説明

手術器具用先端具並びに手術器具

【課題】 手術を容易に行なえる手術器具用先端具及び手術器具を提供する。
【解決手段】 サイナスリフトインスツルメント用先端具1は24Kの金で構成されていると共に、骨膜を剥がしたり、骨補充材を填入したりする作業に適した形状を有する、第1の開口部4が形成された第1の端部2と、サイナスリフトインスツルメントの本体に着脱自在に取付けられる、第2の開口部5が形成された第2の端部3と、本体6に形成された突出部7と、第1の開口部及び第2の開口部に通されて第1の端部と第2の端部を連結する糸8から構成されている。(a)に示されたサイナスリフトインスツルメント用先端具は、骨膜を剥離するためにスプーン形状の第1の端部を備えており、(b)に示されたサイナスリフトインスツルメント用先端具は、骨補充材を保持できるよう第1の端部に凹部2Aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手術器具用先端具並びに手術器具に関する。詳しくは、先端具を、手術に必要な力では曲がらないと共に、手術に必要な力より大きく所定の力以下で曲がるよう構成することで、手術を容易に行なえるようにする、手術器具用先端具並びに手術器具に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、手術において使われる手術器具としては様々な種類の器具があり、例えば体内の骨膜等を剥がすための器具も多種あるが、その骨膜が複雑な形態の部位に位置していると共に薄い膜であるとその手術は容易ではなく、少しでも手術を容易なものにすべく様々な器具が提案されている。以下に、歯科手術の例を挙げて説明する。
【0003】
永久歯を失うと歯は二度と生え変わらないため、入れ歯等を用いて永久歯が失われた部分を補っているが、入れ歯では硬いものをうまく噛めなかったり、長く使っている間に合わなくなってガタついたりしていた。
【0004】
そこで、失った歯の替わりに、人工の歯根(インプラント)を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を作製し、噛み合わせを回復する治療法が行なわれている。
【0005】
ところで、インプラントを顎骨に固定する場合、顎骨に十分な厚みと、インプラントを支えられるだけの強度がなければならないが、下顎骨はインプラント埋設に必要な厚みと強度が十分にあるのに対して、図3に示すように上顎骨11には、副鼻腔の1つである上顎洞12と呼ばれる大きな空洞が存在し、この上顎洞12が様々な要因で拡大する傾向を持っており、更に歯14がなくなると上顎洞12の拡大が進行して歯槽骨13が薄くなるためインプラントを支えるだけの厚みと強度がない。このままではインプラント埋設が困難なので、図4に示すように上顎洞底粘膜16を拳上(剥離)して上顎洞底17と粘膜との間にスペースを形成し、このスペースに骨補填材等を導入するサイナスリフト(上顎洞底粘膜拳上)手術が行なわれる。この上顎洞底粘膜16を剥離するために用いる手術器具15が、サイナスリフトインスツルメントと呼ばれるものである。
【0006】
また、この上顎洞底粘膜は、皮膚のようにとても薄く、サイナスリフトインスツルメントの操作を誤ると簡単に破けてしまい、場合によっては副鼻腔炎となることもある。また、上顎洞内部が見えないため、上顎洞底粘膜を剥離する際、サイナスリフトインスツルメントを介しての手指の感覚で剥離具合等を確かめなくてはならない。更に、上顎洞内の形態は人によって異なると共に複雑な形態をしている。このように困難なサイナスリフト手術を少しでも容易にすべく様々なサイナスリフトインスツルメントが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
図5に、従来のサイナスリフトインスツルメントの先端部品の概略平面図を示す。従来のサイナスリフトインスツルメントの先端部品101は、ハンドピース(図示せず。)の取付部(図示せず。)と係合することができる受座102を備えている。受座102はハンドピース(図示せず。)の軸線と概略並行な軸線を有する幹部103に接続している。幹部103はハンドピース(図示せず。)の頭部(図示せず。)に接続する肘部分104で終わっている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−204735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のサイナスリフトインスツルメントの先端部品はスチール製であり硬くて、例えば人が素手で曲げられないため、人によって異なり複雑な上顎洞内の形態に適した形状に適宜変化させることが困難であり、上顎洞底粘膜を剥がしにくく、場合によっては上顎洞底粘膜を破ってしまい、手術が困難であった。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、手術を容易に行なえる手術器具用先端具及び手術器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の手術器具用先端具は、手術器具本体の端部に着脱自在に取付けられる手術器具用先端具であって、手術に必要な力では曲がらないと共に、手術に必要な力より大きく所定の力以下で曲がるよう構成されている。
