扉錠用鍵穴カバー
【課題】正当な施解錠者にとっては鍵や特殊な用具等を用いることなく、簡単な操作のみで扉錠の鍵穴を開放させる事が可能となる一方、部外者にとっては簡単には鍵穴を開放する事のできない扉錠用鍵穴カバーを提供する。
【解決手段】扉錠用鍵穴カバーは、鍵穴に鍵操作穴114を連通させた状態で扉錠に固定されるベース部材11と、ベース部材11を覆い且つベース部材11の中心を軸に回転自在に設けられた環状のカバー部材12と、ベース部材11に連結されてキャップ嵌合穴121に嵌合された状態で鍵操作穴114を覆うキャップ部材13と、カバー部材12の回転動作に連動して埋没嵌合状態と嵌合解除状態との切り替えを行うカムリング機構CRMと、カバー部材12の軸方向位置が第一位置にある状態でカバー部材12の回転動作を規制し、軸方向位置が第二位置にある状態で回転動作の規制を解除する回転規制機構CCMと、を備えた。
【解決手段】扉錠用鍵穴カバーは、鍵穴に鍵操作穴114を連通させた状態で扉錠に固定されるベース部材11と、ベース部材11を覆い且つベース部材11の中心を軸に回転自在に設けられた環状のカバー部材12と、ベース部材11に連結されてキャップ嵌合穴121に嵌合された状態で鍵操作穴114を覆うキャップ部材13と、カバー部材12の回転動作に連動して埋没嵌合状態と嵌合解除状態との切り替えを行うカムリング機構CRMと、カバー部材12の軸方向位置が第一位置にある状態でカバー部材12の回転動作を規制し、軸方向位置が第二位置にある状態で回転動作の規制を解除する回転規制機構CCMと、を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉錠の鍵穴を隠すために取り付けられる扉錠用鍵穴カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、扉錠の鍵穴を隠すために該扉錠に取り付けられる扉錠用鍵穴カバーが各種提案されている。この種の扉錠用鍵穴カバーは、セキュリティ性を高めたり、不正な悪戯を防止するため等に利用されている。これに関連して、例えば扉錠の鍵穴(孔)を開閉可能な蓋で覆って、当該蓋を第二の錠によって施錠することの可能な扉用二重錠が公知である(例えば、特許文献1を参照。)。しかし、一般には、複数の鍵を携帯しなければならず、その一部を携帯し忘れた場合等には解錠する事ができないため、広く普及するには至っていない。
【0003】
一般的な扉錠用鍵穴カバーの一例として、扉錠の鍵穴と、その鍵操作穴とを連通させて取り付けるベース部材と、このベース部材に回動可能に連結して鍵操作穴を開閉する円形蓋状のキャップ部材とで構成された扉錠用鍵穴カバーが一般的である。この扉錠用鍵穴カバーでは、例えば非施解錠時は、鍵穴の防塵や防水のため、或いは鍵穴を不正に悪戯されないように、キャップ部材をベース部材上に重ねる事によって、鍵穴を隠している。
【0004】
ところが、上記したような扉錠用鍵穴カバーでは、鍵穴をキャップ部材で隠すことによって、鍵穴の存在を一見して気付かれないようになっているが、キャップ部材をベース部材に対して回動操作するだけで、簡単に鍵穴を露出させることができてしまう。従って、意識的に鍵穴に異物を詰めたりして不正に悪戯しようとする者に対しては、その悪戯を防止しきれないというのが実情である。
【0005】
特許文献2には、鍵錠上に、その鍵穴に鍵操作穴を連通させて固定するキャップベースと、キャップベースに回動可能に連結して鍵操作穴を開閉するキャップカバーとからなり、キャップカバーを開方向に回動したとき、鍵操作穴を開放して鍵穴を外部に臨ませる鍵錠用キャップにおいて、キャップベースには、キャップカバー側上向きにピン挿通口をあけたガイド穴と、そのガイド穴と一端側が連通する一方、他端側を周縁部に向けてあけて外部操作部材の挿入口を形成した細軸差込み穴を設け、ガイド穴内に、基部側に係止凸部を有する磁性体のストッパピンを、その頭部をピン挿通口から出没可能に遊嵌する一方、キャップカバーには、それを閉めてキャップベース上に重ねたとき、ピン挿通口と連通する位置に下向きにピン受け口をあけたピン係合凹部を設け、ピン係合凹部内に、ストッパピンの頭部を吸着する磁石を嵌着してなる、鍵錠用キャップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−97821号公報
【特許文献2】特開2005−273189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示されている鍵錠用キャップによれば、たしかに、正当な施解錠者にとっては簡単な操作でキャップ部材(キャップカバー)を開けられる一方、不正に悪戯しようとする者にとっては、たとえ鍵錠の存在に気付いても簡単にはキャップ部材(キャップカバー)を開ける事ができない。
【0008】
しかしながら、この鍵錠用キャップを使用する場合、正当な施解錠者に外部操作部材の携帯を必要とさせてしまうため、外部操作部材を携帯し忘れた場合には解錠することができないという不具合が生じ得る。また、この外部操作部材を、先端に細軸部を有する鍵錠に専用の施解除キーで代用することができるにしても、外部操作部材の挿入口は外部に露出しているため、不正に悪戯しようとする者にしてみれば容易に異物をこの挿入口に詰める事ができてしまう。従って、この種の扉錠用鍵穴カバーにはいまだ改善の余地があると考えられる。
【0009】
本発明は、上記した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、正当な施解錠者にとっては鍵や特殊な用具等を用いることなく、簡単な操作のみで扉錠の鍵穴を開放させる事が可能となる一方、正当な施解錠者ではない者(以下、「部外者」ともいう)にとっては、簡単には鍵穴を開放する事のできない扉錠用鍵穴カバーを提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の構成を備えることで、上記課題を解決することとした。即ち、本発明は、扉錠の鍵穴を隠すために該扉錠に取り付けられる扉錠用鍵穴カバーであって、円形外周側面を有し、前記鍵穴に鍵操作穴を連通させた状態で前記扉錠に固定されるベース部材と、前記ベース部材を覆い、且つ該ベース部材の中心を軸に回転自在に設けられ、該ベース部材の前記鍵操作穴が外部に臨むような開口穴であるキャップ嵌合穴が形成された環状のカバー部材と、前記ベース部材に連結され、前記カバー部材の前記キャップ嵌合穴に嵌合された状態で該ベース部材の前記鍵操作穴を覆うキャップ部材と、前記カバー部材の回転動作に連動して、前記キャップ嵌合穴に前記キャップ部材が埋没した状態で嵌合される埋没嵌合状態と、該キャップ部材の嵌合が解除される嵌合解除状態との切り替えを行う切り替え機構と、前記ベース部材の中心軸方向における前記カバー部材の該ベース部材に対する相対位置が第一位置にある状態で該カバー部材の回転動作を規制する一方、該カバー部材の該相対位置が該第一位置に比べて該ベース部材から離間した第二位置にある状態で該回転動作の規制を解除する回転規制機構と、を備える扉錠用鍵穴カバーである。
【0011】
本発明において、非施解錠操作時には、カバー部材の回転位置が埋没嵌合状態に対応する位置に維持され、カバー部材のベース部材に対する相対位置が第一位置に維持される。これによれば、キャップ部材が埋没嵌合状態に維持されるため、部外者はキャップ部材を直接掴むことができず、キャップ部材をキャップ嵌合穴から引き出す事はできない。また、正当な施解錠者でなければ回転規制機構の存在に気が付かないため、部外者がベース部材に対するカバー部材の相対位置を第一位置から第二の位置に変位させることは容易ではない。従って、非施解錠操作時において、部外者が切り替え機構を作動させて埋没嵌合状態から嵌合解除状態に切り替えられることはない。よって、本発明によれば、非施解錠操作時において、部外者によって鍵操作穴が開放される事がなく、不正な解錠や悪戯を抑制する事ができる。
【0012】
一方、本発明に係る扉錠用鍵穴カバーの動作方法を知っている正当な施解錠者が扉錠の施解錠操作(施錠もしくは解錠操作)を行う際には、この施解錠者によって、カバー部材が第一位置から第二位置まで変位させられると共に、嵌合解除状態に対応する回転位置まで回転させられる。このように、カバー部材の上記相対位置が第二位置となることでカバー部材の回転動作が許可されるようになる。従って、正当な施解錠者はカバー部材を回転操作することにより切り替え機構を作動させ、埋没嵌合状態から嵌合解除状態へと容易に切り替える事ができる。これにより、キャップ部材に覆われている鍵操作穴を外部に臨ませることが可能となり、容易に鍵穴を開放することができる。
【0013】
また、本発明の扉錠用鍵穴カバーにおいて、前記カバー部材における前記キャップ嵌合穴内部には、前記キャップ部材の周縁部を支持するためのキャップ支持部が形成され、前
記切り替え機構は、前記キャップ支持部に環状に形成されるカバー側カムと、前記キャップ部材の周縁部に環状に形成されるキャップ側カムとを有し、前記カバー部材の回転動作に連動して前記カバー側カムと前記キャップ側カムとにおける互いの当接位置を変化させることで前記カバー部材に対する前記キャップ部材のリフト量を変化させてもよい。
【0014】
この構成によれば、カバー部材とキャップ部材との間の相対回転運動が、カバー側カム及びキャップ側カムによって、キャップ部材の上下運動に変換されることで、キャップ部材のリフト量を変化させる事ができる。この構成では、キャップ部材のリフト量が最小となるときにキャップ部材が埋没嵌合状態となり、該リフト量が最大となるときに嵌合解除状態となるように、カバー側カム及びキャップ側カムにおけるカムプロファイルや、カバー部材及びキャップ部材の形状パラメータ等が設定されるとよい。
【0015】
また、前記カバー側カム及び前記キャップ側カムの各々は、相対的に突出したカム凸部と該カム凸部に比べて凹んでいるカム凹部とを有してなり、前記カバー側カム及び前記キャップ側カムにおける互いのカム凸部とカム凹部とが係合することで前記キャップ部材が前記埋没嵌合状態となり、前記カバー側カム及び前記キャップ側カムにおける互いのカム凸部同士が重なることで前記キャップ部材が前記嵌合解除状態となるように構成されてもよい。
【0016】
ここで、カバー側カム及びキャップ側カムにおける互いのカム凸部とカム凹部とが係合するときに、キャップ部材のリフト量が最小となる。また、カバー側カム及びキャップ側カムにおける互いのカム凸部同士が重なり合うときに、キャップ部材のリフト量が最大となる。そのため、この構成では、ベース部材に対するカバー部材の相対回転動作に連動し、キャップ部材の埋没嵌合状態と嵌合解除状態との切り替えを好適に行う事ができる。
【0017】
また、例えば、前記カバー側カム及び前記キャップ側カムの各々において、複数のカム凸部及びカム凹部が交互に並んで配置されており、隣り合うカム凸部とカム凹部が傾斜面によって接続されてもよい。
【0018】
