説明

手作りチョコレートセット

【課題】
本発明の課題は、家庭内でも簡単にテンパリングできて、手軽なチョコレート作りを可能とするためのシード剤及び前記シード剤を用いた手作りチョコレートのセットを提供することである。
【解決手段】
チョコレートの成型時に、添加してチョコレートをテンパリングするために用いるシード剤として特徴を有するココアパウダーを提供し、また、少なくとも固形チョコレートとココアパウダーを収容してなる手作りチョコレートセットを提供し、ファットブルームの発生しない手作りチョコレートの作成を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョコレートをテンパリングするために用いるシード剤としてのココアパウダー及びそれを用いた手作りチョコレートセットに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、バレンタインデーなどにチョコレートを家庭内で手作りすることが多くなった。
しかしながら、ココアバターやハードバターを使用したテンパータイプのチョコレートは、ファットブルームの発生を防止するため、溶融したチョコレート生地を一旦30℃よりも低い温度に冷却後、30℃前後に昇温して処理する、いわゆる、テンパリング処理を行う必要がある。普通、家庭ではチョコレートのテンパリング処理は面倒であり、ファットブルームの発生しない手作りチョコレートの作成は困難であった。
【0003】
また、このテンパリング処理を簡略化するため、チョコレート粉末や油脂結晶等(特許文献1)をテンパリング処理のための種結晶であるシード剤として添加して使用する、シーディング法が知られている。シーディング法では、テンパリングマシン等の特別な装置が必要でなくなる。チョコレート粉末を用いる場合は、固化したチョコレートを粉末状にすることが必要であり、油脂結晶は、テンパリング用として、それ自体を作る工程を要し、また高価である。従って、シーディング法ではテンパリング自体は簡便ではあるが、シード剤自体を作るという工程が必要となり、価格や手間の部分で有利であるとは言い切れない。
【特許文献1】特開昭63−240745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、家庭等でも簡単にテンパリングできて、手軽なチョコレート作りを可能とするためのシード剤及び前記シード剤を用いた手作りチョコレートのセットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために鋭意検討した結果、次のようなシード剤及びそれを用いた手作りチョコレートのセットを提供することができ、発明を完成させた。 すなわち、
(1)チョコレートの成型時に、添加してチョコレートをテンパリングするために用いるシード剤としての特徴を有するココアパウダー。
(2)ココアパウダーがチョコレートの成型時に、チョコレートのテンパリングを容易にする旨を表示したココアパウダー。
(3)ココアパウダーがチョコレートの成型時に、チョコレートのテンパリングを容易にする旨を表示した固形チョコレート。
(4)一つのセット内に、少なくとも、固形チョコレートとココアパウダーを収容してなる手作りチョコレートセット。
(5)一つのセット内に、少なくとも、固形チョコレート、ココアパウダーと充填型を収容してなる手作りチョコレートセット。
(6)ココアパウダーがチョコレートの成型時に、チョコレートのテンパリングを容易にする旨を表示した(4)または(5)に記載した手作りチョコレートセット。
(7)販売を目的としてその本体、包装、説明書、宣伝物のいずれかにココアパウダーがチョコレートの成型時に、チョコレートのテンパリングを容易にする旨を表示する方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ココアパウダーをシード剤として使用して、テンパリングすることができるため、シード剤を作るための手間を要せず、家庭で、手軽に安価な手作りチョコレートを作ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のココアパウダーは、カカオマスから搾油したココアケーキを粉砕した、狭義のココアパウダー100%のものが好ましい。しかし、香料、乳化剤等の微量の添加物を含んでいても良い。砂糖や粉乳等を配合した調製ココアパウダーでも不可能ではないが、テンパリングのためには多くの量を必要とするため実用的ではない。またココアパウダーは一般に、主に飲用に使用される、油分20〜24重量%のものと主に製菓用に使用される、油分10〜14重量%のものが流通しているが、油分20〜24重量%のものの方がテンパリングに必要な量が少なくて済むため、より好ましい。
【0008】
油分20〜24重量%のココアパウダーではチョコレートへの添加量はチョコレート全重量に対し2〜8重量%、油分10〜14重量%のココアパウダーではチョコレートへの添加量はチョコレート全重量に対し4〜8重量%が好ましい。この範囲を下回ると十分な効果が得られず、この範囲を上回ると添加したチョコレート生地の流動性が低下し、型に充填したときの伸びが悪くなるため、成型性の面で好ましくない。
【0009】
本発明の好ましい態様は、固形チョコレートとココアパウダーを組み合わせた、手作りチョコレートセットで用いる。前記手作りチョコレートセットには、ハート型等の充填型を入れても良い。利用者の便をはかるため、手作りチョコレートを作る要領を記述した作業指導書または説明書を添付しても良い。また、固形チョコレートは、粒チョコレートであってもよいし、板チョコレートであってもよい。また、チョコレートとしてはミルクチョコレートやブラックチョコレートなどが挙げられる。
【0010】
固形チョコレート又はココアパウダーの本体または包装に、或いは製品のカタログにココアパウダーはチョコレートの成型時に、チョコレートのテンパリングを容易にする旨を表示したり、記載して使用してもよい。
【0011】
手作りチョコレートの作成は以下のように行う。すなわち、固形チョコレートを40℃以上で完全に溶融した後、溶融したチョコレートを好ましくは品温29〜32℃に調温し、ココアパウダーを添加してよく混合した後、型に充填して冷蔵庫等で冷却固化すると、ファットブルームがなく、型からの剥離性が良く、艶のあるチョコレートを作ることができる。溶融したチョコレートには、ナッツや果実、生クリーム等を入れることができる。
【実施例】
【0012】
