説明

手すり型シャワ装置

【課題】浴室のスペースを有効に活用できるとともに、バリアフリーとしても有用な、さらには、水配管や湯配管に直接接続できる使用勝手のよい手すり型シャワ装置を提供する。
【解決手段】上下方向に配置される中空の手すり体2、と水配管Lからの水および湯配管Hからの湯を混合するよう手すり体2に設けられた混合手段と、この混合手段よりも下流側に設けられたシャワホース4およびシャワヘッドよりなるハンドシャワならびに上シャワ7と、混合手段によって混合された湯水を、ハンドシャワに供給する状態または上シャワ7に供給する状態に切替える切替手段8とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浴室やシャワルームなどに設置される手すり型シャワ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、下記特許文献1に示すように、切換ハンドルを操作してシャワホースおよびシャワヘッドよりなるハンドシャワから湯水を吐出させ、それによって通常のシャワ導出状態とする一方、切換ハンドルを操作して複数の吐出部から湯水を吐出させ、それによってボディシャワ状態にできる多機能対応型シャワを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−339563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この多機能対応型シャワを水配管や湯配管に直接接続するのではなく、既存の水栓本体の湯水導出口に接続する構造になっていた。
【0005】
また、浴室内での動作を補助する目的で浴槽側のみならず洗い場側の壁にも手すりが設置されているものがあるけれども、ただでさえ狭い浴室の洗い場が手すりに邪魔されて狭くなる上に手すりに体が当たることがあった。
【0006】
この発明は、浴室のスペースを有効に活用できるとともに、バリアフリーとしても有用な、さらには、水配管や湯配管に直接接続できる使用勝手のよい手すり型シャワ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願の請求項1に係る発明では、上下方向に配置される中空の手すり体と、水配管からの水および湯配管からの湯を混合するよう前記手すり体に設けられた混合手段と、この混合手段よりも下流側に設けられたシャワホースおよびシャワヘッドよりなるハンドシャワならびに上シャワと、前記混合手段によって混合された湯水を、前記ハンドシャワに供給する状態または前記上シャワに供給する状態に切替える切替手段とを備えたことを特徴とする手すり型シャワ装置を提供する。
【0008】
この発明では、前記手すり体を、前記水配管および湯配管にそれぞれ連通する水導入口および湯導入口を有する外管と、この外管の内部に上流端が前記混合手段と接続するよう設けられた内管と、前記外管と同一の外径を有し、前記上シャワに下流端が接続されるとともに、前記内管に連通するよう上流端が前記外管に接続され、前記内管とで湯水供給流路を形成する接続管とより構成するのが好ましい。
また、この発明では、前記接続管の途中に前記切替手段を設けるのが好ましい。さらに、この発明では、切替手段側から混合手段側に水を導入し、それによって、前記湯水供給流路から前記外管に熱が伝わるのを防止する環状の水導入路を、前記外管と内管との間に形成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
この発明では、上下方向に配置される中空の手すり体に、水配管からの水および湯配管からの湯を混合する混合手段を設け、前記混合手段によって混合された湯水を、前記ハンドシャワに供給する状態または前記上シャワに供給する状態に切替える切替手段を設けている。すなわち、シャワ機能と手すり機能を兼用させたので、手すり型シャワ装置が壁面に設置されている例えば浴室、シャワールーム内をより広く使用することができる。
【0010】
つまり、前記壁面に別途手すりを設けなくても例えば浴室の洗い場におけるハンドシャワと上シャワの切替え動作や、洗い場に座ったり、洗い場から立ち上がったりするときの動作などを前記手すり体によって補助でき、浴室スペースを有効に活用できるとともに、手すりに体が当たるといった事態も回避できバリアフリーとして有効である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施例における使用状態を示す図である。
【図2】上記実施例における要部構成説明図である。
【図3】上記実施例における使用状態を示す斜視図である。
【図4】上記実施例で用いた合成樹脂製カバーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施例を、図を参照しながら説明する。なお、それによってこの発明は限定されるものではない。
【0013】
図1〜図4は、この発明の一実施例を示す。図1〜図4において、手すり型シャワ装置1は、例えば浴室の洗い場1aの壁面Wに設置されており、上下方向に配置される中空の手すり体2と、水配管Lからの水および湯配管Hからの湯を混合するよう前記手すり体2に設けられた混合手段3と、この混合手段3よりも下流側に設けられたシャワホース4およびシャワヘッド5よりなるハンドシャワ6ならびに上シャワ7と、前記混合手段3によって混合された湯水を、前記ハンドシャワ6に供給する状態または前記上シャワ7に供給する状態に切替える切替手段8とを備えている。5aはシャワ掛具で壁面W所定の高さ位置に設けられている。