また、本発明の扉錠用鍵穴カバーにおいて、前記回転規制機構は、前記カバー部材及び前記ベース部材の何れか一方に設けられた係止用突起と、何れか他方に設けられて且つ該係止用突起部が嵌合される嵌合溝と、を含んで構成され、前記カバー部材が前記第一位置にある状態では、前記係止用突起及び前記嵌合溝が嵌合し、該カバー部材が前記第二位置にある状態では、該係止用突起及び該嵌合溝の嵌合が解除されてもよい。これによれば、簡易な機構によって、カバー部材の回転動作を規制とその解除を切り替える事ができる。
【0019】
また、本発明の扉錠用鍵穴カバーにおいて、前記カバー部材を前記第二位置から第一位置に変位させる方向に向けて付勢する付勢手段を更に備え、前記カバー部材の回転動作に伴い、前記係止用突起及び前記嵌合溝が前記ベース部材の中心軸方向に重なった時に、前記付勢手段による付勢力によって、該係止用突起及び該嵌合溝が自動的に嵌合するように構成されてもよい。
【0020】
また、本発明の扉錠用鍵穴カバーにおいて、前記カバー部材の回転動作に伴い、その回転位置が前記埋没嵌合状態と前記嵌合解除状態との切り替え位置に一致した時に、前記係止用突起及び前記嵌合溝が前記ベース部材の中心軸方向において重なるように該係止用突起及び該嵌合溝が配置されてもよい。この構成によれば、キャップ部材の状態が埋没嵌合状態と嵌合解除状態の間で切り替えられるタイミングと、カバー部材における回転動作の規制及びその解除が切り替わるタイミングを同期させる事ができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、正当な施解錠者にとっては鍵や特殊な用具等を用いることなく、簡単な操作のみで扉錠の鍵穴を開放させる事が可能となる一方、部外者にとっては簡単には鍵穴を開放する事のできない扉錠用鍵穴カバーを提供する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る扉錠用鍵穴カバー1を扉錠100に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る錠用鍵穴カバーの主要構造を説明するための説明図である。
【図3】実施形態に係る扉錠用鍵穴カバーの表面側を示した斜視図である。
【図4】実施形態に係るキャップ部材がカバー部材に嵌められた状態での扉錠用鍵穴カバーの表面図である。
【図5】図4に示したA−A線断面図である。
【図6】図5に示したB−B線断面図である。
【図7】実施形態に係る扉錠用鍵穴カバーの表面側を示した分解斜視図である。
【図8】実施形態に係る扉錠用鍵穴カバーの裏面側を示した分解斜視図である。
【図9A】実施形態に係るカバー部材の表面側を示した斜視図である。
【図9B】実施形態に係るカバー部材の裏面側を示した斜視図である。
【図10】実施形態に係るカバー部材の断面構造を説明するための説明図である。(a)は、カバー部材の表面を示した図である。(b)は、(a)に示したX−X線断面図である。(c)は、(a)に示したY−Y線断面図である。
【図11】実施形態に係るキャップ部材の裏面側を示した斜視図である。
【図12】実施形態に係るキャップ部材の断面構造を説明するための説明図である。(a)は、キャップ部材の裏面を示した図である。(b)は、(a)に示したX−X線断面図である。(c)は、(a)に示したY−Y線断面図である。
【図13】実施形態に係るベース部材の表面側を示した斜視図である。
【図14】実施形態に係る扉錠用鍵穴カバーの使用状態を示す第一の状態図である。
【図15】実施形態に係る扉錠用鍵穴カバーの使用状態を示す第二の状態図である。
【図16】実施形態に係る扉錠用鍵穴カバーの使用状態を示す第三の状態図である。
【図17】実施形態に係る扉錠用鍵穴カバーの使用状態を示す第四の状態図である。
【図18】実施形態に係る扉錠用鍵穴カバーの使用状態を示す第五の状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第一実施形態>
図1は、実施形態に係る扉錠用鍵穴カバー1を扉錠100に取り付けた状態を示す斜視図である。図2は、扉錠用鍵穴カバー1の主要構造を説明するための説明図である。本実施形態において、扉錠用鍵穴カバー1は、扉200に組み込まれた扉錠100の鍵穴を隠すために該扉錠100に取り付けられる。
【0024】
扉錠100は例えばシリンダ錠であり、錠ケース本体101に図示しないシリンダが組み込まれている。また、錠ケース本体101には、掛け金102が出没自在に組み込まれている。扉錠100は、その錠ケース本体101がボルト等の固定具によって扉200に固定されている。なお、扉200には、鍵穴103を外部に臨ませるための貫通穴が形成されており、錠ケース本体101を扉200に固定する際には、その貫通穴に鍵穴103が連通するように位置が合わせられている。
【0025】
扉錠用鍵穴カバー1は、扉200に組み込まれた扉錠100に固定されるベース部材11と、ベース部材11を覆うように被せられるカバー部材12と、キャップ部材13と、を主要構造部材として備える。ベース部材11には、鍵穴103と連通する鍵操作穴114(詳しくは、後述する)が形成されており、正当な施解錠者が扉錠100の施錠または解錠(開錠)を行う際には、この鍵操作穴114を介して鍵穴103に鍵Kを挿入する。
即ち、ベース部材11に形成される鍵操作穴114は、正当な施解錠者が鍵Kを鍵穴103に挿入して扉錠100の施解錠操作を行う際に、鍵Kを鍵穴に導くガイド穴として機能する。
【0026】
通常、非施解錠操作時には、図1に示す状態となっており、ベース部材11に形成される鍵操作穴114が隠された状態となっている。具体的には、キャップ部材13が環状のカバー部材12に埋没した状態となるように嵌合されている。これにより、正当な施解錠者以外の者(部外者)、例えば不正な侵入者等がキャップ部材13を抉じ開ける事ができない。一方、正当な施解錠者が扉錠100の施解錠を行う場合には、当該正当な施解錠者にとっては簡単な操作で、図3に示すようにキャップ部材13を開けることができ、ベース部材11における鍵操作穴114を外部に臨ませた状態にできる。図3は、扉錠用鍵穴カバー1の表面側を示した斜視図である。
【0027】
次に、扉錠用鍵穴カバー1の詳細な構造について説明する。図4は、キャップ部材13がカバー部材12に嵌められた状態での扉錠用鍵穴カバー1の表面図である。本明細書において、扉200の前方から扉錠100に装着されている扉錠用鍵穴カバー1を眺めた場合に見える面を「表面」として定義し、その逆側の面を「裏面」として定義する。図5及び図6は、図4に示したA−A線断面図、B−B線断面図である。図7及び図8は、扉錠用鍵穴カバー1の分解斜視図である。図7は、扉錠用鍵穴カバー1の表面側を示した分解斜視図であり、図8は、扉錠用鍵穴カバー1の裏面側を示した分解斜視図である。
【0028】
図5及び図6に示すように、ベース部材11は、段付きの略円柱形状に成形されたベース本体部111を有し、固定用ビス112,112によってベース本体部111が扉錠100(錠ケース本体101)に固定されている。ベース本体部111は、相対的に径の大きな大径部111aの上部に、該大径部111aよりも一段細径に成形された小径部111bが形成されている。図5に示した符号CLはベース本体部111の中心軸を表す。大径部111a及び小径部111bは、中心軸CLを中心とした円形の外周側面を有してなる。また、図中の符号113は、所謂Oリングを表す。Oリングは、断面がO形(円形)
の環型をした密封用(シール用)機械部品であり、材質には例えばゴムを使用する事ができる。また、固定用ビス112,112の頭部は、その上から貼り付けられる化粧カバー116によって覆われている。
【0029】
ベース部材11には、鍵穴103が連通する鍵操作穴114が設けられている。図5において、鍵操作穴114は、円形の鍵穴103と中心が一致する同軸位置に設けられた円形中空部である。具体的には、中心軸CL方向、即ちベース部材11の厚さ方向に沿ってベース部材11を貫通して穿設される貫通穴と、この貫通穴に接続される嵌めこみ式(脱着式)の鍵穴パイプ115内の中空部によって、鍵操作穴114が形成されている。以上のように構成されたベース部材11は、鍵穴103に鍵操作穴114を連通させた状態で扉錠100に固定される。
【0030】
ベース部材11には、略環状(リング状)のカバー部材12が該ベース部材11を覆うように被せられている。より詳しくは、カバー部材12は、ベース部材11の中心軸CLを回転中心として、回転自在に設けられている。また、カバー部材12は、ベース部材11に被せられた際に、鍵操作穴114が外部に臨むように、円形のキャップ嵌合穴121が形成された環状部材である。このキャップ嵌合穴121には、後述するように非施解錠操作時においてはキャップ部材13が嵌合される。また、施解錠操作時には、キャップ嵌合穴121へのキャップ部材13の嵌合が解除される。
【0031】
図5に示すように、カバー部材12において、キャップ嵌合穴121の内側に位置する内周面122には、小径部111bの外周側面に向かってキャップ支持部123が突設さ
れている。キャップ支持部123は、キャップ部材13を支持するための部材であり、その詳細は後述する。
【0032】
キャップ部材13は、キャップ嵌合穴121に嵌合可能に形成された円形状の蓋体である。本実施形態において、キャップ部材13は、キャップ嵌合穴121の内径に比べて僅かに小さな外径を有してなる。キャップ部材13の裏面側(図5中、下側の面)には、軸部材131の一端が固定されている。この軸部材131は、キャップ部材13の中心から偏心した位置にその一端が固定され、且つ、ベース部材11に対して回動自在に設けられた回動軸である。
【0033】
ベース部材11のベース本体部111には、鍵操作穴114と略対称な反端側に位置し、中心軸CLに沿ってベース本体部111を貫通してなる貫通孔(以下、「回動軸挿入穴」という)117が設けられている。軸部材131は、回動軸挿入穴117に比べて細径であり、回動軸挿入穴にベース部材11の正面側から挿入されることで、軸部材131がベース部材11に遊嵌されている。また、回動軸挿入穴117の内径は、正面側が最も小さく、順次、裏面側に向かって二段階にわたり拡径されている(図5を参照)。このように、段階的に内径が拡大する箇所で形成される段差部分を、正面側から第一段差部118a、第二段差部118bと称する。
【0034】
扉錠用鍵穴カバー1の組み立てに際しては、正面側からベース部材11の回動軸挿入穴117に挿入された軸部材131に対して、ベース部材11の裏面側から回動軸挿入穴117に収容されているバネ部材141が装着される。バネ部材141の一端側は第一段差部118aに当接することで、正面側にすり抜けないようになっている。
【0035】
また、軸部材131の他端側には、ストッパ143を差し込むための細径孔が形成されている。バネ部材141が装着された軸部材131に対し、その他端側からワッシャ142が嵌め込まれる。そして、ワッシャ142の一方の面によってバネ部材141が縮まるように押圧した状態で、軸部材131の細径孔にストッパ143が差し込まれる。このようにして、バネ部材141は第一段差部118aとワッシャ142の間に挟まれた状態で回動軸挿入穴117内に収容される。
【0036】
