説明

手動掃除具

【課題】 塵埃の捕集および排出が容易であり、狭小空間内も掃除することができ、静粛性があり快適に使用できるコンパクトな手動掃除具を提供する。
【解決手段】 捕塵体3を被掃除面に当接して、手動掃除具1を前後に往復移動させることによって、塵埃を捕集し収塵室37に集めることができる。集めた塵埃は蓋体28を開放して排出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絨毯、畳、フローリング、ソファ、椅子、自動車の車内などの掃除に適した手動掃除具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の手動掃除具として、特許文献1に記載されるような粘着テープのロールを用いた掃除具が広く用いられている。この掃除具はコンパクトで収納しやすく、また気軽に使えるという利点がある。その一方で、塵埃を捕集し終わると粘着テープを一枚一枚剥がして捨てる必要があり、この後処理が使用者への負担となっていた。また捕集した塵埃以上のゴミを掃除具自体が排出するため、ゴミの総量が増えるいう問題がある。さらに、露出されている面のほとんどが粘着テープで覆われているため、ベッドの下など狭い空間を掃除する場合、粘着テープのロールが周囲の物体に貼着し、スムーズに動かすことができないという問題もあった。
【0003】
一方、特許文献2に記載されるような粘着テープを用いない手動掃除具も存在する。これは、床面等に押し当てて前後に往復させると絨毯などにからみついた繊維質の塵埃を集めることができる器具である。しかし、上から押さえつけて往復させる必要があるため、ベッドの下などの狭い空間に進入させて掃除をするのが困難であった。また、往復運動させるときカタカタと耳障りな音や振動が生じる場合があった。さらに、集めた塵埃を排出するためには上下ケースを分離する必要があった。
【0004】
【特許文献1】特開2003−265401
【特許文献2】特開2004−329618
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、粘着テープなどのゴミを発生することなく捕集した塵埃の排出が容易であり、狭小空間内も掃除することができ、静粛性があり快適に使用できる手動掃除具が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、内部空間を有し、該内部空間が下方外部と連通して塵埃を取り入れる導入口が設けられるとともに、前記内部空間が上方外部と連通して塵埃を排出する排出口が設けれられ、しかも該排出口には蓋体が設けられた基体と、前記基体の前記内部空間内に前後方向に回動可能に保持され、上部に収塵開口が設けられた中空の捕塵体と、前記捕塵体の前方および後方に位置して前記基体に保持され、除塵面を前記捕塵体に当接するよう常時付勢される前除塵体および後除塵体とを備え、前記捕塵体は、回動軸心を中心とする断面円弧状の外周面を有し、該外周面の一部が前記導入口から露出されるとともに、前記外周面の周長の中央に、半径方向外側に向け突出して前記外周面を前領域および後領域の二つの領域に区画する突起体が設けられ、前記前領域には先端を前記収塵開口の前方側の縁に向けて傾倒した傾斜パイルからなる前捕塵ブラシが設けられており、前記後領域には先端を前記収塵開口の後方側の縁に向けて傾倒した傾斜パイルからなる後捕塵ブラシが設けられており、前記前除塵体および前記後除塵体それぞれの前記除塵面は、前記前領域および前記後領域それぞれに対向し、前記前除塵体の前記除塵面には、先端を前記捕塵体の前記収塵開口の前方側の縁に向けて傾倒した傾斜パイルからなる前除塵ブラシが設けられており、前記後除塵体の前記除塵面には、先端を前記捕塵体の前記収塵開口の後方側の縁に向けて傾倒した傾斜パイルからなる後除塵ブラシが設けられており、前記基体の回動軸方向の中央に、後方に向けて延出する柄が設けられ、前記捕塵体が所定の角度回動したとき前記捕塵体の前記収塵開口の回動方向の縁が接触する緩衝部材が、前記基体に設けられていることを特徴とする手動掃除具である。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、手動掃除具を被掃除面に当接して前後に往復運動するだけで塵埃を捕集することができる。このとき捕塵体の回動が緩衝部材によって制限されるため、不快な衝突音を発生することがない。