説明

手持ち動力工具および手持ち動力工具のアタッチメント

騒音の少ない手持ち動力工具および手持ち動力工具のアタッチメントを提供することを目的としている。 動力により駆動する駆動部を有する工具本体と、駆動部に装着され駆動部の駆動によって工作対象物に作用する作用部を有する作用体とを備える手持ち動力工具において、駆動部を囲むように設けられたハウジングおよび作用体の少なくともいずれか一方の一部が、空気層と透湿性樹脂層とを備える吸音構造体によって覆われていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手持ち動力工具およびそのアタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
インパクトレンチ、オイルパルスレンチ、チッピングハンマ、スケーリングハンマ、エアーサンダ等の手持ち動力工具が従来から使用されている。
【0003】
この手持ち動力工具として衝撃式回転ねじ締め工具の1種であるインパクトレンチは、衝撃力発生機構としてのハンマによる被駆動軸(アンビル)への打撃が1秒間に約15回生じ、これが連続して行われ、鉄鋼材料でできたハンマと被駆動軸とが激しく衝突することにより、大きな回転力が発生してねじ締め、緩めを行うようになっている。
【0004】
そして、ねじ締め、緩めを行うときに周波数の高い衝撃音が発生するが、この衝撃音はハウジング内部の空気を振動させ、また打撃時の振動は被駆動軸の軸受け部を通して衝撃力発生機構を内蔵しているハウジングに伝わり、ハウジングの振動がその周りの空気を振動させることによって、騒音が発生するようになっている。
【0005】
また、被駆動軸と、それに嵌め込まれたアタッチメントとしてのソケット(衝撃力伝達要素)との間、およびソケットと六角ボルトまたは六角ナットの六角形の頭との間に遊びがあるため、これらの遊び箇所においても衝撃力発生機構による打撃に続いて発生する被駆動軸によるソケットの打撃時、およびソケットによるねじの打撃時に生じるソケットの振動がその周囲の空気を振動させることによって、騒音が発生するようになっている。
【0006】
一方、オイルパルスレンチの場合、衝撃力発生機構であるオイルシリンダとベーンとの摩擦による振動が衝撃力発生機構を内蔵しているハウジングに伝わってハウジングも振動し、工具の周囲の空気を振動させることによって、騒音が発生するようになっている。
チッピングハンマやスケーリングハンマの場合、シリンダ内を往復移動するピストンの先端が往動時に往動方向に設けられた作用部を備えたアタッチメントとしてのチゼル(衝撃力伝達要素)の後端を打撃するとき、またそれに続くチゼルが工作対象物を打撃する時にもインパクトレンチの場合と同様にハウジングやチゼルの振動によって、その周囲に騒音が発生するようになっている。
【0007】
エアーサンダの1つであるダブルアクションサンダの場合、エアーモータの回転時にベーンとシリンダが擦れることによる振動や、バランスシャフトが偏心回転する際にそれがハウジング内の空気を撹拌する音の振動が、その駆動部の周囲を囲っているハウジングに伝わり、そのハウジングの振動によってハウジングの外側の空気を振動させることによって、その周囲に騒音が発生するようになっている。
【0008】
そこで、ハウジングの外周にシート状のゴムを巻き付けたり、ハウジングの外周にスポンジを巻き付けるとともに、スポンジの外側にゴムカバーを施しハウジング内で発生する騒音を吸音させるようにした手持ち動力工具が既に提案されている(特許文献1等参照)。
しかし、上記の手持ち工具のような吸音構造では、十分な吸音効果を発揮せず、依然として大きな騒音が外部に漏れ出ているのが現状である。
【0009】
【特許文献1】特開平9−109044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みて、騒音の少ない手持ち動力工具およびアタッチメントを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明にかかる手持ち動力工具は、動力により駆動する駆動部を有する工具本体と、駆動部に装着され駆動部の駆動によって工作対象物に作用する作用部を有する作用体とを備える手持ち動力工具において、駆動部を囲むように設けられたハウジングおよび作用体の少なくともいずれか一方の一部が、空気層と透湿性樹脂層とを備える吸音構造体によって覆われていることを特徴としている。
