説明

手に優しいコーティングを有する手袋及び製作方法

微細かつ実質的に均一に混合物中に分散され、皮膚発生水分で活性化して装着者の皮膚に転送される、少なくとも1の水溶性潤滑保湿剤、少なくとも1の水溶性滑剤、少なくとも1の水溶性界面活性剤、及び少なくとも1の水不溶性被覆性潤滑剤、並びに、適宜、構造的粘着性袖口領域及び/又はテクスチャ表面を含んでなり、手に優しい乳化混合物を含んでなる乾式コーティングを含んでなる、手に優しいゴム手袋、並びに手に優しい当該乳化混合物及び手袋物品の製作方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚接触面において手に優しいコーティングを有するゴム手袋物品及びその製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手袋、特に医用手袋等の皮膚接触物品は、化合物、並びにバクテリア及び/又はウィルス等を含んでなる微生物を有する体液の汚染に対するユーザの保護バリアとして広範に用いられる。加えて、手袋はユーザを磨耗作用から生じる損傷からも保護する。このように、手袋及び他の皮膚接触物品は、使用中に汚染菌又は微生物を完全に不透過とするように製造される。こうしたバリアの完全性を維持するため、手袋には、穴(例えばピンホール)及び裂症等の欠陥が無いことが必要である。
【0003】
手袋は、容易な装着及び脱着特性を有しなければならず、特に医用手袋への応用において、手袋脱着に可能な時間は秒の問題でありうる。医用手袋、更にとりわけ外科用手袋の装着特性には、乾いた手での装着、湿った又は濡れた手での装着、及び二重手袋という、3つの態様がある。ユーザは、手袋装着の困難に遭遇すると、通常は当該手袋の装着を止め、装着特性が優れる手袋を選択しようとする。外科用手袋のユーザは、通常、手袋の装着前に手を洗う。ほとんどの場合、手袋を装着しようとする時の手は湿っているか濡れている。多くの場合、手袋のバリア層を追加するために手袋の上に手袋を重ねて二重に装着する。外側の手袋が裂けるか又は切断されると、外科医は手を洗って手袋装着の全過程を繰り返すという、手術中に更に時間のかかる作業をする必要なく、単に外側の手袋を外せる。従って、二重装着又は二重手袋の特性は、極めて重要である。良好な二重手袋の特性を達成するためには、外側の手袋の内面、及び内側の手袋の外面は、各々に対して容易に摺動しうるよう滑らかである必要がある。しかしながら、手袋の外面は滑らかすぎてはならず、これは把手特性を低下させ、ユーザの手術器具の保持又は取り扱いを困難にするからである。従って、手袋の外面は、一定水準の良好な把手特性を提供し、ユーザに対して二重手袋の困難を生じてはならず、その一方で手袋の内面はできるだけ滑らかでなければならない。
【0004】
装着及び使用中の手袋の曲げ伸ばしには、伸展を含む。従って、手袋、特に医用手袋は、伸展可能であること、すなわち、装着又は使用中に裂け又は破れを十分に防ぐ良好な引張特性を有することが重要である。装着容易性のために手袋に添加するいかなるコーティングも、手袋のゴム弾性体の引張特性及び伸展特性を妨害してはならない。
【0005】
手袋、特に外科用手袋の他の重要な特性は、使用中の良好かつ快適な感触を含んでなる。この達成のため、手袋は、かさばることなく手の形状の輪郭に沿って良好に適合しなければならない。手袋は、特定の領域が他の領域よりも伸展することなく全ての場所でほとんど均一に伸展して、手の表面全体に伸展する。強く伸展された領域は手袋を締め付ける感触を生じるからである。こうした適切な手袋のフィットは、手の形状を有する成型器を用いることで手袋の形状へと設計される。加えて、手袋に用いる弾性材料は、使用中に手が経験する緊張が最小となるよう、柔軟かつ伸展可能でなければならない。残念なことに、天然ゴム及びポリイソプレン等の軟質材は、通常は粘着性であり、従って固有の粘着性を回避するために塩素処理、シリコン処理又はポリマー被覆等の表面処理が必要である。ポリマーコーティングプロセスは、フィルム形成ポリマー及びワックスの混合を含んでなるコーティング層を有する自然又は合成ゴム弾性物品を開示している、Laiらの米国特許第6709725号開示のように、非粘着性かつ良好な滑り特性を提供するために、通常は7マイクロメートル以下の、低い摩擦係数を有する合成ポリマー薄層で手袋の表面を積層する。ゴム物品の製造プロセスを開示する、Nileらの米国特許第6352666号開示のように、無粉体の凝固システムを用い、塩素処理をしない無粉体の手袋も製作可能である。本開示において、ラテックス浸漬プロセスに用いる無粉体凝固剤は、クロロプレンゴム、無機金属塩、並びにポリプロピレン・ワックス乳剤及び陽イオン界面活性剤を含んでなる無粉体放出剤、を含んでなる。
【0006】
加えて、手袋の袖口は、使用中に滑り落ちたり、ずり落ちたりしてはならない。こうしたことが起こると、ユーザの手が露出し、薬剤や生体液がユーザを汚染しうる。
【0007】
これらの特性を別としても、特に手袋着用が1−2時間の期間である医用手袋においては、手袋又はその表面がユーザの手に優しいことは必須である。手袋はバリアであるため、皮膚で発生した湿気はユーザの皮膚と手袋のラテックスバリア層の間に閉じ込められる。手袋のラテックスバリア層は、一般用界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム、一般用凝固剤である硝酸カルシウム等の皮膚刺激物、又は加硫促進剤及びラテックス蛋白等のアレルゲン、皮膚刺激やアレルギー反応を生じうる他のゴム処理化学薬品を、ほとんど又は全く含んではならない。健康管理の従事者が自己の手の衛生を維持するために頻繁に手洗いをすることは公知である。これは皮膚からの脂質保護層の除去を引き起こし、そのために、天然の皮膚モイスチャが失われる。手袋が外されると、皮膚で発生した湿気は急速に乾燥し、手は急速に非常に乾性になる。長期間に手袋使用した後、皮膚は過度に乾性になり、亀裂が発生しうる。亀裂の生成により、微生物、アレルゲン及び他の有害物質が体内に入り、皮膚の問題及び全身の健康問題が生じうる。この問題に取り組むために、手袋の製造プロセス中に、手袋内面にモイスチャ及び他の皮膚保護又は皮膚修復剤を塗布することが示唆されてきた。しかしながら、モイスチャの塗布は、手袋の特性において、ゴムバリア層の引張強度の劣化、手袋内面の光沢、又は、手袋内面が互いに固着して手袋の装着を困難にする、手袋内面の遮蔽を含んでなる副作用をもたらしうる。
【0008】
DeFinaの米国特許第5614202号は、多層加湿手袋を開示している。手袋の中間層が、内層の穴を通過してユーザの手に移動可能なローションで満たされる一方で、外層は穴のない材料で作られる。しかしながら、当該特許には処方が与えられていない。
【0009】
Wangらの米国特許第6638587号は、シリコン系複合体のコーティングを有する弾性物品を開示している。ラテックス手袋等の弾性物品は、ケイ素樹脂改質ポリウレタン等のケイ素樹脂改質ポリマー複合体、及び一体化したシリコン樹脂粒子を含んでなる水溶性分散液でコーティングされる。ポリマー及び粒子上においてシリコン樹脂群が相互作用することにより、当該粒子はラテックス材料へより有効に結合する。手袋及び他の物品はミクロ粗面化した皮膚接触面を有し、摩擦係数の減少及び潤滑性の増加を示すので、装着特性が向上する。コーティングが皮膚湿気を保護する効能はない。
【0010】
米国特許第6787490号は、手袋装着輸送システムを開示している。セルロース基材は、少なくとも1層の柔軟で実質的に平面状のシートを含んでなる。この層は、シートの少なくとも1面と会合する装着剤を有する前面及び背面を有する。装着剤は、シートから離れた目標物又は人体に対して、シートから移動可能である。装着剤は、生体適合かつ滅菌可能な組成物であって、湿潤剤、シリコン樹脂、皮膚健康剤、残渣の抗菌基質剤、抗菌剤又はアロエベラ、ビタミンE及び皮膚軟化剤を含んでなる。ゴム・弾性物品ではなくセルロース系材料に対してコーティングが塗布される。
【0011】
Looらの米国特許出願公開第2004/0115250号は、カモミール/アロエベラ処理した手袋を開示している。処理溶液は、手袋内面に塗布するための、水、グリセロール、及び植物エキスを含んでなる。しかしながら、この組成には潤滑剤及び界面活性剤がない。
【0012】