ここで、バネ部材141が回動軸挿入穴117に収容された状態において、バネ部材141は原形状に比べて縮んだ状態に保持される。そのため、バネ部材141が伸長しようとする弾性復元力が軸部材131からキャップ部材13へと伝達され、キャップ部材13をベース部材11に向けて付勢する付勢力として作用する。
【0037】
ところで、キャップ部材13における裏面側の周縁には環状リブ132が形成されており、この環状リブ132がカバー部材12におけるキャップ支持部123によって支持されている。そのため、バネ部材141の付勢力はキャップ部材13を介してカバー部材12に伝達される。その結果、バネ部材141によって、キャップ部材13及びカバー部材12の双方が、ベース部材11に接近する方向に付勢されるようになっている。
【0038】
尚、各構成部材の詳細動作については後述するが、バネ部材141の付勢力に対抗して扉200から離れる方向(即ち、扉前方に向かって)にカバー部材12及びキャップ部材13が引き出されるときの状況を考える。この場合、ワッシャ142が図5における上側に移動するのであるが、その移動はワッシャ142が第二段差部118bに接触することにより規制される。言い換えると、キャップ部材13は、第二段差部118bに接触するまでは、ベース部材11から離間する方向への相対移動が許容される。つまり、キャップ部材13は、ベース部材11に対して回動自在に、且つ所定範囲内で中心軸CL方向に往復動自在に、ベース部材11と連結されている。
【0039】
扉錠用鍵穴カバー1は、正当な施解錠者にとっては鍵や特殊な用具等を用いることなく、簡単な操作のみで扉錠100の鍵穴103を露出させる事によって施解錠が可能となる一方、部外者にとっては簡単には鍵穴を開放する事のできないように構成されている。このような効果を実現するために特有な構成として、カムリング機構CRM(本発明の切り替え機構に対応する。)と、回転規制機構CCMを備えている。
【0040】
上述のように、カバー部材12は、ベース部材11の中心軸CLを中心にベース部材11と相対回転可能に設けられている。カムリング機構CRMは、カバー部材12の回転動作に連動して、キャップ嵌合穴121にキャップ部材13が埋没した状態で嵌合される「埋没嵌合状態」と、キャップ部材13の嵌合が解除される「嵌合解除状態」とを、切り替え可能な機構である。
【0041】
但し、カバー部材12の回転操作をいつでも可能にしてしまうと、部外者でも埋没嵌合状態から嵌合解除状態への切り替えが容易となってしまうため、本発明に係る扉錠用鍵穴カバー1では、カバー部材12の回転操作とは異なる所定の操作を行わない限り、該カバー部材12の回転動作を規制する回転規制機構CCMも備えるようにした。詳しくは後述するが、この所定の操作とは、カバー部材12をベース部材11の中心軸CL方向に沿ってベース部材11から離間する方向にスライドさせる操作である。即ち、この操作は、カバー部材12を扉200前方に向かって引き出す操作という事ができる。
【0042】
次に、図面を参照して、カムリング機構CRM及び回転規制機構CCMの具体的な構成を説明する。図9Aは、カバー部材12における表面側を示した斜視図であり、図9Bは、カバー部材12における裏面側を示した斜視図である。また、図10は、カバー部材12の断面構造を説明するための説明図である。図10(a)は、カバー部材12の表面図である。図10(b)は、(a)に示したX−X線断面図である。図10(c)は、(a)に示したY−Y線断面図である。
【0043】
図11は、キャップ部材13の裏面側を示した斜視図である。図12は、キャップ部材13の断面構造を説明するための説明図である。図12(a)は、キャップ部材13の裏面を示した図である。図12(b)は、(a)に示したX−X線断面図である。図12(c)は、(a)に示したY−Y線断面図である。また、図13は、ベース部材11の表面側を示した斜視図である。
【0044】
カムリング機構CRMについて説明する。カムリング機構CRMは、カバー部材12側と、キャップ部材13側のそれぞれに形成されるリング状のカムを組み合わせて構成されている。
【0045】
先ず、図9A及び図10を参照して、カバー部材12側に設けられるカム(以下、「カバー側カム」という)を説明する。カバー側カムは、キャップ部材13の裏面と当接するキャップ支持部123の支持面に形成される。図示のように、カバー側カムはカム凸部124a、カム凹部124b、カム傾斜部124cによって構成されており、凹凸形状が繰り返されたリング状のカムである。カバー側カムを構成する部位のうち、カム凸部124aはカム凹部124bに比べて相対的に突出している凸部であり、カム凹部124bはカム凸部124aに比べて凹んだ凹部であり、カム傾斜部124cはカム凸部124a及びカム凹部124bの間に位置する傾斜面(らせん面)である。
【0046】
カム凸部124a及びカム凹部124bは共に、中心軸CLに略直交する平面として構成されている。また、二つずつのカム凸部124aとカム凹部124bとは、交互に、中心軸CLを中心に90°間隔で配置されている。尚、隣り合うカム凸部124a及びカム
凹部124bの高低差はいずれの箇所においても等しくなるようにカバー側カムが構成されている。
【0047】
次に、図11及び図12を参照して、キャップ部材13側に設けられるカム(以下、「キャップ側カム」という)を説明する。キャップ側カムは、キャップ部材13の環状リブ132に形成される、凹凸形状が繰り返されたリング状のカムである。キャップ側カムは、前述のカバー側カムと係わり合って、カバー部材12に対するキャップ部材13のリフト量を変更する。
【0048】
キャップ側カムを構成する部位のうち、カム凸部133aはカム凹部133bに比べて相対的に突出している凸部であり、カム凹部133bはカム凸部133aに比べて凹んだ凹部であり、カム傾斜部133cはカム凸部133a及びカム凹部133bの間に位置する傾斜面(らせん面)である。
【0049】
カム凸部133a及びカム凹部133bは共に、中心軸CLに略直交する平面として構成されている。また、二つずつのカム凸部133aとカム凹部133bとは、交互に、中心軸CLを中心に90°間隔で配置されている。尚、隣り合うカム凸部133a及びカム凹部133bの高低差はいずれの箇所においても等しくなるように、キャップ側カムが構成されている。
【0050】
ここで、カバー側カムとキャップ側カムは、それぞれのカム凸部(124a,133a)カム凹部(124b,133b)、カム傾斜部(124c,133c)が互いに同一の形状を有してなる。即ち、カバー側カムとキャップ側カムは、共通のカムプロファイルを有して構成されている。従って、カバー部材12とキャップ部材13とが相対回転すると、これらの界面であるカバー側カムとキャップ側カムとが互いに摺接しながら、互いの当接位置を徐々に変化させることで、カバー部材12に対するキャップ部材13のリフト量が変更される。
【0051】
例えば、カバー側カムとキャップ側カムにおける互いのカム凸部(124a,133a)と、カム凹部(133b,124b)が係合した状態(以下、「凹凸係合状態」という)で、キャップ部材13のリフト量が最小となり(最小リフト量となり)、カバー側カムとキャップ側カムにおける互いのカム凸部同士(124a,133a)が係合(重なり合った)状態(以下、「凸凸重積状態」という)で、キャップ部材13のリフト量が最大となる(最大リフト量となる)。また、カバー側カム(キャップ側カム)のカム凸部124a(133a)が、キャップ側カム(カバー側カム)のカム傾斜部133c(124c)と係合(重なり合った)状態では、キャップ部材13のリフト量は最小から最大までの中間的な値となる。
【0052】
次に、図9B、図10及び図13を参照して、回転規制機構CCMの構成について説明する。図9B、図10に示すように、カバー部材12の裏面側の入隅部には、係止用突起125が形成されている。係止用突起125の形状は特定形状に限定されるものではないが、ここでは例示的に直方体形状を有してなる。図面から明らかなように、カバー部材12には、4つの係止用突起125が中心軸CLを中心に90°間隔で配置されている。
【0053】
一方、図13に示すように、ベース部材11の大径部111aにおける周縁の上隅部には嵌合溝119が形成されている。この嵌合溝119は、カバー部材12の係止用突起125を嵌合可能なように、該係止用突起125と相補的な形状を有してなる。また、ベース部材11には、中心軸CLを中心に4つの嵌合溝119が90°間隔で配置されている。
【0054】
以上のように構成される回転規制機構CCMは、係止用突起125と嵌合溝119が嵌合した状態において、ベース部材11に対するカバー部材12の相対回転を規制する。
【0055】
ところで、キャップ部材13は所定範囲内で中心軸CL方向に往復動自在にベース部材11と連結されている。また、バネ部材141は、キャップ部材13及びカバー部材12を、ベース部材11に接近する方向に付勢する。そこで、正当な施解錠者がカバー部材12を握り、バネ部材141の付勢力に抗してカバー部材12を扉前方に引き出す(引っ張る)ことにより、係止用突起125及び嵌合溝119の嵌合が解除される。そうすると、カバー部材12の相対回転が許容されるようになる。
【0056】
ベース部材11に対するカバー部材12の中心軸CL方向の相対位置を「軸方向位置」と称する。係止用突起125が嵌合溝119に嵌合されているときの軸方向位置を第一軸方向位置(第一位置に相当)とする。これに対して、カバー部材12がベース部材11から離間して、係止用突起125及び嵌合溝119の嵌合が解除されるときの軸方向位置を第二軸方向位置(第一位置に相当)とする。回転規制機構CCMは、カバー部材12の軸方向位置が第一軸方向位置にあるときにその回転動作を規制する一方、軸方向位置が第二軸方向位置にあるときにその回転動作を許容する。
【0057】
ベース部材11に対するカバー部材12の相対回転位置を「カバー回転位置」と称する。係止用突起125及び嵌合溝119は中心軸CL周りに90°毎に配置されるため、カバー回転位置が90°変化する度に、係止用突起125が嵌合溝119に嵌合される状態と、その嵌合が解除される状態とが切り替わる。言い換えると、カバー回転位置が90°変化する度に、カバー部材12の回転動作が規制される状態(以下、「ロック状態」という)と、その規制が解除される状態(以下、「ロック解除状態」という)とが切り替わる。
【0058】
ロック状態とロック解除状態との切り替えが行われるカバー回転位置を「ロック切り替え位置」と称する。ロック切り替え位置は、中心軸CL廻りに90°毎に存在する。従って、ロック解除状態にあるカバー部材12のカバー回転位置がロック切り替え位置に到達すると、係止用突起125及び嵌合溝119が中心軸CL方向に重なった状態となる。そうすると、バネ部材141の付勢力の作用によって、カバー部材12が第二軸方向位置から第一軸方向位置まで強制的に変位させられる。その結果、係止用突起125及び嵌合溝119が自動的に嵌合されて、ロック解除状態からロック状態に切り替わる。
【0059】
次に、扉錠100の施解錠操作時と非施解錠操作時とにおける扉錠用鍵穴カバー1の状態、及び相互の切り替え時における動作状況について説明する。図14乃至図18は、扉錠用鍵穴カバーの使用状態を示す第一乃至第五の状態図である。
