説明

手書き込みが可能な表示媒体、表示装置および表示方法

【課題】 液化デジタル信号に基づいて鮮明な主画像を表示することが可能で、この主画像に所望により手書き込みや表示全体を書き換えることが可能であって、構成が複雑でなく、安価な設備で手書き込みが可能な表示媒体、表示装置および表示方法を提供する。
【解決手段】 着色磁性粒子7、白色非磁性粒子9および常温で固相状態を示す熱溶融性有機化合物からなる分散媒8を封入した主マイクロカプセル5と、着色磁性粒子7、白色非磁性粒子11および常温で高粘度の高沸点液体からなる分散媒13を封入した副マイクロカプセル6とが非磁性材からなる支持体2上に配列された記録層3を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動、磁気泳動等を利用した書き換え可能な表示媒体、表示装置および表示方法に関するものであり、特に、前記記録層に磁場を印加して主画像を表示し、また、前記記録層に対して磁気ペンにより所望位置に磁場を与えて前記主画像に影響を与えることなしに所望の手書き込みが可能な表示媒体、表示装置および表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気泳動、磁気泳動を利用した表示手段として、分散媒および電気泳動粒子を封入したマイクロカプセルを適用することにより均一かつ安定した表示動作を行う電気泳動表示装置が特開昭64−86116号公報に、磁気パネルと磁気ペンを用いた磁気泳動を利用したカラー表示手段が特開平4一175196号公報に、分散媒として低沸点溶剤などを用いて記録速度を速め鮮明な画像を得るものが特開平8−54841号公報や特開平8−297470号公報に、ワックス中に磁性粒子を分散した系でサ一マルヘッドによる熱印加と永久磁石の組み合わせにより高品位デジタル画像表示ができるものが特開2004−4412号公報に、着色磁性体と無機顔料粒子とを熱溶融性有機化合物とともにカプセルに封入し、熱と磁気とを印加して画像を表示するものが特開2003−322882号公報に提示されている。
【0003】
ところが、前記従来の画像表示手段は一定のパターンを有する画像を表示するものであり、近頃、一旦表示させた主画像に要望されている入力ペンを用いて加筆し、或いは表示した主画像の一部を削除するなどの手書き込みが可能な表示手段としての機能を有していない。
【0004】
そこで、前述の手書き込みが可能な表示手段が、特開2000−47266号公報、特開2005−208310号公報に提示されている。
【特許文献1】 特開昭64−86116号公報
【特許文献2】 特開平4一175196号公報
【特許文献3】 特開平8−54841号公報
【特許文献4】 特開平8−297470号公報
【特許文献5】 特開2004−4412号公報
【特許文献6】 特開2003−322882号公報
【特許文献7】 特開2000−47266号公報
【特許文献8】 特開2005−208310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特開2000−47266号公報に提示されている手書き込みが可能な表示手段は、マイクロカプセルに封入される分散媒に分散する電気泳動子を入力ペンにより入力ペン側に泳動させて表示画像における表示と非表示とを切り換えて書き換えを行うものであり、書き換えたときに書き換え部の近傍に位置する主画像の内で書き換えたくない表示も一緒に書き換ってしまうという不都合が生じる。
【0006】
また、特開2005−208310号公報に提示されている手書き込みが可能な表示手段は、1つの表示画面にそれぞれ異なる信号により書き換え可能な2種類の画像を混在させることにより確実な書き換え機能を発揮させるものであるが、例えば、電気泳動と磁気泳動のように2つの泳動表示手段並びにこれらの泳動表示手段を制御するための手段を必要とするなど、機構や制御等が複雑であり、設備も大掛かりとなり経済的にも問題があり、特に、主画像に部分的な加筆や部分的な削除を施すような副次的に書き換えを目的とした簡易な用途には向かない。
【0007】
