説明

手動利器の柄

【解決手段】柄1の止め構造Mにおいては、頭部材7(指当部材9及びスペーサ10)と本体部材8とからなる把持部材4の有底止め孔11に挿入された止め軸5の雄ねじ部6と、この有底止め孔11内のねじ部材17の雌ねじ部19とが互いに螺合されているので、柄1の止め構造Mが把持部材4の尻部8aと関連なく設けられ、把持部材4が有底止め孔11の底部15bと尻部8aとの間で一体に成形されて把持部材4の尻部8aから止め構造Mにおける部品の露出をなくすことができる。
【効果】柄1の見映えを良くするばかりでなく、従来技術の柄と比較して蓋等の部品点数を減らすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包丁及びナイフなどの刃物や刃物以外の各種道具を含む手動利器において、その柄の構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1にかかる柄部では、口金に螺着された連結ロッドの外周に柄部本体が嵌め込まれ、この柄部本体の尻側でこの連結ロッドに螺合されたナットにより、この柄部本体が口金に対し締め付けられ、この柄部本体の尻側が尻金(蓋)により閉塞されている。
【特許文献1】特開2005−153065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1では、柄部本体の尻側で連結ロッド及びナットが露出するため、柄部本体の尻側を尻金(蓋)により閉塞し、連結ロッド及びナットが見えないようにして柄部の見映えを良くする必要があり、その尻金(蓋)等の部品点数が増える問題があった。
【0004】
この発明は、手動利器の柄において把持部材の止め構造を改良して柄の見映えを良くするとともに把持部材の尻部で蓋等の部品点数を減らすことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
後記実施形態の図面(図1〜2)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる手動利器の柄は下記のように構成されている。
機能部2の基端部2aに口部3を設けている。機能部2の基端部2aから止め軸5を延設するとともに、この口部3から突出する止め軸5にねじ部6を設けている。頭部9aと尻部8aとを有する把持部材4にあって、その頭部9a側には開口12aからその尻部8a側へ底部15bまで延びる有底止め孔11を形成してその有底止め孔11にねじ部材17を埋め込んでいる。この有底止め孔11に挿入した止め軸5のねじ部6とこの有底止め孔11内のねじ部材17とを互いに螺合してこの口部3にこの把持部材4の頭部9aを当接させている。
【0006】
請求項1の発明では、把持部材4の有底止め孔11に挿入した止め軸5のねじ部6とこの有底止め孔11内のねじ部材17とを互いに螺合した止め構造Mを、把持部材4の尻部8aと関連なく設けることができるので、把持部材4の尻部8aから上記止め構造Mにおける部品の露出をなくして柄1の見映えを良くするばかりでなく、その尻部に蓋をする必要のある従来技術の柄と比較して蓋等の部品点数を減らすことができる。
【0007】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明においては、把持部材4を有底止め孔11の底部15bと尻部8aとの間で一体に成形している。請求項2の発明では、有底止め孔11の底部15bと尻部8aとの間で把持部材4内に上記止め構造Mにおける部品を設けていないので、柄1の見映えを良くするとともに、蓋等の部品点数を減らすことができる。
【0008】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、前記止め軸5のねじ部は雄ねじ部6であり、前記有底止め孔11内のねじ部材17にはこの止め軸5の雄ねじ部6が螺合される雌ねじ部19を設けている。請求項3の発明では、上記止め構造Mにおける雌雄ねじ構造を簡単にすることができる。
【0009】
請求項3の発明を前提とする請求項4の発明において、前記有底止め孔11内のねじ部材17にはその有底止め孔11に螺合される雄ねじ部18を設けている。請求項4の発明では、有底止め孔11に対するねじ部材17の回り止めを簡単な構造で容易に行うことができる。
【0010】
請求項3または請求項4の発明を前提とする請求項5の発明は下記のように構成されている。