【0012】
本発明の手持ち動力工具において、吸音構造体は、請求項2のように、透湿性樹脂層と内部に空気層を有する繊維シート層とからなる透湿性シート材料で形成されていることが好ましい。さらに、請求項3のように、人間の聴覚感度の高い周波数バンドである2kHz〜6kHzの周波数バンドの騒音を低下させることが好ましく、人間の聴覚感度のもっとも高い領域である3kHz〜5kHz(1999年工業調査会発行の「わかりやすい静音化技術」p42参照)の周波数バンドの騒音を低下させることがより好ましい。
【0013】
一方、本発明にかかるアタッチメントは、手持ち動力工具の駆動部に着脱自在な作用部を有する手持ち動力工具用のアタッチメントにおいて、少なくとも一部が空気層と透湿性樹脂層とを備える吸音構造体によって覆われていることを特徴としている。
【0014】
本発明において、手持ち動力工具としては、特に限定されず、たとえば、インパクトレンチ、オイルパルスレンチ等の衝撃式回転ねじ締め工具、チッピングハンマ、スケーリングハンマ等の衝撃式往復動工具、ナットランナ、ラチェットレンチ等の非衝撃式回転ねじ締め工具、ダブルアクションサンダ、オービタルサンダ、グラインダ、ディスクサンダ、ポリッシャ、ベルトサンダ等の非衝撃式回転研磨・磨き工具、レシプロソー等の非衝撃式往復切断工具などが挙げられ、その駆動方式としては、エアー駆動式、電動式(充電タイプも含む)のものが挙げられる。
【0015】
駆動部とは、ハンマおよび被駆動軸受撃部、オイルシリンダおよびベーン部分やモータ部分だけでなく、減速手段、ピストン摺動部、バランスシャフト部分(バランスをとるためのものでカウンタウェイト、バランスウェイト等)などの部分が含まれる。
本発明において作用部とは、駆動部の駆動によって回転、往復動等を行うことによって、工作対象物に作用する部分を言い、たとえば、ボルト頭部やナットが嵌まり込むソケットの穴、チゼルの先端、鋸刃の刃先、ディスクの研削面などが挙げられ、このような作用部を備えた作用体としてのソケット、チゼル、鋸刃、ディスク等は、駆動部と一体構造あるいはビス止め等によって直結されていても構わないし、駆動部に着脱自在なアタッチメントとなっていても構わない。
【0016】
本発明において、透湿性樹脂とは、水蒸気は透過するが、防水性を備えたものであれば、特に限定されないが、たとえば、四フッ化エチレン樹脂等のフッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミノ酸ウレタン樹脂等の微多孔質体、あるいは、無孔の吸湿性変性ポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0017】
微多孔質樹脂の孔径としては、特に限定されないが、0.1〜10μm程度が好ましく、1〜10μm程度がより好ましい。
透湿性樹脂層の厚みとしては、特に限定されないが、10〜85μm程度が好ましい。
【0018】
透湿性樹脂層の透湿度は、特に限定されないが、3000g/m・day以上10000g/m・day以下が好ましい。
【0019】
空気層は、特に限定されないが、たとえば、ハウジングと、透湿性樹脂層との間に柱状のスペーサを設け、このスペーサによって透湿性樹脂層と、ハウジングとの間に空気層となる隙間を形成する方法や、透湿性樹脂層とハウジングとの間に合成繊維あるいは天然繊維の織編物や不織布等の内部に空気層を含む繊維構造材を介在させる方法等が挙げられる。
なお、吸音構造体としては、透湿性樹脂層と空気層を構成する繊維構造材とが予めシート状に一体成形されている市販の透湿性シート材料を用いるようにしても構わない。
【0020】
上記のような透湿性シート材料としては、たとえば、ゴアテックス社製ゴアテックスメンブレン(ゴアテックスは登録商標)、日東電工社製ミクロテックス(ミクロテックスは登録商標)等の微多孔質のフッ素樹脂フィルムを合成繊維または天然繊維を使用した編織物(基布)、不織布、フェルト、ネットなどに接着剤によって貼り合わせた微多孔質体ラミネートタイプのもの、ポリアミノ酸ウレタン樹脂や東レコーテックス社製エントラント(エントラントは登録商標)等のポリウレタン樹脂を有機溶剤に溶かした樹脂溶液を織編物の片面にコーティングしたのち脱溶媒および凝固によって微多孔質の透湿性樹脂層を形成するコーティングタイプのもの、特開2002