【0060】
図14は、非施解錠操作時における扉錠用鍵穴カバー1の状態を示している。図示のように、非施解錠操作時においては、回転規制機構CCMによって、係止用突起125及び嵌合溝119が嵌合されたロック状態にカバー部材12が維持されている。この状態では、カバー部材12のカバー回転位置が「ロック切り替え位置」にある。カムリング機構CRMは、カバー回転位置が「ロック切り替え位置」のときに、カバー側カムとキャップ側カムの当接状態が凹凸係合状態となるように構成されている。言い換えると、凹凸係合状態が実現されるカバー回転位置と「ロック切り替え位置」が一致するように、係止用突起125及び嵌合溝119が配置されている。
【0061】
また、本実施形態では、カバー側カムとキャップ側カムの当接状態が凹凸係合状態のときに、キャップ嵌合穴121に嵌合されているキャップ部材13の表面とカバー部材12の表面との間に段差の無い状態(いわゆる面一状態)になるように、双方の部材が構成さ
れている。従って、扉錠100の非施解錠操作時においては、キャップ部材13を埋没嵌合状態とすることができる。因みに、埋没嵌合状態においては、キャップ部材13が鍵操作穴114を覆っている。そして、この状態では、キャップ部材13を手で掴むことができないため、例えば部外者によって、強引にキャップ部材13が外部に引き抜かれる虞がない。
【0062】
更に、非施解錠操作時においてカバー部材12がロック状態にあるため、扉錠用鍵穴カバー1の取扱い方法を知らない部外者は、カバー部材12を回転させることができない。従って、部外者は、キャップ部材13の嵌合状態を、埋没嵌合状態から嵌合解除状態に切り替える事ができない。そのため、非施解錠操作時において、キャップ部材13が回動されて鍵操作穴114が開放されることがなく、鍵穴103が外部に露出されることが無い。これにより、非施解錠操作時に、部外者によって扉錠100が不正に解錠されたり、鍵穴103に悪戯されたりすることが抑制される。
【0063】
一方、扉錠用鍵穴カバー1の取扱い方法を知っている正当な施解錠者にとっては、施解錠操作時に以下の手順によって簡単に鍵穴103を開放することができる。すなわち、図15に示した状態のように、カバー部材12が扉前方に引き出される。これにより、カバー部材12の軸方向位置が、第一軸方向位置から第二軸方向位置まで変位し、カバー部材12のロック状態が解除される。尚、この状態では、依然として、カバー側カムとキャップ側カムとの当接状態が凹凸係合状態となっており、キャップ部材13は埋没嵌合状態に維持されている。
【0064】
図15の状態からカバー部材12を回転させると、図16に示すような状態となる。ここで、キャップ部材13は、ベース部材11の付勢力によってベース部材11方向に向かって付勢されている。従って、ベース部材11に対してカバー部材12を回転させると、ベース部材11とキャップ部材13が相対的に回転するようになる。その結果、カバー側カムとキャップ側カムとの当接位置が変化するため、カバー部材12におけるカバー回転位置の変化に応じて、キャップ部材13のリフト量が徐々に増加する。尚、図16に示した状態は、図15の状態からカバー部材12を45°回転させた状態であり、埋没嵌合状態から嵌合解除状態に切り替わる途中の状態に相当する。
【0065】
そして、図15の状態からカバー部材12を90°回転させると、図17に示す状態となる。そうすると、カバー側カムとキャップ側カムの当接状態が凸凸重積状態になり、キャップ部材13が嵌合解除状態となる。それと同時に、カバー部材12におけるカバー回転位置がロック切り替え位置に一致するようになる。そうすると、カバー部材12に対するバネ部材141の付勢力によって、係止用突起125及び嵌合溝119が自動的に嵌合される。これにより、カバー部材12がロック解除状態からロック状態に切り替わり、その回転動作が規制される。
【0066】
正当な施解錠者は、このようにキャップ部材13を嵌合解除状態に切り替えることで、図18に示すように軸部材131を中心にキャップ部材13を回動させる事ができる。これにより、キャップ部材13によって覆われていた鍵操作穴114を露出させる事ができ、錠100の鍵穴103を開放させる事ができる。従って、鍵Kを鍵操作穴114、鍵穴103に挿入させることで、扉錠100の施解錠操作を行うことができる。
【0067】
尚、図18に示した状態から、鍵穴103を隠すべくキャップ部材13を埋没嵌合状態にするには以下のような操作を行えばよい。即ち、カバー部材12を扉前方に引き出し、カバー部材12のロック状態を解除した状態で、カバー部材12をベース部材11に対して90°回転させるのである。これによれば、カバー側カムとキャップ側カムの当接状態が再び凹凸係合状態となるため、キャップ部材13を埋没嵌合状態に切り替える事ができ
る。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る扉錠用鍵穴カバー1において、カムリング機構CRMは、カバー部材12の回転動作に連動して、キャップ部材13における埋没嵌合状態と嵌合解除状態の切り替えを行う。そして、回転規制機構CCMは、カムリング機構CRMが埋没嵌合状態と嵌合解除状態の切り替えを行うタイミングに同期して、カバー部材12におけるロック状態とロック解除状態との切り替えを行うように構成されている。
【0069】
これによれば、正当な施解錠者に対しては鍵や特殊な用具等を用いることなく、簡単な操作のみで扉錠100の鍵穴103を開放させる事を可能とする。一方、部外者に対しては不正に鍵穴103を開放させることを不可能とする。従って、施錠された状態にある扉錠100が、部外者によって不正に解錠されたり、鍵穴103に異物を詰められる等の悪戯の被害に遭うことを回避する事ができる。
【0070】
以上、本発明を実施する形態を説明したが、本発明の本旨を逸脱しない範囲内において上記した実施形態には種々の変更を加えてもよい。例えば、扉錠用鍵穴カバー1を適用する扉錠100については、特定の構造、形式、種別等に限定されるものではない。例えば、扉錠100は、電力関連施設に用いられるピラー錠であってもよい。ピラー錠は、例えば高圧キャビネット、気中多回路開閉器、地上用変圧器等の地中機器の扉及び借室用電気室の出入口扉等に取り付けて使用することができる。
【0071】
また、本実施形態では、カバー部材12側に係止用突起125を設け、ベース部材11側に嵌合溝119を設けているが、それぞれを逆側の部材に設けて構成してもよい。また、係止用突起125及び嵌合溝119それぞれの形状、大きさ、配置位置等も、適宜変更できる。
【0072】
例えば、ベース部材11の大径部111aの外周面に中心軸CLと直交する周方向の周溝を該外周面の全周にわたって形成し、この周溝にカバー部材12の係止用突起125を嵌合させることで、ベース部材11に対してカバー部材12を相対回転させてもよい。そして、前述のロック切り替え位置において、カバー部材12のロック状態とロック解除状態の切り替えを行うべく、上記周溝を基点に錠ケース本体101方向に延びる直交溝を設けてもよい。この場合、係止用突起125が周溝に嵌合された状態のときにはロック解除状態に維持される。そして、係止用突起125が周溝と直交溝の交点を経て、直交溝に押し込まれることで、カバー部材12をロック解除状態からロック状態へと切り替える事ができる。
【符号の説明】
【0073】
1 扉錠用鍵穴カバー
11 ベース部材
12 カバー部材
13 キャップ部材
100 扉錠
103 鍵穴
114 鍵操作穴
121 キャップ嵌合穴
124a,133a カム凸部
124b,133b カム凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉錠の鍵穴を隠すために取り付けられる扉錠用鍵穴カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、扉錠の鍵穴を隠すために該扉錠に取り付けられる扉錠用鍵穴カバーが各種提案されている。この種の扉錠用鍵穴カバーは、セキュリティ性を高めたり、不正な悪戯を防止するため等に利用されている。これに関連して、例えば扉錠の鍵穴(孔)を開閉可能な蓋で覆って、当該蓋を第二の錠によって施錠することの可能な扉用二重錠が公知である(例えば、特許文献1を参照。)。しかし、一般には、複数の鍵を携帯しなければならず、その一部を携帯し忘れた場合等には解錠する事ができないため、広く普及するには至っていない。
【0003】
一般的な扉錠用鍵穴カバーの一例として、扉錠の鍵穴と、その鍵操作穴とを連通させて取り付けるベース部材と、このベース部材に回動可能に連結して鍵操作穴を開閉する円形蓋状のキャップ部材とで構成された扉錠用鍵穴カバーが一般的である。この扉錠用鍵穴カバーでは、例えば非施解錠時は、鍵穴の防塵や防水のため、或いは鍵穴を不正に悪戯されないように、キャップ部材をベース部材上に重ねる事によって、鍵穴を隠している。
【0004】
ところが、上記したような扉錠用鍵穴カバーでは、鍵穴をキャップ部材で隠すことによって、鍵穴の存在を一見して気付かれないようになっているが、キャップ部材をベース部材に対して回動操作するだけで、簡単に鍵穴を露出させることができてしまう。従って、意識的に鍵穴に異物を詰めたりして不正に悪戯しようとする者に対しては、その悪戯を防止しきれないというのが実情である。
【0005】
特許文献2には、鍵錠上に、その鍵穴に鍵操作穴を連通させて固定するキャップベースと、キャップベースに回動可能に連結して鍵操作穴を開閉するキャップカバーとからなり、キャップカバーを開方向に回動したとき、鍵操作穴を開放して鍵穴を外部に臨ませる鍵錠用キャップにおいて、キャップベースには、キャップカバー側上向きにピン挿通口をあけたガイド穴と、そのガイド穴と一端側が連通する一方、他端側を周縁部に向けてあけて外部操作部材の挿入口を形成した細軸差込み穴を設け、ガイド穴内に、基部側に係止凸部を有する磁性体のストッパピンを、その頭部をピン挿通口から出没可能に遊嵌する一方、キャップカバーには、それを閉めてキャップベース上に重ねたとき、ピン挿通口と連通する位置に下向きにピン受け口をあけたピン係合凹部を設け、ピン係合凹部内に、ストッパピンの頭部を吸着する磁石を嵌着してなる、鍵錠用キャップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−97821号公報
【特許文献2】特開2005−273189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示されている鍵錠用キャップによれば、たしかに、正当な施解錠者にとっては簡単な操作でキャップ部材(キャップカバー)を開けられる一方、不正に悪戯しようとする者にとっては、たとえ鍵錠の存在に気付いても簡単にはキャップ部材(キャップカバー)を開ける事ができない。
【0008】