【0014】
前記手すり体2は、前記水配管Lおよび湯配管Hにそれぞれ継手9aおよび10aを介して連通する水導入口9および湯導入口10を有する外管11と、この外管11の内部に上流端12aが前記混合手段3と接続するよう設けられた内管12と、前記外管11と同一の外径を有し、前記上シャワ7に下流端部14bが接続されるとともに、前記内管12の下流端12bに継手13を介して連通するよう上流端部14aが前記外管11の下流端部11bに接続された接続管14とより構成されている。そして、外管11と接続管14は、浴室に設置される手すりとして使用可能な大きさに設定されている。
そして、接続管14と内管12とで切替手段8に向かう湯水供給流路iが形成される。また、前記切替手段8は接続管14の途中に設けられている。
また、前記外管11と内管12との間には、切替手段側から混合手段側に水を導入し、それによって、前記湯水供給流路iから前記外管11に熱が伝わるのを防止する環状の水導入路jが形成されている。
そして、接続管14、外管11、内管12は市販品のパイプを用いている。この実施例では、
(1)接続管14、外管11、内管12として、市販の縦断面円形のパイプを用いている。そして、接続管14、外管11を手すりとしてより効果的に機能させるために、これらの外表面を覆うようスベリ止め部材を設けるのが好ましい。このスベリ止め部材としては、柔軟性を持たせるために、シリコン系のゴム材や軟質塩化ビニール等の樹脂よりなる半硬質部材を挙げることができる。これにより、スベリ止め部材で覆われた接続管14、外管11はしっかり握れるよう構成され得る。また、前記樹脂に抗菌剤を添加することにより、雑菌の繁殖を防ぐことができる。
(2)なお、接続管14、外管11、内管12として、市販の縦断面角形のパイプを用いてもよい。
【0015】
前記混合手段3は、ハンドシャワ6または上シャワ7から吐出させる湯水の温度を設定するための温度設定手段(例えば、温度設定ハンドル)16と、この温度設定手段16により設定した温度に対応した湯水の混合を行わせるための自動温度調節機能を有する温度調整ユニット17とを主として備えている。そして、温度設定手段16と温度調整ユニット17も市販品のものを用いている。温度調整ユニット17は、弁体/サーモエレメント収納用ケース18と、温度設定手段16による栓棒Rの回動運動を水平運動に変換してこの水平運動をサーモエレメント側に伝達する伝達機構を収納するケース15とを有する。前記温度設定手段16は、前記栓棒Rを介して前記伝達機構に連結されている。
【0016】
そして、前記弁体/サーモエレメント収納用ケース18は、前記外管11の上流端部11aに形成された開口Aから外管11内に嵌込まれている。温度調整ユニット17の前記ケース18内には、水配管Lからの水および湯配管Hからの湯を混合するための混合室Mが形成され、この混合室M内において混合された湯水の温度に影響を受けて膨張・収縮するサーモワックス19が収納されており、また、このワックス19の膨張・収縮に伴って伸縮するサーモエレメント20が収納されており、さらに、このサーモエレメント20の伸縮に伴って移動し、移動することによって、前記混合室Mの異なる箇所に設けられた水配管Lに連通する連通口21および湯配管Hに連通する連通口22を閉塞する割合が変化する弁体23が収納されている。そして、前記弁体23による2つの連通口21,22を閉塞する割合の変化に伴って、前記混合室Mへの水配管Lおよび湯配管Hからの湯水の導入流量の比率が変化し、これにより、混合室M内において混合される湯水の温度が変化するように構成してある。
【0017】
上記の構成からなる温度調整ユニット17では、前記混合室M内において混合された湯水の温度が、前記温度設定手段16により設定した温度に対応する温度となっていない場合には、前記混合室M内における湯水の温度の影響を受けて前記ワックスが膨張・収縮し、サーモエレメント20が伸縮し、さらには前記弁体23が移動するのであり、この移動に伴って、水配管Lからの水および湯配管Hからの湯の前記混合室M内への導入流量の比率が変化し、混合室M内で混合される湯水の温度が前記温度設定手段16により設定された温度に対応する温度に近づき、最終的に一致することとなる。そして、この設定温度の湯水が湯水供給流路iを流れる。この実施例では混合室Mに設けた前記連通口22の位置がサーモワックス19が収納される領域の最上流端に一致するようサーモエレメント20を設置している。したがって、温度調整ユニット17の自動温度調節動作を迅速に行える利点を有する。
【0018】
前記上シャワ7は、複数のシャワ散水口7を有するシャワ板7aと、シャワ散水口7と湯水供給流路iを連通する上シャワ取り付け用の中空のバー7bよりなる。バー7bの上流端部は接続管14の下流端部14bに接続されている。バー7bの外径は接続管14の外径よりも小さく、バー7bおよびシャワ板7aは市販品のものを用いている。
【0019】