次に実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。
【0013】
実施例1
ミルクチョコレート(明治製菓製)を細かく割り、45℃にて融解して、冷水でチョコレート生地の品温を30℃になるように調温し、油分22重量%のココアパウダーをチョコレートの2重量%になる量を添加し、混合した。これを20mlのハート型の充填型に充填し、冷蔵庫で30分冷却固化して、手作りチョコレートを作成した。冷却後、充填型を逆さまにして軽く叩くと、充填型からチョコレートがきれいに剥離した。剥離したチョコレートの表面は艶が良好であった。該チョコレートを20℃で3日間保存しても、ブルーミングは発生しなかった。
【0014】
実施例2
ブラックチョコレート(明治製菓製)を細かく割り、45℃にて融解して、冷水でチョコレート生地の品温を31℃になるように調温し、油分22重量%のココアパウダーをチョコレートの8重量%になる量を添加し、混合した。その後、実施例1と同様にして手作りチョコレートを作成した。冷却後、充填型を逆さまにして軽く叩くと、充填型からチョコレートがきれいに剥離した。剥離したチョコレートの表面は艶が良好であった。該チョコレートを20℃で3日間保存しても、ブルーミングは発生しなかった。
【0015】
実施例3
ミルクチョコレート(明治製菓製)を細かく割り、45℃にて融解して、冷水でチョコレート生地の品温を29℃になるように調温し、油分12重量%のココアパウダーをチョコレートの4重量%になる量を添加し、混合した。その後、実施例1と同様にして手作りチョコレートを作成した。冷却後、充填型を逆さまにして軽く叩くと、充填型からチョコレートがきれいに剥離した。剥離したチョコレートの表面は艶が良好であった。該チョコレートを20℃で3日間保存しても、ブルーミングは発生しなかった。
【0016】
比較例1
ミルクチョコレート(明治製菓製)を細かく割り、45℃にて融解して、冷水でチョコレート生地の品温を30℃になるように調温し、油分22重量%のココアパウダーをチョコレートの1重量%になる量を添加し、混合した。その後、実施例1と同様にして手作りチョコレートを作成した。冷却後、充填型を逆さまにして軽く叩くと、充填型からのチョコレートの剥離はやや悪かった。剥離したチョコレートの表面は艶がなかった。該チョコレートは20℃で3日間保存すると、ブルーミングが発生した。
【0017】
比較例2
ミルクチョコレート(明治製菓製)を細かく割り、45℃にて融解して、冷水でチョコレート生地の品温を31℃になるように調温し、油分12重量%のココアパウダーをチョコレートの10重量%になる量を添加し、混合した。その後、実施例1と同様にして手作りチョコレートを作成した。そのとき、融解したチョコレートの粘度が高くなり、型全体にはチョコレートが行き渡らなかった。冷却後、充填型を逆さまにして軽く叩くと、充填型からチョコレートは剥離したが、剥離したチョコレートの所々に気泡が入ってしまい、きれいなハート形に成型できなかった。該チョコレートを20℃で3日間保存したが、ブルーミングは見られなかった。
【0018】
実施例4
70gのミルクチョコレート(板チョコレート)2枚、10gのココアパウダー(油分22重量%)、ハートの形状を有した、20ml容量の充填型3個を包装容器に収納した手作りチョコレートセットを作成した。該セットの1枚の板チョコレートを細かく割り、ボウル容器に入れ、60℃の湯煎にて融解した。氷水でチョコレートの品温が30℃になるまで冷却した。30℃にて添付のココアパウダー2g(チョコレートに対し、約3重量%)をチョコレートに入れてよく混合した。添付の充填型にココアパウダーを添加したチョコレートを充填し、充填型を軽く振動してチョコレートを型全体に行き渡らせた後、冷蔵庫で30分冷却した。冷却後、充填型を逆さまにして軽く叩くと、充填型からチョコレートがきれいに剥離した。剥離したチョコレートの表面は艶があった。該チョコレートを20℃で1週間保存しても、ブルーミングは発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、家庭等での手作りチョコレートを作成するのに好ましく利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】粒チョコレートとココアパウダーよりなる本発明の手作りチョコレートセットの1形態
【図2】板チョコレートとココアパウダーよりなる本発明の手作りチョコレートセットの1形態
【図3】板チョコレート、充填型及びココアパウダーよりなる本発明の手作りチョコレートセットの1形態
【符号の説明】
【0021】
1 袋入りココアパウダー
2 粒チョコレート
3 包装容器(点線)
4 板チョコレート
5 充填型




































【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョコレートの成型時に、添加してチョコレートをテンパリングするために用いるシード剤としての特徴を有するココアパウダー。
【請求項2】
ココアパウダーがチョコレートの成型時に、チョコレートのテンパリングを容易にする旨を表示したココアパウダー。
【請求項3】
ココアパウダーがチョコレートの成型時に、チョコレートのテンパリングを容易にする旨を表示した固形チョコレート。
【請求項4】
一つのセット内に、少なくとも、固形チョコレートとココアパウダーを収容してなる手作りチョコレートセット。
【請求項5】
一つのセット内に、少なくとも、固形チョコレート、ココアパウダーと充填型を収容してなる手作りチョコレートセット。
【請求項6】
ココアパウダーがチョコレートの成型時に、チョコレートのテンパリングを容易にする旨を表示した請求項4または5に記載した手作りチョコレートセット。
【請求項7】
販売を目的としてその本体、包装、説明書、宣伝物のいずれかにココアパウダーがチョコレートの成型時に、チョコレートのテンパリングを容易にする旨を表示する方法。


























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−115720(P2006−115720A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304991(P2004−304991)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【Fターム(参考)】