説明

手摺用被覆材

【課題】 熱膨張性マイクロカプセルを使用して発泡させた樹脂を嵌着式の手摺用被覆材を提供すること。
【解決手段】 壁面等に敷設された芯材に対して後から装着できるようにした嵌着型の被覆材において、熱可塑性樹脂を使用し、該樹脂の軟化点以下の温度でガス状になる揮発性膨張剤をマイクロカプセル化した熱膨張性マイクロカプセルを基本の軟質の合成樹脂中に加えて熱処理することにより製造した発泡樹脂成形物を芯材への係合片ができるような形状に成形し、且つ、表面を非発泡性樹脂で包んだ2層構造にしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性マイクロカプセルを使用して物理的発泡させた軟質の合成樹脂を使用した手摺用被覆材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】 登録実用新案第3014382号公報
【特許文献2】 特許第3017913号公報
【特許文献2】 特許第2894990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来から発泡塩化ビニル樹脂を被覆材とした手摺は、例えば、特許文献1の登録実用新案第3014382号公報等に記載されるように公知である。
【0004】
これらの発泡性樹脂から成形された被覆材は、非発泡性樹脂を被覆材としたものと比べて軽量であり、触感として温もり感があって手摺として好適であったが、この発泡性樹脂の発泡の原理は化学的発泡によるもので、樹脂自体を発泡させるものであった。
【0005】
つまり、化学的発泡によって樹脂自体を発泡させるということは、樹脂部(島部)と空間部(海部)の比率は略一定で、かつ、樹脂全体の島海構造は海部の方が島部よりも小さいつまり発泡率の低い状態の発泡であるだけでなく、樹脂層内部に単なる空洞ができるだけのものであった。
【0006】
そのため、発泡性樹脂は非発泡性樹脂に比べて弾力性に乏しく、発泡性樹脂の周りを非発泡性樹脂で包んだ2層構造にしても弾力性が不足し、特許文献2の特許第3017913号公報の図4に記載されるような芯材の周り全体を包んだ形の手摺は製作することはできるが、図1に記載されるような形状として壁面等に敷設された芯材に対して後から装着できるようにした芯材との分離型つまり嵌着型の被覆材とした場合には、弾力性の不足つまり復元力が弱いことにより装着後簡単な治具で剥がされてしまうという問題点があって、現在実施されておらない状況である。
【発明の目的】
【0007】
本発明は、従来の化学的な発泡性樹脂の問題点を解決するために、特許文献3の特許第2894990号公報等に記載されるような熱膨張性マイクロカプセルを使用して発泡させた樹脂を使用して芯材との分離型つまり嵌着型にできる手摺用被覆材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の手摺用被覆材は、壁面等に敷設された芯材に対して後から装着できるようにした嵌着型の被覆材において、熱可塑性樹脂を使用し、該樹脂の軟化点以下の温度でガス状になる揮発性膨張剤をマイクロカプセル化した熱膨張性マイクロカプセルを基本の軟質の合成樹脂中に加えて熱処理することにより製造した発泡樹脂成形物を芯材への係合片ができるような形状に成形し、且つ、表面を非発泡性樹脂で包んだ2層構造にしたことを特徴とするものである。
【発明の作用】
【0009】
本発明の手摺用被覆材では、被覆材の製造工程で基本の樹脂中に含まれる熱膨張性マイクロカプセルの揮発性膨張剤の物理的な発泡によって被覆材を製造しているので、弾力性の低下は極力抑えられ、非発泡性樹脂で成形された被覆材とほとんど変わらぬ弾力性が保持されるだけでなく、熱膨張性マイクロカプセルの含有量や発泡温度の調節によって発泡率を自在に変更できる。
【0010】
熱膨張性マイクロカプセルの揮発性膨張剤の物理的な発泡による被覆材が非発泡性樹脂で成形された被覆材とほとんど変わらぬ弾力性が保持される理由は、熱可塑性樹脂の軟化点以下の温度でガス状になるマイクロカプセル内の揮発性膨張剤が気化する際の極めて大きな体積膨張によって樹脂層を内部から押す力が発生するためで、樹脂層内部に単なる空洞ができるだけの化学的な発泡による被覆材と異なるためである。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の被覆材と芯材の一例を表わす縦断側面図、図2は、本発明の被覆材を芯材に装着して手摺とした状態の縦断側面図である。
【0012】