Conleyらの米国特許出願公開第2004/0115379号には、弾性物品の処理方法が開示されている。この方法は、ベヘントリモニウム・メトサルフェート、ジステアリルジモニウムクロリド及びジメチル・ジオクタデシル塩化アンモニウム界面活性剤を含んでなる処理を有する、柔軟な不織布基材を提供することを含んでなる。弾性物品は露出表面を有し、これは弾性物品の外面である。弾性物品は基材と共に揺動装置に投入され、20−80°Cの温度で揺動され、処理物が基材から弾性物品の露出表面へ移動する。次いで弾性物品は反転されて内面が露出し、シリコン潤滑剤により揺動される。弾性物品の外面への界面活性剤コーティングは界面活性剤のみであり、手袋の二重装着を改善しうる。シリコーン樹脂コーティングは油性であり、手袋内面への広がりが不十分で、せいぜい手袋の装着を容易にするにすぎない。水分保持の助けにはならず、じっとりした手袋感触がある。
【0013】
Vistinsの米国特許出願公開第2004/0217506号は、部分的に凝固した弾性マトリクスの処理方法を開示している。この方法は、処理剤を含有する開放セル又は不織材料の転写基材を提供する。処理剤は、皮膚軟化剤、湿潤剤、皮膚コンディショナ、エキス、シリコン樹脂潤滑剤又は皮膚健康剤とを含んでなる。弾性基質は露出表面を有し、転写基材を有する基質を接触させることにより、基質から弾性基質の露出表面へ処理剤が移動する。一部凝固した弾性マトリクスの露出表面へこれらの処理剤を移動すると、加熱、種々の洗浄段階、及び塩素処理又は他の化学処理を含んでなる手袋製造プロセスにより、これらの処理剤はいずれも残存する保証はない。その上、一部凝固した弾性マトリクスを成型器に接触させて基材をはぎ取る動作は、弾性マトリクス上に穴や他の欠陥を生じる場合があり、これらはバリア層として信頼されている手袋には容認できない。
【0014】
Wangらの国際特許出願公開第2004/0126604号及び米国特許出願公開第2004/0126604号には、弾性部品の皮膚接触表面のためのコーティング組成物が開示されている。治療用の湿潤コーティング組成物は熱的に安定であり、70℃に耐え、その後は当該物品を装着中に湿潤な皮膚と接触して液状「ローション」形態に変換して水和する。従って、このコーティングが固有に「加湿する」のではなく、コーティングを活性化するには皮膚の発汗が必要である。モイスチャ組成物は、多価アルコール・モイスチャ、すなわちパントテノール、グリセリン又はソルビトール、及びアルファヒドロキシラクトン、すなわちグルコノラクトンであり、これは水溶性かつ皮膚接触において水和可能である。この組成物は、更に水溶性のフィルム形成ポリマー、すなわちキトサンを含む。湿った手又は濡れた手での装着のために、1%塩化セチルピリジニウム(CPC)を混合物に添加する。水不溶性皮膚軟化剤は、この組成物にない。
【0015】
米国特許出願公開第2004/0241201号は、米国特許出願公開第2004/0126604号の継続であり、水和促進剤及び水溶性モイスチャ、又は水溶性モイスチャ及び水溶性フィルム形成ポリマー、又は水溶性モイスチャ及び角質除去剤、又は水溶性モイスチャ及び微小孔構造粒子を含んでなるコーティング組成物を開示している。しかしながら、当該処方には、装着を容易にする潤滑剤及びコーティングの拡張を促進する被覆モイスチャはない。
【0016】
ルーらの国際特許出願公開第WO 2004/060338号は、局所的スキンケア製剤(TSF:Topical Sik−care Formulation)及びTSFを用いて生産される浸漬弾性ゴム重合体物品を開示している。TSFは、ビタミンA、B、E、アルファリポ酸、ユーカリノキ、ホホバ油及び皮膚軟化クリーム等の担体の有効量を含んでなり、人間の皮膚を保護して落ち着かせ、浸漬弾性ゴム重合体物品の表面と接触する。この油ベースの処方は、最後の洗浄ステップ後に浸漬弾性物品に塗布してもよく、水を蒸発するために乾燥し、実質的に均一なのコーティングを形成してもよい。このコーティングは、ゴム手袋及びコンドーム等の浸漬弾性ゴムポリマー物品用であり、当該物品へのコーティングにより加湿、保護特性及び防腐特性等の保護性が追加され、並びに安心感及び清涼感により快適性が改善するという利益をユーザに提供しうる。非滅菌のTSF塗布浸漬弾性ゴムポリマー物品は、類似の未塗布浸漬弾性ゴムポリマー物品より細菌数カウントが低いことが示された。このコーティングは浸漬弾性ゴムポリマー物品の物理的性質を損なわないと主張されている。当該組成物は10−50%の皮膚軟化クリームを含有し、これは手袋表面上へ塗布するための担体である。提案された処方には皮膚軟化剤が過剰に高レベルで含まれる欠点があり、これは通常は油である。油を多く含む混合物に、天然ゴム及びポリイソプレン手袋を浸漬すると、手袋を膨潤させ、物理的性質を劣化しうる。
【0017】
Johnsonらの国際特許出願公開第W0 2004/060432号及び米国特許出願公開第2004/0122382号は、有益な表面コーティングを有する弾性物品を開示している。このコーティングは、手袋表面から分離し、皮膚へ移動し、皮膚で発生した湿気により乳化する。このコーティングは担体を含有しており、これは自己乳化ワックス、及び四級アンモニウム化合物であるベヘントリモニウム・メトサルフェートである。このコーティングは、皮膚軟化剤、湿潤剤、酸化防止剤、中和剤、キレート剤、反刺激剤、ビタミン、皮膚コンディショナ、アルファ−ヒドロキシ酸、モイスチャ、有益な植物剤及びエキスからなる群から選ばれる添加物も含有する。更に、前記担体は、ジメチコーン・シリコーンポリマーを含んでもよい。しかしながら、このシリコーンポリマーは湿気に不溶であり、担体の自己乳化に勝ってしまう。担体が乳化するにつれて、このコーティングは皮膚で発生した湿気に依存して担体を分離し、皮膚上に有益薬剤を分散する。この組成には、活性のある潤滑剤又は界面活性剤がなく、結果として、皮膚表面へのコーティングの分配は劣っている。
【0018】
越智らの特開2004−190164号公報は、外部からの刺激から手を保護するか、又は手袋自体からの刺激を低減するだけでなく、装着者の手の皮膚を積極的に加湿する効果を有する新規な手袋を開示している。この手袋は、ゴム又は樹脂で形成され、少なくともその内部表面に尿素を保持する。好適には尿素は手袋自体に含まれ、より好適には尿素含有量は0.1−10重量%である。しかしながら、この処方には、コーティングの拡張を促進するための被覆モイスチャ又は界面活性、及び手袋の装着を容易にする潤滑剤がない。
【0019】
Williamsの国際特許出願公開第W02005/036996号及び米国特許出願公開第2005/0081278号は、ローションコーティングを有するポリマー手袋及び同一物の製造方法を開示している。この使い捨て手袋は、フィルムを生成するポリウレタン化合物、及びワセリン、セテアリルアルコール、セチルアルコール、安息香酸C12−15アルキルエステル、シクロメチコン又はセテアレス20を含む油ベースの皮膚軟化剤と共に、装着者の皮膚と接触するための内面を有する、ポリマー材料を含んでなる。この手袋の製造方法も開示される。これらの石油及び油ベースの皮膚軟化剤は、水溶性コーティング中では容易に分散せず、天然及び合成ゴム物品を膨潤するので、引張強度及び引っ張り特性の悪化を生じる。加えて、この処方には水溶性モイスチャがない。更にまた、当該処方において、フィルムを生成するポリウレタンを用いると、オフラインで揺動及び乾燥法によるコーティング塗布が困難にする。これは、ポリウレタンは乾くと乾燥機に貼り付き、後で乾燥機の清掃が困難になるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