【0012】
ところで、「所定の力」とは、施術前に容易に付与することができる力(例えば、人が素手で加えることができる力)を意味するものであり、この様な力で曲げることができる様に構成することで、施術前に体内の複雑な形態に適した形状に容易に変形させることができる。なお、手術に必要な力では曲がらないとしても、極めて大きな力を付与しなければ曲がらない場合、即ち、所定の力を超えた大きな力を付与しなければ変形しない場合には、施術前に容易に変形させることができないこととなる。
【0013】
また、上記の目的を達成するために、本発明の手術器具は、本体と、該本体の端部に着脱自在に取付けられた先端具を備える手術器具であって、前記先端具は、手術に必要な力では曲がらないと共に、手術に必要な力より大きく所定の力以下で曲がるよう構成されている。
【0014】
ここで、本体は医師等が把持する部分であり、先端具は膜を剥がす等の作業をする部分である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る手術器具用先端具を用いることによって、手術を容易に行なうことができる。
【0016】
また、本発明に係る手術器具を用いることによって、手術を容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。図1の(a)は、骨膜剥離に適した形状を有する本発明を適用したサイナスリフトインスツルメント用先端具の一例を、図1の(b)は、骨補充材填入に適した形状を有する本発明を適用したサイナスリフトインスツルメント用先端具の一例をそれぞれ示す概略平面図である。
【0018】
サイナスリフトインスツルメント用先端具1は24Kの金で構成されていると共に、骨膜(上顎洞底粘膜)を剥がしたり、骨補充材を填入したりする作業に適した形状を有する、第1の開口部4が形成された第1の端部(先端部)2と、サイナスリフトインスツルメントの本体に着脱自在に取付けられる、第2の開口部5が形成された第2の端部(基端部)3と、本体6に形成された突出部7と、第1の開口部及び第2の開口部に通されて第1の端部と第2の端部を連結する糸8から構成されている。図1(a)に示されたサイナスリフトインスツルメント用先端具は、骨膜を剥離するためにスプーン形状の第1の端部を備えており、図1(b)に示されたサイナスリフトインスツルメント用先端具は、骨補充材を保持できるよう第1の端部に凹部2Aが形成されている。
【0019】
ここで、サイナスリフトインスツルメント用先端具が手術に必要な力では曲がらないと共に、手術に必要な力より大きく所定の力以下で曲がるよう構成されているのであれば、サイナスリフトインスツルメント用先端具は24Kの金で構成されていなくてもよく、また、金で構成されていなくてもよい。更に、サイナスリフトインスツルメント用先端具を構成する金は、先端具が手術に必要な力では曲がらないと共に、手術に必要な力より大きく所定の力以下で曲がるよう構成されれば、18Kの金でもよい。
【0020】
更に、サイナスリフトインスツルメント用先端具が手術に必要な力では曲がらないと共に、手術に必要な力より大きく所定の力以下で曲がるよう構成されているのであれば、サイナスリフトインスツルメント用先端具は、骨膜(上顎洞底粘膜)を剥がしたり、骨補充材を填入したりする作業に適した形状を有する、第1の開口部が形成された第1の端部を備えていなくてもよい。また、サイナスリフトインスツルメント用先端具が手術に必要な力では曲がらないと共に、手術に必要な力より大きく所定の力以下で曲がるよう構成されているのであれば、第1の端部はどの様な形状を有していてもよく、例えば鉤形状の第1の端部をサイナスリフトインスツルメント用先端具は備えていてもよい。
【0021】
また、サイナスリフトインスツルメント用先端具が手術に必要な力では曲がらないと共に、手術に必要な力より大きく所定の力以下で曲がるよう構成されているのであれば、サイナスリフトインスツルメント用先端具は、サイナスリフトインスツルメントの本体に着脱自在に取付けられる、第2の開口部が形成された第2の端部を備えていなくてもよい。また、サイナスリフトインスツルメント用先端具が手術に必要な力では曲がらないと共に、手術に必要な力より大きく所定の力以下で曲がるよう構成されているのであれば、第2の端部はどのような形状を有していてもよい。
【0022】
また、サイナスリフトインスツルメント用先端具が手術に必要な力では曲がらないと共に、手術に必要な力より大きく所定の力以下で曲がるよう構成されているのであれば、本体に突出部が形成されていなくてもよく、また、例えば5mmの等間隔ごとに複数の突出部が形成されていてもよい。また、図1の突出部は半円形状を有しているが、サイナスリフトインスツルメント用先端具が手術に必要な力では曲がらないと共に、手術に必要な力より大きく所定の力以下で曲がるよう構成されているのであれば、どの様な形状でもよい。
【0023】