−30576号公報に開示されているような吸湿性変性ポリウレタン(無孔親水性ウレタン樹脂)、特殊ポリエステル樹脂、疎水性のポリアミノ酸樹脂のフィルム等を合成繊維または天然繊維を使用した編織物(基布)、不織布、フェルト、ネットなどに接着剤によって貼り合わせた無孔透湿性樹脂ラミネートタイプのもの、吸湿性変性ポリウレタン(無孔親水性ウレタン樹脂)、特殊ポリエステル樹脂、疎水性のポリアミノ酸樹脂を合成繊維または天然繊維を使用した編織物(基布)、不織布、フェルト、ネットなどに塗布するコーティングタイプのものなどが挙げられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる手持ち動力工具は、以上のように構成されているので、従来の手持ち動力工具に比べ、騒音が少なく、静かな作業環境で作業を行うことができる。
【0022】
また、吸音構造体が、透湿性樹脂層と内部に空気層を有する繊維シート層とからなる透湿性シート材料で形成されているようにすれば、容易に製造することができる。
【0023】
さらに、人間の聴覚感度の高い周波数バンドである2kHz〜6kHzの周波数域の騒音を低下させるようにすれば、もっとも効率よく作業者に騒音による不快感を催させなくすることができる。
【0024】
一方、本発明にかかるアタッチメントは、以上のように構成されているので、工作対象物と作用部との間で発生する騒音も抑えることができ、より騒音を低減できるとともに、既存の手持ち動力工具に装着すれば、既存の手持ち動力工具の騒音を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる手持ち動力工具の1例としてのインパクトレンチをあらわしている。
【0026】
図1に示すように、このインパクトレンチAは、工具本体1aと、作用部を備えたアタッチメントとしてのソケット2aとを備えている。
工具本体1aは、アルミニウム製のハウジング3a内にモータ41および被駆動軸42を有する駆動部4aが設けられ、被駆動軸42の先端にソケット2aが着脱自在に設けられている。
【0027】
そして、ハウジング3aの周囲は、2〜10mm程度の厚みの不織布5と、透湿性シート材料6とからなる吸音構造体9によって覆われている。
透湿性シート材料6は、図2に示すように、ジャパンゴアテックス社製ゴアテックスメンブレン(ゴアテックスは登録商標)、日東電工社製ミクロテックス(ミクロテックスは登録商標)等の微多孔性樹脂からなる透湿性樹脂層61と、不織布等からなる繊維シート62とが積層された市販品のものが用いられていて、繊維シート62側を不織布5側に向けて不織布5の周囲に巻回されている。
【0028】
透湿性シート材料6の周囲には、透湿性シート材料6および不織布5を汚れや破損等から保護するための樹脂プロテクタ7aが被されている。
樹脂プロテクタ7aは、工具本体1aを覆うように設けられた工具本体カバー部71と、ソケット2aの部分を囲むように設けられた筒状をしたソケットカバー部72とを一体に備えている。
【0029】
ソケットカバー部72は、透湿性シート材料6および不織布5がその内周面に積層されていて、その内径がハウジング3a中心部から延出している被駆動軸42の先端42aに装着される最大径のソケット2aの外径より大きくなっている。
そして、このインパクトレンチAは、ねじ締めあるいは緩めを行おうとする工作対象物としてのボルト8あるいはナットの径に適合するソケット2aを被駆動軸42の先端42aにセットしたのち、ソケット2aの作用部としての穴20内にボルト8の頭部81を臨ませ、エアーによりモータ41を回転させて、その回転駆動力によって被駆動軸42を介してソケット2aを回転させて、ねじ締めあるいは緩めを行うようになっている。
【0030】
このインパクトレンチAは、以上のように、工具本体1aの駆動部4aの周囲に透湿性シート材料6が巻回されているので、ハンマ43が被駆動軸42を打撃する時に発生する衝撃的な騒音とともに、モータ回転時に発生する擦過音等のハウジング3a内で発生する騒音を低減する。したがって、防音効果が高いものとなる。
【0031】
すなわち、ハウジング3a内で発生した騒音は、まず多孔質型吸音材の一種である不織布5の内部に伝わり、不織布5内部にある小さい孔内の空気を振動させることによって、音のエネルギーが熱エネルギーに変換されて騒音が少し減少する。そして、不織布5によって吸収されなかった騒音は、音のエネルギーが透湿性シート材料6の繊維シート62の内部の空気層によってさらに熱エネルギーに変換されたのち、透湿性樹脂層61に設けられた微細孔によって共鳴吸収され広い周波数範囲に亙っての吸音がなされる。