手が接触する手袋表面をコートし、乾式装着、湿式装着、及び二重手袋を容易にし、一方で、外科用道具を有効に取り扱えるよう適切な手袋の把手特性を提供する、手に優しいコーティングのための技術がなお求められている。コーティング組成物には、手袋を外した時に皮膚で発生した湿気の急速な乾燥を妨げ、皮膚の割れを防いで手に優しいコーティング層を提供することが望まれる。コーティング組成物は、ゴム弾性物品を損傷せず、その引張及び伸展特性を弱めないことが望まれる。本発明の目的は、こうしたコーティングを含んでなる手袋及びこのような組成物及び手袋の製造方法と合わせて、このようなコーティングを提供することである。本発明のこれらの並びに他の目的及び利点は、さらなる発明の特徴と同様に、本願明細書の詳細な記載から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、袖口領域及び内部手袋領域を有する、手に優しいゴム手袋物品を提供する。前記手袋は、少なくとも1の水溶性湿性モイスチャ、少なくとも1の水不溶性被覆モイスチャ、少なくとも1の水溶性潤滑剤及び少なくとも1の水溶性界面活性剤を含む、乳化した手に優しい混合物を乾式コートすることを含んでなる。水不溶性被覆モイスチャは、前記混合物中で、微細かつ実質的に均一に分散される。乾式コートは水不溶性被覆モイスチャを保持し、手に優しいコーティングは皮膚で発生した湿気で活性化して着用者の皮膚に移動する。手袋物品は、適宜、幅が約0.5cm−約10cmの布地粘着性の袖口領域、及び/又は約10nmから約500nmまでの表面粗さを有してテクスチャ形成される統合的な表面を含む内部手袋領域を備える。
【0022】
本発明は、更に、乳化した手に優しい混合物の製造方法を提供する。この方法は、以下を含んでなる。
a.1以上の水溶性湿性モイスチャ、1以上の水溶性潤滑剤、1以上の水溶性界面活性剤及び、適宜1以上の水溶性抗菌剤を水中に溶解するステップ;
b.生成した溶液に1以上の水不溶性被覆モイスチャ及び、適宜1以上の水不溶性抗菌剤を添加するステップ;並びに、
c.前記混合物を、1以上の水不溶性被覆モイスチャを微細に分散させるコロイドミルに通過させ、乳化された手に優しい混合物を生成するステップ。
【0023】
更にまた、袖口領域及び統合された手袋領域を含んでなる手に優しいゴム手袋物品の生産方法を提供する。この方法は、以下を含んでなる。
a.予熱した成型器を、無機金属塩、炭酸カルシウム粉末、界面活性剤及び増粘剤を含む水溶性凝固剤に浸漬するステップ;
b.前記成型器をゴムラテックスに浸漬し、ゲル化したゴム層を形成するステップ;
c.熱湯中にて前記成型器上に手袋を浸出するステップ;
d.前記成型器上の前記手袋を、ポリウレタン、ワックス分散液、及び硬度変性剤を含んでなる水溶性分散液に浸漬し、滑らかな裏打ちポリマーを生成するステップ;
e.熱湯中にて前記成型器上に前記手袋を浸出するステップ;
f.前記成型器上の前記ゴム手袋を加温して硬化するステップ;
g.熱湯中にて前記成型器上の前記ゴム手袋を浸出するステップ;
h.乾燥させて前記成型器から前記ゴム手袋をはぎとるステップ;
i.前記手袋を水ですすいで炭酸カルシウム粉末を除去するステップ;
j.前記手袋を塩素水で処理するステップ;
k.前記手袋を水ですすぐステップ;
l.前記手袋を、少なくとも1の水溶性モイスチャ、少なくとも1の水不溶性被覆モイスチャ、少なくとも1の潤滑剤、及び少なくとも1の界面活性剤を含んでなる乳化した手に優しい混合物で揺動するステップ;
m.揺動乾燥機中にて前記手袋を予備乾燥するステップ;
n.前記揺動乾燥機中にて加熱せずに前記手袋に水を噴霧するステップ;並びに、
o.前記手袋を加熱して完全に乾燥するステップ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、袖口領域及び統合された手袋領域を有する手に優しいゴム手袋物品を提供する。「手に優しい」とは、非刺激性、非アレルギー性、非擦過性、非腐食性で、皮膚、粘膜及び血液と生物適合性のあることを指す。手袋は、産業用又は医用でありうる。医用手袋は、検査手袋又は外科用手袋でありうる。手袋は乳化された手に優しい混合物の乾式コーティングを含み、これは少なくとも1の水溶性湿性モイスチャ、少なくとも1の水不溶性被覆モイスチャ、少なくとも1の水溶性潤滑剤及び少なくとも1の水溶性界面活性剤を含んでなる。手に優しい混合物の成分は、可溶であるか、又は水溶性媒質中に均一に分散、懸濁、又は乳化されうる。水不溶性被覆モイスチャは、混合物中で、微細かつ実質的に均一に分散する。乾式コーティングは、均一分散を維持している水不溶性被覆モイスチャを保持し、手に優しいコーティングは皮膚から発生する湿気で活性化して装着者の皮膚に移動する。更に手袋物品は、適宜、幅が約0.5cmから約10cmまでの範囲の布地粘着性袖口領域、及び/又は、約10nmから約500nmまでの表面粗さを有してテクスチャ形成される内部表面を含む内部手袋領域を含んでなる。手に優しい混合物は、乳化された約0.05マイクロメートル(μm)から約5μmの範囲の微粒子を生成するコロイドミル中で乳化される。
【0025】
水溶性湿性モイスチャは、任意の可溶湿性モイスチャでありうる。湿性モイスチャは、角質層を透過し、水を引き寄せて保持する助けになる。実施例としては、グリセロール、乳酸、乳酸誘導体、尿素及び前述の2つ以上の組み合わせが挙げられるが、限定しない。好適には、水溶性湿性モイスチャは、グリセロール(例えば、グリセリンUSP 99.5%(Behn Meyer、UEP Industrial Park、Subang Jaya、Selangor、マレーシア))である。グリセロールは、好適には約0.5−約10重量%、より好適には約3−約7重量%、手に優しい混合物に存在する。あるいは、水溶性湿性モイスチャは、乳酸ナトリウム(Purac Co.、Suite 18、Level 22、Tower 2、MNI Twins 11、Jalan Pinang 504 50、クアラルンプール、マレーシア)、乳酸カリウム乳酸、乳酸亜鉛、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム、乳酸アンモニウム又は乳酸であり、好適には手に優しい混合物に約0.5−約5重量%の範囲の全量で存在する。あるいは、水溶性湿性モイスチャは尿素(Behn Meyer、UEP Industrial Park、Subang Jaya、Selangor、マレーシア)であり、好適には手に優しい混合物に約0.5−約5重量%の範囲の量で存在する。
【0026】
水不溶性被覆モイスチャは、任意の適切な被覆モイスチャでありうる。被覆モイスチャは保護バリアを形成し、皮膚を乾燥から防ぐ。これは手袋の装着性及び二重手袋も改善する。水不溶性被覆モイスチャは、天然又は合成ゴムを膨潤により分解してはならず、自然又は合成ラテックスの引張及び伸展特性に悪影響を与えてはならない。実施例としては、ポリジメチルシロキサン(ジメチコーン)、エルカ酸オレイル及びそれらの組み合わせが挙げられるが、限定しない。好適には、水不溶性被覆モイスチャは、ポリジメチルシロキサン(DC2−1352、DC−HMW2220及びDC2−1029(Dow Coming Co.、Midland、米国ミシガン州))である。好適には、ポリジメチルシロキサンは、約0.3−約2.0重量%の範囲の量で手に優しい混合物に存在する。あるいは、水不溶性被覆モイスチャは、エルカ酸オレイル(例えば、Cetiol J−600(Cognis Co. 5051 Estecreek Drive、Cincinnati、米国オハイオ州))であり、これは約0.5−約10重量%の範囲の量で手に優しい混合物に存在する。
【0027】
潤滑剤は、任意の適切な滑沢剤でありうる。潤滑剤は、滑らかさ、柔らかさ及び湿気をもたらし、乾いた手での装着及び二重手袋を改善する。実施例としては、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールの共重合体、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、限定しない。好適には、潤滑剤はポリエチレンオキシド(例えばPolyox WSR N60K(Amerchol Co.、Edison、米国ニュージャージー州))であり、これは約0.01−約3重量%の範囲の量で手に優しい混合物に存在する。あるいは、潤滑剤はポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールの共重合体(例えばUcon 75H450(Dow))であり、これは約0.5−約10重量%の範囲の量で手に優しい混合物に存在する。
【0028】