また柄を把持することによって狭小空間にも容易に進入することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記蓋体の前方側の縁が前記排出口の前方の縁部に軸支され、前記蓋体の後方側の縁から延出する舌片が前記柄に設けられた係合部に係止されることを特徴とする請求項1に記載の手動掃除具である。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、柄を把持したまま蓋を開放して、集めた塵埃を排出することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記捕塵体が回動する方向と同一の方向に回転可能に前記基体に保持された一対の車輪をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の手動掃除具である。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、手動掃除具を手前に引く際に発生する不快な振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、捕塵体を被掃除面に当接させつつ、柄を把持して手動掃除具を前後に往復運動するだけで塵埃を捕集することが可能な手動掃除具を提供することができる。このとき捕塵体の回動が緩衝部材によって制限されるため、不快な衝突音を発生することがない。また柄を把持することによって狭小空間内も掃除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、この発明の実施の形態について図面に基づき説明する。なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0014】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る手動掃除具を図1〜3に示す。図1は第1の実施形態に係る手動掃除具を示す斜視図であり、図2は図1における断面A−Aを示す横断面図であり、図3は底面図および図2における断面B−Bを示す部分断面図である。なお以降の説明において、図2における左手を前方、右手を後方として記述する。
【0015】
本実施形態にかかる手動掃除具1は、使用者が把持するための柄7が延出する基体2と、基体2の内部に回動可能に保持される略円筒形の捕塵体3と、捕塵体3に当接する前除塵体4aおよび後除塵体4bとを主な構成要素とする。ここで回動とは、一軸まわりにまわる運動であって、360度未満のものを意味する。基体2と柄7とは別体のものを一体的に組付けてもよいし、また柄7の部分も別体の部品を貼り合わせて製作してもよいが、本実施形態では基体2と柄7とが一体で成形されたプラスチックとなっている。
【0016】
基体2は、図2及び図3に示すように、側壁23,23,24,24を備え、開口が上下面に形成されている。下面の開口が、塵埃を取り入れるための導入口21であり、上面の開口が、捕集された塵埃を排出するための排出口22である。
【0017】
排出口22の前方側の縁には、蓋体28を回動可能に保持するために、蓋体28に設けられた開閉軸281を保持する軸受25が一体形成されている。
【0018】
柄7には係合部71が凹設され、排出口22を閉鎖する場合、蓋体5から後方に向け延出する舌片282がここに収められる。係合部71内に舌片282を係止するための微小な突起711が形成され、これにより蓋体28を閉鎖した状態で係止することが可能となる。
【0019】
基体2の左右の側壁24,24のそれぞれの中央部には、図3に示すように、捕塵体3を回動可能に保持するための円形状の保持孔241,241が同軸上に配置されて形成されている。本実施形態において保持孔241は貫通していないが、貫通孔であってもよい。また、柄7の後方部には、手動掃除具1をフックに引っ掛けたり、紐を通したりして利用可能な吊下孔72が上下方向に貫通して形成されている。
【0020】
基体2の内部には捕塵体3が回動可能に保持される。捕塵体3は周壁32および側壁33,33を有し、上方に収塵開口31を有した中空の略半円筒状部材である。本実施形態ではプラスチックで一体に成形された周壁32および側壁33,33により収塵室37が画成されている。側壁33,33から周壁32の中心と同軸に突出形成された突起34,34が、基体2の側壁24に設けられた保持孔241挿入されることにより、捕塵体3は基体2により回動可能に保持される。このとき捕塵体3は、外周面の一部が導入口21の下端縁よりもやや下方に突出して露出した状態で、基体2に取り付けられる。
【0021】
