説明

手すりベルト洗浄方法

【課題】 マスキング作業にかかるコストや時間を削減するとともに、洗浄作業の効率化を図り短時間で洗浄作業を行うことができる手すりベルト洗浄方法を得る。
【解決手段】 乗客コンベアを稼動させた状態で、乗り口側4の乗り床5にて、手すりベルト3の表面に洗浄剤を塗布し研磨材により手すりベルト3の表面を研磨することにより手すりベルト3の表面の汚れを除去するとともに手すりベルト3の表面を平滑にし、降り口側6の降り床7にて、手すりベルト3の表面にある汚れや削りかすを含んだ洗浄汚水の拭き取りを行い、その後水拭きを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータや動く歩道等の乗客コンベアに用いられる手すりベルト洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
百貨店やホームセンター、公共施設や駅舎など多くの場所に設置されているエスカレータや動く歩道等の乗客コンベアには、利用者が掴まるための手すりベルトが設けられている。これらの手すりベルトは、長期間の使用により、利用者の手垢、手汗、手脂や空気中の塵埃が付着し、次第に光沢を失ってしまう。また、乗客コンベアの手すりベルトは、送りローラにより狭圧されて駆動するため、送りローラの摩擦熱や圧力により付着した汚れが表面に蓄積されたり、細かな土砂が付着して送りローラにより擦られることで光沢を失いその美感が損なわれてしまう。
【0003】
手すりベルトにおいては、表面の美感を維持するため、手すりベルトにコーティング剤を塗布して手すりベルトの表面に保護膜を形成するコーティング作業が行われており、このコーティング作業にあっては、コーティング剤を塗布する事前処理として手すりベルトの表面に付着した汚れや細かな傷を除去する洗浄作業が行われている。
【0004】
この洗浄作業は、乗客コンベアを停止させた状態で行われ、先ず手すりベルトの表面に洗浄剤を塗布し、研磨材により手すりベルトの表面を研磨して汚れを除去した後、手すりベルトの表面にある汚れや削りかすを含んだ洗浄汚水の拭き取りを行うとともに、水拭きを行う洗浄方法により行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平3−79689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記洗浄方法では、乗客コンベアを停止させた状態で洗浄作業を行うため、作業者が乗客コンベアの一端側から他端側の全長を移動しながら、研磨材で手すりベルトの表面を研磨して汚れを除去する研磨作業を行う必要があり、この研磨作業により汚れや削りかすを含んだ洗浄汚水が乗客コンベアの周囲全長に亘って飛散してしまう。したがって、前記洗浄方法においては、前記研磨作業により乗客コンベアの周囲が汚れないように、乗客コンベアの全長に亘ってマスキングを行う必要があり、とりわけ、乗客コンベアのマスキングにあっては、乗客コンベアの機械内部に汚れや削りかすを含んだ洗浄汚水が入り込まないように細部までマスキングする必要がある。そのため、この乗客コンベアの周囲全長をマスキングするマスキング作業は、相当数の作業員による長時間の作業となり、作業時間の増加とともに、人件費を含めたコストが高額になる問題があった。
【0006】
また、前記洗浄方法においては、手すりベルトの表面に洗浄剤を塗布する作業、研磨材で手すりベルトの表面を研磨して汚れを除去する作業、手すりベルトの表面にある汚れや削りかすを含んだ洗浄剤の拭き取りを行う作業、水を含浸させた払拭材で水拭きを行う作業のそれぞれの作業を作業者が乗客コンベアの全長を移動しながら行う必要があるため、作業効率が悪く作業時間が長くなり、特に、終電から始発電車までの短時間しか停止することができない駅舎内や、営業時間外の限られた時間しか停止できない百貨店等における手すりベルトの洗浄作業を困難にしている。
【0007】