水溶性界面活性剤は、任意の適切な界面活性剤でありうる。水溶性界面活性剤は、水不溶性被覆モイスチャが十分に分散するよう、手に優しい混合物の乳化を安定化する。界面活性剤は装着及び二重手袋も改善する。実施例は、ポリオキシエチレン20(ソルビタンモノオレアート)(例えば、Ecoteric T80 (Huntsman、500 Huntsman Way、Salt Lake City、米国ユタ州))、ノニルフェノール・エトキシレート及びこれらの組み合わせを挙げられるが、限定しない好適には、界面活性剤は、ノニルフェノール・エトキシレート(例えばTeric N100(Huntsman、500 Huntsman Way、Salt Lake City、米国ユタ州))である。ノニルフェノール・エトキシレートは、好適には約0.5−約10重量%の範囲の量で手に優しい混合物に存在する。あるいは、界面活性剤はポリオキシエチレン20(ソルビタンモノオレアート)であり、これは好適には約0.5−約10重量%の範囲の量で手に優しい混合物に存在する。
【0029】
手に優しいコーティングは、更に抗菌剤を含みうる。水性の乳液中に可溶又は分散可能である限り、任意の適切な抗菌剤を用いうる。適切な抗菌剤の実施例は、クロロへキシジン又はその塩、ビグアニド又はその塩、塩化フェノール、酢酸ニトロフェニル、フェニルヒドラジン、ポリ臭化サリチルアニリド、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル及びクロロヘキシジンジグルコン酸塩を挙げられるが限定しない。手に優しいコーティングを生成するプロセスはコロイド状のミリングを必要とするので、水溶性及び水不溶性抗菌剤の両方とも、手に優しいコーティングに組み込むことができる。好適には、抗菌剤は、手に優しい混合物の重量の約5%までの量で存在する。
【0030】
上記からみて、手に優しいコーティングは、好ましくは約0.01−約0.10N/mの範囲の表面張力を有する。加えて、手に優しいコーティングは、好適には、約5−約70度の範囲で表面との接触角を有する。手に優しいコーティングという言葉は、手袋に塗布され乾燥された後の、手に優しい混合物を指すために用いる。
【0031】
ゴムは、グアユーレ天然ゴム又はパラゴムノキ天然ゴム等の天然ゴム、又は合成ポリイソプレンゴム、ポリクロロプレン、クロロプレン及びジクロロブタジエンの共重合体、ニトリルブタジエンゴム、又は合成ポリイソプレン及びニトリルブタジエンゴムのブレンド等の合成ゴムでありうる。他の実施例には、ネオプレン・ラテックス、ポリウレタン・ラテックス又は溶液、スチレン−イソプレン−スチレンの共重合体溶液、又はこれらのブレンドを挙げられる。
【0032】
本発明は、更に、乳化した手に優しい混合物の製造方法を提供する。この方法は、以下を含んでなる。
a.1以上の水溶性湿性モイスチャ、1以上の水溶性潤滑剤、1以上の水溶性界面活性剤及び、適宜1以上の水溶性抗菌剤を水中に溶解するステップ;
b.生成した溶液に1以上の水不溶性被覆モイスチャ及び、適宜1以上の水不溶性抗菌剤を添加するステップ;並びに、
c.前記混合物を、1以上の水不溶性被覆モイスチャを微細に分散させるコロイドミルに通過させ、乳化された手に優しい混合物を生成するステップ。前記混合物は、10000rpmでSilversonミキサー(Silverson Machines、355 Chestnut St、East Longmeadow、米国マサチューセッツ州)、Charlotteミル(Chemi Colloid Laboratories Inc.、55 Herricks Road、Garden City Park、米国ニューヨーク州)又はWaukeshaミル(Waukesha Cherry Burrell、611 Sugar Creek Rd.、Delavan、米国ウィスコンシン州)等のコロイドミル中で高速剪断して乳化する。従来のミルにおいては、ロータ及びステータは、中央部がより有利な状態となる約0.51−2.03mm(約0.020−約0.080インチ)のクリアランスに調製される。1以上の水溶性被覆モイスチャ、及び、損じする場合には1以上の水不溶性抗菌剤は、直径5マイクロメートル(μm)−約0.05マイクロメートル(μm)の平均粒径に分散される。
【0033】
更に、袖口領域及び統合された手袋領域を含むゴム手袋物品の製造方法を提供する。この方法は、以下を含んでなる。
a.予熱した成型器を、無機金属塩、炭酸カルシウム粉末、界面活性剤及び増粘剤を含む水溶性凝固剤に浸漬するステップ;
b.前記成型器をゴムラテックスに浸漬し、ゲル化したゴム層を形成するステップ;
c.熱湯中にて前記成型器上に手袋を浸出するステップ;
d.前記成型器上の前記手袋を、ポリウレタン、ワックス分散液、及び硬度変性剤を含んでなる水溶性分散液に浸漬し、滑らかな裏打ちポリマーを生成するステップ;
e.熱湯中にて前記成型器上に前記手袋を浸出するステップ;
f.前記成型器上の前記ゴム手袋を加温して硬化するステップ;
g.熱湯中にて前記成型器上の前記ゴム手袋を浸出するステップ;
h.乾燥させて前記成型器から前記ゴム手袋をはぎとるステップ;
i.前記手袋を水ですすいで炭酸カルシウム粉末を除去するステップ;
j.前記手袋を塩素水で処理するステップ;
k.前記手袋を水ですすぐステップ;
l.前記手袋を、少なくとも1の水溶性モイスチャ、少なくとも1の水不溶性被覆モイスチャ、少なくとも1の潤滑剤、及び少なくとも1の界面活性剤を含んでなる乳化した手に優しい混合物で揺動するステップ;
m.揺動乾燥機中にて前記手袋を予備乾燥するステップ;
n.前記揺動乾燥機中にて加熱せずに前記手袋に水を噴霧するステップ;並びに、
o.前記手袋を加熱して完全に乾燥するステップ。
【0034】
好適には、ステップ「d」において、袖口領域が布地粘着性となるように、手袋の袖口領域から約0.5cmから約10cmの範囲の深さに手袋を浸漬するこの方法は、更に、手袋をペア又はばら荷で包装することを含みうる。所望であれば、この方法は、また更に、包装した手袋をガンマ放射線に曝露することにより、包装した手袋を滅菌することを含みうる。このプロセスは、2005年12月1日に出願の米国特許出願公開第11/291237号に記載され、参照により本願明細書に取り込まれる。
【0035】
手袋は、ラテックス手袋製品が硬化され、最後に水ですすがれた後に、乳化した手に優しい混合物でコートされる。手に優しい混合物は、手に優しい混合物中に存在する界面活性剤が与える拡張効果により、手袋の内面及び外面上に均一に分散する。手に優しい混合物が乾燥する時には、たとえコーティングが非常に薄い場合で、水溶性コーティング中の非常に微細かつ実質的に均一な水不溶性被覆モイスチャを残して、手に優しい混合物中の水が蒸発する。コーティングの水溶性部分は、1以上の水溶性湿潤剤、1以上の水溶性潤滑剤及び1以上の水溶性界面活性剤及び、適宜、水溶性及び/又は水不溶性抗菌剤を含んでなる。最終ステップでは、手袋の外面は水スプレーで洗浄されるか、又は、手袋がホルダーに装着されて外面を水すすぎ又はスプレーに供し、手袋の皮膚非接触面上のコーティングが除去され、その一方で、手に優しい混合物をコートした手袋内部表面は水すすぎ又はスプレーから遮断され、次いで手袋乾燥を行う。手に優しい混合物中に分散した水不溶性被覆モイスチャは、手に優しい混合物に用いる濃度の天然及び合成ゴム・エラストマの引張及び伸展特性を破壊しない。更に、微細かつ実質的に均一に分散した水不溶性被覆モイスチャの量は、手に優しい混合物の全量と比較して少ないので、ラテックス弾性体表面への水不溶性被覆モイスチャの露出量が制限される。その結果、手袋の貯蔵及び輸送期間中の、手に優しいコーティングとゴム手袋表面との長期の接触は、機械的性質、とりわけ水溶性引張強度及びゴムの伸展性を変質しない。
【0036】
ユーザが手袋を装着すると、皮膚接触面上に手に優しいコーティングは、潤滑剤の存在により乾いた手での手袋装着を容易にする。更に、一般的に水溶性湿潤剤は、乾いた手での装着特性を助ける少量の湿気を保持し、水溶性界面活性剤と共に、皮膚上にコーティングを分散することにより、滑らかで快適な感触をもたらす。手に優しいコーティングは、皮膚で発生した湿気によって非常に急速に水和し、水不溶性被覆モイスチャの微細かつ実質的に均一の分散を含んでいる手に優しいコーティングの水和した水溶性部分は、手に優しいコーティング中の水溶性界面活性剤の存在に助けられて、ユーザの皮膚上に有効に分散する。手袋が使用後に外されると、手に優しいコーティングにより皮膚に供給され、皮膚で発生する湿気の急速な蒸発を妨げる水不溶性被覆モイスチャの、微細かつ実質的に均一の分散の存在により、湿気損失及び皮膚のひび割れが防がれる。この段階で、水不溶性被覆モイスチャは、微生物を有する皮膚のひび割れによる感染へのバリアとして作用し、天然ゴムの攻撃的なタンパク質及び/又は製造期間中における残存化学物質に対するアレルギー反応を防止する。