前記把持部材4は、口部3に当接する頭部9aを有する頭部材7と、この頭部材7を口部3との間で挟持して頭部材7に当接する本体部材8とに分離されている。前記有底止め孔11は、この頭部材7に設けられて頭部9aの開口12aを有する貫通孔12と、尻部8aを有する本体部材8に設けられてこの頭部材7の貫通孔12に連通する埋込孔15とからなる。底部15bを有する埋込孔15にねじ部材17が埋め込まれている。前記止め軸5はこの頭部材7の貫通孔12と本体部材8の埋込孔15とに挿入されている。この止め軸5の雄ねじ部6はこの埋込孔15内のねじ部材17の雌ねじ部19に螺合されている。請求項5の発明では、前記把持部材4が本体部材8のほかに頭部材7を有しているので、本体部材8と頭部材7との間で材質や色などを互いに変更して把持部材4の感触や見映えに変化を持たせることができる。
【0011】
請求項5の発明を前提とする請求項6の発明にかかる把持部材4において、頭部材7は、口部3に当接する頭部9aを有する指当部材9と、この指当部材9と本体部材8との間で挟持されるスペーサ10とに分離され、この指当部材9に前記貫通孔12が設けられている。請求項6の発明では、指当部材9に対する本体部材8の回動停止位置をスペーサ10により容易に調節することができる。
【0012】
請求項6の発明を前提とする請求項7の発明において、前記指当部材9は前記止め軸5の雄ねじ部6に螺合された雌ねじ部材14により口部3に対し締め付けられ、この雌ねじ部材14も前記本体部材8の埋込孔15内に挿入されている。請求項7の発明では、指当部材9を口部3に対し容易に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、手動利器の柄1において、把持部材4の止め構造Mを改良して柄1の見映えを良くするとともに、把持部材4の尻部8aで蓋等の部品点数を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態にかかる手動利器について図1〜2を参照して説明する。
手動利器である刃物としての包丁の柄1においては、機能部としての刃体2の基端部2aに対しその左右両側から重合された左右一対の分割片3aが一対のピン3bにより止着されて口部としての口金3が刃体2の基端部2aに取り付けられ、この口金3に隣接して把持部材4が下記の止め構造Mにより取り付けられている。
【0015】
刃体2の基端部2aから止め軸5が延設され、この口金3から突出する止め軸5に雄ねじ部6が形成されている。把持部材4は頭部材7と本体部材8とに分離され、さらに頭部材7は指当部材9とスペーサ10とに分離されている。
【0016】
前記指当部材9においては、頭部9aに形成された開口12aから貫通孔12が有底止め孔11の一部として延設され、この開口12aに対する反対側端部9bで貫通孔12の外周に座金13が嵌め込まれ、この貫通孔12に前記止め軸5が挿通されて頭部9aが口金3に当接されているとともに、この止め軸5の雄ねじ部6がこの指当部材9の貫通孔12及び座金13から突出している。その雄ねじ部6に螺合された雌ねじ部材としてのナット14がこの指当部材9の座金13に当接されて口金3に対し指当部材9が締め付けられている。前記スペーサ10はこのナット14の外周に嵌め込まれて指当部材9の端部9bに当接されている。
【0017】
前記本体部材8においては、尻部8aに対する反対側端部8bに形成された座ぐり穴15aから埋込孔15が底部15bまで有底止め孔11の一部として延設され、その底部15bと尻部8aとの間で本体部材8が一体に成形され、その埋込孔15内に雌ねじ部16が形成されている。筒状のねじ部材17においてはその外周に雄ねじ部18が形成されているとともにその内周に雌ねじ部19が形成され、その雄ねじ部18が埋込孔15内の雌ねじ部16に螺合されてこのねじ部材17が埋込孔15に埋め込まれている。前記止め軸5の雄ねじ部6がこの埋込孔15に挿入されてねじ部材17の雌ねじ部19に螺合され、本体部材8の端部8bが前記スペーサ10に当接して口金3との間で指当部材9及びスペーサ10を挟持するとともに指当部材9との間でスペーサ10を挟持し、前記指当部材9の貫通孔12と本体部材8の埋込孔15とが互いに連通して前記止め軸5が挿入される有底止め孔11が形成され、その埋込孔15の座ぐり穴15aに前記ナット14が嵌め込まれる。
【0018】
図1(b)及び図2(c)に示す別例では、前記埋込孔15において雌ねじ部16が省略されているとともに、前記ねじ部材17において雄ねじ部18の代わりにローレット状の筋が形成され、この埋込孔15に挿入されたねじ部材17が埋込孔15に対し接着剤により接着されて回り止めされている。
【0019】
本実施形態は下記の効果を有する。
* 柄1の止め構造Mにおいては、頭部材7(指当部材9及びスペーサ10)と本体部材8とからなる把持部材4の有底止め孔11に挿入された止め軸5の雄ねじ部6と、この有底止め孔11内のねじ部材17の雌ねじ部19とが互いに螺合されているので、柄1の止め構造Mが把持部材4の尻部8aと関連なく設けられ、把持部材4が有底止め孔11の底部15bと尻部8aとの間で一体に成形されて把持部材4の尻部8aから止め構造Mにおける部品の露出をなくすことができる。従って、柄1の見映えを良くするばかりでなく、従来技術の柄と比較して蓋等の部品点数を減らすことができる。