そこで、本発明は、デジタル信号に基づいて鮮明な主画像を表示することが可能で、この主画像に所望により手書き込みや表示全体を書き換えることが可能であって、構成が複雑でなく、安価な設備で手書き込みが可能な表示媒体、表示装置および表示方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するためになされた本発明である書き換え可能な表示媒体は、着色磁性粒子、白色非磁性粒子および常温で固相状態を示す熱溶融性有機化合物からなる分散媒を封入した主マイクロカプセルと、着色磁性粒子、白色非磁性粒子および常温で高粘度の高沸点液体からなる分散媒を封入した副マイクロカプセルとが非磁性材からなる支持体上に配列された記録層を有することを特徴とする。
【0009】
前記記録層に対して所望位置に磁場を印加した状態で前記主カプセル中の分散媒を融点よりも高い温度に加熱して前記着色磁性粒子を選択的に移動させることにより主画像を表示し、前記主カプセル中の分散媒が溶融しない温度において前記記録層に対して磁気ペンにより所望位置に磁場を与えて前記副カプセル中の着色磁性粒子を移動させて前記主画像に手書き込みを容易に行うことができる。
【0010】
特に、本発明である書き換え可能な表示媒体において、主カプセルに封入される分散媒の融点が35℃以上120℃以下であると使い勝手がよく省エネルギーの面でも好ましい。
【0011】
また、本発明においては、前記表示媒体と、前記表示媒体に磁場を印加するための磁場印加手段および前記表示媒体に熱を印加するための熱印加手段と、前記表示媒体を形成する副カプセルに封入した着色磁性粒子へ磁場印加するための磁気ペンとを有し、前記磁場印加手段と熱印加手段とにより前記主カプセル中の分散媒を融点よりも高い温度に加熱して前記着色磁性粒子を選択的に移動させることにより主画像を表示し、前記主カプセル中の分散媒が溶融しない温度において前記記録層に対して磁気ペンにより所望位置に磁場を与えて前記副カプセル中の着色磁性粒子を移動させて手書き込みを行う装置を提供する。
【0012】
特に、前記磁場印加手段が磁性プラテンロールであり、前記熱印加手段がサーマルヘッドであると好ましい。
【0013】
更に、本発明においては、着色磁性粒子、白色非磁性粒子および常温で固相状態を示す熱溶融性有機化合物からなる分散媒を封入した主マイクロカプセルと、着色磁性粒子、白色非磁性粒子および常温で高粘度の高沸点液体からなる分散媒を封入した副マイクロカプセルとが非磁性材からなる支持体上に配列された記録層を有することを特徴とする書き換え可能な表示媒体を用い、前記記録層に対して所望位置に磁場を印加した状態で前記主カプセル中の分散媒の融点よりも高い温度に加熱して前記着色磁性粒子を選択的に移動させることにより主画像を表示し、前記主カプセル中の分散媒が溶融しない温度において前記記録層に対して磁気ペンにより所望位置に磁場を与えて前記主カプセルに基づく主画像表示に影響を与えることなしに副カプセル中の着色磁性粒子を移動させて手書き込みを可能とする書き換え可能な画像表示方法を提供する。この画像表示方法においては、前記記録媒体の全面を主カプセルに封入した分散媒の融点以上の温度に加熱して表示されている全ての画像を消去する初期化を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、記録層を形成する主マイクロカプセル内に封入された熱溶融性有機化合物からなる分散媒を選択的に溶融し、この分散媒に分散させた着色磁性粒子を所定の磁場を印加して選択的に移動させるようにしたことにより高解像度の主画像表示を行うことができるとともに、副カプセル内の着色磁性粒子を磁気ペンにより磁気印可して前記主画像表示に影響を与えることなく所望の手書き込みを行うことができる。
【0015】
尚、手書き込みは熱書き込み信号部分にくらべれば解像度は劣るが、主画像はデジタル信号に基づくもので手書き込みは補助的なメモのレベルなので使用目的からすれば充分な品質といえる。
【0016】
また、本発明によれば、初期化及び主画像表示ともに熱溶融性有機化合物を溶融させる程度の比較的低温の加熱と、磁気印加とを組み合わせて行うことによって簡易に画像表示を行うことができるため、エネルギー消費量が極めて少なく鮮明な画像表示を行うことができる。
【0017】
更に、本発明によれば、主マイクロカプセル内の着色磁性粒子が常温で固相状態を示す熱溶融性有機化合物よりなる分散媒に分散された記録消去時以外は固定された状態となっているため、情報記録後に外部から磁気を印加されても着色磁性粒子は移動することがなく、極めて安定した主画像を得ることができる。
【0018】