【0037】
手に優しいコーティングは、適切に塗布されれば、固有には非粘着性かつ非遮蔽性である。従って、従来の塩素処理は不要であり、環境上の好ましくないステップを回避できる。手に優しいコーティングを有する手袋は、より淡い色を有し、手に優しいコーティングのない手袋と比較して、より柔らかい感触をユーザに提供する。加えて、手に優しいコーティングを有する手袋は、乾いた手での装着、湿った手での装着、濡れた手での装着、及び二重手袋の特性が非常により良好である。使用中、ユーザは手の疲労感をより少なく経験するであろう。手袋をユーザの手から外した後は、水和及び摩擦動作により、手袋から手へ、手に優しいコーティングが移動して、皮膚の湿潤感、滑らかで柔軟かつ穏和な感触を生じる。
【0038】
手に優しい手袋物品は、布地粘着性の袖口領域を含み、これは幅が約0.5cm−約10cmの範囲でありうる。布地粘着性の袖口が、使用の間に手袋のすべり又はずり落ちを防止する一方、内面又は皮膚接触表面の手に優しいコーティングはユーザの皮膚を加湿する。布地粘着性の袖口の製造方法は、通常の方法で浸漬したラテックス物品を形成するステップ、及び、ポリウレタン又は合成ワックス等のフィルム生成ポリマーの水溶性分散液中において粘着性を要しない手袋部分を浸漬するステップを含んでなる。この水溶性分散液に浸漬しない手袋部分は、ラテックス製品の自然な粘着性を保持し、袖口のずり落ち抵抗を提供する。より詳細には、この方法は、予熱した手袋成型器を、水、無機金属塩、少なくとも1の界面活性剤、増粘剤、及び炭酸カルシウムを含んでなる水溶性凝固剤中に浸漬するステップ;引上げ及び乾燥ステップ;手袋成型器を、ペルオキシド、硫黄、促進剤、活性剤、抗酸化剤及び充填剤から選択される物資を前配合した、天然ゴム、合成ラテックス又はそれらの混合物に浸漬してゲル化されたゴム層を形成するステップ;袖口端から約0.5cm−約10cmのレベルに、フィルム形成ポリマー又は共重合体、合成ワックス及び硬度変性剤を浸漬して、幅が約0.5cm−約10cmの範囲の布地粘着性の袖口領域を生成し、成型器上の手袋を熱湯で浸出するステップ;ゴム手袋を加熱して硬化及び乾燥させ、成型器上の手袋を熱湯で浸出するステップ;引上げ及び乾燥ステップ;手袋を成型器からはぎ取るステップ;手袋を水ですすいで炭酸カルシウムを除去するステップ;塩素水で揺動して手袋を塩素化するステップ;水で手袋をすすぐステップ;適宜ソーダ灰で中和するステップ;上記記載のような、少なくとも1の水溶性湿性モイスチャ、少なくとも1の水不溶性被覆モイスチャ、少なくとも1の水溶性界面活性剤及び少なくとも1の水溶性潤滑剤を含んでなる手に優しい混合物に、手袋を浸漬するステップ;回転式乾燥器で手袋を前乾燥するステップ;手袋に水を噴霧して、手袋外面上の手に優しい混合物を除去するか、又は適宜手袋をホルダに装着して噴霧するか、又は手袋を水ですすいで手に優しい混合物を手袋の外面から除去するステップ;揺動乾燥機中で手袋を完全に乾燥し、適宜、手袋をペア又はばら荷で包装し、包装した手袋を適宜滅菌するステップ。
【0039】
手に優しい手袋物品は、約10nm−約500nmの範囲でテクスチャ形成されうる表面を有する、統合された手袋領域を含むことができる。手に優しい混合物はテクスチャ表面の谷間に入り、この谷間は手に優しい混合物の貯蔵場所として作用するようになる。粗い表面の凹凸は、隣接面との手袋内面の接触を制限し、これにより手袋の遮蔽を防止する。凹凸は手袋装着時の摩擦も低減し、乾いた及び濡れた手での優れた装着特性、並びに二重装着特性を提供する。
【0040】
テクスチャ形成表面を生成する方法の1つは、Laiらの米国特許第6709725号に開示のように、成型器上の手袋を、ポリウレタン又はアクリルポリマー及び共重合体等の、フィルム形成ポリマー又は共重合体を含む水溶性分散液;高密度ポリエチレン・ワックス又は酸化ポリエチレンワックス等の合成ワックス;及びメラミン・ホルムアルデヒド樹脂、ポリ(2−ヒドロキシルエチルメタクリレート)等の硬度変性剤に浸漬することであり、この特許は、天然又は合成ゴム、並びにフィルム生成ポリマー及びワックスのブレンドを含む少なくとも一層のコーティングを有する弾性物品を開示している。
【0041】
本発明によれば、手袋の表面上へ手に優しい混合物を塗布する効率は、種々の因子に依存する。これらは手に優しい混合物の表面張力を含み、これは親水性及び疎水性構成成分の比率及び手袋の内部表面粗さに支配される。水溶性構成成分は親水性である一方、水不溶性構成成分は疎水性である。
【0042】
手に優しい混合物の表面張力があまりに高い場合、すなわち、疎水性構成成分があまりに多い時には、手袋面は光沢に乏しく、手袋面上に塗布される手に優しい混合物はより少なくなる。表面張力が高すぎる手に優しい混合物が手袋面に接触すると、接触角は180度に近く、厚い、非接触の液滴及び低密度コーティングに至る。高い疎水性の構成成分を含んでいるコーティングを有する手袋は、ユーザに油のようなじっとりした感触を与える。一方、手に優しい混合物の表面張力があまりに低い場合、すなわち親水性成分があまりに多い時は、手混合物による袋面の光沢は良好すぎ、そのため、手に優しい混合物がより多く表面に塗布される。この表面張力の低さは、接触角が0−50度の範囲という結果になり、手に優しいコーティング混合物のコーティングは薄くなる。加えて、親水性成分が多すぎるコーティングを有する手袋は、遮蔽、すなわち内部表面が互いに粘着する傾向がある。加えて、それはユーザに粘着性の感触を与え、手袋は容易には装着できない。本発明の手に優しい混合物の好適な表面張力は、約0.01−約0.08N/mの範囲である。ラテックス表面と手に優しい混合物の好適な接触角は、約5−約70度である。
【0043】
手袋の内部表面にテクスチャ形成すると、手に優しいコーティングの油っこい感触を与えずに、より多量の手に優しい混合物を塗布できる。また、微小な凹凸面の突起が、接触しようとする2面に塗布された手に優しいコーティングの間の完全な接触を防止するので、手袋の内部表面は遮蔽も相互の粘着もしない。加えて、手に優しいコーティングのより多くの量が、微小凹凸面の突起の間にある谷間に貯蔵され利用可能となり、皮膚で発生した湿気により湿潤されて、皮膚表面上に塗布される。
【0044】
皮膚接触する内部表面上の手に優しいコーティングの塗布に適しているゴム手袋は、米国特許第6075081号、米国特許第6347409号及び米国特許第6352666号に開示のように、炭酸カルシウム又は他の粉末凝固剤系、又は無粉末系に浸漬し、次いで硬化する、手袋成型器を用いる従来法により製作しうる。無粉末凝固系を用いて形成する手袋においては、手に優しい混合物はオンラインで塗布される。すなわち、手袋は硬化処理後にまだ成型器にある。粉末凝固剤を用いて形成される手袋においては、成型器からはぎ取った後に、手袋を水ですすいだ後、塩素水で揺動し、適宜ソーダ灰で中和し、水ですすぐ。次いで、手に優しい混合物の中で揺動し、手袋の内側及び外側の両方を手に優しい混合物でコートする手に優しいコーティングを有する手袋は、揺動乾燥中で昇温し、好適には50−80℃で10−60分間予備乾燥する。手に優しいコーティングは乾燥して粘着性になり、手袋の内側及び外側の両面にコーとされる。手袋を、適宜ホルダに装着し、外部表面に水をスプレーしてすすぎ、外部表面の手に優しいコーティングを除去する一方、内部表面のコーティングは水すすぎから保護されるので、無処置のままとなる。別の実施形態においては、手袋は揺動乾燥機中で揺動され、この場合は手袋の外部表面に水をスプレーし、内部表面上のコーティングはほぼ水スプレーを遮られるので、大部分は無処置のままとなる。次いで、再び揺動乾燥機中にて、好適には50−80℃で30−120分間、手袋を乾燥する。次いで、手袋は包装され、ガンマ線照射により滅菌されうる。
【実施例】
【0045】
表1に要約の、以下の実施例は、更に本発明を例示するものであり、いかなる形においても本発明の範囲を制限する意図はない。実施例において用いる記号「%」は、特に明記しない限り「重量%」を指す。以下の実施例中、装着性、二重手袋、遮蔽性、及び光沢における手袋の評価に用いる評点は表2に記載し、柔らかさ、滑らかさ、及び湿潤感は表3に記載する。
【0046】
表1:(実施例(1)−(4)の概要
【表1】