また、サイナスリフトインスツルメント用先端具が手術に必要な力では曲がらないと共に、手術に必要な力より大きく所定の力以下で曲がるよう構成されているのであれば、開口部は形成されていなくてもよく、また、第1の端部と第2の端部が連結されていなくてもよい。また、第1の端部と第2の端部が連結されていれば、糸を用いて連結していなくてもよい。
【0024】
図2は、本発明を適用したサイナスリフトインスツルメントの一例を示す概略平面図である。本発明を適用したサイナスリフトインスツルメント9は、歯科医師等が把持する本体10と、本体の両端部に着脱自在に取付けられた先端具1からなる。
【0025】
ここで、サイナスリフトインスツルメントの本体は、先端具が手術に必要な力では曲がらないと共に、手術に必要な力より大きく所定の力以下で曲がるよう構成されていれば、どのような材質で構成されていてもよい。
【0026】
なお、実施例では歯科手術の例を挙げて説明しているが、本発明を適用した手術器具用先端具や手術器具は、外科手術においても使用できることは勿論である。
【0027】
このように、本発明を適用した手術器具用先端具は、手術に必要な力では曲がらないと共に、手術に必要な力より大きく所定の力(例えば、人が素手で加えることができる力)以下で曲がるので、この先端具を備えた手術器具は、人によって異なる様々な体内の形態に応じて形状を変えることができ、また、手術時には曲がることなく手術を行なえて、更には上顎洞内のような見えない体内部位にも届き、手術を容易にすることができる。
【0028】
また、本発明を適用した手術器具用先端具は24Kの金で構成されているので、曲げを繰り返しても金属疲労を受けにくく、生体親和性もよい。更に、本発明を適用した手術器具用先端具は24Kの金で構成されているので、24Kの金の適度な柔らかさにより、先端具が接触したものが手指に伝わり、手術中において微妙な力加減を制御できる。
【0029】
更に、本発明を適用した手術器具用先端具は、第1の端部に形成された第1の開口部と第2の端部に形成された第2の開口部を糸が通って、第1の端部と第2の端部を連結しているので、手術中に先端具が折れた場合でも、手術器具を体内から取り出すことで、手術器具の本体に取付けられた第2の端部と共に第1の端部も取り出すことができ、体内に第1の端部を取り残すことがない。
【0030】
また、突出部によって、先端具がどの程度上顎洞内に入り込んでいるかを判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は、骨膜剥離に適した形状を有する本発明を適用したサイナスリフトインスツルメント用先端具の一例を、(b)は、骨補充材填入に適した形状を有する本発明を適用したサイナスリフトインスツルメント用先端具の一例をそれぞれ示す概略平面図である。
【図2】本発明を適用したサイナスリフトインスツルメントの一例を示す概略平面図である。
【図3】上顎骨にある上顎洞の概略説明図である。
【図4】図3のA−A´線に沿った上顎洞の断面を基にサイナスリフト手術の一例を示す概略説明図である。
【図5】従来のサイナスリフトインスツルメントの先端部品の概略平面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 サイナスリフトインスツルメント用先端具
2 第1の端部
2A 凹部
3 第2の端部
4 第1の開口部
5 第2の開口部
6 本体
7 突出部
8 糸
9 サイナスリフトインスツルメント
10 本体
11 上顎骨
12 上顎洞
13 歯槽骨
14 歯
15 手術器具
16 上顎洞底粘膜
17 上顎洞底

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術器具本体の端部に着脱自在に取付けられる手術器具用先端具であって、
手術に必要な力では曲がらないと共に、手術に必要な力より大きく所定の力以下で曲がるよう構成されている
手術器具用先端具。
【請求項2】
金で構成されている
請求項1に記載の手術器具用先端具。
【請求項3】
手術時に作業する先端部と、
基端部とを備えると共に、
前記先端部と前記基端部とが連結されている
請求項1または請求項2に記載の手術器具用先端具。
【請求項4】
本体と、該本体の端部に着脱自在に取付けられた先端具を備える手術器具であって、
前記先端具は、手術に必要な力では曲がらないと共に、手術に必要な力より大きく所定の力以下で曲がるよう構成されている
手術器具。
【請求項5】
前記先端具は金で構成されている
請求項4に記載の手術器具。
【請求項6】
前記先端具は、
手術時に作業する先端部と、
手術器具本体に着脱自在に取り付けられる基端部とを備えると共に、
前記先端部と前記基端部とが連結されている
請求項4または請求項5に記載の手術器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−305215(P2006−305215A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134017(P2005−134017)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【出願人】(597030486)
【Fターム(参考)】