更にまた、本発明において、所望の部位をサーマルヘッド(加熱手段)によって溶融させた熱溶融性有磯化合物からなる分散媒に分散させた着色磁性粒子を磁気印加により移動させることによって主画像の形成を行うので微細な画像も形成可能となった。
【0019】
加えて、本発明の表示媒体を構成する記録層は、マイクロカプセルを含有する塗液を支持体上に塗布することによって形成することができるので、極めて簡易な製造工程によって作製することができ、かつ極めて低コストで製造することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、 図面を参照して説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0021】
図1は本発明である書き換え可能な表示媒体についての実施の形態の一例を示す拡大断画概略図であり、表示媒体1は、支持体2上に記録層3および保護層4が積層形成された構成を有している。記録層3は主マイクロカプセル5と副マイクロカプセル6からなる2種類のマイクロカプセルが充填配列された構成を有し、主マイクロカプセル5には、着色磁性粒子7と白色非磁性粒子9が常温で固相状態を示す熱溶融性有機化合物からなる分散媒8に分散された状態で封入されており、副マイクロカプセル6には着色磁性粒子10と白色非磁性粒子11が常温で高粘度の高沸点溶媒からなる分散媒13に分散された状態で沈殿防止剤12とともに封入されている。
【0022】
更に詳しく説明すると、前記支持体2は、例えばポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂類、天然樹脂、紙、合成紙、金属、セラミックス等の非磁性材料を単独で或いは組み合わせたカード状、シート状、フィルム状等の従来公知の形状のものを用途に応じて選択して使用することができるものとし、用途に応じて要求される例えば強度、剛性、隠蔽性、光不透過性等の従来公知の物性を付加させたものとしてもよい。
【0023】
また、記録層3は、主マイクロカプセル5と副マイクロカブセル6とが充填配列された構成を有している。尚、本実施の形態に示す表示媒体1は、主マイクロカプセル5と副マイクロカブセル6とが支持体2上に平面状に充填配列されているが、表示画像の鮮明さや解像度を考慮した上で、積層された構成とすることも可能であり、主マイクロカプセル5と副マイクロカブセル6とを微細に形成することによって、最終的に得られる表示媒体1および表示装置14において表示される画像の解像度を向上させることもできる。
【0024】
主マイクロカプセル5内に封入される着色磁性粒子7の材料は、例えば鉄、ニッケル、鉄・ニッケル・台金、鉄・ニッケル・クロム合金等のステンレススチール、コバルト、コバルト・アルミニウム合金、サマリウム・コバルト合金等の優れた磁性を有するものが挙げられ、これらの粒子を、ボールミル等を用いて均一な微粒子状としたものを使用するとよく、粒径が0.1〜5μm程度の大きさのものが後述する磁気印加による移動のし易さや表示される画像のコントラストなどの点で好適であるが、磁気印加による移動を妨げない形状であれば、球形状、針状等、従来知られている各種形状のものを使用することができる。色彩については、任意のものを選択することができるが、例えば表示する主画像のコントラストを強調することを前提にする場合として黒色を選択するとよい。
【0025】
また、主マイクロカプセル5中に封入される白色非磁性粒子9としては、酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型)、酸化亜鉛、硫化亜鉛などの微粒子が用いられる。
【0026】
また、前記着色磁性粒子7を分散する熱溶融性有機化合物からなる分散媒8としては、常温(約10〜30℃程度)で固相状態を示し、常温以上の温度で流動状態となるものが用いられ、例えばパラフィンワックス、カルナバワックス等の天然あるいは合成ワックス、天然あるいは合成樹脂、またはカルボン酸エステル等を単独であるいは複数を混合して適宜用いることができ、特に固相状態から流動状態への変化が温度変化に応じて急峻であるものが好適である。
【0027】