捕塵体3の外周面には、周長の中央に半径方向外側に向けて突出する突起体35が設けられている。突起体35は被掃除面と接触するため、被掃除面を傷めないよう軟質材が好ましく、また被掃除面との摩擦力により捕塵体3を転回させるため、摩擦係数の大きい材料が好好ましい。そのため突起体35の材質としてはゴム材が好適である。また、本実施形態では、一つの突起体35が除塵体3の軸方向のほぼ全長にわたって延びるよう設けられているが、軸方向に分割して複数の突起体を設けることも可能である。
【0022】
捕塵体3の外周面は突起体26を境として前領域および後領域の二つの領域に区画され、前領域には、先端を収塵開口31の前方側の縁311aに向けて傾倒した短毛の傾斜パイルからなる前捕塵ブラシ36aが設けられ、後領域には、先端を収塵開口31の後方側の縁311bに向けて傾倒した短毛の傾斜パイルからなる後捕塵ブラシ36bが設けられている。
【0023】
基体2には、左右両側壁24,24に平行して、半円形に下部が切り欠かれた隔壁26,26が左右に一対設けられている。左右の隔壁26,26にそれぞれ設けられた保持孔261a,261aの一対および保持孔261b,261bの一対がそれぞれ同軸に配置され、後述の前除塵体4aおよび後除塵体4bが回動可能に保持される。
【0024】
基体2の側壁23,23と捕塵体3との間には、図2に示すように、前除塵体4aおよび後除塵体4bがそれぞれ設けられている。前除塵体4aおよび後除塵体4bは、捕塵体3に対向する面が緩やかな円弧状に形成されている。前除塵体4aおよび後除塵体4bそれぞれの上部には、回動軸41が左右方向外側に突出して形成されており、その回動軸41を隔壁26の保持穴261に挿入することで、前除塵体4aおよび後除塵体4bは回動軸41を中心に回動可能とされる。この回動軸41にはばね42が外挿されており、ばね42のばね力により、前除塵体4aおよび後除塵体4bは捕塵体3に向けて付勢される。本実施形態ではばね42をねじりばねとして利用して付勢しているが、これに代えて押しばねや板ばねを用いることも可能である。また、別体のばねを用いることなく前除塵体4aおよび後除塵体4bを基体2と一体成形とし、側壁23から延設することによって前除塵体4aおよび後除塵体4bを捕塵体3に向けて付勢することも可能である。
【0025】
前除塵体4aにおける捕塵体3と対向する側の面には、先端を捕塵体3の開口31の前方側の縁311aに向けて傾倒した短毛の傾斜パイルからなる前除塵ブラシ43aが設けられ、後除塵体4bにおける捕塵体3と対向する側の面には、先端を捕塵体3の開口31の後方側の縁311bに向けて傾倒した短毛の傾斜パイルからなる後除塵ブラシ43bが設けられている。前除塵体4aおよび後除塵体4bはばね42によって常時付勢されているため、前除塵ブラシ43aと前捕塵ブラシ36aとは常時当接し、後除塵ブラシ43bと後捕塵ブラシ36bとは常時当接している。
【0026】
基体2の排出口22には、平面視が略矩形の蓋体28が開閉可能に取り付けられる。本実施形態の蓋体28は前方に開閉軸281を有し、基体2に設けられた軸受25に支持されているため、開閉軸281を中心に回動可能となっている。さらに蓋体28からは後方に向けて舌片282が延設され、舌片282の一部をなす係止部283が、柄7に凹設された係合部71内の突起711に係合することによって、蓋体28が閉鎖可能となる。また舌片282の先端にはつまみ284が形成され、つまみ284を押し上げることによって係合が解除され蓋体28を開くことができる。ここで、開閉軸281と軸受25との間にねじりばねを設けることにって、蓋体28に常時付勢力を付与し、つまみ284を押し上げると蓋体28が勢いよく開くよう構成することも可能である。なお、蓋体28を透明なプラスチックで構成すると、蓋体28を開放しなくても捕集された塵埃の量を確認することができるという点で好適であるが、蓋体28の色、形状は適宜選択し得る。
【0027】
図2に示すように、蓋体28からは捕塵体3に向けて円筒壁285が突設されており、円筒壁285に、軟質材から成るドーナツ型の緩衝部材6が外挿されている。緩衝部材6は、捕塵体3の周壁32を円周方向に延長した位置に配置される。これによって、捕塵体3が所定の角度回動したとき、捕塵体3の収塵開口31の縁311a,311bが緩衝部材6に接触するよう構成することができる。すなわち、突起体35と除塵体4との接触による衝撃音の発生を防ぐことができる。
【0028】