本発明の目的するところは、マスキング作業にかかるコストや時間を削減するとともに、洗浄作業の効率化を図り短時間で洗浄作業を行うことができる手すりベルト洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の手すりベルト洗浄方法は、乗客コンベアを稼動させた状態で、乗り口側の乗り床にて、手すりベルトの表面に洗浄剤を塗布し研磨材により手すりベルトの表面を研磨することにより手すりベルトの表面の汚れを除去するとともに手すりベルトの表面を平滑にし、降り口側の降り床にて、手すりベルトの表面にある汚れや削りかすを含んだ洗浄汚水の拭き取りを行い、その後水拭きを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の手すりベルト洗浄方法によれば、乗客コンベアを稼動させた状態で、乗り口側の乗り床にて、手すりベルトの表面に洗浄剤を塗布し研磨材により手すりベルトの表面を研磨することにより手すりベルトの表面の汚れを除去するので、手すりベルトの表面の洗浄、研磨作業が乗客コンベア乗り口側の乗り床位置となり、作業時に飛散する汚れや削りかすを含んだ洗浄汚水の飛散箇所は乗り口側の乗り床付近に限られることになるから、洗浄汚水の飛散による周囲の汚れを防止するためのマスキングは乗り口側の乗り床付近にのみ行えばよいことになり、マスキング材の使用が少量ですむとともに、マスキング作業を最小限に抑えることができることから、マスキング作業にかかるコストや時間の削減が可能となる。
【0010】
また、乗り口側の乗り床にて、手すりベルトの表面の汚れを除去するとともに手すりベルトの表面を平滑にした後、降り口側の降り床にて、移動してくる手すりベルトの表面にある汚れや削りかすを含んだ洗浄汚水の拭き取りと水拭きを行うので、前記手すりベルトの表面の洗浄、研磨作業や手すりベルトの表面にある洗浄汚水の拭き取り、水拭き作業で、作業者が乗客コンベアの全長を移動しながら行う必要がなくなり、作業が容易になるとともに作業効率が向上し、洗浄作業に要する時間の大幅な短縮が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る手すりベルト洗浄方法を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明に係る手すりベルト洗浄方法の実施の一例を示す説明図である。本例は、乗客コンベアがエスカレータである場合を示すものであり、図1に示すエスカレータ1は、無端状に連結される階段2の両側に回転可能に設けられ、階段2と連動して回転移動する左右一対の手すりベルト3を有している。そして、手すりベルト3の移動方向の一方の端部の乗客の乗り口側4には乗り床5が設けられ、また一方の端部の乗客の降り口側6には降り床7が設けられている。また、エスカレータ1の乗り口側4と降り口側6には、手すりベルト3の出入り口となるインレット部8が設けられている。
【0013】
本発明に係る手すりベルト洗浄方法は、エスカレータ1を稼動させた状態でエスカレータ1の手すりベルト3を洗浄するものであり、エスカレータ1の稼動においては、本例では、昇りエスカレータとして階段2や手すりベルト3が移動し、手すりベルト3は図1の矢印が示す方向に回転移動するようになっている。
【0014】
そして、本発明に係る手すりベルト洗浄方法は、エスカレータ1を稼動させた状態で、乗り口側4に設けられている乗り床5にて、手すりベルト3の表面に洗浄剤を塗布し研磨材により手すりベルト3の表面を研磨することにより手すりベルト3の表面の汚れを除去するとともに手すりベルト3の表面を平滑にし、降り口側6に設けられている降り床7にて、手すりベルト3の表面にある汚れや削りかすを含んだ洗浄汚水の拭き取りを行い、その後水拭きを行うものであり、以下に詳細に説明する。
【0015】
まず、エスカレータ1の乗り口側4に設けられた乗り床5の位置にて、インレット部8から出てきた手すりベルト3の水平部Aの位置の表面に洗浄剤を塗布する。この洗浄剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤等の界面活性剤、有機溶剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤等を含有するものを挙げることができ、特に限定されるものではない。
【0016】
手すりベルト3の表面への洗浄剤の塗布量にあっては、洗浄剤の塗布量が多いと、洗浄剤が回転移動する手すりベルト3の速度に抗して手すりベルト3を伝わって乗り床5側のインレット部8に入ってしまい思わぬトラブルを引き起こすおそれがあり、また塗布量が少ないと研磨作業時の発熱で乾燥し、手すりベルト3を著しく減摩してしまうことになることから、洗浄剤の塗布量は、回転移動する手すりベルト3の速度に抗して洗浄剤が手すりベルト3を伝わって乗り床5側のインレット部8に入ることがなく、且つ研磨作業時の発熱で乾燥しない程度の量であることを要する。