そして、前記白色磁性粒子7および分散媒8を封入する主マイクロカプセル5は、例えばアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ボリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ゼラチン、アルギン酸等の従来公知の材料を単独で或いは複数を混合したものを用いて形成され、例えば、ポリマー溶液に分散させた前記芯物質のまわりにポリマーの濃厚相を分離させる相分離法、ポリマー溶液中の上記芯物質のまわりにポリマーの硬化剤を作用させてポリマーを硬化させる液中硬化被膜法、前記芯物質を分散させたエマルジョンの内相、或いは外相のいずれか一方からモノマーや重合触媒を供給し、前記芯物質の表面をポリマーで覆うインシチュー重合法、前記芯物質を分散させたエマルジョンの内相と外相の両方からモノマーを供給する界面重合法等のマイクロカプセル化技法等が用いられ、特に、架橋ゼラチン、尿素ホルマリン、メラミンホルマリン樹脂などを用いた相分離法を使用した形成方法を用いると粒径の揃った、かつ前記白色磁性粒子7の移動性が妨げられない均一に分散されたマイクロカプセルを製造することができるので好適であるが、これらの形成方法に限定されるものではない。
【0028】
更に、前記主マイクロカプセル5とともに支持体2上に充填配置されるもう一方の副マイクロカプセル6は磁気ペンよる手書き込み表示を可能とさせるためのものであり、着色磁性粒子10、白色非磁性粒子11、常温で高粘度の高沸点溶媒からなる分散媒13および沈殿防止剤12が封入される。
【0029】
そして、前記着色磁性粒子10は前記主マイクロカプセル5に封入されている着色磁性粒子7と同様の芯材ならびに同様の粒径を有して磁気に対して良好な挙動を発揮するように形成され、更には接着剤と着色剤とで被包して特殊な色調にしてもよい。着色磁性粒子10に付される色彩は、例えば赤色など前記主マイクロカプセル5に用いたものと異なる色彩で、両者が鮮明に区別できるものが好ましいが、特に、限定されるものではなく、前記主マイクロカプセル5の封入物を含めて使用目的などに応じて適宜選択すればよい。
【0030】
一方、副マイクロカプセル6に封入される分散媒13は高粘度の高沸点溶媒からなり、例えば沸点が240℃〜300℃で粘度は2〜15cp程度のものが使用され、具体的には、ドデシルベンゼン、ジフェニルエーテル、フタル酸ブチル、安息香酸ベンジル、燐酸フェニル、燐酸クレジル等が挙げられる。
【0031】
また、副マイクロカプセル6に封入される白色非磁性粒子11としては、酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型)、酸化亜鉛、硫化亜鉛などの微粒子が用いられる。副マイクロカプセル6に封入される沈殿防止剤12としては、シリカ、珪酸塩、微粉アルミナ、カオリン、クレー、ベントナイト、微細炭酸カルシウム、微細硫酸バリウムなどが適用され、添加量は、分散媒13の0.2〜5重量%が好ましい。
【0032】
そして、副マイクロカプセル6も前記主マイクロカプセル5と同様の材料を用いて同様な形成方法により形成され、形成された主マイクロカプセル5と副マイクロカプセル6とは、例えば水系バインダー、エマルジョン系バインダー等の所定のバインダーに分散させて支持体2上に塗布することにより記録層3が形成される。具体的には、従来公知の印刷方式や、ロール塗布法、ビード塗布法等の塗布方式、また、前述したマイクロカプセル等を混入したインクを支持休2上に吹き付けるインクジェット方式、等の各種方法によって調製することができ、目的とする表示媒体1の用途や製造量に応じて適宜選択することかできる。
【0033】
また、図面中、符号4は記録層3の上面に配置された保護層4であり、支持体2に形成された記録層3を保持する働きをするものであり、前記記録層3に配置されている主マイクロカプセル5内部の着色磁性粒子7の着色や、手書き込み表示用の副マイクロカブセル6内部の着色磁性粒子10が外部から視認できるような光透過性を有しているこマイクロカブセルとが必要であり、後述のサーマルヘッド18などの加熱手段により繰り返して行われる熱印加に耐えるための耐熱性や表示面の機械的な強度を保持するために適宜必要な膜厚を選定して形成され、例えば、エポキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ゼラチンなのシート材等から形成される。
【0034】
図2は、前記図1に示した表示媒体1を用いた画像形成並びにその準備段階としての初期化を行う表示装置14の好ましい実施の形態の概略を示すものであり、前記表示媒体1と、表示媒体1の記録層3に沿って磁気シート15とヒートプレート16とが配置されている。