次に、上記実施形態の使用状態について説明する。本実施形態の手動掃除具1の柄7を把持し、導入口21から露出する捕塵体3を被掃除面に当接させ、手動掃除具1を前方に動かす。すると捕塵体3から突出する突起体35が被掃除面と接触し、後方に摩擦力を受けるため、捕塵体3は図2における反時計方向に回転し、収塵開口31の縁311bが緩衝部材6に接触して回転が停止する。このときの断面図を図4に示す。そしてさらに手動掃除具1を前方へ動かすと、基体2の導入口21から下方に露出している前捕塵ブラシ36aによって、被掃除面の塵埃がすくい上げられて捕集される。
【0029】
次に、手動掃除具1を後方に動かすと、捕塵体3から突出する突起体35が前方に摩擦力を受けるため、捕塵体3は図2における時計方向に回転し、収塵開口31の縁311aが緩衝部材6に接触して回転が停止する。このときの断面図を図5に示す。なおこの状態では、前捕塵ブラシ36aに捕集された塵埃は前捕塵ブラシ36aに付着したままである。そしてさらに手動掃除具1を後方に動かすと、基体2の導入口21から下方に露出している後捕塵ブラシ36bによって、被掃除面の塵埃がすくい上げられて捕集される。
【0030】
次に再び手動掃除具1を前方に動かすと、捕塵体3から突出する突起体35が被掃除面と接触し、後方に摩擦力を受けるため、捕塵体3は図2における反時計方向に回転を始める。このとき、前捕塵ブラシ36aに付着していた塵埃は、当接する前除塵ブラシ43aによってすくい上げられ、前除塵ブラシ43aに移動する。そして開口31の縁311bが緩衝部材6に接触して回転が停止し、図4に示す状態となる。このとき基体2の導入口21から下方に露出している前捕塵ブラシ36aには塵埃は付着していない。そしてさらに手動掃除具1を前方へ動かすと、基体2の導入口21から下方に露出している前捕塵ブラシ36aによって、被掃除面の塵埃がすくい上げられて捕集される。
【0031】
次に再び手動掃除具1を後方に動かすと、捕塵体3から突出する突起体35が被掃除面と接触し、前方に摩擦力を受けるため、捕塵体3は図2における時計方向に回転を始める。このとき、後捕塵ブラシ36bに付着していた塵埃は、当接する後除塵ブラシ43bによってすくい上げられ、後除塵ブラシ43bに移動する。
【0032】
一方、前除塵ブラシ43aに付着していた塵埃は、当接する前捕塵ブラシ36aによってすくい上げられ、開口31の縁311aを乗り上げて収塵室37の中に収容される。
【0033】
そして開口31の縁311aが緩衝部材6に接触して回転が停止し、図5に示す状態となる。このとき基体2の導入口21から下方に露出している後捕塵ブラシ36bには塵埃は付着していない。そしてさらに手動掃除具1を後方に動かすと、基体2の導入口21から下方に露出している後捕塵ブラシ36bによって、被掃除面の塵埃がすくい上げられて捕集される。
【0034】
次に再び手動掃除具1を前方に動かすと、捕塵体3から突出する突起体35が被掃除面と接触し、後方に摩擦力を受けるため、捕塵体3は図2における反時計方向に回転を始める。このとき、前捕塵ブラシ36aに付着していた塵埃は、当接する除塵ブラシ43aによってすくい上げられ、除塵ブラシ43aに移動する。
【0035】
一方、後除塵ブラシ43bに付着していた塵埃は、当接する後捕塵ブラシ36bによってすくい上げられ、開口31の縁311bを乗り上げて収塵室37の中に収容される。
【0036】
そして開口31の縁311bが緩衝部材6に接触して回転が停止し、図4に示す状態となる。このとき基体2の導入口21から下方に露出している前捕塵ブラシ36aには塵埃は付着していない。そしてさらに手動掃除具1を前方に動かすと、基体2の導入口21から下方に露出している前捕塵ブラシ36aによって、被掃除面の塵埃がすくい上げられて捕集される。
【0037】
以上の過程を繰り返すことによって、被掃除面の塵埃は、前捕塵ブラシ36aおよび後捕塵ブラシ36b、前除塵ブラシ43aおよび後除塵ブラシ43bを経由して、収塵室37に集められることになる。すなわち使用者は、手動掃除具1を被掃除面に当てて前後に往復移動するだけで、塵埃を除去することができる。
【0038】
なお、除塵体4はばね42で付勢されており、前除塵ブラシ43aおよび後除塵ブラシ43bと前捕塵ブラシ36aおよび後捕塵ブラシ36bとの間の隙間を開くことが可能であるため、粒径の大きい塵埃でもスムーズに収塵室37に導くことができる。また常時付勢することにより前除塵ブラシ43aおよび後除塵ブラシ43bと前捕塵ブラシ36aおよび後捕塵ブラシ36bとの当接が維持されているため、付着した塵埃を相互に確実にすくい上げることができる。
【0039】