【0017】
手すりベルト3の表面への洗浄剤の塗布にあっては特に限定されるものではなく、一般的な刷毛、ローラー、スプレー等を用いた公知の塗布手段によって行う。
【0018】
手すりベルト3の表面へ洗浄剤を塗布した後、同位置、即ち、エスカレータ1の乗り口側4に設けられた乗り床5の位置にて、研磨材により手すりベルト3の表面を研磨する。研磨材による手すりベルト3の表面の研磨にあっては、研磨材を紙、布など柔軟性に富む材料の表面に接着剤で固定した研磨布紙、例えば研磨パッドを用いた公知の研磨手段により行う。ここで、手すりベルト3の表面の汚れを除去するとともに手すりベルト3の表面を平滑にする。
【0019】
研磨材によりその表面を研磨された手すりベルト3は、その表面に汚れや削りかすを含んだ洗浄汚水を付着した状態で順次降り口側6へ移動する。
【0020】
表面に付着している汚れや削りかすを含んだ洗浄汚水が付着した手すりベルト3が移動してくると、エスカレータ1の降り口側6に設けられた降り床7の位置にて、移動してきた手すりベルト3の水平部Bの位置の表面に付着している汚れや削りかすを含んだ洗浄汚水の拭き取りを行い、その後、同位置、即ち、エスカレータ1の降り口側6に設けられた乗り床7の位置にて、水を含浸させた拭取布で水拭きを行う。洗浄汚水を拭き取る拭取布及び水拭きを行う水を含浸させた拭取布においては、特に限定されるものではなく、例えば、雑巾やウエスなどの公知の拭取布を用いることができる。
【0021】
このようにして、手すりベルト1を一回或いは複数回、回転移動させることにより、手すりベルト3の洗浄作業が終了する。
【0022】
上記の手すりベルト洗浄方法によれば、エスカレータ1を稼動させた状態で、エスカレータ1の乗り口側4の乗り床5にて、手すりベルト3の表面に洗浄剤を塗布し研磨材により手すりベルト3の表面を研磨することにより手すりベルト3の表面の汚れを除去するので、手すりベルト3の表面の洗浄、研磨作業が乗り口側4の乗り床位置5となり、作業時に飛散する汚れや削りかすを含んだ洗浄汚水の飛散箇所は乗り口側4の乗り床5付近に限られることになるから、洗浄汚水の飛散による周囲の汚れを防止するためのマスキングは乗り口側4の乗り床5付近にのみ行えばよいことになり、マスキング材の使用が少量ですむとともに、マスキング作業を最小限に抑えることができることから、マスキング作業にかかるコストや時間の削減が可能となる。
【0023】
また、乗り口側4の乗り床5にて、手すりベルト3の表面の汚れを除去するとともに手すりベルト3の表面を平滑にした後、降り口側6の降り床7にて、移動してくる手すりベルト3の表面にある汚れや削りかすを含んだ洗浄汚水の拭き取りと水拭きを行うので、前記手すりベルト3の表面の洗浄、研磨作業や手すりベルト3の表面にある洗浄汚水の拭き取り、水拭き作業で、作業者がエスカレータ1の全長を移動しながら行う必要がなくなり、作業が容易になるとともに作業効率が向上し、洗浄作業に要する時間の大幅な短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る手すりベルト洗浄方法の実施の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 エスカレータ
2 階段
3 手すりベルト
4 乗り口側
5 乗り床
6 降り口側
7 降り床
8 インレット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアを稼動させた状態で、乗り口側の乗り床にて、手すりベルトの表面に洗浄剤を塗布し研磨材により手すりベルトの表面を研磨することにより手すりベルトの表面の汚れを除去するとともに手すりベルトの表面を平滑にし、降り口側の降り床にて、手すりベルトの表面にある汚れや削りかすを含んだ洗浄汚水の拭き取りを行い、その後水拭きを行うことを特徴とする手すりベルト洗浄方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−173393(P2009−173393A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13612(P2008−13612)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(390039712)株式会社リンレイ (18)
【Fターム(参考)】