しかしながら、この鍵錠用キャップを使用する場合、正当な施解錠者に外部操作部材の携帯を必要とさせてしまうため、外部操作部材を携帯し忘れた場合には解錠することができないという不具合が生じ得る。また、この外部操作部材を、先端に細軸部を有する鍵錠に専用の施解除キーで代用することができるにしても、外部操作部材の挿入口は外部に露出しているため、不正に悪戯しようとする者にしてみれば容易に異物をこの挿入口に詰める事ができてしまう。従って、この種の扉錠用鍵穴カバーにはいまだ改善の余地があると考えられる。
【0009】
本発明は、上記した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、正当な施解錠者にとっては鍵や特殊な用具等を用いることなく、簡単な操作のみで扉錠の鍵穴を開放させる事が可能となる一方、正当な施解錠者ではない者(以下、「部外者」ともいう)にとっては、簡単には鍵穴を開放する事のできない扉錠用鍵穴カバーを提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の構成を備えることで、上記課題を解決することとした。即ち、本発明は、扉錠の鍵穴を隠すために該扉錠に取り付けられる扉錠用鍵穴カバーであって、円形外周側面を有し、前記鍵穴に鍵操作穴を連通させた状態で前記扉錠に固定されるベース部材と、前記ベース部材を覆い、且つ該ベース部材の中心を軸に回転自在に設けられ、該ベース部材の前記鍵操作穴が外部に臨むような開口穴であるキャップ嵌合穴が形成された環状のカバー部材と、前記ベース部材に連結され、前記カバー部材の前記キャップ嵌合穴に嵌合された状態で該ベース部材の前記鍵操作穴を覆うキャップ部材と、前記カバー部材の回転動作に連動して、前記キャップ嵌合穴に前記キャップ部材が埋没した状態で嵌合される埋没嵌合状態と、該キャップ部材の嵌合が解除される嵌合解除状態との切り替えを行う切り替え機構と、前記ベース部材の中心軸方向における前記カバー部材の該ベース部材に対する相対位置が第一位置にある状態で該カバー部材の回転動作を規制する一方、該カバー部材の該相対位置が該第一位置に比べて該ベース部材から離間した第二位置にある状態で該回転動作の規制を解除する回転規制機構と、を備える扉錠用鍵穴カバーである。
【0011】
本発明において、非施解錠操作時には、カバー部材の回転位置が埋没嵌合状態に対応する位置に維持され、カバー部材のベース部材に対する相対位置が第一位置に維持される。これによれば、キャップ部材が埋没嵌合状態に維持されるため、部外者はキャップ部材を直接掴むことができず、キャップ部材をキャップ嵌合穴から引き出す事はできない。また、正当な施解錠者でなければ回転規制機構の存在に気が付かないため、部外者がベース部材に対するカバー部材の相対位置を第一位置から第二の位置に変位させることは容易ではない。従って、非施解錠操作時において、部外者が切り替え機構を作動させて埋没嵌合状態から嵌合解除状態に切り替えられることはない。よって、本発明によれば、非施解錠操作時において、部外者によって鍵操作穴が開放される事がなく、不正な解錠や悪戯を抑制する事ができる。
【0012】
一方、本発明に係る扉錠用鍵穴カバーの動作方法を知っている正当な施解錠者が扉錠の施解錠操作(施錠もしくは解錠操作)を行う際には、この施解錠者によって、カバー部材が第一位置から第二位置まで変位させられると共に、嵌合解除状態に対応する回転位置まで回転させられる。このように、カバー部材の上記相対位置が第二位置となることでカバー部材の回転動作が許可されるようになる。従って、正当な施解錠者はカバー部材を回転操作することにより切り替え機構を作動させ、埋没嵌合状態から嵌合解除状態へと容易に切り替える事ができる。これにより、キャップ部材に覆われている鍵操作穴を外部に臨ませることが可能となり、容易に鍵穴を開放することができる。
【0013】
また、本発明の扉錠用鍵穴カバーにおいて、前記カバー部材における前記キャップ嵌合穴内部には、前記キャップ部材の周縁部を支持するためのキャップ支持部が形成され、前
記切り替え機構は、前記キャップ支持部に環状に形成されるカバー側カムと、前記キャップ部材の周縁部に環状に形成されるキャップ側カムとを有し、前記カバー部材の回転動作に連動して前記カバー側カムと前記キャップ側カムとにおける互いの当接位置を変化させることで前記カバー部材に対する前記キャップ部材のリフト量を変化させてもよい。
【0014】
この構成によれば、カバー部材とキャップ部材との間の相対回転運動が、カバー側カム及びキャップ側カムによって、キャップ部材の上下運動に変換されることで、キャップ部材のリフト量を変化させる事ができる。この構成では、キャップ部材のリフト量が最小となるときにキャップ部材が埋没嵌合状態となり、該リフト量が最大となるときに嵌合解除状態となるように、カバー側カム及びキャップ側カムにおけるカムプロファイルや、カバー部材及びキャップ部材の形状パラメータ等が設定されるとよい。
【0015】
また、前記カバー側カム及び前記キャップ側カムの各々は、相対的に突出したカム凸部と該カム凸部に比べて凹んでいるカム凹部とを有してなり、前記カバー側カム及び前記キャップ側カムにおける互いのカム凸部とカム凹部とが係合することで前記キャップ部材が前記埋没嵌合状態となり、前記カバー側カム及び前記キャップ側カムにおける互いのカム凸部同士が重なることで前記キャップ部材が前記嵌合解除状態となるように構成されてもよい。
【0016】
ここで、カバー側カム及びキャップ側カムにおける互いのカム凸部とカム凹部とが係合するときに、キャップ部材のリフト量が最小となる。また、カバー側カム及びキャップ側カムにおける互いのカム凸部同士が重なり合うときに、キャップ部材のリフト量が最大となる。そのため、この構成では、ベース部材に対するカバー部材の相対回転動作に連動し、キャップ部材の埋没嵌合状態と嵌合解除状態との切り替えを好適に行う事ができる。
【0017】
また、例えば、前記カバー側カム及び前記キャップ側カムの各々において、複数のカム凸部及びカム凹部が交互に並んで配置されており、隣り合うカム凸部とカム凹部が傾斜面によって接続されてもよい。
【0018】
また、本発明の扉錠用鍵穴カバーにおいて、前記回転規制機構は、前記カバー部材及び前記ベース部材の何れか一方に設けられた係止用突起と、何れか他方に設けられて且つ該係止用突起部が嵌合される嵌合溝と、を含んで構成され、前記カバー部材が前記第一位置にある状態では、前記係止用突起及び前記嵌合溝が嵌合し、該カバー部材が前記第二位置にある状態では、該係止用突起及び該嵌合溝の嵌合が解除されてもよい。これによれば、簡易な機構によって、カバー部材の回転動作を規制とその解除を切り替える事ができる。
【0019】
また、本発明の扉錠用鍵穴カバーにおいて、前記カバー部材を前記第二位置から第一位置に変位させる方向に向けて付勢する付勢手段を更に備え、前記カバー部材の回転動作に伴い、前記係止用突起及び前記嵌合溝が前記ベース部材の中心軸方向に重なった時に、前記付勢手段による付勢力によって、該係止用突起及び該嵌合溝が自動的に嵌合するように構成されてもよい。
【0020】
また、本発明の扉錠用鍵穴カバーにおいて、前記カバー部材の回転動作に伴い、その回転位置が前記埋没嵌合状態と前記嵌合解除状態との切り替え位置に一致した時に、前記係止用突起及び前記嵌合溝が前記ベース部材の中心軸方向において重なるように該係止用突起及び該嵌合溝が配置されてもよい。この構成によれば、キャップ部材の状態が埋没嵌合状態と嵌合解除状態の間で切り替えられるタイミングと、カバー部材における回転動作の規制及びその解除が切り替わるタイミングを同期させる事ができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、正当な施解錠者にとっては鍵や特殊な用具等を用いることなく、簡単な操作のみで扉錠の鍵穴を開放させる事が可能となる一方、部外者にとっては簡単には鍵穴を開放する事のできない扉錠用鍵穴カバーを提供する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る扉錠用鍵穴カバー1を扉錠100に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る錠用鍵穴カバーの主要構造を説明するための説明図である。
【図3】実施形態に係る扉錠用鍵穴カバーの表面側を示した斜視図である。
【図4】実施形態に係るキャップ部材がカバー部材に嵌められた状態での扉錠用鍵穴カバーの表面図である。
【図5】図4に示したA−A線断面図である。
【図6】図5に示したB−B線断面図である。
【図7】実施形態に係る扉錠用鍵穴カバーの表面側を示した分解斜視図である。
【図8】実施形態に係る扉錠用鍵穴カバーの裏面側を示した分解斜視図である。
【図9A】実施形態に係るカバー部材の表面側を示した斜視図である。
【図9B】実施形態に係るカバー部材の裏面側を示した斜視図である。
【図10】実施形態に係るカバー部材の断面構造を説明するための説明図である。(a)は、カバー部材の表面を示した図である。(b)は、(a)に示したX−X線断面図である。(c)は、(a)に示したY−Y線断面図である。
【図11】実施形態に係るキャップ部材の裏面側を示した斜視図である。
【図12】実施形態に係るキャップ部材の断面構造を説明するための説明図である。(a)は、キャップ部材の裏面を示した図である。(b)は、(a)に示したX−X線断面図である。(c)は、(a)に示したY−Y線断面図である。
【図13】実施形態に係るベース部材の表面側を示した斜視図である。
【図14】実施形態に係る扉錠用鍵穴カバーの使用状態を示す第一の状態図である。
【図15】実施形態に係る扉錠用鍵穴カバーの使用状態を示す第二の状態図である。
【図16】実施形態に係る扉錠用鍵穴カバーの使用状態を示す第三の状態図である。
【図17】実施形態に係る扉錠用鍵穴カバーの使用状態を示す第四の状態図である。
【図18】実施形態に係る扉錠用鍵穴カバーの使用状態を示す第五の状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第一実施形態>
図1は、実施形態に係る扉錠用鍵穴カバー1を扉錠100に取り付けた状態を示す斜視図である。図2は、扉錠用鍵穴カバー1の主要構造を説明するための説明図である。本実施形態において、扉錠用鍵穴カバー1は、扉200に組み込まれた扉錠100の鍵穴を隠すために該扉錠100に取り付けられる。
【0024】
扉錠100は例えばシリンダ錠であり、錠ケース本体101に図示しないシリンダが組み込まれている。また、錠ケース本体101には、掛け金102が出没自在に組み込まれている。扉錠100は、その錠ケース本体101がボルト等の固定具によって扉200に固定されている。なお、扉200には、鍵穴103を外部に臨ませるための貫通穴が形成されており、錠ケース本体101を扉200に固定する際には、その貫通穴に鍵穴103が連通するように位置が合わせられている。
【0025】
扉錠用鍵穴カバー1は、扉200に組み込まれた扉錠100に固定されるベース部材11と、ベース部材11を覆うように被せられるカバー部材12と、キャップ部材13と、を主要構造部材として備える。ベース部材11には、鍵穴103と連通する鍵操作穴114(詳しくは、後述する)が形成されており、正当な施解錠者が扉錠100の施錠または解錠(開錠)を行う際には、この鍵操作穴114を介して鍵穴103に鍵Kを挿入する。