ところで、捕塵体3は、基体2に対して最大限相対回転されても、その開口31が導入口21へ向かないように、すなわち開口31の縁311が導入口21から露出しないよう、緩衝部材6の位置が調整されている。また、基体2の排出口22は蓋体28で閉鎖されている。従って、収塵室37内に入った塵埃が使用途中にこぼれ落ちるおそれはない。また、突起体35が前除塵体4aおよび後除塵体4bに接触する前に縁311が緩衝部材6に接触するため、前除塵体4aおよび後除塵体4bから不快な衝突音を生じることなく快適に前後に往復運動をすることができる。
【0040】
たまった塵埃を排出したい場合には、つまみ284を操作して係合を解除すれば、蓋体28は開閉軸281を軸に回動し、排出口22が開放して収塵室37が露出する。そして収塵室37に溜まった塵埃を除去することができる。なお、つまみ284は柄7の係合部71の中に収容されているため、使用者は柄7を把持したまま片手で蓋体5を開けることができ、さらに排出口22を下に向けることによって収塵室37に溜まった塵埃が落ち、排出が完了する。
【0041】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る手動掃除具を図6および7に示す。図6は第2の実施形態に係る手動掃除具を示す斜視図であり、図7は底面図および部分断面図である。本実施形態に係る手動掃除具1は、第1の実施形態の手動掃除具の左右両端に車輪5,5を脱着可能に設けたものである。
【0042】
基体2の側壁24には、保持孔241と同軸に車軸27が突設されている。そして車軸27の凹部271に車輪5の突起51を係合することによって、車輪5を回転自在に基体2に保持することができる。ここで回転とは、一軸まわりにまわる運動であって、360度以上のものを意味する。車輪5はプラスチックで構成されており、材質の弾発力で係合されているため、使用者自身が上記係合を解除して車輪を取り外すことが可能となる。
【0043】
さらに、蓋体28に覆い286を設け、車輪5の上部を覆っている。これにより、手動掃除具1を狭い隙間などに侵入させる際、車輪5周りの物体と干渉するおそれがなく、スムーズに侵入させることができるため好適である。
【0044】
次に車輪5の作用について説明する。第1の実施形態において述べたとおり、手動掃除具1を前後に移動させることによって被掃除面の塵埃を捕集することができる。このとき、前捕塵ブラシ36aおよび後捕塵ブラシ36bと被掃除面とが摺動することになるが、被掃除面と前捕塵ブラシ36aおよび後捕塵ブラシ36bとの間に、進行方向と逆向きの摩擦力が発生する。一方、使用者は柄7を把持して進行方向に向けて摩擦力に抗して力を加える。このとき使用者が動かす力の作用点は摩擦力の作用点より必ず上方であるため、この力の作用点のオフセットにより、手動掃除具1に回転モーメントが働く。
【0045】
手動掃除具1を前方に移動させる場合、手動掃除具1に作用する回転モーメントの方向は、図2における反時計方向となる。すなわち、捕塵体3を被掃除面に押し当てる方向に作用する。この回転モーメントによって、捕塵ブラシ36と被掃除面との当接はさらに強まり、塵埃を捕集する効果は向上する。
【0046】
それに対して、手動掃除具1を後方に移動させる場合、手動掃除具1に作用する回転モーメントの方向は、図2における時計方向となる。すなわち、捕塵体3が被掃除面から浮き上がる方向に作用する。すると、前捕塵ブラシ36aおよび後捕塵ブラシ36bと被掃除面との当接が弱まり、摩擦力の大きさによっては被掃除面から浮き上がる場合がある。その場合、塵埃を捕集する効果が低下する。さらに、捕塵体3が被掃除面からのジャンプと接地を繰り返す自励振動が発生するおそれもある。振動は柄7に伝達し、把持する使用者に不快感を与える。
【0047】
ここで車輪5を設けると、手動掃除具1と被掃除面との常時の当接を確実にすることができ、振動に対して車輪5と基体2との間で減衰効果を発揮し、自励振動の発生を抑制することができる。さらにもしも自励振動が発生しても、振動を車輪側に伝えるため、柄7に伝達される不快な振動を遮断することができる。
【0048】
なお、被掃除面の材質によって発生する摩擦力は異なり、車輪なしでもスムーズに前後に移動することができる場合もある。そのため、車輪8は使用者が適宜脱着できるよう、基体2の左右両端に脱着可能に設けることが好適である。
【0049】
以上詳述したように、この発明の手動掃除具によれば、被掃除面に当接して前後に動かすだけで塵埃を自動的に捕集することができ、しかも集めた塵埃を容易に捨てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施形態における手動掃除具を示す斜視図である。
