強するため、図9に示すように、取付部材3のベース7における締め付け部材8の枢支部付近を正面板31の裏面から浮き上がるように湾曲させておき、締め付け部材8を斜面5hに圧接させたときに、湾曲部が正面板31の裏面に押しつけられるように構成することができる。
【0015】
別途、固定手段が必要なら、回転操作部8bに形成された結合孔8cに結束バンドを通して結束するなどして、締め付け位置で固定することもできる。
【0016】
埋込み取手1を扉の正面板31に装着するには、開口32の係合突部32eを取手本体2の係合凹部5fに嵌合させるように、膨出部5を側板5a側から開口32に嵌合させ、正面板31の背面側へ突出させる。次いで、正面板31の背面側から、ベース7の係合片7bを開口32の側縁32bに掛け、延出片7c,7dを膨出部の側板5c,5dに沿わせて、取り付け部材3を装着する。締め付け部材8を締め付け位置へ回転させ、必要に応じて結束バンド等で固定すれば、埋込み取手1の装着は完了する。
【符号の説明】
【0017】
1 埋込み取手
2 取手本体
3 取り付け部材
4 手差し込み用凹部
4a 指掛け用突部
5 膨出部
5a 第1の側板
5b 第2の側板
5c 第3の側板
5d 第4の側板
5e 底板
5f 第1の係合凹部
5g 第2の係合凹部
5h 斜面
6 フランジ部
7 ベース
7a ベース本体
7b 係合片
7c 延出片
7d 延出片
7e 側縁
8 締め付け部材
8a 押圧部
8b 回転操作部
8c 結合孔
9 ピン
31 扉の正面板
32 取り付け用開口
32a 第1の側縁
32b 第2の側縁
32c 第3の側縁
32d 第4の側縁
32e 係合突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面側に手差込み用凹部を形成するように背面側に膨出する膨出部と、この凹部の周囲に広がるフランジ部とを具備し、扉の正面板に形成された取付用開口であって相対向する第1の側縁と第2の側縁とを有し第1の側縁に第2の側縁側へ突出した係合突部を有するものへ、扉の正面側から膨出部が嵌め込まれ、フランジ部を扉の正面板の前面に密着させて取付部材により正面板に固定される取手本体を有する埋込み取手であって、
前記取手本体は、フランジ部の背面と膨出部との間に、前記取付用開口の係合突部を受け入れる第1の係合凹部と、膨出部を挟んでその反対側に位置する第2の係合凹部とを具備し、
前記取手本体の第2の係合凹部は、背面側へ向かうにしたがって徐々に外方へ広がる斜面を具備し、
前記取付部材は、前記取付用開口の第2の側縁に沿って前記扉の正面板の背面に密着するように装着され開口の第2の側縁に沿うように正面側へ起立する係合片を一側縁に有するベースと、このベースの背面側に枢着される締め付け部材とを具備し、
この締め付け部材は、締め付け位置と解放位置との間でベースの背面と平行に回転自在で、締め付け位置において前記取手本体の第2の係合凹部内へ進入する押圧部と、指を掛けて回転操作できるように背面側へ起立する回転操作部とを具備し、
前記の締め付け部材の押圧部は、前記取手本体の第2の係合凹部内へ進入したときに、前記斜面に係合して取手本体を背面側へ引き込み、それによって、フランジ部を正面板に圧接させるように構成されることを特徴とする埋込み取手。
【請求項2】
前記締め付け部材は、一対設けられ、解放位置から、互いの回転操作部を接近させるように相互に反対方向へ所定角度回転させた位置が締め付け位置となるように設定されることを特徴とする請求項1に記載の埋込み取手。
【請求項3】
前記一対の締め付け部材は、締め付け位置において連結して固定可能に構成されることを特徴とする請求項2に記載の埋込み取手。
【請求項4】
前記正面板に形成された取付用開口は、ほぼ矩形で、前記第1及び第2の側縁と、これらと直角の第3及び第4の側縁とを有し、
前記取手本体の膨出部は、第1ないし第4の側板及び底板を有するほぼ矩形の箱状で、相対向する第1、第2の側板の、フランジ部の背面との間に第1の係合凹部5fと第2の係合凹部5gが設けられ
前記取付部材のベースは、前記取手本体の膨出部の第3、第4の側板の外側面に沿う対向一対の延出片をさらに具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の埋込み取手。
【請求項5】
前記取手本体の膨出部は、前記フランジ部と一体に形成され、前記第1の係合凹部と第2の係合凹部は膨出部の中心線に対して対称に、同形に形成されることを特徴とする請求項1,2,4のいずれかに記載の埋込み取手。
【請求項6】
前記第1の係合凹部と第2の係合凹部の前面側には、前記手差込み用凹部内に膨出する指掛け用突部が形成されることを特徴とする請求項1,2,4,5のいずれかに記載の埋込み取手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−26810(P2011−26810A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172335(P2009−172335)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000108708)タキゲン製造株式会社 (256)