即ち、ベース部材11に形成される鍵操作穴114は、正当な施解錠者が鍵Kを鍵穴103に挿入して扉錠100の施解錠操作を行う際に、鍵Kを鍵穴に導くガイド穴として機能する。
【0026】
通常、非施解錠操作時には、図1に示す状態となっており、ベース部材11に形成される鍵操作穴114が隠された状態となっている。具体的には、キャップ部材13が環状のカバー部材12に埋没した状態となるように嵌合されている。これにより、正当な施解錠者以外の者(部外者)、例えば不正な侵入者等がキャップ部材13を抉じ開ける事ができない。一方、正当な施解錠者が扉錠100の施解錠を行う場合には、当該正当な施解錠者にとっては簡単な操作で、図3に示すようにキャップ部材13を開けることができ、ベース部材11における鍵操作穴114を外部に臨ませた状態にできる。図3は、扉錠用鍵穴カバー1の表面側を示した斜視図である。
【0027】
次に、扉錠用鍵穴カバー1の詳細な構造について説明する。図4は、キャップ部材13がカバー部材12に嵌められた状態での扉錠用鍵穴カバー1の表面図である。本明細書において、扉200の前方から扉錠100に装着されている扉錠用鍵穴カバー1を眺めた場合に見える面を「表面」として定義し、その逆側の面を「裏面」として定義する。図5及び図6は、図4に示したA−A線断面図、B−B線断面図である。図7及び図8は、扉錠用鍵穴カバー1の分解斜視図である。図7は、扉錠用鍵穴カバー1の表面側を示した分解斜視図であり、図8は、扉錠用鍵穴カバー1の裏面側を示した分解斜視図である。
【0028】
図5及び図6に示すように、ベース部材11は、段付きの略円柱形状に成形されたベース本体部111を有し、固定用ビス112,112によってベース本体部111が扉錠100(錠ケース本体101)に固定されている。ベース本体部111は、相対的に径の大きな大径部111aの上部に、該大径部111aよりも一段細径に成形された小径部111bが形成されている。図5に示した符号CLはベース本体部111の中心軸を表す。大径部111a及び小径部111bは、中心軸CLを中心とした円形の外周側面を有してなる。また、図中の符号113は、所謂Oリングを表す。Oリングは、断面がO形(円形)
の環型をした密封用(シール用)機械部品であり、材質には例えばゴムを使用する事ができる。また、固定用ビス112,112の頭部は、その上から貼り付けられる化粧カバー116によって覆われている。
【0029】
ベース部材11には、鍵穴103が連通する鍵操作穴114が設けられている。図5において、鍵操作穴114は、円形の鍵穴103と中心が一致する同軸位置に設けられた円形中空部である。具体的には、中心軸CL方向、即ちベース部材11の厚さ方向に沿ってベース部材11を貫通して穿設される貫通穴と、この貫通穴に接続される嵌めこみ式(脱着式)の鍵穴パイプ115内の中空部によって、鍵操作穴114が形成されている。以上のように構成されたベース部材11は、鍵穴103に鍵操作穴114を連通させた状態で扉錠100に固定される。
【0030】
ベース部材11には、略環状(リング状)のカバー部材12が該ベース部材11を覆うように被せられている。より詳しくは、カバー部材12は、ベース部材11の中心軸CLを回転中心として、回転自在に設けられている。また、カバー部材12は、ベース部材11に被せられた際に、鍵操作穴114が外部に臨むように、円形のキャップ嵌合穴121が形成された環状部材である。このキャップ嵌合穴121には、後述するように非施解錠操作時においてはキャップ部材13が嵌合される。また、施解錠操作時には、キャップ嵌合穴121へのキャップ部材13の嵌合が解除される。
【0031】
図5に示すように、カバー部材12において、キャップ嵌合穴121の内側に位置する内周面122には、小径部111bの外周側面に向かってキャップ支持部123が突設さ
れている。キャップ支持部123は、キャップ部材13を支持するための部材であり、その詳細は後述する。
【0032】
キャップ部材13は、キャップ嵌合穴121に嵌合可能に形成された円形状の蓋体である。本実施形態において、キャップ部材13は、キャップ嵌合穴121の内径に比べて僅かに小さな外径を有してなる。キャップ部材13の裏面側(図5中、下側の面)には、軸部材131の一端が固定されている。この軸部材131は、キャップ部材13の中心から偏心した位置にその一端が固定され、且つ、ベース部材11に対して回動自在に設けられた回動軸である。
【0033】
ベース部材11のベース本体部111には、鍵操作穴114と略対称な反端側に位置し、中心軸CLに沿ってベース本体部111を貫通してなる貫通孔(以下、「回動軸挿入穴」という)117が設けられている。軸部材131は、回動軸挿入穴117に比べて細径であり、回動軸挿入穴にベース部材11の正面側から挿入されることで、軸部材131がベース部材11に遊嵌されている。また、回動軸挿入穴117の内径は、正面側が最も小さく、順次、裏面側に向かって二段階にわたり拡径されている(図5を参照)。このように、段階的に内径が拡大する箇所で形成される段差部分を、正面側から第一段差部118a、第二段差部118bと称する。
【0034】
扉錠用鍵穴カバー1の組み立てに際しては、正面側からベース部材11の回動軸挿入穴117に挿入された軸部材131に対して、ベース部材11の裏面側から回動軸挿入穴117に収容されているバネ部材141が装着される。バネ部材141の一端側は第一段差部118aに当接することで、正面側にすり抜けないようになっている。
【0035】
また、軸部材131の他端側には、ストッパ143を差し込むための細径孔が形成されている。バネ部材141が装着された軸部材131に対し、その他端側からワッシャ142が嵌め込まれる。そして、ワッシャ142の一方の面によってバネ部材141が縮まるように押圧した状態で、軸部材131の細径孔にストッパ143が差し込まれる。このようにして、バネ部材141は第一段差部118aとワッシャ142の間に挟まれた状態で回動軸挿入穴117内に収容される。
【0036】
ここで、バネ部材141が回動軸挿入穴117に収容された状態において、バネ部材141は原形状に比べて縮んだ状態に保持される。そのため、バネ部材141が伸長しようとする弾性復元力が軸部材131からキャップ部材13へと伝達され、キャップ部材13をベース部材11に向けて付勢する付勢力として作用する。
【0037】
ところで、キャップ部材13における裏面側の周縁には環状リブ132が形成されており、この環状リブ132がカバー部材12におけるキャップ支持部123によって支持されている。そのため、バネ部材141の付勢力はキャップ部材13を介してカバー部材12に伝達される。その結果、バネ部材141によって、キャップ部材13及びカバー部材12の双方が、ベース部材11に接近する方向に付勢されるようになっている。
【0038】
尚、各構成部材の詳細動作については後述するが、バネ部材141の付勢力に対抗して扉200から離れる方向(即ち、扉前方に向かって)にカバー部材12及びキャップ部材13が引き出されるときの状況を考える。この場合、ワッシャ142が図5における上側に移動するのであるが、その移動はワッシャ142が第二段差部118bに接触することにより規制される。言い換えると、キャップ部材13は、第二段差部118bに接触するまでは、ベース部材11から離間する方向への相対移動が許容される。つまり、キャップ部材13は、ベース部材11に対して回動自在に、且つ所定範囲内で中心軸CL方向に往復動自在に、ベース部材11と連結されている。
【0039】
扉錠用鍵穴カバー1は、正当な施解錠者にとっては鍵や特殊な用具等を用いることなく、簡単な操作のみで扉錠100の鍵穴103を露出させる事によって施解錠が可能となる一方、部外者にとっては簡単には鍵穴を開放する事のできないように構成されている。このような効果を実現するために特有な構成として、カムリング機構CRM(本発明の切り替え機構に対応する。)と、回転規制機構CCMを備えている。
【0040】
上述のように、カバー部材12は、ベース部材11の中心軸CLを中心にベース部材11と相対回転可能に設けられている。カムリング機構CRMは、カバー部材12の回転動作に連動して、キャップ嵌合穴121にキャップ部材13が埋没した状態で嵌合される「埋没嵌合状態」と、キャップ部材13の嵌合が解除される「嵌合解除状態」とを、切り替え可能な機構である。
【0041】
但し、カバー部材12の回転操作をいつでも可能にしてしまうと、部外者でも埋没嵌合状態から嵌合解除状態への切り替えが容易となってしまうため、本発明に係る扉錠用鍵穴カバー1では、カバー部材12の回転操作とは異なる所定の操作を行わない限り、該カバー部材12の回転動作を規制する回転規制機構CCMも備えるようにした。詳しくは後述するが、この所定の操作とは、カバー部材12をベース部材11の中心軸CL方向に沿ってベース部材11から離間する方向にスライドさせる操作である。即ち、この操作は、カバー部材12を扉200前方に向かって引き出す操作という事ができる。
【0042】
次に、図面を参照して、カムリング機構CRM及び回転規制機構CCMの具体的な構成を説明する。図9Aは、カバー部材12における表面側を示した斜視図であり、図9Bは、カバー部材12における裏面側を示した斜視図である。また、図10は、カバー部材12の断面構造を説明するための説明図である。図10(a)は、カバー部材12の表面図である。図10(b)は、(a)に示したX−X線断面図である。図10(c)は、(a)に示したY−Y線断面図である。
【0043】
図11は、キャップ部材13の裏面側を示した斜視図である。図12は、キャップ部材13の断面構造を説明するための説明図である。図12(a)は、キャップ部材13の裏面を示した図である。図12(b)は、(a)に示したX−X線断面図である。図12(c)は、(a)に示したY−Y線断面図である。また、図13は、ベース部材11の表面側を示した斜視図である。
【0044】
カムリング機構CRMについて説明する。カムリング機構CRMは、カバー部材12側と、キャップ部材13側のそれぞれに形成されるリング状のカムを組み合わせて構成されている。
【0045】
先ず、図9A及び図10を参照して、カバー部材12側に設けられるカム(以下、「カバー側カム」という)を説明する。カバー側カムは、キャップ部材13の裏面と当接するキャップ支持部123の支持面に形成される。図示のように、カバー側カムはカム凸部124a、カム凹部124b、カム傾斜部124cによって構成されており、凹凸形状が繰り返されたリング状のカムである。カバー側カムを構成する部位のうち、カム凸部124aはカム凹部124bに比べて相対的に突出している凸部であり、カム凹部124bはカム凸部124aに比べて凹んだ凹部であり、カム傾斜部124cはカム凸部124a及びカム凹部124bの間に位置する傾斜面(らせん面)である。
【0046】
カム凸部124a及びカム凹部124bは共に、中心軸CLに略直交する平面として構成されている。また、二つずつのカム凸部124aとカム凹部124bとは、交互に、中心軸CLを中心に90°間隔で配置されている。尚、隣り合うカム凸部124a及びカム