【図2】図1の断面A−Aを示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における手動掃除具を示す底面図および図2の断面B−Bを示す部分断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における手動掃除具を前進させた状態を示した断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における手動掃除具を後退させた状態を示した断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態における手動掃除具を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における手動掃除具を示す底面図および部分断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 手動掃除具
2 基体
21 導入口
22 排出口
23 側壁
24 側壁
241 保持孔
25 軸受
26 隔壁
261 保持孔
27 車軸
271 凹部
28 蓋体
281 開閉軸
282 舌片
283 係止部
284 つまみ
285 円筒壁
286 覆い
3 捕塵体
31 収塵開口
311 縁
32 周壁
33 側壁
34 突起
35 突起体
36a 前捕塵ブラシ
36b 後捕塵ブラシ
37 収塵室
4a 前除塵体
4b 後除塵体
41 回動軸
42 ばね
43a 前除塵ブラシ
43b 後除塵ブラシ
5 車輪
51 突起
6 緩衝部材
7 柄
71 係合部
711 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有し、該内部空間が下方外部と連通して塵埃を取り入れる導入口が設けられるとともに、前記内部空間が上方外部と連通して塵埃を排出する排出口が設けれられ、しかも該排出口には蓋体が設けられた基体と、
前記基体の前記内部空間内に前後方向に回動可能に保持され、上部に収塵開口が設けられた中空の捕塵体と、
前記捕塵体の前方および後方に位置して前記基体に保持され、除塵面を前記捕塵体に当接するよう常時付勢される前除塵体および後除塵体とを備え、
前記捕塵体は、回動軸心を中心とする断面円弧状の外周面を有し、該外周面の一部が前記導入口から露出されるとともに、前記外周面の周長の中央に、半径方向外側に向け突出して前記外周面を前領域および後領域の二つの領域に区画する突起体が設けられ、
前記前領域には先端を前記収塵開口の前方側の縁に向けて傾倒した傾斜パイルからなる前捕塵ブラシが設けられており、
前記後領域には先端を前記収塵開口の後方側の縁に向けて傾倒した傾斜パイルからなる後捕塵ブラシが設けられており、
前記前除塵体および前記後除塵体それぞれの前記除塵面は、前記前領域および前記後領域それぞれに対向し、
前記前除塵体の前記除塵面には、先端を前記捕塵体の前記収塵開口の前方側の縁に向けて傾倒した傾斜パイルからなる前除塵ブラシが設けられており、
前記後除塵体の前記除塵面には、先端を前記捕塵体の前記収塵開口の後方側の縁に向けて傾倒した傾斜パイルからなる後除塵ブラシが設けられており、
前記基体の回動軸方向の中央に、後方に向けて延出する柄が設けられ、
前記捕塵体が所定の角度回動したとき前記捕塵体の前記収塵開口の回動方向の縁が接触する緩衝部材が、前記基体に設けられている
ことを特徴とする手動掃除具。
【請求項2】
前記蓋体の前方側の縁が前記排出口の前方の縁部に軸支され、
前記蓋体の後方側の縁から延出する舌片が前記柄に設けられた係合部に係止される
ことを特徴とする請求項1に記載の手動掃除具。
【請求項3】
前記捕塵体が回動する方向と同一の方向に回転可能に前記基体に保持された一対の車輪をさらに備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の手動掃除具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−207646(P2009−207646A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52843(P2008−52843)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000228822)日本シール株式会社 (12)