【0032】
しかも、被駆動軸42の先端42aに装着されたソケット2aが、ソケットカバー部72によって囲まれるとともに、ソケットカバー部72の内周面に、透湿性シート材料6および不織布5がその内周面に積層されているので、被駆動軸42によるソケット2aへの打撃およびソケット2aによるボルト頭部81への打撃によって生じる打撃音が不織布5および透湿性シート材料6によって吸音される。
したがって、騒音の軽減効果が大きくなり、静かな作業環境を得ることができる。
【0033】
また、吸音構造体9が、透湿性樹脂層61と、不織布等からなる繊維シート62とが積層された透湿性シート材料6によって形成されているので、本発明のインパクトレンチAを容易に製造することができる。
なお、上記インパクトレンチAの場合、樹脂プロテクタ7aの工具本体カバー部71とソケットカバー部72とが一体になっていたが、ソケットカバー部72を工具本体カバー部71に対して着脱自在とし、異なる径のソケット2aに交換するごとに、そのソケット2aの外径に適合したソケットカバー部72に交換するようにしても構わない。このようにすれば、ソケット2aの部分で発生する騒音をより小さくすることができる。
【0034】
図3は本発明にかかる手持ち動力工具の1例としての他のインパクトレンチおよび本発明にかかるアタッチメントの1例としてのソケットをあらわしている。
図3に示すように、このインパクトレンチBは、樹脂プロテクタ7bがソケットカバー部を備えていないとともに、ソケット2bが、ソケット本体21の周囲に不織布5および透湿性シート材料6が積層された構造をしている以外は、上記インパクトレンチAと同様になっている。
【0035】
このインパクトレンチBは、以上のように、樹脂プロテクタ7bがソケットカバー部を備えておらず、ソケット本体21の周囲に不織布5および透湿性シート材料6が積層された本発明のアタッチメントであるソケット2bが装着されるようになっているので、ソケット2bの径の制限がなく、すなわち大きな径のソケット2bも装着することができる。したがって、ソケット2bを交換すれば,上記のインパクトレンチAに比べ、1種類のインパクトレンチBのみでいろいろな径のボルトナットを締め込んだり緩めたりすることができる。
また、ソケット2bは、ソケット本体21の周囲に不織布5および透湿性シート材料6が積層された状態になっているので、既存のインパクトレンチに装着すれば、既存のインパクトレンチの騒音の発生を低減することができる。なお、図3中、1aは工具本体である。
【0036】
図4は、本発明にかかる手持ち動力工具の1例としてのオイルパルスレンチをあらわしている。
図4に示すように、このオイルパルスレンチCは、工具本体1cの駆動部4cを覆うハウジング3cと透湿性シート材料6との間に不織布5の層が設けられていない以外は、上記インパクトレンチBと同じ吸音構造を備えている。
【0037】
このオイルパルスレンチCは、以上のように、不織布5の層が設けられていないので、不織布5の層が設けられたものに比べ、小型化することができる。
なお、図4中、7cは樹脂プロテクタである。
【0038】
図5は本発明にかかる手持ち動力工具の1例としてのチッピングハンマをあらわしている。
図5に示すように、このチッピングハンマDは、工具本体1dのハウジング3dと、駆動部4dのシリンダ部45と、作用部を備えたアタッチメントとしてのチゼル2dのシリンダ挿入部側23を囲む部分とが、内面にそれのみで吸音構造体となる透湿性シート材料6が貼着された樹脂プロテクタ7dで覆われている。そして、図5および図6に示すように、チゼル2dが、チゼル本体25の作用部となる先端部およびシリンダ挿入部側を除き、吸音構造体となる透湿性シート材料6で覆われている。
【0039】
したがって、ハウジング3d内で発生する騒音およびチゼル2dが工作対象物(図示せず)の表面を切削する際のチゼル2dの振動によって生じる騒音も吸音構造体としての透湿性シート材料6によってうまく吸音して騒音を少なくすることができる。
また、チゼル2dは、チゼル本体25の作用部となる先端部およびシリンダ挿入部側を除き、透湿性シート材料6で覆われているので、既存のチッピングハンマに装着すれば、既存のチッピングハンマの騒音の発生を低減することができる。