凹部124bの高低差はいずれの箇所においても等しくなるようにカバー側カムが構成されている。
【0047】
次に、図11及び図12を参照して、キャップ部材13側に設けられるカム(以下、「キャップ側カム」という)を説明する。キャップ側カムは、キャップ部材13の環状リブ132に形成される、凹凸形状が繰り返されたリング状のカムである。キャップ側カムは、前述のカバー側カムと係わり合って、カバー部材12に対するキャップ部材13のリフト量を変更する。
【0048】
キャップ側カムを構成する部位のうち、カム凸部133aはカム凹部133bに比べて相対的に突出している凸部であり、カム凹部133bはカム凸部133aに比べて凹んだ凹部であり、カム傾斜部133cはカム凸部133a及びカム凹部133bの間に位置する傾斜面(らせん面)である。
【0049】
カム凸部133a及びカム凹部133bは共に、中心軸CLに略直交する平面として構成されている。また、二つずつのカム凸部133aとカム凹部133bとは、交互に、中心軸CLを中心に90°間隔で配置されている。尚、隣り合うカム凸部133a及びカム凹部133bの高低差はいずれの箇所においても等しくなるように、キャップ側カムが構成されている。
【0050】
ここで、カバー側カムとキャップ側カムは、それぞれのカム凸部(124a,133a)カム凹部(124b,133b)、カム傾斜部(124c,133c)が互いに同一の形状を有してなる。即ち、カバー側カムとキャップ側カムは、共通のカムプロファイルを有して構成されている。従って、カバー部材12とキャップ部材13とが相対回転すると、これらの界面であるカバー側カムとキャップ側カムとが互いに摺接しながら、互いの当接位置を徐々に変化させることで、カバー部材12に対するキャップ部材13のリフト量が変更される。
【0051】
例えば、カバー側カムとキャップ側カムにおける互いのカム凸部(124a,133a)と、カム凹部(133b,124b)が係合した状態(以下、「凹凸係合状態」という)で、キャップ部材13のリフト量が最小となり(最小リフト量となり)、カバー側カムとキャップ側カムにおける互いのカム凸部同士(124a,133a)が係合(重なり合った)状態(以下、「凸凸重積状態」という)で、キャップ部材13のリフト量が最大となる(最大リフト量となる)。また、カバー側カム(キャップ側カム)のカム凸部124a(133a)が、キャップ側カム(カバー側カム)のカム傾斜部133c(124c)と係合(重なり合った)状態では、キャップ部材13のリフト量は最小から最大までの中間的な値となる。
【0052】
次に、図9B、図10及び図13を参照して、回転規制機構CCMの構成について説明する。図9B、図10に示すように、カバー部材12の裏面側の入隅部には、係止用突起125が形成されている。係止用突起125の形状は特定形状に限定されるものではないが、ここでは例示的に直方体形状を有してなる。図面から明らかなように、カバー部材12には、4つの係止用突起125が中心軸CLを中心に90°間隔で配置されている。
【0053】
一方、図13に示すように、ベース部材11の大径部111aにおける周縁の上隅部には嵌合溝119が形成されている。この嵌合溝119は、カバー部材12の係止用突起125を嵌合可能なように、該係止用突起125と相補的な形状を有してなる。また、ベース部材11には、中心軸CLを中心に4つの嵌合溝119が90°間隔で配置されている。
【0054】
以上のように構成される回転規制機構CCMは、係止用突起125と嵌合溝119が嵌合した状態において、ベース部材11に対するカバー部材12の相対回転を規制する。
【0055】
ところで、キャップ部材13は所定範囲内で中心軸CL方向に往復動自在にベース部材11と連結されている。また、バネ部材141は、キャップ部材13及びカバー部材12を、ベース部材11に接近する方向に付勢する。そこで、正当な施解錠者がカバー部材12を握り、バネ部材141の付勢力に抗してカバー部材12を扉前方に引き出す(引っ張る)ことにより、係止用突起125及び嵌合溝119の嵌合が解除される。そうすると、カバー部材12の相対回転が許容されるようになる。
【0056】
ベース部材11に対するカバー部材12の中心軸CL方向の相対位置を「軸方向位置」と称する。係止用突起125が嵌合溝119に嵌合されているときの軸方向位置を第一軸方向位置(第一位置に相当)とする。これに対して、カバー部材12がベース部材11から離間して、係止用突起125及び嵌合溝119の嵌合が解除されるときの軸方向位置を第二軸方向位置(第一位置に相当)とする。回転規制機構CCMは、カバー部材12の軸方向位置が第一軸方向位置にあるときにその回転動作を規制する一方、軸方向位置が第二軸方向位置にあるときにその回転動作を許容する。
【0057】
ベース部材11に対するカバー部材12の相対回転位置を「カバー回転位置」と称する。係止用突起125及び嵌合溝119は中心軸CL周りに90°毎に配置されるため、カバー回転位置が90°変化する度に、係止用突起125が嵌合溝119に嵌合される状態と、その嵌合が解除される状態とが切り替わる。言い換えると、カバー回転位置が90°変化する度に、カバー部材12の回転動作が規制される状態(以下、「ロック状態」という)と、その規制が解除される状態(以下、「ロック解除状態」という)とが切り替わる。
【0058】
ロック状態とロック解除状態との切り替えが行われるカバー回転位置を「ロック切り替え位置」と称する。ロック切り替え位置は、中心軸CL廻りに90°毎に存在する。従って、ロック解除状態にあるカバー部材12のカバー回転位置がロック切り替え位置に到達すると、係止用突起125及び嵌合溝119が中心軸CL方向に重なった状態となる。そうすると、バネ部材141の付勢力の作用によって、カバー部材12が第二軸方向位置から第一軸方向位置まで強制的に変位させられる。その結果、係止用突起125及び嵌合溝119が自動的に嵌合されて、ロック解除状態からロック状態に切り替わる。
【0059】
次に、扉錠100の施解錠操作時と非施解錠操作時とにおける扉錠用鍵穴カバー1の状態、及び相互の切り替え時における動作状況について説明する。図14乃至図18は、扉錠用鍵穴カバーの使用状態を示す第一乃至第五の状態図である。
【0060】
図14は、非施解錠操作時における扉錠用鍵穴カバー1の状態を示している。図示のように、非施解錠操作時においては、回転規制機構CCMによって、係止用突起125及び嵌合溝119が嵌合されたロック状態にカバー部材12が維持されている。この状態では、カバー部材12のカバー回転位置が「ロック切り替え位置」にある。カムリング機構CRMは、カバー回転位置が「ロック切り替え位置」のときに、カバー側カムとキャップ側カムの当接状態が凹凸係合状態となるように構成されている。言い換えると、凹凸係合状態が実現されるカバー回転位置と「ロック切り替え位置」が一致するように、係止用突起125及び嵌合溝119が配置されている。
【0061】
また、本実施形態では、カバー側カムとキャップ側カムの当接状態が凹凸係合状態のときに、キャップ嵌合穴121に嵌合されているキャップ部材13の表面とカバー部材12の表面との間に段差の無い状態(いわゆる面一状態)になるように、双方の部材が構成さ
れている。従って、扉錠100の非施解錠操作時においては、キャップ部材13を埋没嵌合状態とすることができる。因みに、埋没嵌合状態においては、キャップ部材13が鍵操作穴114を覆っている。そして、この状態では、キャップ部材13を手で掴むことができないため、例えば部外者によって、強引にキャップ部材13が外部に引き抜かれる虞がない。
【0062】
更に、非施解錠操作時においてカバー部材12がロック状態にあるため、扉錠用鍵穴カバー1の取扱い方法を知らない部外者は、カバー部材12を回転させることができない。従って、部外者は、キャップ部材13の嵌合状態を、埋没嵌合状態から嵌合解除状態に切り替える事ができない。そのため、非施解錠操作時において、キャップ部材13が回動されて鍵操作穴114が開放されることがなく、鍵穴103が外部に露出されることが無い。これにより、非施解錠操作時に、部外者によって扉錠100が不正に解錠されたり、鍵穴103に悪戯されたりすることが抑制される。
【0063】
一方、扉錠用鍵穴カバー1の取扱い方法を知っている正当な施解錠者にとっては、施解錠操作時に以下の手順によって簡単に鍵穴103を開放することができる。すなわち、図15に示した状態のように、カバー部材12が扉前方に引き出される。これにより、カバー部材12の軸方向位置が、第一軸方向位置から第二軸方向位置まで変位し、カバー部材12のロック状態が解除される。尚、この状態では、依然として、カバー側カムとキャップ側カムとの当接状態が凹凸係合状態となっており、キャップ部材13は埋没嵌合状態に維持されている。
【0064】
図15の状態からカバー部材12を回転させると、図16に示すような状態となる。ここで、キャップ部材13は、ベース部材11の付勢力によってベース部材11方向に向かって付勢されている。従って、ベース部材11に対してカバー部材12を回転させると、ベース部材11とキャップ部材13が相対的に回転するようになる。その結果、カバー側カムとキャップ側カムとの当接位置が変化するため、カバー部材12におけるカバー回転位置の変化に応じて、キャップ部材13のリフト量が徐々に増加する。尚、図16に示した状態は、図15の状態からカバー部材12を45°回転させた状態であり、埋没嵌合状態から嵌合解除状態に切り替わる途中の状態に相当する。
【0065】
そして、図15の状態からカバー部材12を90°回転させると、図17に示す状態となる。そうすると、カバー側カムとキャップ側カムの当接状態が凸凸重積状態になり、キャップ部材13が嵌合解除状態となる。それと同時に、カバー部材12におけるカバー回転位置がロック切り替え位置に一致するようになる。そうすると、カバー部材12に対するバネ部材141の付勢力によって、係止用突起125及び嵌合溝119が自動的に嵌合される。これにより、カバー部材12がロック解除状態からロック状態に切り替わり、その回転動作が規制される。
【0066】
正当な施解錠者は、このようにキャップ部材13を嵌合解除状態に切り替えることで、図18に示すように軸部材131を中心にキャップ部材13を回動させる事ができる。これにより、キャップ部材13によって覆われていた鍵操作穴114を露出させる事ができ、錠100の鍵穴103を開放させる事ができる。従って、鍵Kを鍵操作穴114、鍵穴103に挿入させることで、扉錠100の施解錠操作を行うことができる。
【0067】
尚、図18に示した状態から、鍵穴103を隠すべくキャップ部材13を埋没嵌合状態にするには以下のような操作を行えばよい。即ち、カバー部材12を扉前方に引き出し、カバー部材12のロック状態を解除した状態で、カバー部材12をベース部材11に対して90°回転させるのである。これによれば、カバー側カムとキャップ側カムの当接状態が再び凹凸係合状態となるため、キャップ部材13を埋没嵌合状態に切り替える事ができ