【0035】
前記磁気シート15は記録層3を形成する主マイクロカプセル5に封入されている着色磁性粒子7に対して磁場を印加する機能を有し、ヒートプレート16は記録層3を形成する主マイクロカプセル5に封入されている分散媒8を加熱する機能を有する。尚、本実施の形態では、磁気シート15およびヒートプレート16を記録層3の保護層4側に配置したが、磁気シート15およびヒートプレート16の一方または双方を保護層4側に配置してもよい。
【0036】
そして、表示装置14を使用する際に、先ず、ヒートプレート16により記録層3を形成する主マイクロカプセル5に封入されている分散媒8を加熱溶融させるともに磁気シート15を用いて主マイクロカプセル5に封入されている着色磁性粒子7および副マイクロカプセル6に封入されている着色磁性体9を保護層4側、即ち、表示面側に配置させて、主マイクロカプセル5が黒く、副マイクロカプセル6が赤く表示した初期状態とする。このとき、主マイクロカプセル5および副マイクロカプセル6の支持体2側は白色であり、支持体2を透明体で形成した場合には全体が白色に、支持体2を着した場合には着色の色彩に表示される。尚、この初期化に用いる装置は主画像表示に用いるものと異なる全面加熱装置であってもよい。
【0037】
また、特に、主画像であるデジタル画像表示に適した表示装置14としては、図3に示したように加熱手段としてはサーマルヘッド18が適しており、これに組み合わせて用いる磁場印加手段としては磁気プラテンロール17が好適である。即ち、サーマルヘッド18と磁気プラテンロト一ル17の間を表示材料が通過するような位置関係にあるのが好ましい。即ち、相対した磁気プラテンロール17とサーマルヘッド18とを備える感熱記録装置によって、デジタル信号に基づき主マイクロカプセル5中の熱溶融性有機化合物からなる分散媒8をその融点よりも高い温度に加熱し、前記分散媒8を溶融させる。
【0038】
そして、磁気プラテンロール17を支持体2側、即ち、保護層4を有する表示画面とは反対側に配置して磁場を印加し、主マイクロカプセル5中の着色磁性粒子7の全てを磁気泳動させて支持休2側に移動させる。同時に、副マイクロカプセル6中の着色磁性粒子10もプラテンロール17を通過することにより同じく全て支持体2側に移動するので、表示面側から視認される着色としてはた部分のマイクロカブセル5中の移動しなかった着色磁性粒子7となり、所望のデジタル黒色表示がなされた状態となる。
【0039】
この黒色画像からなる主画像を有する記録層3に分散媒8が溶融しない環境温度(例えば常温)において磁気ペン(図示せず)で保護層4側から接触書き込みを行うと、その部位に赤着色の手書き込みができ、主マイクロカプセル5内は分散媒8が固相を有しているので着色磁性粒子7は磁気によって移動しないので主画像は元のままである。
【0040】
一般には、大多数の情報パターンである大面積の白地に小面積の着色画像を最小の熱エネルギーにより表示するには、熱印加した部分が黒く印刷される場合が望ましい。これを本発明である表示媒体1により可能にするには、透明な支持体2を用いて記録層3を構成するとともに、保護層4側から磁気印加した状態の主マイクロカプセル5の画像を支持体2側から視認することになる。即ち、この場合には、表示面は支持体2側となる。
【0041】
また、その場合に、副マイクロカプセル6に封入された着色磁性粒子10も磁気印加により支持体2側に移動して全面に着色するので、印画表示後の行程として再度加熱のかからない状態で保護層4側から磁場を全面に印加して副マイクロカプセル6に封入された着色磁性粒子10を保護層4側に移動させて支持体2側には主マイクロカプセル5に封入された着色磁性粒子7によって形成される主画像が表示されることが望ましい。この場合には磁気ペンによる手書き込みは支持体2側から行うことになる。
【0042】
また、熱の利用効率は悪くなるが、保護層4側から印加する信号の陰陽を逆にして大面積に熱印加して画像を表示すること、或いは、透明な支持体2を薄く形成して支持体2側から印加して保護層側から画像を視認することも可能であり、いずれの場合も、手書き込み表示のための副マイクロカプセル6に封入された着色磁性粒子10が最終的に磁気を印加した面に移動しこれが手書き込みをしない副マイクロカプセル6の最終表示となる。
【0043】