図1、2において、1は、芯材Aの係合段部a、aに係止するための係合片1−1、1−1を形成し、表面を軟質又は半硬質の非発泡性樹脂2で包んだ2層構造にした被覆材である。
【0013】
本発明の被覆材1は、基本となるポリプロピレン、ポリスチレン等の軟質の合成樹脂に揮発性膨張剤をマイクロカプセル化した熱膨張性マイクロカプセルを混合し、該マイクロカプセルの熱膨張をもたらすのに充分な温度でカレンダ加工、押出、ブローまたは射出等の方法で成形されるもので、同時に表面側となる部分を軟質又は半硬質の非発泡性樹脂2で包んで2層構造にしたもので、この被覆材1を芯材Aの上方から嵌合して係合片1−1、1−1を係合段部a、aに係止嵌着して図2のような手摺とするものである。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように、本発明の手摺用被覆材によれば、壁面等に敷設された芯材に対して後から装着できるようにした嵌着型の被覆材において、熱可塑性樹脂を使用し、該樹脂の軟化点以下の温度でガス状になる揮発性膨張剤をマイクロカプセル化した熱膨張性マイクロカプセルを基本の軟質の合成樹脂中に加えて熱処理することにより製造した発泡樹脂成形物を芯材への係合片ができるような形状に成形し、且つ、表面を非発泡性樹脂で包んだ2層構造にしたもので、
▲1▼ 樹脂層内部に空洞を形成するための発泡方法を熱膨張性マイクロカプセル内部の膨張圧によって樹脂層を内部から押して樹脂層の弾性力の低下を抑える物理的発泡方法を採用しているため、従来の化学的発泡方法による被覆材では達成できなかった芯材と分離させた嵌着型の被覆材を提供できる。
▲2▼ 表面を非発泡性樹脂で包んだ2層構造にしてあるので、手摺を握る感触が滑らかとなるだけでなく、表面樹脂のみを高価な耐候樹脂にすることができ、表面樹脂層にのみ抗菌材を混入するだけで抗菌効果が得られるので、コストの削減に役立つ。
▲3▼ 被覆材は、従来の化学的発泡と異なる熱膨張性マイクロカプセルによる物理的発泡による発泡樹脂製であるので、樹脂の発泡率が高まり、従来の化学的発泡樹脂における島海構造の島部と海部の大きさが逆転して海部つまり空間部の方が島部つまり樹脂部よりも大きくなって手摺自体の軽量化が図れ、運送費の低減が図れる。
▲4▼ 被覆材は、基本の樹脂中に含まれる熱膨張性マイクロカプセルの含有量や発泡温度の調節によって発泡率を自在に変更できるため、握ったときの固さや暖かさ等の感触を調節することができ、そのため病院等の施設における使用者の要望に応じた手摺を提供できる。
▲5▼ 被覆材に使用する樹脂の発泡率を高めることができることによって体積を増加させることができて強度的な問題を考慮すれば基本の樹脂の使用量を減少させることができ、製造コストの低廉化が図れる。
▲6▼ 発泡樹脂の特性により曲げ加工が容易であり、曲げ部分での皺等の発生を抑えることができて施工現場での作業性の向上が図れる。
という優れた効果を奏し得るもので、芯材と一体型の手摺に限らず芯材と分離させた被覆材嵌着型の手摺を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】 本発明の被覆材と芯材の一例を表わす縦断側面図である。
【図2】 本発明の被覆材を芯材に装着して手摺とした状態の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 被覆材
A 芯材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面等に敷設された芯材に対して後から装着できるようにした嵌着式の被覆材において、熱可塑性樹脂を使用し、該樹脂の軟化点以下の温度でガス状になる揮発性膨張剤をマイクロカプセル化した熱膨張性マイクロカプセルを基本の軟質の合成樹脂中に加えて熱処理することにより製造した発泡樹脂成形物を芯材への係合片ができるような形状に成形し、且つ、表面を非発泡性樹脂で包んだ2層構造にしたことを特徴とする手摺用被覆材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−281128(P2009−281128A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162538(P2008−162538)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(592048176)ケージーパルテック株式会社 (35)
【Fターム(参考)】