【0047】
表2:手袋の装着性、二重手袋、遮蔽性、及び手袋の光沢の評価
【表2】

【0048】
表3:手袋の柔軟性、手触りの滑らかさ及び湿潤感
【表3】

【0049】
表4:手に優しいコーティング混合物
【表4】

【0050】
(実施例1:皮膚接触面及び布地粘着性の袖口領域に手に優しいコーティングを有する手袋の調製(予備乾燥あり))
【0051】
[ステップ1]外科用手袋成型器を、20%硝酸カルシウム、5%炭酸カルシウム粉末、0.1%Teric 340(Huntsman、500 Huntsman Way、Salt Lake City、米国ユタ州)及び0.2%セルサイズQP30000(Union Carbide、Danbury、米国コネティカット州)を含んでなる水溶性凝固剤に浸漬し、成型器上で乾燥した。
【0052】
[ステップ2]成型器上の手袋を、35%の全固形分を有する、前加硫した天然ゴムラテックス中に浸漬し、ゲル化ゴム層を形成した。
【0053】
[ステップ3]成型器上の手袋を、5分間、60°Cで熱湯に浸出した。
【0054】
[ステップ4]手袋を、10%Beetafin PU L9009(BIP(Oldbury)Limited、Tat Bank Road、Oldbury、West Midlands、イギリス)、3%アクアマット213(BYK−Chemie、Wesel、ドイツ)及び1%Cymel373(Cytec Industries、1405 Buffalo Street、Olean、米国ニューヨーク州)を含む水溶性分散液に、ラテックスフィルムの袖口端から3cmのレベルまで浸漬して、袖口端下方3cmから広がるポリマーライニングを形成した。水溶性分散液でコートされていない手袋の部分は、布地粘着性の袖口領域を形成するラテックスの自然な粘着性を保持する。
【0055】
[ステップ5]成型器上の手袋を、オーブン中、130℃で10分加熱硬化した。
【0056】
[ステップ6]成型器上の手袋を、80°C熱湯中に30秒間浸出し、乾燥し、成型器から剥離した。
【0057】
[ステップ7]手袋を水ですすぎ、炭酸カルシウム粉末を除去した。
【0058】
[ステップ8]手袋外面を0.5g/L塩素水で10秒間処理した。
【0059】
[ステップ9]次いで手袋を水ですすいだ。
【0060】
[ステップ10]表4に示す、Silversonミキサーを10000rpmで動作させて30分間混合物を乳化し、平均粒径を直径0.3マイクロメートル(μm)以下に調製した、手に優しいコーティング混合物で手袋を揺動した。30分間、手に優しい混合物と共に揺動した後、混合物を排出した。
【0061】
[ステップ11]次いで、揺動乾燥機中、70°Cで30分間、手袋を前乾燥した。
【0062】
[ステップ12]揺動乾燥機中の手袋上に、加熱せずに水を6分間噴霧して、手袋外面から手に優しいコーティングを除去した。
【0063】
[ステップ13]70℃で80分間、完全に乾燥するまで手袋を乾燥した。
【0064】
[ステップ14]手袋を包装し、ガンマ線照射により滅菌した。
【0065】
(実施例2:皮膚接触面及び布地粘着性の袖口領域上に手に優しいコーティングを有する手袋の調製(予備乾燥なし))
ステップ11を除き、実施例1における全てのステップを反復した。
【0066】
(実施例3:布地粘着性の袖口領域を有することを除いて、皮膚接触面上には手に優しいコーティングがない手袋の調製)
ステップ10−12の省略を除き、実施例1における全ステップを反復した。
【0067】
(実施例4:布地粘着性の袖口領域をもたず、皮膚接触面上に手に優しいコーティングを有する手袋の調製(予備乾燥なし))
ステップ4において、10%Beetafia PU L9009、3%アクアマット213及び1%Cymel373を含有する水溶性分散液に手袋を袖口のふちまで浸漬する点を除き、実施例1の全ステップを反復した。手袋の内部表面には、布地粘着性の袖口領域を除いて、ポリマーを完全に塗布した。
【0068】
(実施例5:乾いた手での装着特性)
実施例(l)−(3)の手袋を5人のテスターが乾いた手で装着し、各テスターは、表2に示すように手袋装着の容易さに係る自己評価を行った。表5に、結果を示す。
【0069】
表5:乾いた手での装着特性
【表5】

【0070】
結果は、手に優しいコーティングのない手袋と比較すると、手に優しいコーティングを手袋の皮膚接触表面へ塗布することが、乾いた手での手袋の装着特性を大幅に向上させたことを示している。予備乾燥ステップのない場合に、乾いた手での手袋装着特性は影響を受けなかった。
【0071】
(実施例6:湿った手での装着特性評価)
実施例(1)−(3)の手袋を5人のテスターに与えて湿った手で装着させ、各テスターは、表2に分類するように湿った手での手袋装着の容易さに係る自己評価を行った。表6に、結果を示す。
【0072】
表6:湿った手での装着特性
【表6】

【0073】
手に優しいコーティングを有する手袋が、手に優しいコーティングのない手袋と比較して、湿った手での装着特性を改善した結果を示す。更にまた、予備乾燥は、湿った手での装着特性の更なる改善の役に立った。
【0074】
(実施例7:二重手袋の特性評価)
実施例(1)−(3)の、同一寸法の同じ手袋2個を5人のテスターに与え、一方を他方の上に重ね、各テスターは、表2に分類するように二重手袋の把手容易性に係る自己評価を行った表7に、結果を示す。
【0075】
表7:二重手袋の特性
【表7】

【0076】
手に優しいコーティングを有する手袋が、手に優しいコーティングのない手袋と比較して、二重手袋の把手容易特性を改善した結果を示す。更にまた、予備乾燥は、二重手袋の把手容易特性の更なる改善の役に立った。
【0077】
(実施例8:袖部ひっぱり力の評価)
袖口ずり落ち抵抗を測定するために、まず、ヒトの腕の形状を有する成型器に、一般外科医用の使い捨てガウンの袖を付けた。次いで、袖口がガウンの袖の一部をカバーする状態で、手袋を腕型の成型器に付けた。次いで、手袋をガウンの袖から定速で引いて剥離した。ガウンの袖からの手袋の剥離に要する力を、袖部引っぱり力として測定した。表8に、実施例(1)−(4)の手袋について、この袖部引っぱり力を試験した結果をまとめて示す。
【0078】
表8:袖部引っぱり力
【表8】