前記切替手段8は、切替ハンドル30と、切替ハンドル30の切替操作に連動して、湯水供給流路iの湯水を、前記シャワホース4に流す状態または前記バー7bに流す状態に切替え可能な切替部とから構成されている。
【0020】
また、前記継手9aおよび10aは、特開2003−336300号公報に記載された偏心管と同一構造をしており、市販品である。
例えば給水側の前記継手9aは、一端に外管11との接続部33を有し、他端に水配管Lとの接続部34を有し、両接続部33,34の中心が数mm程度ずれるように配置されてなる継手本体35を備えている。36は継手本体35に対して摺動自在に被覆する合成樹脂からなるカバーで、2つの半割り体37,38に分離可能であると共に、継手本体35の外側面35aに沿う形状のガイド溝38aを一方の半割り体38が有する。39は継手本体35の側面に設けた一つの流量調整栓で、これをドライバーでまわすことにより流量を調整したり、水配管Lからの水を止めることができる。そして、他方の半割り体37は、流量調整栓39を外部に露出させるための開口40を有する。
一方、給湯側の前記継手10aは前記継手9aと同一構造のもので、前記継手10aも継手本体41に対して摺動自在に被覆する合成樹脂からなるカバー42を有する。このカバー42もカバー36と同一構造で2つの半割り体42a,42bに分離可能である。そして、このカバー42により、使用者のやけどに対する安全性を高めることができる。
また、カバー36で継手9aの略全体を被覆することから、多少見栄が悪いバフ工程抜きの継手本体35を使用でき、バフ仕上げを施した継手本体において多々あるように、バフ仕上げが原因で不良製品を量産して歩留りが発生するような事態を回避できる。継手10aの継手本体の場合も同様である。
また、図示はしないが、カバー36を構成する半割り体37,38およびカバー42を構成する二つの半割り体42a,42bは、水抜き穴を有する。そのため、シャワー使用時等には、カバー36,42内に溜まった湯水を水抜き穴でカバー36,42の外に常時排出でき、長寿命性を保持できるとともに、衛生面でも有効である。
【0021】
43,44はバー7bに設けた手すり型シャワ装置取り付け部材で、この部材43,44を介して手すり型シャワ装置1が洗い場の壁面Wに設置される。
【0022】
而して、シャワ装置1の接続管14、外管11を所定高さの位置に設け、これらを手すりに兼用させたので、浴室の洗い場1a内での動作を補助できる。
【0023】
また、浴室の洗い場1aの壁Wに新たに手すりを設ける必要がなくなり、浴室のスペースを有効に活用できるとともに、手すりに体が当たるといった事態も回避できバリアフリーとしても有効である。
【0024】
また、手すりとなる接続管14、外管11として既存のものを用い、また、バー7bおよびシャワ板7aならびに継手9a,10aも既存のものを用いたので、別途新たに成形する必要がなくコストを削減できる。
【符号の説明】
【0025】
1 手すり型シャワ装置
2 中空の手すり体
3 混合手段
4 シャワホース
5 シャワヘッド
6 ハンドシャワ
7 上シャワ
8 切替手段
W 壁面
L 水配管
H 湯配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に配置される中空の手すり体と、水配管からの水および湯配管からの湯を混合するよう前記手すり体に設けられた混合手段と、この混合手段よりも下流側に設けられたシャワホースおよびシャワヘッドよりなるハンドシャワならびに上シャワと、前記混合手段によって混合された湯水を、前記ハンドシャワに供給する状態または前記上シャワに供給する状態に切替える切替手段とを備えたことを特徴とする手すり型シャワ装置。
【請求項2】
前記手すり体は、前記水配管および湯配管にそれぞれ連通する水導入口および湯導入口を有する外管と、この外管の内部に上流端が前記混合手段と接続するよう設けられた内管と、前記外管と同一の外径を有し、前記上シャワに下流端が接続されるとともに、前記内管に連通するよう上流端が前記外管に接続され、前記内管とで湯水供給流路を形成する接続管とより構成され、さらに、前記接続管の途中には前記切替手段が設けられ、前記外管と内管との間には、切替手段側から混合手段側に水を導入し、それによって、前記湯水供給流路から前記外管に熱が伝わるのを防止する環状の水導入路が形成されている請求項1に記載の手すり型シャワ装置。
【請求項3】
浴室の洗い場の壁面、あるいは、シャワルームの壁面に取り付けられる請求項1または請求項2に記載の手すり型シャワ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−75722(P2010−75722A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267065(P2009−267065)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【分割の表示】特願2005−47527(P2005−47527)の分割
【原出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(000144072)株式会社三栄水栓製作所 (111)
【Fターム(参考)】