【0040】
図7は、本発明にかかる手持ち動力工具の1例としてのナットランナをあらわしている。
図7に示すように、このナットランナEは、工具本体1eの駆動部4eを覆うハウジング3eと透湿性シート材料6との間に不織布5の層が設けられていない以外は、上記インパクトレンチBと同じ吸音構造を備えている。なお、図7中、2eはアタッチメントとしてのソケット、7eは樹脂プロテクタである。
【0041】
図8は、本発明にかかる手持ち動力工具の1例としてのラチェットレンチをあらわしている。
図8に示すように、このラチェットレンチFは、工具本体1fの駆動部4fを覆うハウジング3fと透湿性シート材料6との間に不織布5の層が設けられていない以外は、上記インパクトレンチBと同じ吸音構造を備えている。
なお、図8中、7fは樹脂プロテクタである。
【0042】
図9は、本発明にかかる手持ち動力工具の1例としてのダブルアクションサンダをあらわしている。
図9に示すように、このダブルアクションサンダGは、工具本体1gの駆動部4gを覆うハウジング3gと透湿性シート材料6との間に不織布5の層が設けられていない以外は、上記インパクトレンチBと同じ吸音構造を備えている。なお、図9中、2gはアタッチメントとしてのディスク、7gは樹脂プロテクタである。
【0043】
図10は、本発明にかかる手持ち動力工具の1例としてのレシプロソーをあらわしている。
図10に示すように、このレシプロソーHは、工具本体1hの駆動部4hを覆うハウジング3hと透湿性シート材料6との間に不織布5の層が設けられていない以外は、上記インパクトレンチBと同じ吸音構造を備えている。なお、図10中、2hはアタッチメントとしての鋸刃、7hは樹脂プロテクタである。
【0044】
図11は、本発明にかかるアタッチメントの1例としてのソケットの他例および連結棒をあらわしている。
図11に示すように、このソケット2iおよび連結棒2jが、連結棒本体26のソケット嵌合部27を除き、周囲が透湿性シート材料6で覆われていて、図3に示すようなインパクトレンチBや既存のインパクトレンチ等に装着することができるようになっている。なお、図11中、28はソケット本体である。
【実施例1】
【0045】
既存のエアーインパクトレンチ(空研社製エアーインパクトレンチKW−1600Spro排気ホース(30cm)付き)のハウジングを空気層を形成する厚さ10mmの不織布(住友スリーエム社製シンサレート(登録商標)NL200L)で覆い、その外側に1.7mmの透湿性シート材料(アンビック社製の商品名FT0503F(不織布に厚み15μm、透湿度8000g/m・24時間の四フッ化エチレン樹脂多孔質膜(日東電工社製ミクロテックス(ミクロテックスは登録商標))をラミネートしたもの)を巻き、一番外側に工具本体カバー部を取り付けた本発明の手持ち工具の実施例としてのサンプルエアーインパクトレンチを作製した。
【0046】
また、不織布および透湿性シート材料に代えて、厚さ20mmのポリエーテル系樹脂製吸音フォーム(ブリジストン社製 吸音フォームVD)でハウジングを覆うようにした以外は、上記の本発明のサンプルエアーインパクトレンチと同様にして比較例のサンプルエアーインパクトレンチを作製した。
【0047】
そして、上記のようにして得た実施例および比較例のサンプルエアーインパクトレンチのそれぞれについて、無響室内で固定打撃盤を打撃した時に発生する。騒音を周波数補正回路A特性(JIS C 1505:1988)で5秒間データを3回ずつ採取し、それを1/3オクターブ分析し、その各中心周波数での騒音レベルの平均値を求め、その結果を図12のグラフに示した。なお、マイク位置は、インパクチレンチの幾何学的中心点から距離1mの仰角45°の地点、排気方向は、水平方向で、マイク位置に対して90°となる方向であった。
【0048】
図12に示すように、全周波数帯域(AP:オールパス)での騒音レベルでは値にほとんど違いはなかったが、1/3オクターブ分析では人間の聴覚としてもっとも感度の高い領域である3〜5kHz付近のうち、5kHzで大きな違いが見受けられた。つまり、5kHzにおいて、比較例では、騒音レベルがすべての周波数バンドにおける最大の81.6dBであったのに対し、実施例のものは、5kHzにおいて、騒音レベルが74.8dBと、比較例のものに比べ、6.8dBの騒音レベルの低下がみられる。また、模擬空調音の上に種々の周波数変調音(FM音)を重畳させた音についてSD法(Semantic Differencial Method)で評価を求めた結果によると、高い周波数ほど音の評価として「不快である」、「刺々しい」という印象をもつとされている(株式会社フジ・テクノシステム2000年発行「音の環境と制御技術」第1巻 基礎技術 P128−130参照)。