【0079】
表8の結果は、実施例(1)−(3)において布地粘着性の袖口領域が存在することにより、袖部引っぱり力によって示されるように、手袋の袖口ずり落ち抵抗は布地粘着性の袖口領域のないものよりも高いことを示す。手に優しいコーティングが存在する場合も、袖口ずり落ち抵抗は影響を受けなかった。
【0080】
(実施例9:皮膚湿潤感の評価)
コルネオメータと呼ばれる計測器は、手の皮膚含水量を定量化することができる。手に優しいコーティングを有する手袋の皮膚加湿作用を評価するため、まず、Multiple Probe Adapter 5を備えるCM825コルネオメータ(CK Electronic製、ドイツ)を用い、相対湿度50±5%において室温で30分間コンディショニングした後、22±2°Cの温度で、30人の被検者の両手の皮膚水分量(SMC:skin moisture content)を計測した。次いで、被検者は実施例1の手袋を渡されて一方の手に着用し、他方の手には実施例3の手袋を着用した。1時間後に手袋を手から外し、5分後に上述の同じ制御環境下で皮膚水分量を測定した。手袋着用後の皮膚湿潤感は、以下の式により与えられる。
【0081】
【数1】

式中、「着用後SMC」及び「着用前SMC」は、それぞれ、手袋着用後の皮膚水分量及び手袋着用前の皮膚水分量を指す。
【0082】
表9に、30人の被検者の結果をまとめて示す。
【0083】
表9:皮膚湿潤感の改善
【表9】

【0084】
表9の結果から、手に優しいコーティングを有する手袋は手に優しいコーティングがないものよりも、皮膚湿潤感を改善したことが明らかである。
【0085】
(実施例10:引張特性)
手袋の引張特性を、エージングなし及びエージングあり(70℃、7日間)の両方において、ASTM D−3577(ASTM International、100 Barr Harbor Drive、PO Box C700、West Conshohocken、米ペンシルバニア州)の方法を用いて計測した。表10に、結果をまとめて示す。
【0086】
表10:手袋の引張特性
【表10】

【0087】
表10の結果は、手に優しいコーティングが手袋の引張特性に影響がないことを示す。
【0088】
(実施例11:遮蔽性の評価)
実施例1−3の手袋を、オーブン中、50°Cで7日間エージングした。表2に示す基準を用い、遮蔽性の程度を評価した。
【0089】
表11:遮蔽性の評価
【表11】

注: * 手袋内面が互いに接触する箇所で粘着する程度
** 手袋外面が紙と接触する箇所で紙に粘着する程度
【0090】
表11の結果は、手に優しいコーティングが手袋にいかなる遮蔽性も生じないことを示す。
【0091】
(実施例12:光沢の評価)
実施例1及び3の手袋について、光沢を視覚的に検査した。表2に示す基準を用いて、光沢の程度を評価した。
【0092】
表12:光沢の評価
【表12】

【0093】
表12の結果は、手に優しいコーティングが手袋に光沢を生じないことを示す。
【0094】
(実施例13:手袋の柔らかさの評価)
5人のテスターを集め、実施例1の手袋を渡して片手に装着させ、他方の手に実施例3の手袋を装着させた。自己の手を曲げ伸ばしすることにより、手袋の柔らかさを評価した。表13に、平均評点をまとめて示す。
【0095】
表13:手袋の柔らかさ
【表13】

【0096】
表13の結果は、手に優しいコーティングを有する手袋が手に優しいコーティングのないものより柔らかいことを示す。
【0097】
(実施例14:手触りの滑らかさの評価)
5人のテスターに実施例1の手袋を渡して片手に装着させ、他方の手に実施例3の手袋を装着させた。1時間の着用後に、両手袋を手から外し、手袋を外してから5分後に手の滑らかさを評価した。表14に、テスターの平均評点をまとめて示す。
【0098】
表14:手触りの滑らかさ
【表14】

【0099】
表14の結果は、手に優しいコーティングを有する手袋が、着用後に手に優しいコーティングのないものよりも、ユーザの手に滑らかな感触を与えたことを示す。
【0100】
(実施例15:手の湿潤感)
5人のテスター実施例1の手袋を渡して片手に装着させ、他方の手に実施例3の手袋を装着させた。1時間の着用後に、両手袋を手から外し、手袋を外してから5分後に手の湿潤感を評価した。表15に、テスターの平均評点をまとめて示す。
【0101】
表15:手の湿潤感
【表15】

【0102】
手袋着用後の、手に優しいコーティングを有する手袋の湿潤感は、手に優しいコーティングのないものより非常に良好であることが分かった。
【0103】
(実施例16:ISO 10993(ISO 10993−13:1998、医療機器の生物学的評価−第13部)に基づく人体皮膚の刺激性分類:ポリマー医療器具由来分解産物の同定及び定量分析)
この試験の目的は、手袋の曝露による急性の皮層刺激性を計測することである。2cm×2cmの手袋試料を、30人の試験被検者の皮膚上に、被覆テープにより48時間固定した。期間完了後にパッチを除去し、処理部位を最長48時間調査した。
【0104】
表16に、刺激能の重篤度の等級を示す。
【0105】
表16:刺激性分類
【表16】

【0106】
表17に、0.5%ドデシル硫酸ナトリウムをネガティブコントロールとし、0.9%の塩化ナトリウムをポジティブコントロールとして用いた、実施例1及び3の手袋の試験結果を示す。
【0107】
表17:手袋の刺激性
【表17】

【0108】
実施例1及び3の試料の両者は非刺激性であることが分かったが、一方、ドデシル硫酸ナトリウム及び塩化ナトリウムは、それぞれ重度の刺激性及び非刺激性だった。従って、手に優しいコーティングは、手袋ユーザに皮層刺激を生じない。
【0109】
(実施例17:ISO 10993に基づく血液との相互作用検査)
この試験の目的は、手袋からの浸出物が試験管系において溶血作用を生じるかどうか、すなわち血液との適合性を計測することである。3匹のウサギから血液試料を取得、貯蔵、希釈し、手袋の抽出物を添加した。次いで各試料を穏やかに混合し、37°Cで4時間維持した。インキュベーション後、試料を遠心分離し、生じた上清にDrabkin試薬(ヘモグロビンを測定するシアンメトヘモグロビン法に使用する溶液であり、炭酸水素ナトリウム、シアン化カリウム、と、フェリシアン化カリウムを含む)を添加した。抽出物の透過百分率を、波長540nmの分光光度計で計測した。この吸光度値を用い、ヘモグロビン標準曲線からヘモグロビン含有量を計算した。溶血性指数の百分率は、以下の式を用いて算出した。
【数2】

【0110】
平均の溶血性指数は、二重の試料からの平均値とした。以下の一覧表に基づいて溶血性等級を帰属した。
【0111】
表18:溶血性指標及び溶血性等級
【表18】

【0112】
表19に、ポジティブコントロール及びネガティブコントロールと共に、実施例1及び3の手袋の試験結果を示す。
【0113】
表19:手袋溶出物の溶血性等級
【表19】