【0020】
* 把持部材4の感触や見映えに変化を持たせるために、把持部材4を指当部材9と本体部材8とに分離した場合でも、指当部材9に対する本体部材8の回動停止位置をスペーサ10により容易に調節することができる。
【0021】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 口部としての口金3を分割片3aによりに分割することなく筒状に形成して刃体2の基端部2aに取り付けたり、口部としての口金3を刃体2の基端部2aと一体に形成したりしてもよい。
【0022】
・ 止め軸5の雄ねじ部6を雌ねじ部に変更するとともに、ねじ部材17の雌ねじ部19を雄ねじ部に変更して、それらを互いに螺合させてもよい。
・ 把持部材4において頭部材7(指当部材9及びスペーサ10)と本体部材8とを一体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は本実施形態にかかる手動利器としての包丁においてその柄を分解して示す斜視図であり、(b)はその柄の一部品の別例を示す斜視図である。
【図2】(a)は図1(a)の柄を組み付けて示す斜視図であり、(b)は(a)の柄を正面側から見た断面図であり、(c)は図1(b)の別例部品を利用した部分断面図である。
【符号の説明】
【0024】
M…柄の止め構造、1…柄、2…機能部としての刃体、2a…刃体の基端部、3…口部としての口金、4…把持部材、5…止め軸、6…止め軸の雄ねじ部、7…把持部材の頭部材、8…把持部材の本体部材、8a…本体部材の尻部、9…頭部材の指当部材、9a…指当部材の頭部、10…頭部材のスペーサ、11…把持部材の有底止め孔、12…指当部材の貫通孔、12a…貫通孔の開口、14…雌ねじ部材としてのナット、15…本体部材の埋込孔、15b…埋込孔の底部、17…ねじ部材、18…ねじ部材の雄ねじ部、19…ねじ部材の雌ねじ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能部の基端部に口部を設け、機能部の基端部から止め軸を延設するとともに、この口部から突出する止め軸にねじ部を設け、頭部と尻部とを有する把持部材にあって、その頭部側には開口からその尻部側へ底部まで延びる有底止め孔を形成してその有底止め孔にねじ部材を埋め込み、この有底止め孔に挿入した止め軸のねじ部とこの有底止め孔内のねじ部材とを互いに螺合してこの口部にこの把持部材の頭部を当接させたことを特徴とする手動利器の柄。
【請求項2】
前記把持部材を有底止め孔の底部と尻部との間で一体に成形したことを特徴とする請求項1に記載の手動利器の柄。
【請求項3】
前記止め軸のねじ部は雄ねじ部であり、前記有底止め孔内のねじ部材にはこの止め軸の雄ねじ部が螺合される雌ねじ部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の手動利器の柄。
【請求項4】
前記有底止め孔内のねじ部材にはその有底止め孔に螺合される雄ねじ部を設けたことを特徴とする請求項3に記載の手動利器の柄。
【請求項5】
前記把持部材は、口部に当接する頭部を有する頭部材と、この頭部材を口部との間で挟持して頭部材に当接する本体部材とに分離され、
前記有底止め孔は、この頭部材に設けられて頭部の開口を有する貫通孔と、尻部を有する本体部材に設けられてこの頭部材の貫通孔に連通する埋込孔とからなり、底部を有する埋込孔にねじ部材が埋め込まれ、
前記止め軸はこの頭部材の貫通孔と本体部材の埋込孔とに挿入され、この止め軸の雄ねじ部はこの埋込孔内のねじ部材の雌ねじ部に螺合されている
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の手動利器の柄。
【請求項6】
前記把持部材において頭部材は、口部に当接する頭部を有する指当部材と、この指当部材と本体部材との間で挟持されるスペーサとに分離され、この指当部材に前記貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の手動利器の柄。
【請求項7】
前記指当部材は前記止め軸の雄ねじ部に螺合された雌ねじ部材により口部に対し締め付けられ、この雌ねじ部材も前記本体部材の埋込孔内に挿入されていることを特徴とする請求項6に記載の手動利器の柄。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−115721(P2010−115721A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288461(P2008−288461)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(594044417)株式会社大野ナイフ製作所 (5)