る。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る扉錠用鍵穴カバー1において、カムリング機構CRMは、カバー部材12の回転動作に連動して、キャップ部材13における埋没嵌合状態と嵌合解除状態の切り替えを行う。そして、回転規制機構CCMは、カムリング機構CRMが埋没嵌合状態と嵌合解除状態の切り替えを行うタイミングに同期して、カバー部材12におけるロック状態とロック解除状態との切り替えを行うように構成されている。
【0069】
これによれば、正当な施解錠者に対しては鍵や特殊な用具等を用いることなく、簡単な操作のみで扉錠100の鍵穴103を開放させる事を可能とする。一方、部外者に対しては不正に鍵穴103を開放させることを不可能とする。従って、施錠された状態にある扉錠100が、部外者によって不正に解錠されたり、鍵穴103に異物を詰められる等の悪戯の被害に遭うことを回避する事ができる。
【0070】
以上、本発明を実施する形態を説明したが、本発明の本旨を逸脱しない範囲内において上記した実施形態には種々の変更を加えてもよい。例えば、扉錠用鍵穴カバー1を適用する扉錠100については、特定の構造、形式、種別等に限定されるものではない。例えば、扉錠100は、電力関連施設に用いられるピラー錠であってもよい。ピラー錠は、例えば高圧キャビネット、気中多回路開閉器、地上用変圧器等の地中機器の扉及び借室用電気室の出入口扉等に取り付けて使用することができる。
【0071】
また、本実施形態では、カバー部材12側に係止用突起125を設け、ベース部材11側に嵌合溝119を設けているが、それぞれを逆側の部材に設けて構成してもよい。また、係止用突起125及び嵌合溝119それぞれの形状、大きさ、配置位置等も、適宜変更できる。
【0072】
例えば、ベース部材11の大径部111aの外周面に中心軸CLと直交する周方向の周溝を該外周面の全周にわたって形成し、この周溝にカバー部材12の係止用突起125を嵌合させることで、ベース部材11に対してカバー部材12を相対回転させてもよい。そして、前述のロック切り替え位置において、カバー部材12のロック状態とロック解除状態の切り替えを行うべく、上記周溝を基点に錠ケース本体101方向に延びる直交溝を設けてもよい。この場合、係止用突起125が周溝に嵌合された状態のときにはロック解除状態に維持される。そして、係止用突起125が周溝と直交溝の交点を経て、直交溝に押し込まれることで、カバー部材12をロック解除状態からロック状態へと切り替える事ができる。
【符号の説明】
【0073】
1 扉錠用鍵穴カバー
11 ベース部材
12 カバー部材
13 キャップ部材
100 扉錠
103 鍵穴
114 鍵操作穴
121 キャップ嵌合穴
124a,133a カム凸部
124b,133b カム凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉錠の鍵穴を隠すために該扉錠に取り付けられる扉錠用鍵穴カバーであって、
円形外周側面を有し、前記鍵穴に鍵操作穴を連通させた状態で前記扉錠に固定されるベース部材と、
前記ベース部材を覆い、且つ該ベース部材の中心を軸に回転自在に設けられ、該ベース部材の前記鍵操作穴が外部に臨むような開口穴であるキャップ嵌合穴が形成された環状のカバー部材と、
前記ベース部材に連結され、前記カバー部材の前記キャップ嵌合穴に嵌合された状態で該ベース部材の前記鍵操作穴を覆うキャップ部材と、
前記カバー部材の回転動作に連動して、前記キャップ嵌合穴に前記キャップ部材が埋没した状態で嵌合される埋没嵌合状態と、該キャップ部材の嵌合が解除される嵌合解除状態との切り替えを行う切り替え機構と、
前記ベース部材の中心軸方向における前記カバー部材の該ベース部材に対する相対位置が第一位置にある状態で該カバー部材の回転動作を規制する一方、該カバー部材の該相対位置が該第一位置に比べて該ベース部材から離間した第二位置にある状態で該回転動作の規制を解除する回転規制機構と、
を備える、
扉錠用鍵穴カバー。
【請求項2】
前記カバー部材における前記キャップ嵌合穴内部には、前記キャップ部材の周縁部を支持するためのキャップ支持部が形成され、
前記切り替え機構は、前記キャップ支持部に環状に形成されるカバー側カムと、前記キャップ部材の周縁部に環状に形成されるキャップ側カムとを有し、前記カバー部材の回転動作に連動して前記カバー側カムと前記キャップ側カムとにおける互いの当接位置を変化させることで前記カバー部材に対する前記キャップ部材のリフト量を変化させる、
請求項1に記載の扉錠用鍵穴カバー。
【請求項3】
前記カバー側カム及び前記キャップ側カムの各々は、相対的に突出したカム凸部と該カム凸部に比べて凹んでいるカム凹部とを有してなり、
前記カバー側カム及び前記キャップ側カムにおける互いのカム凸部とカム凹部とが係合することで前記キャップ部材が前記埋没嵌合状態となり、
前記カバー側カム及び前記キャップ側カムにおける互いのカム凸部同士が重なることで前記キャップ部材が前記嵌合解除状態となる、
請求項2に記載の扉錠用鍵穴カバー。
【請求項4】
前記カバー側カム及び前記キャップ側カムの各々において、複数のカム凸部及びカム凹部が交互に並んで配置されており、隣り合うカム凸部とカム凹部が傾斜面によって接続される、
請求項3に記載の扉錠用鍵穴カバー。
【請求項5】
前記回転規制機構は、前記カバー部材及び前記ベース部材の何れか一方に設けられた係止用突起と、何れか他方に設けられて且つ該係止用突起部が嵌合される嵌合溝と、を含んで構成され、
前記カバー部材が前記第一位置にある状態では、前記係止用突起及び前記嵌合溝が嵌合し、該カバー部材が前記第二位置にある状態では、該係止用突起及び該嵌合溝の嵌合が解除される、
請求項1から4の何れか一項に記載の扉錠用鍵穴カバー。
【請求項6】
前記カバー部材を前記第二位置から第一位置に変位させる方向に向けて付勢する付勢手
段を更に備え、
前記カバー部材の回転動作に伴い、前記係止用突起及び前記嵌合溝が前記ベース部材の中心軸方向に重なった時に、前記付勢手段による付勢力によって、該係止用突起及び該嵌合溝が自動的に嵌合する、
請求項5に記載の扉錠用鍵穴カバー。
【請求項7】
前記カバー部材の回転動作に伴い、その回転位置が前記埋没嵌合状態と前記嵌合解除状態との切り替え位置に一致した時に、前記係止用突起及び前記嵌合溝が前記ベース部材の中心軸方向において重なるように該係止用突起及び該嵌合溝が配置される、
請求項6に記載の扉錠用鍵穴カバー。
【請求項1】
扉錠の鍵穴を隠すために該扉錠に取り付けられる扉錠用鍵穴カバーであって、
円形外周側面を有し、前記鍵穴に鍵操作穴を連通させた状態で前記扉錠に固定されるベース部材と、
前記ベース部材を覆い、且つ該ベース部材の中心を軸に回転自在に設けられ、該ベース部材の前記鍵操作穴が外部に臨むような開口穴であるキャップ嵌合穴が形成された環状のカバー部材と、
前記ベース部材に連結され、前記カバー部材の前記キャップ嵌合穴に嵌合された状態で該ベース部材の前記鍵操作穴を覆うキャップ部材と、
前記カバー部材の回転動作に連動して、前記キャップ嵌合穴に前記キャップ部材が埋没した状態で嵌合される埋没嵌合状態と、該キャップ部材の嵌合が解除される嵌合解除状態との切り替えを行う切り替え機構と、
前記ベース部材の中心軸方向における前記カバー部材の該ベース部材に対する相対位置が第一位置にある状態で該カバー部材の回転動作を規制する一方、該カバー部材の該相対位置が該第一位置に比べて該ベース部材から離間した第二位置にある状態で該回転動作の規制を解除する回転規制機構と、
を備える、
扉錠用鍵穴カバー。
【請求項2】
前記カバー部材における前記キャップ嵌合穴内部には、前記キャップ部材の周縁部を支持するためのキャップ支持部が形成され、
前記切り替え機構は、前記キャップ支持部に環状に形成されるカバー側カムと、前記キャップ部材の周縁部に環状に形成されるキャップ側カムとを有し、前記カバー部材の回転動作に連動して前記カバー側カムと前記キャップ側カムとにおける互いの当接位置を変化させることで前記カバー部材に対する前記キャップ部材のリフト量を変化させる、
請求項1に記載の扉錠用鍵穴カバー。
【請求項3】
前記カバー側カム及び前記キャップ側カムの各々は、相対的に突出したカム凸部と該カム凸部に比べて凹んでいるカム凹部とを有してなり、
前記カバー側カム及び前記キャップ側カムにおける互いのカム凸部とカム凹部とが係合することで前記キャップ部材が前記埋没嵌合状態となり、
前記カバー側カム及び前記キャップ側カムにおける互いのカム凸部同士が重なることで前記キャップ部材が前記嵌合解除状態となる、
請求項2に記載の扉錠用鍵穴カバー。
【請求項4】
前記カバー側カム及び前記キャップ側カムの各々において、複数のカム凸部及びカム凹部が交互に並んで配置されており、隣り合うカム凸部とカム凹部が傾斜面によって接続される、
請求項3に記載の扉錠用鍵穴カバー。
【請求項5】
前記回転規制機構は、前記カバー部材及び前記ベース部材の何れか一方に設けられた係止用突起と、何れか他方に設けられて且つ該係止用突起部が嵌合される嵌合溝と、を含んで構成され、
前記カバー部材が前記第一位置にある状態では、前記係止用突起及び前記嵌合溝が嵌合し、該カバー部材が前記第二位置にある状態では、該係止用突起及び該嵌合溝の嵌合が解除される、
請求項1から4の何れか一項に記載の扉錠用鍵穴カバー。
【請求項6】
前記カバー部材を前記第二位置から第一位置に変位させる方向に向けて付勢する付勢手
段を更に備え、
前記カバー部材の回転動作に伴い、前記係止用突起及び前記嵌合溝が前記ベース部材の中心軸方向に重なった時に、前記付勢手段による付勢力によって、該係止用突起及び該嵌合溝が自動的に嵌合する、
請求項5に記載の扉錠用鍵穴カバー。
【請求項7】
前記カバー部材の回転動作に伴い、その回転位置が前記埋没嵌合状態と前記嵌合解除状態との切り替え位置に一致した時に、前記係止用突起及び前記嵌合溝が前記ベース部材の中心軸方向において重なるように該係止用突起及び該嵌合溝が配置される、
請求項6に記載の扉錠用鍵穴カバー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−202485(P2011−202485A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73484(P2010−73484)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【特許番号】特許第4516631号(P4516631)
【特許公報発行日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000144108)株式会社三英社製作所 (35)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【特許番号】特許第4516631号(P4516631)
【特許公報発行日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000144108)株式会社三英社製作所 (35)
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