【0114】
表19の結果は、実施例1及び3由来の手袋抽出物が血液との適合性を有することを示しており、これは、手に優しいコーティングを手袋に取り入れても、当該手袋抽出物の血液適合性を変化させないことを意味する。
【0115】
本願明細書に引用の出版物、特許出願及び特許は、各参照が独立に及び特定して呈示され、参照され取り込まれること及び本願明細書に全体を組み入れられることと同一の程度に、参照により本願明細書に取り込まれる。
【0116】
発明の記載文中の用語「1の」「1つの」「その」及び同様の指示語(とりわけ特許請求の範囲の文脈において)は、特に本願明細書に明確な記載のない限り、又は前後関係から明確な矛盾のない限り、単数及び複数の両方を扱うものと解釈すべきである。特に明記しない限り、本願明細書において値の範囲を列挙することは、単に、当該範囲内に入るそれぞれ別個の値を独立して参照する簡略的手法を示すことを意図しているだけであり、それぞれの別個の値は、あたかも本願明細書に独立して記載されているのと同様に、明細書に取り込まれる。本願明細書に記載の全ての方法は、特に明記しない限り、又は前後関係から明確な矛盾のない限り、本願明細書において任意の順序で実施可能である、本願明細書に示した全ての実施例又は例示の文言(例えば、「等」)は、単に、発明をより良好に記載するためのものであり、特に明記のない限り、発明の範囲への制約をもたらすものではない。明細書におけるいかなる文言も、発目の実施に対して不可欠なものとしての、特許請求の範囲に記載のない要素を示しているとは解釈してはならない。
【0117】
本発明の好適な実施例は本願明細書に記載され、本発明を実施するために発明者が知る最良の形態を含んでなる。記載した実施例は例示のためだけであり、発明の範囲を制限するものではないと理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袖口領域及び統合された手袋領域を有する手に優しいゴム手袋物品であって、前記手袋は乳化された手に優しい混合物の乾式コーティングを含んでなり、前記混合物は少なくとも1の水溶性湿潤モイスチャ、少なくとも1の水不溶性被覆モイスチャ、少なくとも1の水溶性潤滑剤、及び少なくとも1の水溶性界面活性剤を含んでなり、前記水不溶性被覆モイスチャは微細かつ実質的に均一に前記混合物中に分散され、これにより前記乾式コーディングは前記水不溶性モイスチャを保持し、前記手に優しいコーティングは皮膚から発生する湿気で活性化して装着者の皮膚に移動され、前記手袋物品は、適宜、幅が約0.5cmから約10cmまでの範囲の布地粘着性袖口領域、及び/又は、約10nmから約500nmまでの表面粗さを有するテクスチャ形成された内部表面を含む内部手袋領域を含んでなる、ゴム手袋物品。
【請求項2】
前記手に優しい混合物は、乳化された約0.05マイクロメートル(μm)から約5μmの範囲の微粒子を生成するコロイドミル中で乳化される、請求項1に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項3】
前記水溶性湿潤モイスチャは、グリセロール、乳酸、乳酸誘導体、尿素及びこれらの2以上の組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項4】
前記水溶性湿潤モイスチャはグリセロールである、請求項3に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項5】
前記グリセロールは前記手に優しい混合物の約0.5%から約10重量%の範囲の量で存在する、請求項4に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項6】
前記水溶性湿潤モイスチャは、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸亜鉛、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム、乳酸アンモニウム又は乳酸である、請求項3に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項7】
前記乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸亜鉛、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム、乳酸アンモニウム又は乳酸は、前記手に優しい混合物の約0.5%から約5重量%の範囲の量で存在する、請求項6に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項8】
前記水溶性湿潤モイスチャは尿素である、請求項3に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項9】
前記尿素は前記手に優しい混合物の約0.5%から約10重量%の範囲の量で存在する、請求項8に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項10】
前記水不溶性被覆モイスチャは、ポリジメチルシロキサン(ジメチコーン)、エルカ酸オレイル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項11】
前記水不溶性被覆モイスチャはポリジメチルシロキサンである、請求項10に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項12】
前記ポリジメチルシロキサンは、前記手に優しい混合物の約0.3%から約2.0重量%の範囲の量で存在する、請求項11に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項13】
前記水不溶性被覆モイスチャはエルカ酸オレイルである、請求項10に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項14】
前記エルカ酸オレイルは、前記手に優しい混合物の約0.5%から約10重量%の範囲の量で存在する、請求項13に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項15】
前記潤滑剤は、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールの共重合体、及びこれらの組み合わせからなる群グループから選択される、請求項1に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項16】
前記潤滑剤はポリエチレンオキシドである、請求項15に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項17】
前記ポリエチレンオキシドは、前記手に優しい混合物の約0.01%から約3重量%の範囲の量で存在する、請求項16に記載の手に優しいゴム手袋物品。。
【請求項18】
前記潤滑剤はポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールの共重合体である、請求項15に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項19】
前記ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールの共重合体は、前記手に優しい混合物の約0.5%から約10重量%の範囲の量で存在する、請求項18に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項20】
前記水溶性界面活性剤は、ポリオキシエチレン20(ソルビタンモノオレアート)、ノニルフェノールエトキシレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項21】
前記界面活性剤はノニルフェノールエトキシレートである、請求項20に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項22】
前記ノニルフェノールエトキシレートは、前記手に優しい混合物の約0.5%から約10重量%の範囲の量で存在する、請求項21に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項23】
前記界面活性剤はポリオキシエチレン20(ソルビタンモノオレアート)である、請求項20に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項24】
前記ポリオキシエチレン20(ソルビタンモノオレアート)は、前記手に優しい混合物の約0.5%から約10重量%の範囲の量で存在する、請求項23に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項25】
前記手に優しい混合物は抗菌剤を更に含んでなる、請求項1に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項26】
前記抗菌剤は、クロロへキシジン又はその塩、ビグアニド又はその塩、塩化フェノール、酢酸ニトロフェニル、フェニルヒドラジン、ポリ臭化サリチルアニリド、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル及びクロロヘキシジンジグルコン酸塩からなる群から選ばれる、請求項25に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項27】
前記抗菌剤は、前記手に優しい混合物の約5%以下の量で存在する、請求項26に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項28】
前記手に優しい混合物は約0.01−約0.10N/mの範囲の表面張力を有する、請求項1に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項29】
前記手に優しい混合物は、約5−約70度の範囲の表面との接触角を有する、請求項1に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項30】
前記ゴムは天然ゴムである、請求項1に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項31】
前記ゴムはグアユーレ天然ゴム又はパラゴムノキ天然ゴムである、請求項30に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項32】
前記ゴムは合成ゴムである、請求項1に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項33】
前記ゴムは合成ポリイソプレンゴムである、請求項32に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項34】
前記合成ゴムはポリクロロプレンである、請求項32に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項35】
前記合成ゴムはクロロプレン及びジクロロブタジエンの共重合体である、請求項32に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項36】
前記合成ゴムはニトリルブタジエンゴムである、請求項32に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項37】
前記合成ゴムは合成ポリイソプレン及びニトリルブタジエンゴムのブレンドである、請求項32に記載の手に優しいゴム手袋物品。
【請求項38】
乳化された手に優しい混合物を製造する方法であって、
a.1以上の水溶性湿性モイスチャ、1以上の水溶性潤滑剤、1以上の水溶性界面活性剤及び、適宜1以上の水溶性抗菌剤を水中に溶解するステップ;
b.生成した溶液に1以上の水不溶性被覆モイスチャ及び、適宜1以上の水不溶性抗菌剤を添加するステップ;並びに、
c.前記混合物を、1以上の水不溶性被覆モイスチャを微細に分散させるコロイドミルに通過させ、乳化された手に優しい混合物を生成するステップ、を含む方法。
【請求項39】
1以上の水溶性被覆モイスチャ、及び、存在する場合には1以上の水不溶性抗菌剤を、直径約0.05μm−5μmの平均粒度に分散する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記袖口領域及び統合された手袋領域を含んでなる手に優しいゴム手袋物品の生産方法であって、
a.予熱した成型器を、無機金属塩、炭酸カルシウム粉末、界面活性剤及び増粘剤を含む水溶性凝固剤に浸漬するステップ;
b.前記成型器をゴムラテックスに浸漬し、ゲル化したゴム層を形成するステップ;
c.熱湯中にて前記成型器上に手袋を浸出するステップ;
d.前記成型器上の前記手袋を、ポリウレタン、ワックス分散液、及び硬度変性剤を含んでなる水溶性分散液に浸漬し、滑らかな裏打ちポリマーを生成するステップ;
e.熱湯中にて前記成型器上に前記手袋を浸出するステップ;
f.前記成型器上の前記ゴム手袋を加温して硬化するステップ;
g.熱湯中にて前記成型器上の前記ゴム手袋を浸出するステップ;
h.乾燥させて前記成型器から前記ゴム手袋をはぎとるステップ;
i.前記手袋を水ですすいで炭酸カルシウム粉末を除去するステップ;
j.前記手袋を塩素水で処理するステップ;
k.前記手袋を水ですすぐステップ;
l.前記手袋を、少なくとも1の水溶性モイスチャ、少なくとも1の水不溶性被覆モイスチャ、少なくとも1の潤滑剤、及び少なくとも1の界面活性剤を含んでなる乳化した手に優しい混合物で揺動するステップ;
m.揺動乾燥機中にて前記手袋を予備乾燥するステップ;
n.前記揺動乾燥機中にて加熱せずに前記手袋に水を噴霧するステップ;並びに、
o.前記手袋を加熱して完全に乾燥するステップ、
を含む方法。
【請求項41】
前記手袋をペア又はばら荷で包装するステップを更に含んでなる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記包装した手袋をガンマ放射線に曝露することにより包装した手袋を滅菌するステップを更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記袖口領域が布地粘着性であるように、前記手袋をステップ「d」において、前記手袋の袖口領域から約0.5cmから約10cmの範囲の深さに浸漬する、請求項40に記載の方法。

【公表番号】特表2009−517563(P2009−517563A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543261(P2008−543261)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/046014
【国際公開番号】WO2007/064343
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(598165943)アンセル・ヘルスケア・プロダクツ・エルエルシー (15)
【氏名又は名称原語表記】Ansell Healthcare Products LLC
【Fターム(参考)】