本発明の表示媒体1および表示装置14は、各種の表示板として用いることができるが、特に、デジタル画像による主画像の表示内容に後から手書き込みを行い、修正、添削、必要なメモ、傍点などを使用者の要求に応じて行うことにより、表示板の使い勝手を向上することができる。
【0044】
次に本発明である表示媒体1、表示装置14およびこれらを用いた表示方法について、 具体的な実施例を挙げて説明するが本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
(表示媒体の作製)
先ず、黒色に着色された着色磁性粒子7、白色非磁性粒子9と熱溶融性有機化合物からなる分散媒8が封入された主マイクロカプセル5を作製する。平均粒径0.3μm程度の黒色のフェライト磁性微粒子3重量部、平均粒径0.3μm程度の酸化チタン微粒子を12重量部を、60℃に加熱して融解したパラフィンワックス(融点40℃)の85重量部中に均一に分散し、この分散液を60℃に加熱した10%ゼラチン水溶液200重量部中で、ホモジナイザーを用いて回転速度2000rpmで,平均粒径30μmになるまで約5分間分散処理を行った。
【0046】
次に、得られた分散液に、10%アラビアゴム水溶液200重量部を混合し、更に、水1000重量部を添加して40℃に保持し、10%酢酸水溶液を滴下しpH4になるように調節した。その後、冷却して液温を7℃とし、30%ホルマリン水溶液10重量部を加え、10%水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpH9になるように調節し、ゼラチン、アラビアゴムを殻とした主マイクロカプセル5を作製した。
【0047】
また、副マイクロカプセル6は、平均粒径0.3μm程度のフェライト粒子を含む赤色磁性体粒子2重量部、平均粒径0.3μm程度の白色酸化チタン11重量部、フタル酸ジブチル85重量部を混合し、これに沈降防止剤アエロジル0.5重量部を含有させ、前記主マイクロカプセル5の場合と同様の工程により作製した。
【0048】
次に、前述のようにして作製した主マイクロカプセル5および副マイクロカプセル6を、ポリビニルアルコール水溶液に5:1に混合した塗液として厚さ30μmの透明のボリエチレンテレフタレートフィルム(支持体2)上に塗布し厚さ40μmの記録層3を形成し、更に、記録層3に例えばAS樹脂のような紫外線硬化樹脂を用いて膜厚10μmの保護屑4を形成し、本発明の表示媒体1を作製した。
【0049】
(表示媒体の初期化)
前述のようにして作製した表示媒体1の全面を、保護層4側、即ち、表示面側から磁気シート15により磁場印加するとともに、ヒートプレート16により80℃で全面加熱を行った。このようにすることにより、全ての主マイクロカプセル5に封入されるパラフィンワックスからなる分散媒8が溶融し、着色磁性粒子7が磁気泳動により表示面側に移行した。同様に、副マイクロカプセル6の着色磁性体10も表面側に移動した。これにより表示面側からは主マイクロカプセル5に封入される着色磁性粒子7の黒色および副マイクロカプセル6に封入される着色磁性体10の赤色が混じった色彩が視認できるようになり、支持体2側からは白色が視認され、この状態で加熱および磁場印加を停止することによって、主マイクロカプセル5のパラフインワックスからなる分散媒8が固化し、初期状態の表示媒体1が得られる。
【0050】
(主画像(黒色デジタル表示))
前述のようにして作製した表示媒体1の全面を支持体2側、即ち、表示面とは反対側から磁気プラテンロール17により磁場印加し、保護層4側からのデジタル信号に基づき黒色にしたい場所のみを選択的にサーマルヘッド18により60℃以上の温度に加熱した。このとき加熱した箇所の主マイクロカブセル5中のパラフィンワックスからなる分散媒8が溶融し、着色磁性粒子7が磁気泳動により支持体2側に移動した。また、副マイクロカプセル6内の着色磁性粒子10は前記信号に基づく加熱の有無とは無関係に、支持体2側に移動した。これにより保護層4側からは、熱が加えられた部分のみが白色非磁性粒子11の白色に変化したことが視認できるようになり、この状態で加熱および磁場印加を停止することによって、主マイクロカブセル5中の分散媒8が固化し、視覚的にデジタル表示された主画像を表示した表示媒体1が得られた。このとき、同一の表示媒体1を支持体2側からみると黒白逆の表示となる。
【0051】
(手書き込み)
前述の手段により得られた黒色表示された主画像に、保護層4側から磁気ペン(図示せず)により線を引き赤線を上書きした。