【0049】
したがって、上記のように、人間の聴覚としてもっとも感度の高い周波数領域である3〜5kHzの中でもっとも「不快である」、「刺々しい」という印象を与える5kHzの騒音レベルが大きく低下することは、手持ち動力工具を操作する作業者にとって、騒音の不快さを著しく改善することが可能となると言える。
【図面の簡単な説明】
【0050】
[図1]本発明にかかる手持ち動力工具の1例としてのインパクトレンチの断面図である。
[図2]本発明の手持ち動力工具に用いられる透湿性シート材料の断面を模式的にあらわす図である。
[図3]本発明にかかる手持ち動力工具の1例としての他のインパクトレンチの断面図である。
[図4]本発明にかかる手持ち動力工具の1例としてのオイルパルスレンチの断面図である。
[図5]本発明にかかる手持ち動力工具の1例としてのチッピングハンマの断面図である。
[図6]本発明にかかるアタッチメントの1例としてのチゼルであって、同図(a)はその一部切欠平面図、同図(b)はその一部切欠側面図である。
[図7]本発明にかかる手持ち動力工具の1例としてのナットランナの断面図である。
[図8]本発明にかかる手持ち動力工具の1例としてのラチェットレンチの断面図である。
[図9]本発明にかかる手持ち動力工具の1例としてのダブルアクションサンダの断面図である。
[図10]本発明にかかる手持ち動力工具の1例としてのレシプロソーの断面図である。
[図11]本発明にかかるアタッチメントの1例としてのソケットおよび連結棒をあらわす断面図である。
[図12]実施例のエアーインパクトレンチと比較例のエアーインパクトレンチの周波数バンド別騒音レベル比較のグラフである。
【符号の説明】
【0051】
A,B インパクトレンチ(手持ち動力工具)
C オイルパルスレンチ(手持ち動力工具)
D チッピングハンマ(手持ち動力工具)
E ナットランナ(手持ち動力工具)
F ラチェットレンチ(手持ち動力工具)
G ダブルアクションサンダ(手持ち動力工具)
H レシプロソー(手持ち動力工具)
1a,1c〜1h 工具本体
2a,2b,2e,2i ソケット(アタッチメント)
2d チゼル(アタッチメント)
2j 連結棒(アタッチメント)
3a,3c〜3h ハウジング
4a,4c〜4h 駆動部
5 不織布
6 透湿性シート材料
7a〜7h 樹脂プロテクタ
8 ボルト(工作対象物)
9 吸音構造体
20 穴(作用部)
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力により駆動する駆動部を有する工具本体と、駆動部に装着され駆動部の駆動によって工作対象物に作用する作用部を有する作用体とを備える手持ち動力工具において、
駆動部を囲むように設けられたハウジングおよび作用体の少なくともいずれか一方の一部が、空気層と透湿性樹脂層とを備える吸音構造体によって覆われていることを特徴とする手持ち動力工具。
【請求項2】
吸音構造体が、透湿性樹脂層と内部に空気層を有する繊維シート層とからなる透湿性シート材料で形成されている請求項の範囲1に記載の手持ち動力工具。
【請求項3】
2kHz〜6kHzの周波数バンドの騒音を低下させる請求項の範囲1または請求項の範囲2に記載の手持ち動力工具。
【請求項4】
作用部を有し、手持ち動力工具の駆動部に着脱自在な手持ち動力工具用のアタッチメントにおいて、少なくとも一部が空気層と透湿性樹脂層とを備える吸音構造体によって覆われていることを特徴とするアタッチメント。

【国際公開番号】WO2004/110701
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506900(P2005−506900)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007925
【国際出願日】平成16年6月7日(2004.6.7)
【出願人】(000142517)株式会社空研 (9)