【0052】
尚、前述した本発明の表示媒体1および表示装置14を用いた画像表示のメカニズムによれば、主マイクロカプセル5と副マイクロカプセル6のサイズ、混合比率、塗布量および、加熱処理を施すサーマルヘッド18等の加熱手段の解像度を制御することによって、表示媒体1の解像度の向上を図ることができる。
【0053】
上述した画像表示の実施例においては、図1に示した表示媒体1の主マイクロカプセル5に封人された着色磁性粒子7の黒色とした場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、最終的に得られる表示画面上で表示したい色彩に応じて任意の色彩を有する着色磁性粒子7を選定することができる,また、手書き込みの磁性体を赤色に設定したがこれも所望の色にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】 本発明である書き換え可能な表示媒体の実施の形態を示す拡大断面概略図である。
【図2】 本発明である書き換え可能な表示装置の実施の形態を示す拡大断面概略図である。
【図3】 本発明である書き換え可能な表示装置の異なる実施の形態を示す拡大断面概略図である。
【符号の説明】
【0055】
1 表示媒体、2 支持体、3 記録層、4 保護層、5 主マイクロカプセル、6 副マイクロカプセル、7 着色磁性粒子、8 分散媒、9 白色非磁性粒子、10 着色磁性粒子、11 白色非磁性粒子、12 沈殿防止剤、13 分散媒、14 表示装置、15 磁気シート、16 ヒートブレート、17 磁気プラテンロール、18 サーマルヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色磁性粒子、白色非磁性粒子および常温で固相状態を示す熱溶融性有機化合物からなる分散媒を封入した主マイクロカプセルと、着色磁性粒子、白色非磁性粒子および常温で高粘度の高沸点液体からなる分散媒を封入した副マイクロカプセルとが非磁性材からなる支持体上に配列された記録層を有することを特徴とする書き換え可能な表示媒体。
【請求項2】
前記主カプセルに封入される分散媒の融点が35℃以上120℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の書き換え可能な表示媒体。
【請求項3】
前記請求項1に記載した表示媒体と、前記表示媒体に磁場を印加するための磁場印加手段および前記表示媒体に熱を印加するための熱印加手段と、前記表示媒体を形成する副カプセルに封入した着色磁性粒子へ磁場印加するための磁気ペンとからなることを特徴とする書き換え可能な表示装置。
【請求項4】
前記磁場印加手段が磁性プラテンロールであり、前記熱印加手段がサーマルヘッドであることを特徴とする請求項3記載の書き換え可能な表示装置。
【請求項5】
着色磁性体、白色非磁性粒子および常温で固相状態を示す熱溶融性有機化合物からなる分散媒を封入した主マイクロカプセルと、着色磁性粒子、白色非磁性粒子および常温で高粘度の高沸点液体からなる分散媒を封入した副マイクロカプセルとが非磁性材からなる支持体上に配列された記録層を有する書き換え可能な表示媒体を用い、前記記録層に対して所望位置に磁場を印加した状態で前記主カプセル中の分散媒の融点よりも高い温度に加熱して前記着色磁性粒子を選択的に移動させることにより主画像を表示し、前記主カプセル中の分散媒が溶融しない温度において前記記録層に対して磁気ペンにより所望位置に磁場を与えて前記主カプセルに基づく主画像表示に影響を与えることなしに副カプセル中の着色磁性粒子を移動させて前記主画像に手書き込みを可能とすることを特徴とする書き換え可能な画像表示方法。
【請求項6】
前記記録媒体の全面を主カプセルに封入した分散媒の融点以上の温度に加熱して表示されている全ての画像を消去する初期化行程を含むことを特徴とする請求項5に記載の書き換え可能な画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−256891(P2007−256891A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113836(P2006−113836)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(392004819)株式会社ビーエフ (13)